特許第6859415号(P6859415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859415
(24)【登録日】2021年3月29日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】染毛剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20210405BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20210405BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20210405BHJP
   A61K 8/43 20060101ALI20210405BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20210405BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20210405BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20210405BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   A61K8/49
   A61K8/19
   A61K8/41
   A61K8/43
   A61K8/46
   A61K8/81
   A61Q5/06
   A61Q5/10
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2019-195763(P2019-195763)
(22)【出願日】2019年10月29日
(62)【分割の表示】特願2015-114896(P2015-114896)の分割
【原出願日】2015年6月5日
(65)【公開番号】特開2020-45344(P2020-45344A)
(43)【公開日】2020年3月26日
【審査請求日】2019年11月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-117912(P2014-117912)
(32)【優先日】2014年6月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野尻 昌良
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02606873(EP,A1)
【文献】 特開2010−024158(JP,A)
【文献】 特開2010−006804(JP,A)
【文献】 特開平03−170413(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02883531(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、成分(B)及び成分(B)以外のアルカリ剤を含有し、全組成中における成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)が1以上100以下であり、成分(B)以外のアルカリ剤に対する成分(B)の質量比[成分(B)]/[成分(B)以外のアルカリ剤]が0.4以上3.5以下であり、使用時のpH(25℃)が7.5〜12である染毛剤組成物。
(A):下記(A-1)、(A-2)及び(A-3)からなる群より選択される1種又は2種以上のアゾ染料
【化1】
(B):炭酸グアニジン、炭酸水素グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、及び炭酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種
【請求項2】
成分(B)以外のアルカリ剤に対する成分(B)の質量比[成分(B)]/[成分(B)以外のアルカリ剤]が0.4以上2以下である、請求項1記載の染毛剤組成物。
【請求項3】
成分(A)の含有量が、全組成中の0.01質量%以上5質量%以下である請求項1又は2に記載の染毛剤組成物。
【請求項4】
成分(B)の含有量が、全組成中の0.01質量%以上10質量%以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の染毛剤組成物。
【請求項5】
更に界面活性剤を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の染毛剤組成物。
【請求項6】
界面活性剤が、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の染毛剤組成物。
【請求項7】
界面活性剤の含有量が、全組成中の0.01質量%以上30質量%以下である請求項5又は6に記載の染毛剤組成物。
【請求項8】
アニオン界面活性剤が、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、飽和脂肪酸塩、及びアルキルエーテルカルボン酸塩よりなる群から選択される1種又は2種以上である請求項6又は7に記載の染毛剤組成物。
【請求項9】
更にカチオン性ポリマーを含有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の染毛剤組成物。
【請求項10】
カチオン性ポリマーの含有量が、全組成中の0.01質量%以上5質量%以下である請求項9に記載の染毛剤組成物。
【請求項11】
(B)以外のアルカリ剤が2-アミノ-2-メチルプロパノールを含有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の染毛剤組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の染毛剤組成物を毛髪に適用し、1〜60分間放置した後、洗い流す染毛方法。
【請求項13】
毛髪を染色するための請求項1〜11のいずれか一項に記載の染毛剤組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛剤組成物及びそれを用いた染毛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
染毛剤組成物は、使用される染料又はメラニンに対する脱色作用の有無によって分類することができる。染毛剤組成物の代表例としては、アルカリ剤、酸化染料、及び任意的にニトロ染料等の直接染料を含む第1剤と、酸化剤を含む第2剤とから成る二剤式の酸化型染毛剤組成物や、pH調整剤(酸又はアルカリ)と酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料等の直接染料の少なくとも一種とを含む一剤式の非酸化型染毛剤組成物が挙げられる。
【0003】
これら染毛剤組成物に使用できる直接染料として、分子内に解離性のプロトンを含み、このプロトンが解離することで呈色する解離性アゾ染料が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-342139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
直接染料を含有する染毛剤は、上記の剤型の如何に拘わらず、ほとんどの直接染料は毛髪表面から表面近傍に染着して毛髪を着色している。特許文献1で提案されている解離性プロトンを含むアゾ染料(解離性アゾ染料)は、アルカリ性環境下でプロトンを解離し、アニオン電荷が分子内に非局在化することによって鮮やかな色を呈すると同時に毛髪との相互作用が生じるという特徴を有することから、染毛剤としての利用に好適な直接染料である。
【0006】
近年、毛髪の艶やハリ・コシを求めて酸性のシャンプーで洗髪することが広く行われるようになり、このような解離性アゾ染料を含有する染毛剤で染色した毛髪において色落ちや色変化といった問題が顕在化した。これは、解離性プロトンを解離してアニオン電荷が非局在化し、発色した状態にある毛髪上のアゾ染料が、酸性条件下でプロトン化される結果、分子が中性化して色変化を起こし、あるいは易溶解性となって毛髪の色調を変化させていることによると考えられる。
【0007】
また、解離性アゾ染料は、染毛剤組成物への溶解性が低いため、製造時や保存時に該染料の再沈殿を起こしやすく、使用時に染料の不均一性による染めむらを生じやすいという問題もあった。
【0008】
従って、本発明は、酸性処理堅牢性、及び染毛剤組成物への解離性アゾ染料の溶解性を向上させた染毛剤組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような酸性処理の影響を抑えるべく、種々のアルカリ剤を検討したところ、特定種の炭酸塩を特定種のアゾ染料に対して特定比で用いれば、毛髪を鮮やかに発色させるとともに、染毛色の色変化が少ない染毛剤組成物となることを見出した。そして更に、この染毛剤組成物は、製造時にはアゾ染料溶解性が高く、染毛後には酸性処理堅牢性が高いという特長も併せ持つことを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明は、次の成分(A)及び(B)を含有し、全組成中における成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)が1以上100以下であり、使用時のpH(25℃)が7.5〜12である染毛剤組成物を提供するものである。
(A):下記(A-1)、(A-2)及び(A-3)からなる群より選択される1種又は2種以上のアゾ染料
【0011】
【化1】
【0012】
(B):炭酸グアニジン、炭酸水素グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、及び炭酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種
【0013】
更に、本発明は、上記の染毛剤組成物を毛髪に適用し、1〜60分間放置した後、洗い流す染毛方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の染毛剤組成物は、酸性処理堅牢性に優れ、また、含有する解離性アゾ染料の溶解性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔成分(A):アゾ染料〕
本発明の染毛剤組成物は、成分(A)として、下記(A-1)、(A-2)及び(A-3)からなる群より選択される1種又は2種以上のアゾ染料を含有する。
【0016】
【化2】
【0017】
なお、アゾ染料(A-1)、(A-2)及び(A-3)のpKaは、それぞれ6.0、6.0及び7.5である。よって、pH(25℃)が7.5〜12である本発明の染毛剤組成物中では、これらアゾ染料のほぼ8割以上は、プロトンを解離したアニオン性の状態で存在する。プロトンが解離したとき、(A-1)は赤色、(A-2)は青色、(A-3)は黄色を呈する。
【0018】
全組成中における上記アゾ染料の総含有量は、染毛性が高く、かつ、布類等への色移りが抑えられ、更に染毛剤組成物への溶解性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.08質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。なお、本発明の染毛剤組成物には、アゾ染料(A-1)、(A-2)及び(A-3)以外の染料を併用することもできる。ただし、成分(A)による染色性に影響を与えない観点より、アゾ染料(A-1)、(A-2)及び(A-3)の総含有量が、全染料中の1質量%以上、更には5質量%以上100質量%以下、更には10質量%以上100質量%以下、更には20質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0019】
上記アゾ染料は、染毛剤組成物が二剤式又は三剤式の場合、第1剤、第2剤、第3剤のいずれに含有させてもよいが、処方配合の安定性の観点から、第1剤又は第3剤中に含有させることが好ましく、第1剤中に含有させることがより好ましい。
【0020】
〔酸化染料〕
本発明の染毛剤組成物が二剤式又は三剤式である場合、第1剤中には前記アゾ染料に加え、酸化染料を含有させることもできる。本発明の染毛剤組成物に好適な酸化染料としては、通常染毛剤に使用されている公知のプレカーサー及びカップラーを用いることができる。
【0021】
プレカーサーとしては、例えばパラフェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、2-クロロパラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、パラメチルアミノフェノール、オルトアミノフェノール、2,4-ジアミノフェノール、N-フェニルパラフェニレンジアミンとこれらの塩等が挙げられる。
【0022】
また、カップラーとしては、例えばメタフェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、メタアミノフェノール、2-メチル-5-アミノフェノール、2-メチル-5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)フェノール、レゾルシン、1-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、ヒロドキノンとこれらの塩等が挙げられる。
【0023】
プレカーサーとカップラーは、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。その全組成物中の総含有量は、上記アゾ染料の染色性に影響を与えない程度の含有量であることが好ましく、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%、更に好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0024】
〔成分(A)以外の直接染料〕
本発明の染毛剤組成物には、上記アゾ染料(A-1)、(A-2)、及び(A-3)以外の直接染料を更に含有させることができる。本発明の染毛剤組成物が二剤式又は三剤式である場合には、アゾ染料(A-1)、(A-2)、及び(A-3)以外の直接染料は、第1剤中に含有させることが好ましい。この直接染料としては、染毛剤に利用可能である公知の酸性染料、塩基性染料、分散染料等を用いることができる。
【0025】
酸性染料としては、例えば青色1号、紫色401号、黒色401号、だいだい色205号、赤色227号、赤色106号、黄色203号、酸性橙3等が挙げられる。塩基性染料としては、例えば塩基性青99、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性赤76、塩基性黄57等が挙げられる。
【0026】
酸性染料及び塩基性染料以外の直接染料としては、例えば2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、3-ニトロ-p-ヒドロキシエチルアミノフェノール、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、4-アミノ-3-ニトロフェノール、4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノール、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、分散紫1、分散青1、分散黒9、HC青2、HC橙1、HC赤1、HC赤3、HC黄2、HC黄4、HC黄5等が挙げられる。
【0027】
これらアゾ染料(A-1)、(A-2)、及び(A-3)以外の直接染料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その全組成物中の含有量は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、また好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0028】
〔成分(B):炭酸塩〕
本発明の染毛剤組成物は、成分(B)として、アルカリ剤である炭酸グアニジン、炭酸水素グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、及び炭酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種の炭酸塩を含有する。
【0029】
全組成中における成分(B)の総含有量は、酸性処理堅牢性、及び染毛剤組成物への成分(A)の溶解性を向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。
【0030】
成分(B)は、染毛剤組成物が二剤式又は三剤式の場合、第1剤、第3剤のいずれに含有させてもよいが、配合安定性の観点から、第1剤中に含有させることが好ましい。
【0031】
全組成中における成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)は、酸性処理堅牢性、及び染毛剤組成物への成分(A)の溶解性を向上させる観点からは、1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上であり、また、100以下、好ましくは90以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは60以下、更に好ましくは50以下、更に好ましくは40以下である。また、高い染毛性の確保をも考慮した場合には、質量比(B)/(A)は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上であり、また、好ましくは90以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは60以下、更に好ましくは50以下、更に好ましくは40以下、更に好ましくは30以下である。
【0032】
〔pH〕
本発明の染毛剤組成物の使用時のpH(25℃)は、一剤式染毛料の場合、好ましくは8以上、より好ましくは8.5以上、更に好ましくは9以上であり、また、好ましくは11.5以下、より好ましくは更には11以下、更に好ましくは10.5以下である。
【0033】
また、本発明の染毛剤組成物が二剤式又は三剤式である場合、第1剤のpH(25℃)は好ましくは8〜12、第2剤のpH(25℃)は好ましくは2〜5である。第1剤〜第3剤の混合物のpH(25℃)は、染毛効果と皮膚刺激性の点から、好ましくは8以上、より好ましくは8.5以上、更に好ましくは9以上であり、また、好ましくは11.5以下、より好ましくは11以下、更に好ましくは10.5以下である。
【0034】
なお、本明細書において、染毛剤組成物のpHは、株式会社堀場製作所製pHメーターF-22を用いて室温(25℃)で測定した値である。
【0035】
〔成分(B)以外のアルカリ剤〕
本発明の染毛剤組成物には、成分(B)の炭酸塩以外のアルカリ剤を更に含有させることができる。本発明の染毛剤組成物が二剤式又は三剤式である場合は、アルカリ剤は第1剤に含有させる。このようなアルカリ剤としては、アンモニア及びその塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノブタノール等のアルカノールアミン及びその塩、1,3-プロパンジアミン等のアルカンジアミン及びその塩等が挙げられる。これらのアルカリ剤のうち、アンモニア及びその塩、モノエタノールアミン及びその塩、並びに2-アミノ-2-メチルプロパノールからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、これらの中でも2-アミノ-2-メチルプロパノールがより好ましい。
【0036】
成分(B)以外のアルカリ剤は、2種以上を併用してもよく、全組成物中の含有量は、十分な染毛効果の点から、0.01質量%以上、更には0.05質量%以上、更には0.1質量%以上、更には0.2質量%以上、更には0.5質量%以上、更には1質量%以上が好ましく、また、毛髪損傷や頭皮刺激の低減の点から、20質量%以下、更には10質量%以下、更には5質量%以下、更には4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下が好ましい。
【0037】
成分(B)以外のアルカリ剤に対する成分(B)の質量比[成分(B)]/[成分(B)以外のアルカリ剤]は、酸性処理による色変化を抑制する観点より、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上、更に好ましくは1以上であり、また、好ましくは3.5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2.5以下、更に好ましくは2以下、更に好ましくは1.5以下である。
【0038】
〔界面活性剤〕
本発明の染毛剤組成物には、界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、及びアニオン界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、処方配合の安定性の観点から、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤が好ましい。
【0039】
アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホ脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸塩、リン酸モノ又はジエステル、スルホコハク酸エステル等が挙げられる。アルキルエーテル硫酸塩としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。これらのうち、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩が好ましい。これらアニオン界面活性剤のアニオン性基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;炭素数2又は3のアルカノール基を1〜3個有するアルカノールアミン塩(例えばモノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩等)が挙げられる。
【0040】
カチオン界面活性剤としては、染毛後の毛髪に対して優れた感触を付与させる観点から、塩化モノアルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、臭化モノアルキルトリメチルアンモニウムが好ましく、なかでも塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(ステアルトリモニウムクロリド)、塩化セチルトリメチルアンモニウム(セトリモニウムクロリド)、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム(ラウリルトリモニウムクロリド)がより好ましく、2種以上を混合することも好ましい。
【0041】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、高級脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸モノ又はジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、アルキルサッカライド、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイド等が挙げられる。これらのうち、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルサッカライドが好ましく、ポリオキシエチレンアルキル(12〜14)エーテル、アルキルポリグルコシドがより好ましい。
【0042】
両性界面活性剤としては、イミダゾリン、カルボベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン、ヒドロキシスルホベタイン、アミドスルホベタイン等が挙げられ、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン等のベタイン界面活性剤がより好ましく、脂肪酸アミドプロピルベタインが更に好ましい。
【0043】
界面活性剤は、染毛剤組成物が二剤式又は三剤式の場合、第1剤、第2剤、第3剤のいずれに含有させてもよい。
【0044】
これら界面活性剤は、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、全組成物中の含有量は、良好な感触、乳化性能の観点から、好ましくは0.01質量%、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である。
【0045】
〔カチオン性ポリマー〕
本発明の染毛剤組成物には、カチオン性ポリマーを含有させることができる。カチオン性ポリマーとしては、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド・アクリル酸共重合体等のジメチルジアリルアンモニウム塩系共重合体が挙げられる。それらの中でも、ジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む重合体を含有させることが好ましい。
【0046】
ジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む重合体は、次の一般式(1)又は(2)で表される骨格を有する重合体である。
【0047】
【化3】
【0048】
〔式中、R1及びR2は同一でも異なってもよく、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基(フェニル基等)、ヒドロキシアルキル基、アミドアルキル基、シアノアルキル基、アルコキシアルキル基又はカルボアルコキシアルキル基を示し、R3及びR4は同一でも異なってもよく、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はフェニル基を示し、X-は陰イオン(塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸アニオン、スルホン酸アニオン、メチル硫酸アニオン、リン酸アニオン、硝酸アニオン等)を示す。〕
【0049】
ジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む重合体は、毛髪のツヤ、まとまり及び指通りを向上させる観点から、一般式(4)又は(5)で表される構成単位を、一分子中に好ましくは85〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、更に好ましくは95〜100モル%含有することが好ましい。
【0050】
ジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む重合体としては、ジアリル4級アンモニウム塩のホモポリマー、ジアリル4級アンモニウム塩とアクリル酸とのコポリマーが好ましい。ジアリル4級アンモニウム塩のホモポリマーの具体例としては、マーコート100(Lubrizol Advanced Materials, Inc.社製、電荷密度6.2meq/g、重量平均分子量150,000)等が挙げられ、ジアリル4級アンモニウム塩とアクリル酸とのコポリマーの具体例としては、マーコート295(Lubrizol Advanced Materials, Inc.社製、電荷密度6.0meq/g、重量平均分子量190,000)、マーコート280(Lubrizol Advanced Materials, Inc.社製、電荷密度5.0meq/g、重量平均分子量450,000)が挙げられる。
【0051】
ジアリル4級アンモニウム塩とアクリル酸との重合物としては、例えば次の一般式(3)又は(4)で表されるものが好ましい。
【0052】
【化4】
【0053】
〔各式中、R1、R2、R3、R4及びX-は前記と同じ意味を示す。x及びyはそれぞれ1〜100の整数を示す。zは150〜8,000の整数を示す。〕
【0054】
xとyの割合(x:y)は、好ましくは80:20であり、より好ましくは90:10であり、更に好ましくは95:5である。
【0055】
カチオン性ポリマーの重量平均分子量は、毛髪へ吸着して、洗髪時・すすぎ時に脱落しにくいものとすると共に泡を安定化する観点から、好ましくは10,000以上、より好ましくは50,000以上、更に好ましくは100,000以上であり、また泡の良好な吐出性の観点から、好ましくは3,000,000以下、より好ましくは1,000,000以下、更に好ましくは200,000以下である。
【0056】
ここで、重量平均分子量は、例えばゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、以下の条件にて測定することができる。
移動層:50mM LiBr, 1%CH3COOH/エタノール:水=3:7
カラム:TSK gel α-M(2本直列)
標準物質:ポリエチレングリコール
【0057】
カチオン性ポリマーの電荷密度は、毛髪のツヤ、まとまり及び指通りを向上させる観点から、好ましくは5.0meq/g以上、より好ましくは5.5meq/g以上、更に好ましくは6.1meq/g以上であり、剤の安定性の観点から、好ましくは6.5meq/g以下である。ここで、カチオン性ポリマーにおける電荷密度とは、ポリマー1g当たりのカチオン性基モル数×1000(meq/g)をいう。
【0058】
混合液中のカチオン性ポリマーの含有量は、効果の持続性の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下である。カチオン性ポリマーは、染毛剤組成物が二剤式又は三剤式の場合、第1剤、第2剤、第3剤のいずれに含有させてもよい。
【0059】
〔pH調整剤〕
本発明の染毛剤組成物は、pH調整剤として、塩酸、リン酸等の無機酸、クエン酸、グリコール酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸、塩酸モノエタノールアミン等の塩酸塩、リン酸二水素一カリウム、リン酸一水素二ナトリウム等のリン酸塩等を使用することができる。
【0060】
これらpH調整剤は、二剤式又は三剤式染毛剤にあっては、第1剤、第2剤、第3剤のいずれに含有させてもよい。またその全組成物中の含有量は、十分な染色効果の点、及び毛髪損傷や頭皮刺激の低減の点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、また好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0061】
〔過酸化水素〕
本発明の染毛剤組成物が二剤式染毛剤又は三剤式染毛剤である場合、第2剤に過酸化水素を含有させることができる。全組成物中の過酸化水素の含有量は、十分な染毛効果の点から、0.1質量%以上、更には0.5質量%以上、更には1質量%以上が好ましく、また、毛髪損傷や頭皮刺激の低減の点から、12質量%以下、更には9質量%以下、更には6質量%以下、更に好ましくは4質量%以下が好ましい。
【0062】
〔高級アルコール〕
本発明の染毛剤組成物には、感触改善、安定性の観点から、炭素数12以上の高級アルコールを含有させることが好ましい。高級アルコールは、本発明の染毛剤組成物が二剤式染毛剤又は三剤式染毛剤である場合には、第1剤、第2剤、第3剤のいずれの剤に含有させてもよい。
【0063】
高級アルコールとしては、炭素数12以上、更には16以上、また、炭素数30以下、更には22以下のものが好ましく、具体的には、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0064】
高級アルコールは、2種以上を併用してもよく、またその全組成物中の含有量は、染毛剤組成物の粘度及び安定性の観点より、3質量%以上、更には4質量%以上が好ましく、また、11質量%以下、更には9質量%以下が好ましい。
【0065】
〔有機溶剤〕
本発明の染毛剤組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等の低級アルカノール;ベンジルアルコール、2-ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール等の芳香族アルコール;プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン等のポリオール;エトキシエタノール、エトキシジグリコール、メトキシエタノール等のエーテルアルコール;N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン等のN-アルキルピロリドン;炭酸プロピレン等の炭酸アルキレン;γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン等のラクトンが挙げられる。
【0066】
これら有機溶剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができ、またその全組成物中の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、また好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0067】
〔水溶性高分子〕
本発明の染毛剤組成物には、使用時のたれ落ち防止、頭皮などへの汚着防止の目的で、水溶性高分子を含有させることができる。なお、本明細書において、水溶性高分子には前記カチオン性ポリマーを含まないものとする。水溶性高分子としては、例えばアラビアガム、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルメチルエーテル(PVM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ナトリウム、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリントガム、ジアルキルジメチルアンモニウム硫酸セルロース、キサンタンガム、変性キサンタンガム、ウェランガム、ラボールガム、ジェランガム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体の1,9-デカジエンによる部分架橋物、ポリエチレングリコール、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ベントナイト等が挙げられる。これらのうち、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、変性キサンタンガムが好ましい。
【0068】
これらの水溶性高分子は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、全組成中における含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0069】
〔コンディショニング成分〕
本発明の染毛剤組成物は、毛髪への適用に好適なコンディショニング成分を含むことができる。コンディショニング成分は、染毛剤組成物に溶解又は分散可能なポリマー又はオイル類であり、染毛剤組成物を洗い流す際、又は水やシャンプーで希釈された際に毛髪へ付着する。
【0070】
本発明の染毛剤組成物に使用される好適なコンディショニング成分としては、シリコーン(例えばシリコーンオイル、カチオン性シリコーン、シリコーンガム、シリコーン樹脂)、有機コンディショニングオイル(例えば、炭化水素オイル、ポリオレフィン、脂肪酸エステル)、脂肪族アミド、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
【0071】
これらコンディショニング成分は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができ、またその全組成物中の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0072】
〔媒体〕
本発明の染毛剤組成物には、媒体として水が使用される。染毛剤組成物中の水の含有量は、10質量%以上、更には20質量%以上、更に30質量%以上、更には40質量%以上、更には50質量%以上が好ましく、また、95質量%以下、更には90質量%以下、更には85質量%以下が好ましい。
【0073】
〔その他の任意成分〕
本発明の染毛剤組成物には、上記成分のほかに、通常化粧品原料として用いられる他の成分を加えることができる。
【0074】
このような任意成分の配合目的としては、パール化、防腐、金属封鎖、安定化、酸化防止、紫外線吸収、保湿、製品着色、付香等を挙げることができ、具体的な任意成分としては、動植物油脂、高級脂肪酸、タンパク質加水分解物、タンパク質誘導体、アミノ酸、植物抽出物、ビタミン、色素、香料等が挙げられる。
【0075】
〔剤型〕
本発明の染毛剤組成物は、一剤式、二剤式、又は三剤式の各種染毛剤として使用できる。一剤式染毛剤組成物は、成分(A)及び(B)を含有する単一の剤からなる。二剤式染毛剤組成物は、成分(A)及びアルカリ剤を含有する第1剤と、過酸化水素を含有する第2剤からなることが好ましい。三剤式染毛剤組成物は、アルカリ剤を含有する第1剤と、過酸化水素を含有する第2剤と、成分(A)を含有する第3剤からなるか、又は成分(A)及びアルカリ剤を含有する第1剤と、過酸化水素を含有する第2剤と、その他の成分を含有する第3剤からなることが好ましい。上記のその他の成分を含有する第3剤としては脱色力向上のために過硫酸塩(過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等)等の造粒物からなる粉末状酸化剤を用いることが好ましい。
なお、本発明において「全組成物」とは、染毛処理の使用時の組成物全体をいい、上述の二剤式染毛剤にあっては、第1剤と第2剤を混合した後の混合物を意味し、三剤式染毛剤にあっては、第1剤と第2剤と第3剤を混合した後の混合物を意味する。
【0076】
本発明の染毛剤組成物は、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、ムース状などの形態で用いられるものとすることができ、エアゾール形態とすることもできる。これらの場合における全組成物の粘度は、毛髪に塗布したときに液だれしにくいように調整することが望ましい。この全組成物の粘度(25℃)は、ヘリカルスタンド付きB型回転粘度計(モデル;デジタル粘度計TVB-10、東機産業株式会社)により、ローターT-Cを用いて10rpmで1分間回転させた後の測定値として、好ましくは2,000〜200,000mPa・s、より好ましくは4,000〜150,000mPa・s、更に好ましくは6,000〜100,000mPa・s、更に好ましくは8,000〜80,000mPa・sである。なお、二剤式又は三剤式の場合には、各剤の混合後3分経過後に測定するものとする。
【0077】
また、本発明の染毛剤組成物は、毛髪に塗布するときにノンエアゾール型のフォーマー容器から吐出させたり、カップ内でシェークして発泡させたりすることで泡状として使用することもできる。この場合における発泡前の全組成物の粘度も、泡状として毛髪に塗布したときに液だれしにくいように調整することが望ましい。この全組成物の粘度(25℃)は、B型回転粘度計(モデル;デジタル粘度計TV-10、東機産業株式会社)により、ローターNo.1を用いて30rpmで1分間回転させた後の測定値(但し、粘度が160mPa・sを超える場合は、12rpmで1分間回転させた後の測定値)として、好ましくは1〜800mPa・s、より好ましくは1〜600mPa・s、更に好ましくは1〜500mPa・s、更に好ましくは1〜300mPa・sである。なお、二剤式又は三剤式の場合には、各剤の混合後3分経過後に測定するものとする。
【0078】
〔染毛方法〕
本発明の染毛剤組成物を用いて染毛処理するには、例えば本発明の染毛剤組成物(二剤式又は三剤式の場合は第1剤〜第3剤を使用直前に混合した後)を毛髪に適用し、所定時間放置後、水を用いて洗い流し、乾燥すればよい。毛髪への適用温度は15〜45℃、適用時間は1〜60分間、更には5〜45分間、更には10〜30分間が好ましい。
【0079】
以上述べた実施形態に関し、以下に本発明の好ましい態様を更に開示する。
【0080】
<1> 次の成分(A)及び(B)を含有し、全組成中における成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)が1以上100以下であり、使用時のpH(25℃)が7.5〜12である染毛剤組成物。
(A):下記(A-1)、(A-2)及び(A-3)からなる群より選択される1種又は2種以上のアゾ染料
【0081】
【化5】
【0082】
(B):炭酸グアニジン、炭酸水素グアニジン、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、及び炭酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種
【0083】
<2> 成分(A)の含有量が、全組成中の好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.08質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である、<1>に記載の染毛剤組成物。
【0084】
<3> 成分(B)の含有量が、全組成中の好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である、<1>又は<2>に記載の染毛剤組成物。
【0085】
<4> 全組成中における成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)が、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上であり、また、好ましくは90以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは60以下、更に好ましくは50以下、更に好ましくは40以下、更に好ましくは30以下である、<1>〜<3>のいずれか一項に記載の染毛剤組成物。
【0086】
<5> 好ましくは、更に界面活性剤を含有する<1>〜<4>のいずれか一項に記載の染毛剤組成物。
【0087】
<6> 界面活性剤が、好ましくはアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種である、<5>に記載の染毛剤組成物。
【0088】
<7> 界面活性剤の含有量が、全組成中の好ましくは0.01質量%、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である、<5>又は<6>に記載の染毛剤組成物。
【0089】
<8> アニオン界面活性剤が、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、飽和脂肪酸塩、及びアルキルエーテルカルボン酸塩よりなる群から選択される1種又は2種以上である、<6>又は<7>に記載の染毛剤組成物。
【0090】
<9> 好ましくは、更にカチオン性ポリマーを含有する、<1>〜<8>のいずれか一項に記載の染毛剤組成物。
【0091】
<10> カチオン性ポリマーが、好ましくはジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含む重合体である、<9>に記載の染毛剤組成物。
【0092】
<11> カチオン性ポリマーの重量平均分子量が、好ましくは10,000以上、より好ましくは50,000以上、更に好ましくは100,000以上であり、また、好ましくは3,000,000以下、より好ましくは1,000,000以下、更に好ましくは200,000以下である、<9>又は<10>に記載の染毛剤組成物。
【0093】
<12> カチオン性ポリマーの含有量が、全組成中の好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.8質量%以下である、<9>〜<11>のいずれかに記載の染毛剤組成物。
【0094】
<13> 好ましくは、更に炭素数12以上の高級アルコールを含有する、<1>〜<12>のいずれか一項に記載の染毛剤組成物。
【0095】
<14> 高級アルコールが、好ましくは炭素数16以上であり、また、好ましくは炭素数30以下、より好ましくは炭素数22以下である、<13>に記載の染毛剤組成物。
【0096】
<15> 高級アルコールの含有量が、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上であり、また、好ましくは11質量%以下、より好ましくは9質量%以下である、<13>又は<14>に記載の染毛剤組成物。
【0097】
<16> 好ましくは、更に2-アミノ-2-メチルプロパノールを含有する、<1>〜<15>のいずれか一項に記載の染毛剤組成物。
【0098】
<17> 使用時のpH(25℃)が、好ましくは8以上、より好ましくは8.5以上、更に好ましくは9以上であり、また、好ましくは11.5以下、より好ましくは更には11以下、更に好ましくは10.5以下である、<1>〜<16>のいずれかに記載の染毛剤組成物。
【0099】
<18> <1>〜<17>のいずれか一項に記載の染毛剤組成物を毛髪に適用し、1〜60分間放置した後、洗い流す染毛方法。
【0100】
<19> 毛髪を染色するための<1>〜<17>のいずれか一項に記載の染毛剤組成物の使用。
【実施例】
【0101】
実施例1〜8及び比較例1〜4
表3及び4に示す組成からなる染毛剤組成物(一剤式染毛剤)を下記の方法により調製した。得られた染毛剤組成物について、以下の方法によって、染色性、すすぎ水の色味及び染料溶解性の評価を行った。これらの結果を表3及び4に併せて示す。
【0102】
〔染毛剤組成物の調製方法〕
水に成分(A)、2-アミノ-2-メチルプロパノール及びプロピレングリコールを配合した後、成分(B)成分を添加し(但し、比較例4は成分(B)を添加しない)、60℃で一定時間撹拌を行い水溶液1を調製した。次いで、水溶液1の染料溶解性を確認した。また、別途、ラウレス硫酸ナトリウム、セテアリルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、及びオレイルアルコールを60℃で溶解させることで油相1を調製した。次いで、水溶液1に油相1を配合し、一定時間撹拌を行った後、室温まで冷却することで染毛剤組成物を得た。
【0103】
〔染色性〕
染毛剤組成物をヤギ毛1gの毛束に浴比(剤:ヤギ毛)=1:1(質量比)で塗布し、40℃で20分放置した後、約40℃の水ですすぎ、表1に示すシャンプーで洗浄、水洗した。次いで、表2に示すヘアリンスを塗布した後、約40℃の水ですすぎ、タオルで拭き、ドライヤーで乾燥させた。
得られた染毛直後の毛束の色合いを、色差計(コニカミノルタセンシング社製、色彩色差計CR-400)を用いてCIE表色系(L*,a*,b*)で計測し、染色前の色合いとの差を下記式により求めて染色性ΔE*とした。ΔE*が大きいほど染色性が優れていることを示す。
【0104】
【数1】
【0105】
〔式中、L*0、a*0及びb*0は、それぞれ染色前の毛束のL*、a*及びb*の値を示し、L*1、a*1及びb*1は、それぞれ染色直後のL*、a*及びb*の値を示す。〕
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
〔酸性処理堅牢性(酸性処理による色変化)〕
染毛剤組成物をヤギ毛1gの毛束に浴比(剤:ヤギ毛)=1:1(質量比)で塗布し、40℃で20分放置した後、約40℃の水ですすいだ。その後、表1に示すシャンプーで洗浄後、すすいだ。次いで、表2に示すリンスを塗布した後、約40℃の水ですすぎ、タオルで拭き、ドライヤーで乾燥させた。
得られたヤギ毛を浴比(イオン交換水:ヤギ毛)=1:1(質量比)に調整したイオン交換水に30秒間浸した。その後、市販の酸性シャンプー(花王株式会社製、アジエンスシャンプー;pH3.3)を浴比(剤:ヤギ毛)=1:1(質量比)で塗布し、40℃で5分放置した後、約40℃の水ですすぎ、更に市販の酸性リンス(花王株式会社製、アジエンスリンス;pH3.3)を塗布し、浴比(剤:ヤギ毛)=1:1(質量比)で塗布し、40℃で5分放置した後、約40℃の水ですすぎ、タオルで拭き、ドライヤーで乾燥させた。
酸性処理前と後の毛束を色差計(コニカミノルタセンシング社製色彩色差計CR-400)を用いてCIE表色系(L*,a*,b*)で計測し、数式1に従って色相角hを求め、更に数式2に従って酸性処理前と後の色相角の差Δh0を求めた。Δh0が小さいほど酸性処理堅牢性に優れていることを示す。
【0109】
【数2】
【0110】
【数3】
【0111】
〔式中、hro及びht0は、それぞれ酸性処理を施さないヤギ毛に対する染色直後のhの値、及び酸性処理を施したヤギ毛に対する染色直後のhの値を示す。〕
【0112】
〔染料溶解性〕
染毛剤組成物の染料溶解性の評価は、染毛剤組成物の調製時に次に示す基準に従って目視により確認した。
3:染料が容易に溶解し、沈殿物は存在しない
2:沈殿物は存在しないが、染料が溶解するまでに時間を要する
1:沈殿物が存在する
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
実施例9〜12
表5に示す組成からなる染毛剤組成物(二剤式染毛剤)の第1剤を下記の方法により調製した。また、第2剤を常法により調製した。表5に示す第1剤と第2剤とを1:1(質量比)で混合した染毛剤組成物を用いて、上記と同様に、染色性、すすぎ水の色味及び染料溶解性の評価を行った。評価結果を表5に併せて示す。
【0116】
〔第1剤の調製方法〕
水に成分(A)、2-アミノ-2-メチルプロパノール及びプロピレングリコールを配合した後、成分(B)を添加し、60℃で一定時間撹拌を行い水溶液1を調製した。次いで水溶液1の染料溶解性を確認した。また、別途、ラウレス硫酸ナトリウム、セテアリルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、及びオレイルアルコールを60℃で溶解させることで油相1を調製した。次いで水溶液1に油相1を配合し、一定時間撹拌を行った後、室温まで冷却した。次いでポリクオタニウム-22を添加し、一定時間撹拌を行うことで第1剤を得た。
【0117】
【表5】