特許第6859425号(P6859425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859425
(24)【登録日】2021年3月29日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】潤滑剤組成物および使用
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20210405BHJP
   C10M 101/02 20060101ALN20210405BHJP
   C10M 159/24 20060101ALN20210405BHJP
   C10M 135/10 20060101ALN20210405BHJP
   C10M 129/68 20060101ALN20210405BHJP
   C10M 137/02 20060101ALN20210405BHJP
   C10M 137/04 20060101ALN20210405BHJP
   C10M 145/26 20060101ALN20210405BHJP
   C10M 129/26 20060101ALN20210405BHJP
   C10M 129/10 20060101ALN20210405BHJP
   C10M 133/12 20060101ALN20210405BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20210405BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20210405BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20210405BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20210405BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20210405BHJP
   C10N 40/24 20060101ALN20210405BHJP
【FI】
   C10M169/04
   !C10M101/02
   !C10M159/24
   !C10M135/10
   !C10M129/68
   !C10M137/02
   !C10M137/04
   !C10M145/26
   !C10M129/26
   !C10M129/10
   !C10M133/12
   C10N10:02
   C10N10:04
   C10N20:02
   C10N30:00 Z
   C10N40:00 E
   C10N40:24 Z
【請求項の数】16
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2019-500780(P2019-500780)
(86)(22)【出願日】2017年7月12日
(65)【公表番号】特表2019-524926(P2019-524926A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2017000824
(87)【国際公開番号】WO2018010841
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2019年7月16日
(31)【優先権主張番号】16001544.2
(32)【優先日】2016年7月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518049119
【氏名又は名称】フックス ペトロルブ ソキエタス エウロペア
【氏名又は名称原語表記】FUCHS PETROLUB SE
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】アヒム レシュ
(72)【発明者】
【氏名】アグネス ファンダス
【審査官】 三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−213115(JP,A)
【文献】 特開2008−115304(JP,A)
【文献】 特開2002−363592(JP,A)
【文献】 特表2015−525827(JP,A)
【文献】 特開2016−102155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00−177/00
C10N 10/00− 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防食潤滑剤、洗浄潤滑剤および/または成形潤滑剤としての金属ストリップ上への塗布のための、冷間洗浄除去され得る潤滑剤組成物において、それぞれの場合に前記組成物の総重量に対して、
40℃での動粘度が異なる少なくとも2つのベース油の混合物を含む55〜80wt%のベース流体であって、前記少なくとも2つのベース油は、40℃での動粘度が3〜700mm/sである群Iおよび群IIのベース油から選択され、かつ、群IIIおよび群IVのベース油は除外されない、ベース流体と、
過塩基化されたスルホン酸Caおよび中性のスルホン酸Ca、過塩基化されたスルホン酸Naおよび中性のスルホン酸Na、ならびにそれらの混合物を含む群から選択される、3〜15wt%のスルホネートベースの腐食インヒビタと、
1〜20wt%のエステル成分と、
超高圧/耐摩耗添加剤としての0.5〜3wt%のリンキャリア成分であって、ジアルキルハイドロゲンホスファイト、オレイルアルコールエトキシレートホスフェート、ジメチルオクタデセニルホスホネートおよびトリアリールチオホスフェートを含む群から選択され、前記ジアルキルハイドロゲンホスファイトの各アルキル残基は、飽和または不飽和であり、14〜22個のC原子を有する、リンキャリア成分と
脂肪アルコールアルコキシレートである非イオン性界面活性剤、陰イオン界面活性剤または非イオン性および/もしくは陰イオン界面活性剤の混合物から選択される1〜15wt%の乳化剤と、
16〜22個のC原子を有するカルボン酸、もしくはトール油の不飽和脂肪酸の二量体化によって生成されるジカルボン酸であるダイマー酸、またはそれらの混合物から選択される0.05〜1wt%のカルボン酸成分と、
0.05〜1wt%のアミン系および/またはフェノール系抗酸化剤と、
パラフィンワックス、飽和および不飽和C16〜20脂肪酸の脂肪酸アミド、ならびにポリマー増粘剤を含む群から選択される0.5〜5wt%のワックスおよび/または増粘剤成分と
を含み、
前記組成物は、少なくとも1つの過塩基化されたスルホネートを含有し、
前記ベース流体の選択および/または組成により、前記組成物の40℃での動粘度は、5〜300mm/sの範囲で調整可能であることを特徴とする潤滑剤組成物。
【請求項2】
前記組成物の前記総重量に対して60〜70wt%のベース流体を含み40℃の動粘度は、洗浄潤滑剤について5〜25mm/s圧延機塗布腐食潤滑剤またはプレ潤滑油について20〜120mm/sおよび成形潤滑剤について60〜300mm/s範囲で調整されることを特徴とする、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
防食潤滑剤について、前記ベース流体は40℃の動粘度が700mm/sである第1のベース油および40℃の動粘度が40mm/sである第2のベース油を含ことを特徴とする、請求項1または2に記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
防食潤滑剤のための前記ベース流体中における前記第1のベース油の前記第2のベース油に対する重量比は、3:1〜4:1であり、かつ、前記40℃での動粘度は、100±10mm/sであることを特徴とする、請求項3に記載の潤滑剤組成物。
【請求項5】
前記スルホネートベースの腐食インヒビタとして、前記組成物は、
0.5〜5wt%の過塩基化されたスルホン酸Na、および/または
2〜10wt%の過塩基化されたスルホン酸Ca、ならびに任意に、加えて、
1〜5wt%の中性のスルホン酸Ca、および/または
1〜5wt%の中性のスルホン酸Na
を含み、但し、前記スルホネートベースの腐食インヒビタの重量割合の合計は、前記組成物の前記総重量の3〜15wt%を占めることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項6】
前記組成物の前記総重量に対して、
− 1〜5wt%の過塩基化されたスルホン酸Naおよび3〜5wt%の過塩基化されたスルホン酸Caまたは
− 1〜5wt%の過塩基化されたスルホン酸Naおよび3〜5wt%の過塩基化されたスルホン酸Ca、ならびに1〜5wt%の中性のスルホン酸Caまたは
− 3〜6wt%の過塩基化されたスルホン酸Naまたは
− 3〜10wt%の過塩基化されたスルホン酸Ca
含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項7】
加えて、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体およびアミンを含む群から選択される、前記組成物の前記総重量に対して0.05〜1.7wt%の少なくとも1つの更なるインヒビタ成分を含み、
前記組成物中の前記更なるインヒビタ成分は、0.05〜0.2wt%のトリアゾール0.1wt%のベンゾトリアゾールもしくはベンゾトリアゾール誘導体、および/または0.1〜1.5wt%のアミンから選択されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項8】
エステル成分として、前記組成物の前記総重量に対して10〜20wt%の脂肪酸エステルまたは1〜5wt%の羊毛脂エステルを含ことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項9】
超高圧/耐摩耗添加剤として、前記組成物の前記総重量に対して2wt%のリンキャリア成分を含ことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項10】
脂肪アルコールアルコキシレートである前記非イオン性界面活性剤は16〜18個のC原子を有する脂肪アルコールをベースとし、かつ2〜5モルのエトキシル化度を含み、およびそれらの混合物であり、および
− 前記陰イオン界面活性剤は、アルキルエーテルカルボン酸またはリン酸エステルあり、
各乳化剤成分の割合は、単独でまたは混合して、前記組成物の前記総重量に対して1〜5wt%となり、但し、乳化剤の総含有量は、15wt%以下であことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項11】
16〜22個のC原子を有する前記カルボン酸は、トール油脂肪酸、オレイン酸またはベヘン酸であことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項12】
前記アミン系抗酸化剤は、N−フェニルベンゼンアミンの2,4,4−トリメチルペンテンとの反応生成物であり、および
前記フェノール系抗酸化剤は、オクチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメートおよび/またはオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートから選択され、
前記組成物は、前記組成物の前記総重量に対して0.25wt%のアミン系抗酸化剤および0.25wt%のフェノール系抗酸化剤含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項13】
前記選択されるワックスおよび/または増粘剤成分は、パラフィンワックスであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項14】
防食潤滑剤またはプレ潤滑油としての金属ストリップ上への塗布のための、冷間洗浄除去され得る乾燥潤滑剤組成物において、それぞれの場合に前記組成物の総重量に対して、
35〜75℃の融点範囲を有し、かつポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールエステルエステルエトキシレート、カルボン酸エトキシレート、エーテルカルボン酸ならびにそのアルカリ性およびアルカリ土類石鹸、グリセリン脂肪酸エステルエトキシレートポリオールエステルエトキシレートソルビトールエステルエトキシレート、アルコールおよびそのエトキシレート、脂肪アルコールおよびそのエトキシレート、パラフィンワックス、飽和および不飽和C16〜20脂肪酸の脂肪酸アミドを含む群から選択される10〜90wt%のワックス成分と、
過塩基化されたスルホン酸Caおよび中性のスルホン酸Ca、過塩基化されたスルホン酸Naおよび中性のスルホン酸Na、ならびにそれらの混合物を含む群から選択される、3〜15wt%のスルホネートベースの腐食インヒビタと、
トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体およびアミンを含む群から選択される0.05〜1.7wt%の少なくとも1つの更なるインヒビタ成分と、
超高圧/耐摩耗添加剤としての0.5〜3wt%のリンキャリア成分であって、ジアルキルハイドロゲンホスファイト、オレイルアルコールエトキシレートホスフェート、ジメチルオクタデセニルホスホネートおよびトリアリールチオホスフェートを含む群から選択され、前記ジアルキルハイドロゲンホスファイトの各アルキル残基は、飽和または不飽和であり、14〜22個のC原子を有する、リンキャリア成分と
脂肪アルコールアルコキシレートである非イオン性界面活性剤もしくは陰イオン界面活性剤または非イオン性および/もしくは陰イオン界面活性剤の混合物から選択される0〜15wt%の乳化剤であって、前記乳化剤の添加は、前記ワックス成分が、ソルビタントリステアレートエトキシレートおよびソルビタンモノステアレートエトキシレートから選択されるソルビタンエステルエトキシレートを含む場合に省かれ得る、乳化剤と、
16〜22個のC原子を有するカルボン酸、もしくはトール油からの不飽和脂肪酸の二量体化によって生成されるジカルボン酸であるダイマー酸、またはそれらの混合物から選択される0.05〜1wt%のカルボン酸成分と、
0.05〜1wt%のアミン系および/またはフェノール系抗酸化剤と
を含み、
前記組成物は、少なくとも1つの過塩基化されたスルホネートを含有し、
前記ワックス成分の割合に応じて、40℃での動粘度が異なる少なくとも2つのベース油の混合物を含むベース流体であって、前記少なくとも2つのベース油は、40℃での動粘度が3〜700mm/sである群Iおよび群IIのベース油から選択され、かつ、群IIIおよび群IVのベース油は除外されない、前記組成物の100wt%への補足としてのベース流体の添加を含むことを特徴とする乾燥潤滑剤組成物。
【請求項15】
防食潤滑剤、洗浄潤滑剤および/または成形潤滑剤としての金属ストリップ上への塗布のための、請求項1〜14のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物の使用であって、前記組成物の前記塗布によって前記金属ストリップ上に形成されるフィルムTは、アルカリ性水性クリーナで前記金属ストリップから50℃未満の温度において冷間洗浄除去される、使用。
【請求項16】
前記アルカリ性水性クリーナの界面活性剤濃度は、前記金属ストリップのクリーニング除去中、前記潤滑剤組成物からの前記乳化剤の導入に従い、前記水性アルカリ性クリーナの界面活性成分が少ない量に一新される点で前記潤滑剤組成物の乳化剤含有量に対して調整される、請求項15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷間洗浄除去され得る潤滑剤組成物、乾燥潤滑剤組成物ならびに防食潤滑剤、洗浄潤滑剤および/または成形潤滑剤としての金属ストリップ上への塗布のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤は、金属加工において種々の役割を有する。圧延機では、金属ストリップ上に塗布されて、ローラとストリップとの間の摩擦条件に影響を及ぼして最適な回転結果をもたらす圧延油または圧延エマルジョンが用いられる。圧延油は、(金属およびツールに応じて)潤滑作用を向上させる添加剤、極性添加剤および無極性添加剤の粘度、存在および濃度の点で異なる。典型的な添加剤は、超高圧(EP)添加剤および耐摩耗添加剤、例えば硫黄キャリアまたはリンキャリア、ならびに腐食インヒビタ、例えばスルホネートである。
【0003】
圧延後、製鋼所(またはアルミニウムプラント)では、通常、保管および輸送中の腐食を防止するための防食剤が金属ストリップの表面上に塗布される。こうして、積み重ねられるかまたはコイル(ストリップコイル)に巻かれている金属ストリップの自己接着(autoadhesion)も防止される。作業前に、例えばプレスツールもしくはスタンピングツールまたは別の金属加工ツールにおいて、この防食剤は、洗浄油またはアルカリ性クリーナによって除去されて、例えば金属ストリップの成形中に摩擦を引き下げる引抜油またはスタンピング油が塗布されることによって作業が促進され、向上した成形結果が保証されるかまたは欠陥のある成形製品数が減少する。
【0004】
鋼およびアルミニウムのストリップまたはコイルのための防食剤として、ほとんど不水溶性の油または同様に不水溶性のワックス様の製品、いわゆるホットメルトが用いられる。
【0005】
金属加工プラントで用いられる洗浄油、引抜油、スタンピング油または他の成形油は、例えば、水性エマルジョン、水性合成溶液または中粘度〜高粘度の油剤であり得る。
【0006】
使用される全ての潤滑剤において、プロセス全体との適合性が満足のいくものであることが重要である。特に自動車分野では、要件が高く、支出および金属加工後の工程数を可能な限り少なく維持すると同時に、不合格品、例えば潤滑剤残留物に起因する仕上げ塗りの目に見える欠陥を最小にすることが求められる。鋼ストリップまたはアルミニウムストリップから製造されたプレス加工品の表面は、(任意に、従来の結合方法によるプレス加工品のアセンブリ後に)クリーニングされてから、その後の処理工程、例えばリン酸塩処理、不動態化および電気泳動的浸漬コーティングが実行される。クリーニングのために、通常、水性アルカリ性クリーナが使用され、これは、自動車ボディインホワイト(automotive body in white)の場合、好ましくは、以下で構成される二成分系で構成される:塩構造(ビルダー)成分および界面活性剤成分。クリーニング作用は、ほとんどの場合、50〜60℃の典型的な塗布温度での噴霧法/浸漬法によって実現される。
【0007】
純粋な防食剤に代わるものとして、製鋼所またはアルミニウムプラントにおいて、圧延された物品を仕上げるために圧延後にいわゆるプレ潤滑油が塗布され得る。
【0008】
プレ潤滑油は、防食油の特性を引抜油の潤滑作用と組み合わせた組成物である。防食剤のように、プレ潤滑油は、金属ストリップコイルの輸送および保管中の腐食および接着を防止するが、同時にプレスプラントにおいて引抜潤滑剤として機能する。プレ潤滑油の場合、特に自動車分野において、冷間ストリップ(cold strip)からボディインホワイトまで、個々のプロセスの全てとの優れた適合性が存在することも非常に重要である。プレ潤滑油が、生産工程における塗装を含む全ての加工工程(特に溶接、接着など)と適合性がある場合、プレスプラントで使用される潤滑剤(洗浄油、引抜油、スタンピング油または他の成形油)ならびに実行される作業工程の数および量のかなりの削減が可能になる。
【0009】
しかしながら、防食の低下に起因して、水性潤滑剤エマルジョンも同様に鋼およびアルミニウムのためのプレ潤滑油として適していない。
【0010】
米国特許第5021172A号明細書は、水性製剤と適合性のあるプレ潤滑油組成物を開示しており、0〜6%の酸化炭化水素ワックス、10〜30%のオレイン酸メチル、1〜5%の石油スルホン酸Na、0〜5%の石油スルホン酸Ca、0.1〜1%のジアルキルジチオリン酸亜鉛、0.05〜2%の抗酸化剤、0.5〜1.5%のオレイン酸およびバランスをとるためのナフテン油を含む。このプレ潤滑油組成物は、ホスフェートベースのクリーナ中で70℃において洗浄除去され得る。
【0011】
独国特許出願公開第2207504A1号明細書は、金属の冷間成形中に圧延油エマルジョンを水で形成するために提供される潤滑剤またはスリップ剤に関し、10〜18個の炭素原子を有する4〜8wt%の脂肪族脂肪酸アミドと組み合わせて、20〜60wt%の油、10〜30個の炭素原子を有する20〜59wt%の固形の脂肪族モノカルボン酸、2〜5個の炭素原子を有する1〜15wt%のアルカノールアミン、1〜15wt%の乳化剤、0.05〜2wt%の芳香族スルホネートおよびアルキル基中に8〜20個の炭素原子を有する2〜15wt%のモノアルキホスフェートまたはジアルキルホスフェート、ならびに任意に12〜22個の炭素原子を有する1〜5wt%の液体脂肪酸の組成物を含む。アルキル基中に8〜20個の炭素原子を有するモノアルキルホスフェートおよびジアルキルホスフェートの混合物を加えることにより、エマルジョンを生成するのに硬水を用いた場合の不溶性の塩の形成が低減される。
【0012】
欧州特許出願公開第0507449A1号明細書は、強塩基性および/または酸性条件下で可溶性である樹脂成分を5〜50wt%の範囲で含む、金属加工のための乾燥潤滑剤を開示している。乾燥潤滑剤は、金属石鹸、黒鉛、セラミックス、天然ワックスおよび合成ワックス、ガラス、脂肪酸ならびにそれらの混合物を更に含有し得る。乾燥潤滑剤は、鍛造潤滑剤であり、鍛造中に生じる煙および残渣油の量は、健康、環境および安全性にとっての不利益を回避するために低減されるべきである。これは、従来のクリーニング手順に抵抗する残留物が形成されないことを含む。残留物の不形成は、使用される樹脂成分が極性の高い官能基を有し、かつ組成物がギルソナイトフリーであるという点で達成される。温度が140°F(60℃)である塩基性クリーニング浴を含む多工程のクリーニング−リンス手順において、乾燥潤滑剤のクリーニング除去が可能である。
【0013】
「冷間」洗浄除去されると言われる乾燥プレ潤滑油潤滑剤(ホットメルト)が米国特許第5069806号明細書に開示されている。この潤滑剤(溶融された形態で鋼ストリップ上に塗布されることで、可撓性のある固形の潤滑膜が冷却後に得られる)は、49〜60℃(120〜140°F)の温度のアルカリ性溶液によって洗浄除去され得る。これは、脂肪アルコール、多価アルコールおよびC〜Cカルボン酸で形成される、実質的に飽和した80〜90wt%の精製エステルをベースとする。好ましくは、これは、水添タロートリグリセリド潤滑剤ベースである。更なる成分は、軟化剤としての4〜14wt%の部分的にエステル化された植物油(ヒマシ油)および芳香族ポリエーテル(芳香族C14〜C20アルコールの、アルコール1molあたり5〜15molのエチレンオキシドおよび10〜20molのプロピレンオキシドとの反応生成物)であり得る2〜6wt%の界面活性剤、ステアルアミドアルカノールアミド、イソステアルアミドアルカノールアミド、アスパラギン酸ジエステルおよびオレイン酸の混合物、イミダゾリンまたはそれらの混合物である。フィルム補強剤として0.1〜2wt%のエチレン−カルボン酸−コポリマーが使用される。任意に、潤滑剤は、追加的に、腐食インヒビタとして0.1〜3wt%の抗酸化剤、好ましくはヒンダードフェノール型を含有し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この先行技術に基づき、本発明の目的は、プレ潤滑油または防食油、成形油および/もしくは洗浄油として用いられ得る、金属ストリップ上への塗布のための、冷間洗浄除去され得る改善された潤滑剤組成物を提供することである。ここで、冷間洗浄除去は、例えば、室温での清浄浴槽内における、または清浄浴槽の追加の加熱なしでの、すなわち先行技術における49〜60℃の通常の温度をかなり下回る水性アルカリ性クリーナによる潤滑剤の除去として理解されるべきである。
【0015】
同時に、潤滑剤組成物は、腐食および金属ストリップの接着からの保護、成形プロセスについて満足のいく潤滑作用および全ての下流製造工程との適合性を示すべきである。更に、潤滑剤組成物は、金属ストリップ上への塗布後、安定したかつ同質のフィルムを形成し、製造および処理が安価であり、取扱いに関して単純であり、種々の鋼およびアルミニウムの品質に適しているべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、請求項1の特徴を有する潤滑剤組成物によって解決される。更なる実施形態が従属請求項において開示される。
【0017】
更に、この目的は、請求項13の特徴を有する乾燥潤滑剤組成物によって解決される。
【0018】
請求項14は、防食潤滑剤、洗浄潤滑剤および/または成形潤滑剤としての金属ストリップ上への塗布のための潤滑剤組成物の改善された使用を提供する目的を解決する。
【0019】
第1の実施形態における、本発明に従う潤滑剤組成物は、防食潤滑剤、洗浄潤滑剤および/または成形潤滑剤としての金属ストリップ、例えば鋼ストリップまたはアルミニウムストリップ上への塗布のために提供される。有利には、本発明に従う潤滑剤組成物は、冷間洗浄除去され得るため、形成されたシート金属部品の前処理においてクリーニング浴槽を加熱するための装置ならびにエネルギーおよびコストが節約され得る。
【0020】
防食潤滑剤、洗浄潤滑剤および/または成形潤滑剤としての金属ストリップ上への塗布のための、冷間洗浄除去され得る本発明に従う潤滑剤組成物は、それぞれの場合に組成物の総重量に対して、
少なくとも2つのベース油であって、40℃でのその動粘度に関して異なり、40℃の動粘度が3〜700mm/sである群Iおよび群IIのベース油から選択される少なくとも2つのベース油の混合物である50〜90wt%のベース流体であって、群IIIおよび群IVのベース油は、除外されない、ベース流体と、
3〜15wt%のスルホネートベースの腐食インヒビタと、
1〜20wt%のエステル成分と、
超高圧/耐摩耗添加剤としての、ジアルキルハイドロゲンホスファイトを含む群から選択される0.5〜3wt%のリンキャリア成分であって、各アルキル残基は、飽和また不飽和であり、かつ14〜22個のC原子のオレイルアルコールエトキシレートホスフェート、ジメチルオクタデセニルホスホネートおよびトリアリールチオホスフェートを含む、リンキャリア成分、または硫化炭化水素、ラード油由来の硫黄ポリマー、過塩基化されたチオホスホン酸Na、Sエステル、オレイン酸メチルエステルのSエステル、アミノジアルキルジチオホスフェート、エチルヘキシルジチオリン酸Znを含む群から選択される1〜10wt%の硫黄キャリア成分と、
非イオン性界面活性剤、陰イオン界面活性剤または非イオン性および/もしくは陰イオン界面活性剤の混合物から選択される1〜15wt%の乳化剤と、
16〜22個のC原子を有するカルボン酸、もしくはトール油の不飽和脂肪酸の二量体化によって生成されるジカルボン酸であるダイマー酸、またはそれらの混合物から選択される0.05〜1wt%のカルボン酸成分と、
0.05〜1wt%のアミン系および/またはフェノール系抗酸化剤と、
パラフィンワックス、ヒマシ油誘導体、飽和および不飽和C16〜20脂肪酸の脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミドである脂肪酸誘導体ならびにポリマー増粘剤を含む群から選択される0.5〜5wt%のワックス成分および/または増粘剤成分と
を含む。
【0021】
現在までの従来型と対照的に、本組成を有する潤滑剤は、実際に水性アルカリ性洗浄液で冷間洗浄除去され得、すなわち50℃をかなり下回る温度、特に室温で冷間洗浄除去され得る。
【0022】
好ましくは、潤滑剤組成物中のベース流体の割合は、組成物の総重量に対して55〜80wt%、特に好ましくは60〜70wt%となり得る。洗浄潤滑剤、圧延機塗布防食潤滑剤もしくはプレ潤滑油、または成形潤滑剤としての潤滑剤組成物の意図される塗布に応じて、ベース流体の選択および/または組成によって調整される種々の粘度が提供される。少なくとも2つのベース油であって、40℃でのその動粘度に関して異なり、40℃の動粘度が3〜700mm/sである群Iおよび群IIのベース油から主に選択される少なくとも2つのベース油の混合物ベース流体として使用されるため、所望の粘度が調整され得る。しかしながら、群IIIおよび群IVのベース油は、除外されない。粘度および互いに対する重量比に関して異なるベース油を選択することにより、組成物の40℃の動粘度は、5〜300mm/sの範囲で必要に応じて調整され得る。
【0023】
本発明に従う潤滑剤組成物は、作業プロセスにおいて、乳化する能力および潤滑作用と防食機能を組み合わせるプレ潤滑油潤滑剤として用いられ得る。防食潤滑剤として、本発明に従う組成物は、圧延機に用いられて保管および輸送中の金属ストリップを自己接着および腐食から保護する。任意に、更なる作業プラント、例えばプレスプラントにおいて、成形のための追加の潤滑剤を少なくとも所々に塗布することが必要とされ得る。この形成油潤滑剤または引抜油潤滑剤は、調整された粘度を有する本発明に従う組成物を含むこともできる。また、任意に必要とされる洗浄油は、変更された粘度を有する本発明に従う組成物であり得る。40℃の動粘度は、洗浄潤滑剤について5〜25mm/s、好ましくは8〜15mm/s、圧延機塗布防食剤またはプレ潤滑油について20〜120mm/s、好ましくは60〜100mm/s、および成形潤滑剤について60〜300mm/s、好ましくは130〜200mm/sの範囲で調整され得る。
【0024】
例えば、プレ潤滑油として用いるために、特に好ましい潤滑剤組成物のベース流体は、40℃の動粘度が700mm/sである第1のベース油および40℃の動粘度が40mm/sである第2のベース油を含み得る。100±10mm/sである40℃の動粘度を達成するために、ベース流体中における第1のベース油の第2のベース油に対する重量比は、3:1〜4:1に調整される。
【0025】
潤滑剤組成物のスルホネートベースの腐食インヒビタは、過塩基化されたスルホン酸Caおよび中性のスルホン酸Ca、過塩基化されたスルホン酸Naおよび中性のスルホン酸Na、ならびにそれらの混合物を含有する群から選択され、本発明に従う組成物は、少なくとも1つの過塩基化されたスルホネートを含有する。好ましくは、組成物は、0.5〜5wt%の過塩基化されたスルホン酸Naおよび/または2〜10wt%の過塩基化されたスルホン酸Caを含有し得る。任意に、本発明に従う組成物は、少なくとも1つの過塩基化されたスルホネートに加えて、1〜5wt%の中性のスルホン酸Caおよび/または1〜5wt%の中性のスルホン酸Naを含み得、これは、それぞれの場合、過塩基化されたスルホネートおよび任意に中性のスルホネートの重量割合が、合計で組成物の総重量に対して3〜15wt%のスルホネートベースの腐食インヒビタをもたらすことを条件とする。
【0026】
本発明に従う潤滑剤組成物にとって好ましいスルホネートの概念は、1〜5wt%の過塩基化されたスルホン酸Naおよび3〜5wt%の過塩基化されたスルホン酸Caを含む。特に好ましくは、組成物は、1.5wt%の過塩基化されたスルホン酸ナトリウムおよび3.5wt%の過塩基化されたスルホン酸カルシウムを腐食インヒビタとして含み得る。
【0027】
代替のスルホネートの概念は、1〜5wt%の過塩基化されたスルホン酸Naおよび3〜5wt%の過塩基化されたスルホン酸Caに加えて、1〜5wt%の中性のスルホン酸Caを提供する。好ましくは、このスルホネートの概念は、1.5wt%の過塩基化されたスルホン酸Na、3.5wt%の過塩基化されたスルホン酸Caおよび3wt%の中性のスルホン酸Caを含む。
【0028】
更に代替の組成物は、3〜6wt%、好ましくは4.6wt%の過塩基化されたスルホン酸Naのみ、または3〜10wt%、好ましくは5.2wt%の過塩基化されたスルホン酸Caのみを含む。
【0029】
特定の重量割合は、それぞれの場合に組成物の総重量に関する。
【0030】
更に、本発明に従う潤滑剤組成物は、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体およびアミンを含む群から選択される、組成物の総重量に対して0.05〜1.7wt%の少なくとも1つの更なるインヒビタ成分を含み得る。組成物中の更なるインヒビタ成分は、0.05〜0.2wt%のトリアゾール、好ましくは0.1wt%のベンゾトリアゾールもしくは水溶性ベンゾトリアゾール誘導体、および/または0.1〜1.5wt%のアミン、好ましくはトリアルカノールアミン、例えばトリエタノールアミンから選択され得る。
【0031】
潤滑剤組成物のエステル成分は、それぞれ組成物の総重量に対して10〜20wt%の脂肪酸エステルまたは1〜5wt%の羊毛脂エステルであり得る。好ましくは、本発明に従う組成物は、組成物の総重量に対して15wt%の脂肪酸エステルを含み得る。
【0032】
好ましい潤滑剤組成物は、超高圧/耐摩耗添加剤として、割合が組成物の総重量に対して特に2wt%となるリン成分を含む。リンキャリア成分は、ジアルキルハイドロゲンホスファイトであって、各アルキル残基は、飽和または不飽和であり、かつ14〜22個のC原子を含む、ジアルキルハイドロゲンホスファイト、例えばジオレイルハイドロゲンホスファイトである。
【0033】
水性クリーナによる改善されたクリーニング除去作用を確実にする乳化剤は、非イオン性界面活性剤、特に脂肪アルコールアルコキシレートから選択され得る。好ましい脂肪アルコールエトキシレートは、16〜18個のC原子を有する脂肪アルコールをベースとし、かつ2〜5モルのアルコキシル化度またはエトキシル化度を含む。また、例えばアルコキシル化度に関して異なる、様々な非イオン性界面活性剤または脂肪アルコールアルコキシレートの混合物が用いられ得る。また、プロポキシル化された脂肪アルコールまたはエトキシル化されかつプロポキシル化された混合脂肪アルコールが乳化剤として使用され得る。
【0034】
代替または追加の乳化剤として、陰イオン界面活性剤、例えばアルキルエーテルカルボン酸またはリン酸エステルが使用され得る。アルキルエーテルカルボン酸のうち、C14〜22脂肪アルコールポリエチレングリコールエーテルカルボン酸が好ましく、これは、飽和または不飽和であり得る。リン酸エステルとして、アルコキシル化された脂肪アルコールリン酸エステル、好ましくは16〜18個のC原子および例えば5モルのエトキシル化度を有する飽和脂肪アルコールまたは不飽和脂肪アルコールのリン酸エステルが考えられ得る。しかし、ここでも、逸脱したエトキシル化度を有する脂肪アルコール、またはプロポキシル化された脂肪アルコールもしくはプロポキシル化されかつエトキシル化された混合脂肪アルコールのリン酸エステルが考えられ得る。
【0035】
各乳化剤成分の割合は、単独でまたは混合して、乳化剤の総含有量が15wt%以下であることを条件として組成物の総重量に対してそれぞれ1〜5wt%となる。
【0036】
本発明に従う好ましい組成物は、乳化剤として、組成物の総重量に対して7.5wt%の脂肪アルコールアルコキシレート混合物を含み、脂肪アルコールアルコキシレート混合物は、特に、5モルのエトキシル化度を有する5wt%のC16〜18脂肪アルコールおよび2モルのエトキシル化度を有する2.5wt%のC16〜18脂肪アルコールで構成される。
【0037】
潤滑剤組成物のカルボン酸成分は、16〜22個のC原子を有する飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸、例えばトール油脂肪酸、オレイン酸およびベヘン酸、またはトール油からの不飽和脂肪酸の二量体化によって生成されるジカルボン酸であるダイマー酸で構成され得る。それらの混合物も考えられ得る。好ましい組成物は、組成物の総重量に対して0.5wt%のトール油脂肪酸を含み得る。脂肪酸含有量が高くかつ樹脂酸の含有量が低いトール油脂肪酸が好ましい。
【0038】
本発明に従う潤滑剤組成物中に含まれるアミン系抗酸化剤は、N−フェニルベンゼンアミンの2,4,4−トリメチルペンテン(Irganox(登録商標)L57)との反応生成物であり得る。フェノール系抗酸化剤は、例えば、オクチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(Irganox(登録商標)L135)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(IRGANOX(登録商標)L107)から選択され得る。好ましい組成物は、組成物の総重量に対して0.25wt%のアミン系抗酸化剤および0.25wt%のフェノール系抗酸化剤、好ましくはオクチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメートを含み得る。
【0039】
本発明に従う潤滑剤組成物のワックスおよび/または増粘剤成分は
− パラフィンワックス、
− ヒマシ油誘導体、特に水添ヒマシ油をベースとするチキソトロピック増粘剤、
− 脂肪酸誘導体、特にC16〜20の飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミド、例えば12−ヒドロキシステアリン酸メチル、ステアリン酸オクタデシルまたは精製オレイン酸アミド、
− ポリマー、例えばブロックポリマー、特にスチレンおよびエチレン/ブチレン(PS−PE/PB−PS)ならびに30%のPSをベースとする直鎖状トリブロックコポリマー、鉱油中のポリメタクリレートおよび低分子ポリイソブタン(Pib 1300)
から選択され得る。
【0040】
好ましい組成物は、ワックスおよび/または増粘剤成分として、64〜66℃の凝固点を有する3wt%のパラフィンワックスを含み得る。
【0041】
本発明に従う更なる組成物は、ホットメルトとも呼ばれる乾燥潤滑剤に関し、ベース流体の代わりにワックスが用いられる。ホットメルト組成物は、金属ストリップ上への塗布のための防食潤滑剤またはプレ潤滑油として加熱され、および任意に水性分散系として用いられ得るが、依然として本発明に従う組成物中で冷間クリーニング除去され得る。冷間洗浄除去され得る乾燥潤滑剤組成物は、それぞれの場合に組成物の総重量に対して、
35〜75℃の融点範囲を有し、かつポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールエステル、エステル、エステルエトキシレート、カルボン酸エトキシレート、エーテルカルボン酸ならびにそのアルカリ性およびアルカリ土類石鹸、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオールエステルおよびそのエトキシレート、ソルビトールエステルおよびそのエトキシレート、アルコールおよびそのエトキシレート、脂肪アルコールおよびそのエトキシレート、パラフィンワックス、ヒマシ油誘導体、飽和および不飽和C16〜20脂肪酸の脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミドから選択される脂肪酸誘導体を含む群から選択される10〜90wt%のワックス成分と、
3〜15wt%のスルホネートベースの腐食インヒビタと、
トリアゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾール誘導体およびアミンを含む群から選択される0.05〜1.7wt%の少なくとも1つの更なるインヒビタ成分と、
超高圧/耐摩耗添加剤としての、超高圧/耐摩耗添加剤としての、ジアルキルハイドロゲンホスファイトを含む群から選択される0.5〜3wt%のリンキャリア成分であって、各アルキル残基は、飽和または不飽和であり、かつ14〜22個のC原子のオレイルアルコールエトキシレートホスフェート、ジメチルオクタデセニルホスホネートおよびトリアリールチオホスフェートを含む、リンキャリア成分、または硫化炭化水素、ラード油由来の硫黄ポリマー、過塩基化されたチオホスホン酸Na、Sエステル、オレイン酸メチルエステルのSエステル、アミノジアルキルジチオホスフェート、エチルヘキシルジチオリン酸Znを含む群から選択される1〜10wt%の硫黄キャリア成分と、
非イオン性界面活性剤もしくは陰イオン界面活性剤または非イオン性および/もしくは陰イオン界面活性剤の混合物から選択される0〜15wt%の乳化剤であって、乳化剤の添加は、ワックス成分が、ソルビタントリステアレートエトキシレートおよびソルビタンモノステアレートエトキシレートから選択されるソルビタンエステルエトキシレートを含む場合に省かれ得る、乳化剤と、
16〜22個のC原子を有するカルボン酸、もしくはトール油の不飽和脂肪酸の二量体化によって生成されるジカルボン酸であるダイマー酸、またはそれらの混合物から選択される0.05〜1wt%のカルボン酸成分と、
0.05〜1wt%のアミン系および/またはフェノール系抗酸化剤と
を含む。
【0042】
ワックス成分の割合に応じて、ベース流体の添加は、任意に、組成物の100wt%への補足として必要とされ得る。これは、少なくとも2つのベース油であって、40℃でのその動粘度に関して異なり、40℃の動粘度が3〜700mm/sである群Iおよび群IIのベース油から選択される少なくとも2つのベース油の混合物であり、群IIIおよび群IVのベース油は、除外されない。
【0043】
ワックス成分は、35〜75℃、好ましくは40〜70℃の融点範囲を有し、かつポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールエステル、エステル、エステルエトキシレート、カルボン酸エトキシレートもしくはカルボン酸エーテルまたはそのアルカリ性およびアルカリ土類石鹸、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオールエステルもしくはソルビトールエステルまたはそれらのエトキシレート、アルコールもしくは脂肪アルコールまたはそれらのエトキシレートであり得るかまたはこれらを含み得る1つまたはいくつかの有機成分から選択される。
【0044】
例として、ポリエチレングリコール1500、2000および4000、ポリアルキレングリコールエステル、トリステアリン酸ソルビタン、ソルビタントリステアレートエトキシレート、モノステアリン酸ソルビタン、ソルビタンモノステアレートエトキシレート、ステアリルアルコール、ステアリルセチルアルコール、12−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸メチル、モノステアリン酸グリセロール、モノラウリン酸グリセロール、PEG1500モノステアレート、ペンタエリトリールテトラステアレートがある。
【0045】
また、上述のワックス成分の組合せ、例えばトリステアリン酸ソルビタンおよびソルビタントリステアレートエトキシレート(例えば、40:60の比率)またはモノステアリン酸ソルビタンおよびソルビタンモノステアレートエトキシレート(例えば、75:25の比率)が考えられ得る。しかしながら、上述のワックス成分の他の組合せも考えられ得る。
【0046】
それ自体が乳化作用を有する固形のワックス成分または増粘剤(例えば、上述のソルビタンエトキシレート)の場合、任意に、液体の乳化剤の添加が省かれ得る。
【0047】
乾燥潤滑剤組成物の一実施形態は、ワックス成分として、7.5wt%のトリステアリン酸ソルビタンおよび7.5wt%のソルビタントリステアレートエトキシレート(20 EO)の混合物が用いられ、および残りの成分が先に示されるように含有される、すなわち乳化剤が省かれ得ると定めることができる。ここで、ベース油は、組成物の100wt%に補充するために加えられる。
【0048】
ワックス成分は、本発明に従う上述の潤滑剤組成物の場合のように、
− パラフィンワックス、
− ヒマシ油誘導体、特に水添ヒマシ油をベースとするチキソトロピック増粘剤、
− 脂肪酸誘導体、特にC16〜20の飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸の脂肪酸エステルまたは脂肪酸アミド、例えば12−ヒドロキシステアリン酸メチル、ステアリン酸オクタデシルまたは精製オレイン酸アミド
から更に選択され得る。
【0049】
また、様々なワックス成分が混合されて所望の特性を乾燥潤滑剤組成物に与え得る。
【0050】
乾燥潤滑剤組成物の更なる実施形態において、更なる成分は、本発明に従う潤滑剤組成物の上述の本明細書に従って具体化され得る。
【0051】
本出願において、本発明に従う潤滑剤組成物は、防食潤滑剤、洗浄潤滑剤および/または成形潤滑剤ならびに防食潤滑剤またはプレ潤滑油としての乾燥潤滑剤組成物として記載される。防食剤またはプレ潤滑油および乾燥潤滑剤組成物として具体化される本発明に従う潤滑剤組成物は、圧延機において、およびプレスプラントにおける洗浄潤滑剤および成形潤滑剤に用いられる。防食剤またはプレ潤滑油、洗浄潤滑剤および成形潤滑剤は、そのような潤滑剤に関する同義的に使用される全ての用語を含むと理解されるべきである。防食剤は、例えば、防食油など、およびプレ潤滑油、例えば成形特性などを有する防食油と呼ばれ得る。また、乾燥潤滑剤は、ホットメルト、ホットメルト乾燥潤滑油、乾燥潤滑油または乾燥潤滑剤の用語によっても言及される。また、洗浄潤滑剤は、例えば、洗浄油または油状の洗浄流体とも呼ばれ、およびまた成形潤滑剤は、引抜油、成形潤滑剤、引抜潤滑剤、更なる潤滑剤などを意味する。
【0052】
同様に本発明に従う潤滑剤組成物の本発明に従う使用は、金防食潤滑剤、洗浄潤滑剤および/または成形潤滑剤としての属ストリップ上への塗布に関する。潤滑剤組成物は、金属ストリップ上への潤滑剤組成物の塗布によって形成されるフィルムをアルカリ性水性クリーナで冷間洗浄除去することを可能にする。本発明に従う潤滑剤組成物中に含まれる乳化剤は、金属ストリップのクリーニング中にアルカリ性水性クリーナ中に導入されるため、後者の界面活性剤成分は、少ない量に一新されなければならない。すなわち、アルカリ性水性クリーナの界面活性剤濃度は、潤滑剤組成物の乳化剤含有量に対して調整される。
【0053】
更なる実施形態およびそれらに関連する一部の利点は、以下の詳細な説明に基づき、図を参照して明らかとなりかつよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明に従う潤滑剤組成物でコーティングした試験シートの、25℃でのクリーニングの完了後の写真表示である。
図2】本発明に従う代替の潤滑剤組成物でコーティングした試験シートの、25℃でのクリーニングの完了後の写真表示である。
図3】本発明に従う更なる代替の潤滑剤組成物でコーティングした試験シートの、25℃でのクリーニングの完了後の写真表示である。
図4】本発明に従う更に別の代替の潤滑剤組成物でコーティングした試験シートの、25℃でのクリーニングの完了後の写真表示である。
図5】先行技術の潤滑剤組成物でコーティングした試験シートの、25℃でのクリーニングの完了後の写真表示である。
図6】先行技術の潤滑剤組成物でコーティングした試験シート(左)および本発明に従う潤滑剤組成物でコーティングした試験シート(右)の表示の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明に従う潤滑剤組成物は、主に自動車のボディインホワイトプロセスにおける防食油および成形潤滑剤ならびに洗浄油の製品範囲に関する。自動車のボディインホワイトプロセスは、製鋼所またはアルミニウムプラントにおける金属シート上への防食油またはプレ潤滑油の塗布から始まり、陰極的浸漬コーティング(CDC)によるベースコートの塗布で終わる。標的製品に応じて、プレ潤滑油または防食油、洗浄油および引抜油がこれに関連して用いられる。CDC前に全ての油がアルカリ性水性クリーナ系によって除去され、その目的のために、現在、最大でおよそ55℃の温度が必要とされる。
【0056】
本発明に従う潤滑剤組成物がプレ潤滑油または防食油、洗浄油および引抜油として用いられる場合、これらは、低いクリーニング温度でも金属シート(例えば、自動車のボディインホワイト)から完全に除去されるため、クリーナ浴の加熱に起因するコストおよびエネルギーが節約される。
【0057】
本発明に従う潤滑剤組成物にクリーニング活性成分として用いられる乳化剤は、油の主要な特性(製品のタイプに応じて、これは、防食、潤滑作用および/または洗浄作用である)との関連において、特に非イオン性界面活性剤を用いる場合に妨げとならない。更に、使用される乳化剤は、その後の加工工程(とりわけ、ボディインホワイトの接着、溶接、陰極的浸漬コーティング)との適合性に関して要求を満たす。
【0058】
更に、本発明に従う潤滑剤組成物は、製鋼所またはアルミニウムプラントにおける塗布能力に関する要件を満たす。一般的な塗布のタイプは、静電噴霧であるが、他の塗布でも機能し、例えば従来の噴霧が使用され得る。これに適した組成物は、40℃での動粘度を20〜120mm/sの範囲で示す。噴霧について、含まれるワックス/増粘剤を完全に溶解するために50〜60℃への軽加熱(light heating)が必要とされ得る。他の塗布形態(例えば、ロールコータもしくは類似のコーティング装置によるもの、または組成物が洗浄油、成形油もしくは引抜油として設計されている場合)について、組成物は、異なる粘度範囲で調整され得、塗布に加熱が必要とされない。任意に、本発明に従う潤滑剤組成物は、水性分散系としても塗布され得る。通常、成形油の塗布は、噴霧により、またはあまり頻繁ではないがロールコータにより行われう。他方では、フェルトロール、絞りロールおよび/またはゴムロールが洗浄油を塗布するのに使用される。
【0059】
適切に調整された粘度において、本発明に従う組成物は、金属ストリップ上の均一な薄層として、腐食潤滑剤またはプレ潤滑油として0.5〜2.5μmの範囲、好ましくはおよそ1μm、成形潤滑剤として1〜10μmの範囲、好ましくはおよそ2μm、および洗浄潤滑剤として1〜5μmの範囲、好ましくは0.5〜1μmで塗布され得、かつ含まれるワックス/増粘剤に起因して流亡しない。様々な組成物で形成される層の総厚さは、好ましくは、1〜5μmの範囲、特に好ましくはおよそ2μmの量である。したがって、本発明に従う組成物は、保管および輸送中の鋼およびアルミニウムの防食を実現するだけでなく、成形中の潤滑剤としても作用する。成形作用後の結合方法、例えば溶接、接着、クリンプまたはクリンチは、クリーニングなしで、すなわち潤滑剤組成物が付着したまま実行され得る。なぜなら、これは、ほとんどまたは全ての確立されているボディインホワイト接着剤、例えば高強度の建築接着剤またはシーリング接着剤と適合性があるからである。
【0060】
リン酸塩処理および塗装前に、潤滑剤組成物は、浸漬/噴霧浴においてアルカリ性水性クリーナによって除去される。潤滑剤残留物に起因する塗料コートの損傷を回避するために完全な除去が重要である。
【0061】
クリーニングされるシート金属部品から潤滑剤組成物が除去されることに起因して、潤滑剤組成物中に含まれる乳化剤は、クリーニング浴槽中に移されるため、その中での界面活性剤または乳化剤の濃度が増大する。なぜなら、クリーニング浴槽は、リサイクルおよび再循環されるからである。これらの成分の増大は、クリーニングプロセスでの対応する考慮なしでは結果として破損に至ることになるため、防食加工油によって導入される乳化剤の量は、クリーニング浴槽に投入する場合に注意しなければならない。この点で、界面活性剤成分は、対応してより少ない量に一新されなければならない。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
代替の組成物は、主に腐食インヒビタとして用いられるスルホネートの概念に関して変動する。規模は小さいが、ベース流体を形成するベース油混合物も、粘度を所望の範囲で調整するために変動し得る。
【0065】
第1の特に好ましい潤滑剤組成物は、過塩基化されたスルホン酸Naおよびスルホン酸Caのみを含むが、代替の組成物では、過塩基化されたスルホネートおよび中性のスルホネートが含まれ得る。
【0066】
【表3】
【0067】
表3および表4は、過塩基化されたスルホン酸Naまたは過塩基化されたスルホン酸Caのみを含有する代替の更なる組成物をそれぞれ示す。ここでは、他の成分はまた、表1のものに対応する。
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
本発明に従う組成物は、例として提供される特に好ましい組成物に限られるべきでないことを強調する。
【0071】
組成物は、組成物のある特性を変更するように特許請求の範囲内で変えられ得ることが当業者に明らかである。上述の成分および特許請求される範囲内での例の代替形態も容易に考えられ得る。
【0072】
例えば、表1〜表4で一覧にされる、ベース流体を形成する2つのベース油の代わりに他の群Iおよび群IIの油が考えられ得、これらは、逸脱した動粘度を有し得る(特に、組成物の動粘度(40℃)が、特許請求される8〜200mm/sの範囲内で100mm/s超から逸脱して調整される場合)。
【0073】
【表6】
【0074】
スルホネート成分に関して、Calcinate(商標)OTS(Chemtura Corp.Petroleum Additives、Middlebury、CT、USA)も過塩基化されたスルホン酸Caとして用いられ得る。中性スルホン酸Naとして、例えばPetronate(登録商標)H(Sonneborn、Amsterdam、The Netherlands)が用いられ得る。
【0075】
ベンゾトリアゾールを別として、水溶性ベンゼン誘導体、例えばIrgamet 42(Ciba Spezialitaetenchemie、Basel、Switzerland)またはトリエタノールアミンは、特許請求される境界内でインヒビタ成分として使用され得る。
【0076】
【表7】
【0077】
【表8】
【0078】
好ましい非イオン性界面活性剤に加えて、陰イオン界面活性剤、例えばアルキルエーテルカルボン酸、例えばAkypo RCP 105(Kao Chemicals Europe、Barcelona、Spain)またはリン酸エステル、例えばRhodafac Pa 35(Rhodia Novecare、Courbevoie、France)も用いられ得る。
【0079】
純粋なオレイン酸、ダイマー酸(例えばPripol 1022(Croda、Nettetal、DE))またはベヘン酸(Prifrac 2989(Croda、Nettetal、DE))もカルボン酸として考えられ得る。
【0080】
代替のフェノール系抗酸化剤として、例えばブチル化ヒドロキシトルエンまたはIrganox(登録商標)L 107(BASF、Ludwigshafen、DE)がある。
【0081】
【表9】
【0082】
自動車のボディインホワイトプロセスにおける金属シートのための防食潤滑剤、洗浄潤滑剤および/または成形潤滑剤の除去は、現在まで、ほとんどの場合、アルカリ性水性媒体によって55℃のクリーニング温度で実行されてきた。本発明に従う潤滑剤組成物は、熱せられないクリーナ系についても完全な除去を達成することができる。プロセス条件およびポンプ輸送によって導入されるエネルギーに起因して、室温を僅かに上回って温度が調整されると予想される。本発明に従う4つの例示的な組成物および先行技術の比較組成物について以下に記載されるクリーニング試験をラボで25℃において実行した。
【0083】
製鋼所およびプレスプラントで塗布された防食油および成形油の解放手順について、VDA(German Association of the Automotive Industry)試験シート230−213(2008)が通常使用される。その中の第5.10章に記載されているVDAモデルクリーナによる方法「Examination of Removability(Washability)」は、実際に結果について疑う余地がないと考えられる。
【0084】
この試験方法では、油を塗布されたサンプル金属シートが、18リットルの容量および17リットル/分の所定の容量流の所定の試験浴コンテナ中に導入される。所定の試験時間の中断後、金属シートが取り出されて、定義されたせん断運動で清水タンク内において30秒間リンスされる。
【0085】
清水タンクから取り出された後、直ちに金属シートの濡れが評価される。金属シート全体にわたって膠着した水膜が潤滑剤の完全な除去性に対応する。
【0086】
以下で記載される試験について、25℃±1℃のクリーニング温度および3分のクリーニング期間を調整し、先行技術に従い、各試験シート上に塗布される油フィルム厚または各試験シートに加わる重量を1.3±0.2g/mに設定した。試験シートとして、Q−Panel社、Saarbrueckenの予め切られた試験シート(0.8×102×152mm;DC 04、タイプR−46、ダルマット仕上げ鋼)を更なる前処理なしで使用した。クリーナ系は、試験クリーナVDA 230−213塩構造体(Henkel社、Heidelberg)および界面活性剤(同様にHenkel、Heidelberg)を含んだ。20±2℃の温度および30秒のリンス期間を冷間リンス浴のために調整した。
【0087】
本発明に従う潤滑剤組成物および比較組成物の塗布は、各組成物の対応するn−ヘプタン溶液中に試験シートを浸漬することによって行われた。溶媒の完全な蒸発後に必要なフィルム重量を得た。
【0088】
【表10】
【0089】
【表11】
【0090】
【表12】
【0091】
【表13】
【0092】
先行技術に従う比較組成物として、Fuchs Schmierstoffe GmbH社、Mannheim、GermanyのAnticorit PL 3802 39 Sを選択した。比較に用いた製品Anticorit PL 3802−39 Sは、成形特性を有する防食油(いわゆるプレ潤滑油)の現行の技術を表す。これは、鋼業界において、特にボディインホワイトのための自動車鋼のために1996年以降広く用いられてきた。先行技術のこの比較組成物は、現行の基準に従って除去性の容易さによって特徴付けられる。
【0093】
図1図2図3および図4は、コーティングされた試験シートの、清水リンスタンクから取り出した直後の、先に記載したクリーニング手順の完了後の写真表示をそれぞれ示し、ナンバリングに従って変異体1、2、3および4に従う本発明に従う例示的な潤滑剤組成物を示す。4つの全てが、金属シートの全体にわたって膠着した水膜、したがって金属シートの完全な濡れを示しており、これは、潤滑剤の完全な除去を意味している。本冷間温度範囲でのそのような良好な洗浄性は、現在までの先行技術の潤滑剤では実現され得ない。
【0094】
例えば、図5の写真表示において、比較組成物でコーティングして、本発明に従う潤滑剤組成物を有する試験シートと同じ手順に曝した金属シート上には水膜が膠着しておらず、明らかに濡れていない領域および流亡効果(潤滑剤の除去が不完全になる場合にもたらされる)を示していることが明らかに分かる。
【0095】
したがって、本発明に従う潤滑剤組成物は、冷間洗浄性をかなり向上させることが可能であり、これは、特に図6における表示の比較図で明らかに分かる。図6では、先行技術の比較組成物でコーティングされ、25℃でのクリーニングおよび清水リンス後、除去されてない潤滑剤残留物によって引き起こされる明らかに濡れていない領域を示す試験シートが左に見られ得る一方、本発明に従う組成物でコーティングされ、これが25℃でのクリーニングによって完全に除去された完全に濡れた試験シートが右に示されている。したがって、本発明に従う組成物は、クリーニングに必要なエネルギー消費に関してかなりの向上を実現する。場合により、クリーナ浴の加熱は、有利には、環境条件に応じて完全に省かれることもあり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6