特許第6859428号(P6859428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6859428-TRPA1の活性抑制剤 図000017
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859428
(24)【登録日】2021年3月29日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】TRPA1の活性抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20210405BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20210405BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20210405BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20210405BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20210405BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20210405BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   A61K8/34
   A61Q5/00
   A61Q15/00
   A61Q19/00
   A61K31/045
   A61P17/00
   A61P43/00 111
   A61P43/00ZNA
【請求項の数】8
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2019-509206(P2019-509206)
(86)(22)【出願日】2018年3月13日
(86)【国際出願番号】JP2018009696
(87)【国際公開番号】WO2018180460
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年8月29日
(31)【優先権主張番号】特願2017-68027(P2017-68027)
(32)【優先日】2017年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(73)【特許権者】
【識別番号】000169466
【氏名又は名称】高砂香料工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】高石 雅之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 郁尚
(72)【発明者】
【氏名】志水 弘典
(72)【発明者】
【氏名】作山 秀
(72)【発明者】
【氏名】石田 賢哉
(72)【発明者】
【氏名】丸山 賢次
【審査官】 山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−079233(JP,A)
【文献】 特開2014−177473(JP,A)
【文献】 特開2012−062304(JP,A)
【文献】 特開2010−155992(JP,A)
【文献】 LETIZIA.C.S. et al.,Arbanol,Food and Chemical Toxicology,2000年,Vol.38,Supplement 3,s11-s12
【文献】 岡本 裕也ほか,パラベンフリー防腐剤の開発と展望,フレグランスジャーナル,2011年 2月15日,第39巻,第2号,p.22-29
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 31/045
A61P 17/00
A61P 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TRPA1アゴニストがTRPA1に結合して当該TRPA1が活性化して発現されるTRPA1の活性を抑制する活性抑制剤であって、式(I):
【化1】
〔式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、メチル基又は式(II):
−O−R−OH (II)
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキレン基を示す)
で表される基を示す。ただし、R、R、R及びRのうちの少なくとも1つの基は式(II)で表される基である〕
で表される化合物を含有することを特徴とするTRPA1の活性抑制剤。
【請求項2】
前記式(II)で表される基において、Rが置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基である請求項1に記載のTRPA1の活性抑制剤。
【請求項3】
TRPA1アゴニストがTRPA1に結合して当該TRPA1が活性化して発現されるTRPA1の活性を抑制する活性抑制剤であって、式(III):
【化2】
で表される化合物を含有することを特徴とするTRPA1の活性抑制剤。
【請求項4】
TRPA1アゴニストがTRPA1に結合して当該TRPA1が活性化して発現されるTRPA1の活性を抑制する活性抑制方法であって、式(I):
【化3】
〔式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、メチル基又は式(II):
−O−R−OH (II)
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキレン基を示す)
で表される基を示す。ただし、R、R、R及びRのうちの少なくとも1つの基は式(II)で表される基である〕
で表される化合物をTRPA1と接触させることを特徴とするTRPA1の活性抑制方法。
【請求項5】
前記式(II)で表される基において、Rが置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基である請求項4に記載のTRPA1の活性抑制方法。
【請求項6】
前記式(I)で表される化合物が式(III):
【化4】
で表される化合物である請求項4又は5に記載のTRPA1の活性抑制方法。
【請求項7】
TRPA1を活性化する成分が配合された外用剤であって、前記成分がメントール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、アンモニア、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、アリルイソチオシアネート、メチルパラベン、アリシン、イシリン、過酸化水素、ブラジキニン、アクロレイン、シトラール、オイゲノール及びシンナムアルデヒドからなる群より選ばれた少なくとも1種の成分であり、前記成分によるTRPA1の活性化を抑制する有効成分として請求項1〜3のいずれかに記載のTRPA1の活性抑制剤を含有することを特徴とする外用剤。
【請求項8】
TRPA1アゴニストによるTRPA1の活性化に起因する刺激感を緩和する刺激感緩和剤であって、TRPA1の活性化に起因する刺激感を緩和する有効成分として請求項1〜3のいずれかに記載のTRPA1の活性抑制剤を含有することを特徴とする刺激感緩和剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TRPA1の活性抑制剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、TRPA1の活性抑制剤、TRPA1の活性抑制方法、外用剤及び刺激感緩和剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚外用剤、頭髪外用剤等の外用剤には、例えば、清涼化剤、パラベン類、アルカリ剤等が配合されている。これらの清涼化剤、パラベン類及びアルカリ剤は、一過性受容体電位チャネルの1つであるTRPA1を活性化し、活性化されたTRPA1を介して不快な刺激を引き起こすことが、本発明者らによって見出されている(例えば、特許文献1〜5参照)。しかし、近年、使用者の安全意識の高まりから、不快な刺激を与えないか、又は不快な刺激が弱い外用剤が好まれる傾向にある。
【0003】
また、TRPA1の活性を抑制する種々の化合物が、本発明者らによって見出されている(特許文献4及び5参照)。しかし、これらの化合物は、独特の臭いを有するため、これらの化合物を外用剤等に配合する場合、他の成分による臭いのマスキング等の臭い対策が望まれることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−79528号公報
【特許文献2】特開2009−82053号公報
【特許文献3】特開2009−225733号公報
【特許文献4】特開2012−62304号公報
【特許文献5】特開2014−65690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、臭いが弱く、TRPA1の活性を効果的に抑制するTRPA1の活性抑制剤及びTRPA1の活性抑制方法、皮膚に対する刺激が弱い外用剤並びに刺激感を効果的に緩和することができる刺激緩和剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は
(1)TRPA1アゴニストがTRPA1に結合して当該TRPA1が活性化して発現されるTRPA1の活性を抑制する活性抑制剤であって、式(I):
【0007】
【化1】
【0008】
〔式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、メチル基又は式(II):
−O−R−OH (II)
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキレン基を示す)
で表される基を示す。ただし、R、R、R及びRのうちの少なくとも1つの基は式(II)で表される基である〕
で表される化合物を含有することを特徴とするTRPA1の活性抑制剤、
(2)前記式(II)で表される基において、Rが置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基である前記(1)に記載のTRPA1の活性抑制剤、
(3)TRPA1アゴニストがTRPA1に結合して当該TRPA1が活性化して発現されるTRPA1の活性を抑制する活性抑制剤であって、式(III):
【0009】
【化2】
【0010】
で表される化合物を含有することを特徴とするTRPA1の活性抑制剤、
(4)TRPA1アゴニストがTRPA1に結合して当該TRPA1が活性化して発現されるTRPA1の活性を抑制する活性抑制方法であって、式(I):
【0011】
【化3】
【0012】
〔式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、メチル基又は式(II):
−O−R−OH (II)
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキレン基を示す)
で表される基を示す。ただし、R、R、R及びRのうちの少なくとも1つの基は式(II)で表される基である〕
で表される化合物をTRPA1と接触させることを特徴とするTRPA1の活性抑制方法、
(5)前記式(II)で表される基において、Rが置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基である前記(4)に記載のTRPA1の活性抑制方法、
(6)前記式(I)で表される化合物が式(III):
【0013】
【化4】
【0014】
で表される化合物である前記(4)又は(5)に記載のTRPA1の活性抑制方法、
(7)TRPA1を活性化する成分が配合された外用剤であって、前記成分がメントール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、アンモニア、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、アリルイソチオシアネート、メチルパラベン、アリシン、イシリン、過酸化水素、ブラジキニン、アクロレイン、シトラール、オイゲノール及びシンナムアルデヒドからなる群より選ばれた少なくとも1種の成分であり、前記成分によるTRPA1の活性化を抑制する有効成分として前記(1)〜(3)のいずれかに記載のTRPA1の活性抑制剤を含有することを特徴とする外用剤、並びに
(8)TRPA1アゴニストによるTRPA1の活性化に起因する刺激感を緩和する刺激感緩和剤であって、TRPA1の活性化に起因する刺激感を緩和する有効成分として前記(1)〜(3)のいずれかに記載のTRPA1の活性抑制剤を含有することを特徴とする刺激感緩和剤
に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のTRPA1の活性抑制剤及びTRPA1の活性抑制方法は、臭いが弱く、TRPA1の活性を効果的に抑制するという優れた効果を奏する。また、本発明の外用剤は、皮膚に対する不快な刺激が弱いという優れた効果を奏する。さらに、本発明の刺激感緩和剤は、刺激感を効果的に緩和することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】試験例1において、被験試料の種類とTRPA1活性抑制率との関係を調べた結果を示すグラフである。
図2】試験例2において、被験試料の種類とTRPM8活性促進度との関係を調べた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.TRPA1の活性抑制剤
本発明のTRPA1の活性抑制剤(以下、「活性抑制剤」という)は、TRPA1の活性を抑制する活性抑制剤であって、式(I):
【0018】
【化5】
【0019】
〔式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又はメチル基、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、メチル基又は式(II):
−O−R−OH (II)
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキレン基を示す)
で表される基を示す。ただし、R、R、R及びRのうちの少なくとも1つの基は式(II)で表される基である〕
で表される化合物を含有することを特徴とする。
【0020】
式(I)で表される化合物は、臭いが弱く、TRPA1アゴニストによるTRPA1の活性化を抑制してTRPA1の活性を抑制する。したがって、本発明の活性抑制剤は、式(I)で表される化合物を含有しているので、当該活性抑制剤をTRPA1と接触させることにより、TRPA1の活性を抑制することができる。
【0021】
式(I)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基である。また、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基又は式(II)で表される基を示す。ただし、R、R、R及びRのうちの少なくとも1つの基は、式(II)で表される基である。なお、R〜Rで置換されたシクロヘキサン環上の炭素は、不斉炭素になる場合があるが、式(I)で表される化合物の立体構造は、特に限定されるものではなく、R体、S体及びR体とS体との混合物のいずれでもよい。
【0022】
式(II)において、Rは、置換基を有していてもよいアルキレン基である。Rは、TRPA1の活性に対する抑制作用(以下、「TRPA1活性抑制作用」ともいう)を十分に発現させるとともに、本発明のTRPA1の活性抑制剤をヒトに用いる場合において、ヒトの皮膚に対する十分な親和性を確保する観点から、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基であることが好ましい。
【0023】
前記アルキレン基の炭素数は、TRPA1活性抑制作用を十分に発現させる観点から、1以上が好ましく、より好ましくは2以上である。また、アルキレン基の炭素数は、当該活性抑制剤をヒトに用いる場合において、ヒトの皮膚に対する十分な親和性を確保する観点から、6以下が好ましく、より好ましくは4以下である。
【0024】
炭素数が2以上のアルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。ヒトの皮膚への浸透性を向上させる観点から、炭素数が2以上のアルキレン基は、直鎖を有することが好ましい。また、前記アルキレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、ビニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;フェニル基、キシリル基等の炭素数6〜12のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜12のアラルキル基;3−クロロプロピル基等の炭素数1〜4のハロゲン化アルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0025】
式(I)で表される化合物のなかでは、特に臭いが弱く、より効果的にTRPA1の活性を抑制することができることから、式(I)において、R、R及びRがメチル基であり、Rが−O−CH−CH−OHである化合物、すなわち式(III):
【0026】
【化6】
【0027】
で表される化合物が好ましい。式(III)で表される化合物は、2−イソボルニルオキシエタノールとも称され、商品名:セダノール エキストラ(Cedanol Extra、CAS番号:7070−15−7)として商業的に容易に入手することができる化合物である。
【0028】
式(I)で表される化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよく、ラセミ混合物であってもよい。
【0029】
式(I)で表される化合物を製造する方法は、式(I)で表される化合物の種類等によって異なることから一概には決定することができないので、式(I)で表される化合物の種類に応じて適宜選択することが好ましい。前記方法としては、例えば、植物の抽出物、藍藻類等の代謝産物等から式(I)で表される化合物を単離する製造方法、式(I)で表される化合物を化学合成する製造方法等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。2−イソボルニルオキシエタノールは、パラトルエンスルホン酸、硫酸、塩酸、酸性イオン交換樹脂等の酸触媒下において、カンフェンにエチレングリコールを反応させ、常法にて後処理を行った後、精密蒸留により単離すること等によって製造することができる。
【0030】
本発明の活性抑制剤における式(I)で表される化合物の含有率は、式(I)で表される化合物の種類、本発明の活性抑制剤の用途等によって異なることから、一概には決定することができないので、式(I)で表される化合物の種類、本発明の活性抑制剤の用途等に応じて適宜設定することが好ましい。本発明の活性抑制剤における式(I)で表される化合物の含有率は、通常、TRPA1活性抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、ヒトの皮膚に対する十分な新和性を確保する観点から、100質量%以下である。
【0031】
本発明の活性抑制剤は、本発明の目的が妨げられない範囲内で、例えば、水、pH調整剤、キレート化剤、安定化剤等の他の成分を含有していてもよい。なお、本発明の活性抑制剤が他の成分を含有する場合、本発明の目的が妨げられない範囲で、本発明の活性抑制剤中において、式(I)で表される化合物と他の成分とが複合体を形成していてもよい。
【0032】
本発明の活性抑制剤は、その含有量等次第では、皮膚における冷覚に関与するTRPM8の活性を促進する作用(以下、「TRPM8活性促進作用」ともいう)を有する場合がある。このように、本発明の活性抑制剤は、その含有量等次第でTRPM8活性促進作用を有することから、皮膚に対して冷感を付与することができる。したがって、本発明の活性抑制剤は、TRPA1の活性化に起因する不快な刺激を抑制する効果と、皮膚に冷感を付与する効果とを併せて発現する場合がある。
【0033】
また、本発明の活性抑制剤によれば、皮膚における不快な刺激感との関連性があるTRPA1の活性を抑制することから、皮膚における不快な刺激を抑制することができる。したがって、本発明の活性抑制剤は、TRPA1の活性化に起因する刺激感を緩和する刺激感緩和剤として用いることができる。
【0034】
前記TRPA1は、刺激受容体としての機能を発現する一過性受容体電位チャネル(TRPチャネル)の1つである。前記TRPA1のアミノ酸配列は、配列番号:2(GenBankアクセッション番号NM_007332)に示される。なお、本発明においては、TRPA1は、配列番号:2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの活性と同等の活性(以下、「TRPA1活性」という)を示すものであれば、配列番号:2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドの変異体であってもよい。前記変異体としては、(A)配列番号:2に示される配列において、1又は数個のアミノ酸残基の置換、欠失又は挿入を有し、前記TRPA1活性を示すポリペプチド、(B)配列番号:2に示される配列に対する配列同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、前記TRPA1活性を示すポリペプチド等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、前記(A)において、前記「1個又は数個」とは、1〜30個であるが、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜3個、特に好ましくは1個又は2個をいう。また、「配列同一性」は、配列番号:2に示されるアミノ酸配列(参照配列)に対して、評価対象のアミノ酸配列(クエリー配列)を、デフォルトの条件〔Expect threshold:10、word size:3、Gap Costs(Existence 11、Extension 1)及びMatrix:BLSUM62〕でBLASTアルゴリズムに基づくPROTEIN BLASTを用いてアライメントして算出された値をいう。前記(B)において、配列同一性は、前記TRPA1活性を示す範囲であればよく、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは100%である。
【0035】
前記TRPA1活性としては、例えば、細胞におけるイオン流束の調節能、細胞における膜電位の調節能等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。細胞におけるイオン流束の調節能としては、例えば、細胞外から細胞内への陽イオンの輸送能等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。また、細胞における膜電位の調節能としては、例えば、電流の発生能等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのTRPA1活性は、TRPA1アゴニストがTRPA1に結合して当該TRPA1が活性化することによって発現される。前記陽イオンとしては、例えば、カルシウムイオン、ナトリウムイオン等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0036】
前記TRPA1アゴニストとしては、例えば、メントール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、アルカリ剤(例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、水酸化カリウム等)、アリルイソチオシアネート、メチルパラベン、アリシン、イシリン、過酸化水素、ブラジキニン、アクロレイン、香油成分(例えば、シトラール、オイゲノール、シンナムアルデヒド等)等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0037】
本発明の活性抑制剤が有するTRPA1活性抑制作用は、例えば、TRPA1を発現する細胞(以下、「TRPA1発現細胞」という)内におけるカルシウムイオン濃度、前記TRPA1発現細胞内における電流等に基づいて評価することができる。
【0038】
TRPA1発現細胞内におけるカルシウムイオン濃度を用いる場合、前記TRPA1活性抑制作用は、例えば、
(A1) TRPA1発現細胞と被験物質(活性抑制剤)とTRPA1アゴニストとを接触させ、前記TRPA1発現細胞内におけるカルシウムイオン濃度〔「カルシウムイオン濃度(A)」という〕を測定するステップ、
(A2) TRPA1発現細胞とTRPA1アゴニストとを接触させ、前記TRPA1発現細胞内におけるカルシウムイオン濃度〔「カルシウムイオン濃度(B)」という〕を測定するステップ、及び
(A3) 前記ステップ(A1)で得られたカルシウムイオン濃度(A)と前記ステップ(A2)で得られたカルシウムイオン濃度(B)とを比較するステップ
を行うことにより評価することができる(「評価法A」という)。前記ステップ(A3)において、カルシウムイオン濃度(B)と比べてカルシウムイオン濃度(A)が減少している場合、当該被験物質は、TRPA1活性抑制作用を有すると評価することができる。また、前記カルシウムイオン濃度(A)とカルシウムイオン濃度(B)との間の差が大きいほど、当該被験物質は、高いTRPA1活性抑制作用を有すると評価することができる。
【0039】
前記カルシウムイオン濃度は、例えば、カルシウムキレート化剤に基づく蛍光試薬(以下、「蛍光カルシウム指示薬」ともいう)をTRPA1発現細胞に導入し、当該細胞内のカルシウムイオンに前記蛍光カルシウム指示薬を結合させ、カルシウムイオンと結合した蛍光カルシウム指示薬の蛍光強度を調べる方法等によって測定することができる。前記蛍光カルシウム指示薬としては、カルシウムイオンと結合し、蛍光カルシウム指示薬の量によってその蛍光特性が変化するのであればよく、例えば、FURA 2、FURA 2−AM、Fluo−3、Fluo−4等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0040】
TRPA1発現細胞内における電流を用いる場合、前記TRPA1活性抑制作用は、例えば、
(B1) TRPA1発現細胞と被験物質(活性抑制剤)とTRPA1アゴニストとを接触させ、前記TRPA1発現細胞内における一定電位下での電流〔「電流(A)」という〕を測定するステップ、
(B2) TRPA1発現細胞とTRPA1アゴニストとを接触させ、前記TRPA1発現細胞内における前記ステップ(B1)に用いられた電位と同じ電位下での電流〔「電流(B)」という〕を測定するステップ、及び
(B3) 前記ステップ(B1)で得られた電流(A)と前記ステップ(B2)で得られた電流(B)とを比較するステップ
を行うことにより評価することができる(「評価法B」という)。前記ステップ(B3)において、電流(B)と比べて電流(A)が小さい場合、当該被験物質は、TRPA1活性抑制作用を有すると評価することができる。また、前記電流(A)と電流(B)との間の差が大きいほど、当該被験物質は、高いTRPA1活性抑制作用を有すると評価することができる。前記電流は、例えば、パッチクランプ法等によって測定することができる。
【0041】
2.TRPA1の活性抑制方法
式(I)で表される化合物によれば、TRPA1の活性を抑制することができる。本発明のTRPA1の活性抑制方法(以下、「活性抑制方法」という)は、TRPA1の活性を抑制する活性抑制方法であって、式(I)で表される化合物をTRPA1と接触させることを特徴とする。
【0042】
本発明の活性抑制方法によれば、式(I)で表される化合物が用いられているので、例えば、ヒトの皮膚に存在する感覚神経に含まれるTRPA1、口腔等の粘膜下に存在する感覚神経に含まれるTRPA1等の活性を効果的に抑制することができる。
【0043】
式(I)で表される化合物のなかでは、より効果的にTRPA1の活性を抑制することができ、しかも臭いが弱いことから、式(I)において、R、R及びRがメチル基であり、Rが−O−CH−CH−OHである化合物、すなわち式(III)で表される化合物(2−イソボルニルオキシエタノール)が好ましい。
【0044】
式(I)で表される化合物とTRPA1との接触は、TRPA1を含む部位、例えば、皮膚を構成する細胞等に式(I)で表される化合物を供給することによって行うことができる。
【0045】
前記TRPA1と接触させる式(I)で表される化合物の量は、本発明の活性抑制方法の適用対象等によって異なることから、一概には決定することができないので、本発明の活性抑制方法の適用対象等に応じて適宜設定することが好ましい。前記TRPA1と接触させる式(I)で表される化合物の量は、例えば、本発明の活性抑制方法の適用対象が皮膚に存在する感覚神経に含まれるTRPA1である場合、通常、TRPA1活性抑制作用を十分に発現させる観点から、皮膚10cmあたり、好ましくは10μg以上、より好ましくは100μg以上であり、皮膚への負荷を抑制する観点から、好ましくは100mg以下、より好ましくは10mg以下である。
【0046】
本発明の活性抑制方法によるTRPA1活性抑制作用は、前記活性抑制剤によるTRPA1活性抑制作用の評価と同様の手法によって評価することができる。
【0047】
本発明の活性抑制方法によれば、皮膚における不快な刺激感との関連性があるTRPA1の活性を抑制することができる。したがって、例えば、皮膚と接触したときにTRPA1の活性化に起因する不快な刺激を与える可能性がある成分を含む外用剤を使用するときに、式(I)で表される化合物と前記外用剤とを併用して当該活性抑制方法を行うことにより、皮膚における細胞に含まれるTRPA1の活性を抑制し、TRPA1の活性化に起因する不快な刺激を抑制することができる。したがって、本発明の活性抑制方法は、敏感肌を有するヒトが、TRPA1の活性化に起因する不快な刺激を与える可能性がある成分を含む外用剤を使用する際に適用するのに好適である。
【0048】
3.外用剤
本発明の外用剤は、1つの側面では、TRPA1を活性化する成分が配合された外用剤であって、前記成分によるTRPA1の活性化を抑制する有効成分として前記TRPA1の活性抑制剤を含有することを特徴とする(以下、「実施態様1の外用剤」ともいう)。前記TRPA1の活性抑制剤によれば、皮膚における不快な刺激感との関連性があるTRPA1の活性を抑制することから、TRPA1の活性化に起因する皮膚における不快な刺激を抑制することができる。したがって、前記実施態様1の外用剤は、前記TRPA1の活性抑制剤を含有しているので、当該外用剤に配合された前記TRPA1を活性化する成分による不快な刺激等のTRPA1の活性化に起因する不快な刺激を低減することができる。前記実施態様1の外用剤は、好ましくは敏感肌用外用剤である。
【0049】
本明細書において、「敏感肌」とは、皮膚のバリア機能が低下しており、平均的な肌では反応しない物質、刺激等に対しても過敏に反応し、肌のかゆみ、肌のかさつき等の状態が生じやすい傾向がある肌をいう。
【0050】
また、本明細書において、「TRPA1を活性化する成分」とは、TRPA1アゴニストのうち、外用剤に用いることができる成分をいう。かかるTRPA1を活性化する成分としては、例えば、前記評価法Aと同様の操作を行ったときに、ステップ(A3)において、カルシウムイオン濃度(B)と比べ、カルシウムイオン濃度(A)が増加していることを示す成分、前記評価法Bを行ったときに、ステップ(B3)において、電流(B)と比べ、電流(A)が大きいことを示す成分等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記TRPA1を活性化する成分としては、例えば、メントール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、アルカリ剤(例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、水酸化カリウム等)、アリルイソチオシアネート、メチルパラベン、アリシン、イシリン、過酸化水素、ブラジキニン、アクロレイン、香油成分(例えば、シトラール、オイゲノール、シンナムアルデヒド等)等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0051】
前記実施態様1の外用剤中の前記活性抑制剤に含まれる式(I)で表される化合物のなかでは、より効果的にTRPA1の活性を抑制することができ、しかも臭いが弱いことから、式(I)において、R、R及びRがメチル基であり、Rが−O−CH−CH−OHである化合物、すなわち式(III)で表される化合物(2−イソボルニルオキシエタノール)が好ましい。
【0052】
前記実施態様1の外用剤における前記活性抑制剤の含有率は、前記TRPA1を活性化する成分の種類及びその量、前記TRPA1活性抑制剤の種類、外用剤の用途等によって異なることから、一概には決定することができないので、前記TRPA1を活性化する成分の種類及びその量、前記TRPA1活性抑制剤の種類、外用剤の用途等に応じて適宜設定することが好ましい。通常、前記実施態様1の外用剤における前記活性抑制剤の含有率は、実施態様1の外用剤における式(I)で表される化合物の含有率が、前記TRPA1を活性化する成分による不快な刺激を抑制する観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.08質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上となり、皮膚に対する負荷を抑制する観点から、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下となるように調整されることが望ましい。
【0053】
前記TRPA1を活性化する成分に対する前記活性抑制剤の量は、前記TRPA1を活性化する成分の種類及びその量、前記TRPA1活性抑制剤の種類、外用剤の用途等によって異なることから、一概には決定することができないので、前記TRPA1を活性化する成分の種類及びその量、前記TRPA1活性抑制剤の種類、外用剤の用途等に応じて適宜設定することが好ましい。通常、前記TRPA1を活性化する成分に対する前記活性抑制剤の量は、前記TRPA1を活性化する成分100質量部あたりの式(I)に示される化合物の量が、前記TRPA1を活性化する成分による不快な刺激を抑制する観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上となり、前記TRPA1を活性化する成分が有する所望の作用を適度に発現させる観点から、好ましくは500質量部以下、より好ましくは200質量部以下となるように調整されることが望ましい。
【0054】
前記実施態様1の外用剤には、前記「TRPA1を活性化する成分」の他に、本発明の目的が妨げられない範囲で、例えば、TRPA1を活性化する成分以外の高級アルコール、ロウ、炭化水素油、脂肪酸、油脂、エステル油、シリコーン油等の油剤;陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤;TRPA1を活性化する成分以外の多価アルコール、糖、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体等の保湿剤;増粘剤、酸化防止剤、キレート剤、TRPA1を活性化する成分以外のpH調整剤、TRPA1を活性化する成分以外の香料、色素、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン、アミノ酸、TRPA1を活性化する成分以外の防腐剤、水等の成分が配合されていてもよい。
【0055】
なお、前記活性抑制剤に含まれる式(I)で表される化合物が、2−イソボルニルオキシエタノールである場合、前記活性抑制剤は、TRPA1の活性化に起因する不快な刺激を抑制し、しかもヒトの皮膚において、TRPM8を活性化に起因する清涼感を与えることができる。したがって、2−イソボルニルオキシエタノールを含有する活性抑制剤は、前記実施態様1の外用剤において、メントール等のTRPA1を活性化する成分の代わりに清涼化剤として用いることもできる。
【0056】
前記実施態様1の外用剤の剤形は、外用剤の用途等に応じて適宜選択することができる。外用剤の剤形としては、例えば、ローション、クリーム、フォーム、乳液、ジェル、パック、粉剤、エアゾール剤、貼付剤等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0057】
前記実施態様1の外用剤には、皮膚に直接適用される化粧料等の皮膚外用剤、皮膚に接触することがある頭髪外用剤等が包含される。
【0058】
前記皮膚外用剤としては、例えば、ボディーローション、デオドラント化粧料(例えば、デオドラントローション、デオドラントジェル、デオドラントスプレー、デオドラントロールオン、デオドラントペーパー等)、化粧水、乳液、スキンケアクリーム、トニック、スティック化粧料、リップ、皮膚脱色剤(ボディーブリーチング剤)、洗浄料(例えば、ボディーシャンプー、クレンジング剤、洗顔剤、固形石鹸等)、シート化粧料(例えば、拭き取り用シート、シートパック剤等)、貼付剤(例えば、パップ剤等)、髭剃り用化粧料(例えば、シェービングジェル等)等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0059】
また、前記頭髪外用剤としては、例えば、洗髪用化粧料(例えば、シャンプー、リンス等)、育毛剤、ヘアカラー、ヘアブリーチ、パーマ液、ヘアスタイリング剤(例えば、ヘアトニック等)等が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0060】
以上説明したように、前記実施態様1の外用剤は、ヒトの皮膚に対する不快な刺激を低減することができることから、不快な刺激を感じやすい敏感肌用の外用剤として有用である。
【0061】
本発明の外用剤は、他の側面では、メントール、エタノール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、アルカリ剤、アリルイソチオシアネート、メチルパラベン、アリシン、イシリン、過酸化水素、ブラジキニン、アクロレイン、シトラール、オイゲノール及びシンナムアルデヒドからなる群より選ばれた少なくとも1種の成分が配合された外用剤であって、前記成分による刺激を抑制する有効成分として式(I)で表される化合物を含有し、式(I)で表される化合物の含有率が0.01〜8質量%であることを特徴とする(以下、「実施態様2の外用剤」ともいう)。前記実施態様2の外用剤によれば、式(I)で表される化合物を含有しているので、外用剤に配合された前記成分による刺激を低減することができる。したがって、前記実施態様2の外用剤は、前記実施態様1の外用剤と同様に、敏感肌用外用剤として用いることができる。
【0062】
前記実施態様2の外用剤に含まれる式(I)で表される化合物のなかでは、前記成分による刺激をより効果的に抑制することができ、しかも特に臭いが弱いことから、式(I)において、R、R及びRがメチル基であり、Rが−O−CH−CH−OHである化合物、すなわち式(III)で表される化合物(2−イソボルニルオキシエタノール)が好ましい。
【0063】
前記実施態様2の外用剤における式(I)で表される化合物の含有率は、前記成分による刺激に対する抑制作用を十分に発現させる観点から、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、皮膚に対する負荷を抑制する観点から、8質量%以下、好ましくは5質量%以下である。
【0064】
前記成分100質量部あたりの式(I)で表される化合物の量は、前記成分の種類及びその量、式(I)で表される化合物の種類、外用剤の用途等によって異なることから、一概には決定することができないので、前記成分の種類及びその量、式(I)で表される化合物の種類、外用剤の用途等に応じて適宜設定することが好ましい。通常、前記成分100質量部あたりの式(I)で表される化合物の量は、前記成分による刺激を抑制する観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、前記成分が有する所望の作用を適度に発現させる観点から、好ましくは500質量部以下、より好ましくは200質量部以下であることが望ましい。
【0065】
前記実施態様2の外用剤には、前記成分の他に、本発明の目的が妨げられない範囲で、例えば、高級アルコール、ロウ、炭化水素油、脂肪酸、油脂、エステル油、シリコーン油等の油剤;陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤;多価アルコール、糖、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体等の保湿剤;増粘剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、色素、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン、アミノ酸、防腐剤、水等の成分が配合されていてもよい。
【0066】
前記実施態様2の外用剤の剤形は、前記実施態様1の外用剤と同様である。前記実施態様2の外用剤には、前記実施態様1の外用剤と同様に、皮膚に直接適用される化粧料等の皮膚外用剤、皮膚に接触することがある頭髪外用剤等が包含される。
【0067】
以上説明したように、前記実施態様2の外用剤は、前記成分によるヒトの皮膚に対する刺激を低減することができることから、刺激を感じやすい敏感肌用の外用剤として有用である。
【0068】
4.刺激感緩和剤
本発明の活性抑制剤によれば、皮膚における不快な刺激感との関連性があるTRPA1の活性を抑制することから、皮膚における不快な刺激を抑制することができる。したがって、本発明の活性抑制剤は、TRPA1の活性化に起因する刺激感の緩和に用いることができる。
【0069】
本発明の刺激感緩和剤は、TRPA1の活性化に起因する刺激感を緩和する刺激感緩和剤であって、TRPA1の活性化に起因する刺激感を緩和する有効成分として前記TRPA1の活性抑制剤を含有することを特徴とする。本発明の刺激感緩和剤は、前記TRPA1の活性抑制剤を含有しているので、TRPA1の活性化に起因する刺激感を緩和することができる。
【0070】
本発明の刺激感緩和剤における前記TRPA1の活性抑制剤の含有率は、前記TRPA1を活性化する成分の種類及びその量、前記TRPA1の活性抑制剤の種類、刺激感緩和剤の用途等によって異なることから、一概には決定することができないので、前記TRPA1を活性化する成分の種類及びその量、前記TRPA1の活性抑制剤の種類、刺激感緩和剤の用途等に応じて適宜設定することが好ましい。通常、本発明の刺激感緩和剤における前記活性抑制剤の含有率は、本発明の刺激感緩和剤における式(I)で表される化合物の含有率が、前記TRPA1の活性化に起因する刺激感を緩和する観点から、好ましくは、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、ヒトの皮膚に対する十分な新和性を確保する観点から、100質量%以下である。
【0071】
本発明の刺激感緩和剤には、本発明の目的が妨げられない範囲で、例えば、高級アルコール、ロウ、炭化水素油、脂肪酸、油脂、エステル油、シリコーン油等の油剤;陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤;多価アルコール、糖、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸誘導体等の保湿剤;増粘剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、色素、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン、アミノ酸、防腐剤、水等の成分が配合されていてもよい。
【実施例】
【0072】
以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0073】
実施例1
2−イソボルニルオキシエタノール〔高砂香料(株)製、商品名:セダノール、CAS番号:7070−15−7〕をその濃度が1mMとなるように25℃で溶媒A〔組成:140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2mM塩化カルシウム、10mMグルコース及び10mMヘペス塩酸緩衝液(pH7.4)〕に溶解させ、TRPA1活性抑制剤を得た。
【0074】
参考例1
ボルネオール〔和光純薬工業(株)製〕をその濃度が1mMとなるように25℃で溶媒A〔組成:140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2mM塩化カルシウム、10mMグルコース及び10mMヘペス塩酸緩衝液(pH7.4)〕に溶解させ、試料を得た。
【0075】
参考例2
参考例1において、ボルネオールを用いる代わりに、1,8−シネオールを用いたことを除き、参考例1と同様に操作を行い、試料を得た。
【0076】
比較例1
グリセリンをその濃度が5mMとなるように25℃で溶媒A〔組成:140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2mM塩化カルシウム、10mMグルコース及び10mMヘペス塩酸緩衝液(pH7.4)〕に溶解させ、試料を得た。
【0077】
調製例1(TRPA1発現細胞の調製)
ヒトTRPA1をコードするcDNA〔配列番号:1(GenBankアクセッション番号:NM_007332)に示される塩基配列の63位〜3888位のポリヌクレオチド〕を、哺乳動物細胞用ベクター〔インビトロジェン社製、商品名:pcDNA3.1(+)〕のクローニングサイトに挿入し、ヒトTRPA1発現ベクターを得た。得られたヒトTRPA1発現ベクター1μgと、遺伝子導入用試薬〔インビトロジェン社製、商品名:PLUS Reagent(プラスリージェント)、カタログ番号:11514−015〕6μLとを混合し、混合物Iを得た。また、遺伝子導入用カチオン性脂質〔インビトロジェン社製、商品名:リポフェクタミン(登録商標)、カタログ番号:18324−012〕4μLと、血清使用量低減培地〔インビトロジェン社製、商品名:OPTI−MEM(登録商標)I Reduced−Serum Medium(カタログ番号:11058021)〕200μLとを混合し、混合物IIを得た。
【0078】
また、5体積%二酸化炭素雰囲気中、37℃に維持された直径35mmのシャーレ上の10質量%ウシ胎児血清(FBS)含有ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中において、5×10細胞のHEK293細胞を70%のコンフルエンシーになるまで培養した。
【0079】
得られた細胞培養物に、前記混合物Iと混合物IIとを添加することにより、HEK293細胞に前記ヒトTRPA1発現ベクターを導入し、TRPA1発現細胞を得た。
【0080】
調製例2(TRPM8発現細胞の製造)
ヒトTRPM8をコードするcDNA〔配列番号:3(GenBankアクセッション番号:NM_024080)に示される塩基配列の41位〜3355位のポリヌクレオチド〕を、哺乳動物細胞用ベクター〔インビトロジェン社製、商品名:pcDNA3.1(+)〕のクローニングサイトに挿入し、ヒトTRPM8発現ベクターを得た。得られたヒトTRPM8発現ベクター1μgと、遺伝子導入用試薬〔インビトロジェン社製、商品名:PLUS Reagent(プラスリージェント)、カタログ番号:11514−015〕6μLとを混合し、混合物IIIを得た。また、調製例1と同様に、遺伝子導入用カチオン性脂質〔インビトロジェン社製、商品名:リポフェクタミン(登録商標)、カタログ番号:18324−012〕4μLと、血清使用量低減培地〔インビトロジェン社製、商品名:OPTI−MEM(登録商標)I Reduced−Serum Medium(カタログ番号:11058021)〕200μLとを混合し、混合物IIを得た。
【0081】
また、5体積%二酸化炭素雰囲気中、37℃に維持された直径35mmのシャーレ上の10質量%FBS含有DMEM培地中において、5×10細胞のHEK293細胞を70%のコンフルエンシーになるまで培養した。
【0082】
得られた細胞培養物に、前記混合物IIIと混合物IIとを添加することにより、HEK293細胞に前記ヒトTRPM8発現ベクターを導入し、TRPM8発現細胞を得た。
【0083】
試験例1
調製例1で得られたTRPA1発現細胞を、細胞内カルシウムイオン測定用試薬であるFURA 2−AM(インビトロジェン社製)を最終濃度5μMで含む10質量%FBS含有DMEM培地中、室温で60分間インキュベーションすることにより、前記TRPA1発現細胞にFURA 2−AMを導入し、FURA 2−AM導入TRPA1発現細胞を得た。
【0084】
得られたFURA 2−AM導入TRPA1発現細胞を循環定温チャンバー付蛍光測定装置〔浜松ホトニクス(株)製、商品名:ARGUS−50〕の各チャンバーに入れた。その後、チャンバー中のFURA 2−AM導入TRPA1発現細胞を、溶媒A〔組成:140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2mM塩化カルシウム、10mMグルコース及び10mMヘペス塩酸緩衝液(pH7.4)〕で洗浄した。
【0085】
つぎに、洗浄後のFURA 2−AM導入TRPA1発現細胞が入ったチャンバーにTRPA1のアゴニストを入れ、FURA 2−AM導入TRPA1発現細胞と前記アゴニストとを混合した。なお、前記アゴニストとして、1mMメントールを含有する溶媒Aを用いた。
【0086】
その後、チャンバーにおいて、励起波長340nmにおけるTRPA1発現細胞に導入され、かつ細胞内のカルシウムイオンに結合したFURA 2−AMに基づく蛍光の強度A及び励起波長380nmにおけるTRPA1発現細胞に導入されたFURA 2−AMに基づく蛍光の強度Bを測定した。
【0087】
測定された蛍光の強度A及びBを用い、Δ蛍光強度比アゴニストを算出した。前記Δ蛍光強度比アゴニストは、式(IV):
【0088】
【数1】
【0089】
に基づいて算出した。なお、式(IV)において、蛍光強度340nmとして前記蛍光の強度Aを用い、蛍光強度380nmとして前記蛍光の強度Bを用いた。式(IV)において、対照は、溶媒Aである。
【0090】
また、前記アゴニストを単独で用いる代わりに、被験試料として、実施例1で得られたTRPA1活性抑制剤実施例1で得られたTRPA1活性抑制剤、参考例1で得られた試料、参考例2で得られた試料又は比較例1で得られた試料と、前記アゴニストとを混合して用いたことを除き、前記アゴニストを単独で用いた場合と同様の操作を行い、励起波長340nmにおけるTRPA1発現細胞に導入され、かつ細胞内のカルシウムイオンに結合したFURA 2−AMに基づく蛍光の強度C及び励起波長380nmにおけるTRPA1発現細胞に導入されたFURA 2−AMに基づく蛍光の強度Dを測定した。
【0091】
測定された蛍光の強度C及びDを用い、Δ蛍光強度比被験試料を算出した。前記Δ蛍光強度比被験試料は、式(V):
【0092】
【数2】
【0093】
に基づいて算出した。なお、式(V)において、蛍光強度340nmとして前記蛍光の強度Cを用い、蛍光強度380nmとして前記蛍光の強度Dを用いた。式(V)において、対照は、溶媒Aである。
【0094】
算出されたΔ蛍光強度比アゴニストとΔ蛍光強度比被験試料とから、TRPA1の活性に対する抑制率(TRPA1活性抑制率)を算出した。なお、TRPA1活性抑制率は、式(VI):
【0095】
【数3】
【0096】
に基づいて算出した。
【0097】
試験例1において、被験試料の種類とTRPA1活性抑制率との関係を調べた結果を図1に示す。図中、レーン1は被験試料として実施例1で得られたTRPA1活性抑制剤を用いたときのTRPA1活性抑制率、レーン2は被験試料として参考例1で得られた試料を用いたときのTRPA1活性抑制率、レーン3は被験試料として参考例2で得られた試料を用いたときのTRPA1活性抑制率、レーン4は被験試料として比較例1で得られた試料を用いたときのTRPA1活性抑制率を示す。
【0098】
図1に示された結果から、実施例1で得られたTRPA1活性抑制剤を用いたときのTRPA1活性抑制率(図1中、レーン1)は、約99%であることがわかる。また、参考例1で得られたTRPA1活性抑制剤を用いたときのTRPA1活性抑制率(図1中、レーン2)及び参考例2で得られたTRPA1活性抑制剤を用いたときのTRPA1活性抑制率(図1中、レーン3)は、それぞれ、約96%及び71%であることがわかる。一方、対照としてのグリセリンが含まれた比較例1で得られた試料を用いたときのTRPA1活性抑制率(図1中、レーン4)は、0%以下であることから、実施例1で得られた活性抑制剤に含まれる2−イソボルニルオキシエタノールは、ブロッカーとして働き、メントールによって引き起こされるTRPA1の活性化によって発現するTRPA1の活性を抑制することが示唆される。また、実施例1で得られた活性抑制剤に含まれる2−イソボルニルオキシエタノールは、ボルネオール及び1,8−シネオールと同様にTRPA1の活性を抑制することがわかる。
【0099】
また、式(I)で表される化合物として、2−イソボルニルオキシエタノール以外の式(I)で表される化合物を用いたときも、2−イソボルニルオキシエタノールを用いたときと同様の傾向が見られる。式(I)で表される化合物は、臭いが弱い化合物である。これらの結果から、式(I)で表される化合物は、臭いが弱く、TRPA1の活性を効果的に抑制することから、TRPA1の活性抑制剤として用いることができることがわかる。また、式(I)で表される化合物は、TRPA1を活性化する成分が配合された外用剤における前記成分によるTRPA1の活性化に起因する不快な刺激を抑制することができる。したがって、式(I)で表される化合物は、TRPA1を活性化する成分が配合された外用剤における有効成分として用いることができることがわかる。さらに、式(I)で表される化合物は、TRPA1の活性を効果的に抑制することから、TRPA1の活性化に起因する刺激感を効果的に緩和することができる。したがって、式(I)で表される化合物は、TRPA1の活性化に起因する刺激感を緩和する刺激感緩和剤の有効成分として用いることができることがわかる。
【0100】
試験例2
調製例2で得られたTRPM8発現細胞を、細胞内カルシウムイオン測定用試薬であるFURA 2−AM(インビトロジェン社製)を最終濃度5μMで含む10質量%FBS含有DMEM培地中、室温で60分間インキュベーションすることにより、前記TRPM8発現細胞にFURA 2−AMを導入し、FURA 2−AM導入TRPM8発現細胞を得た。
【0101】
得られたFURA 2−AM導入TRPM8発現細胞を循環定温チャンバー付蛍光測定装置〔浜松ホトニクス(株)製、商品名:ARGUS−50〕の各チャンバーに入れた。その後、チャンバー中のFURA 2−AM導入TRPM8発現細胞を、溶媒A〔組成:140mM塩化ナトリウム、5mM塩化カリウム、2mM塩化マグネシウム、2mM塩化カルシウム、10mMグルコース及び10mMヘペス塩酸緩衝液(pH7.4)〕で洗浄した。
【0102】
つぎに、洗浄後のFURA 2−AM導入TRPM8発現細胞が入ったチャンバーに、被験試料を入れ、FURA 2−AM導入TRPM8発現細胞と前記前記被験試料とを混合した。なお、前記被験試料として、2−イソボルニルオキシエタノールの濃度を0.5mMとしたことを除き実施例1と同様の操作を行うことにより調製したTRPA1活性抑制剤(0.5mM)、又はボルネオールの濃度を0.5mMとしたことを除き参考例1と同様の操作を行うことにより調製した試料(0.5mM)を用いた。
【0103】
その後、チャンバーにおいて、励起波長340nmにおけるTRPM8発現細胞に導入され、かつ細胞内のカルシウムイオンに結合したFURA 2−AMに基づく蛍光の強度E及び励起波長380nmにおけるTRPM8発現細胞に導入されたFURA 2−AMに基づく蛍光の強度Fを測定した。
【0104】
測定された蛍光の強度E及びFを用い、式(V)に基づいてΔ蛍光強度比被験試料を算出した。なお、式(V)において、蛍光強度340nmとして前記蛍光の強度Eを用い、蛍光強度380nmとして前記蛍光の強度Fを用いた。式(V)において、対照は、溶媒Aである。
【0105】
また、前記被験試料の代わりに、TRPM8のアゴニストを単独で用いたことを除き、前記被験試料を用いた場合と同様の操作を行い、励起波長340nmにおけるTRPM8発現細胞に導入され、かつ細胞内のカルシウムイオンに結合したFURA 2−AMに基づく蛍光の強度G及び励起波長380nmにおけるTRPM8発現細胞に導入されたFURA 2−AMに基づく蛍光の強度Hを測定した。なお、前記アゴニストとして、1mMメントールを含有する溶媒Aを用いた。
【0106】
測定された蛍光の強度G及びHを用い、式(IV)に基づいてΔ蛍光強度比アゴニストを算出した。なお、式(IV)において、蛍光強度340nmとして前記蛍光の強度Gを用い、蛍光強度380nmとして前記蛍光の強度Hを用いた。前記(IV)において、対照は、溶媒Aである。
【0107】
算出されたΔ蛍光強度比被験試料とΔ蛍光強度比アゴニストとから、アゴニストによるTRPM8の活性促進に対する被験試料によるTRPM8の活性促進の割合(以下、「TRPM8活性促進度」ともいう)を算出した。なお、前記TRPM8活性促進度は、式(VII):
TRPM8活性促進度
=Δ蛍光強度比被験試料/Δ蛍光強度比アゴニスト (VII)
に基づいて算出した。
【0108】
試験例2において、被験試料の種類とTRPM8活性促進度との関係を調べた結果を図2に示す。図中、レーン1は被験試料として実施例1で得られたTRPA1活性抑制剤を用いたときのTRPM8活性促進度、レーン2は被験試料として参考例1で得られた試料を用いたときのTRPM8活性促進度を示す。
【0109】
図2に示された結果から、実施例1で得られたTRPA1活性抑制剤を用いたときのTRPM8活性促進度(図2中、レーン1参照)は、約0.69であることがわかる。一方、参考例1で得られたTRPA1活性抑制剤を用いたときのTRPM8活性促進度(図2中、レーン2参照)は、約0.35であることがわかる。図1及び2に示された結果から、実施例1で得られたTRPA1活性抑制剤に含まれる2−イソボルニルオキシエタノールは、TRPA1活性抑制作用と、皮膚に冷刺激を与えるTRPM8の活性の促進作用(TRPM8活性促進作用)との両方を有しており、しかもボルネオールよりも高いTRPM8活性促進作用を有することがわかる。したがって、これらの結果から、実施例1で得られたTRPA1活性抑制剤は、TRPA1の活性化に起因する不快な刺激を抑制する効果と、皮膚に冷感を付与する効果とを併せて発現することがわかる。
【0110】
実施例2、3、比較例2及び3
エタノール、メントール、2−イソボルニルオキシエタノール及び精製水を、表1に示される組成となるように混合することにより、実施例2、3、比較例2及び3の試験用外用剤を得た。
【0111】
試験例3
皮膚外用剤が適用される被験者の頸部の耳下部を濡れタオルで拭き、皮脂汚れなどを除去した。つぎに、被験者を室温22±1℃及び湿度45±5%に保たれた評価室内で約10分間安静にさせた。その後、実施例2で得られた試験用外用剤750μLを浸み込ませた不織布〔三昭紙業(株)製、品番KP9560、縦3cm×横3cm〕を被験者の頸部の耳下部に貼り付けた。被験者の頸部の耳下部への不織布の貼り付けから1、3、5、7、及び10分間経過時における刺激感を被験者に評価させた。また、前記において、実施例2で得られた試験用外用剤を用いる代わりに実施例3、比較例4又は比較例5で得られた試験用外用剤を用いたことを除き、前記と同様の操作を行い、被験者に刺激感を評価させた。刺激感の評価は、評価項目のうち、痛みを中心としたチクチク、ヒリヒリ感の刺激、痒み、灼熱感及び違和感の5項目を刺激感として用い、0〜5の6段階で刺激感の強度スコアを採点することで行った。なお、強度スコアは、点数が高いほど刺激感が強いことを示す。各経過時間における強度スコアの合計を表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
表1に示された結果から、エタノール(実施例2)又はメントールとエタノールとの混合物(実施例3)とともに2−イソボルニルオキシエタノールを用いることにより、2−イソボルニルオキシエタノールを用いずにエタノール(比較例2)又はメントールとエタノールとの混合物(比較例3)を用いた場合と比べ、スティンギングスコア(最大値)の強度スコアの合計点が低いことがわかる。したがって、これらの結果から、2−イソボルニルオキシエタノール等の式(I)で表される化合物を含む外用剤によれば、メントール、エタノール等の成分による刺激を抑制することができることがわかる。
【0114】
実施例4、5、比較例4及び5
エタノール、メントール、香料、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40)〔オキシエチレン基の付加モル数:40〕、2−イソボルニルオキシエタノール、ボルネオール及び精製水を、表2に示される組成となるように混合することにより、実施例4及び5並びに比較例4及び5の試験用外用剤を得た。
【0115】
試験例4
実施例4で得られた試験用外用剤を充填した容器を芳香剤評価用ブース中に20分間静置した。その後、香りの嗜好度を評価専門パネラー15名に評価させた。また、前記において、実施例4で得られた試験用外用剤を充填した容器を用いる代わりに実施例5、比較例4又は比較例5で得られた試験用外用剤を充填した容器を用いたことを除き、前記と同様の操作を行い、香りの嗜好度を評価専門パネラー15名に評価させた。嗜好度は、−3〜3点の7段階で採点することで行った。なお、嗜好度は、得点が高いほど「試験用外用剤の香りが好きである」ことを示し、得点が低いほど「試験用外用剤の香りが嫌いである」ことを示す。嗜好度の評価結果として得点の平均値を表2に示す。
【0116】
試験例5
実施例4で得られた試験用外用剤を充填した容器を芳香剤評価用ブース中に20分間静置した。その後、香りの快−不快度を評価専門パネラー15名に評価させた。また、前記において、実施例4で得られた試験用外用剤を充填した容器を用いる代わりに実施例5、比較例4又は比較例5で得られた試験用外用剤を充填した容器を用いたことを除き、前記と同様の操作を行い、香りの快−不快度を評価専門パネラー15名に評価させた。快−不快度の評価は、各試験用外用剤について1位〜4位までの順位(1位=快、4位=不快)をつけることで行った。快−不快度は、各順位のパネラー数を表2に示す。
【0117】
【表2】
【0118】
表2に示された結果から、2−イソボルニルオキシエタノールを用いることにより、ボルネオールを用いた場合に比べ、嗜好度(得点の平均値)が高いことがわかる。また、快−不快度の結果から、2−イソボルニルオキシエタノールを用いた方が、ボルネオールを用いた場合に比べ、1位又は2位とした人数が多いことがわかる。したがって、これらの結果から、2−イソボルニルオキシエタノール等の式(I)で表される化合物は、臭いが弱いことから、香料成分と併用する場合であっても、当該香料の香りを阻害しないことがわかる。
【0119】
処方例
以下、本発明に係る外用剤の処方例を示す。なお、原料名中のカッコ内の「E.O.」はオキシエチレン基を示す。また、「E.O.」の前に記載されている数字はオキシエチレン基の付加モル数を示す。
【0120】
処方例1 化粧水
1,8−シネオール 0.1質量%
2−イソボルニルオキシエタノール 0.1質量%
ポリエキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.) 1.0質量%
グリセリン 1.5質量%
1,3−ブチレングリコール 15.0質量%
クエン酸 0.05質量%
クエン酸ナトリウム 0.1質量%
1,2−オクタンジオール 0.2質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0121】
処方例2 デオドラントジェル
2−イソボルニルオキシエタノール 0.5質量%
メントール 0.5質量%
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.2質量%
水酸化カリウム 0.02質量%
イソノナン酸イソノニル 1.5質量%
トリクロサン 0.1質量%
エタノール 30.0質量%
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0122】
処方例3 デオドラントロールオン
1,8−シネオール 0.3質量%
2−イソボルニルオキシエタノール 0.3質量%
メントール 0.1質量%
トリクロサン 0.1質量%
クロルヒドロキシルアルミニウム 10.0質量%
イソノナン酸イソノニル 1.0質量%
ヒドロキシプロピルセルロース 1.0質量%
エタノール 60.0質量%
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0123】
処方例4 デオドラントスプレー
(原液の組成)
タルク 20.0質量%
無水ケイ酸 20.0質量%
クロルヒドロキシアルミニウム 10.0質量%
1,8−シネオール 0.5質量%
2−イソボルニルオキシエタノール 0.5質量%
メントール 1.5質量%
トリクロサン 0.1質量%
ジメチルポリシロキサン 15.0質量%
香料 適量
ミリスチン酸イソプロピル 残部
(噴射剤の組成)
液化石油ガス(LPG) 100.0質量%
【0124】
処方例5 デオドラントスティック
イソプロピルメチルフェノール 0.2質量%
硫酸アルミニウムカリウム 20.0質量%
クロロヒドロキシアルミニウム 10.0質量%
ステアリルアルコール 5.0質量%
モノステアリン酸グリセリン 3.0質量%
無水ケイ酸 35.0質量%
キャンデリラロウ 0.5質量%
ヒマシ油 0.1質量%
2−イソボルニルオキシエタノール 0.5質量%
シトラール 0.04質量%
オイゲノール 0.05質量%
デカメチルシクロペンタシロキサン 残部
合計 100.0質量%
【0125】
処方例6 クレンジング剤
ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリル
3.0質量%
ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸グリセリル 2.0質量%
N−[3−アルキル(12,14)オキシ−2−ヒドロキシプロピル]
−L−アルギニン塩酸塩
0.2質量%
1,3−ブチレングリコール 5.0質量%
1,2−オクタンジオール 0.1質量%
1,8−シネオール 0.3質量%
2−イソボルニルオキシエタノール 0.3質量%
リン酸二水素ナトリウム 適量
リン酸水素二ナトリウム 適量
酢酸トコフェロール 適量
フェノキシエタノール 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0126】
処方例7 ボディーシャンプー
ラウリン酸 5.0質量%
ミリスチン酸 7.0質量%
プロピレングリコール 4.0質量%
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 3.5質量%
水酸化カリウム 3.6質量%
亜硫酸ソーダ 0.03質量%
パラオキシ安息香酸メチル 0.3質量%
フェノキシエタノール 0.8質量%
2−イソボルニルオキシエタノール 0.5質量%
エデト酸塩 適量
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0127】
処方例8 美白化粧水
2−イソボルニルオキシエタノール 0.1質量%
イソプロピルメチルフェノール 0.1質量%
メントール 0.05質量%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.) 0.5質量%
L−アスコルビン酸2−グルコシド 1.0質量%
トラネキサム酸 1.0質量%
ジブチレングリコール 5.0質量%
クエン酸 0.05質量%
クエン酸ナトリウム 0.1質量%
1,2−オクタンジオール 0.2質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0128】
処方例9 抗炎症化粧水
2−イソボルニルオキシエタノール 0.1質量%
イソプロピルメチルフェノール 0.1質量%
メントール 0.1質量%
エタノール 5.0質量%
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル
0.3質量%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1質量%
グリセリン 2.0質量%
ジプロピレングリコール 3.0質量%
クエン酸 0.05質量%
クエン酸ナトリウム 0.1質量%
1,2−オクタンジオール 0.2質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0129】
処方例10 薬用育毛トニック
以下の組成からなる原液と、以下の組成からなる噴射剤とを質量比(原液/噴射剤)が85/15となるように容器に充填し、医薬部外品のスカルプケア剤として用いられる育毛トニックとした。
(原液)
エタノール 50質量%
イソプロピルメチルフェノール 0.1質量%
メントール 0.5質量%
ニコチン酸アミド 0.1質量%
2−イソボルニルオキシエタノール 0.5質量%
PEG−50水添ヒマシ油 0.3質量%
パンテノール 0.3質量%
カンフル 0.1質量%
酢酸トコフェロール 0.1質量%
センブリ抽出リキッド 0.1質量%
精製水 残部
原液の合計 100.0質量%
(噴射剤)
ジメチルエーテル 10質量%
LPG 90質量%
噴射剤の合計 100.0質量%
【0130】
処方例11 フェイスマスク
マスク用不織布1gに以下の組成からなるフェイスマスク組成物4gを含浸させて、フェイスマスクとした。
(フェイスマスク組成物)
2−イソボルニルオキシエタノール 0.1質量%
ポリエキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.) 1.0質量%
ジプロピレングリコール 5.0質量%
グリセリン 5.0質量%
1,3−ブチレングリコール 5.0質量%
クエン酸 0.05質量%
クエン酸ナトリウム 0.1質量%
ソルビトール 1.0質量%
エタノール 1.0質量%
キサンタンガム 0.01質量%
ヒアルロン酸ナトリウム 0.001質量%
加水分解コラーゲン 0.001質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0131】
処方例12 洗顔剤
ラウリン酸 6.5質量%
ミリスチン酸 12.0質量%
ステアリン酸 12.5質量%
グリセリン 10.0質量%
プロピレングリコール 9.0質量%
ポリエチレングリコール1500 8.0質量%
ラウリン酸アミドプロピルベタイン 0.4質量%
水酸化カリウム 6.0質量%
メントール 0.5質量%
2−イソボルニルオキシエタノール 0.5質量%
香料 0.2質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0132】
処方例13 スキンケアクリーム
流動パラフィン 5.0質量%
パラフィン 5.0質量%
水素添加パーム油 3.0質量%
ベヘニルアルコール 3.0質量%
ステアリン酸 1.0質量%
トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 5.0質量%
キサンタンガム 0.05質量%
カルボキシビニルポリマー 0.4質量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 1.5質量%
ステアリン酸グリセリル 0.5質量%
1,3−ブチレングリコール 10.0質量%
1,2−オクタンジオール 0.2質量%
2−イソボルニルオキシエタノール 0.3質量%
グリセリンモノ−2−エチルヘキシルエーテル 0.35質量%
グリセリン 5.0質量%
水酸化カリウム 適量
トコフェロール 適量
エデト酸ニナトリウム 適量
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0133】
処方例14 拭き取り用シート化粧料
不織布1gに以下の組成からなる拭き取り用シート組成物4gを含浸させて、拭き取り用シート化粧料とした。
(拭き取り用シート組成物)
2−イソボルニルオキシエタノール 0.3質量%
メントール 0.3質量%
タルク 10.0質量%
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン 2−デシルテトラデシルエーテル
0.2質量%
エタノール 40.0質量%
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
【0134】
処方例15 ヘアカラー
以下の原料を以下の組成となるように混合し、ヘアカラーの第1剤および第2剤とした。使用時には、第1剤と第2剤とを、質量比(第1剤/第2剤)が80/20となるように混合し、ヘアカラーとした。なお、以下において、各成分のパーセンテージは、ヘアカラー(第1剤と第2剤との混合物)における各成分のパーセンテージを意味する。
(第1剤)
セチルアルコール 5.0質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 5.0質量%
1,3−ブチレングリコール 3.0質量%
モノエタノールアミン 14.0質量%
2−イソボルニルオキシエタノール 0.5質量%
パラアミノフェノール 適量
レゾルシン 適量
精製水 残部
第1剤の合計 80.0質量%
(第2剤)
35体積%過酸化水素 9.0質量%
精製水 11.0質量%
第2剤の合計 20.0質量%
(ヘアカラー)
第1剤と第2剤との合計 100.0質量%
【0135】
処方例16 貼付剤
以下の組成からなる膏体を支持体上に、塗布し、貼付剤とした。
(膏体)
ポリアクリル酸 5.0質量%
ポリアクリル酸ナトリウム 2.0質量%
グリセリン 15.0質量%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.7質量%
サリチル酸メチル 0.2質量%
メントール 0.5質量%
2−イソボルニルオキシエタノール 0.5質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]