【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本願の1つの様態は、内在的活性に比べて増加された活性を有する配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質を含む、L‐リジンを生産するコリネバクテリウム属(the genus Corynebacterium)微生物である。
【0009】
これを具体的に説明すると次のとおりである。一方、本願で開示された各々の説明及び実施形態は、それぞれの異なる説明及び実施形態にも適用できる。つまり、本願で開示された多様な要素のすべての組み合わせが本願のカテゴリに属する。また、下記で記術された具体的な記述によって、本願のカテゴリが制限されるとは見ることができない。
【0010】
本願において、前記配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質は「HM1524タンパク質」と混用して用いられてもよい。また、これは「HM1524遺伝子によりコードされるタンパク質」と混用して用いられてもよい。また、配列番号1のアミノ酸配列で必須的に構成されるタンパク質、もしくは配列番号1のアミノ酸配列から構成されるタンパク質という表現と混用して用いられてもよい。
【0011】
また、前記タンパク質は配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%、90%、95%、97%または99%の相同性を有するポリペプチドを含んでもよい。例えば、このような相同性を有し、前記配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質と相応する効能を示すアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、変形、置換または付加されたアミノ酸配列を有しても、本願の範囲内に含まれるのは自明である。
【0012】
また、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質と相応する活性を有する場合であれば、配列番号1のアミノ酸配列の前後の意味のない配列追加または自然的に発生しうる突然変異、もしくはそのサイレント突然変異(silent mutation)を除くことなく、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質も本願の範囲に属する。
【0013】
本願で用語、「相同性」は、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド部分間の同一性のパーセントを言う。与えられたアミノ酸配列または塩基配列と一致する程度を意味し、百分率として示されてもよい。本明細書で、与えられたアミノ酸配列または塩基配列と同一であるか、または同様の活性を有するその相同性配列が「%相同性」と表示される。例えば、スコア(score)、同一性(identity)及び類似度(similarity)などのパラメータ(parameter)を計算する標準ソフトウェア、具体的にBLAST 2.0を用いたり、定義された厳格な条件下でサザン混成化実験により配列を比較することによって確認することができ、定義される適切な混成化条件は該当技術の範囲内であり、当業者によく知られている方法(例えば、J. Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory press, Cold Spring Harbor, New York, 1989; F.M. Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York)で決定されてもよい。
【0014】
前記配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子は、これに制限されるものではないが、配列番号2の塩基配列を含むポリヌクレオチドであってもよく、配列番号2の塩基配列と少なくとも80%、90%、95%、97%または99%の相同性を有するポリヌクレオチドであってもよい。コドン縮退性(codon degeneracy)により前記配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質またはそれと相同性を有するタンパク質に翻訳されうるポリヌクレオチドも含まれてもよいのは自明である。または、公知の遺伝子配列から調製されうるプローブ、例えば、前記塩基配列の全体または一部に対する相補配列と厳格な条件下でハイドリッド化して、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質の活性を有するタンパク質を暗号化する配列であれば、制限なく含まれてもよい。前記「厳格な条件」とは、ポリヌクレオチド間の特異的な混成化を可能にする条件を意味する。このような条件は、文献(例えば、J. Sambrook et al.,同上)に具体的に記載されている。例えば、相同性が高い遺伝子同士で、80%以上、具体的には90%以上、より具体的には95%以上、さらに具体的には97%以上、特に具体的には99%以上の相同性を有する遺伝子同士でハイブリッド化し、それより相同性が低い遺伝子同士ではハイブリッド化しない条件、または通常のサザンハイブリッド化の洗浄条件である、60℃、1×SSC、0.1%SDS、具体的には、60℃、0.1×SSC、0.1%SDS、より具体的には、68℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度及び温度で、1回、具体的には、2回〜3回洗浄する条件を列挙することができる。
【0015】
混成化は、たとえ混成化の厳格度に応じて塩基間のミスマッチ(mismatch)が可能としても、2つの核酸が相補的な配列を有することを要求する。用語、「相補的」は、互いに混成化が可能なヌクレオチド塩基間の関係を記述するのに使用される。例えば、DNAに対して、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。したがって、本願は、また実質的に類似な核酸配列だけではなく、全体の配列に相補的な単離された核酸の断片を含んでもよい。
【0016】
具体的に、相同性を有するポリヌクレオチドは55℃のTm値により混成化段階を含む混成化条件を利用し、上述した条件を利用して探知することができる。また、前記Tm値は、60℃、63℃または65℃であってもよいが、これに制限されるものではなく、その目的に応じて当業者により適切に調節されうる。
【0017】
ポリヌクレオチドを混成化する適切な厳格度は、ポリヌクレオチドの長さ及び相補性の程度に依存し、変数は当該技術分野でよく知られている。
【0018】
前記ハイブリッド化に用いられるプローブは、塩基配列の相補配列の一部であってもよい。このようなプローブは、公知の配列に基づいて作られたオリゴヌクレオチドをプライマーとし、このような塩基配列を含む遺伝子断片を鋳型とするPCRにより作製されてもよい。前記遺伝子断片は、例えば、少なくとも約50ヌクレオチド、60ヌクレオチド、70ヌクレオチド、80ヌクレオチド、90ヌクレオチド、または少なくとも100ヌクレオチドであってもよい。また、当業者は、温度及び洗浄溶液の塩濃度をプローブの長さのような要素に応じて、必要な場合は調節できる。
【0019】
本願で用語、「内在的活性」は、自然的または人為的な要因による遺伝的な変異で微生物の形質が変化する場合、形質変化の前に親菌株がもともと有していた特定タンパク質の活性を言う。
【0020】
本願で用語、「タンパク質の活性が内在的活性に比べて増加」することは、微生物が有するタンパク質の内在的活性または変形前の活性に比べて活性が向上されたことを意味する。前記活性の増加は、外来のHM1524を導入することと、内在的にHM1524の活性を強化することをすべて含んでもよい。
【0021】
具体的に、本願における活性増加は、
1)前記タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドのコピー数の増加、
2)前記ポリヌクレオチドの発現が増加するように発現調節配列の変形、
3)前記タンパク質の活性が強化されるように染色体上のポリヌクレオチド配列の変形、
4)前記タンパク質の活性を示す外来ポリヌクレオチドまたは前記ポリヌクレオチドのコドン最適化された変異型ポリヌクレオチドの導入、または、
5)これらの組み合わせによって強化されるように変形する方法などにより行われてもよいが、これに制限されない。
【0022】
前記1)ポリヌクレオチドのコピー数の増加は、特にこれに制限されないが、ベクターに作動可能に連結された形態で行われるか、宿主細胞内の染色体内に挿入されることによって行われてもよい。具体的に、宿主とは関係なく複製されて機能するベクターに本願のタンパク質を暗号化するポリヌクレオチドが作動可能に連結されて宿主細胞内に導入されることによって行われるか、宿主細胞内の染色体内に前記ポリヌクレオチドを挿入させうるベクターに前記ポリヌクレオチドが作動可能に連結されて宿主細胞内に導入されることによって、前記宿主細胞の染色体内の前記ポリヌクレオチドのコピー数を増加する方法で行われてもよい。
【0023】
次に、2)ポリヌクレオチドの発現が増加するように発現調節配列の変形は、特にこれに制限されないが、前記発現調節配列の活性をさらに強化するように核酸配列を欠失、挿入、非保存的または保存的置換またはこれらの組み合わせで配列上の変異を誘導して行ったり、より強い活性を有する核酸配列に交替することによって行われてもよい。前記発現調節配列は、特にこれに制限されないが、プロモーター、オペレーター配列、リボソーム結合部位をコードする配列、転写及び解読の終結を調節する配列などを含んでもよい。
【0024】
前記ポリヌクレオチド発現単位の上部には、本来のプロモーターの代わりに強力な異種プロモーターが連結されてもよいが、前記強力なプロモーターの例としては、CJ7プロモーター(特許文献2及び特許文献3)、lysCP1プロモーター(特許文献4)、EF‐Tuプロモーター、groELプロモーター、aceAまたはaceBプロモーターなどがあるが、これに限定されない。また、3)染色体上のポリヌクレオチド配列の変形は、特にこれに制限されないが、前記ポリヌクレオチド配列の活性をさらに強化するように、核酸配列を欠失、挿入、非保存的または保存的置換またはこれらの組み合わせで発現調節配列上の変異を誘導して行うか、より強い活性を有するように改良されたポリヌクレオチド配列に交替することによって行われてもよい。
【0025】
また、4)外来ポリヌクレオチド配列の導入は、前記タンパク質と同一/類似な活性を有するタンパク質を暗号化する外来ポリヌクレオチド、またはこのコドン最適化された変異型ポリヌクレオチド宿主細胞内に導入して行われてもよい。前記外来ポリヌクレオチドは、前記タンパク質と同一/類似な活性を示す限り、その由来や配列に制限なく使用されてもよい。また、導入された前記外来ポリヌクレオチドが宿主細胞内で最適化された転写、翻訳ができるように、このコドンを最適化して宿主細胞内に導入してもよい。前記導入は、公知された形質転換方法を当業者が適切に選択して行われてもよく、宿主細胞内で前記導入されたポリヌクレオチドが発現されることによって、タンパク質が生成されその活性が増加されてもよい。
【0026】
最後に5)前記1)〜4)の組み合わせによって強化されるように変形する方法は、前記タンパク質を暗号化するポリヌクレオチドのコピー数の増加、その発現が増加するように発現調節配列の変形、染色体上の前記ポリヌクレオチド配列の変形及び前記タンパク質の活性を示す外来ポリヌクレオチドまたはそのコドン最適化された変異型ポリヌクレオチドの変形のうち、1つ以上の方法を一緒に適用して行ってもよい。
【0027】
本願で用いられた用語、「ベクター」は、適合な宿主内で目的タンパク質を発現させうるように適合な調節配列に作動可能に連結された、前記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含有するDNA製造物を意味する。前記調節配列は、転写を開始できるプロモーター、そのような転写を調節するための任意のオペレーター配列、適合なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び解読の終結を調節する配列を含んでもよい。ベクターは、適当な宿主細胞内に形質転換された後、宿主ゲノムとは関係なく複製されたり、機能することができ、ゲノムそのものに統合されてもよい。一例として、細胞内の染色体挿入用ベクターを介して、染色体内に目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを変異されたポリヌクレオチドに交替させてもよい。前記ポリヌクレオチドの染色体内への挿入は、当業界に知られている任意の方法、例えば、相同組み換えにより行われてもよいが、これに限定されない。
【0028】
本願で用いられるベクターは、特に限定されなく、当業界に知られている任意のベクターを用いてもよい。通常、用いられるベクターの例としては、天然状態であるか、組み換えされた状態のプラスミド、コスミド、ウィルス及びバクテリオファージが挙げられる。例えば、ファージベクターまたはコスミドベクターとして、pWE15、M13、MBL3、MBL4、IXII、ASHII、APII、t10、t11、Charon4A、及びCharon21Aなどを用いてもよく、プラスミドベクターとしては、pBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系とpET系などを用いてもよい。具体的には、pDZ、pACYC177、pACYC184、pCL、pECCG117、pUC19、pBR322、pMW118、pCC1BACベクターなどを用いてもよい。
【0029】
本願で用語、「形質転換」は、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞内に導入して宿主細胞内で前記ポリヌクレオチドがコードするタンパク質が発現できるようにすることを意味する。形質転換されたポリヌクレオチドは、宿主細胞内で発現さえできれば、宿主細胞の染色体内に挿入されて位置するか、染色体外に位置するかに関係なくこれらすべてを含んでもよい。また、前記ポリヌクレオチドは標的タンパク質をコードするDNA及びRNAを含む。前記ポリヌクレオチドは、宿主細胞内に導入されて発現できるものであれば、いかなる形態で導入されても関係ない。例えば、前記ポリヌクレオチドはそれ自体で発現されるのに必要なあらゆる要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入されてもよい。前記発現カセットは、通常、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結信号、リボソーム結合部位及び翻訳終結信号を含んでもよい。前記発現カセットは自己複製が可能な発現ベクターの形態であってもよい。また、前記ポリヌクレオチドはそれ自体の形態で宿主細胞に導入され、宿主細胞において発現に必要な配列と作動可能に連結されたものであってもよいが、これに限定されない。
【0030】
また、前記で用語、「作動可能に連結」されたとは、本願の目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び媒介するようにするプロモーター配列と前記遺伝子配列が機能的に連結されていることを意味する。
【0031】
本願のベクターを形質転換させる方法は、核酸を細胞内に導入するいかなる方法も含まれ、宿主細胞に応じて当分野で公知されたように、適合した標準技術を選択して行ってもよい。例えば、電気穿孔法(electroporation)、リン酸カルシウム(CaPO
4)沈殿、塩化カルシウム(CaCl
2)沈殿、微細注入法(microinjection)、ポリエチレングリコール(PEG)法、DEAE‐デキストラン法、カチオンリポソーム法、及び酢酸リチウム‐DMSO法などがあるが、これに制限されない。
【0032】
前記宿主細胞としては、DNAの導入効率が高く、導入されたDNAの発現効率が高い宿主を用いるのがよいが、例えば、コリネバクテリウム属微生物であってもよい。
【0033】
本願で用語、「L‐リジン」とは、塩基性α‐アミノ酸の1つであって、体内で合成されない必須アミノ酸であり、化学式はNH
2(CH
2)
4CH(CH
2)COOHであるL‐アミノ酸の一種を意味する。また、前記L‐リジンは塩の形態で存在する場合もすべて本願の範囲に含まれてもよい。
【0034】
本願で用語、「L‐リジンを生産する微生物」は、本願の目的上、L‐リジンを生産しうる微生物菌株であって、具体的には、本願にかかる操作によってL‐リジンを高濃度で生産しうる菌株を意味する。したがって、前記微生物は、L‐リジンを生産しうる限り、その親菌株の種類に特に制限されない。つまり、本願で親菌株はL‐リジンの生産能がない菌株及びL‐リジンの生産能がある菌株をすべて含んでもよい。前記L‐リジンの生産能は自然的に発生したものまたは人為的に操作されたものをすべて含んでもよい。人為的に操作されたL‐リジンの生産能を有する微生物は、例えば、NTG(nitrosoguanidine)などの突然変異を誘発する物質により変異されてL‐リジンの生産能を有するものであってもよく、または特定目的タンパク質の発現程度または活性を調節してL‐リジンの生産能を有するものであってもよいが、これに制限されるものではない。具体的に、前記特定目的タンパク質は、L‐リジン生合成経路に直接/間接的に作用する全てのタンパク質が含まれてもよく、これらの発現程度または活性を増加させるか減少させることによって、L‐リジンの生産能を有するように変異されたものであってもよく、また、これらのアミノ酸配列または塩基配列上の変異を誘導してL‐リジンの生産能を有するようにしたものであってもよい。上述したNTGなどを用いたランダム突然変異の誘導及び特定目的タンパク質の発現調節を含む微生物の人為的な操作は、公知された技術として当業者によって適切に行われてもよい。
【0035】
前記微生物は、具体的にはコリネバクテリウム属微生物であってもよい。その例として、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum )、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(Corynebacterium thermoaminogenes)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)またはブレビバクテリウム・ファーメンタム(Brevibacterium fermentum)などが用いられてもよいが、これに制限されない。その1つの例として、前記コリネバクテリウム属微生物はコリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)を用いてもよい。しかし、これらの例に限定されることではなく、その他にも公知されたL‐リジンの生産能を有するコリネバクテリウム属微生物が用いられてもよい。
【0036】
公知されたL‐リジンの生産能を有するコリネバクテリウム属の例としては、特許文献5(または特許文献6)、特許文献7(または 特許文献8)、特許文献9または/及び非特許文献1に記述された微生物があり、前記文献の内容全体は本願に参考資料として、全文が含まれる。
【0037】
もう1つの様態は、内在的活性に比べて増加された活性を有する配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質を含む、L‐リジンを生産するコリネバクテリウム属(the genus Corynebacterium)微生物を培地で培養する段階;及び前記培養された微生物またはその培地からL‐リジンを回収する段階を含む、L‐リジンの生産方法である。
【0038】
L‐リジンを生産するコリネバクテリウム属微生物については前記で説明したとおりである。
【0039】
本願で用語、「培養」は、前記微生物を適当に調節された環境条件で生育させることを意味する。本願の培養過程は、当業界で知られている適当な培地と培養条件に応じて行ってもよい。このような培養過程は、選択される菌株に応じて当業者が容易に調整して用いてもよい。前記方法において、前記微生物を培養する段階は、特にこれに制限されないが、公知された回分式培養方法、連続式培養方法、流加式培養方法などによって行ってもよい。ここで、培養条件は、特にこれに限定されないが、塩基性化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはアンモニア)または酸性化合物(例えば、リン酸または硫酸)を用いて、適正pH(例えば、pH5〜9、具体的には、pH6〜8、最も具体的には、pH6.8)を調節してもよい。また、培養中には脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を用いて気泡の生成を抑制することができ、また、培養物の好気状態を維持するために、培養物内に酸素または酸素含有気体を注入したり、嫌気及び微好気状態を維持するために気体の注入なしに、あるいは窒素、水素または二酸化炭素ガスを注入してもよい。培養温度は20〜45℃、具体的には25〜40℃を維持してもよく、培養期間は、望む有用物質の生産量が収得されるまで続けてもよく、具体的には約10〜160時間培養してもよい。しかし、これに制限されるものではない。前記培養によって生産されたL‐リジンは培地中に分泌されるか細胞内に残留してもよい。
【0040】
さらに、用いられる培養用培地は、炭素供給源として糖及び炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、糖蜜、澱粉及びセルロース)、油脂及び脂肪(例えば、大豆油、ひまわり油、ピーナッツ油及びココナッツ油)、脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸及びリノール酸)、アルコール(例えば、グリセロール及びエタノール)及び有機酸(例えば、酢酸)などを個別に使用したり、または混合して使用してもよいが、これに限定されない。窒素供給源としては、窒素含有有機化合物(例えば、ペプトン、酵母抽出液、肉汁、麦芽抽出液、トウモロコシ浸漬液、大豆泊粉及びウレア)、または無機化合物(例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウム)などを個別に使用したり、または混合して用いてもよいが、これに制限されない。リン供給源としてリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、これに相応するナトリウム含有塩などを個別に用いたり、または混合して用いてもよいが、これに制限されない。また、培地にはその他の金属塩(例えば、硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄)、アミノ酸及びビタミンのような必須成長促進物質を含んでもよい。
【0041】
本願の前記培養段階で生産されたL‐リジンを回収する方法は、培養方法に応じて 当該分野に公知された適合の方法を用いて培養液から目的とするアミノ酸を収集してもよい。例えば、遠心分離、ろ過、陰イオン交換クロマトグラフィー、結晶化及びHPLCなどが用いられてもよく、当該分野に公知された適合の方法を用いて、培地または微生物から目的とするL‐リジンを回収してもよい。また、前記回収段階は、精製工程を含んでもよい。