特許第6859441号(P6859441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6859441C/C−SiC複合材料部品の製造方法及びその製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859441
(24)【登録日】2021年3月29日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】C/C−SiC複合材料部品の製造方法及びその製品
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/83 20060101AFI20210405BHJP
   C04B 35/84 20060101ALI20210405BHJP
   C04B 35/628 20060101ALI20210405BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20210405BHJP
   C04B 41/85 20060101ALI20210405BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20210405BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20210405BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20210405BHJP
【FI】
   C04B35/83
   C04B35/84
   C04B35/628 730
   B28B1/30
   C04B41/85 F
   B29C64/153
   B29C64/268
   B33Y10/00
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-540328(P2019-540328)
(86)(22)【出願日】2018年3月7日
(65)【公表番号】特表2020-508953(P2020-508953A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(86)【国際出願番号】CN2018078258
(87)【国際公開番号】WO2018188436
(87)【国際公開日】20181018
【審査請求日】2019年7月25日
(31)【優先権主張番号】201710238622.1
(32)【優先日】2017年4月13日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510268554
【氏名又は名称】▲華▼中科技大学
【氏名又は名称原語表記】HUAZHONG UNIVERSITY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】▲ヤン▼ 春▲澤▼
(72)【発明者】
【氏名】朱 ▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】傅 ▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】徐 中▲鳳▼
(72)【発明者】
【氏名】史 玉升
(72)【発明者】
【氏名】李 晨輝
(72)【発明者】
【氏名】▲ウー▼ 甲民
(72)【発明者】
【氏名】文 世峰
(72)【発明者】
【氏名】李 昭青
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第105384454(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第104496508(CN,A)
【文献】 特表2017−537199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
B28B 1/30
B29C 64/00−64/40
B33Y 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含むことを特徴とする、C/C−SiC複合材料部品の製造方法、
(a)溶媒蒸発法によりフェノール樹脂で均一に被覆された炭素繊維複合粉末を製造する工程、
(b)所望の部品の三次元モデルに従って、前記炭素繊維複合粉末を3D印刷技術によって前記所望の部品の初期ブランクに成形する工程、
(c)前記ブランクに対して順次含浸、硬化及び炭化処理を行う第1次高密度化処理を繰り返し行い、密度0.7〜1.1g/cm、開放気孔率30〜50%のC/C多孔質体を得る工程、
(d)前記C/C多孔質体を真空下で溶融シリコン化、シリコン除去、第2次高密度化処理を順次行い、所望のC/C−SiC複合材料部品を得る工程。
【請求項2】
前記工程(a)において、前記溶媒蒸発法は、下記工程に従って行われる、
(a1)質量分率が7〜10%の硬化剤含有する熱可塑性フェノール樹脂を有機溶剤に完全に溶解させた後、炭素繊維粉末を添加して炭素繊維が均一に分散した溶液を得て、このうち前記炭素繊維粉末と前記フェノール樹脂の体積比は、(2〜8):(2〜8)である、
(a2)前記溶液を蒸留して粉末凝集体を得た後、乾燥、粉砕、篩い分けして前記炭素繊維複合粉末を得る、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(a1)において、前記炭素繊維粉末は、直径が6〜10μm、長さが50〜200μmである、
請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程(a)において、前記炭素繊維複合粉末は、10〜150μmの粒度分布を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(b)において、前記3D印刷技術は、選択的レーザー焼結(SLS)技術または3Dプリンター(3DP)技術である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程(c)において、前記第1次高密化処理中の前記含浸は真空下または負圧条件下で行われ、選択される含浸液は、50mPa・s未満の粘度を有する熱硬化性フェノール樹脂またはフラン樹脂液体、あるいは20mPa・s未満の粘度を有する熱硬化フェノール樹脂のアルコール溶液の1種である、請求項1から5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記工程(d)において、前記第2次高密化処理は、化学気相浸透法であり、シリコン除去により形成された気孔内にSiCを堆積して、密度化を実現する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材料の分野に属し、より具体的にはC/C−SiC複合材料部品の製造方法及びその製品に関する。
【背景技術】
【0002】
C/C−SiC複合材料は、補強材として炭素繊維と、マトリックスとして炭素および炭化ケイ素との複合材料で、低密度、高強度、高温耐性、耐化学薬品性、高摩擦係数、低摩耗率および熱崩壊抵抗性能が良いなどの多くの優れた点を備え、高温構造材料、熱保護材料およびブレーキ材料として航空宇宙、エネルギー、輸送などの分野に応用することができる。それはロケットエンジンのスロートライニング、ノズルおよび燃焼室、原子力水素製造用熱交換器、航空機、高速列車ブレーキディスクなどである。
【0003】
C/C−SiC複合材料の炭素繊維強化材の構造形式は、主に連続炭素繊維と短炭素繊維を含み、異なる炭素繊維強化材は、異なる網目構造、気孔構造および分布、成形方法を有しており、さまざまな特殊なニーズを満たすことができる。そのうち短炭素繊維強化のC/C‐SiC複合材料は製造工程が簡単で、サイクルが短く、コストも低く、幅広い応用展望を有している。現在、短炭素繊維強化のC/C多孔質プリフォームは主にモールディングプロセスによって製造され、それはモールドの複雑さによって制限されるので、複雑な構造を有する部品の全体をニアネットシェイプ形成することは困難であり、たとえば制動性能を改善するために設計される内部に複雑な放熱路を有するブレーキディスクのなどは、モールディングプロセスによる成形を実現することが困難である。
【0004】
3D印刷技術は、交互積層加工と重ね合わせの原理を利用しており、理論的には任意の複雑な構造の加工を実現することができ、この課題に対して、過去には選択的レーザー焼結(Selective Laser Sintering (SLS))プロセスによる炭化ケイ素セラミック部品の製造方法(中国出願番号201610496893.2)を公開しており、この方法は、最初に炭化ケイ素、炭素、結合剤および硬化剤の機械的混合粉末を製造し、次いでSLS技術によって炭化ケイ素ブランクを形成し、次にブランクを硬化および炭化処理し、そして最後に真空下で浸透焼結によって炭化ケイ素セラミック部材を得る。しかしながら、この方法は、粉末製造の不均一性、炭化ケイ素ブランクの高い気孔率などの原因により、炭化ケイ素セラミック中に大量の残留シリコンが存在してしまい、部品の性能に重大な影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の上記の欠陥または改善要件を考慮して、本発明は、C/C−SiC複合材料部品の製造方法及びその製品を提供し、これらのうち、溶媒蒸発法により炭素繊維複合粉末を製造し、3D印刷技術と二度の高密度化処理を組み合わせることにより、粉末製造の不均一、複雑な部品のニアネットシェイプ成形と部品中にシリコンが残留する技術課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの態様によれば、C/C−SiC複合材料部品を製造する方法が提供され、この方法は下記工程を含むことを特徴とする。
【0007】
(a)溶媒蒸発法によりフェノール樹脂で均一に被覆された炭素繊維複合粉末を製造する。
【0008】
(b)所望の部品の三次元モデルに従って、炭素繊維複合粉末を3D印刷技術によって所望の部品の初期ブランクに成形する。
【0009】
(c)前記ブランクを順次第1次高密度化処理を繰り返し行い、密度0.7〜1.1g/cm、開放気孔率30〜50%のC/C多孔質体を得る。
【0010】
(d)前記C/C多孔質体を真空下で溶融シリコン化、シリコン除去、第2次高密度化処理を順次行い、所望のC/C−SiC複合材料部品を得る。
【0011】
なお、好ましくは、工程(a)において、前記溶媒蒸発法は、下記工程に従って行われる。
(a1)質量分率が7〜10%の硬化剤を含有する熱可塑性フェノール樹脂を有機溶剤に完全に溶解させた後、炭素繊維粉末を添加して炭素繊維が均一に分散した溶液を得る。このうち前記炭素繊維粉末と前記フェノール樹脂の体積比は、(2〜8):(2〜8)である。
(a2)前記溶液を蒸留して粉末凝集体を得た後、乾燥、粉砕、篩い分けして炭素繊維複合粉末を得る。
【0012】
好ましくは、工程(a1)において、前記炭素繊維粉末は、直径が6〜10μm、長さが50〜200μmである。
【0013】
好ましくは、工程(a)において、炭素繊維複合粉末は、10〜150μmの粒度分布を有する。
【0014】
好ましくは、工程(b)において、3D印刷技術は、選択的レーザー焼結(SLS)技術または3Dプリンター(3DP)技術などのパウダーベットベースの3D印刷技術である。
【0015】
好ましくは、工程(c)において、第1次高密化処理は、順次含浸、硬化、炭化処理を行うことが好ましく、含浸は真空下または負圧条件下で行われ、選択される含浸液は、好ましくは50mPa.s未満の粘度を有する熱硬化性フェノール樹脂またはフラン樹脂液体、あるいは20mPa.s未満の粘度を有する熱硬化フェノール樹脂のアルコール溶液の1種である。
【0016】
好ましくは、工程(d)において、第2次高密化処理は、化学気相浸透法であり、シリコン除去により形成された気孔内にSiCを堆積して、密度化を実現する。
【0017】
本発明の別の態様によれば、前記製造方法に従って製造されるC/C−SiC複合材料部品製品が提供される。
【0018】
まとめると、本発明の構想による上記技術は、従来技術と比較して以下に列する有益な効果を達成することができる。
【発明の効果】
【0019】
1、本発明は、溶媒蒸発法により3D印刷に適したフェノール樹脂で被膜された炭素繊維複合粉末を製造し、前記炭素繊維複合粉末中の炭素繊維は均一に分布しているので、後続の硬化および炭化の過程での収縮が均一であり、容易に亀裂変形せず、かつ炭素繊維の表面を被膜するフェノール樹脂層は炭化を経て、後続のシリコン化工程での炭素繊維の損傷を防止することができ、それにより最終的に形成された部品は高い総合性能を有する。
【0020】
2、本発明は、3D印刷技術によってC/C−SiC複合材料部品を形成し、該方法は製造工程においてモールドを必要としないので、設計と製造における生産コストと時間が削減され、かつ該方法によって製造される部品は構造の複雑さによる制限を受けない。
【0021】
3、本発明は、3D印刷により成形された炭素繊維の初期ブランクに液体樹脂を浸透させてそれを炭化することによって、高密度化されたC/C多孔質体を得て、その気孔構造は制御可能であり、後続する溶融シリコン化反応過程での寸法変化が小さく、ニアネットシェイプ成形されたC/C−SiC複合材料部品を得ることができる。
【0022】
4、本発明は、高温シリコン除去および化学気相浸透によって低い残留シリコン含有量を得ることができ、その結果、最終的に得られるC/C−SiC部品は高密度であり、かつ良好な高温機械的性質を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態に従って構成された製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の上記及びその他の目的、技術及び優れた点を更に明確に理解できるよう、以下において図面と実施例とを併せて詳細に説明する。ここで記載される本発明の実施形態は本発明を解釈するために用いるものであり、本発明を限定するものではない。さらに、以下に記載される本発明の様々な実施形態に含まれる技術的特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。
【0025】
図1は、本発明の好ましい実施形態に従って構成された製造方法のフロー図であり、図1に示す通り、C/C−SiC複合材料部品を製造するための方法およびその製品は、下記工程を含む。
【0026】
(a)溶媒蒸発法による炭素繊維/フェノール樹脂複合粉末の製造は、具体的には下記製造工程を有する。
(a1)7〜10wt%のウロトロピンを含有する熱可塑性フェノール樹脂をアセトン溶媒に完全に溶解させて溶液を形成し、そのうち、樹脂対溶媒の質量比は1:1である。
(a2)前記溶液に炭素繊維粉末を添加し、超音波処理により炭素繊維粉末を均一に分散させる。そのうち、前記炭素繊維粉末と前記フェノール樹脂の体積比は、(2〜8):(2〜8)である。
(a3)加熱蒸留して溶媒を回収して粉末凝集体を得る。
(a4)乾燥、粉砕、篩い分けした後、フェノール樹脂が均一に被覆された炭素繊維複合粉末を得る。
【0027】
材料の製造は、3D印刷プロセスにとって重要である。本発明は溶媒蒸発法により、3D印刷プロセスに適した炭素繊維/フェノール樹脂複合粉末を製造し、炭素繊維は強化材として使用され、熱可塑性フェノール樹脂は結合剤として使用され、ウロトロピンは硬化剤であり、後者2つは炭素繊維粉末の表面を均一に被覆する。これは、保管および輸送中の組成物の分離を防ぐのに役立つ。さらに、3D印刷形成、硬化および炭化の過程での収縮が均一であり、変形と亀裂が起こりにくい。同時に、炭素繊維表面を被覆するフェノール樹脂層は炭化を経て、後続のシリコン化工程による炭素繊維の損傷を防ぐことができる。
【0028】
本発明に用いられる繊維直径は、6〜10μmであり、長さは50〜200μmが好ましい。一般的に、繊維の長さが長いほど強化効果は高いが、繊維長が150ミクロンを超えると粉体散布の質量に影響する。したがって、パウダーベッドをより良好に散布するために、本発明における炭素繊維/フェノール樹脂複合粉末の粒度分布は、10〜150μmの範囲内であることが好ましい。
【0029】
(b)設計部品のCADモデルに従って、3D印刷プロセスにより対応する炭素繊維初期ブランクを成形する。
【0030】
加工工程での部品の収縮率を考慮して、部品のCADモデルは縮尺補正される。3D印刷装置上で対応する炭素繊維初期ブランクが成形され、工程(b)では3D印刷技術はSLSまたは3DPのようなパウダーベッドに基づく3D印刷技術であることが好ましい。
【0031】
(c)上記炭素繊維初期ブランクを順次、熱硬化性樹脂を含浸させ、硬化と炭化処理を行い、密度0.7〜1.1g/cm、気孔率30〜50%のC/C多孔質体が得られるまで含浸、硬化、炭化の三つの工程を繰り返し行う。
【0032】
3Dプリントにより形成された炭素繊維初期ブランクは、気孔率が大きく強度が低いため、直接炭化処理やシリコン化処理を行うと、残留シリコン量が多くなりやすく、部品の損傷をまねき易い。本発明では、残炭率が高い熱硬化性樹脂を含浸させて炭化させることで、C/C多孔質体の強度と気孔構造を調整することができる。
【0033】
本発明は、3D印刷で成形された炭素繊維初期ブランクの含浸、硬化および炭化に適応するように、含浸、硬化および炭化プロセスを最適化する。
【0034】
本発明の好ましい含浸プロセス条件は、含浸液が高い残炭率を有する熱硬化性フェノール樹脂またはフラン樹脂液であり、粘度が50mPa・s未満であり、真空または負圧下で含浸される。さらに好ましい含浸溶液は、20mPa・s未満の粘度を有する熱硬化性フェノール樹脂のアルコール溶液である。
【0035】
本発明の好ましい硬化プロセス条件は、含浸後の初期ブランクを1.5〜3時間空気乾燥し、次いで80℃の雰囲気中で乾燥する。炭化炉に移し、最初に110〜130℃で1〜2時間保温し、次いで145〜165℃で0.5〜1.5時間保温し、次いで180〜190℃まで昇温するとともに2〜4時間保温して、硬化反応を完了させる。続いて、アルゴンガスで保護しながら、2℃/分の速度で550℃まで昇温し0.5〜1時間保温し、その後、同様の速度で800℃〜1000℃まで昇温し、1〜2時間保温した後に炉ごと冷却し、炭化処理を完了させる。
【0036】
本発明における好ましいC/C多孔質体の密度は0.7〜1.1g/cmであり、好ましい開放気孔率は30〜50%である。
【0037】
(d)真空グラファイト抵抗炉内で、上記C/C多孔質体を溶融シリコン化反応および高温シリコン除去工程を行って、予備的C/C−SiC複合材料を得て、該予備的C/C−SiC複合材料に対して化学気相浸透を行って高密度化し、最終的なC/C−SiC部品を得る。
【0038】
溶融シリコン化を経て得られるC/C−SiC複合材料の内部は通常、反応に完全には関与していないシリコンを含み、残留シリコンが部品の化学的安定性および高温機械的性質に影響を与えるので、残留シリコンを除去する必要がある。
【0039】
本発明における好ましい溶融シリコン化反応および高温シリコン除去処理の条件は、抵抗炉内の真空度を10〜30Paに制御し、まず1600℃まで昇温し、1時間保温した後にシリコン化反応を完了させ、続いて2000℃以上に昇温して残留シリコンを除去する。
【0040】
残留シリコンを除去した後、C/C−SiC複合材料の内部に少量の気孔が存在し、本発明では、予備的C/C−SiC部品に化学気相浸透処理を施して、さらに密度化する。化学気相浸透法は比較的成熟した既存技術であり、プロセス条件は既存技術のパラメータを参照することができ、具体的な条件についてはここでは説明しない。
【0041】
以下の様々な実施形態と併せて、図1のプロセスフローを参照しながら本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0042】
(a)ウロトロピンを7wt%含有する熱可塑性フェノール樹脂1000gをアセトン溶液1000gに完全に溶解する。上記溶液に長さ50〜200μmの短炭素繊維粉末5770gを添加し、超音波により炭素繊維粉末を均一に分散させる。その後、加熱蒸留するとともに、溶媒を回収し、粉末凝集体を得る。乾燥、研磨および篩い分けの後、フェノール樹脂が均一に被覆した10〜80μmの平均粒径を有する炭素繊維複合粉末を得る。そのうちフェノール樹脂の体積百分率は20%である。
【0043】
(b)設計部品のCADモデルに従って、3DPプロセスにより相応する炭素繊維初期ブランクを形成する。3DPのプロセスパラメータは以下の通りである。接着剤は質量分率が70%の無水エタノール、質量分率が28%の脱イオン水および質量分率が2%のポリエチレングリコール400からなり、粉体散布層の厚さは0.1mm、走査回数は1回で、炭素繊維の初期ブランクが成形される。
【0044】
(c)粘度20mPa・sの質量分率が50%の熱硬化性フェノール樹脂アルコール溶液を準備し、真空浸透装置中で炭素繊維初期ブランクに含浸させる。含浸後の初期ブランクを1.5時間空気乾燥し、次いで80℃の雰囲気中で乾燥する。炭化炉に移し、まず110℃で1時間、次いで145℃で0.5時間保温し、次に180℃まで昇温して2時間保温して、硬化反応を完了させる。その後、アルゴンガスで保護しながら、2℃/分の速度で550℃まで昇温するとともに0.5時間保温し、同様の速度で800℃まで昇温し、1時間保温した後、炉ごと冷却する。含浸、硬化と炭化の3つの工程を炭化処理が完了するまで繰り返し行う。C/C多孔質体の密度は0.72g/cmであり、開放気孔率は47.6%であった。
【0045】
(d)窒化ホウ素をブラッシングした黒鉛ルツボにC/C多孔質体を入れ、抵抗炉内の真空度を20Paに制御し、理論的に必要な量の2倍のSi粉末を多孔質体上に載置し、まず400℃に昇温し、1時間保温した後、750℃まで昇温して、1時間保温し、次いで1250℃まで昇温して、1時間保温し、最後に、1600℃まで昇温して、1時間保温して、溶融シリコン化反応を完了させる。その後、2000℃まで昇温して残留シリコンを除去し、予備的C/C−SiC複合材料を得る。予備的C/C−SiC複合材料を化学気相浸透により高密度化し、1200℃でトリクロロメタンおよび水素ガスを導入して、1時間反応させ、最終的なC/C−SiC部品を得た。
【実施例2】
【0046】
(a)ウロトロピンを8wt%含有する熱可塑性フェノール樹脂1000gをアセトン溶液1000gに完全に溶解する。上記溶液に長さ50〜200μmの短炭素繊維粉末3366gを添加し、超音波により炭素繊維粉末を均一に分散させる。その後、加熱蒸留するとともに、溶媒を回収し、粉末凝集体を得る。乾燥、研磨および篩い分けの後、フェノール樹脂が均一に被覆した10〜100μmの平均粒径を有する炭素繊維複合粉末を得る。そのうちフェノール樹脂の体積百分率は30%である。
【0047】
(b)設計部品のCADモデルに従って、3DPプロセスにより相応する炭素繊維初期ブランクを形成する。3DPのプロセスパラメータは以下の通りである。接着剤は質量分率が75%の無水エタノール、質量分率が23%の脱イオン水および質量分率が2%のポリエチレングリコール400からなり、粉体散布層の厚さは0.1mm、走査回数は1回で、炭素繊維の初期ブランクが成形される。
【0048】
(c)粘度20mPa・sの質量分率が50%の熱硬化性フェノール樹脂アルコール溶液を準備し、真空浸透装置中で炭素繊維初期ブランクに含浸させる。含浸後の初期ブランクを2時間空気乾燥し、次いで80℃の雰囲気中で乾燥する。炭化炉に移し、まず120℃で1時間、次いで150℃で0.5時間保温し、次に190℃まで昇温して2時間保温して、硬化反応を完了させる。その後、アルゴンガスで保護しながら、2℃/分の速度で550℃まで昇温するとともに0.5時間保温し、同様の速度で900℃まで昇温し、1時間保温した後、炉ごと冷却する。含浸、硬化と炭化の3つの工程を炭化処理が完了するまで繰り返し行う。C/C多孔質体の密度は0.799g/cm、開放気孔率は45.1%であった。
【0049】
(d)窒化ホウ素をブラッシングした黒鉛ルツボにC/C多孔質体を入れ、抵抗炉内の真空度を20Paに制御し、理論的に必要な量の2倍のSi粉末を多孔質体上に載置し、まず450℃に昇温し、1時間保温した後、800℃まで昇温して、1時間保温し、次いで1300℃まで昇温して、1時間保温し、最後に、1600℃まで昇温して、1時間保温して、溶融シリコン化反応を完了させる。その後、2000℃まで昇温して残留シリコンを除去し、予備的C/C−SiC複合材料を得る。予備的C/C−SiC複合材料を化学気相浸透により高密度化する。1200℃でトリクロロメタンおよび水素ガスを導入して、1時間反応させ、最終的なC/C−SiC部品を得た。
【実施例3】
【0050】
(a)ウロトロピンを7wt%含有する熱可塑性フェノール樹脂1000gをアセトン溶液1000gに完全に溶解する。上記溶液に長さ50〜200μmの短炭素繊維粉末2164gを添加し、超音波により炭素繊維粉末を均一に分散させる。その後、加熱蒸留するとともに、溶媒を回収し、粉末凝集体を得る。乾燥、研磨および篩い分けの後、フェノール樹脂が均一に被覆した10〜80μmの平均粒径を有する炭素繊維複合粉末を得る。そのうちフェノール樹脂の体積百分率は40%である。
【0051】
(b)設計部品のCADモデルに従って、SLSプロセスにより相応する炭素繊維初期ブランクを形成する。SLSのプロセスパラメータは以下の通りである。レーザー出力16W、走査速度3500mm/s、走査ピッチ0.15mm、粉体散布層の厚さは0.12mm、予熱温度60℃で炭素繊維初期ブランクが形成される。
【0052】
(c)粘度20mPa・sの質量分率が50%の熱硬化性フェノール樹脂アルコール溶液を準備し、真空浸透装置中で炭素繊維初期ブランクに含浸させる。含浸後の初期ブランクを3時間空気乾燥し、次いで80℃の雰囲気中で乾燥する。炭化炉に移し、まず120℃で2時間、次いで165℃で1時間保温し、次に190℃まで昇温して4時間保温して、硬化反応を完了させる。その後、アルゴンの保護下で2℃/分の速度で550℃まで昇温するとともに0.5時間保温し、同様の速度で1000℃まで昇温し、1時間保温した後、炉ごと冷却する。含浸、硬化と炭化の3つの工程を炭化処理が完了するまで繰り返し行う。C/C多孔質体の密度は0.82g/cm、開放気孔率は43.2%であった。
【0053】
(d)窒化ホウ素をブラッシングした黒鉛ルツボにC/C多孔質体を入れ、抵抗炉内の真空度を20Paに制御し、理論的に必要な量の2倍のSi粉末を多孔質体上に載置し、まず450℃に昇温し、1時間保温した後、800℃まで昇温して、1時間保温し、次いで1300℃まで昇温して、1時間保温し、最後に、1600℃まで昇温して、1時間保温して、溶融シリコン化反応を完了させる。その後、2000℃まで昇温して残留シリコンを除去し、予備的C/C−SiC複合材料を得る。予備的C/C−SiC複合材料を化学気相浸透により高密度化する。1200℃でトリクロロメタンおよび水素ガスを導入して、1時間反応させ、最終的なC/C−SiC部品を得た。
【実施例4】
【0054】
(a)ウロトロピンを7wt%含有する熱可塑性フェノール樹脂1000gをアセトン溶液1000gに完全に溶解する。上記溶液に長さ50〜200μmの短炭素繊維粉末1442gを添加し、超音波により炭素繊維粉末を均一に分散させる。その後、加熱蒸留するとともに、溶媒を回収し、粉末凝集体を得る。乾燥、研磨および篩い分けの後、フェノール樹脂が均一に被覆した10〜150μmの平均粒径を有する炭素繊維複合粉末を得る。そのうちフェノール樹脂の体積百分率は50%である。
【0055】
(b)設計部品のCADモデルに従って、3DPプロセスにより相応する炭素繊維初期ブランクを形成する。3DPのプロセスパラメータは以下の通りである。レーザー出力16W、走査速度3500mm/s、走査ピッチ0.15mm、粉体散布層の厚さは0.12mm、予熱温度60℃で炭素繊維初期ブランクが形成される。
【0056】
(c)粘度20mPa・sの質量分率が50%の熱硬化性フェノール樹脂アルコール溶液を準備し、真空浸透装置中で炭素繊維初期ブランクに含浸させる。含浸後の初期ブランクを3時間空気乾燥し、次いで80℃の雰囲気中で乾燥する。炭化炉に移し、まず120℃で2時間、次いで165℃で1時間保温し、次に190℃まで昇温して4時間保温して、硬化反応を完了させる。その後、アルゴンガスで保護しながら、2℃/分の速度で550℃まで昇温するとともに0.5時間保温し、同様の速度で1000℃まで昇温し、1時間保温した後、炉ごと冷却する。含浸、硬化と炭化の3つの工程を炭化処理が完了するまで繰り返し行う。C/C多孔質体の密度は0.91g/cm、開放気孔率は38.5%であった。
【0057】
(d)窒化ホウ素をブラッシングした黒鉛ルツボにC/C多孔質体を入れ、抵抗炉内の真空度を20Paに制御し、理論的に必要な量の2倍のSi粉末を多孔質体上に載置し、まず450℃に昇温し、1時間保温した後、800℃まで昇温して、1時間保温し、次いで1300℃まで昇温して、1時間保温し、最後に、1600℃まで昇温して、1時間保温して、溶融シリコン化反応を完了させる。その後、2000℃まで昇温して残留シリコンを除去し、予備的C/C−SiC複合材料を得る。予備的C/C−SiC複合材料を化学気相浸透により高密度化する。1200℃でトリクロロメタンおよび水素ガスを導入して、1時間反応させ、最終的なC/C−SiC部品を得た。
【実施例5】
【0058】
(a)ウロトロピンを9wt%含有する熱可塑性フェノール樹脂1000gをアセトン溶液1000gに完全に溶解する。上記溶液に長さ50〜200μmの短炭素繊維粉末962gを添加し、超音波により炭素繊維粉末を均一に分散させる。その後、加熱蒸留するとともに、溶媒を回収し、粉末凝集体を得る。乾燥、研磨および篩い分けの後、フェノール樹脂が均一に被覆した10〜100μmの平均粒径を有する炭素繊維複合粉末を得る。そのうちフェノール樹脂の体積百分率は60%である。
【0059】
(b)設計部品のCADモデルに従って、SLSプロセスにより相応する炭素繊維初期ブランクを形成する。SLSのプロセスパラメータは以下の通りである。レーザー出力12W、走査速度2500mm/s、走査ピッチ0.12mm、粉体散布層の厚さは0.1mm、予熱温度60℃で炭素繊維初期ブランクが形成される。
【0060】
(c)粘度20mPa・sの質量分率が50%のフラン樹脂アルコール溶液を準備し、真空浸透装置中で炭素繊維初期ブランクに含浸させる。含浸後の初期ブランクを3時間空気乾燥し、次いで80℃の雰囲気中で乾燥する。炭化炉に移し、まず130℃で2時間、次いで160℃で1時間保温し、次に190℃まで昇温して4時間保温して、硬化反応を完了させる。その後、アルゴンの保護下で2℃/分の速度で550℃まで昇温するとともに0.5時間保温し、同様の速度で950℃まで昇温し、1時間保温した後、炉ごと冷却する。含浸、硬化と炭化の3つの工程を炭化処理が完了するまで繰り返し行う。C/C多孔質体の密度は0.99g/cm、開放気孔率は36.1%であった。
【0061】
(d)窒化ホウ素をブラッシングした黒鉛ルツボにC/C多孔質体を入れ、抵抗炉内の真空度を20Paに制御し、理論的に必要な量の2倍のSi粉末を多孔質体上に載置し、まず500℃に昇温し、1時間保温した後、850℃まで昇温して、1時間保温し、次いで1350℃まで昇温して、1時間保温し、最後に、1600℃まで昇温して、1時間保温して、溶融シリコン化反応を完了させる。その後、2000℃まで昇温して残留シリコンを除去し、予備的C/C−SiC複合材料を得る。予備的C/C−SiC複合材料を化学気相浸透により高密度化する。1200℃でトリクロロメタンおよび水素ガスを導入して、1時間反応させ、最終的なC/C−SiC部品を得た。
【実施例6】
【0062】
(a)ウロトロピンを10wt%含有する熱可塑性フェノール樹脂1000gをアセトン溶液1000gに完全に溶解する。上記溶液に長さ50〜200μmの短炭素繊維粉末361gを添加し、超音波により炭素繊維粉末を均一に分散させる。その後、加熱蒸留するとともに、溶媒を回収し、粉末凝集体を得る。乾燥、研磨および篩い分けの後、フェノール樹脂が均一に被覆した10〜150μmの平均粒径を有する炭素繊維複合粉末を得る。そのうちフェノール樹脂の体積百分率は80%である。
【0063】
(b)設計部品のCADモデルに従って、3DPプロセスにより相応する炭素繊維初期ブランクを形成する。3DPのプロセスパラメータは以下の通りである。レーザー出力16W、走査速度3500mm/s、走査ピッチ0.15mm、粉体散布層の厚さは0.12mm、予熱温度60℃で炭素繊維初期ブランクが形成される。
【0064】
(c)粘度20mPa・sの質量分率が50%の熱硬化性フェノール樹脂アルコール溶液を準備し、真空浸透装置中で炭素繊維初期ブランクに含浸させる。含浸後の初期ブランクを3時間空気乾燥し、次いで80℃の雰囲気中で乾燥する。炭化炉に移し、まず120℃で2時間、次いで165℃で1時間保温し、次に190℃まで昇温して4時間保温して、硬化反応を完了させる。その後、アルゴンガスで保護しながら、2℃/分の速度で550℃まで昇温するとともに0.5時間保温し、同様の速度で1000℃まで昇温し、1時間保温した後、炉ごと冷却する。含浸、硬化と炭化の3つの工程を炭化処理が完了するまで繰り返し行う。C/C多孔質体の密度は1.08g/cm、開放気孔率は34.6%であった。
【0065】
(d)窒化ホウ素をブラッシングした黒鉛ルツボにC/C多孔質体を入れ、抵抗炉内の真空度を20Paに制御し、理論的に必要な量の2倍のSi粉末を多孔質体上に載置し、まず450℃に昇温し、1時間保温した後、800℃まで昇温して、1時間保温し、次いで1300℃まで昇温して、1時間保温し、最後に、1600℃まで昇温して、1時間保温して、溶融シリコン化反応を完了させる。その後、2000℃まで昇温して残留シリコンを除去し、予備的C/C−SiC複合材料を得る。予備的C/C−SiC複合材料を化学気相浸透により高密度化する。1200℃でトリクロロメタンおよび水素ガスを導入して、1時間反応させ、最終的なC/C−SiC部品を得た。
【0066】
以上のように、この発明を実施形態により開示したが、もとより、この発明を限定するためのものではなく、当業者であれば容易に理解できるように、この発明の技術思想の範囲内において、適当な変更ならびに修正が当然なされうるものであるから、その特許権保護の範囲は、特許請求の範囲および、それと均等な領域を基準として定めなければならない。
図1