特許第6859448号(P6859448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6859448繊維強化樹脂部材の製造方法、燃料タンク及び繊維強化樹脂部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859448
(24)【登録日】2021年3月29日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂部材の製造方法、燃料タンク及び繊維強化樹脂部材
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/18 20060101AFI20210405BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20210405BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20210405BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20210405BHJP
   B29C 70/68 20060101ALI20210405BHJP
   B29C 43/58 20060101ALI20210405BHJP
   B60K 15/03 20060101ALI20210405BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20210405BHJP
【FI】
   B29C43/18
   B29C43/34
   B29C70/16
   B29C70/42
   B29C70/68
   B29C43/58
   B60K15/03 B
   B29K105:08
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-546599(P2019-546599)
(86)(22)【出願日】2018年9月11日
(86)【国際出願番号】JP2018033601
(87)【国際公開番号】WO2019069639
(87)【国際公開日】20190411
【審査請求日】2020年1月10日
(31)【優先権主張番号】特願2017-196203(P2017-196203)
(32)【優先日】2017年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 龍志
(72)【発明者】
【氏名】森本 鷹志
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−270148(JP,A)
【文献】 実開平5−46915(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/18
B29C 43/34
B29C 43/58
B29C 70/16
B29C 70/42
B29C 70/68
B60K 15/03
B29K 105/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維シートを当該繊維シートよりもサイズが大きく繊維が含有されていない樹脂シートで挟むように積層した積層体を準備する準備工程と、
前記繊維シートが露出しないように前記積層体を加圧成形する本成形工程と、を有し、
前記本成形工程後、前記繊維シートが延在する部分に取付孔を形成する一方、前記繊維シートの端部よりも外側の位置の未強化部の領域において不要な部分をカットすることを特徴とする繊維強化樹脂部材の製造方法。
【請求項2】
前記本成形工程では、前記繊維シートの端部よりも外側の位置で、前記樹脂シートを成形型によってピンチすることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂部材の製造方法。
【請求項3】
前記積層体を、複数の前記繊維シートと、複数の前記繊維シートの間及び最外層に配置される複数の前記樹脂シートとで構成し、
前記準備工程では、最外層に配置される前記樹脂シートのみのサイズを前記繊維シートよりも大きくすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の繊維強化樹脂部材の製造方法。
【請求項4】
タンク本体と、
前記タンク本体の外側を挟持する一対の繊維強化樹脂部材と、
一対の前記繊維強化樹脂部材の両端を締結する締結部と、を有し、
前記繊維強化樹脂部材は、繊維強化層と繊維が含有されていないマトリックス樹脂層とが積層して構成されるとともに、端部に前記繊維強化層が介在していない未強化部が形成されており、
前記締結部用の取付孔が前記繊維強化層が延在する部分に形成され、前記未強化部の領域において不要な部分がカットされていることを特徴とする燃料タンク。
【請求項5】
繊維強化層と繊維が含有されていないマトリックス樹脂層とが積層して構成されるとともに、端部に前記繊維強化層が介在していない未強化部が形成されており、
取付孔が前記繊維強化層が延在する部分に形成され、前記未強化部の領域において不要な部分がカットされていることを特徴とする繊維強化樹脂部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂部材の製造方法、燃料タンク及び繊維強化樹脂部材に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂(FRP:Fiber-Reinforced Plastics)部材の製造方法として、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1の製造方法は、繊維シートと樹脂シートとを積層させて積層体を形成した後、成形型を用いて成形するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−047596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の製造方法では、繊維強化樹脂部材の端部に繊維が露出することにより、露出した繊維が毛羽立ってしまうという問題がある。作業者が毛羽立った部分に触れると裂傷するおそれがあるため繊維強化樹脂部材の取扱いが困難となる。また、毛羽立った部分から繊維がほつれたり、繊維と樹脂との間から物質が入り込んだりして製品の劣化の原因にもなる。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、繊維の毛羽立ちの発生を抑えることができる繊維強化樹脂部材の製造方法、燃料タンク及び繊維強化樹脂部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、繊維シートを当該繊維シートよりもサイズが大きく繊維が含有されていない樹脂シートで挟むように積層した積層体を準備する準備工程と、前記繊維シートが露出しないように前記積層体を加圧成形する本成形工程と、を有し、前記本成形工程後、前記繊維シートが延在する部分に取付孔を形成する一方、前記繊維シートの端部よりも外側の位置の未強化部の領域において不要な部分をカットすることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、繊維強化樹脂部材の外部に繊維が露出しないので、繊維の毛羽立ちの発生を抑えることができる。
【0008】
また、前記本成形工程では、前記繊維シートの端部よりも外側の位置で、前記樹脂シートを成形型によってピンチすることが好ましい。
【0009】
かかる構成によれば、別途端部をカットする作業を省略することができるため、作業工数を減らすことができる。
【0010】
また、前記積層体を、複数の前記繊維シートと、複数の前記繊維シートの間及び最外層に配置される複数の前記樹脂シートとで構成し、前記準備工程では、最外層に配置される前記樹脂シートのみのサイズを前記繊維シートよりも大きくすることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、最外層の樹脂シートのみを大きくするため、材料コストを低減することができる。
【0012】
また、本発明は、タンク本体と、前記タンク本体の外側を挟持する一対の繊維強化樹脂部材と、一対の前記繊維強化樹脂部材の両端を締結する締結部と、を有し、前記繊維強化樹脂部材は、繊維強化層と繊維が含有されていないマトリックス樹脂層とが積層して構成されるとともに、端部に前記繊維強化層が介在していない未強化部が形成されており、前記締結部用の取付孔が前記繊維強化層が延在する部分に形成され、前記未強化部の領域において不要な部分がカットされていることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、繊維強化樹脂部材の端部が未強化部によって覆われることにより、繊維が露出しない。これにより、炭素性強化樹脂部材をタンク本体に組み付ける作業を容易に行うことができる。
【0014】
また、本発明は、繊維強化層と繊維が含有されていないマトリックス樹脂層とが積層して構成されるとともに、端部に前記繊維強化層が介在していない未強化部が形成されており、取付孔が前記繊維強化層が延在する部分に形成され、前記未強化部の領域において不要な部分がカットされていることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、繊維強化樹脂部材の外部に繊維が露出しないので、繊維の毛羽立ちの発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の繊維強化樹脂部材の製造方法、燃料タンク及び繊維強化樹脂部材によれば、繊維の毛羽立ちの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一実施形態に係る燃料タンクを示す斜視図である。
図2】第一実施形態の繊維強化樹脂部材周りを示す断面図である。
図3】繊維強化樹脂部材を示す斜視図である。
図4】繊維強化樹脂部材を示す側面図である。
図5図4のA部分の要部拡大断面図である。
図6図4のB部分の要部拡大断面図である。
図7】第一実施形態に係る繊維強化樹脂部材の製造方法の準備工程を示す斜視図である。
図8】第一実施形態に係る繊維強化樹脂部材の製造方法の配置工程及び成形工程を示す断面図である。
図9】第二実施形態の繊維強化樹脂部材の製造方法の準備工程を示す斜視図である。
図10】第二実施形態の繊維強化樹脂部材の製造方法により完成した繊維強化樹脂部材を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る繊維強化樹脂部材の製造方法を燃料タンクの製造方法に適用する場合を想定して説明する。以下の説明において、「前後」、「左右」、「上下」を言うときは、図1に示した方向を基準とする。なお、各方向は、燃料タンクTを説明する上で便宜上設定したものであり、燃料タンクTを車両に搭載したときの方向を限定する趣旨ではない。
【0019】
[第一実施形態]
燃料タンクTは、図1及び図2に示すように、自動車やバイク並びに船舶等の移動手段に搭載されるものであり、タンク本体1と、複数の繊維強化樹脂部材21(本実施形態では8つ)とで主に構成されている。
【0020】
タンク本体1は、ガソリン等の燃料を貯溜する樹脂製の中空容器であり、例えばバリア層を含んだ複数層構造になっている。タンク本体1は、例えば、ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を主な材料としている。タンク本体1は、例えばブロー成形等によって成形される。
【0021】
タンク本体1は、下壁11と、上壁12と、第一側壁13、第二側壁14、第三側壁15及び第四側壁16とで構成されている。タンク本体1の下壁11、上壁12、第三側壁15及び第四側壁16には、全周に亘って連続する凹部3が形成されている。凹部3は、本実施形態では間をあけて前後方向に平行に4つ並設されている。凹部3は、図2に示すように、底部及び当該底部から立ち上がる一対の側壁を有し、外側に開放するように形成されている。凹部3は、全周に亘って一定の断面で形成されている。凹部3の個数は限定されるものではない。
【0022】
繊維強化樹脂部材21は、タンク本体1を補強する部材であって、タンク本体1の外面に間をあけて前後方向に平行に並設されている。繊維強化樹脂部材21は、繊維シート(炭素繊維シート、ガラス繊維シート等)に樹脂を含浸させて形成された繊維強化樹脂(FRP:Fiber-Reinforced Plastics)である。繊維強化樹脂部材21は、図3及び図4に示すように、薄い帯状の部材であり、タンク本体1(図1参照)の外面に沿って一方の半周側を覆うバンド部21aと、バンド部21aの両端から外側方向に延在する延在部21b,21bとで構成されている。バンド部21aの形状は、タンク本体1の外面の形状に対応して成形されている。両方の延在部21bには締結部22(例えば、ボルト及びナット)用の取付孔21cが形成されている。
【0023】
繊維強化樹脂部材21は、タンク本体1に形成される凹部3に配置された状態で、上下を一組として締結部22により締結される。つまり、一対の繊維強化樹脂部材21でタンク本体1の外側を挟持している。下側に配置された繊維強化樹脂部材21は、第三側壁15、下壁11及び第四側壁16に亘って連続的に配置されている。また、上側に配置された繊維強化樹脂部材21は、第三側壁15、上壁12及び第四側壁16に亘って連続的に配置されている。なお、繊維強化樹脂部材21の配置位置はタンク本体1の形状や用途に応じて適宜設定すればよい。
【0024】
図5は、図4のA部分の要部拡大断面図である。図5は、繊維強化樹脂部材21のバンド部21aの断面を模式的に示すものである。
繊維強化樹脂部材21は、例えば、三つの繊維強化層31と、四つのマトリックス樹脂層32とで構成されており、各々の層が交互に積層されている。なお、層の厚さや層の数は模式的に示すものであって、本発明を限定するものではない。
【0025】
繊維強化層31は、繊維シート41(図7参照)にマトリックス樹脂(マトリックス樹脂シート42(図7参照))が含浸し、硬化して形成された層である。
マトリックス樹脂層32は、マトリックス樹脂(マトリックス樹脂シート42)が硬化して形成された層である。マトリックス樹脂層32は、繊維強化層31の両面(つまり、繊維強化層31の間や繊維強化樹脂部材21の最外層(表面))に形成されている。
【0026】
図6は、図4のB部分の要部拡大断面図である。図6は、繊維強化樹脂部材21の延在部21bの断面を模式的に示すものである。
繊維強化層31は、延在部21bの端部まで到達しておらず、延在部21bの端部には、複数のマトリックス樹脂(マトリックス樹脂シート42(図7参照))が一体となって硬化した未強化部33が形成されている。なお、図示を省略するが、繊維強化層31の幅方向における両側にも未強化部33が形成されている。そのため、本実施形態における繊維強化樹脂部材21は、マトリックス樹脂によって覆われることで繊維強化層31が外部に露出しないようになっている。なお、取付孔21c(図3参照)は、未強化部33の領域ではなく繊維強化層31が延在する部分に形成されていることが好ましい。
【0027】
次に、燃料タンクの製造方法について説明する。燃料タンクの製造方法では、タンク本体成形工程と、繊維強化樹脂部材成形工程と、繊維強化樹脂部材取付工程と、を主に行う。
【0028】
タンク本体成形工程は、タンク本体用成形型でタンク本体1(図1参照)をブロー成形する工程である。本体成形工程では、一方型と他方型との間に筒状又はシート状のパリソンをダイから吐出させる。パリソンは、例えば、内部にバリア層を含んで複数層で構成された熱可塑性樹脂である。タンク本体用成形型は、パリソンが塑性変形するように所定の温度まで予め加熱させておく。そして、一方型及び他方型を型締めしつつ、内部にエアーを供給することで、パリソンはタンク本体用成形型の成形面に転写される。なお、一方型及び他方型に設けられた真空引き手段を用いてパリソンを吸引し、パリソンをタンク本体用成形型に転写させてもよい。所定の時間が経過したら脱型し、余分なバリを切除することでタンク本体1が完成する。
【0029】
次に、繊維強化樹脂部材成形工程について説明する。繊維強化樹脂部材成形工程は、繊維強化樹脂部材21を製造する工程である。繊維強化樹脂部材成形工程は、準備工程と、配置工程と、本成形工程と、を主に行う。
【0030】
準備工程は、図7に示すように、複数の繊維シート41と、複数のマトリックス樹脂シート42と、を順番に重ね合わせて積層体40を形成する工程である。準備工程では、マトリックス樹脂シート42を繊維シート41の両面に配置する。これにより、マトリックス樹脂シート42は、繊維シート41の間や積層体40の最外層(表面)に配置される。
【0031】
繊維シート41は、炭素繊維、ガラス繊維又は樹脂繊維等で形成された薄いシートである。繊維シート41の種類は特に限定されず、例えば繊維を織ったクロス材や細かく切った短繊維を成形したフェルト材などであってよい。また、繊維シート41の形状や大きさは特に限定されるものではないが、完成品の形状に合わせて予め成形されているのがよい。ここでの繊維シート41は、繊維強化樹脂部材21(図3参照)に合わせて、細長い帯状を呈している。
【0032】
マトリックス樹脂シート42は、熱可塑性樹脂(高密度ポリエチレン、ポリエチレン、ポリアミド(ナイロン)等)又は熱硬化性樹脂(フェノール樹脂、エポキシ樹脂等)で形成された薄いフィルムである。マトリックス樹脂シート42は、繊維シート41を覆うことができる形状及び大きさであるのがよく、例えば繊維シート41と同様の形状であると共に繊維シート41よりもサイズが大きいものである。ここでのマトリックス樹脂シート42は、繊維シート41と同様に細長い帯状を呈しており、サイズが繊維シート41よりも大きくなっている。なお、積層体40の最外層(表面)に配置されるマトリックス樹脂シート42のサイズのみを、繊維シート41を覆うことができる大きさにしてもよい。
【0033】
配置工程は、図8に示すように、積層体40を成形型Kに配置する工程である。成形型Kは、下側に配置される第一型K1と、上側に配置される第二型K2を用いている。第一型K1及び第二型K2とも内部に温度調節手段Mを備えている。配置工程では、第一型K1と第二型K2との間に積層体40を配置する。
【0034】
本成形工程は、図8に示すように、成形型Kによって繊維強化樹脂部材21(図3参照)を成形する工程であり、第一型K1及び第二型K2を型締めしてプレス成形する。本成形工程では、成形型Kの温度は積層体40が成形可能な温度に適宜設定すればよい。そして、脱型した後に、レーザー加工やウォータージェット加工などで不要な部分をカットし、繊維強化樹脂部材21(図3参照)が完成する。ここで、不要な部分をカットするのは未強化部33(図6参照)の領域であって、繊維強化層31をカットしないようにする(つまり、繊維強化層31の外側をカットする)。また、繊維シート41の端部よりも外側の位置、つまり、未強化部33の領域を成形型Kによってピンチして(挟んで)、不要な部分をカットしてもよい。
【0035】
なお、本成形工程の前に、予備成形工程を行うようにしてもよい。予備成形工程と本成形工程とでは、例えば成形型Kの温度が異なっており、予備成形工程を行った後で不要な部分のカットを行い、その後に本成形工程を行ってもよい。その場合、予備成形工程後にカットを行った後で、新たなマトリックス樹脂シート42を最外層(表面)に配置し、そして本成形工程を行ってもよい。
また、マトリックス樹脂シート42のサイズを本成形工程後において不要な部分が発生しないように調整することで、不要な部分をカットする作業を省略することも可能である。
【0036】
次に、繊維強化樹脂部材取付工程について説明する。繊維強化樹脂部材取付工程は、繊維強化樹脂部材21(図3参照)をタンク本体1(図1参照)に取り付ける工程である。繊維強化樹脂部材取付工程では、タンク本体1の下壁11及び上壁12に形成される凹部3に繊維強化樹脂部材21を配置する。そして、上下に配置される繊維強化樹脂部材21を一組として締結部22を用いて締結する。これにより、図1に示す燃料タンクTが完成する。なお、タンク本体1と繊維強化樹脂部材21との間に図示しないクッション部材を配置してもよい。
【0037】
以上説明した第一実施形態に係る繊維強化樹脂部材の製造方法によれば、図6に示すように、繊維強化樹脂部材21の端部に繊維強化層31が達しておらず、繊維強化樹脂部材21の端部には未強化部33が形成される。これにより、繊維強化層31が繊維強化樹脂部材21の外部に露出しないので、繊維の毛羽立ちの発生を抑えることができる。そのため、繊維強化樹脂部材21の取り扱いが容易となるとともに、繊維強化樹脂部材取付工程において、繊維強化樹脂部材21を容易に組み付けることができる。また、繊維強化層31の繊維がほつれたり、繊維と樹脂との間から物質が入り込んで劣化することを防ぐことができる。
【0038】
また、本実施形態の一例では、成形型Kによって繊維シート41の外側をピンチするので、別途端部をカットする作業を省略することができるため、作業工数を減らすことができる。
【0039】
また、本実施形態の一例では、積層体40が、複数の繊維シート41と、繊維シート41の間及び最外層に配置される複数のマトリックス樹脂シート42とで構成される。そして、準備工程では、最外層に配置されるマトリックス樹脂シート42のサイズのみを繊維シート41よりも大きくしてある。そのため、材料コストを低減することができる。
【0040】
[第二実施形態]
第二実施形態では、直方体のタンク本体(図示せず)の外面(例えば、上面)に薄板状の繊維強化樹脂部材を取り付ける場合について説明する。
第二実施形態に係る繊維強化樹脂部材成形工程は、第一実施形態と同様に、準備工程と、配置工程と、本成形工程と、を主に行う。
【0041】
準備工程は、図9に示すように、複数の繊維シート141と、複数のマトリックス樹脂シート142と、を順番に重ね合わせて積層体140を形成する工程である。準備工程では、マトリックス樹脂シート142を繊維シート141の両面に配置する。これにより、マトリックス樹脂シート42は、繊維シート41の間や積層体140の最外層(表面)に配置される。
【0042】
繊維シート141は、矩形状を呈し、中央部分に切欠き141aが形成されている。切欠き141aは、例えば、直方体のタンク本体(図示せず)が有するポンプモジュール(図示省略)に対応したものである。マトリックス樹脂シート142は、繊維シート141を覆うことができる形状及び大きさであり、ここでは矩形状を呈する。
【0043】
配置工程及び本成形工程は、第一実施形態と同様なので説明を省略する。第二実施形態の繊維強化樹脂部材の製造方法により完成した繊維強化樹脂部材121の概略を図10に示す。図10は、繊維強化樹脂部材121の平面を模式的に示すものである。
【0044】
繊維強化樹脂部材121は、繊維強化層131と、繊維強化層131の両面に形成されるマトリックス樹脂層132とで構成されており、各々の層が交互に積層されている。マトリックス樹脂層132に形成される切欠き132aは、例えば本成形工程において成形型Kによってピンチして(挟んで)形成されたものである。なお、準備工程において、切欠きが形成されたマトリックス樹脂シート142を予め用意し、それを積層してもよい。
【0045】
繊維強化層131は、繊維強化樹脂部材121の外縁まで到達しておらず、繊維強化樹脂部材121の外縁には、複数のマトリックス樹脂(マトリックス樹脂シート142(図9参照))が一体となって硬化した未強化部133が形成されている。未強化部133は、繊維強化層131の外縁の全周に亘って形成されている。つまり、未強化部133によって繊維強化層131が外部に露出していない。
【0046】
以上説明した第二実施形態に係る繊維強化樹脂部材の製造方法によれば、第一実施形態に係る繊維強化樹脂部材の製造方法と同様の効果を奏する。
【0047】
以上発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 タンク本体
3 凹部
21,121 繊維強化樹脂部材
31,131 繊維強化層
32,132 マトリックス樹脂層
33,133 未強化部
40,140 積層体
41,141 繊維シート
42,142 マトリックス樹脂シート(樹脂シート)
T 燃料タンク
K 成形型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10