【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、少なくとも一方の表面に、多数の凹部と多数の凸部とを有し、前記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記凹部が平行して規則的に並列している合わせガラス用中間膜であって、前記底部が連続した溝形状の凹部の間隔Smに対する前記底部が連続した溝形状の凹部の底部の回転半径Rの比率(R/Sm×100)が15%以上である合わせガラス用中間膜である。
なお、本発明において、「少なくとも一方の表面に、多数の凹部と多数の凸部とを有し」とは「少なくとも一方の表面に、多数の凹部と多数の凸部とが形成されている」ことをも意味し、「凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記凹部が平行して規則的に並列しており」とは「凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記凹部が平行して規則的に形成されている」ことをも意味する。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、合わせガラス用中間膜の凹凸形状を特定のものとすることにより、ニップロール法によっても高い脱気性を発揮することができ、視認性の高い合わせガラスを製造できることを見出し、本発明を完成した。なお、本発明に係る合わせガラス用中間膜は、ニップロール法だけではなく、真空脱気法に用いてもよい。
【0012】
本発明の合わせガラス用中間膜は、少なくとも一方の表面に、多数の凹部と多数の凸部とを有し、前記凹部は、底部が連続した溝形状を有し、隣接する前記凹部が平行して規則的に並列している。これにより、ニップロール法による合わせガラスの製造時における脱気性を確保することができる。上記凹凸は、一方の表面にのみ有してもよいが、著しく脱気性が向上することから、合わせガラス用中間膜の両面に有することが好ましい。
【0013】
本発明の合わせガラス用中間膜においては、上記少なくとも一方の表面に有する凹凸の凹部は、底部が連続した溝形状を有し(即ち、「刻線状の凹部」を有し)、隣接する凹部が平行して規則的に並列している。一般に、2枚のガラス板の間に合わせガラス用中間膜が積層された積層体を圧着するときの空気の抜け易さは、上記凹部の底部の連通性及び平滑性と密接な関係がある。中間膜の少なくとも一方の面の凹凸の形状を刻線状の凹部が平行して規則的に並列した形状とすることにより、上記の底部の連通性が優れ、著しく脱気性が向上する。
なお、「規則的に並列している」とは、隣接する上記刻線状の凹部が平行して等間隔に並列していてもよく、隣接する上記刻線状の凹部が平行して並列しているが、すべての隣接する上記刻線状の凹部の間隔が等間隔でなくともよいことを意味する。また、上記刻線上の凹部は、底部の全てが連続した溝形状である必要は無く、底部の一部に分断壁を有していてもよい。また、隣接する凹部が平行して規則的に並列していれば、底部が溝の形状は直線状でなくともよく、例えば、波形状やジグザグ状であってもよい。
【0014】
本発明の合わせガラス用中間膜においては、上記底部が連続した溝形状の凹部の間隔Smに対する上記底部が連続した溝形状の凹部の底部の回転半径Rの比率(R/Sm×100)が15%以上である。これにより、ニップロール法で合わせガラスを製造する場合において、予備圧着時に充分な脱気性を発揮できるとともに、予備圧着時の圧力により刻線状の凹部を潰すことができ、空気が残存することを防止し、気泡のない透明な合わせガラスを得ることができる。
上記底部が連続した溝形状の凹部の間隔Smに対する上記底部が連続した溝形状の凹部の底部の回転半径Rの比率(R/Sm×100)は20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、更に好ましくは50%以上である。なお、上記底部が連続した溝形状の凹部の間隔Smに対する上記底部が連続した溝形状の凹部の底部の回転半径Rの比率(R/Sm×100)は、200%以下であることが好ましく、より好ましくは100%以下である。
【0015】
本明細書において上記刻線状の凹部の底部の回転半径Rは、合わせガラス用中間膜を片刃カミソリ(例えば、フェザー安全カミソリ社製、FAS−10)を用いて刻線状の凹部の方向に対して垂直方向、かつ、膜厚み方向に平行に、切断面を変形させないように、カミソリを凹部と垂直方向に滑らせることなく、厚み方向に平行方向に押し出すことで切断し、その断面をマイクロスコープ(例えば、オリンパス社製「DSX−100」)を用いて観察し、測定倍率を208倍にて撮影し、更に撮影画像を50μm/20mmになるように拡大表示させた状態で、付属ソフト内の計測ソフトを用いて、刻線状の凹部の底部に内接する円を描いたときの該円の半径を該凹部の回転半径Rとする方法により求めることができる。また、測定時の環境は23℃及び30RH%下である。ここで、中間膜中の任意の5点を採取してサンプルとし、各サンプル毎にRを3点計測し、合計15点の平均値をRとする。
また、本明細書における上記刻線状の凹部の間隔Smは、JIS B−0601(1994)に規定される。上記刻線状の凹部の間隔Smは、光学顕微鏡(SONIC社製「BS−D8000III」)を用いて、合わせガラス用中間膜の第1面及び第2面(観察範囲20mm×20mm)を観察し、隣接する凹部の間隔を測定したうえで、隣接する凹部の最底部間の最短距離の平均値を算出することにより得られる。
【0016】
上記刻線状の凹部の底部の回転半径Rの好ましい下限は20μm、好ましい上限は250μmである。上記刻線状の凹部の底部の回転半径Rがこの範囲内であれば、ニップロール法で合わせガラスを製造する場合において、予備圧着時の圧力により刻線状の凹部を潰すことがより容易であり、より優れた脱気性を発揮する。上記刻線状の凹部の底部の回転半径Rのより好ましい下限は40μm、より好ましい上限は125μmである。
【0017】
上記刻線状の凹部の間隔Smの好ましい下限は50μm、好ましい上限は1000μmである。上記刻線状の凹部の間隔Smがこの範囲内であれば、ニップロール法で合わせガラスを製造する場合において、予備圧着時により優れた脱気性を発揮し、かつ、その圧力により刻線状の凹部を潰すことがより容易となる。上記刻線状の凹部の間隔Smのより好ましい下限は100μm、更に好ましい下限は175μm、より好ましい上限は400μm、更に好ましい上限は300μmである。上記刻線状の凹部の間隔を上記下限以上にすることで、真空バック方式においても良好な脱気性を持たせることができる。
【0018】
上記刻線状の凹部の粗さ(Rz)の好ましい下限は10μm、好ましい上限は80μmである。上記刻線状の凹部の粗さ(Rz)をこの範囲内とすることにより、優れた脱気性を発揮することができる。上記刻線状の凹部の粗さ(Rz)のより好ましい下限は20μm、より好ましい上限は65μmである。更に好ましい上限は50μmである。
なお、本明細書において刻線状の凹部の粗さ(Rz)は、JIS B−0601(1994)に規定され、刻線方向の凹部が連続する方向に対して横断するように垂直方向に測定することで得られる。ここで、測定機としては例えば小坂研究所社製「Surfcorder SE300」等を用いることができ、測定時のカットオフ値は2.5mm、基準長さは2.5mm、測定長さを12.5mmとし、予備長さを2.5mmとし、触診針の送り速度は0.5mm/秒、触針形状は先端半径2μm、先端角60°のものを用いる条件により測定することができる。また、測定時の環境は23℃及び30RH%下である。また測定する中間膜は測定時の環境下で3時間以上静置した後に測定する。
【0019】
本発明の合わせガラス用中間膜は、上記凹凸の凸部の先端の回転半径R’の好ましい下限は15μmである。これにより、ガラスと合わせガラス用中間膜間の摩擦力が大きくなり、ニップロール法により合わせガラスを製造する際に、コンベア上でガラスと合わせガラス用中間膜とがずれてしまうのをより効果的に防止することができる。上記凸部の先端の回転半径R’の上限は特に限定されないが、100μm以下が好ましい。これにより、中間膜同士を積層した際にも膜同士が接着することなく、取り扱い性が向上する。上記凸部の先端の回転半径R’のより好ましい下限は30μm、より好ましい上限は80μmである。
なお、上記凸部の先端の回転半径R’は、中間膜を刻線状の凹部の方向に対して垂直方向、かつ、膜厚み方向に切断し、その断面をマイクロスコープ(例えば、オリンパス社製「DSX−100」)を用いて観察し、測定倍率を555倍にて撮影し、更に撮影画像を50μ/20mmになるように拡大表示させた状態で、付属ソフト内の計測ソフトを用いて、凸形状の頂点に内接する円を描いたときの該円の半径を該凸部の先端の回転半径とする方法により求めることができる。また、測定時の環境は23℃及び30RH%下である。
【0020】
本発明の合わせガラス用中間膜は、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
上記熱可塑性樹脂として、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ三フッ化エチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。なかでも、ポリビニルアセタール、又は、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、ポリビニルアセタールがより好ましい。
【0021】
上記ポリビニルアセタールは、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)をアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。PVAのけん化度は、一般に、70〜99.9モル%の範囲内である。
【0022】
上記ポリビニルアセタールを得るためのPVAの重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは1700以上、特に好ましくは2000以上、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、より一層好ましくは3000以下、更に好ましくは3000未満、特に好ましくは2800以下である。上記ポリビニルアセタールは、重合度が上記下限以上及び上記上限以下であるPVAをアセタール化することにより得られるポリビニルアセタールであることが好ましい。上記重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
【0023】
PVAの重合度は平均重合度を示す。該平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド又はn−バレルアルデヒドが好ましく、n−ブチルアルデヒドがより好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0024】
上記ポリビニルアセタールは、ポリビニルブチラールであることが好ましい。ポリビニルブチラールの使用により、合わせガラス部材に対する中間膜の耐候性等がより一層高くなる。
【0025】
本発明の合わせガラス用中間膜は、可塑剤を含有することが好ましい。
上記可塑剤としては、合わせガラス用中間膜に一般的に用いられる可塑剤であれば特に限定されず、例えば、一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステル等の有機可塑剤や、有機リン酸化合物、有機亜リン酸化合物等のリン酸可塑剤等が挙げられる。
上記有機可塑剤として、例えば、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、テトラエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、ジエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ジエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエート等が挙げられる。なかでも、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、又は、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノエートを含むことが好ましく、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノエートを含むことがより好ましい。
【0026】
本発明の合わせガラス用中間膜は、接着力調整剤を含有することが好ましい。
上記接着力調整剤としては、例えば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好適に用いられる。上記接着力調整剤として、例えば、カリウム、ナトリウム、マグネシウム等の塩が挙げられる。
上記塩を構成する酸としては、例えば、オクチル酸、ヘキシル酸、2−エチル酪酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸の有機酸、又は、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。
【0027】
本発明の合わせガラス用中間膜は、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、接着力調整剤として変成シリコーンオイル、難燃剤、帯電防止剤、耐湿剤、熱線反射剤、熱線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0028】
本発明の合わせガラス用中間膜は、光沢度が35%以下であることが好ましい。
本明細書において光沢度とは、精密光沢計(例えば、村上色彩研究所製「GM−26PRO」等)を用いて、JIS Z 8741:1997に準拠して測定される75度鏡面光沢を意味する。光沢度が35%以下である中間膜は、微細な凹凸形状を持ち、膜同士を積層した際の自着力を抑制し、取扱い性を向上することができる。上記光沢度のより好ましい上限は20%以下、更に好ましい上限は10%以下である。光沢度が3%以上の場合、予備圧着時に微細な凹凸形状が膜とガラスの間に残留することを抑制し、オートクレーブにて加圧加熱圧着後にも膜中に気泡が残存することを防止することができる。
【0029】
本発明の合わせガラス用中間膜が多層構造である場合には、例えば、合わせガラスの遮音性を向上させるために、上記第1の樹脂層を保護層、上記第2の樹脂層を遮音層とし、2つの保護層で遮音層を挟持した、優れた遮音性を有する合わせガラス用中間膜(以下、「遮音中間膜」ともいう。)が挙げられる。
以下、該遮音中間膜について、より具体的に説明する。
【0030】
上記遮音中間膜において、上記遮音層は遮音性を付与する役割を有する。
上記遮音層は、ポリビニルアセタールXと可塑剤とを含有することが好ましい。
上記ポリビニルアセタールXは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアセタールXは、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。
上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は5000である。上記ポリビニルアルコールの重合度を200以上とすることにより、得られる遮音中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、遮音層の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。
【0031】
上記ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数の好ましい下限は4、好ましい上限は6である。アルデヒドの炭素数を4以上とすることにより、充分な量の可塑剤を安定して含有させることができ、優れた遮音性能を発揮することができる。また、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。アルデヒドの炭素数を6以下とすることにより、ポリビニルアセタールXの合成を容易にし、生産性を確保できる。
上記炭素数が4〜6のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド等が挙げられる。
【0032】
上記ポリビニルアセタールXの水酸基量の好ましい上限は30モル%である。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量を30モル%以下とすることにより、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、可塑剤のブリードアウトを防止することができる。上記ポリビニルアセタールXの水酸基量のより好ましい上限は28モル%、更に好ましい上限は26モル%、特に好ましい上限は24モル%、好ましい下限は10モル%、より好ましい下限は15モル%、更に好ましい下限は20モル%である。
上記ポリビニルアセタールXの水酸基量は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタールXの水酸基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0033】
上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量の好ましい下限は60モル%、好ましい上限は85モル%である。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量を60モル%以上とすることにより、遮音層の疎水性を高くして、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、可塑剤のブリードアウトや白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールXのアセタール基量を85モル%以下とすることにより、ポリビニルアセタールXの合成を容易にし、生産性を確保することができる。上記アセタール基量は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により、上記ポリビニルアセタールXのアセタール基が結合しているエチレン基量を測定することにより求めることができる。
【0034】
上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は30モル%である。上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量を0.1モル%以上とすることにより、遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができ、ブリードアウトを防止することができる。また、上記ポリビニルアセタールXのアセチル基量を30モル%以下とすることにより、遮音層の疎水性を高くして、白化を防止することができる。上記アセチル基量のより好ましい下限は1モル%、更に好ましい下限は5モル%、特に好ましい下限は8モル%、より好ましい上限は25モル%、更に好ましい上限は20モル%である。上記アセチル基量は、主鎖の全エチレン基量から、アセタール基が結合しているエチレン基量と、水酸基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率(モル%)で表した値である。
【0035】
特に、上記遮音層に遮音性を発揮するのに必要な量の可塑剤を容易に含有させることができることから、上記ポリビニルアセタールXは、上記アセチル基量が8モル%以上のポリビニルアセタール、又は、上記アセチル基量が8モル%未満、かつ、アセタール基量が68モル%以上のポリビニルアセタールであることが好ましい。
【0036】
上記遮音層における可塑剤の含有量は、上記ポリビニルアセタールX100質量部に対する好ましい下限が45質量部、好ましい上限が80質量部である。上記可塑剤の含有量を45質量部以上とすることにより、高い遮音性を発揮することができ、80質量部以下とすることにより、可塑剤のブリードアウトが生じて、合わせガラス用中間膜の透明性や接着性の低下を防止することができる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は50質量部、更に好ましい下限は55質量部、より好ましい上限は75質量部、更に好ましい上限は70質量部である。なお、上記遮音層における可塑剤の含有量は、合わせガラス作製前の可塑剤含有量であってもよく、合わせガラス作製後の可塑剤含有量であっても良い。なお、合わせガラス作製後の可塑剤の含有量は、以下の手順に従って測定できる。合わせガラスを作製した後、温度25℃、湿度30%の環境下で4週間静置する。その後、合わせガラスを液体窒素により冷却することでガラスと合わせガラス用中間膜を引き剥がす。得られた保護層及び遮音層を、厚さ方向に切断し、温度25℃、湿度30%の環境下に2時間静置した後、保護層と遮音層との間に指又は機械を入れ、温度25℃、湿度30%の環境下で剥離し、保護層および遮音層それぞれについて10gの長方形状の測定試料を得る。測定試料について、ソックスレー抽出器を用いて12時間、ジエチルエーテルで可塑剤を抽出した後、測定試料中の可塑剤の定量を行い、保護層及び中間層中の可塑剤の含有量を求める。
【0037】
上記遮音層の厚さの好ましい下限は50μmである。上記遮音層の厚さを50μm以上とすることにより、充分な遮音性を発揮することができる。上記遮音層の厚さのより好ましい下限は70μmであり、更に好ましい下限は80μmである。なお、上限は特に限定されないが、合わせガラス用中間膜としての厚さを考慮すると、好ましい上限は150μmである。
【0038】
上記保護層は、遮音層に含まれる大量の可塑剤がブリードアウトして、合わせガラス用中間膜とガラスとの接着性が低下するのを防止し、また、合わせガラス用中間膜に耐貫通性を付与する役割を有する。
上記保護層は、例えば、ポリビニルアセタールYと可塑剤とを含有することが好ましく、ポリビニルアセタールXより水酸基量が大きいポリビニルアセタールYと可塑剤とを含有することがより好ましい。
【0039】
上記ポリビニルアセタールYは、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。上記ポリビニルアセタールYは、ポリビニルアルコールのアセタール化物であることが好ましい。
上記ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。また、上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は5000である。上記ポリビニルアルコールの重合度を200以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性を向上させることができ、5000以下とすることにより、保護層の成形性を確保することができる。上記ポリビニルアルコールの重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は4000である。
【0040】
上記ポリビニルアルコールをアセタール化するためのアルデヒドの炭素数の好ましい下限は3、好ましい上限は4である。アルデヒドの炭素数を3以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。アルデヒドの炭素数を4以下とすることにより、ポリビニルアセタールYの生産性が向上する。
上記炭素数が3〜4のアルデヒドとしては、直鎖状のアルデヒドであってもよいし、分枝状のアルデヒドであってもよく、例えば、n−ブチルアルデヒド等が挙げられる。
【0041】
上記ポリビニルアセタールYの水酸基量の好ましい上限は33モル%、好ましい下限は28モル%である。上記ポリビニルアセタールYの水酸基量を33モル%以下とすることにより、合わせガラス用中間膜の白化を防止することができる。上記ポリビニルアセタールYの水酸基量を28モル%以上とすることにより、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が高くなる。
【0042】
上記ポリビニルアセタールYは、アセタール基量の好ましい下限が60モル%、好ましい上限が80モル%である。上記アセタール基量を60モル%以上とすることにより、充分な耐貫通性を発揮するのに必要な量の可塑剤を含有させることができる。上記アセタール基量を80モル%以下とすることにより、上記保護層とガラスとの接着力を確保することができる。上記アセタール基量のより好ましい下限は65モル%、より好ましい上限は69モル%である。
【0043】
上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量の好ましい上限は7モル%である。上記ポリビニルアセタールYのアセチル基量を7モル%以下とすることにより、保護層の疎水性を高くして、白化を防止することができる。上記アセチル基量のより好ましい上限は2モル%であり、好ましい下限は0.1モル%である。なお、ポリビニルアセタールYの水酸基量、アセタール基量、及び、アセチル基量は、ポリビニルアセタールXと同様の方法で測定できる。
【0044】
上記保護層における可塑剤の含有量は、上記ポリビニルアセタールY100質量部に対する好ましい下限が20質量部、好ましい上限が45質量部である。上記可塑剤の含有量を20質量部以上とすることにより、耐貫通性を確保することができ、45質量部以下とすることにより、可塑剤のブリードアウトを防止して、合わせガラス用中間膜の透明性や接着性の低下を防止することができる。上記可塑剤の含有量のより好ましい下限は30質量部、更に好ましい下限は35質量部、より好ましい上限は43質量部、更に好ましい上限は41質量部である。合わせガラスの遮音性がよりいっそう向上することから、上記保護層における可塑剤の含有量は、上記遮音層における可塑剤の含有量よりも少ないことが好ましい。なお、上記保護層における可塑剤の含有量は、合わせガラス作製前の可塑剤含有量であってもよく、合わせガラス作製後の可塑剤含有量であっても良い。なお、合わせガラス作製後の可塑剤の含有量は、上記遮音層と同様の手順によって測定することができる。
【0045】
合わせガラスの遮音性がより一層向上することから、ポリビニルアセタールYの水酸基量はポリビニルアセタールXの水酸基量より大きいことが好ましく、1モル%以上大きいことがより好ましく、5モル%以上大きいことが更に好ましく、8モル%以上大きいことが特に好ましい。ポリビニルアセタールX及びポリビニルアセタールYの水酸基量を調整することにより、上記遮音層及び上記保護層における可塑剤の含有量を制御することができ、上記遮音層のガラス転移温度が低くなる。結果として、合わせガラスの遮音性がより一層向上する。
また、合わせガラスの遮音性がより一層向上することから、上記遮音層におけるポリビニルアセタールX100質量部に対する、可塑剤の含有量(以下、含有量Xともいう。)は、上記保護層におけるポリビニルアセタールY100質量部に対する、可塑剤の含有量(以下、含有量Yともいう。)より多いことが好ましく、5質量部以上多いことがより好ましく、15質量部以上多いことが更に好ましく、20質量部以上多いことが特に好ましい。含有量X及び含有量Yを調整することにより、上記遮音層のガラス転移温度が低くなる。結果として、合わせガラスの遮音性がより一層向上する。
【0046】
上記保護層の厚さとしての好ましい下限は200μm、好ましい上限は1000μmである。上記保護層の厚さを200μm以上とすることにより、耐貫通性を確保することができる。
上記保護層の厚みのより好ましい下限は300μm、より好ましい上限は700μmである。
【0047】
上記遮音中間膜を製造する方法としては特に限定されず、例えば、上記遮音層と保護層とを、押し出し法、カレンダー法、プレス法等の通常の製膜法によりシート状に製膜した後、積層する方法等が挙げられる。
【0048】
本発明の合わせガラス用中間膜の製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法を用いることができる。
本発明において合わせガラス用中間膜の少なくとも一方の表面に多数の凹部と多数の凸部とを形成する方法としては、例えば、エンボスロール法、カレンダーロール法、異形押出法、メルトフラクチャー法等が挙げられる。なかでも、エンボスロール法が好適である。
【0049】
本発明の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に積層されている合わせガラスもまた、本発明の1つである。
上記ガラス板は、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができる。例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ガラスの表面に紫外線遮蔽コート層が形成された紫外線遮蔽ガラスも用いることができる。更に、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
上記ガラス板として、2種類以上のガラス板を用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色されたガラス板との間に、本発明の合わせガラス用中間膜を積層した合わせガラスが挙げられる。また、上記ガラス板として、2種以上の厚さの異なるガラス板を用いてもよい。
【0050】
本発明の合わせガラスは、ニップロール法により好適に製造することができる。
ニップロール法では、少なくとも2枚のガラス板の間に合わせガラス用中間膜が積層された積層体を、コンベアを用いて搬送しながら、該積層体を、加熱ゾーンを通過させることで、一定の温度に加熱した後、ニップロールを通してガラスと中間膜との間に残留する空気を扱きだしながら除去すると同時に、熱圧着させ、積層体の中間膜とガラス間の空気を低減させて密着させる。
なお、上記積層体を、コンベアを用いて搬送する際に、本発明の合わせガラス用中間膜の上記刻線状の凹部の傾きをコンベアによる流れ方向に対して55°以下となるようにすることが好ましい。これにより、コンベアによる移動時に該積層体においてガラスと合わせガラス用中間膜とがずれてしまうのを防止することができ、高い生産効率を実現することができる。コンベアを用いて搬送する際の、本発明の合わせガラス用中間膜の上記刻線状の凹部の傾きは、コンベアによる流れ方向に対して45°以下であることがより好ましく、25°以下であることが更に好ましい。