特許第6859517号(P6859517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6859517ナノ水和酸化金属複合ヒドロゲル及び汚水処理の応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859517
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】ナノ水和酸化金属複合ヒドロゲル及び汚水処理の応用
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/087 20060101AFI20210405BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20210405BHJP
   B01J 20/24 20060101ALI20210405BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   C07K5/087
   C02F1/28 B
   C02F1/28 J
   C02F1/28 Q
   B01J20/24 B
   B01J20/24 C
   B01J13/00
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-136182(P2020-136182)
(22)【出願日】2020年8月12日
(65)【公開番号】特開2021-31492(P2021-31492A)
(43)【公開日】2021年3月1日
【審査請求日】2020年8月13日
(31)【優先権主張番号】201910781708.8
(32)【優先日】2019年8月23日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520439520
【氏名又は名称】杭州靖舒新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100115303
【弁理士】
【氏名又は名称】岩永 和久
(72)【発明者】
【氏名】魏旭榕
【審査官】 松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/147174(WO,A1)
【文献】 特表2018−520844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 5/087
B01J 13/00
C02F 1/28
B01J 20/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iと式IIの少なくともいずれか一つの構造を有するゲル化因子であって、
前記式I又は式IIに記載のゲル化因子は、自体最小ゲル化濃度が15mmol/Lに達することができ、
前記式I又は式IIに記載のゲル化因子とAl3+とは、アルミニウム金属ヒドロゲルを形成する最小ゲル化濃度が10mmol/Lである、
ことを特徴とするゲル化因子。
【請求項2】
前記ゲル化因子の調製方法は、
tyroserleutide(YSL)又はtyroservatide(YSV)をイミダゾールホルムアルデヒドと反応させて反応生成物を得るステップaと、
前記反応生成物と水素化ホウ素ナトリウムとを反応させて反応溶液を得るステップbと、
前記反応溶液のpH値を調整し、撹拌条件下で反応させ、洗浄、再結晶、乾燥してゲル化因子を得るステップcと、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のゲル化因子の調製方法。
【請求項3】
前記ステップaにおけるtyroserleutide(YSL)は、L−チロシル−L−セリル−L−ロイシンからなる小分子ポリペプチドであり、
前記ステップaにおけるtyroservatide(YSV)は、L−チロシル−L−セリル−L−バリンからなる小分子ポリペプチドである、
ことを特徴とする請求項2に記載のゲル化因子の調製方法。
【請求項4】
前記ステップaの反応は、アルコール溶媒と炭酸塩の存在下で発生し、
前記アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール又はプロパノールから選択され、
前記炭酸塩は、炭酸ナトリウム炭酸リチウム又は炭酸カリウムから選ばれる、
ことを特徴とする請求項3に記載のゲル化因子の調製方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4に記載の式Iと式IIの少なくともいずれか一つの構造を有するゲル化因子、又は請求項2〜3のいずれかに記載の調製方法により得られたゲル化因子を、10mmol/L〜0.15mol/Lの水溶液に調製し、pHを5.8〜7.5に調整して得る、
ことを特徴とするヒドロゲルの調製方法。
【請求項6】
Al3+水溶液と、請求項1〜4のいずれかに記載のゲル化因子を5mmol/L〜0.5mol/L含有する水溶液とを混合し、pHを5.5〜7.0に調整し、少なくとも12h撹拌し又は少なくとも30min超音波処理して得る、
ことを特徴とするアルミニウム金属ヒドロゲルの調製方法。
【請求項7】
前記Al3+水溶液は、Al(NO水溶液またはAlCl水溶液から選択される
ことを特徴とする請求項6に記載のアルミニウム金属ヒドロゲルの調製方法。
【請求項8】
硝酸セリウムアンモニウムを0.05mol/L硝酸溶液に溶解し、ビニル基修飾シリカとナノセルロースを加えて反応液Aを得るステップ1と、
請求項1〜4のいずれかに記載の式Iと式IIの少なくともいずれか一つの構造を有するゲル化因子、または請求項2〜4のいずれかに記載の方法に従って得られたゲル化因子を5mmol/L〜0.15mol/Lの水溶液に調製し、反応液Bを得るステップ2と、
反応液Bを定電圧滴下ロートにより反応液Aに滴下し、25〜40℃で2〜8h反応させ、蒸留水洗浄、ソックスレー抽出、吸引濾過を順次行い、ナノセルロースヒドロゲルを得るステップ3と、
前記ナノセルロースヒドロゲルを、塩化第一鉄と塩化鉄とを含む溶液に浸漬し、アンモニア水を加えて5〜12h反応すればナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルを得るステップ4と、によって調製される、
ことを特徴とするナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルの調製方法。
【請求項9】
前記ステップ4における塩化第一鉄と塩化鉄を含む溶液において、塩化第一鉄と塩化鉄のモル比が1:2である、
ことを特徴とする請求項8に記載のナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は汚水処理の分野に関し、特にナノ水和酸化金属複合ヒドロゲル及び汚水処理の応用に関する。
【背景技術】
【0002】
tyroserleutide(YSL)は、カルーチンアミド−ロイシンからなる小分子ポリペプチドであり、分子構造式はC1827(式1A)であり、相対分子質量は381.4であり、従来のチロソールの応用は、主にがん細胞に対する抑制作用、例えば、姚智等(姚智、陸融、王莉、など、トリペプチド化合物チロシン(YSL)の腹水型肝癌H22マウスの免疫調節作用実験研究[J].中国薬理学通報、2006、22(10):1172〜1175.)、LI等(LIPC、LIY、TANGZY、etal.Studyontheinhibitoryeffectsoftyroserleutideontumorgrowthandmetastasisinnudemicmodelofhumanhepatocellularcarcinomametastasis[J].Hepatogastroenterology、2007、54(77):1359〜1363.)、LI等(LIXL、LIUJY、LUR、eta.Evaluationoftheetherapeuticacyoftripeptidetyroserleutide(YSL)forhumanhepatocarcinomabyinvivohollowfiberassay[J].InvestNewDrugs、2008、26(6):525〜529.)の研究は、いずれもYSLによる肝癌の治療作用に着目し、HCCが腹膜、腹壁転移、肝内侵襲及び肺転移を起こしてしまうことを抑制し、YSLは肝癌の進行を抑制することに加えて、局所的な侵襲と遠方の移行を抑制することができる。tyroservatide(YSV)はYSL類似体であり、両者の化学構造は類似しており、tyroservatide(YSV)の構造式は式(1B)のように表される。tyroservatide(YSV)はヒト肺癌A549細胞及びマウスLewis肺癌細胞の増殖を顕著に抑制することと、ヒト肝癌BEL−7402、SMMC−7721ヌードマウス移植腫瘍の成長を抑制することができ、160〜640μg・kg−1・d−1はtyroservatide(YSV)の有効な作用量範囲であり、320μg・kg−1・d−1の腫瘍抑制率は50%より大きく、4回繰り返しても結果が安定であり、その抗実験的肝癌治療効果も用量依存性(JISAJ、LUR、QIUS、etal.Preliminaryinvestigationoftheinhibitoryeffectsofthetyroservaltide(YSV)tripeptideonhumanhepatocarcinomaBEL−7402[J].CancerBiolTher、2005、4(9):993〜997.)を有する。tyroserleutide(YSL)又はtyroservatide(YSV)を出発点としてヒドロゲルを開発し、かつそれを汚水処理に応用することは開示されていない。
【0003】
以上の背景技術の開示の開示は、本発明の発明思想及び技術的解決手段に対する理解を助けるために過ぎず、必ずしも本特許出願の先行技術に属さず、前記内容が本特許出願の出願日に開示されていることを明確な証拠がない限り、前記背景技術は、本願の新規性及び創造性を評価するために用いるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第103804828号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、配位能力の強いペプチド−イミダゾールホルムアルデヒドをゲル化因子核とし、ビニル修飾シリカとナノセルロースとを複合反応させて得られ、銅イオン、カドミウムイオン、クロムイオン等の重金属イオンに対する吸着除去能力が高く、有毒染料廃水中のメチルオレンジ、メチレンブルー等の毒性残存をも吸着することができ、除去能力が強く、吸着容量が高くリサイクル可能であり、工業化生産に適したナノ水和酸化金属複合ヒドロゲル及び汚水処理の応用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明が講じた手段は、下記項[1]〜[5]に記載のものを含む。
【0007】
[1]、式Iと式IIの少なくともいずれか一つの構造を有するゲル化因子であって、
式Iまたは式IIにおいて、Etはエチル基を表し、すなわち−CHCHを表し、i−Buはイソブチル基を表し、すなわち−CHCH(CHを表し、i−Prはイソプロピル基、すなわち−CH(CHを表す。
【0008】
本発明の前記式I又は前記式IIに記載のゲル化因子自体はヒドロゲルを形成することができ、最小ゲル化濃度は15mmol/Lに達することができ、Al3+に対して強い選択応答性を有し、アルミニウム金属ヒドロゲルを形成することができ、Al3+とアルミニウム金属ヒドロゲルを形成する最小ゲル化濃度は10mmol/Lである。
【0009】
本発明は前記技術的解決手段に記載のゲル化因子の調製方法を提供し、以下の工程を含む:
a)tyroserleutide(YSL)、tyroservatide(YSV)、イミダゾールホルムアルデヒドを反応させて反応生成物を得る、
b)前記反応生成物と水素化ホウ素ナトリウムとを反応させて反応溶液を得る、
c)前記反応溶液のpH値を調整し、撹拌条件下で反応させ、洗浄、再結晶、乾燥してゲル化因子を得る。
【0010】
本発明の好ましい実施形態においては、前記a)工程におけるtyroserleutide(YSL)は、L−チロシル−L−セリル−L−ロイシンからなる小分子ポリペプチドであり、tyroservatide(YSV)は、L−チロシル−L−セリル−L−バリンからなる小分子ポリペプチドである。
【0011】
本発明の好ましい実施形態においては、前記a)工程におけるtyroserleutide(YSL)又はtyroservatide(YSV)とイミダゾールホルムアルデヒドの物質量の比は、1:1.5〜2.0であり、好ましくは1:1.8〜2.0である。
【0012】
本発明の好ましい実施形態においては、前記a)工程の反応は、アルコール溶媒と炭酸塩の存在下で発生するのであり、前記アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール又はプロパノールから選ばれ、好ましくはエタノールであり、前記炭酸塩が炭酸ナトリウム炭酸リチウム又は炭酸カリウムから選ばれ、好ましくは炭酸リチウムである。
【0013】
本発明の好ましい実施形態においては、前記(a)工程における反応の温度が37〜42℃であり、時間が1.2〜1.5hである。
【0014】
本発明の好ましい実施形態において、前記b)工程における水素化ホウ素ナトリウムの物質量は、イミダゾールホルムアルデヒドの1〜1.5倍、好ましくは1〜1.2倍である。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、前記(b)工程反応の温度は0〜2℃であり、好ましくは0℃であり、より好ましくは氷水浴条件で反応し、反応時間は2〜4hであり、tyroserleutide(YSL)又はtyroservatide(YSV)とイミダゾールホルムアルデヒドを反応させた後の反応生成物を氷浴条件下で冷却した後に水素化ホウ素ナトリウムと反応させることができる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、前記c)工程において、反応溶液のpHを5.2〜5.8に調整し、好ましくは5.2〜5.5に調整し、反応温度は20〜30℃であり、好ましくは25〜30℃であり、反応時間が2〜4hであり、好ましくは2.5〜3hである。
【0017】
本発明の好ましい態様においては、前記c)工程において、反応後にゲル化因子粗生成物を得た後、粗生成物を順次濾過、水及びエタノールで洗浄した後、再結晶及び乾燥して、構造式I又はIIのような純粋なゲル化因子を得る。
【0018】
本発明は、tyroserleutide(YSL)又はtyroservatide(YSV)とイミダゾールホルムアルデヒドを反応物として式I又は式IIに記載の前記ゲル化因子を調製し、調整方法が簡単であり、トリペプチド分子量が小さく、反応が制御可能であり、生成物配位能が強く、自身がヒドロゲルを形成することができ、最小ゲル化濃度は15mmol/Lに達することができ、しかもゲル化因子は、Al3+に対して強い選択応答性を有し、アルミニウム金属ヒドロゲルを形成することができ、Al3+とアルミニウム金属ヒドロゲルを形成する最小ゲル化濃度が10mmol/Lであり、また、前記ゲル化因子を核として酸化金属複合ヒドロゲルを調製することができ、アルミニウム金属ヒドロゲル及び酸化金属複合ヒドロゲル重金属イオンは、銅イオン、カドミウムイオン及びクロムイオンのような強い吸着除去能力を有し、さらに、汚水中に残留するメチルオレンジ、メチレンブルー等の毒性物質を除去することができ、本願が提供するゲル化因子は、汚水処理において一定の役割を果たすことができる。
【0019】
[2]、[1]に記載の式Iと式IIの少なくともいずれか一つの構造を有するゲル化因子又は項[1]に記載の調製方法により得られたゲル化因子を10mmol/L〜0.15mol/Lの水溶液に調製し、pHを5.8〜7.5に調整すれば得られるヒドロゲル。
【0020】
[3]アルミニウム金属ヒドロゲルであって、以下の方法により調製される:
Al3+水溶液と、項[1]の前記ゲル化因子を5mmol/L〜0.5mol/L含む水溶液とを混合し、pHを5.5〜7.0に調整し、少なくとも12h撹拌する又は少なくとも30min超音波して、アルミニウム金属ヒドロゲルを得る。
【0021】
本発明の好ましい実施形態においては、前記Al3+水溶液は、Al(NO水溶液またはAlCl水溶液から選択され、AlCl水溶液であることが好ましい。
【0022】
本発明において、前記撹拌の速度は、少なくとも100r/minであり、少なくとも300r/minであることが好ましく、前記超音波の周波数は、少なくとも25KHzであり、周波数は、少なくとも45KHzであることが好ましく、エネルギー密度は、少なくとも0.3W/cm2であり、エネルギー密度は、少なくとも0.5W/cm2であることが好ましい。
本発明の好ましい実施態様において、前記Al3+と前記項[1]に記載のゲル化因子の物質量との比は、1:2〜5であり、好ましい比は1:2〜3である。
【0023】
本発明の前記式I又は式IIに記載のゲル化因子自体はヒドロゲルを形成することができ、さらにAl3+に対して強い選択応答性を有し、アルミニウム金属ヒドロゲルを形成することができ、Al3+とアルミニウム金属ヒドロゲルを形成する最小ゲル化濃度は10mmol/Lであり、アルミニウム金属ヒドロゲルは有毒染料廃水中のメチルオレンジ、メチレンブルー等の毒性残留に対して良好な吸着作用を有する上に、汚水中の重金属イオン例えばCu2+、Cd2+Cr6+に異なる強度の吸着分解作用を有するため、下水処理、重金属イオン分解吸着等の環境保護分野において一定の応用見通しを有する。
【0024】
[4]ナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルであって、その調製方法は以下の通りである:
1)硝酸セリウムアンモニウムを0.05mol/L硝酸溶液に溶解し、ビニル基修飾シリカとナノセルロースを加えて反応液Aを得る、
2)[1]に記載の式Iと式IIの少なくともいずれか一つの構造を有するゲル化因子、又は、項[1]に記載の調製方法により得られたゲル化因子を、5mmol/L〜0.15mol/Lの水溶液に調製し、反応液Bを得る、
3)反応液Bを定電圧滴下ロートにより反応液Aに滴下し、25〜40℃で2〜8h反応させ、蒸留水洗浄、ソックスレー抽出、吸引濾過を順次行い、ナノセルロースヒドロゲルを得る、
4)前記ナノセルロースヒドロゲルを塩化第一鉄と塩化鉄を含む溶液に浸漬し、アンモニア水を加えて5〜12h反応すればナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルを得る。
【0025】
本発明の好ましい実施形態においては、1)工程の反応液Aにおいて、硝酸セリウムアンモニウム、ビニル修飾シリカおよびナノセルロースの重量比は、1:0.1〜0.5:3〜5である。
【0026】
本発明の好ましい実施態様において、1)工程のビニル修飾シリカの調製方法は、ビニルトリエトキシシランのエタノール溶液とシリカのエタノール分散液をそれぞれ調製し、前記ビニルトリエトキシシランのエタノール溶液をシリカのエタノール分散液に加え、2h超音波処理した後、遠心分離、エタノール洗浄、及び50℃での真空乾燥を経て、前記ビニル修飾シリカを得る。
【0027】
本発明の好ましい実施形態においては、前記1)工程において、硝酸セリウムアンモニウムを0.05mol/L硝酸溶液に溶解する硝酸セリウムアンモニウムの質量分率が0.5〜5wt%である。
【0028】
本発明の好ましい実施形態においては、3)工程において、反応液Aと反応液Bとの重量比は、1:1〜2である。
【0029】
本発明の好ましい実施形態においては、4)工程において、塩化第一鉄と塩化鉄とを含む溶液において、塩化第一鉄の物質の量分率が0.05〜0.2mol/Lであり、塩化鉄の物質の量分率が0.1〜0.4mol/Lである。
【0030】
本発明の好ましい実施形態においては、4)工程の塩化第一鉄と塩化鉄とを含む溶液において、塩化第一鉄と塩化鉄とのモル比が1:2である。
【0031】
式I又は式IIのゲル化因子の核はナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルに重金属イオン、例えば銅イオン、カドミウムイオンとクロムイオンへの高い吸着除去能力を付与し、有毒染料廃水中のメチルオレンジ、メチレンブルー等の毒性残留も吸着でき、ナノセルロースの高空隙率及び大比表面積が更に向上してその吸着容量を高め、ビニル基修飾シリカの添加により非連続的なネットワークホール構造が形成され、空隙率が向上し、膨潤率が向上し、吸着容量も向上すること、ナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルに形成された金属酸化物Feの磁性がヒドロゲル吸着後の回収循環使用に役立ち、下水処理においてより低いコストを消費し、より大きな作用を発揮する上に、プロセスが簡単で、収量が高く、工業化生産に非常に適している。
【0032】
[5]、[4]に記載の前記ナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルの汚水処理における応用であって、汚水中の重金属カドミウムイオンを吸着する用途と、汚水中の重金属銅イオンを吸着する用途と、汚水中の重金属クロムイオンを吸着する用途と、汚水中のメチルオレンジを吸着する用途と、汚水中のメチレンブルーを吸着する用途と、の少なくともいずれか一つを含むがこれらに限定されない。
【発明の効果】
【0033】
本発明の有益な効果は以下のとおりである:
【0034】
1)本発明は、tyroserleutide(YSL)又はtyroservatide(YSV)とイミダゾールホルムアルデヒドを反応物として式I又は式IIに記載のゲル化因子を調製し、調製方法が簡単であり、トリペプチド分子量が小さく、反応が制御可能であり、生成物配位能が強く、自身がヒドロゲルを形成することができ、最小ゲル化濃度が15mmol/Lに達することができる。
【0035】
2)ゲル化因子は、Al3+に対して強い選択応答性を有し、アルミニウム金属ヒドロゲルを形成することができ、Al3+とアルミニウム金属ヒドロゲルを形成する最小ゲル化濃度は、10mmol/Lである。
【0036】
3)アルミニウム金属ヒドロゲルは、有毒染料廃水中のメチルオレンジ、メチレンブルー等の毒性残留に対して良好な吸着作用を有し、また、汚水中の重金属イオン例えばCu2+、Cd2+Cr6+とに異なる強度の吸着分解作用を有する。
【0037】
4)式I又は式IIのゲル化因子核は、ナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルに、重金属イオン、例えば銅イオン、カドミウムイオンとクロムイオンへの高い吸着除去能力を付与し、有毒染料廃水中のメチルオレンジ、メチレンブルー等の毒性残留も吸着することができ、ナノセルロースの高空隙率及び大比表面積が更に向上して吸着容量が大きくなり、ビニル基修飾シリカの添加により非連続的なネットワークホール構造が形成され、空隙率が向上し、膨潤率が向上し、吸着容量も向上する。
【0038】
5)ナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルに形成された金属酸化物Feの磁性は、ヒドロゲル吸着後の回収リサイクルに有利であり、下水処理においてより低いコストを消費し、より大きな作用を発揮する上に、プロセスが簡単で、産出量が高く、工業化生産に非常に適している。
【0039】
本発明は、前記手段を採用したものであり、従来技術の不足を補い、設計が合理的であり、取り扱いが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明のゲル化因子の式Iの概略構成図である。
図2】本発明のゲル化因子の式IIの構造概略図である。
図3】本発明のヒドロゲルによる重金属イオンCu2+の吸着能力を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本明細書において使用される技術および科学的用語は、特に断りのない限り、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者により一般的に理解される同一の意味を有するものである。本発明は、本明細書で説明した方法および材料を用いるが、本分野において公知の他の適切な方法および材料を用いることもできる。本明細書に記載された材料、方法及び実施例は例示に過ぎず、限定するものではない。すべての出版物、特許出願、特許、仮出願、データベースエントリ、本文に記載されている他の参考文献等は、その全体が本明細書に組み込まれる。衝突があれば、本明細書に定義を含めて定義する。
【0042】
その他の特徴や利点は、以下の詳細な説明、添付図面および特許請求の範囲によって明らかになる。
【0043】
用語"例えば"及びその文法類似物について、用語"これに限定されない"は、特に明記しない限り、一般的な用法に従うと理解されるべきである。ここで、用語「約」とは、実験誤差の変化を考慮したものである。特に明記しない限り、本明細書に記載された全ての測定は、明示的に使用されているか否かに関わらず、「約」という単語で修正されると理解される。本明細書において、単数形「一」、「一つ」、「この」には、特に断りのない限り、複素数用法が含まれる。
【0044】
式Iと式IIの少なくともいずれか一つの構造を有するゲル化因子を提供する:
式Iと式IIにおいて、Etはエチル基、すなわち−CHCHを表しi−Buはイソブチル基、すなわち−CHCH(CHを表しi−Prはイソプロピル基、すなわち−CH(CHを表す。
【0045】
前記式I又は前記式IIに示すゲル化因子を調製する方法は、
tyroserleutide(YSL)又はtyroservatide(YSV)をイミダゾールホルムアルデヒドと反応させて反応生成物を得るステップaと、
反応生成物と水素化ホウ素ナトリウムとを反応させて反応溶液を得るステップbと、
前記反応溶液のpH値を調整し、撹拌条件下で反応させ、洗浄、再結晶、乾燥してゲル化因子を得るステップcと、を含み、
【0046】
前記ステップaにおいて、tyroserleutide(YSL)は、L−チロシル−L−セリル−L−ロイシンからなる小分子ポリペプチドであり、tyroservatide(YSV)は、L−チロシル−L−セリル−L−バリンからなる小分子ポリペプチドである。
【0047】
前記ステップaにおいて、tyroserleutide(YSL)又はtyroservatide(YSV)とイミダゾールホルムアルデヒドとの物質量の比は、1:1.5〜2.0であり、好ましくは1:1.8〜2.0である。
【0048】
前記ステップaにおいて、反応は、アルコール溶媒及び炭酸塩の存在下で発生するのであり、前記アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール又はプロパノールから選ばれ、好ましくはエタノールであり、前記炭酸塩は、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム又は炭酸カリウムから選ばれ、好ましくは炭酸リチウムである。
【0049】
前記ステップaにおいて、反応の温度が37〜42℃であり、時間が1.2〜1.5hである。
【0050】
前記ステップbにおいて、水素化ホウ素ナトリウムの物質量は、イミダゾールホルムアルデヒドの1〜1.5倍、好ましくは1〜1.2倍である。
【0051】
前記ステップbにおいて、反応の温度は0〜2℃、好ましくは0℃であり、より好ましくは氷水浴条件下で反応し、反応の時間は2〜4hであり、tyroserleutide(YSL)又はtyroservatide(YSV)をイミダゾールホルムアルデヒドと反応させた後の反応生成物を氷浴条件下で冷却した後に水素化ホウ素ナトリウムと反応させることができる。
【0052】
前記ステップcにおいて、反応液のpHを5.2〜5.8に調整し、好ましくは5.2〜5.5に調整し、反応温度が20〜30℃であり、好ましくは25〜30℃であり、反応時間が2〜4h、好ましくは2.5〜3hである。
【0053】
前記ステップcにおいて、反応後にゲル化因子粗生成物を得た後、粗生成物を順次濾過、水及びエタノールで洗浄した後、再結晶及び乾燥して、式I又はIIのような純粋なゲル化因子を得る。
【0054】
本発明の好ましい実施形態において、前記ゲル化因子の合成経路は、反応経路1又は反応経路2のように表される:
【0055】
本発明は、tyroserleutide(YSL)又はtyroservatide(YSV)とイミダゾールホルムアルデヒドを反応物として式I又は式IIに記載の前記ゲル化因子を調製し、調整方法が簡単であり、トリペプチド分子量が小さく、反応が制御可能であり、生成物配位能が強く、自身がヒドロゲルを形成することができ、最小ゲル化濃度は15mmol/Lに達することができ、しかもゲル化因子は、Al3+に対して強い選択応答性を有し、アルミニウム金属ヒドロゲルを形成することができ、Al3+とアルミニウム金属ヒドロゲルを形成する最小ゲル化濃度が10mmol/Lであり、また、前記ゲル化因子を核として酸化金属複合ヒドロゲルを調製することができ、アルミニウム金属ヒドロゲル及び酸化金属複合ヒドロゲル重金属イオンは、銅イオン、カドミウムイオン及びクロムイオンのような強い吸着除去能力を有し、さらに、汚水中に残留するメチルオレンジ、メチレンブルー等の毒性物質を除去することができ、本願が提供するゲル化因子は、汚水処理において一定の役割を果たすことができる。
【0056】
本発明はまた、前記式Iと式IIの少なくともいずれか一つの構造を有するゲル化因子又は前記調製方法により得られたゲル化因子を10mmol/L〜0.15mol/Lの水溶液に調製し、pHを5.8〜7.5に調整すれば得られるヒドロゲルを提供する。
【0057】
本発明はまた、アルミニウム金属ヒドロゲルを提供し、前記アルミニウム金属ヒドロゲルは以下の方法により調製される:
【0058】
Al3+水溶液と、前記ゲル化因子を5mmol/L〜0.5mol/L含有する水溶液とを混合し、pHを5.5〜7.0に調整し、少なくとも12h撹拌し又は少なくとも30min超音波処理して、アルミニウム金属ヒドロゲルを得る。
【0059】
前記方法は以下の制限要素を有する:
1)前記Al3+水溶液は、Al(NO水溶液またはAlCl水溶液から選択される、
2)前記攪拌の速度は、少なくとも100r/minである、
3)前記超音波の周波数は少なくとも25KHzであり、エネルギー密度は少なくとも0.3W/cmである、
4)前記Al3+と前記ゲル化因子の物質量との比は、1:2〜5である。
【0060】
本発明の前記式I又は式IIに記載のゲル化因子自体はヒドロゲルを形成することができ、さらにAl3+に対して強い選択応答性を有し、アルミニウム金属ヒドロゲルを形成することができ、Al3+とアルミニウム金属ヒドロゲルを形成する最小ゲル化濃度は10mmol/Lであり、アルミニウム金属ヒドロゲルは有毒染料廃水中のメチルオレンジ、メチレンブルー等の毒性残留に対して良好な吸着作用を有する上に、汚水中の重金属イオン例えばCu2+、Cd2+とCr6+に異なる強度の吸着分解作用を有するため、下水処理、重金属イオン分解吸着等の環境保護分野において一定の応用見通しを有する。
【0061】
また、本発明は、以下の方法により調製されるナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルを提供し、
硝酸セリウムアンモニウムを0.05mol/L硝酸溶液に溶解し、ビニル基修飾シリカとナノセルロースを加えて反応液Aを得るステップ1と、
前記式Iと式IIの少なくともいずれか一つの構造を有するゲル化因子、または前記調製方法に従って得られたゲル化因子を5mmol/L〜0.15mol/Lの水溶液に調製し、反応液Bを得るステップ2と、
反応液Bを定電圧滴下ロートにより反応液Aに滴下し、25〜40℃で2〜8h反応させ、蒸留水洗浄、ソックスレー抽出、吸引濾過を順次行い、ナノセルロースヒドロゲルを得るステップ3と、
前記ナノセルロースヒドロゲルを、塩化第一鉄と塩化鉄とを含む溶液に浸漬し、アンモニア水を加えて5〜12h反応すればナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルを得るステップ4と、を含む。
【0062】
本方法は以下の制限要素を有する:
前記ステップ1において、反応液Aにおいて、硝酸セリウムアンモニウム、ビニル修飾シリカおよびナノセルロースの重量比は、1:0.1〜0.5:3〜5である、
前記ステップ1において、ビニル修飾シリカの調製方法は、ビニルトリエトキシシランのエタノール溶液とシリカのエタノール分散液をそれぞれ調製し、前記ビニルトリエトキシシランのエタノール溶液をシリカのエタノール分散液に加え、2h超音波処理した後、遠心分離、エタノール洗浄、及び50℃での真空乾燥を経て、前記ビニル修飾シリカを得る、
前記ステップ1において、硝酸セリウムアンモニウムを0.05mol/L硝酸溶液に溶解し、硝酸セリウムアンモニウムの質量分率は0.5〜5wt%である、
前記ステップ3において、反応液Aと反応液Bとの重量比は、1:1〜2である、
前記ステップ4において、塩化第一鉄及び塩化鉄を含む溶液において、塩化第一鉄の物質量分率は0.05〜0.2mol/Lであり、塩化鉄の物質量分率は0.1〜0.4mol/Lである、
前記ステップ4において、塩化第一鉄と塩化鉄を含む溶液において、塩化第一鉄と塩化鉄の物質量の比は1:2である。
【0063】
式I又は式IIのゲル化因子の核はナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルに重金属イオン、例えば銅イオン、カドミウムイオンとクロムイオンへの高い吸着除去能力を付与し、有毒染料廃水中のメチルオレンジ、メチレンブルー等の毒性残留も吸着でき、ナノセルロースの高空隙率及び大比表面積が更に向上してその吸着容量を高め、ビニル基修飾シリカの添加により非連続的なネットワークホール構造が形成され、空隙率が向上し、膨潤率が向上し、吸着容量も向上すること、ナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルに形成された金属酸化物Feの磁性がヒドロゲル吸着後の回収循環使用に役立ち、下水処理においてより低いコストを消費し、より大きな作用を発揮する上に、プロセスが簡単で、収量が高く、工業化生産に非常に適している。
【0064】
前記ナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルの汚水処理における応用であって、汚水中の重金属カドミウムイオンを吸着する用途と、汚水中の重金属銅イオンを吸着する用途と、汚水中の重金属クロムイオンを吸着する用途と、汚水中のメチルオレンジを吸着する用途と、汚水中のメチレンブルーを吸着する用途と、の少なくともいずれか一つを含むがこれらに限定されない。
【0065】
実施例1:
38℃温度で、tyroserleutide(YSL)を1.907g盛った炭酸リチウム(0.074g)溶液に、イミダゾールホルムアルデヒド(0.96g)のエタノール溶液を加え、1.5h反応させて反応生成物を得るステップaと、
氷水浴1h、反応生成物に水素化ホウ素ナトリウムを0.456g加えて4h反応させて反応溶液を得るステップbと、
反応溶液のpHを5.5に調整し、25℃温度、撹拌条件で3h反応させてゲル化因子粗生成物を得て、濾過、水及びエタノール洗浄を順次行い、再結晶及び乾燥を行い、式Iのような純粋なゲル化因子を得るステップcと、を含む。
【0066】
実施例2:
40℃温度で、tyroserleutide(YSL)を1.837g盛った炭酸リチウム(0.074g)溶液に、イミダゾールホルムアルデヒド(0.96g)のエタノール溶液を加え、1.5h反応させて反応生成物を得るステップaと、
氷水浴1h、反応生成物に水素化ホウ素ナトリウムを0.456g加えて4h反応させて反応溶液を得るステップbと、
反応溶液のpHを5.5に調整し、25℃温度、撹拌条件で3h反応させてゲル化因子粗生成物を得て、濾過、水及びエタノール洗浄を順次行い、再結晶及び乾燥を行い、式IIのような純粋なゲル化因子を得るステップcと、を含む。
【0067】
実施例3:
実施例1の前記ゲル化因子をそれぞれ50mmol/Lの水溶液に調製し、溶液は無色透明であり、溶液pHを5.8〜7.5に調整して、いずれも均一的な、白色不透明の安定したヒドロゲルを形成することができた。
【0068】
実施例4:
実施例3のヒドロゲルを異なる濃度で希釈したところ、ゲル化因子の濃度≧15mmol/Lのときにいずれもヒドロゲルを形成することができ、その最小ゲル化濃度は15mmol/Lであることがわかった。
【0069】
実施例5:
実施例2に係るゲル化因子をそれぞれ50mmol/Lの水溶液に調製し、溶液は無色透明であり、溶液pHを6.0〜7.5に調整し、いずれも均一的な、白色不透明の安定したヒドロゲルを形成することができた。
【0070】
実施例6:
実施例5のヒドロゲルを異なる濃度で希釈したところ、ゲル分濃度≧15mmol/Lのときにヒドロゲルを形成することができ、その最小ゲル化濃度は15mmol/Lであることがわかった。
【0071】
実施例7:
AlCl水溶液と50mmol/Lの実施例3の前記ゲル化因子を含む水溶液とを混合し、pHを6.8に調整し、300r/minで12h撹拌して白色のアルミニウム金属ヒドロゲルを形成した。
前記AlCl水溶液中のAl3+と実施例3の前記ゲル化因子との物質量の比は、1:2であった。
【0072】
比較例8:
CeCl、EuCl、TbCl、CaCl、BaCl、MgCl、FeCl水溶液をそれぞれ調製し、金属イオンと実施例3の前記ゲル化因子との物質の量の比を1:2に保持し、実施例7の方法に準じて、それぞれ50mmol/Lの実施例3の前記ゲル化因子を含む水溶液と混合して反応させたところ、前記各物質がいずれも安定な金属ヒドロゲルを形成することができず、沈殿や粘調または清澄が生じ、本願の前記ゲル化因子がAl3+に対して強い選択応答性を有し、アルミニウム金属ヒドロゲルを形成することができることを見出した。
【0073】
実施例9:
実施例7によれば、実施例3に係る前記ゲル化因子の水溶液を異なる濃度で希釈した結果、ゲル化因子濃度≧10mmol/Lのときにヒドロゲルを形成することができ、Al3+とアルミニウム金属ヒドロゲルを形成する最小ゲル化濃度が10mmol/Lであることがわかった。
【0074】
実施例10:
本実施例はナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルを提供し、その調製方法は以下のとおりである:
硝酸セリウムアンモニウム0.55gを0.05mol/L硝酸溶液に溶解し、ビニル修飾シリカ0.12gとナノセルロース2.2gを加え、反応液Aを得るステップ一と、
式IIの構造を有するゲル化因子を50mmol/Lの水溶液に調製し、反応液Bを得るステップ二と、
反応液Bを、定電圧滴下ロートにより反応液Aに滴下し、37℃で5h反応させ、蒸留水洗浄、ソックスレー抽出、吸引濾過を順次行い、ナノセルロースヒドロゲルを得るステップ三と、
前記ナノセルロースヒドロゲルを塩化第一鉄及び塩化鉄を含む溶液に浸漬し、アンモニア水を加えて10h反応させてナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルを得るステップ四と、を含む。
【0075】
実施例10の方法は以下の制限要素を有する:
【0076】
前記ステップ一において、ビニル修飾シリカの調製方法は、ビニルトリエトキシシラン1.2gをエタノール50mLに溶解し、シリカ0.8gをエタノール40mLに超音波分散し、シリカ混合液にビニルトリエトキシシラン溶液を加え、4h超音波処理し、遠心分離、エタノール洗浄し、45℃で真空乾燥し、ビニル修飾シリカを得る、
前記ステップ一において、硝酸セリウムアンモニウムを0.05mol/L硝酸溶液に溶解する硝酸セリウムアンモニウムの質量分率は2wt%である、
前記ステップ三において、反応液Aと反応液Bとの重量比は、1:2である、
前記ステップ四において、塩化第一鉄及び塩化鉄を含む溶液において、塩化第一鉄の物質の量分率は0.1mol/Lであり、塩化鉄の物質の量分率は0.2mol/Lである。
【0077】
式I又は式IIのゲル化因子の核はナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルに重金属イオン、例えば銅イオン、カドミウムイオンとクロムイオンへの高い吸着除去能力を付与し、有毒染料廃水中のメチルオレンジ、メチレンブルー等の毒性残留も吸着でき、ナノセルロースの高空隙率及び大比表面積が更に向上してその吸着容量を高め、ビニル基修飾シリカの添加により非連続的なネットワークホール構造が形成され、空隙率が向上し、膨潤率が向上し、吸着容量も向上すること、ナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルに形成された金属酸化物Feの磁性がヒドロゲル吸着後の回収循環使用に役立ち、本実施例の前記ナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルの見かけ飽和磁化強度は0.026emu/gに達することができる。これは、下水処理においてより低いコストを消費し、より大きな作用を発揮する上に、プロセスが簡単で、産出量が高く、工業化生産に非常に適している。
【0078】
比較例11:
比較例11は、実施例10とほぼ同じであるが、塩化第一鉄及び塩化鉄を含む溶液中の塩化第一鉄の物質量分率が0.1mol/Lであり、塩化鉄の物質量分率が0mol/Lであり、得られたヒドロゲルの見かけの飽和磁化強度が0emu/gである点で実施例10と異なる。
【0079】
比較例12:
比較例12は、実施例10とほぼ同じであるが、塩化第一鉄及び塩化鉄を含む溶液中の塩化第一鉄の物質量分率が0mol/Lであり、塩化鉄の物質量分率が0.2mol/Lであり、得られたヒドロゲルの見かけの飽和磁化強度が0emu/gである点で実施例10と異なる。
【0080】
比較例13:
比較例13は、実施例10とほぼ同じであるが、塩化第一鉄及び塩化鉄を含む溶液を蒸留水で置換し、得られたヒドロゲルの見かけの飽和磁化強度は0emu/gである点で実施例10と異なる。
【0081】
実験例1:
本実験例は、本発明の各実施例で得られたヒドロゲルの重金属イオンCr6+に対する吸着能力を検出する。
【0082】
本発明の各実施例で得られたヒドロゲルの重金属イオンに対する吸着性能を確認するために、クロム(+6価)イオンを例にしてジカルバジド分光光度法を用いて吸着性能試験及び再生吸着性能試験を行い、ヒドロゲルの吸着容量C(mg/g)及びクロムイオン溶液の除去率R(%)をそれぞれ、式(1)及び式(2)に従って算出する。
【0083】
【数1】
【0084】
【数2】
【0085】
式中:cは吸着平衡時のKCr溶液中のクロムイオンの平衡濃度を表し、単位をmg/Lとし、cはKCr溶液中のクロムイオンの初期濃度を表し、単位をmg/Lとし、Vは使用するKCr溶液の体積を表し、単位をLとし、mは投与用のドライヒドロゲルの質量を表し、単位をgとする。
【0086】
実施例7におけるアルミニウム金属ヒドロゲル及び実施例10、比較例11〜13におけるナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルについて、クロム(+6価)イオンの吸着検出をそれぞれ行い、検出結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
[表1、ヒドロゲルのCr6+吸着能力の検出]
【0088】
表1から明らかなように、実施例7のアルミニウム金属ヒドロゲル及び実施例10におけるナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルは、Cr6+に対し優れた吸着能力を有し、中でも実施例10におけるナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルの吸着能力及び吸着容量がより優れることがわかる。
【0089】
実験例2:
本実験例は、実験例1におけるヒドロゲルの重金属イオンCr6+に対する再吸着能力を検する。
【0090】
実験例1におけるCr6+を吸着したアルミニウム金属ヒドロゲルとナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルをそれぞれ0.1mol/Lのアンモニア水溶液に48h浸漬して脱吸着し、脱離したヒドロゲルを実験例1に記載の方法にしたがって再度その吸着性能を測定し、再吸着の結果、アルミニウム金属ヒドロゲルのCr6+に対する吸着容量が20.4mg/gに達し、ナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルの吸着容量が50.9mg/gに達することが示され、本願の前記アルミニウム金属ヒドロゲルとナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルは簡単な方式で脱着を行って繰り返し使用でき、再吸着性能が良好であることが示された。
【0091】
実験例3:
本実験例は、本発明の各実施例で得られたヒドロゲルの重金属イオンCu2+に対する吸着能力を検出する。
【0092】
濃度500mg/LのCu2+溶液10mLをそれぞれ6本の容器に入れ、NaOH又はHClでpH=7.0に調整し、実施例7におけるアルミニウム金属ヒドロゲルと実施例10、比較例11〜13におけるナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルとをそれぞれ10mg取って前記溶液に入れ、それぞれ25℃の恒温水浴で0、50、100、150、200、250、300、350、400、450及び500min振とうした後、上澄み液を採取してろ過する。原子吸光光度計を用いて溶液中のCu2+濃度を測定し、吸着後溶液中のCu2+濃度を算出し、吸着曲線を図3に示す。0〜200minにおいて、吸着量が吸着時間二したがって急激に増加し、200〜350minにおいて、吸着量の増加は徐々に緩やかになり、400min後は吸着平衡に達し、本発明の実施例7におけるアルミニウム金属ヒドロゲルのCu2+への飽和吸着量は325.65mg/gとなり、実施例10のナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルのCu2+に対する飽和吸着量は428.50mg/gとなる。
【0093】
実験例4:
本実験例は、本発明の各実施例で得られたヒドロゲルの水中メチルオレンジ、メチレンブルーへの吸着能力を検出したものであり、検出結果は表2に示す通りであり、24h以降では、実施例7におけるアルミニウム金属ヒドロゲル及び実施例10のナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルのメチルオレンジ、メチレンブルーに対する吸着パーセントがいずれも98.0%以上に達することができ、本願のアルミニウム金属ヒドロゲル及びナノ水和酸化金属複合ヒドロゲルは、メチルオレンジ、メチレンブルーに対して優れた吸着除去能力を有することが明らかとなった。
【0094】
【表2】
[表2、ヒドロゲルのメチルオレンジとメチレンブルーとへの吸着能力の検出]
【0095】
前記実施例における従来技術は当業者に知られている従来技術であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0096】
以上の実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変形や変形が可能であることは当業者に明らかである。したがって、すべての同等の技術的解決手段も本発明の範疇に含まれるものであり、本発明の特許請求の範囲は、特許請求の範囲によって制限されるべきである。
図1
図2
図3