(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6859551
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】食用昆虫粉末又は食用昆虫顆粒を用いたラクトアイス製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 9/32 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
A23G9/32
【請求項の数】7
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2020-120238(P2020-120238)
(22)【出願日】2020年6月18日
【審査請求日】2020年6月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520182822
【氏名又は名称】上久保 開
(72)【発明者】
【氏名】上久保 開
【審査官】
山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2017−0142330(KR,A)
【文献】
特開平07−250623(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2018−0134525(KR,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2018−0011685(KR,A)
【文献】
[昆虫食]クリケット・アイス,クックパッド[online],2019年12月28日,検索日2020年10月14日,URL:https://cookpad.com/recipe/5966984
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 9/00−9/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用昆虫粉末又は食用昆虫顆粒を用いて、風味及びコクを増加させたラクトアイスの製造方法において、前記のラクトアイスの全質量に対して、食用昆虫粉末又は食用昆虫顆粒を0.25質量%〜8.51質量%を加え一緒にし、加熱溶融して、むらなく均一に混ぜ合わせた混合物となし、該混合物を冷却して固形物とすることを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
前記ラクトアイスの全質量における食用昆虫粉末又は食用昆虫顆粒の含有量が0.25質量%〜8.51質量%の請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記食用昆虫粉末又は食用昆虫顆粒がコオロギ、バッタ、タガメに由来する、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
加熱温度が50〜70℃である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
加熱温度が51〜60℃である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
冷却温度がマイナス18℃以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
食用昆虫粉末又は食用昆虫顆粒をラクトアイスに混ぜ合わせる前に、ラクトアイスを溶融しておく、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用昆虫粉末又は食用昆虫顆粒を用いたラクトアイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界の食糧危機への対策として、昆虫食の注目が急激に高まっている。栄養価が高く環境への負荷も少ないことから、国連食糧農業機関(FAO)も推奨。しかし、食用対象になる食用昆虫を食品として提供しようとする場合には、解決しなければならない問題点がある。
【0003】
それは、昆虫は駆除、排除するものであるという認識が強く、食べるということに抵抗感をもつ人々が多いことである。人々の昆虫を食べることへの抵抗感を軽減することができれば、昆虫の食品としての需要を喚起することができるようになるものである。
【0004】
しかしながら、従来においてのラクトアイスは、昆虫の姿が残ったままラクトアイスにのせたり、単純に粉末をかけたり混ぜたり、ソーシャル・ネットワーキング・サービスに投稿すること、一過性の好奇心、珍しさによる注目度向上が目的であるラクトアイスが散見されており、真に昆虫への抵抗感をなくし、食糧危機への対策商品として扱われているラクトアイスの製造方法は案出されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた。その結果、食用昆虫の粉末又は顆粒を、ラクトアイスの全質量に対して0.25質量%〜8.51質量%加え、加熱溶融して、むらなく均一に混ぜ合わせた混合物となし、該混合物を冷却して固形物とすることで、溶融前よりも乳製品本来の風味やコクをいっそう引き立てることができるとともに、昆虫の抵抗感も感じることなく食することができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0006】
本発明は、風味やコクを付与したラクトアイスを、広く人々に提供することで、人々の昆虫への抵抗感を無くすとともに、人口増加や地球温暖化により発生する食糧難への構えを前広につくり、多くの人々を飢餓から救うことができるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、食用昆虫の粉末又は顆粒を、ラクトアイスの全質量に対して0.25質量%〜8.51質量%加え、加熱溶融して、むらなく均一に混ぜ合わせた混合物となし、該混合物を冷却して固形物とすることで、溶融前よりも乳製品本来の風味とコクをよりいっそう引き立てることができるとともに、昆虫の抵抗感を感じることなく食することができることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、以下に示す製造方法である。
【0008】
ラクトアイス500質量部及びコオロギ、バッタ、タガメに由来する食用昆虫粉末又は顆粒を46.50質量部用意した。
【0009】
ラクトアイス500質量部をフッ素加工の鍋に入れて、ゆっくりかき混ぜながら加熱して溶かした。
【0010】
ラクトアイスに、上記の食用昆虫粉末又は顆粒46.50質量部のうち、2分の1加えて混合しながら加熱して均一にした。混合物の加熱温度は、好ましくは50〜70℃、より好ましくは51〜60℃である。
なお、食用昆虫の粉末又は顆粒とラクトアイスとを一緒にしてから、加熱して両者を溶融してもよいが、上記のように、ラクトアイスを先に溶融しておくことが、風味とコクを均一に付与するために好ましい。
【0011】
次に、残りの2分の1を加えて、混合しながら均一にした。
【0012】
次に、該混合物の風味及びコクを引き立てるために、冷却して固形物とした。
冷却温度はマイナス18℃以下が好ましい。
【0013】
製品は1週間以内に食べることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の食用昆虫粉末又は顆粒を用いたラクトアイス製造方法によれば、コオロギ、バッタ、タガメに由来する食用粉末又は顆粒を、ラクトアイスの全質量に対して0.25質量%〜8.51質量%加え、加熱溶融して、むらなく均一に混ぜ合わせた混合物となし、該混合物を冷却して固形物とすることで、相乗効果的に風味やコクが増して、従来の昆虫食で問題となっていた、昆虫を食べることへの抵抗感が改善されたラクトアイスを提供することができる。加えて、これにより食用昆虫の食品としての需要を喚起することができるとともに、多くの人々を飢餓から救うことができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の食用昆虫粉末又は顆粒を用いたラクトアイス製造方法は、加熱溶融して、むらなく均一に混ぜ合わせた混合物となし、該混合物を冷却して固形物とすることを特徴とする。
【0016】
本実施形態において、食用昆虫粉末又は顆粒を用いたラクトアイスの「風味」とは、食用昆虫を用いた乳製品の味わい易さを官能評価として表現したものであり、味わい易い場合は、風味が良い、逆であれば風味が悪いという。
【0017】
また、「コク」とは、甘味、うま味、苦味、塩味、酸味の総和、さらに香りや食感、濃厚感を官能評価として表現したものであり、特に濃厚感が強い場合は、コクがあるといい、逆であればコクがないという。
【実施例】
【0018】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
食用昆虫粉末(ヨーロッパイエコオロギ)を46.50質量部とラクトアイス500質量部を用意し、加熱溶融して、むらなく均一に混ぜ合わせた混合物となし、該混合物を冷却して固形物とした。これを適宜の容量に分けて健常者のパネラーに試食させたところ、風味も良く、コクも十分にあり、昆虫の抵抗感が無いとの一致した評価が得られた。
【0020】
次に上記の割合を変えていき、風味とコクの変化を検証した。
【0021】
評価基準は、以下のとおりである。
(風味の評価)
◎:風味が良い
○:風味がやや良い
△:風味がやや悪い
×:風味が悪い
(コクの評価)
◎:コクが十分にある
○:コクがややある
△:コクがあまりない
×:コクがない
【実施例2】
【0022】
食用昆虫粉末(ヨーロッパイエコオロギ)15.00質量部とラクトアイス500質量部として実施した。
【実施例3】
【0023】
食用昆虫粉末(ヨーロッパイエコオロギ)5.00質量部とラクトアイス500質量部として実施した。
【実施例4】
【0024】
食用昆虫粉末(ヨーロッパイエコオロギ)1.25質量部とラクトアイス500質量部として実施した。
【実施例5】
【0025】
食用昆虫粉末(ヨーロッパイエコオロギ)0.50質量部とラクトアイス500質量部として実施した。
【0026】
上記の結果を、表1に整理した。
この結果から、[実施例1]から[実施例3]では、風味が良く、コクが十分にあるという評価であるが、[実施例4]では、風味がやや良く、コクがややあるという評価となった。また、[実施例5]では風味がやや悪く、コクがあまりないという評価となった。
【表1】
【0027】
以上より、[実施例1]から[実施例4]の範囲で、加熱溶融して、むらなく均一に混ぜ合わせた混合物となし、該混合物を冷却して固形物とすることで、風味とコクを付与できるとともに、昆虫の抵抗感も感じることなく食することができる。
【要約】
【課題】食用昆虫粉末又は食用昆虫顆粒を用いたラクトアイス製造方法の提供
【解決手段】食用昆虫粉末又は食用昆虫顆粒を用いて、風味及びコクを増加させたラクトアイスの製造方法において、前記のラクトアイスの全質量に対して、食用昆虫粉末又は食用昆虫顆粒を0.25質量%〜8.51質量%を加え一緒にし、加熱溶融して、むらなく均一に混ぜ合わせた混合物となし、該混合物を冷却して固形物とすることを特徴とする、上記方法。
【選択図】なし