特許第6859558号(P6859558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 鈴木 計芳の特許一覧

<>
  • 特許6859558-抜歯用具および抜歯方法 図000002
  • 特許6859558-抜歯用具および抜歯方法 図000003
  • 特許6859558-抜歯用具および抜歯方法 図000004
  • 特許6859558-抜歯用具および抜歯方法 図000005
  • 特許6859558-抜歯用具および抜歯方法 図000006
  • 特許6859558-抜歯用具および抜歯方法 図000007
  • 特許6859558-抜歯用具および抜歯方法 図000008
  • 特許6859558-抜歯用具および抜歯方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859558
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】抜歯用具および抜歯方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 3/14 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   A61C3/14
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-91983(P2017-91983)
(22)【出願日】2017年4月16日
(65)【公開番号】特開2018-175817(P2018-175817A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504230246
【氏名又は名称】鈴木 計芳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 計芳
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3202678(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3202679(JP,U)
【文献】 韓国公開特許第10−2008−0076493(KR,A)
【文献】 特開平07−000420(JP,A)
【文献】 中国実用新案第202776590(CN,U)
【文献】 登録実用新案第3162169(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3162226(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0090206(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 3/14
A61C 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抜こうとする歯の噛合面から歯根方向に掘られた一つの窩洞部に固定される抜歯用具であって、アンカー部とこの周囲を埋める接着剤としてのUVレジンとの組から成り、前記アンカー部は前記窩洞部の深さ方向に軸が一致すると共に、指で摘まんで抜歯するための表面に滑り止め部のあるハンドル部を備えるものであり、前記UVレジンは前記窩洞部の噛合面方向から照射される紫外線により硬化して、前記窩洞部と前記アンカー部とに接着するものである、ことを特徴とする抜歯用具。
【請求項2】
前記ハンドル部に掛止部を備えている請求項1に記載の抜歯用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抜歯を安全にかつ容易に行うことが出来て患者の負担が軽くなるような抜歯用具および抜歯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歯科治療に於いて抜歯を行う場合には、歯と歯槽骨との間で歯根の周りにある歯根膜の部位に梃子(ヘーベル)を挿入して歯を脱臼させてから、歯科用の鉗子(ペンチ)で歯を挟んで抜き取るのが一般的である。この鉗子の実例は特開2002−291753号に、また梃子の実例は特開2009−119095号に詳述されている。
【0003】
しかしながら梃子で歯をこじる際に誤って歯を押し込むようなことが起ると、これが原因で神経を痛めたり血管を破損して出血が多くなったり、歯槽骨を陥没させてしまうような場合があり問題となっている。
【0004】
そこでかつて当発明者は、抜歯をより安全に且つ容易に行えるようにすべく、実用新案登録第3162169号の抜歯用具を提供した。このものは歯内にねじ込むためのネジ部とハンドル部とから成り、前記ハンドル部に滑り止め部を備えている抜歯用具としたものである。ハンドル部を以てネジ部を歯の中心部の穴にねじ込み、ネジ部が歯にしっかりと食い込んだら、ハンドル部を以て引き抜くようにする。歯根は捻る力に弱く捻ると比較的容易に歯槽骨から浮かせることが出来る。これを引き抜くようにすれば簡単に抜歯を行うことが可能である。従って抜歯に当って梃子を用いることなく、また抜歯を行う歯にのみ抜歯の力が加わるため、隣合う歯に影響されたり影響を与えたりすることが少なく、安全である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−291753号(図1
【特許文献2】特開2009−119095号(図15
【特許文献3】実用新案登録第3162169号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに実用新案登録第3162169号によれば、それまでの問題がうまく解決されている。しかしながらネジ部を歯にしっかりと食い込ませる必要があるため、この時に捻る方向の力が歯に掛かってしまうのは致し方ない。それでもハンドル部を以てネジ部を歯の中心部の穴にねじ込んで歯にしっかりと食い込ませて固定するに当たっては、捻る方向の力が歯にあまり掛からないようにすることは出来ないだろうか、すなわちこれから抜こうとしている歯や、この部位の歯槽骨や、隣り合う歯に負担が掛からないようにすることは出来ないだろうか、と言うのが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決に先立ち当発明者は、このような抜歯用具を歯に固定するのに、ネジ部を歯に直接的にねじ込むこと以外の方法で行えば良いと言う知見を得た。
【0008】
そこで本発明では、歯内に固定するためのアンカー部と、ハンドル部と、前記アンカー部を歯内に固定するための接着剤と、から成る抜歯用具を提供する。また歯内に固定するためのアンカー部とハンドル部とから成る抜歯用具を用意しておき、歯を前記アンカー部の径よりも適宜大きな径で切削して窩洞部(窪み)を形成し、この窩洞部に前記アンカーを納めて接着剤で固定して、前記ハンドル部を以て抜歯を行う抜歯方法を提供する。この発明で特徴的なのは、抜歯を行う時点ではなくて、抜歯用具を歯に固定する時点である。
【0009】
この使用法と作用は次のようである。先ず抜歯する歯を切削して窩洞部(窪み)を作るのであるが、この窪みの大きさはアンカー部を納めることが出来る程度の大きさであれば良いため(歯とアンカー部との間には接着剤が入るため)、アンカー部を窪みに納めた時の緩さの程度は歯科医の任意判断に任される。この窩洞部に先に抜歯用具のアンカー部を納めてから接着剤を注入して接着剤を固化させて固定したり、逆に窩洞部に接着剤を注入してその後に抜歯用具のアンカー部を接着剤の中に入れ込み、接着剤を固化させて固定したりする。このようであるから上述の実用新案登録第3162169号のようにネジ部を歯に捩じ込ませる必要がなくなっている。なお固化した接着剤は、従来技術からの類推でプラコアなどと呼んで良い。後述するがレジンを用いた場合がレジンコアである。
【0010】
なお接着剤が固化すると歯と抜歯用具とが一体となるため、ハンドル部を指で摘むなり鉗子の顎部で挟むなりして抜くようにする。この際に歯根を捻るようにすると、歯が歯槽骨から浮いて来るために、抜歯は比較的容易であり且つ安全である。また抜歯を行う歯にのみ抜歯の力が加わるので、隣合う歯に影響されたり影響を与えたりすることが少ない。なおハンドル部に滑り止め部があるものでは、ここを指で摘んだり鉗子で挟んで引く力をアンカー部、すなわちこれから抜こうとしている歯に効果的に及ぼすことが出来る。またハンドル部に掛止部を備えているものでは、掛止部に鉗子や鈎具の先をしっかりと掛けることが出来る。なおハンドル部に孔部を設けた場合もこれを掛止部として使用することが出来る。アンカー部とハンドル部との間に形成された段部も掛止部として使用し得る。
【0011】
上記接着剤にはどのようなものを用いても良いが、治療時間の制約もあることから出来るだけ早く固化するものであることが好ましい。この点で接着剤がUVレジンであれば、紫外線ライトを用いて紫外線をUVレジンに数十秒照射するだけで固化させられる。また瞬間接着剤の技術であれば同様の時間効果が得られる。UV(Ultra Violet)は紫外線の略である。
【0012】
さてアンカー部の形状は任意であるが、柱状のものや錐状のものが良い。また万が一にも固化した接着剤からの離脱が起こらないように、アンカー部の先端部に玉形状や皿形状や棘形状の逆止突起を設けると良い。なおアンカー部の形状をネジ状にすれば、逆止突起と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば抜歯用具を歯に固定する準備段階に当たって、歯をアンカー部の径よりも適宜大きな径で切削して窩洞部を形成し、この窩洞部の中でアンカーを接着剤で固定するようにしているため、これから抜こうとしている歯に上記準備段階で掛かる負担を少なくすることが出来ると言う効果を奏する。なおこのように固定してしまえば、ハンドル部を指で摘むなり鉗子の顎部で挟むなりして歯を抜くことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1の説明図である。
図2】実施例1の説明図である。
図3】実施例1の説明図である。
図4】実施例2の説明図である。
図5】実施例3の説明図である。
図6】実施例4の説明図である。
図7】実施例4の説明図である。
図8】実施例4の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の4種類の実施例を図1図8を参照しつつ説明するが、本発明はこれ等の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
医師が抜歯の処置を行うこの実施例の抜歯方法では、図2の抜歯用具1と、接着剤としてのUVレジン3とを用いる。抜歯用具1は、後述する切削によって歯2に開けた窩洞部20の中に納めるアンカー部12と、ハンドル部10とから成り、このハンドル部10に滑り止めの凸条部13を設けたものである。これ等のアンカー部12とハンドル部10とは、回転中心軸としての軸部11を介して設けられている。またアンカー部12は球形状を呈する。なお抜歯用具1の素材の選択は任意であるが、ここではニッケル−チタン合金を用いている。またハンドル部10の滑り止め部に関して、凸条部13の代わりに凹条部としたり、凸条部と凹条部とを混在させたりしても良い。あるいは梵鐘にある乳のような丸い凸部をたくさん配設するようにしても良い。
【0017】
このような抜歯用具1を用意した上で、歯2に球形状のアンカー部12が入り込む程度の窩洞部20を切削器具によって形成し、ここにUVレジン3を丁寧に注入し(ステップS1)、このUVレジン3の中に抜歯用具1の球形状のアンカー部12を押し込むようにして納めた後、図示しないペン型の紫外線ライトによってUVレジン3に紫外線を照射する(ステップS2)。これによりUVレジン3が硬化して抜歯用具1がしっかりと歯2に固定される。そこでハンドル部10を指先で摘まんで抜歯を行う(ステップS3)。
【0018】
この使用法であるが、前記ハンドル部10を親指と人差し指や中指とで摘んで左右何れかの方向に回転させるようにする。この際にハンドル部10には滑り止めの凸条部13が設けられているため、唾液などによって指が滑るようなことが少ない。この際虫歯に掛かる捩りによって虫歯が浮いて来ている。そこで次にハンドル部10を指で強く摘むなり、鉗子の顎部で挟むなりして歯を抜く方向に引くようにすると容易に抜歯される。この一連の治療は安全である。この抜歯の処置を図1乃至図3で表した。なお図中符号21は歯茎を指す。
【0019】
なおUVレジン3が硬化するとその接着力はとても強固であり、抜歯用具1と歯2との間に実測で150kg程度の牽引力を掛けることが出来た。
【実施例2】
【0020】
この抜歯用具4は、歯に開けた窩洞部の中に納めるアンカー部43と、ハンドル部40とから成り、アンカー部43とハンドル部40とは、回転中心軸としての軸部42を介して設けられている。またアンカー部43は逆止機能のある矢じり形状を呈する。なお上記ハンドル部40には掛止孔41が開口されている(図4)。
【0021】
この抜歯用具4の特徴は、UVレジンなどの接着剤に対してアンカー部43による逆止作用が高い点にある。また抜歯に当たっては鉗子等を掛止孔41に掛けて歯を引くことでも抜歯が可能である。なお鉗子で歯を引く処置の場合であっても軸部42のように軸部と言う用語を用いることとする。
【実施例3】
【0022】
次に、図5で表した本実施例の抜歯用具5は、歯に開けた窩洞部の中に納める球形状のアンカー部54とハンドル部50とから成る。アンカー部54とハンドル部50とは軸部53を介して繋がっている。このハンドル部50は傘の持ち手の如き形状を呈して掛止部51を備えると共に、軸部53に当る部位に掛止孔52が開孔されている。なお球形状のアンカー部54は、歯に開けた窩洞部の中に納まり、接着剤により接着固定される。
【0023】
本実施例の抜歯用具5の使用に当たっては、ハンドル部50の形状や掛止部51や掛止孔52が滑り止め部としての役割を担う。また虫歯を引き抜くに当たっては、ハンドル部50を指で摘むようにしたり、掛止部51や掛止孔52に鉗子などを掛けて用いることが出来る。
【実施例4】
【0024】
この実施例の抜歯方法を図6乃至図8で表す。この実施例の抜歯方法で用いる抜歯用具6は、図7で表すように、歯に開けた窩洞部の中に納める略螺子形状のアンカー部62とハンドル部60と、これ等を繋ぐ軸部61から成る。この軸部61とハンドル部60とでT字形状を呈している。
【0025】
このような抜歯用具6を用意した上で、歯に略螺子形状のアンカー部62が納まる程度の窩洞部を切削器具によって形成し、ここに抜歯用具6の上記アンカー部62を納める(ステップS4)。続いてアンカー部62の回りの窩洞部に医療用瞬間接着剤を充填して固化するのを待ち(ステップS5)、抜歯用具6が歯に接着固定されたら、このハンドル部60を、図8に表すようなベース7とバール8とから成るエクストラクタを用いて抜歯する方向に引き上げる(ステップS6)。アンカー部62の略螺子形状の部位は、固化した医療用瞬間接着剤の中で逆止突起の役割を担う。またハンドル部60はエクストラクタの掛止溝83に対して掛止部となる。
【0026】
なお医療用瞬間接着剤に付いて、その固化する時間に関して任意のものを使用することが出来る。すなわち当日の患者に掛け得る時間内に固化するものであれば良い。また上記エクストラクタはこの発明の必須要件ではないが簡単に説明すると、バールハンドル80と、この先端部に設けられた掛止溝83と、これ等の間に位置する連結軸81とから成るバール8と、ベースハンドル70と、この先端部に設けられて歯に当接させるための当接部72と、これ等の間に位置してバール8の連結軸81を嵌めるための連結溝71とから成るベース7とから構成され、連結軸81を連結溝71に嵌めてバール8とベース7とを連結一体化して用いるものである。当接部72の先端部は切欠部73であり、ここを通して上記抜歯用具6の軸部61を、掛止部82の先端部の掛止溝83に引っ掛けるようにして抜歯用具6を持ち上げるようにする。抜歯が安全に安定的にかつ容易に行えるようになり、患者の負担が軽くなる効果を奏する(図8)。なおこのエクストラクタは当発明者の実用新案登録第3162226号に係るものである。
【0027】
なお本実施例の抜歯用具6は、エクストラクタを用いることなく指先のみで操作することも可能である。すなわちハンドル部60を指で摘むようにして歯を引き抜くようにするのである。
【其の他の実施例】
【0028】
なお本発明の抜歯用具は太さや長さの異なるものを幾つかセットで用意しておくことが望ましい。またハンドル部分に滑り止めを設ける場合の一例として、ハンドル部の周囲に設けた、表面に靴底やタイヤに見られるような凹凸模様のある、ゴム被覆を上げる。またハンドル部やアンカー部の構成も任意であるから、例えば実施例4であれば略螺子形状のアンカー部62はテーパーを形成せずに、円筒形状の周囲に螺刻して成るものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の抜歯用具および抜歯方法によれば、子供の患者にとっても安心安全であり負担が少ない。従って本発明をペット用のものとして提供することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 抜歯用具 10 ハンドル部 11 軸部
12 アンカー部 13 凸条部
2 歯 20 窩洞部 21 歯茎
3 UVレジン
4 抜歯用具 40 ハンドル部 41 掛止孔
42 軸部 43 アンカー部
5 抜歯用具 50 ハンドル部 51 掛止部
52 掛止孔 53 軸部 54 アンカー部
6 抜歯用具 60 ハンドル部 61 軸部
62 アンカー部
7 ベース 70 ベースハンドル 71 連結溝
72 当接部 73 切欠部
8 バール 80 バールハンドル 81 連結軸
82 掛止部 83 掛止溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8