特許第6859649号(P6859649)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859649
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】二芯平行ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 11/00 20060101AFI20210405BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   H01B11/00 Z
   H01B7/18 D
   H01B7/18 C
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-197535(P2016-197535)
(22)【出願日】2016年10月5日
(65)【公開番号】特開2018-60685(P2018-60685A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年6月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻野 厚
(72)【発明者】
【氏名】小林 優斗
【審査官】 北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0054334(US,A1)
【文献】 特開2008−300249(JP,A)
【文献】 実開昭55−170706(JP,U)
【文献】 特開2006−066203(JP,A)
【文献】 特開2002−319319(JP,A)
【文献】 特開2007−311045(JP,A)
【文献】 特開2015−210920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/00
H01B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に並べられた一対の絶縁電線と、
前記一対の絶縁電線の周囲に縦添えで巻き付けられたシールドテープと、
前記シールドテープの内側に配置されたドレイン線と、
前記シールドテープの外側に巻かれた絶縁テープと、を備え、
前記シールドテープは、内面側に金属層が設けられており、
前記ドレイン線は、前記金属層と電気的に接触するように設けられ、
前記シールドテープは、内側の表面には接着剤が塗布されておらず、外側の表面には接着剤が塗布された接着面が設けられており、
前記接着面と前記絶縁テープとが接着され、
前記接着面の面積は、前記シールドテープの外側の表面積の30%以上であり、
前記ドレイン線は、前記一対の絶縁電線が接する中央部の凹みに前記一対の絶縁電線の両方に接触するように縦添えされ、
前記ドレイン線の外径は、二芯平行ケーブルの長さ方向に直交する断面において、前記シールドテープの内側の表面と前記一対の絶縁電線の両方の絶縁電線の表面とに接する円の直径以下である、
二芯平行ケーブル。
【請求項2】
平行に並べられた一対の絶縁電線と、
前記一対の絶縁電線の周囲に縦添えで巻き付けられたシールドテープと、
前記シールドテープの外側に配置されたドレイン線と、
前記シールドテープの外側に巻かれた絶縁テープと、を備え、
前記シールドテープは、外面側に金属層が設けられており、
前記ドレイン線は、前記金属層と電気的に接触するように設けられ、
前記シールドテープの内側の表面には、接着剤が塗布された接着面が設けられており、
前記接着面と前記一対の絶縁電線とが接着され、
前記接着面の面積は、前記シールドテープの内側の表面積の30%以上であり、
前記ドレイン線は、二芯平行ケーブルの長さ方向に直交する断面において、前記一対の絶縁電線のうちの一方の絶縁電線の信号導体を中心として前記一対の絶縁電線のうちの他方の絶縁電線の信号導体と対称な位置に、前記シールドテープを挟んで前記一方の絶縁電線の横側に縦添えされており、
前記ドレイン線の外径は、二芯平行ケーブルの長さ方向に直交する断面において、前記シールドテープの内側の表面と前記一対の絶縁電線の両方の絶縁電線の表面とに接する円の直径よりも大きい、
二芯平行ケーブル。
【請求項3】
平行に並べられた一対の絶縁電線と、
前記一対の絶縁電線の周囲に縦添えで巻き付けられたシールドテープと、
前記シールドテープの外側に配置されたドレイン線と、
前記シールドテープの外側に巻かれた絶縁テープと、を備え、
前記シールドテープは、外面側に金属層が設けられており、
前記ドレイン線は、前記金属層と電気的に接触するように設けられ、前記シールドテープの外側の表面には、接着剤が塗布された接着面が設けられており、
前記接着面と前記絶縁テープとが接着され、
前記接着面の面積は、前記シールドテープの外側の表面積の30%以上70%以下であり、
前記ドレイン線は、二芯平行ケーブルの長さ方向に直交する断面において、前記一対の絶縁電線のうちの一方の絶縁電線の信号導体を中心として前記一対の絶縁電線のうちの他方の絶縁電線の信号導体と対称な位置に、前記シールドテープを挟んで前記一方の絶縁電線の横側に縦添えされており、
前記ドレイン線の外径は、二芯平行ケーブルの長さ方向に直交する断面において、前記シールドテープの内側の表面と前記一対の絶縁電線の両方の絶縁電線の表面とに接する円の直径よりも大きい、
二芯平行ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二芯平行ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
平行に並べられた一対の絶縁電線の周囲に巻き付けられた導電性のシールドテープと、シールドテープの外側に巻かれた絶縁テープと、を備えた二芯平行ケーブルが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−319319号公報
【特許文献2】米国特許第7790981号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二芯平行ケーブルにおける差動信号の伝送において、信号線(絶縁電線など)が導電性のシールドテープに対して動くと信号線に対するシールド効果が不安定になり、差動モードの入力信号に対するコモンモードの出力量(Scd21)が大きくなることがある。
【0005】
本発明は、差動信号の伝送において、差動モードの入力信号に対するコモンモードの出力量(Scd21)を小さくできる二芯平行ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る二芯平行ケーブルは、平行に並べられた一対の絶縁電線と、
前記一対の絶縁電線の周囲に縦添えで巻き付けられたシールドテープと、
前記シールドテープの内側に配置されたドレイン線と、
前記シールドテープの外側に巻かれた絶縁テープと、
を備え、
前記シールドテープは、内面側に金属層が設けられており、
前記ドレイン線は、前記金属層と電気的に接触するように設けられ、
前記金属層の表面には、接着剤が塗布された接着面が設けられており、
前記接着面と前記一対の絶縁電線とが接着され、
前記接着面の面積は、前記金属層の表面積の30%以上70%以下である。
【0007】
本発明の他の一態様に係る二芯平行ケーブルは、平行に並べられた一対の絶縁電線と、
前記一対の絶縁電線の周囲に縦添えで巻き付けられたシールドテープと、
前記シールドテープの内側に配置されたドレイン線と、
前記シールドテープの外側に巻かれた絶縁テープと、
を備え、
前記シールドテープは、内面側に金属層が設けられており、
前記ドレイン線は、前記金属層と電気的に接触するように設けられ、
前記シールドテープは、内側の表面には接着剤が塗布されておらず、外側の表面には接着剤が塗布された接着面が設けられており、
前記接着面と前記絶縁テープとが接着され、
前記接着面の面積は、前記シールドテープの外側の表面積の30%以上である。
【0008】
本発明のさらに他の一態様に係る二芯平行ケーブルは、平行に並べられた一対の絶縁電線と、
前記一対の絶縁電線の周囲に縦添えで巻き付けられたシールドテープと、
前記シールドテープの外側に配置されたドレイン線と、
前記シールドテープの外側に巻かれた絶縁テープと、
を備え、
前記シールドテープは、外面側に金属層が設けられており、
前記ドレイン線は、前記金属層と電気的に接触するように設けられ、
前記シールドテープの内側の表面には、接着剤が塗布された接着面が設けられており、
前記接着面と前記一対の絶縁電線とが接着され、
前記接着面の面積は、前記シールドテープの内側の表面積の30%以上である。
【0009】
本発明のさらに他の一態様に係る二芯平行ケーブルは、平行に並べられた一対の絶縁電線と、
前記一対の絶縁電線の周囲に縦添えで巻き付けられたシールドテープと、
前記シールドテープの外側に配置されたドレイン線と、
前記シールドテープの外側に巻かれた絶縁テープと、
を備え、
前記シールドテープは、外面側に金属層が設けられており、
前記ドレイン線は、前記金属層と電気的に接触するように設けられ、
前記シールドテープの外側の表面には、接着剤が塗布された接着面が設けられており、
前記接着面と前記絶縁テープとが接着され、
前記接着面の面積は、前記シールドテープの外側の表面積の30%以上70%以下である。
【発明の効果】
【0010】
上記発明によれば、差動信号の伝送において、差動モードの入力信号に対するコモンモードの出力量(Scd21)を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第一実施形態に係る二芯平行ケーブルの構成を示す斜視図である。
図2図1の二芯平行ケーブルの長さ方向に直交する断面図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る二芯平行ケーブルの構成を示す斜視図である。
図4図3の二芯平行ケーブルの長さ方向に直交する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の実施形態の説明)
最初に本発明の実施態様を列記して説明する。請求項に合わせる。
本発明の一態様に係る二芯平行ケーブルは、
(1) 平行に並べられた一対の絶縁電線と、
前記一対の絶縁電線の周囲に縦添えで巻き付けられたシールドテープと、
前記シールドテープの内側に配置されたドレイン線と、
前記シールドテープの外側に巻かれた絶縁テープと、
を備え、
前記シールドテープは、内面側に金属層が設けられており、
前記ドレイン線は、前記金属層と電気的に接触するように設けられ、
前記金属層の表面には、接着剤が塗布された接着面が設けられており、
前記接着面と前記一対の絶縁電線とが接着され、
前記接着面の面積は、前記金属層の表面積の30%以上70%以下である。
上記構成によれば、前記接着面の面積が70%以下であるので、シールドテープの内側にあるドレイン線とシールドテープの金属層との電気的な導通を確保できる。また、前記接着面の面積が30%以上であるので、絶縁電線とシールドテープとを確実に接着することができる。これにより、シールドテープが一対の絶縁電線に対して動かないように固定できるので、絶縁電線(信号線)に対するシールド効果が安定し、差動モードの入力信号に対するコモンモードの出力量(Scd21)を小さくすることができる。
【0013】
(2) 前記金属層と前記ドレイン線とが導電性の接着剤で接着されている。
上記構成によれば、ドレイン線とシールドテープの金属層との電気的な導通をより確実に確保できる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る二芯平行ケーブルは、
(3) 平行に並べられた一対の絶縁電線と、
前記一対の絶縁電線の周囲に縦添えで巻き付けられたシールドテープと、
前記シールドテープの内側に配置されたドレイン線と、
前記シールドテープの外側に巻かれた絶縁テープと、
を備え、
前記シールドテープは、内面側に金属層が設けられており、
前記ドレイン線は、前記金属層と電気的に接触するように設けられ、
前記シールドテープは、内側の表面には接着剤が塗布されておらず、外側の表面には接着剤が塗布された接着面が設けられており、
前記接着面と前記絶縁テープとが接着され、
前記接着面の面積は、前記シールドテープの外側の表面積の30%以上である。
上記構成によれば、シールドテープの内側にあるドレイン線とシールドテープの金属層との電気的な導通を確実に確保できる。また、シールドテープは、その外側に巻かれる絶縁テープと接着されるので絶縁テープに固定される。絶縁テープがシールドテープを押え込む。これにより、シールドテープが一対の絶縁電線に対してずれることを抑えることができる。シールドテープが一対の絶縁電線に対して動きにくくなるので、絶縁電線(信号線)に対するシールド効果が安定し、差動モードの入力信号に対するコモンモードの出力量(Scd21)を小さくすることができる。
【0015】
また、本発明のさらに他の一態様に係る二芯平行ケーブルは、
(4) 平行に並べられた一対の絶縁電線と、
前記一対の絶縁電線の周囲に縦添えで巻き付けられたシールドテープと、
前記シールドテープの外側に配置されたドレイン線と、
前記シールドテープの外側に巻かれた絶縁テープと、
を備え、
前記シールドテープは、外面側に金属層が設けられており、
前記ドレイン線は、前記金属層と電気的に接触するように設けられ、
前記シールドテープの内側の表面には、接着剤が塗布された接着面が設けられており、
前記接着面と前記一対の絶縁電線とが接着され、
前記接着面の面積は、前記シールドテープの内側の表面積の30%以上である。
上記構成によれば、ドレイン線とシールドテープの金属層との電気的な導通を確保できる。また、シールドテープの内側の表面に接着剤が塗布された接着面の面積が30%以上であるので、絶縁電線とシールドテープとを確実に接着することができる。これにより、シールドテープが一対の絶縁電線に対して動かないように固定できるので、絶縁電線(信号線)に対するシールド効果が安定し、差動モードの入力信号に対するコモンモードの出力量(Scd21)を小さくすることができる。
【0016】
また、本発明のさらに他の一態様に係る二芯平行ケーブルは、
(5) 平行に並べられた一対の絶縁電線と、
前記一対の絶縁電線の周囲に縦添えで巻き付けられたシールドテープと、
前記シールドテープの外側に配置されたドレイン線と、
前記シールドテープの外側に巻かれた絶縁テープと、
を備え、
前記シールドテープは、外面側に金属層が設けられており、
前記ドレイン線は、前記金属層と電気的に接触するように設けられ、
前記シールドテープの外側の表面には、接着剤が塗布された接着面が設けられており、
前記接着面と前記絶縁テープとが接着され、
前記接着面の面積は、前記シールドテープの外側の表面積の30%以上70%以下である。
シールドテープの外側に接着剤が塗布された接着面の面積が70%以下であるので、シールドテープの外側にあるドレイン線とシールドテープの金属層との電気的な導通を確保できる。また、前記接着面の面積が30%以上あるので、シールドテープがシールドテープの外側に巻かれた絶縁テープと接着されて固定される。これにより、シールドテープが一対の絶縁電線に対して動きにくくなる。
【0017】
(本発明の実施形態の詳細)
本発明の実施形態に係る二芯平行ケーブルの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
(第一実施形態)
図1図2に示すように、二芯平行ケーブル1Aは、互いに接触して平行に並べられた一対の絶縁電線2と、一対の絶縁電線2の周囲に巻かれているシールドテープ3とを備えている。また、二芯平行ケーブル1Aは、絶縁電線2に添えてシールドテープ3の内側に配置されているドレイン線4と、シールドテープ3の外側に巻かれている絶縁テープ5とを備えている。
【0019】
絶縁電線2は、中央部に設けられている信号導体21と、信号導体21の周囲を被覆する絶縁体22とで構成されている。信号導体21は、例えば銅やアルミニウムなどの導体、錫や銀などでメッキされた導体等で形成された単線または撚り線である。信号導体21に用いられる上記導体の寸法は、AWG(American Wire Gauge)の規格において、例えばAWG38〜AWG22である。絶縁体22は、例えばポリエチレン(PE)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、フッ素樹脂等で形成されている。絶縁体は充実層とすることができる。または絶縁体は発泡層とすることもできる。絶縁体が発泡層の場合は、1kgの荷重を30分間かけたときの絶縁電線の潰れ残り率(絶縁体に外力を加えた場合における変形後の絶縁電線の潰れ方向の径を、変形前の絶縁電線の径で除して得られた値)が80%以上99%以下であることが好ましい。絶縁電線2の外径は、例えば0.3mm〜3.0mm程度であり、例えばAWG30の信号導体21を用いた場合は、0.9mm程度である。
なお、本例では絶縁電線2を二本平行に並べたものを使用しているが、例えば二本の信号導体21をポリエチレン、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂で一括押出被覆し、眼鏡型や楕円等に形成したものを使用するようにしてもよい。
【0020】
シールドテープ3は、例えば銅またはアルミニウムなどの金属層3aをポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の樹脂テープに接着または蒸着した金属層付樹脂テープで形成されている。シールドテープ3の厚さは、例えば10μm〜50μm程度であり、金属層3aの厚さは、例えば0.1μm〜20μm程度である。なお、シールドテープ3には、例えば両面が金属で構成される金属テープや樹脂テープの両面に金属テープが貼られた金属層付樹脂テープを用いるようにしてもよい。シールドテープ3は、絶縁電線2およびドレイン線4の周囲に縦添えで巻かれている。縦添え巻きされたシールドテープ3は、重なる部分に接着剤が付いていることが好ましい。重なり部分が接着剤で固着され、巻かれた形状が維持される。また、シールドテープ3は、金属層3aが内側に配置されるように、すなわち、金属層3aが絶縁電線2およびドレイン線4側を向くように巻かれている。
【0021】
シールドテープ3の内側の面、すなわち、金属層3aが設けられている面には、例えばエポキシ系やシリコーン系からなる絶縁性の接着剤31aが塗布されている。また、シールドテープ3の外側の面、すなわち、金属層3aが設けられていない面には、接着剤がない。
【0022】
シールドテープ3の内側の面に塗布される接着剤31aは、接着剤が塗布されている部分(以下、接着面と称す)の面積がシールドテープの片側面(金属層3a)の面積の30%以上、70%以下となるように金属層3aの表面に塗布される。金属層3aとドレイン線4とが接する箇所には、接着剤31aをできるだけ塗らないようにして、金属層3aとドレイン線4とが電気的に接続されるようにする。例えば、接着剤31aは、例えばゼブラ状、グリッド状、点々状等に塗布される。或いは、金属層3aとドレイン線4とが接する箇所には接着剤31aを塗らずに、金属層3aとドレイン線4とが接しない箇所の金属層3aの表面には接着剤31aが全面的に塗布されていてもよい。接着剤31aの厚さは、例えば2μm程度とされている。
なお、塗布される接着剤31aは、例えば導電性を有するものであってもよく、その場合には、シールドテープの片側面(金属層3a)の全表面に塗布されていてもよい。金属層がシールドテープの両面にある場合は、外側の金属層に塗布される接着剤31aは上述の通りである。
【0023】
接着剤31bが、シールドテープ3の外側の表面に塗布されていてもよい。例えば、接着剤31bは、シールドテープ3の外側の全表面に塗布されていてもよい。接着剤31bの厚さは、例えば0.1μm〜5μm程度とされている。
上記のように、シールドテープ3に接着剤31bが塗布されると、シールドテープ3の重なり部分が接着される。シールドテープ3と絶縁テープ5とも接着される。
【0024】
ドレイン線4は、銅やアルミニウムなどの導体線である。ドレイン線4は、平行に並べられた一対の絶縁電線2が接する中央部の凹みに両絶縁電線2と接触するように縦添えされている。縦添えされたドレイン線4は、シールドテープ3の内側に配置されている金属層3aと電気的に接触するように設けられている。ドレイン線4の外径は、例えば0.08mm〜0.8mm程度である。
なお、絶縁電線2を二本平行に並べたものではなく、二本の信号導体21が熱可塑性樹脂で一括押出被覆されている構成の場合は、ドレイン線4は、上記二本の信号導体21に対して対称性の良い位置に縦添えされることが好ましい。この場合もドレイン線4は、シールドテープ3の内側に配置されている金属層3aと電気的に接触する。
【0025】
絶縁テープ5は、PET、PVC等の樹脂テープで形成されており、シールドテープ3の外側に例えば螺旋状(横巻き)に巻かれている。絶縁テープ5は、一層で形成されている(ただし、重なる部分は二層になる)。絶縁テープ5の厚さは、例えば12μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは18μm以上、さらに好ましくは24μm以上とされている。なお、絶縁テープ5は、二層に巻き付けられていてもよい。絶縁テープ5の内側の面には接着剤が塗布されている。なお、絶縁テープ5には、金属層が接着または蒸着されていてもよい。
絶縁テープ5がシールドテープ3の周囲に設けられることにより、シールドテープ3の機械的強度を強くし、外部からの汚染を防ぐことができる。
【0026】
上記のような構成の二芯平行ケーブル1Aによれば、シールドテープ3の内側の面に設けられた金属層3aに塗布される接着剤31aは、その接着面の面積が金属層3aの表面積の30%以上とされる。このため、一対の絶縁電線2にシールドテープ3を確実に接着させることができ、絶縁電線2に対してシールドテープ3をずれないように固定することができる。また、接着剤31aの接着面の面積は、金属層3aの表面積の70%以下とされるので、シールドテープ3の金属層3aとドレイン線4との電気的な導通を十分に確保することができる。さらに、接着剤31aは、金属層3aの表面に例えばゼブラ状等に塗布されるので、シールドテープ3の金属層3aとドレイン線4とを確実に導通させることができる。
【0027】
さらにシールドテープ3の外側の面に接着剤31bが塗布された場合は、シールドテープ3がその外側に横巻で巻かれる絶縁テープ5に確実に接着されて固定される。絶縁テープ5は、横巻で巻かれてシールドテープを押え込む。これにより、シールドテープ3および一対の絶縁電線2が固定される。
【0028】
シールドテープ3が一対の絶縁電線2の周囲に縦添えで巻かれているので、横巻きの場合に比べて電気的特性を高めることができる(高周波信号を伝送した場合に、特定の波長で信号の減衰量が急に大きくなることがない)。
シールドテープ3の外側に巻かれる絶縁テープ5の厚さを厚くするとよい(例えば12μm以上にする)。シールドテープ3が絶縁電線2に対してもずれることをより抑えることができる。
【0029】
また、絶縁テープ5が螺旋状に巻かれることで、シールドテープ3が外側から押圧されて、シールドテープ3の金属層3aとドレイン線4とがより確実に電気的に接触される。
また、ドレイン線4が一対の絶縁電線2の中央部に両絶縁電線2と接触するように配置されていると、各絶縁電線2がドレイン線4からの押圧によって同じように潰れるので、各絶縁電線の誘電率の差が出にくい。差動信号を伝送したときに信号が劣化しにくい。
【0030】
これらにより、シールドテープ3による絶縁電線(信号線)2に対するシールド効果が安定し、差動モードの入力信号に対するコモンモードの出力量(Scd21)を小さくすることができる。
【0031】
(第一実施形態の変形例)
第一実施形態の変形例は、上述の第一実施形態に対して、シールドテープ3の接着剤塗布の構成が異なる例である。なお、その他の構成は、第一実施形態と同じであり、繰り返しとなる説明は省略する。本変形例の概観は、図1、2で示した二芯平行ケーブル1Aと同様である。
本変形例のシールドテープ3は、内側の表面には接着剤が塗布されていない。この点が、上述の第一実施形態と異なる。
シールドテープ3の外側の面には、接着面の面積が外側の面の全表面積の30%以上となるように、接着剤31bが塗布されている。例えば、接着剤31bは、シールドテープ3の外側の全表面に塗布されていてもよい。接着剤31bの厚さは、例えば2μm程度とされている。
本変形例の上記構成によれば、シールドテープ3は、内側の表面には接着剤が塗布されていないので、金属層3aとドレイン線4とが直接接触し、ドレイン線4とシールドテープ3の金属層3aとの電気的な導通を確実に確保できる。
そして、シールドテープ3は、その外側に巻かれる絶縁テープ5と接着されるので絶縁テープ5に固定される。絶縁テープ5は、横巻で巻かれてシールドテープ3を抑え込む。この状態でシールドテープと絶縁テープとが接着されて固定される。これにより、シールドテープ3が絶縁電線2に対してずれることを抑えることができる。
よって、シールドテープ3による絶縁電線(信号線)2に対するシールド効果が安定し、差動モードの入力信号に対するコモンモードの出力量(Scd21)を小さくすることができる。
【0032】
(第二実施形態)
図3図4に示すように、二芯平行ケーブル1Bは、互いに接触して平行に並べられた一対の絶縁電線2と、一対の絶縁電線2の周囲に巻かれているシールドテープ3とを備えている。また、二芯平行ケーブル1Bは、絶縁電線2に添うようにシールドテープ3の外側に配置されているドレイン線4と、シールドテープ3およびドレイン線4の外側に巻かれている絶縁テープ5とを備えている。なお、上述した第一実施形態と同一番号を付した部分については、同じ機能であるため、繰り返しとなる説明は省略する。
【0033】
シールドテープ3は、一対の絶縁電線2の周囲に縦添えで巻かれている。シールドテープ3は、金属層3aが外側に配置されるように、すなわち、金属層3aが絶縁電線2に接触しないような向きに巻かれている。
シールドテープ3の内側の面、すなわち、金属層3aが設けられていない面には、絶縁性の接着剤31aが塗布されている。また、シールドテープ3の外側の面、すなわち、金属層3aが設けられている面には、絶縁性の接着剤31bが塗布されている。なお、金属層3aが設けられている外側の面は、接着剤31bを塗布しない構成としてもよい。
【0034】
シールドテープ3の内側の面に塗布される接着剤31aは、接着面の面積が内側の面の全表面積の30%以上となるように塗布される。例えば、接着剤31aは、シールドテープ3の内側の面に全面的に塗布されていてもよい。接着剤31aの厚さは、例えば0.1μm〜5μm程度とされている。シールドテープの両面に金属層がある場合は、内側の金属層に塗布される接着剤31aも上述の通りである。
【0035】
金属層3aが設けられている外側の面に接着剤31bを塗布する構成の場合は以下のようにする。
シールドテープ3の外側の面に塗布される接着剤31bは、接着面の面積が金属層3aの全表面積の30%以上、70%以下となるように金属層3aの表面に塗布される。接着剤31bは、例えばゼブラ状、グリッド状、点々状等に塗布される。接着剤31bの厚さは、例えば2μm程度とされている。なお、塗布される接着剤31bは、例えば導電性を有するものであってもよく、その場合には、金属層3aの表面に全面的に塗布されてもよい。また、接着剤31bは、ドレイン線4に接触するシールドテープ3の金属層3a部分を除いた他の部分に全面的に塗布されてもよい。
【0036】
ドレイン線4は、例えば、平行に並べられた一対の絶縁電線2の一方の絶縁電線2における横側に、シールドテープ3を間に挟んで、すなわち、絶縁電線2に直接接触しない状態で縦添えされている。縦添えされたドレイン線4は、シールドテープ3の外側に配置されている金属層3aと電気的に接触するように設けられている。なお、ドレイン線4が縦添えされている位置は、上記のように横側でなくてもよく、例えば、一対の絶縁電線2が接する中央部の上側或いは下側などで、シールドテープ3の外側に配置されていてもよい。ドレイン線4が二つの信号導体21に対して対称性の良い位置に配置されることが好ましい。
【0037】
前述の第一実施形態の二芯平行ケーブル1Aは、一対の絶縁電線2が接する中央部の凹みに両絶縁電線2と接触するように縦添えされているが、この凹みよりもドレイン線4の外径が大きい場合は、ドレイン線4の周辺部分で、シールドテープ3と絶縁電線2とが若干離される可能性がある。第二実施形態の二芯平行ケーブル1Bは、ドレイン線4がシールドテープ3の外側に配置されているので、シールドテープ3と絶縁電線2との間にドレイン線4が存在しない。このため、シールドテープ3と絶縁電線2とがドレイン線4によって若干離されることはなく、シールドテープ3と絶縁電線2との密着度がよい。
すなわち、上記のような構成の二芯平行ケーブル1Bによれば、シールドテープ3の内側の面の30%以上に接着剤31aを塗布することにより、シールドテープ3をその内側の一対の絶縁電線2に確実に接着することができる。これにより、一対の絶縁電線2の相互位置がずれないようにシールドテープ3によって固定することができる。
【0038】
また、金属層3aが設けられている外側の面に塗布される接着剤31bは、第一実施形態で説明したシールドテープの内側の金属層に塗布する接着剤31aと同様である。接着剤31bの接着面の面積は、金属層3aの表面積の30%以上とされる。このため、シールドテープ3がシールドテープ3の外側に巻かれた絶縁テープ5と接着されて固定される。これにより、シールドテープが一対の絶縁電線に対してもより確実に動きにくくなる。
また、接着剤31bの接着面の面積は、金属層3aの表面積の70%以下とされるので、シールドテープ3の金属層3aとドレイン線4との電気的な導通を十分に確保することができる。
【0039】
また、シールドテープ3が縦添えで巻かれていること、絶縁テープ5の厚さを厚くすること、絶縁テープ5が螺旋状に巻かれること、導電性の接着剤を用いることについては、第一実施形態と同様の効果を奏する。
【0040】
これらにより、シールドテープ3による絶縁電線(信号線)2に対するシールド効果が安定し、差動モードの入力信号に対するコモンモードの出力量(Scd21)を小さくすることができる。
【実施例】
【0041】
実施例及び比較例の二芯平行ケーブルにおけるモード変換量(Scd21)の測定結果について説明する。
なお、Scd21は、ポート1からポート2における差動モードからコモンモードへの変換量のことであり、ミックスモードSパラメータの1つである。USBケーブル(例えばUSB3.0)のコンプライアンス・テストでは−20dB/m以下と設定されている。
以下の測定では、長さ3mの二芯平行ケーブルに20GHz以上の高周波信号を伝送した場合において、Scd21値の最大値が−20dB/m以下のものを良好、−25dB/m以下のものを優秀と判定した。また、Scd21値の最大値が−20dB/mより大きいものを不良と判定した。
【0042】
(実施例1)
実施例1の二芯平行ケーブルの構成は、図1図2に示した構成であり、下記のようにして作成した。
AWG30の信号導体21を有する直径0.96mm絶縁電線2を二本平行に並べたものを使用した。銅の金属層3a(厚さ8μm)が設けられた厚さ21μmのシールドテープ3を、金属層3aが内側に配置されるようにして、絶縁電線2の周囲に縦添え巻きした。シールドテープ3の内側の面(金属層3aの表面)には、接着面の面積が金属層3aの表面積の30%となるように絶縁性の接着剤31a(厚さ2μm)をゼブラ状に塗布した。また、シールドテープ3の外側の面には絶縁性の接着剤31b(厚さ2μm)を全面的(100%)に塗布した。ドレイン線4を絶縁電線2に縦添えしてシールドテープ3の内側に配置した。シールドテープ3の外側に厚さ15μmの絶縁テープ5を螺旋状に巻いた。絶縁テープ5の内側の面には絶縁性の接着剤(厚さ2μm)を全面的(100%)に塗布した。
上記構成の実施例1の二芯平行ケーブルを長さ3mとして、20GHz以上の高周波信号を伝送し、Scd21を測定した。
その結果、Scd21値の最大値が−25dB/m以下であり、実施例1の二芯平行ケーブルの品質は優秀と判定された。接着剤31aが塗布されることにより絶縁電線2とシールドテープ3とが固定され、接着剤31bおよび絶縁テープ5の接着剤によりシールドテープ3と絶縁テープ5とが固定された。
【0043】
(実施例2)
実施例2の二芯平行ケーブルの構成は、図3図4に示した構成であり、下記のようにして作成した。
絶縁電線2は、実施例1と同様の構成とした。銅の金属層3aが設けられたシールドテープ3を、金属層3aが外側に配置されるようにして、絶縁電線2の周囲に縦添え巻きした。シールドテープ3の内側の面には絶縁性の接着剤31aを全面的(100%)に塗布した。また、シールドテープ3の外側の面(金属層3aの表面)には、接着面の面積が金属層3aの全表面積の30%となるように絶縁性の接着剤31bをゼブラ状に塗布した。ドレイン線4を絶縁電線2に縦添えしてシールドテープ3の外側に配置した。絶縁テープ5は、実施例1と同様の構成とした。なお、各部の厚さ、直径は、実施例1と同じである。
上記構成の実施例2の二芯平行ケーブルを長さ3mとして、20GHz以上の高周波信号を伝送し、Scd21を測定した。
その結果、Scd21値の最大値が−25dB/m以下であり、実施例2の二芯平行ケーブルの品質は優秀と判定された。接着剤31aが塗布されることにより絶縁電線2とシールドテープ3とが固定され、接着剤31bおよび絶縁テープ5の接着剤によりシールドテープ3と絶縁テープ5とが固定された。
【0044】
(実施例3)
実施例3の二芯平行ケーブルの構成は、上記実施例2と同様のシールドテープ3において、シールドテープ3の外側の面に接着剤31bが塗布されない構成とした。その他は、実施例2と同様の構成とした。
上記構成の実施例3の二芯平行ケーブルを長さ3mとして、20GHz以上の高周波信号を伝送し、Scd21を測定した。
その結果、Scd21値の最大値が−25dB/m以下であり、実施例3の二芯平行ケーブルの品質は優秀と判定された。接着剤31aが塗布されることにより絶縁電線2とシールドテープ3とが固定され、絶縁テープ5の接着剤によりシールドテープ3と絶縁テープ5とが固定された。
【0045】
(実施例4)
実施例4の二芯平行ケーブルの構成は、上記実施例1と同様のシールドテープ3において、シールドテープ3の内側の面に接着剤31aが塗布されない構成とした。その他は、実施例1と同様の構成とした。
上記構成の実施例4の二芯平行ケーブルを長さ3mとして、20GHz以上の高周波信号を伝送し、Scd21を測定した。
その結果、Scd21値の最大値が−20dB/m以下であり、実施例4の二芯平行ケーブルの品質は良好と判定された。接着剤31bおよび絶縁テープ5の接着剤によりシールドテープ3と絶縁テープ5とが固定された。
【0046】
(実施例5)
実施例5の二芯平行ケーブルの構成は、上記実施例4と同様の構成において、絶縁テープ5の厚さを厚く形成した(厚さ25μmに形成)。
上記構成の実施例5の二芯平行ケーブルを長さ3mとして、20GHz以上の高周波信号を伝送し、Scd21を測定した。
その結果、Scd21値の最大値が−25dB/m以下であり、実施例5の二芯平行ケーブルの品質は優秀と判定された。厚い絶縁テープ5により、シールドテープ3が強く固定された。
【0047】
(比較例1)
上記実施例1と同様の構成において、接着剤が全く塗布されない構成とした。すなわち、比較例1では、シールドテープ3の内側の面、外側の面、絶縁テープ5の内側の面に、接着剤が全く塗布されていない。
上記構成の比較例1の二芯平行ケーブルを長さ3mとして、20GHz以上の高周波信号を伝送し、Scd21を測定した。
その結果、Scd21値の最大値が−20dB/mより大きく、比較例1の二芯平行ケーブルの品質は不良と判定された。
【0048】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【符号の説明】
【0049】
1A,1B 二芯平行ケーブル
2 絶縁電線
3 シールドテープ
3a 金属層
4 ドレイン線
5 絶縁テープ
21 信号導体
22 絶縁体
31a,31b 接着剤
図1
図2
図3
図4