【実施例】
【0100】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0101】
なお、不飽和環状エーテル化合物原料の不飽和環状エーテル化合物の純度はガスクロマトグラフィーのピーク面積割合から見積もり、不純物の硫黄元素換算濃度、窒素元素換算濃度の測定は、それぞれ、燃焼−吸収−イオンクロマト法(燃焼装置:三菱化学(株)製 試料燃焼装置 QF−02、分析装置:日本ダイオネクス(株)製 イオンクロマトDX−500)、燃焼分解−化学発光法で行った(三菱化学(株)製 微量窒素分析装置 TN−10)。
また、以下において、触媒の表記における「%」は「質量%」を示す。
【0102】
〔フランの水素化水和反応〕
[実施例1:ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=75、比表面積=410m
2/g、Na
2O含有量0.05質量%)紛体を約100ml/minの空気気流下、500℃で4時間焼成した。この焼成したゼオライト5.0gに、硝酸NiとRe
2O
7を溶解した混合水溶液を用いて、incipient−wetness法によりNiとReを含浸させた。湯浴で水分を除去した後、約100ml/minの空気気流下120℃で12時間乾燥し、その後500℃で4時間焼成した。さらに、75ml/minの水素気流下で450℃、2時間還元し、ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒(2質量%Ni、0.5質量%Re、残部ZSM5(Si/Al=75))を得た。
【0103】
水素化水和反応の不飽和環状エーテル化合物原料として、市販試薬のフランを特に精製せずに使用した。このフランの純度は99質量%以上であり、不純物含有量は、硫黄元素換算濃度2ppm以下、窒素元素換算濃度5ppm以下であった。
【0104】
氷水をはったバットに200mLの誘導撹拌機構を備えたオートクレーブを浸して冷却し、水を48g投入し、続いて上述の方法で得たZSM5担持2%Ni−0.5%Re触媒を2g投入。さらに上述のフランを34g仕込んだ。このとき、水とフランのモル比は5.33であった。オートクレーブを閉じ、氷水で冷やしながら、内部ガスを水素(一般工業用水素ガス 純度99.99vol%以上)に置換した。オートクレーブに漏れがないかをチェックした後、誘導撹拌方式で撹拌(300rpm)しながらオートクレーブを昇温し、内温が150℃に到達する直前で、撹拌速度を1000rpmに上げるとともに水素圧力を反応器圧力が4MPaになるように調節し、内温150℃で水素化水和反応を開始した。
【0105】
所定時間経過後、反応器を空冷し、内温が50℃以下になったら、氷水を張ったバットにつけてさらに冷却した。内温が6℃になったら、パージバルブを開けて常圧に戻し、
その後オートクレーブの蓋を開けて、内容物をすばやく採取した。内容物をエタノールで希釈し、内部標準としてジエチレングリコールジメチルエーテルを加えて、FID−GCで定量的に分析した。以下の式より不飽和環状エーテル転化率とジオールの選択率を求めた。
【0106】
フラン転化率(%)=
[1−{反応後不飽和環状エーテル残量(mol)
/不飽和環状エーテル供給量(mol)}]×100
【0107】
ジオール選択率(%)=
{ジオール収率(%)/不飽和環状エーテル転化率(%)}×100
=[{ジオール生成量(mol)/不飽和環状エーテル仕込み量(mol)}
×100(%)/不飽和環状エーテル転化率(%)]×100
同様に飽和環状エーテルなどの副生物の選択率も求め、ジオールと飽和環状エーテルの合計の選択率、モノオールの選択率、飽和環状エーテルに対するジオールの生成比を算出した。
これらの結果を表1に示す。
【0108】
表1に示されるように、ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒を用いた場合は、300分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は98%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は43%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は54%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.80であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
【0109】
[実施例2:ZSM5(Si/Al=800)担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=800、比表面積=360m
2/g、Na
2O含有量0.05質量%以下)紛体を用いて、実施例1と同様にして、ZSM5(Si/Al=800)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、120分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は99%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は30%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は68%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.44であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
【0110】
[実施例3:USY(Si/Al=23)担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型FAUゼオライト(USY、Si/Al=23、比表面積=720m
2/g、Na
2O含有量0.03質量%)紛体を用いて、実施例1と同様にして、USY(Si/Al=23)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、240分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は94%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は50%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は42%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.19であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
【0111】
[実施例4:BEA(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型BEAゼオライト(Si/Al=75、比表面積=500m
2/g、Na
2O含有量0.03質量%以下)紛体を用いて、実施例1と同様にして、BEA(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、210分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は100%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は48%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は50%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.96であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
【0112】
[実施例5:BEA(Si/Al=75)担持2%Ni−2%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型BEAゼオライト(Si/Al=75、比表面積=500m
2/g、Na
2O含有量0.03質量%以下)紛体を用いて、実施例1と同様にして、BEA(Si/Al=75)担持2%Ni−2%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、120分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は99%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は45%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は44%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.02であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
【0113】
[実施例6:ZSM5(Si/Al=75)担持1%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=75、比表面積=410m
2/g、Na
2O含有量0.05質量%)紛体を用いて、実施例1と同様にして、ZSM5(Si/Al=75)担持1%Ni−0.5%Re触媒を調製した。この触媒を4g用い、反応温度を165℃とした以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、270分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は99%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は60%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は35%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.71であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は3%であった。
【0114】
[実施例7:ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=75、比表面積=410m
2/g、Na
2O含有量0.05質量%)紛体と硝酸Ni水溶液を用いて、実施例1と同様にして、ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni触媒を調製し、反応器水素圧力を5MPaに調節した以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、180分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は88%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は34%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は65%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.52であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
【0115】
[実施例8:USY(Si/Al=100)担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型FAUゼオライト(USY、Si/Al=100、比表面積=630m
2/g、Na
2O含有量0.05質量%)紛体を用いて、実施例1と同様にして、USY(Si/Al=100)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、150分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は94%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は29%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は68%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.43であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
【0116】
[実施例9:BEA(Si/Al=20)担持4%Ni−1%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型BEAゼオライト(Si/Al=20、比表面積=500m
2/g、Na
2O含有量0.05質量%)紛体を用いて、実施例1と同様にして、BEA(Si/Al=20)担持4%Ni−1%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、120分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は100%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は51%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は43%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.19であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
【0117】
[実施例10:ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=75、比表面積=410m
2/g、Na
2O含有量0.05質量%)紛体を用いて、実施例1と同様にして、ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製した。この触媒を0.5g用い、反応器水素圧力を3MPaに調節した以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、330分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は59%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は50%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は41%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.22であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
【0118】
[比較例1:MOR(Si/Al=112)担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型MOR(モルデナイト)ゼオライト(Si/Al=112、比表面積=450m
2/g、Na
2O含有量0.05質量%以下)紛体を用いて、実施例1と同様にして、MOR(Si/Al=112)担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、240分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は45%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は8%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は52%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.15であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
【0119】
[比較例2:BEA(Si/Al=75)担持2%Ni−4%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型BEAゼオライト(Si/Al=75、比表面積=500m
2/g、Na
2O含有量0.03質量%以下)紛体を用いて、実施例1と同様にして、BEA(Si/Al=75)担持2%Ni−4%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、240分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は43%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は22%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は33%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.67であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
【0120】
[比較例3:BEA(Si/Al=75)担持2%Re触媒による水素化水和反応>
担体として市販のプロトン型BEAゼオライト(Si/Al=75、比表面積=500m
2/g、Na
2O含有量0.03質量%以下)紛体とRe
2O
7水溶液を用いて、実施例1と同様にして、BEA(Si/Al=75)担持2%Re触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、240分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は8%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は20%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は28%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.71であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
【0121】
[比較例4:ZSM5(Si/Al=800)担持20%Ni触媒による水素化水和反応]
担体として市販のプロトン型MFIゼオライト(ZSM5、Si/Al=800、比表面積=360m
2/g、Na
2O含有量0.05質量%以下)紛体と硝酸Ni水溶液を用いて、実施例1と同様にして、ZSM5(Si/Al=800)担持20%Ni触媒を調製し、同様にフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表1に示した。
表1に示されるように、60分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は99%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は12%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は85%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.14であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
【0122】
【表1】
【0123】
実施例1−6と比較例1から、ZSM5(MFI)、USY(FAU)、BEAといった10員環以上の孔径と3次元の孔構造を有するプロトン型(酸性)ハイシリカゼオライトに固定化したNi触媒が、不飽和環状エーテルの水素化水和反応において高い選択率でジオール化合物を与えることがわかる。実施例4,5と比較例2,3から、活性な触媒金属であるNiと修飾助剤であるReの量比に関して、NiよりもReの量が少ないほうが、不飽和環状エーテルの水素化水和反応において、活性、選択性ともに優れていることがわかる。さらに、実施例1,6,7と比較例4から、活性な触媒金属であるNiの触媒全体に対する量が20%より少ないほうが、不飽和環状エーテルの水素化水和反応において高い選択率でジオール化合物を与えることがわかる。
【0124】
[実施例11:アモルファスSiO
2−Al
2O
3担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のアモルファスSiO
2−Al
2O
3(比表面積=560m
2/g、細孔容積=0.73ml/g、Si/Al=4.5)紛体を用いて、実施例1と同様にSiO
2−Al
2O
3担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製した。得られた触媒を用いて、反応器水素圧力を3MPaとした以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、360分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は74%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は57%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は37%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.54であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
【0125】
[実施例12:アモルファスAl
1.5PO
n担持2%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
硝酸アルミニウムとリン酸の混合水溶液に28%NH
3水をゆっくり滴下して沈殿を生じさせ、一晩熟成した後に濾過、水洗した。得られたケーキを120℃のオーブンで12時間乾燥し、さらに400℃で4時間焼成した後に乳鉢で粉砕してアモルファスAl
1.5PO
n紛体を得た。
得られたAl
1.5PO
n紛体を担体として用いて、実施例1と同様にAl
1.5PO
n担持2%Ni−0.5%Re触媒を調製した。この触媒を用いて、反応器水素圧力を5MPaとした以外は実施例1と同様にして、フランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、180分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は71%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は42%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は55%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.76であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
【0126】
[実施例13:ニオブ酸担持4%Ni触媒による水素化水和反応]
CBMM社の含水酸化ニオブ紛体(HY340、比表面積150m
2/g)を300℃で2時間焼成して脱水した。硝酸Ni水溶液を用いて、得られたニオブ酸(含水酸化ニオブ)にincipient−wetness法によりNiを含浸させた。湯浴で水分を飛ばした後、120℃で6時間乾燥し、さらに300℃で3時間、空気中で焼成した後に、水素気流下、320℃で2時間還元して、ニオブ酸担持4%Ni触媒を得た。得られた触媒を用い、反応器水素圧力を5MPaとした以外は実施例1と同様にして、フランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、300分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は70%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は43%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は50%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.86であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
【0127】
[実施例14:ニオブ酸担持8%Ni触媒による水素化水和反応]
実施例13と同様にしてニオブ酸担持8%Ni触媒を得た。得られた触媒を用いて実施例13と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、105分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は77%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は28%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は69%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.41であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
【0128】
[比較例5:ニオブ酸担持20%Ni触媒による水素化水和反応]
実施例13と同様にしてニオブ酸担持20%Ni触媒を得た。得られた触媒を用いて実施例13と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、45分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は77%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は17%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は79%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.22であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は2%であった。
【0129】
[比較例6:ジルコニア担持1%Ni触媒による水素化水和反応]
新日本金属社の水酸化ジルコニウム粉末(Z999)を500℃で3時間焼成して脱水した。得られたジルコニア粉末(比表面積90m
2/g)にincipient−wetness法によりNiを含浸させた。湯浴で水分を飛ばした後、120℃で6時間乾燥し、さらに500℃で3時間空気中で焼成した後に、水素気流下、300℃で2時間還元して、ジルコニア担持1%Ni触媒を得た。得られた触媒を用い、反応器水素圧力を5MPaとした以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、180分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は74%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は14%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は83%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.17であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は3%であった。
【0130】
[比較例7:チタニア担持2%Ni触媒による水素化水和反応]
担体として塩化チタン原料から製造した、主としてアナタース型の結晶構造を有するチタニア(比表面積50m
2/g)を粉砕した粉末を用いて、比較例6と同様にしてチタニア担持2%Ni触媒を得た。得られた触媒を用い、反応器水素圧力を5MPaとした以外は実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、60分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は73%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は1%以下であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は96%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.01以下であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は4%であった。
【0131】
[比較例8:アルミナ担持1%Ni−0.5%Re触媒による水素化水和反応]
担体として市販のγ−Al
2O
3(比表面積166m
2/g、細孔容積0.37ml/g)を粉砕した紛体を用いて、実施例6と同様にしてアルミナ担持1%Ni−0.5%Re触媒を得た。この触媒を4g用い、反応器水素圧力を3MPaとした以外は、実施例1と同様にしてフランの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表2に示した。
表2に示されるように、60分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(フラン)転化率は62%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は1%以下であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は93%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は0.01以下であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は6%であった。
【0132】
【表2】
【0133】
実施例11−14と比較例6−8から、アモルファスSiO
2−Al
2O
3、アモルファスAl
1.5PO
n、ニオブ酸(含水酸化ニオブ)に固定化したNi触媒が、不飽和環状エーテルの水素化水和反応において高い選択率でジオール化合物を与えることがわかる。実施例13,14と比較例5から、活性な触媒金属であるNiの触媒全体に対する量が20%より少ないほうが、不飽和環状エーテルの水素化水和反応において高い選択率でジオール化合物を与えることがわかる。
【0134】
〔その他の不飽和環状エーテルの水素化水和反応〕
[実施例16:ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒による2,3−DHFの水素化水和反応]
水素化水和反応の原料として、市販試薬の2,3−DHF(ジヒドロフラン)を特に精製せずに使用した。この2,3−DHFの純度は98%以上であった。
実施例1で調製したZSM5担持2%Ni−0.5%Re触媒を用い、2,3−DHFの仕込み量を35gとし、反応器水素圧力を3MPaに調節した以外は実施例1と同様にして、2,3−DHFの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表3に示した。
表3に示されるように、150分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(2,3−DHF)転化率は100%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は91%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は7%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は13.00であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
【0135】
[実施例17:ZSM5(Si/Al=75)担持2%Co−0.5%Re触媒による2,3−DHFの水素化水和反応]
硝酸Niの代りに硝酸Coを用いて、実施例1と同様にしてZSM5(Si/Al=75)担持2%Co−0.5%Re触媒を得た。得られた触媒を用い、実施例16と同様にして2,3−DHFの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表3に示した。
表3に示されるように、240分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(2,3−DHF)転化率は37%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は49%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は44%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は1.11であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は6%であった。
【0136】
[実施例18:ZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒による2,5−DHFの水素化水和反応]
水素化水和反応の原料として、市販試薬の2,5−DHF(ジヒドロフラン)を特に精製せずに使用した。この2,5−DHFの純度は98%以上であった。
実施例1で調製したZSM5(Si/Al=75)担持2%Ni−0.5%Re触媒を用いて、実施例16と同様にして、2,5−DHFの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表3に示した。
表3に示されるように、150分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(2,3−DHF)転化率は100%であり、ジオール(1,4−ブタンジオール)選択率は66%であった。同様に飽和環状エーテル(THF)選択率は32%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は2.06であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ブタノール)の選択率は1%であった。
【0137】
[実施例19:ZSM5(Si/Al=800)担持2%Ni−0.5%Re触媒による3,4−2H−DHPの水素化水和反応]
水素化水和反応の原料として、市販試薬の3,4−2H−DHP(ジヒドロピラン)を特に精製せずに使用した。この3,4−2H−DHPの純度は96%以上であった。
実施例2で調製したZSM5(Si/Al=800)担持2%Ni−0.5%Re触媒を用いて、3,4−2H−DHPの仕込み量を42gとした以外は実施例16と同様にして、3,4−2H−DHPの水素化水和反応を行い、同様に反応生成物の分析を行って、結果を表3に示した。
表3に示されるように、150分の水素化水和反応における不飽和環状エーテル(3,4−2H−DHP)転化率は100%であり、ジオール(1,5−ペンタンジオール)選択率は97%であった。同様に飽和環状エーテル(THP:テトラヒドロピラン)選択率は2%であり、ジオール/飽和環状エーテルのモル比は48.50であった。また、水素化分解で生成するモノオール(ペンタノール)の選択率は1%以下であった。
【0138】
【表3】
【0139】
実施例16−19から、Ni、Coを固体酸に固定化した触媒が、各種の不飽和環状エーテルの水素化水和反応において高い選択率でジオール化合物を与えることがわかる。