(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記超音波計測部は、前記ユーザに向けて超音波信号を送信する送信部と、前記ユーザの頭皮で反射される超音波信号を受ける受信部とを含み、前記超音波信号の送信から受信までの時間差に基づいて前記ユーザの頭頂部の高さ位置を計測することを特徴とする請求項1または2に記載の虚像表示装置。
前記送信部および前記受信部は、前記超音波計測部から前記ユーザの頭頂部までの高さ方向の距離よりも前記前後方向に離れて配置されることを特徴とする請求項4に記載の虚像表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0012】
図1は、実施の形態に係る虚像表示装置10の構成を模式的に示す図である。本実施の形態では、移動体の一例である車両60のダッシュボード内に虚像表示装置10が設置される場合を示す。虚像表示装置10は、いわゆるヘッドアップディスプレイ装置であり、虚像提示面であるウインドシールド62に表示光を投射し、車両60の進行方向(z方向)の前方に虚像50を提示する。運転者などのユーザ70は、ウインドシールド62を介して現実の風景に重畳される虚像50を視認できる。そのため、ユーザ70は、車両の走行中に視線をほとんど動かすことなく虚像50に示される情報を得ることができる。
【0013】
虚像表示装置10は、投射部20と、超音波計測部30と、制御部40とを備える。
投射部20は、照明部22と、表示部24と、投射鏡26と、駆動部28とを含む。投射部20は、虚像50を提示するための表示光を生成し、生成した表示光をウインドシールド62に投射する。照明部22からの照明光が表示部24により変調されて表示光が生成され、生成された表示光が投射鏡26により反射されてウインドシールド62に投射される。投射鏡26は、凹面鏡であり、表示部24からの表示光をウインドシールド62に向けて拡大して反射させる。駆動部28は、投射鏡26の向きを調整する機構であり、投射鏡26の向きを変化させてユーザ70に向かう表示光の方向を変化させる。駆動部28は、投射鏡26を回動させることにより、ユーザ70に向かう表示光の方向を調整する。表示光の方向の調整は、虚像提示面がウインドシールド62である場合、ウインドシールド62に対する表示光の投射位置の調整と言いかえることもできる。駆動部28は、制御部40からの指示に基づいてステッピングモータを回転させるなどの動作により投射鏡26の回転軸を回転させることで、投射鏡26の向きを変化させる。
【0014】
超音波計測部30は、ユーザ70の上方に設けられ、超音波を用いてユーザ70の頭頂部74の高さ位置を計測する。本実施の形態において、超音波計測部30は、車両60の天井64に設けられ、超音波計測部30から頭頂部74まで高さ方向の距離h
1を計測する。超音波計測部30は、超音波信号を送信する送信部と、超音波信号を受信する受信部とを含む。超音波計測部30は、ユーザ70の頭頂部74の皮膚(頭皮)にて反射された超音波信号を受信し、送信から受信までの時間差に基づいて頭頂部74の高さ位置を計測する。超音波を用いることにより、毛髪78の量や形状による影響をほとんど受けることなく頭皮の高さ位置を計測することができる。ここで、頭頂部74とは、頭部72を構成する頭皮の最も高い位置であり、いいかえれば、超音波計測部30に最も近い位置である。
【0015】
超音波計測部30は、所定の時間周期ごとに頭頂部74の高さh
1を計測するよう構成される。超音波計測部30による計測の時間周期は特に限定されないが、例えば、10ミリ秒(ms)、100ms、500msなどである。このような時間周期にて頭頂部74の高さh
1を計測することにより、虚像表示装置10の使用中におけるユーザ70の頭頂部74の位置変化を逐次モニタリングすることができる。
【0016】
制御部40は、投射部20の動作を制御して虚像50の表示を制御する。制御部40は、外部装置68からの情報に基づいて表示用画像を生成し、表示用画像を表示部24に表示させる。制御部40は、超音波計測部30からの頭頂部74の高さ位置に応じて駆動部28を動作させ、頭頂部74の高さ位置に応じた適切な方向に表示光が投射されるようにする。制御部40は、頭頂部74までの高さh
1からユーザ70の目76の高さを推定し、目76の高さ位置に適切に表示光が投射されるように投射鏡26の向きを制御する。
【0017】
制御部40は、外部装置68と接続されている。外部装置68は、虚像50として表示される画像の元データを生成する装置である。外部装置68は、例えば、車両60の電子制御ユニット(ECU;Electronic Control Unit)や、ナビゲーション装置、携帯電話やスマートフォン、タブレットといったモバイル装置などを含む。
【0018】
図2および
図3は、超音波計測部30の構成を模式的に示す図である。
図2は側面図であり、
図3は上面図である。超音波計測部30は、超音波信号を送信する送信部32と、超音波信号を受信する受信部34とを含む。送信部32および受信部34は、虚像を視認するユーザ70の前後方向(z方向)に並んで配置される。送信部32および受信部34は、例えば、左右方向(x方向)の位置が同じとなるように配置され、車両60の運転席に着座するユーザ70の中央に対応する位置に配置される。つまり、車両60のステアリングホイール66の中心を通って前後方向に延びる直線A(
図3参照)に沿って送信部32および受信部34が並べられる。
【0019】
送信部32と受信部34の間には、前後方向(z方向)に距離dの間隔が設けられる。送信部32と受信部34の間隔dは、設計上想定するユーザ70の頭頂部74までの高さh
1と同程度もしくは高さh
1よりも大きい。送信部32と受信部34の間隔dは、例えば、5cm〜30cm程度であり、好ましくは、10cm〜20cm程度である。送信部32と受信部34の間に所定の間隔dを設けることにより、ユーザ70の頭部72が前後方向に動く場合であっても、頭頂部74の高さ位置をより適切に計測できる。具体的には、間隔dを設けることで前後方向の計測可能範囲を大きくするとともに、頭部72の位置が前後にずれることに起因する頭頂部74の高さh
1の計測誤差を小さくできる。
【0020】
図示する例では、送信部32が後方、受信部34が前方に配置される。変形例においては、送信部32と受信部34の配置が逆であってもよく、送信部32が前方、送信部32が後方に配置されてもよい。また、送信部32と受信部34が近接して配置されてもよく、送信部32と受信部34の間隔dが設計上想定するユーザ70の頭頂部74までの高さh
1よりも小さくてもよい。また、送信部32と受信部34が実質的に同じ位置に設けられてもよいし、送信部32と受信部34がモジュールとして同一素子内に組み込まれてもよい。
【0021】
図4は、制御部40の機能構成を示すブロック図である。本明細書のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者に理解されるところである。
【0022】
制御部40は、表示制御部42と、取得部44と、特定部46と、駆動制御部48とを有する。表示制御部42は、外部装置68からの情報に基づいて表示用画像を生成し、生成した表示用画像を表示部24に表示させる。表示制御部42は、照明部22の点灯および消灯、照明部22の明るさを制御してもよい。
【0023】
取得部44は、頭頂部74の高さ位置に関する情報を超音波計測部30から取得する。取得部44は、受信部34が受信する超音波信号を取得し、取得する超音波信号に基づいて頭頂部74の高さ位置を算出する。取得部44は、送信部32が超音波信号を送信してから受信部34が超音波信号を受信するまでの時間差と、送信部32と受信部34の間隔dとを用いて、
図2に示される幾何学的な配置に基づいて頭頂部74の高さh
1を算出する。なお、超音波計測部30にて高さ位置の算出がなされてもよく、この場合、取得部44は、超音波計測部30から頭頂部74の高さh
1を示す値を取得してもよい。
【0024】
特定部46は、取得部44が取得した情報に基づいてユーザ70の目76の高さ位置を特定する。特定部46は、例えば、頭頂部74の高さh
1に所定の定数(例えば高さh
2)を加算することにより目76の高さ位置を特定する。特定部46は、頭頂部74の高さh
1と目76の高さとの相関を示すテーブル情報や数式をあらかじめ保持し、そのテーブル情報や数式に基づいて目76の高さ位置を特定してもよい。また、頭頂部74の高さh
1と目76の高さ位置との関係はユーザによって異なるため、ユーザが虚像50を適切に視認できる位置で測定した頭頂部74の高さを初期値として記憶してもよい。
【0025】
駆動制御部48は、特定部46により特定される目76の高さ位置に応じて駆動部28を動作させ、投射鏡26により投射される表示光の向きを調整する。駆動制御部48は、目76の高さ位置の変化に応じて投射鏡26の向きが変化するようにする。例えば、目76の高さ位置が下がる場合、投射鏡26により投射される表示光の向きが下方に変化するようにする。一方、目76の高さ位置が上がる場合、投射鏡26により投射される表示光の向きが上方に変化するようにする。これにより、目76の高さ位置に応じて適切な向きで表示光が投射されるようにし、目76の高さ位置が変化する場合であっても虚像50の視認性が高い状態に維持されるようにする。
【0026】
駆動制御部48は、頭頂部74の高さ位置の変化量が所定の基準値を超える場合、投射鏡26を駆動させず、表示光の向きが固定されたままとなるようにしてもよい。頭頂部74の高さ位置の変化量が大きすぎる場合、ユーザ70が虚像50を視認しようとしている状態ではなく、上半身を左右に大きく動かしたり、前方にかかんだりしている状態にあると考えられる。このような場合に頭頂部74の高さ位置に応じて表示光の向きを大きく変化させてしまうと、ユーザ70の姿勢が虚像50を視認できる状態に戻った場合にその復帰のために表示光の向きを大きく変化させなければならなくなる。駆動部28の構造にもよるが、投射鏡26の向きを微調整可能な駆動部28を採用した場合、投射鏡26の向きを大きく変化させるにはある程度の時間を要する。その結果、ユーザ70の大きな姿勢変化に応じて投射鏡26の向きを変化させてしまうと、投射鏡26の向きを復帰させるために長い時間が必要となり、かえって虚像50の視認性を低下させてしまう。そこで、頭頂部74の高さ位置の変化量が所定の基準値以内である場合に投射鏡26の向きを微調整することとし、頭頂部74の高さ位置の変化量が基準値を超える場合には投射鏡26の向きを変えずに固定したままとする。
【0027】
図5は、虚像表示装置10の動作の流れを示すフローチャートである。虚像表示装置10は、表示光を虚像提示面に投射して虚像50を提示する(S10)。超音波計測部30は、虚像50を視認するユーザ70の頭頂部74の高さ位置を超音波で計測し(S12)、特定部46は、計測した頭頂部74の高さ位置に基づいてユーザ70の目76の高さ位置を特定する(S14)。高さ位置の変化量が基準値以内であれば(S16のY)、駆動制御部48は、高さ位置の変化量に応じて表示光の向きを調整する(S18)。高さ位置の変化量が基準値を超える場合(S16のN)、S18の処理をスキップし、表示光の向きを固定したままとする。
【0028】
以上の構成によれば、虚像表示装置10は、ユーザ70の上方に設けられる超音波計測部30を用いて、ユーザ70の目76の高さ位置に応じて適切な見え方となるように虚像50を提示できる。本実施の形態によれば、車両60の天井64に設けられる超音波計測部30を用いるため、カメラを用いて目76の高さ位置を検出する場合に問題となりうる環境光の影響を排除することができる。また、赤外線カメラを用いる場合のようにユーザの目76に向けて赤外光を常時照射する必要がないため、長時間の光照射による目76への影響を排除することもできる。したがって、本実施の形態によれば、超音波を利用することで、環境光の影響や安全性への懸念を抑えつつ、目76の高さ位置に応じて適切に虚像50を提示することができる。
【0029】
本実施の形態によれば、超音波計測部30として、送信部32および受信部34を一つずつ前後方向に並べて配置すればよいため、高さ位置の計測にかかる部品コストを比較的安くできる。これは、カメラによる画像認識技術を用いる場合と比べて対照的である。したがって、本実施の形態によれば、安価で簡易な構成を用いながら、虚像50の見え方を適切に調整することができる。
【0030】
本実施の形態によれば、虚像50の見え方について上下方向のみ調整可能とする構成としているため、左右方向にも調整可能とする場合よりも装置構成を簡略化することができる。車両60の運転者であるユーザ70から見て、自身の姿勢を微調整することで虚像50の上下方向の見え方を微調整することは通常困難である。一方、自身の姿勢を微調整することで虚像50の左右方向の見え方を微調整することは比較的容易である。本実施の形態によれば、ユーザ70が自ら調整することが困難な上下方向の見え方を自動調整できるため、調整方向が上下方向に限定されていたとしても、虚像50の視認性を好適に向上させることができる。
【0031】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、各表示例に示す構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
【0032】
(変形例1)
図6は、変形例に係る超音波計測部30の構成を模式的に示す上面図である。本変形例に係る超音波計測部30は、一つの送信部32と、複数の受信部34a,34b,34c(総称して受信部34ともいう)とを含む。本変形例について、上述の実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0033】
図示されるように、送信部32および複数の受信部34a〜34cは、直線Aに沿って一列に並んで配置されている。複数の受信部34a〜34cは、等間隔となるように並んで配置されている。送信部32は、複数の受信部34a〜34cの中央付近に配置されている。複数の受信部34a〜34cのそれぞれは、送信部32から送信され、ユーザ70の頭頂部74にて反射された超音波信号を受信する。
【0034】
本変形例では、複数の受信部34a〜34cのそれぞれによる計測結果を用いて頭頂部74の高さ位置を計測する。例えば、複数の受信部34a〜34cのそれぞれの計測結果のうち、計測される高さ位置の値が最も小さい値を頭頂部74の高さ位置として採用する。これにより、頭頂部74からの距離が最も近い受信部34が計測する高さを用いることができ、受信部34を一つだけ設ける場合よりも測定精度を高めることができる。
【0035】
なお、さらなる変形例では、受信部34を複数設ける代わりに、送信部32を複数設けてもよい。つまり、超音波計測部30は、複数の送信部32と、一つの受信部34とを含んでもよい。この場合、複数の送信部32と一つの受信部34は、
図6の直線Aに沿って一列に並んで配置されてもよい。受信部34は、複数の送信部32のそれぞれが送信する超音波信号を受信し、複数の送信部32のそれぞれについて計測結果が得られるようにしてもよい。この場合、計測結果のうち最も小さい値を頭頂部74の高さ位置として採用してもよい。
【0036】
複数の送信部32は、時分割で超音波信号を送信することにより、受信部34にて受信する超音波信号がいずれの送信部32から送信されたものであるかが識別できるようにしてもよい。複数の送信部32は、それぞれが異なる周波数の超音波信号を送信してもよい。これにより、複数の送信部32が同時に超音波信号を送信する場合であっても、周波数の違いを利用して受信する超音波信号を分離できるようにしてもよい。
【0037】
(変形例2)
図7は、別の変形例に係る超音波計測部30の構成を模式的に示す上面図である。超音波計測部30は、一つの受信部34と、複数の第1送信部36a,36b,36c(総称して第1送信部36ともいう)と、複数の第2送信部38a,38b(総称して第2送信部38ともいう)とを含む。本変形例について、上述の実施の形態および変形例との相違点を中心に説明する。
【0038】
図示されるように、受信部34および複数の第1送信部36a〜36cは、直線Aに沿って一列に並んで配置されている。一方、複数の第2送信部38a,38bのそれぞれは、直線Aから離れた位置に配置されており、ユーザ70の着座位置から左右方向にずれた位置に配置されている。複数の第1送信部36a〜36cは、上述の実施の形態および変形例と同様、ユーザ70の頭頂部74の高さ位置を計測するために設けられる。一方、複数の第2送信部38a,38bは、ユーザ70の頭部72が直線Aの近傍から左右方向にずれた位置にあるか否かを検知するために設けられる。
【0039】
特定部46は、第2送信部38a,38bからの超音波信号に基づき、ユーザ70の頭部72が左右方向に大きくずれている否かを特定する。例えば、第1送信部36a〜36cのいずれかが超音波信号を送信してから受信部34が受信するまでの時間差(第1時間差)よりも、第2送信部38a,38bのいずれかが超音波信号を送信してから受信部34が受信するまでの時間差(第2時間差)の方が小さい場合、ユーザ70の頭部72が左右方向にずれていると特定する。つまり、第1送信部36a〜36cのいずれかよりも第2送信部38a,38bのいずれかに近い位置にユーザ70の頭部72があることが検知される場合、頭部72が左右方向にずれていると特定する。この場合、駆動制御部48は、第1送信部36からの超音波信号に基づいて計測される高さ位置に応じた表示光の調整をせず、表示光の向きが固定されたままとなるようにする。これにより、上述の実施の形態と同様の効果を実現することができる。
【0040】
複数の第1送信部36a〜36cと、複数の第2送信部38a,38bとは、互いに周波数の異なる超音波信号を送信してもよい。複数の第1送信部36a〜36cのそれぞれは、相対的に高周波(例えば、200kHz)の超音波信号を送信し、複数の第2送信部38a,38bのそれぞれは、相対的に低周波(例えば、40kHz)の超音波信号を送信してもよい。車両60から頭頂部74までの短い距離を測定するための第1送信部36に周波数の高い超音波信号を用いることで、測定分解能を高めることができる。一方、第2送信部については高い分解能を必要としないため、相対的に周波数の低い超音波信号を用いたとしても十分な効果を得ることができる。
【0041】
上述の実施の形態および変形例では、虚像表示装置10を車両60に搭載する場合について示した。さらなる変形例においては、車両用以外の用途に虚像表示装置10を適用してもよい。