特許第6859700号(P6859700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859700
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】アシスト装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20210405BHJP
   A61H 1/02 20060101ALN20210405BHJP
【FI】
   B25J11/00 Z
   !A61H1/02 N
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-253235(P2016-253235)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-103322(P2018-103322A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 浩充
(72)【発明者】
【氏名】粂野 俊貴
【審査官】 樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−168315(JP,A)
【文献】 特開2014−073222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 11/00
A61H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者のアシスト対象身体部の周囲に装着される身体装着具と、
前記アシスト対象身体部の関節回りに回動して前記アシスト対象身体部に装着される出力リンクと、
前記出力リンクを介して前記アシスト対象身体部の回動をアシストするアシストトルクを発生する出力軸を有するアクチュエータと、
前記出力リンクから前記出力軸に至るいずれかの位置に設けられるトルク検出部と、
対象者が前記アシスト対象身体部を自身の力で回動させることで前記出力リンクから入力された対象者トルクと、前記出力軸からの前記アシストトルクと、を合成した合成トルクを判定するトルク判定手段と、
前記トルク判定手段を用いて判定した前記合成トルクに基づいて前記出力軸の回動角度を制御する制御装置と、
を有する、
アシスト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアシスト装置であって、
前記トルク検出部は、
前記出力軸の回動角度である出力軸回動角度を検出する出力軸回動角度検出手段と、
弾性体と、
前記出力リンクの回動角度である出力リンク回動角度を検出する出力リンク回動角度検出手段と、
を有し、
前記制御装置は、
前記トルク判定手段を用いて判定した前記合成トルクと、
前記出力リンク回動角度検出手段を用いて検出した前記出力リンク回動角度と、
に基づいて前記出力軸回動角度を制御する、
アシスト装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアシスト装置であって、
前記トルク検出部は、
前記アクチュエータの駆動電流を検出する電流検出手段と、
前記アクチュエータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
の少なくとも一方を有し、
前記トルク判定手段は、
前記電流検出手段を用いて検出した前記駆動電流と、
前記回転速度検出手段を用いて検出した前記回転速度と、
の少なくとも一方に基づいて前記アシストトルクを検出し、
前記合成トルクと前記アシストトルクに基づいて前記対象者トルクを求める、
アシスト装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のアシスト装置であって、
前記トルク判定手段は、前記制御装置の演算手段であり、
前記制御装置は、前記出力リンク回動角度と前記出力軸回動角度と前記弾性体の状態に基づいて前記合成トルクを演算する、
アシスト装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載のアシスト装置であって、
前記制御装置は、
判定した前記合成トルクから前記対象者トルクに関連する対象者トルク関連量を求め、
求めた前記対象者トルク関連量に応じた前記アシストトルクを求め、
求めた前記アシストトルクに基づいて前記出力軸回動角度を求め、
求めた前記出力軸回動角度となるように前記アクチュエータを制御する、
アシスト装置。
【請求項6】
請求項5に記載のアシスト装置であって、
前記制御装置は、前記対象者トルク関連量に対する所定倍率のトルクに基づいて前記アシストトルクを求め、
前記所定倍率を可変とするアシスト倍率可変手段を有している、
アシスト装置。
【請求項7】
請求項6に記載のアシスト装置であって、
前記アシスト装置は、さらに、ネットワークを介して接続された解析装置や操作機器と通信可能な通信装置を備え、
前記通信装置は、前記制御装置に接続されており、
前記制御装置は、所定の作業工程で作業する前記対象者の負荷状態を、前記通信装置と前記ネットワークを介して前記解析装置や前記操作機器に送信し、
前記解析装置や前記操作機器は、受信した前記負荷状態を解析してアシスト倍率を決定し、決定した前記アシスト倍率を、前記ネットワークと前記通信装置を介して前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、受信した前記アシスト倍率を前記所定倍率として前記アシスト倍率可変手段に設定する、
アシスト装置。
【請求項8】
請求項7に記載のアシスト装置であって、
前記解析装置や前記操作機器は、前記アシスト倍率を決定する際、前記対象者の作業者能力、前記アシスト装置の機械状態、前記対象者が行う前記作業工程、の少なくとも1つに基づいて前記アシスト倍率を決定する、
アシスト装置。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれか一項に記載のアシスト装置であって、
前記弾性体は渦巻バネであり、
前記渦巻バネの一方端には、前記出力軸が接続され、
前記渦巻バネの他方端には、前記出力リンクあるいは所定部材を介して前記出力リンクが接続されている、
アシスト装置。
【請求項10】
請求項9に記載のアシスト装置であって、
前記所定部材は、前記渦巻バネからの回転を減速して前記出力リンクに伝達する減速機であり、
前記トルク判定手段は、前記出力リンクと前記減速機との間の前記合成トルク、あるいは前記渦巻バネに蓄えられている前記合成トルク、を判定する、
アシスト装置。
【請求項11】
請求項6〜8のいずれか一項に記載のアシスト装置であって、
前記制御装置は、
予め設定された所定時間間隔の演算タイミングにて、前記合成トルクを判定して前記出力軸回動角度を求め、求めた前記出力軸回動角度となるように前記アクチュエータを制御し、
今回の演算タイミングにて、今回の演算タイミングにて判定した合成トルクである今回合成トルクと、前回の演算タイミングにて判定した合成トルクである前回合成トルクとの偏差と、前回の演算タイミングにて求めたアシストトルクである前回アシストトルクと、前記所定倍率と、に基づいて今回の演算タイミングのアシストトルクである今回アシストトルクを求める、
アシスト装置。
【請求項12】
請求項11に記載のアシスト装置であって、
前記弾性体は、渦巻バネであり、
前記渦巻バネの一方端には、前記出力軸が接続され、
前記渦巻バネの他方端には、前記渦巻バネからの回転を減速して前記出力リンクに伝達する減速機が接続され、
前記制御装置は、
前記今回アシストトルクと、前記減速機の減速比と、前記渦巻バネのバネ定数と、前記出力リンク回動角度と、に基づいて前記出力軸回動角度を求める、
アシスト装置。
【請求項13】
請求項1に記載のアシスト装置であって、
前記制御装置は、判定した前記合成トルクから前記対象者トルクに関連する対象者トルク関連量を求め、求めた前記対象者トルク関連量に対する所定倍率のトルクに基づいて前記アシストトルクを求め、
前記アシスト装置は、前記所定倍率を可変とするアシスト倍率可変手段と、ネットワークを介して接続された解析装置や操作機器と通信可能な通信装置と、を備えており、
前記通信装置は、前記制御装置に接続されており、
前記制御装置は、所定の作業工程で作業する前記対象者の負荷状態を、前記通信装置と前記ネットワークを介して前記解析装置や前記操作機器に送信し、
前記解析装置や前記操作機器は、受信した前記負荷状態を解析してアシスト倍率を決定し、決定した前記アシスト倍率を、前記ネットワークと前記通信装置を介して前記制御装置に送信し、
前記制御装置は、受信した前記アシスト倍率を前記所定倍率として前記アシスト倍率可変手段に設定する、
アシスト装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者のアシスト対象身体部に装着されて当該アシスト対象身体部の動作をアシストするアシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、対象者が、腰の屈伸で重量物を持ち上げる際や、通常の歩行の際に、腰に対する大腿部の動作をアシストする装着式動作補助装置が記載されている。装着式動作補助装置は、対象者の腰に装着される腰フレーム、背当て部、腹当て部、背当て部と腹当て部を結合する結合部材、大腿部に固定される大腿固定部、腰フレームに対して大腿固定部を駆動する駆動機構を備えている。さらに装着式動作補助装置は、対象者の皮膚に貼り付けられる生体信号検出センサ、生体信号検出センサから出力された生体信号に基づいて駆動機構を制御する制御部、を備えている。生体信号検出センサは、筋電位信号や神経伝達信号などの生体電位信号を皮膚から検出するために、微弱電位を検出するだめの電極を有している。そして生体信号検出センサは、装着者の腰の近傍における左右の大腿部の前側、腰の近傍における左右の大腿部の内側、左右の臀部、腰のやや上方の背中の左右等に、電極の周囲を覆う粘着シールにより、装着者の皮膚に貼り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−173190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装着式動作補助装置では、多数の生体信号検出センサが必要であり、装着者の左右の大腿部前側、左右の大腿部内側、左右の臀部、左右の背中、という具合に非常に多くの個所に生体信号検出センサを貼り付けなければならない。従って、利用する際の装着時に、非常に手間がかかる。また生体信号検出センサを貼り付ける前に、貼り付ける位置、及び貼り付ける個数(計測個所の1個所に対して、近接させた3個のセンサを貼り付ける等)を決めるのにも手間がかかる。また、多数の生体信号検出センサのそれぞれからの微弱な生体信号からノイズを除去する処理、各生体信号検出センサからの生体信号に基づいて、どのような動作を行っているのか(重量物の持ち上げをしているのか歩行をしているのか等)推測してアシストする処理が、非常に複雑になる可能性がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、対象者の皮膚に多数のセンサを貼り付ける必要が無く装着が容易であり、よりシンプルな構成及びよりシンプルな制御にてアシスト対象身体部の動作をアシストすることができるアシスト装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、対象者のアシスト対象身体部の周囲に装着される身体装着具と、前記アシスト対象身体部の関節回りに回動して前記アシスト対象身体部に装着される出力リンクと、前記出力リンクを介して前記アシスト対象身体部の回動をアシストするアシストトルクを発生する出力軸を有するアクチュエータと、前記出力リンクから前記出力軸に至るいずれかの位置に設けられるトルク検出部と、対象者が前記アシスト対象身体部を自身の力で回動させることで前記出力リンクから入力された対象者トルクと、前記出力軸からの前記アシストトルクと、を合成した合成トルクを判定するトルク判定手段と、前記トルク判定手段を用いて判定した前記合成トルクに基づいて前記出力軸の回動角度を制御する制御装置と、を有する、アシスト装置である。
【0007】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係るアシスト装置であって、前記トルク検出部は、前記出力軸の回動角度である出力軸回動角度を検出する出力軸回動角度検出手段と、弾性体と、前記出力リンクの回動角度である出力リンク回動角度を検出する出力リンク回動角度検出手段と、を有している。そして、前記制御装置は、前記トルク判定手段を用いて判定した前記合成トルクと、前記出力リンク回動角度検出手段を用いて検出した前記出力リンク回動角度と、に基づいて前記出力軸回動角度を制御する、アシスト装置である。
【0008】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係るアシスト装置であって、前記トルク検出部は、前記アクチュエータの駆動電流を検出する電流検出手段と、前記アクチュエータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、の少なくとも一方を有する。そして、前記トルク判定手段は、前記電流検出手段を用いて検出した前記駆動電流と、前記回転速度検出手段を用いて検出した前記回転速度と、の少なくとも一方に基づいて前記アシストトルクを検出し、前記合成トルクと前記アシストトルクに基づいて前記対象者トルクを求める、アシスト装置である。
【0009】
次に、本発明の第4の発明は、上記第2の発明または第3の発明に係るアシスト装置であって、前記トルク判定手段は、前記制御装置の演算手段であり、前記制御装置は、前記出力リンク回動角度と前記出力軸回動角度と前記弾性体の状態に基づいて前記合成トルクを演算する、アシスト装置である。
【0010】
次に、本発明の第5の発明は、上記第2の発明〜第4の発明のいずれか1つに係るアシスト装置であって、前記制御装置は、判定した前記合成トルクから前記対象者トルクに関連する対象者トルク関連量を求め、求めた前記対象者トルク関連量に応じた前記アシストトルクを求め、求めた前記アシストトルクに基づいて前記出力軸回動角度を求め、求めた前記出力軸回動角度となるように前記アクチュエータを制御する、アシスト装置である。
【0011】
次に、本発明の第6の発明は、上記第5の発明に係るアシスト装置であって、前記制御装置は、前記対象者トルク関連量に対する所定倍率のトルクに基づいて前記アシストトルクを求め、前記所定倍率を可変とするアシスト倍率可変手段を有している、アシスト装置である。
【0012】
次に、本発明の第7の発明は、上記第2の発明〜第6の発明のいずれか1つに係るアシスト装置であって、前記弾性体は渦巻バネであり、前記渦巻バネの一方端には、前記出力軸が接続され、前記渦巻バネの他方端には、前記出力リンクあるいは所定部材を介して前記出力リンクが接続されている、アシスト装置である。
【0013】
次に、本発明の第8の発明は、上記第7の発明に係るアシスト装置であって、前記所定部材は、前記渦巻バネからの回転を減速して前記出力リンクに伝達する減速機であり、前記トルク判定手段は、前記出力リンクと前記減速機との間の前記合成トルク、あるいは前記渦巻バネに蓄えられている前記合成トルク、を判定する、アシスト装置である。
【0014】
次に、本発明の第9の発明は、上記第6の発明に係るアシスト装置であって、前記制御装置は、予め設定された所定時間間隔の演算タイミングにて、前記合成トルクを判定して前記出力軸回動角度を求め、求めた前記出力軸回動角度となるように前記アクチュエータを制御し、今回の演算タイミングにて、今回の演算タイミングにて判定した合成トルクである今回合成トルクと、前回の演算タイミングにて判定した合成トルクである前回合成トルクとの偏差と、前回の演算タイミングにて求めたアシストトルクである前回アシストトルクと、前記所定倍率と、に基づいて今回の演算タイミングのアシストトルクである今回アシストトルクを求める、アシスト装置である。
【0015】
次に、本発明の第10の発明は、上記第9の発明に係るアシスト装置であって、前記弾性体は、渦巻バネであり、前記渦巻バネの一方端には、前記出力軸が接続され、前記渦巻バネの他方端には、前記渦巻バネからの回転を減速して前記出力リンクに伝達する減速機が接続され、前記制御装置は、前記今回アシストトルクと、前記減速機の減速比と、前記渦巻バネのバネ定数と、前記出力リンク回動角度と、に基づいて前記出力軸回動角度を求める、アシスト装置である。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、制御装置は、対象者トルクとアシストトルクが合成された合成トルクを判定するトルク判定手段にて合成トルクを判定し、合成トルクに基づいて出力軸の回動角度を制御する。また、トルク検出部は、出力リンクから出力軸に至るいずれかの位置に設けられている。この場合、トルク検出部を対象者の皮膚に貼り付ける必要が無いので、アシスト装置の装着は、対象者の皮膚に多数のセンサを貼り付けるものと比較して、装着が非常に容易である。また多数のセンサを必要とせず、トルク判定手段にて、対象者の動作を適切に検出することが可能であり、よりシンプルな構成とすることができる。また、判定した対象者の動作をアシストすることで、よりシンプルな制御にてアシスト対象身体部の動作をアシストすることができる。そして、対象者からのトルク(対象者トルク)とアクチュエータからのトルク(アシストトルク)を分離して取得できるので、対象者からのトルクに基づいて制御可能であり、対象者の違和感(対象者が意図しないアクチュエータからの出力)を軽減することができる。
【0017】
第2の発明によれば、トルク検出部を、出力軸回動角度検出手段と、弾性体と、出力リンク回動角度検出手段と、にて構成することで、トルク検出部を具体的かつ適切に実現することができる。
【0018】
第3の発明によれば、トルク検出部は、さらに、電流検出手段と回転速度検出手段との少なくとも一方を有し、トルク判定手段は、駆動電流と回転速度との少なくとも一方に基づいてアシストトルクを検出する。従って、トルク判定手段は、合成トルクとアシストトルクを(直接的に)検出することができるので、対象者トルクをより精度良く求めることができる。
【0019】
第4の発明によれば、非常にシンプルな構成でトルク判定手段を実現することが可能であり、非常にシンプルな演算で合成トルクを演算することができる。
【0020】
第5の発明によれば、対象者トルクとアシストトルクが合成された合成トルクから対象者トルク関連量を求め、対象者トルクとアシストトルクを別々に判定する必要が無いので、よりシンプルな構成とすることができる。
【0021】
第6の発明によれば、アシスト倍率可変手段を有し、対象者の身体状態等に応じて適切なアシスト力を調整することができるので、リハビリ等において非常に便利である。
【0022】
第7の発明によれば、渦巻バネを用いることで、モータの出力トルクを電流で調整する場合と比較して、渦巻バネの伸縮量(すなわち、モータ出力軸の回転角度)を調整するだけでよいので、より容易にアシストトルクを調整することができる。
【0023】
第8の発明によれば、渦巻バネから出力リンクに出力する回転を減速する減速機を設けることで、減速機が無い場合と比較して、バネ定数のより小さな渦巻バネを利用することが可能となる。これにより、小型で軽量の渦巻バネを使用可能であり、アシストトルクの微調整も容易となる(バネ定数が大きいと、小さな伸縮誤差であっても大きなアシストトルク誤差として出力される)。そして、出力リンクと減速機の間の合成トルク、あるいは渦巻バネに蓄えられた合成トルク、をトルク演算手段にて演算すれば、対象者トルクとアシストトルクを合成した合成トルクを適切に判定することができる。
【0024】
第9の発明では、前回の演算タイミングにて出力したアシストトルクであって今回の演算タイミングにて新たなアシストトルクを出力するまでのアシストトルクは一定であるものとみなしている。従って、前回の演算タイミングでの合成トルクと今回の演算タイミングでの合成トルクとの偏差は、対象者から入力された対象者トルクの変化量であるとみなすことができる。従って、トルク偏差に所定倍率を乗算した値を、前回アシストトルクに加算することで、適切かつ容易に今回アシストトルクを求めることができる。従って、よりシンプルな制御とすることができる。また、対象者トルクとアシストトルクを別々に判定する必要が無いので、よりシンプルな構成とすることができる。
【0025】
第10の発明によれば、多数の生体信号検出センサからの生体信号に基づいてどのような動作を行っているのか推定する場合と比較して、よりシンプルな構成にてアシスト装置を実現することができる。また、対象者から入力された対象者トルクを判定して対象者トルクをアシストするので、対象者の動作が腰の屈伸であるか、歩行であるか、腕の上げ下げであるか等を区別する必要が無い。従って、多数の生体信号検出センサからの生体信号に基づいて制御する場合と比較して、よりシンプルな制御にてアシスト対象身体部の動作をアシストすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施の形態のアシスト装置の使用状態を表わす模式側面図である。
図2図1に示すアシスト装置の外観を示す斜視図である。
図3図1のIII−III矢視図であり、図1に示すアシスト装置のアシスト機構の構成を説明する図である。
図4図3に示すアシスト機構の各構成部材を説明する分解斜視図である。
図5】制御装置の入出力を説明する図である。
図6】モータエンコーダにて検出する実モータ軸角度(θM_fb)、出力リンク回動角度検出手段にて検出する実リンク角度(θ)を説明する図である。
図7】制御装置の制御ブロック図である。
図8図7に示した制御ブロック図に基づいた処理手順を説明するフローチャートである。
図9】第2の実施の形態のアシスト装置の使用状態を表わす模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1から図8に基づいて第1の実施の形態に係るアシスト装置60について説明する。第1の実施の形態に係るアシスト装置60は、図1に示すように、人が荷物Wを持ち上げる際に、腰部に対する大腿部の回動をアシストする装置である。ここで、図中に示すx方向、y方向、及びz方向は互いに直交しており、アシスト装置10を装着した人の前方向、上方向、及び左方向に対応している。
【0028】
●●[第1の実施の形態のアシスト装置60(図1図8)]
●[アシスト装置60の構成(図1図4)]
第1の実施の形態のアシスト装置60は、図1及び図2に示すように、人の腰部から背中にかけて装着される装着具62と、前記装着具62の下部に設けられた支持架台部64とを備えている。支持架台部64は、装着具62の下部で左右に延びるように設けられた横梁部64zと、その横梁部64zの左右両側で前記横梁部64zに対してほぼ直角に設けられた側板部64xとを備えている。そして、支持架台部64の側板部64xには、図3に示すように、人の股関節に対応する位置、即ち、人の股関節とxy方向においてほぼ同位置に軸受孔64jが形成されている。図1に示す例では、対象者の大腿部がアシスト対象身体部に相当する。
【0029】
前記支持架台部64の横梁部64zと側板部64xとの左右の角部内側には、図3に示すように、左右一対のアシスト機構20(後記する)が設けられている。前記アシスト機構20は、z方向に沿って設けられており、そのアシスト機構20の入力軸22eが支持架台部64の側板部64xの軸受孔64jに挿通されている。アシスト機構20の入力軸22eには、支持架台部64の側板部64xの外側に固定されたモータ40(アクチュエータに相当)の回転軸41(出力軸に相当)が同軸に連結されている。即ち、アシスト機構20は、入力軸22eの回転軸線20Jを中心に回動可能な状態で支持架台部64に支持されている。
【0030】
また、アシスト機構20の出力回転部材26pには、図3及び図4に示すように、棒状の出力リンク30の基端部(回動中心部)が相対回転不能な状態で連結されている。即ち、出力リンク30の回動中心部は、人の股関節に対応する支持架台部64の軸受孔64jの位置にアシスト機構20を介して回動可能な状態で連結されている。出力リンク30は、人の大腿部の外側面に沿って配置されるリンクであり、その出力リンク30の先端側(回動自由端側)がリンク装着具35によって人の大腿部に装着されるように構成されている。即ち、上記した装着具62、62yと支持架台部64とリンク装着具35が本発明における身体装着具に相当する。
【0031】
また支持架台部64の前方には、支持架台部64を対象者の腰部に保持するためのベルト64Bが設けられている。また左右のそれぞれの支持架台部64は、横梁部64zに対して左右方向にスライド可能とされており、左右の支持架台部64の左右方向の間隔を調整可能とされている。また装着具62の上部には装着具62yが設けられており、装着具62yは装着具62に対して上下方向にスライド可能とされている。また装着具62yにおける前側には、対象者の肩にアシスト装置60を保持するためのベルト62Bが設けられている。
【0032】
出力リンク30の回動中心部には、図3図4等に示すように、出力リンク30の回動角度を検出する出力リンク回動角度検出手段43が取付けられている。また、アシスト装置60は、図1図2等に示すように、支持架台部64の背面に取付けられる制御ボックス50を備えている。なお制御ボックス50の詳細については後述する。
【0033】
●[アシスト機構20の構成(図3図4)]
アシスト機構20は、図3及び図4に示すように、入力部材22と、バネ(24)と、減速機26とを備えている。バネ(24)は、トーションバネ(torsion barやtorsion bar spring)や渦巻バネなどでもよい。以降の本実施形態の例では、バネ(24)を渦巻バネ24として説明する。入力部材22は、前記モータ40の回転を渦巻バネ24に伝達するための部材である。入力部材22は、モータ40の回転軸41が相対回転不能な状態で連結される入力軸22eと、その入力軸22eと同軸に設けられた円板部22rと、入力軸22eの反対側で円板部22rの周縁に設けられたトルク伝達軸22pとを備えている。そして、入力部材22のトルク伝達軸22pが渦巻バネ24の外周側バネ端部24eに連結されている。また対象者から手が届く位置(この場合、側板部64x)には、アシスト倍率を可変とするためのアシスト倍率可変手段47が設けられている。
【0034】
アシスト機構20の渦巻バネ24は、弾性体に相当し、モータ40から伝達された回転量をアシストトルクに変換する部材である。渦巻バネ24は、図4に示すように、帯状の板バネを渦巻状に成形したバネであり、中心側と外周側にバネ端部24y,24eを備えている。渦巻バネ24は、中心側バネ端部24yに対する外周側バネ端部24eの回動角度を変えることでバネ力(アシストトルク)を調整できるように構成されている。ここで、前記渦巻バネ24のバネ定数は、例えば、Kに設定されている。上記したように、渦巻バネ24の外周側バネ端部24eは、入力部材22のトルク伝達軸22pに相対回転不能な状態で連結されている。また、渦巻バネ24の中心側バネ端部24yは、減速機26の入力回転部材26eに相対回転不能な状態で連結されている。ここで、入力部材22と減速機26の入力回転部材26eとは回転軸線20Jに沿って同軸に保持されている。そして渦巻バネ24は、モータ40の回転軸41からのアシストトルクを蓄えることが可能であるとともに、蓄えたアシストトルクを出力リンク30の回動力として放出することができる。
【0035】
減速機26は、渦巻バネ24から伝達されたアシストトルクによる回転量を減量して出力リンク30に伝達する部材である。減速機26を設けることで、より小さなバネ定数の渦巻バネ24を用いることが可能となり、渦巻バネ24を小型化、軽量化することができる。減速機26は、入力回転部材26eと、出力回転部材26pと、入力回転部材26eと出力回転部材26p間に設けられたギヤ機構(図示省略)等とを備えている。減速機26の入力回転部材26eと出力回転部材26pとは同軸に保持されており、入力回転部材26eがn回転することで、出力回転部材26pが1回転するように構成されている(n>1)。
【0036】
減速機26の出力回転部材26pの中心には、図4に示すように、出力リンク30の回転中心ピン30pが嵌合される位置決め孔26uが形成されている。さらに、出力回転部材26pの位置決め孔26uの周囲には、出力リンク30の回り止めピン31が挿入される回り止め孔26kが形成されている。これにより、出力リンク30は、減速機26の出力回転部材26pと一体で回転できるようになる。
【0037】
モータ回転角度検出手段42は、出力軸回動角度検出手段に相当し、例えばモータエンコーダであり、モータ40の回転軸41の回転角度に応じた検出信号を制御装置に出力する。制御装置は、モータ回転角度検出手段42からの検出信号に基づいて、モータ40の回転軸41の回転角度である実モータ軸角度θM_fb図6参照)を検出することができる。
【0038】
出力リンク回動角度検出手段43は、例えばエンコーダやポテンショメータであり、出力リンク30の回動角度に応じた検出信号を制御装置に出力する。制御装置は、出力リンク回動角度検出手段43からの検出信号に基づいて、出力リンク30の回動角度である実リンク角度θ(出力リンク回動角度に相当。図6参照)を検出することができる。モータ回転角度検出手段42、出力リンク回動角度検出手段43は、ロータリー・エンコーダ、ポテンショメータなどと説明したが、レゾルバ(2相コイルに交流電流を流し、2相コイルから出力される電圧の位相変化を検出する)、ホール素子、光電センサ(光を出射する投光部と、受けた光を検出する受光部とを有する)、スイッチなどでもよい。そして、渦巻バネ24とモータ回転角度検出手段42と出力リンク回転角度検出手段43によって、トルク演算(判定)することが可能であり、これらがトルク検出部となる。なお、トルク検出部は、上記に説明したものの他にも、トルクセンサとして、磁歪式トルクセンサ、トーションバーのねじれ角を光学センサや磁気センサなどで測定する電動パワーステアリングに用いられるトルクセンサ、とすることもできる。そしてトルク検出部は、出力リンク30から出力軸41(モータ40)に至るいずれかの位置に設けられている。本実施の形態の説明では、モータ回転角度検出手段42と、渦巻バネ24(弾性体に相当)と、出力リンク回動角度検出手段43と、にてトルク検出部を構成した例を用いて説明する。
【0039】
制御ボックス50に収容されている制御装置52(図5参照)は、トルク判定手段に相当する(トルク)演算手段(例えばCPUが演算手段に相当する)を有している。そして当該演算手段は、モータ40の回転軸41から出力されて入力部材22を介して渦巻バネ24に入力されたアシストトルクと、対象者がアシスト対象身体部を自身の力で回動させることで出力リンク30と減速機26を介して対象者から渦巻バネ24に入力された対象者トルクと、を合成した合成トルクを演算する。そして制御装置52は、後述するように、合成トルクに基づいて出力軸41の回動角度を制御する。
【0040】
アシスト倍率可変手段47は、例えば可変抵抗等で構成されて対象者から操作可能な倍率調整ダイヤルであり、調整位置(調整角度)に応じた設定信号を制御装置に出力する。制御装置は、設定信号に応じて調整位置(調整角度)を検出し、調整位置(調整角度)に応じて、後述するアシスト倍率αの値(0<α<1の範囲内の値)を決定する。
【0041】
●[制御ボックス50の構成(図5)]
制御ボックス50は、図1及び図2に示すように、装着具62の背面に取付けられるボックスである。制御ボックス50には、図5に示すように、制御装置52とモータドライバ54と電源ユニット56とが収納されている。電源ユニット56は、例えばリチウム電池であり、制御装置52とモータドライバ54に電力を供給する。
【0042】
制御装置52は、電源ユニット56から電力が供給され、モータ40の回転軸41の回転角度を制御するための制御信号52outを求め、モータドライバ54を介して回転軸41の回転角度を制御する。制御装置52は、アシスト倍率αと、実リンク角度θと、実モータ軸角度θM_fbと、実モータ電流IM_fbと、に基づいて、実合成トルクτと制御信号52outを求める。実モータ電流IM_fbは、モータドライバ54内などにある電流センサ(シャント抵抗や磁気センサ(電流による磁束を検出))により、制御装置52が認識できる信号(電圧値など)に変換され、制御装置52にて測定される。アシスト倍率αは、アシスト倍率可変手段47から制御装置52に入力される設定信号に基づいて制御装置52にて決定される。実リンク角度θは、出力リンク回動角度検出手段43から制御装置52に入力される検出信号に基づいて制御装置52にて検出される。実モータ軸角度θM_fbは、モータ回転角度検出手段42から制御装置52に入力される検出信号に基づいて制御装置52にて検出される。実モータ電流IM_fbは、モータドライバ54から制御装置52に入力される検出信号に基づいて制御装置52にて検出される。実合成トルクτは、実リンク角度θと、実モータ軸角度θM_fbと、渦巻バネ24の伸縮状態及び渦巻バネ24のバネ定数(渦巻バネの状態に相当)に基づいて制御装置52にて演算によって求められる。
【0043】
モータドライバ54は、電源ユニット56から電力が供給され、制御装置52からの制御信号52outを、モータ40を駆動する駆動電流Iに変換するドライバ回路である。またモータドライバ54は、駆動電流Iに相当する実モータ電流IM_fbの値を制御装置52に出力する。
【0044】
●[制御ブロック(図7)と、制御装置52の処理手順(図8)]
次に、図8に示すフローチャートと図7に示す制御ブロック図を用いて、制御装置52の処理手順について説明する。なお、図7に示す制御ブロック図における符号B10は、モータ40からのアシストトルクを算出するアシストトルク決定部B10であり、図5に示す制御装置52が当該アシストトルク決定部B10に相当する。また図7に示す制御ブロック図における符号B20は、モータ40を駆動する電流を決定するモータ制御部B20であり、図5に示す制御装置52が当該モータ制御部B20に相当する。また図7に示す制御ブロック図における符号B30は、モータドライバ54、モータ40(及びモータ回転角度検出手段42)、入力部材22、渦巻バネ24、減速機26、出力リンク30、出力リンク回動角度検出手段43、を含むトルク付与部B30であり、図5に示す符号B30の部分が当該トルク付与部B30に相当する。
【0045】
次に、図8に示すフローチャートについて説明する。図8に示す処理は、所定時間間隔(例えば数ms間隔)にて起動され、起動されると制御装置52はステップSB100へと処理を進める。
【0046】
ステップSB100は、図7に示す制御ブロック図のブロックB01、ブロックB11、ブロックB14、ブロックB24に相当する処理、及び入力信号の処理である。ステップSB100にて制御装置52は、前回の処理タイミング時に検出して記憶している実合成トルクτ(t)を、前回の実合成トルクτ(t−1)に記憶する(ブロックB11に相当する処理)。また制御装置52は、前回の処理タイミング時に求めて記憶している目標アシストトルクτa_ref(t)を、前回の目標アシストトルクτa_ref(t−1)に記憶する(ブロックB14に相当する処理)。
【0047】
また制御装置52は、前回の処理タイミング時に検出して記憶している実モータ軸角度θM_fb(t)を、前回の実モータ軸角度θM_fb(t−1)に記憶する。そして制御装置52は、モータ回転角度検出手段42からの検出信号に基づいて今回の実モータ軸角度θM_fb(t)を検出して記憶する。さらに制御装置52は、今回の実モータ軸角度θM_fb(t)と、前回の実モータ軸角度θM_fb(t−1)から、実モータ角速度ωM_fbを求めて記憶する(ブロックB24に相当する処理)。また制御装置52は、出力リンク回動角度検出手段43からの検出信号に基づいて今回の実リンク角度θを検出して記憶する(入力信号の処理)。また制御装置52は、モータドライバ54から入力された検出信号に基づいて実モータ電流IM_fbを求めて記憶する。また制御装置52は、アシスト倍率可変手段47からの設定信号に基づいてアシスト倍率αを決定して記憶する(入力信号の処理)。そして制御装置52は、今回の実リンク角度θ(t)と、減速機26の減速比(1/n)と、今回の実モータ軸角度θM_fb(t)と、渦巻バネ24の状態(バネ定数K)を用いて、以下の(式1)にて今回の実合成トルクτ(t)(渦巻バネ24に蓄えられている実合成トルク)を演算にて求める(ブロックB01に相当する処理)。
τ(t)=K[θM_fb(t)−n*θ(t)] (式1)
【0048】
ステップSN12は、図7に示す制御ブロック図のノードN12における処理に相当している。ステップSN12にて制御装置52は、今回の実合成トルクτ(t)と、ブロックB11から入力された前回の実合成トルクτ(t−1)との差を求め、求めたトルク変化量ΔτをブロックB13に出力し、ステップSB13に進む。また、トルク変化量Δτは、合成トルクτから抽出された、対象者トルクに関連する対象者トルク関連量に相当しており、以下の(式2)にて求められる。なお、前回の演算タイミングにて出力したアシストトルクであって今回の演算タイミングにて新たなアシストトルクを出力するまでのアシストトルクは一定であるものとみなすことができる。従って、今回の演算タイミングでの実合成トルクτ(t)と、前回の演算タイミングでの実合成トルクτ(t−1)との変化量(偏差)は、対象者から入力された対象者トルクの変化量(偏差)であるとみなすことができる。つまり、対象者トルクとアシストトルクが合成された今回の実合成トルクτ(t)と、前回の実合成トルクτ(t−1)との差を求めることで、アシストトルクの影響を排除して対象者トルクの変化量を求めることができる。なお、トルク変化量Δτを求める際、τ(t)に対応するK[θM_fb(t−1)−n*θ(t)]に、θM_fb(t)でなくθM_fb(t−1)を用いる点がポイントである。ステップSN12の時点では、まだ実モータ軸角度が更新されていない(図8の処理の最後のステップSB28で更新される)ので、θM_fb(t−1)を用いる。また、制御装置52は、対象者トルクの変化に基づいて、モータ40の指令電流IM_refを変化させる。指令電流IM_refは、対象者の動作に対して、違和感のない演算タイミング(例えば、演算間隔が100[ms]以下である演算タイミングであり、より滑らかに動作させるために、より短い時間間隔であることが好ましい)にて制御装置52によって演算されている。つまり、制御装置52は、対象者トルクの変化に基づいて、モータ40を駆動し、対象者トルクの変化に基づいてモータ40を駆動させた後は、対象者トルクの変化(対象者動作)を待つ状態になるので、モータ40からのアシストトルクは、ほぼ一定状態となる。また、モータなどのトルクは、当該モータに特有のT−N特性(トルク[N・m]と回転数[rpm]との関係を示す特性)や、T−I特性(トルク[N・m]と電流[A]との関係を示す特性)などにより、モータの回転数とモータの駆動電流との少なくとも一方から求めることも可能である。そして、モータ40のトルク(アシストトルク)の変化を考慮して、実合成トルクτから、より精度良く対象者トルクを求めることが可能となる。この場合、モータの回転数を検出する回転速度検出手段(例えば回転センサ)と、モータの駆動電流を検出する電流検出手段(例えば、上述した電流センサ(シャント抵抗や磁気センサ)と、の少なくとも一方が設けられていればよい。そして制御装置52(トルク判定手段)は、モータの回転数とモータの駆動電流との少なくとも一方に基づいてアシストトルクを検出し、合成トルクとアシストトルクに基づいて対象者トルクを求める。
Δτ=τ(t)−τ(t−1)
=K[θM_fb(t−1)−n*θ(t)]−K[θM_fb(t−1)−n*θ(t−1)]
=n*K[θ(t−1)−θ(t)] (式2)
【0049】
ステップSB13は、図7に示す制御ブロック図のブロックB13における処理に相当する。ステップSB13にて制御装置52は、決定したアシスト倍率αと、ノードN12から入力されたトルク変化量Δτとを乗算してアシスト増減量Δτa_refを求め、求めたアシスト増減量Δτa_refをノードN15に出力し、ステップSN15に進む。なお、アシスト倍率αは、0<α<1の範囲内の値である。また、アシスト増減量Δτa_refは、以下の(式3)にて求められる。
Δτa_ref=α*Δτ (式3)
【0050】
ステップSN15は、図7に示す制御ブロック図のノードN15における処理に相当する。ステップSN15にて制御装置52は、ブロックB13から入力されたアシスト増減量Δτa_refと、ブロックB14から入力された前回目標アシストトルクτa_ref(t−1)との和を求め、求めた目標アシストトルクτa_refをブロックB21に出力し、ステップSB21に進む。目標アシストトルクτa_ref(τa_ref(t))は、以下の(式4)にて求められる。すなわち、今回の目標アシストトルクτa_refは、対象者トルク関連量(Δτ)の所定倍率(アシスト倍率(α))のトルクと、前回の目標アシストトルクτa_ref(t−1)に基づいて求められる。
τa_ref(t)=τa_ref(t−1)+α*Δτ (式4)
【0051】
ステップSB21は、図7に示す制御ブロック図のブロックB21における処理に相当する。ステップSB21にて制御装置52は、実リンク角度θと、ノードN15から入力された目標アシストトルクτa_refとに基づいて、モータ40の回転軸41の指令回転角度θM_refを求める。そして制御装置52は、求めた指令回転角度θM_refをノードN22に出力し、ステップSN22に進む。ここで、以下のように定義すると、目標アシストトルクτa_refは、以下の(式5)にて表すことができる。そして(式5)を整理することで指令回転角度θM_refを(式6)にて表すことができる。この指令回転角度θM_refは、出力軸回動角度に相当している。
θM_ref:指令回転角度
τa_ref:目標アシストトルク
K:渦巻バネ24のバネ定数
θ:実リンク角度
n:減速機26の入力回転部材26eをn回転させた場合に出力回転部材26pが1回転する(n>1)という減速比に相当する値
τa_ref=K[θ−(θM_ref/n)] (式5)
θM_ref=[(K*θ−τa_ref)*n/K] (式6)
【0052】
ステップSN22は、図7に示す制御ブロック図のノードN22における処理に相当する。ステップSN22にて制御装置52は、ブロックB21から入力された指令回転角度θM_refと、実モータ軸角度θM_fbとの差である回転角度偏差Δθを求める。そして制御装置52は、求めた回転角度偏差ΔθをブロックB23に出力し、ステップSB23に進む。なお、回転角度偏差Δθは、以下の(式7)から求められる。
Δθ=θM_ref−θM_fb (式7)
【0053】
ステップSB23は、図7に示す制御ブロック図のブロックB23における処理に相当する。ステップSB23にて制御装置52は、ノードN22から入力された回転角度偏差Δθに基づいて、既存のPID制御等を利用して、指令角速度ωM_refを求める。そして制御装置52は、求めた指令角速度ωM_refをノードN25に出力し、ステップSN25に進む。なお、回転角度偏差Δθから指令角速度ωM_refを算出する手順、方法については特に限定は無く、どのように指令角速度ωM_refを算出してもよい。
【0054】
ステップSN25は、図7に示す制御ブロック図のノードN25における処理に相当する。ステップSN25にて制御装置52は、ブロックB23から入力された指令角速度ωM_refと、ブロックB24から入力された実モータ角速度ωM_fbとの差である角速度偏差Δωを求める。そして制御装置52は、求めた角速度偏差ΔωをブロックB26に出力し、ステップSB26に進む。なお、角速度偏差Δωは、以下の(式8)から求められる。
Δω=ωM_ref−ωM_fb (式8)
【0055】
ステップSB26は、図7に示す制御ブロック図のブロックB26における処理に相当する。ステップSB26にて制御装置52は、ノードN25から入力された角速度偏差Δωに基づいて、既存のPID制御等を利用して、指令電流IM_refを求める。そして制御装置52は、求めた指令電流IM_refをノードN27に出力し、ステップSN27に進む。なお、角速度偏差Δωから指令電流IM_refを算出する手順、方法については特に限定は無く、どのように指令電流IM_refを算出してもよい。
【0056】
ステップSN27は、図7に示す制御ブロック図のノードN27における処理に相当する。ステップSN27にて制御装置52は、ブロックB26から入力された指令電流IM_refと、実モータ電流IM_fbとの差である電流偏差ΔIを求める。そして制御装置52は、求めた電流偏差ΔIをブロックB28に出力し、ステップSB28に進む。なお、電流偏差ΔIは、以下の(式9)から求められる。
ΔI=IM_ref−IM_fb (式9)
【0057】
ステップSB28は、図7に示す制御ブロック図のブロックB28における処理に相当する。ステップSB28にて制御装置52は、ノードN27から入力された電流偏差ΔIに基づいて、既存のPID制御等を利用して、制御信号52outを求める。例えば制御信号52outは、電流偏差ΔIに相当するDutyに設定されたPWM信号等、モータドライバ54に応じた制御信号である。そして制御装置52は、求めた制御信号52outをモータドライバ54に出力し、処理を終了する。なお、電流偏差ΔIから制御信号52outを求める手順、方法については特に限定は無く、どのように制御信号52outを求めてもよい。
【0058】
●●[第2の実施の形態のアシスト装置10(図9)]
次に、第2の実施の形態のアシスト装置10について、図9に基づいて説明する。第2の実施の形態のアシスト装置10は、出力リンク30の回動中心が人の肩関節に対応する位置に保持され、出力リンク30の回動自由端側が上腕部に装着される構成である。ここで、第2の実施の形態のアシスト装置10におけるアシスト機構(20)、制御ボックス50、モータ40、モータ回転角度検出手段42、出力リンク回動角度検出手段(43)、アシスト倍率可変手段47等は、第1の実施の形態のアシスト装置60で使用されたものと同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。第2の実施の形態のアシスト装置10は、第1の実施の形態の装着具62、62yの代わりに装着具12、12yを備えており、装着具12yの肩まわりの位置に、支持架台部64の代わりに支持架台部14を有している。また装着具12yにおける前側には、対象者の肩まわりに支持架台部14を保持するためのベルト12Bが設けられている。また装着具12の下部には、対象者の腰まわりに装着具12を保持するためのベルト14Bが設けられている。そして装着具12、12yと支持架台部14とリンク装着具35が本発明における身体装着具に相当する。そして、支持架台部14における型関節に対応する位置にアシスト機構(20)が設けられている。また、アシスト機構(20)の出力回転部材(26p)に出力リンク30が連結されている。そして第2の実施の形態のアシスト装置10の制御装置は、図7及び図8を用いて説明した第1の実施の形態の制御装置と同じ処理を行う。
【0059】
以上、第1、第2の実施の形態にて説明したアシスト装置60、10は、制御装置52の演算手段(トルク判定手段に相当)にて演算にて求めた合成トルクに基づいて対象者から入力された対象者トルクをアシストするように働くので、対象者の皮膚に多数のセンサを貼り付ける必要が無く、装着が容易である。また、対象者の複数個所に貼り付けた多数のセンサからの信号処理を行う必要が無く、図7のブロック図に示すように、制御装置52及びモータドライバ54の外部から入力される入力信号は、出力リンク30の回動角度である実リンク角度θと、モータ40の回転軸41の回転角度である実モータ軸角度θM_fbと、であり、非常に少なくて済む。従って、従来の装着式動作補助装置と比較して、アシスト装置10の構成がシンプルであり、制御も非常にシンプルである。
【0060】
また、対象者から入力された対象者トルクをアシストする、という非常にシンプルな動作であるので、対象者の上腕の運動による重量物の持ち上げ動作や、対象者の腰及び大腿の屈伸による重量物の持ち上げ動作や、対象者の大腿の周期的な揺動運動による歩行の動作等の、各動作を区別する必要が無く、シンプルな制御で実現することができる。また対象者トルクとアシストトルクを別々に検出する必要が無く、合成トルクを演算するだけでよいので、センサ数が削減され、よりシンプルな構成を実現することができる。さらに、アシスト倍率αを適宜調整できるので、リハビリ等の際、非常に便利である。また減速機を設けることで、比較的小さなバネ定数の渦巻バネを使用することが可能となり、アシスト装置をより小型・軽量化することができる。
【0061】
また、エネルギーを蓄えたり放出する渦巻バネ24(弾性体)と、アシストするモータ40(アクチュエータ)と、アシスト対象者自身とからの複数の力(トルク)が生じており、アシスト対象者自身の意図しない不快な力(トルク)が発生する場合でも、出力リンク30の回転角度などから、的確にそれぞれの力(トルク)を考慮して的確に制御するので、アシスト対象者自身への不快な力の発生を抑制することができる。
【0062】
本発明のアシスト装置の構造、構成、形状、外観、処理手順、演算式等は、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0063】
本実施の形態にて説明したアシスト装置の用途は、対象者の上腕の運動、下肢の運動のアシストに限定されず、種々の対象物に適用可能である。
【0064】
また本実施の形態の説明では、出力リンク30と渦巻バネ24との間に減速機26を設けて、出力リンク30に渦巻バネ24を間接的に接続した例を説明したが、減速機26を省略して、出力リンク30と渦巻バネ24とを直接的に接続してもよい。また、渦巻バネ24の代わりに種々の弾性体を用いることができる。例えば、本実施の形態では、螺旋状に巻いたバネとしているが、板状バネやウェーブスプリングなど別のバネでもよい。また、ゴム、樹脂などのエラストマや、オイルのような液体、気体を利用した弾性体でもよい。エネルギーを保存する対象物(動作)の運動量や保存するエネルギー量に合わせて弾性体を変更可能である。保存するエネルギー量が比較的少ない場合では、エラストマを使用することが効果的である。また、人が荷物を持ち上げる動作などに対して、比較的大きなエネルギーの保存量、バネ定数(剛性)等の大きさ、調整の容易性(螺旋状のバネの場合、バネの巻き数や線の太さ等の調整の容易性)等から、伸縮バネを使用することが効果的である。また、伸縮バネは、コストの面からも優位である。
【0065】
第1の実施の形態にて説明したアシスト装置60は、左右にアシスト機構及び出力リンク30を有する例を説明したが、左右のいずれか一方のみにアシスト機構及び出力リンク30を設けるようにしてもよい。また第2の実施の形態にて説明したアシスト装置10は、左右にアシスト機構及び出力リンク30を有する例を説明しているが、左右のいずれか一方のみにアシスト機構及び出力リンク30を設けるようにしてもよい。
【0066】
また制御ボックス50などの中に制御装置52に接続された通信装置(無線または有線)を備えても良く、所定の工程で作業する対象者(作業者)の負荷状態(トルク、モータ電流等)を、通信装置が接続されたネットワーク経由で、別の解析装置や操作機器へ送信することも可能である。解析装置や操作機器は、取得したデータ(負荷状態など)を解析することができる。そして解析装置や操作機器は、解析した結果から、対象者(作業者)の作業者能力(経験、体力など)、機械状態、作業工程に合わせて、アシスト量を調整するためのアシスト倍率αの値を決めて、この値(決定したアシスト倍率α)をネットワーク経由で制御ボックス50の制御装置52に送信することもできる。つまり、ネットワーク上の解析装置や操作機器等を用いて、対象者に適切なアシスト倍率αを自動的に求め、求めたアシスト倍率αを自動的に対象者に設定可能ということであり、この場合、アシスト倍率可変手段47は、ネットワーク上の解析装置や操作機器に相当する。よって、対象者(作業者)の状態に合わせて自動的かつリアルタイムにアシスト倍率αを適切な値に変更することが可能となり、対象者(作業者)の作業効率をより向上させることができる。
【0067】
また、本実施の形態の説明では、渦巻バネ24に着目して渦巻バネ24に蓄えられる合成トルクを演算したが、出力リンク30と減速機26との間の合成トルクを演算するようにしてもよい。また本実施の形態の説明では、指令回転角度θM_refを出力軸回動角度としたが、実モータ軸角度θM_fbを出力軸回動角度としてもよい。
【0068】
また本実施の形態の説明では、トルク判定手段として、制御装置52の演算手段を用いたが、出力リンク30と減速機26の間等、トルク検出手段(トルクセンサ等)を適切な位置に設け、当該トルク検出手段からの検出信号に基づいてトルクを判定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 アシスト装置
12 装着具(身体装着具)
12y 装着具(身体装着具)
14 支持架台部(身体装着具)
20 アシスト機構
20J 回転軸線
22 入力部材
24 渦巻バネ(弾性体)
24e (外周側)バネ端部
24y (中心側)バネ端部
26 減速機
30 出力リンク
35 リンク装着具(身体装着具)
40 モータ(アクチュエータ)
41 回転軸(出力軸)
42 モータ回転角度検出手段(出力軸回動角度検出手段)
43 出力リンク回動角度検出手段
47 アシスト倍率可変手段
50 制御ボックス
52 制御装置
54 モータドライバ
56 電源ユニット
60 アシスト装置
62 装着具(身体装着具)
62y 装着具(身体装着具)
64 支持架台部(身体装着具)
B10 アシストトルク決定部
B20 モータ制御部
B30 トルク付与部
n 減速比
θ 実リンク角度(出力リンク回動角度)
θM_ref 指令回転角度(出力軸回動角度)
τ 合成トルク
Δτ トルク変化量(対象者トルク関連量)
α アシスト倍率(0<α<1)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9