(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、コーマは、複数個のコーミングヘッドを平行に配設した作業部を備えている。
図4に示すように、コーミングヘッド51は、コーミングシリンダ52と、ニッパ装置53と、前後2対のデタッチングローラ54,55とを備えている。デタッチングローラ54,55のトップローラ54a,55aは、一対のデタッチングローラアーム56間に支持され、両デタッチングローラアーム56はデタッチングローラアームプレート57により連結されている。デタッチングローラアームプレート57は断面逆L字状に形成され、先端が水平方向に延びる状態で両デタッチングローラアーム56を連結している。
【0003】
ニッパ装置53は、コーミングシリンダ52の上方で前後進揺動可能に配設されたニッパフレーム58を有し、ニッパフレーム58はボトムニッパ59、フィードローラ60、トップニッパ61、及びトップコーム62を備えている。フィードローラ60は、ラップローラ上のラップ巻き(図示せず)から供給されるラップLを、ボトムニッパ59とトップニッパ61との間に送り出し、トップニッパ61は、ニッパフレーム58の前後進揺動運動に同期して所定のタイミングで開閉し、ボトムニッパ59と協同してラップLを挟持する。そして、ボトムニッパ59とトップニッパ61とに挟持された状態でコーミングシリンダ52のコーム52aにより梳られたラップLの先端が、ニッパフレーム58の前進時にデタッチングローラ54に受け渡される。ボトムニッパ59とトップニッパ61とがニッパを構成する。
【0004】
ラップローラの前方でニッパ装置53の上方には、使用中のラップ巻き(図示せず)から送り出されたラップLをフィードローラ60へ案内するラップコンダクタ65が設けられているものもある。ラップコンダクタ65は、ニッパフレーム58に向かって下方へ真っ直ぐ延びる下側部66と、下端が下側部66の上端近傍に位置する上側部67とで構成されている。
【0005】
コーマにおいては、使用中のラップ即ち旧ラップが少なくなると、旧ラップの端部(旧ラップ端)に新しいラップ巻の端部(新ラップ端)を重合して接合するラップ継ぎを自動で行うラップ自動継ぎ装置(図示せず)を備えたものもある。その場合、ラップ自動継ぎ装置で接合されたラップの重ね合わせ部が、ラップコンダクタ65の上側部67の屈曲部を通過する際に、上になったラップが下のラップから離れていかないようにガイドするカバーを備えている。具体的には、上側部67は、下側となるラップシュートプレート67aの開放部を覆う樹脂製のラップシュートプレートカバー67bを、ラップシュートプレート67aに嵌め込む構造になっている。
【0006】
特許文献1には、運転中のコーミング装置内への作業者の手の進入を阻止し、他方ではコーミング箇所を周辺空気からの繊維浮遊物(フライ)から遮断するため、旋回可能なカバーを備えたものが提案されている。
【0007】
図5に示すように、このカバー70は、ニッパユニット71及びフリースを形成する装置(ケージローラ)72の上方において旋回軸73を中心として旋回可能に設けられている。
【0008】
また、特許文献2には、ニッパユニットと、ニッパユニットの下において負圧源に接続されたハウジングの内部に回転可能に支持されたコーミングシリンダとを備えたコーミング機械(コーマ)において、負圧源によって生ぜしめられた空気流を良好にコントロールすることを可能にする遮蔽エレメントを備えたものが提案されている。
【0009】
図6に示すように、このコーミング機械は、コーミングシリンダ81を備えたハウジング80の上方にニッパユニット82が設けられ、ニッパユニット82の前方(
図6の左方)には、第1のローラ対83及び第2のローラ対84が設けられている。第1のローラ対83及び第2のローラ対84の上側ローラ83a,84aは、旋回可能なフレーム85に支持され、フレーム85にはクリーニングエレメント86が設けられるとともに、フレーム85のニッパユニット82側の端部には遮蔽エレメント87が取り付けられている。遮蔽エレメント87は、ニッパユニット82のトップコーム82aに向かって突出しているカバー(遮蔽体)88を備えている。カバー88の自由端部は、ニッパユニット82が前方の死点位置にある場合に、トップコーム82aに対して所定の間隔を有している。また、トップコーム82aには、遮蔽エレメント87に向かって突出する別のカバー(遮蔽体)89が取り付けられており、このカバー89は、トップコーム82aの長手方向に、かつカバー88に対して平行にかつ間隔をおいて延びている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ラップシュートプレートカバー67bの取り付けが、ラップシュートプレートカバー67bを、ラップシュートプレート67aに嵌め込む構成では、作業者がラップシュートプレートカバー67bを、ラップシュートプレート67aに確実に嵌め込まずに、あるいは嵌め込みを忘れてコーマの運転を開始する虞がある。その場合、コーマの運転中にラップシュートプレートカバー67bがニッパ装置53の前後進揺動運動に伴う揺動によって落下する。ラップシュートプレートカバー67bがニッパ部に落下すると、ラップシュートプレートカバー67bがボトムニッパ59とトップニッパ61とに噛み込まれて損傷し、破片が色々な箇所に入り込んでコーマの損傷の原因になる。また、ラップシュートプレートカバー67bがトップコーム62の上に落下してトップコーム62を損傷したり、コーミングシリンダ52の上に落下してそのコーム52aを損傷したりする。
【0012】
ラップシュートプレートカバー67bをねじなどの固定用部品を用いて固定する構成にすれば、ラップシュートプレートカバー67bの嵌め込み不良による落下を防止することはできるが、ラップシュートプレートカバー67bの固定や取り外し作業に手間がかかる。
【0013】
また、ラップシュートプレートカバー67bの有無と関係なく、保全作業などの際に作業者が工具や部品等の異物を誤って落とす場合もある。その場合も異物がニッパを構成するボトムニッパ59やトップニッパ61上に落下したり、トップコーム62を損傷したり、あるいはコーミングシリンダ52のコーム52a上に落下してコーム52aを損傷したりする。
【0014】
特許文献1ではデタッチングローラアームプレート及びラップコンダクタに関する記載はないが、デタッチングローラアームプレートはカバー70の下方に存在する。また、ラップコンダクタを設ける場合はラップコンダクタとカバー70との干渉を避ける構成、あるいはラップコンダクタをカバー70に取り付ける必要があり構造が複雑になる。また、カバー70を開放した状態における保全作業時のことに関しては配慮がなされていない。
【0015】
特許文献2のフレーム85は、
図4のデタッチングローラアーム56に相当し、遮蔽エレメント87は、デタッチングローラアームプレート57に相当する。また、特許文献2においてもラップコンダクタに関する記載はなく、カバー88,89は遮蔽エレメント87がより良好に空気流を抑制するために設けられている。仮に、ラップコンダクタを設けた場合に、カバー88,89を、ラップコンダクタのカバーの落下に良好に対処可能な長さにすると、カバー88,89は、遮蔽エレメント87がより良好に空気流を抑制するという目的を達成できない。
【0016】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、デタッチングローラアームプレートとラップコンダクタとの隙間から異物がニッパ上に落下するのを抑制することができるコーマを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するコーマは、ラップローラの回転によりラップ巻きから送り出されるラップをニッパ装置へ案内するラップコンダクタを備え、デタッチングローラを構成する複数のトップローラが
旋回可能な一対のデタッチングローラアームの間に支持されるとともに、前記一対のデタッチングローラアームの
旋回中心とは反対側の先端がデタッチングローラアームプレートにより連結されたコーマにおいて、
前記ラップコンダクタは、前記ニッパ装置に向かって下方へ真っ直ぐ延びる下側部と、下端が前記下側部の上端に位置する上側部とで構成されており、ニッパより上方において、
前記デタッチングローラアームプレートから前記ラップコンダクタ側に延び、前記デタッチングローラアームプレートと
前記下側部の前側カバーとの隙間を覆う
デタッチングローラアームプレートカバーを備えている。
【0018】
この構成によれば、異物がデタッチングローラアームプレートとラップコンダクタの前側カバーとの隙間から下方に落下することが、その隙間を覆う
デタッチングローラアームプレートカバーにより抑制される。したがって、異物がニッパ上に落下するのを抑制することができる。
【0019】
前記上側部は、斜め上方に向かって延びるラップシュートプレートと、
前記ラップシュートプレートを覆う平面部と前記ラップシュートプレートに嵌め合いにより取り付けられる
折り曲げ部とからなるラップシュートプレートカバーと
、で構成されており、前記隙間が、前記ニッパの最前進時に、
前記平面部から前記折り曲げ部の先端までの距離より狭い構成としてもよい。この場合、ラップシュートプレートカバーがラップシュートプレートから外れて落下したときに、ニッパ上に落下するのを防止することができる。
【0020】
前記
デタッチングローラアームプレートカバーは、
落下した前記ラップシュートプレートカバーが前記デタッチングローラから送り出されるフリースの上に案内されるように前記ラップシュートプレートカバー側から
前記デタッチングローラに向けて下降傾斜する状態で延びていてもよい。この場合、
デタッチングローラアームプレートカバー上に落下したラップシュートプレートカバーが、下降傾斜の
デタッチングローラアームプレートカバーに案内されてデタッチングローラから送り出されるフリース上に落下してフリースが切断される。一般にコーミングヘッドにはフリースから形成されたスライバの太さを検出する検出部が装備され、検出部がスライバの太さの異常を検出すると、制御装置によりコーマの運転が停止されるようになっている。そのため、フリースが切断されると、検出部がスライバの太さの異常を検出してコーマの運転が停止され、ラップシュートプレートカバーが落下した異常な状態でのコーマの運転継続が防止される。
【0021】
前記前側カバーは、上端
から前記隙間を覆うように延びる返しを有していてもよい。この場合、返しが存在することにより、ラップシュートプレートカバーが
ラップコンダクタの
前側カバーに接した状態で落下することが防止され、ラップシュートプレートカバーの落下がニッパフレームの最前進時から多少ずれても、ラップシュートプレートカバーが
デタッチングローラアームプレートカバー上に落下する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、デタッチングローラアームプレートとラップコンダクタとの隙間から異物がニッパ上に落下するのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明をラップ自動継ぎ装置を備えたコーマに具体化した一実施形態を
図1及び
図2にしたがって説明する。
図1及び
図2に示すように、コーミングヘッド11は、一対のラップローラ12の前側下方に、ラップコンダクタ15と、ニッパ装置20と、コーミングシリンダ21と、前後2対のデタッチングローラ31,32と、ラップ自動継ぎ装置とを備えている。
【0025】
ニッパ装置20は、コーミングシリンダ21の上方で前後進揺動可能に配設されたニッパフレーム22を有し、ニッパフレーム22には、その前側にボトムニッパ23が設けられている。ニッパフレーム22には、図示しないリンク機構によりニッパフレーム22の前後進揺動運動に同期して所定のタイミングで開閉するトップニッパ24が設けられている。ボトムニッパ23とトップニッパ24とがニッパを構成する。
【0026】
ボトムニッパ23にはラップローラ12上のラップ巻きLWから供給されるラップLを、ボトムニッパ23とトップニッパ24との間に送り出すフィードローラ25が設けられている。トップニッパ24の前側にはトップコーム26が設けられている。トップコーム26は、デタッチングローラ31,32により引き取られるラップLの端部を梳る位置と、ラップLと係合しない待機位置とに図示しないリンク機構により移動されるようになっている。
【0027】
デタッチングローラ31,32は、それぞれトップローラ31a,32aとボトムローラ31b,32bとで構成され、トップローラ31a,32aは、左右一対のデタッチングローラアーム33間に支持され、両デタッチングローラアーム33はその先端33aにおいてデタッチングローラアームプレート34により連結されている。
【0028】
デタッチングローラ32の前側(フリースの移動方向下流側)にはデタッチングローラ31,32から送り出されるフリースFを案内集束する案内プレート35と、案内プレート35で集束された後のスライバSを引き出す引出しローラ36と、カレンダローラ37とを備えている。カレンダローラ37は、被動ローラ37bが駆動ローラ37aに対して軸間距離が変更可能に設けられるとともに、ばね(図示せず)により駆動ローラ37a側に付勢されている。そして、スライバSの太さに対応して駆動ローラ37aに対する軸間距離が変化する被動ローラ37bの変位量を検出する検出部38が設けられている。検出部38の検出信号はコーマの制御装置(図示せず)に出力され、制御装置はその検出信号からスライバ切れや太さ異常の有無を判断し、スライバ切れや太さ異常の場合にコーマの運転を停止する。
【0029】
ラップローラ12の前方でニッパ装置20の上方には、ラップ自動継ぎ装置が設けられている。ラップ自動継ぎ装置は、キャリアローラ41及びトップローラ42を備え、トップローラ42はキャリアローラ41に対して上側から圧着される作用位置と、作用位置から上方に移動した退避位置とに移動可能に設けられている。トップローラ42は、ラップ継ぎ作業時に旧ラップ端を形成するとき以外は、退避位置に保持され、ラップLは自由にキャリアローラ41上を移動可能になっている。トップローラ42の上側近傍には気体噴射管43が設けられている。気体噴射管43は、トップローラ42と平行に設けられ、図示しない複数の噴射口から気体(例えば、空気)を下方に向けて噴射する。
【0030】
キャリアローラ41と前側のラップローラ12との間には、ラップローラ12上に載置されたラップ巻きLWの軸方向長さの範囲にわたって延びる管状のノズル44が設けられている。ノズル44は、ホース45を介して図示しない圧縮空気供給源に接続されている。ノズル44はスリットと、スリットから噴射される圧縮空気を案内する案内板46とを有する。
【0031】
ノズル44は、ラップ端取り出し位置と、重合案内位置とに配置可能に設けられ、ラップ端取り出し位置に配置された状態では、案内板46がラップローラ12とラップ巻きLWとの共通接線とほぼ平行に延びる状態となる。また、重合案内位置に配置された状態では、案内板46がキャリアローラ41及びトップローラ42の接点より上側へ向かって延びる状態となる。
【0032】
また、ラップ巻きLWの下方には、先端が両ラップローラ12の間に位置する状態で吸引ノズル47が設けられている。吸引ノズル47は、ラップ巻きLWの軸方向長さの範囲にわたって延びる開口を有し、ホース48を介して図示しない負圧源に接続されている。
【0033】
ラップローラ12は、コーミング駆動部と独立して駆動可能なラップローラ用モータ(図示せず)により駆動される。ラップローラ用モータは正逆回転駆動可能に構成され、制御装置の指令に基づいて制御される。制御装置は、コーマの運転時には、ラップローラ用モータを所定の運転条件に従って正転駆動制御する。制御装置は、ラップ継ぎ作業時には、キャリアローラ41及びトップローラ42によりラップLが把持された状態で、ラップローラ12を逆転駆動制御してラップLを切断することにより、旧ラップ端を形成する。
【0034】
また、制御装置は、吸引ノズル47の吸引作用状態において、ラップローラ12を正転駆動させてラップ端を吸引ノズル47に吸引させ、吸引されたラップ端が把持部材(図示せず)に把持された状態で、ラップローラ12を逆転駆動制御してラップLを切断することにより新ラップ端を形成する。なお、ラップ自動継ぎ装置は、特開2015−172256号公報に記載の装置と同様に構成されている。
【0035】
ラップコンダクタ15は、ニッパフレーム22の上方に設けられ、ラップローラ12の回転によりラップ巻きLWから送り出されるラップLをニッパ装置20へ案内する。ラップコンダクタ15は、ニッパフレーム22に向かって下方へ真っ直ぐ延びる下側部16と、先端が下側部16の上端近傍に位置し、基端がキャリアローラ41の近傍に位置する上側部17とで構成されている。
【0036】
ラップコンダクタ15は、接合されたラップLが上側部17の屈曲部17cを通過する際に、上になったラップが下のラップから離れていかないようにガイドするカバーを備えている。具体的には、上側部17は、斜め上方に向かって延びるラップシュートプレート17aと、その開放部を覆う樹脂製のラップシュートプレートカバー17bとで構成され、ラップシュートプレートカバー17bをラップシュートプレート17aに嵌め合いにより取り付けられる構造になっている。ラップコンダクタ15の前側カバーとしての下側部16の前側カバー16aは、上端に前方に向かう返し16bを有する。
【0037】
デタッチングローラアームプレート34には、ボトムニッパ23とトップニッパ24の上方においてデタッチングローラアームプレート34の後側面と、ラップコンダクタ15の前側カバー16aの前面との隙間49を覆うカバー18が設けられている。この実施形態ではカバー18はデタッチングローラアームプレート34の上端から延びる状態でデタッチングローラアームプレート34と一体に形成されている。
【0038】
カバー18は、ラップコンダクタ15の前側カバー16aの前面との隙間49が、ニッパフレーム22の最前進時に、即ちニッパを構成するボトムニッパ23及びトップニッパ24の最前進時に、ラップシュートプレートカバー17bの厚さ17btより狭い状態に形成されている。ラップシュートプレートカバー17bの厚さ17btとは、ラップシュートプレートカバー17bを形成する板材の厚さではなく、折り曲げ形成されたラップシュートプレートカバー17bの平面部から折り曲げ部の先端まで距離を意味する。この実施形態ではラップシュートプレートカバー17bの厚さ17btは一定ではなく、ラップLの出口側の方が入口側より狭く(小さく)形成されているため、隙間49はラップシュートプレートカバー17bの出口側の厚さ17btより狭い状態に形成されている。
【0039】
次に前記のように構成されたコーマの作用を説明する。
コーマ(機台)の運転時、ボトムニッパ23がニッパフレーム22と共に前後に揺動され、トップニッパ24が上下に揺動されてボトムニッパ23の先端部との間でラップLの把持、解放を行う。デタッチングローラ31,32は、ボトムニッパ23の前進時に逆転され、ボトムニッパ23の後退時に正転される。
【0040】
ボトムニッパ23は、デタッチングローラ31,32の回転が停止された状態で前進端に位置する状態から後退し、後退途中でデタッチングローラ31からニッパ装置20のニッパに繋がるフリースが切断される。そして、コーミングシリンダ21のコーム21aがニッパから垂れ下がるラップを梳る。ボトムニッパ23が最後退位置に達した状態では、コーム21aはまだラップと係合しており、シリンダコーミングが継続されている。その状態からニッパフレーム22が前進を開始して、コーム21aとラップLとの係合が終了してコーミングシリンダ21によるコーミングが終了する。
【0041】
その後、デタッチングローラ31、32の逆転が開始され、先行フリースが後退され、その後、ボトムニッパ23の前進が継続された状態でトップニッパ24が開き、フィードローラ25が所定量回転されてラップLが所定量送り出される。次にデタッチングローラ31,32の正転が開始され、先行フリースの引き取りが開始され、後続フリースが先行フリースに接合される。この時、トップコーム26のニードルがフリースに突き刺さる。そして、更にボトムニッパ23の前進が継続されて、ニッパフレーム22が前進端に達した時にデタッチングローラ31,32の正転が停止される。
【0042】
コーマの運転によりラップ巻きLWのラップ量が予め設定された値まで少なくなった時点でラップ自動継ぎ装置によるラップ継ぎ作業が行われる。ラップ継ぎ作業は、コーマの運転が停止された状態で行われる。
【0043】
ラップ継ぎ作業は、先ず、ラップローラ12上のラップ巻きLWからキャリアローラ41を経てニッパ装置20へ案内された状態のラップLが、キャリアローラ41及びトップローラ42による把持位置と、前側のラップローラ12との間で切断されて旧ラップ端が形成される。ラップLが切断された後、ラップ巻きLWはラップローラ12上から除去され、代わりに新しいラップ巻きLWがラップローラ12上に載置される。
【0044】
次に新しいラップ巻きLWのラップLの端部が吸引ノズル47に吸引された状態になる。この状態では、旧ラップ端は、キャリアローラ41及びトップローラ42の後方に延びる状態にある。そして、ラップ巻きLWのラップの端部が吸引ノズル47の把持部材(図示せず)による把持が可能な位置まで吸引ノズル47に吸引された状態でラップローラ12が停止され、ラップLの端部が把持部材によって把持された状態になる。
【0045】
次に、ラップローラ12が逆転駆動されて、ラップLが把持部材による把持位置と、後側のラップローラ12との間で切断されて新ラップ端が形成される。次に、ラップローラ12が停止される。また、吸引ノズル47は負圧の供給が停止された状態になり、把持部材は退避位置に配置される。
【0046】
その後、旧ラップ端の上に新ラップ端が重なる状態でラップ継ぎが行われて、ラップ継ぎ作業完了後、コーマの運転が開始される。そして、ラップ継ぎ部がラップコンダクタ15を経てキャリアローラ41により、ボトムニッパ23とトップニッパ24とで構成されるニッパへ供給される。旧ラップ端と新ラップ端との接合部(重合部)は、ラップコンダクタ15の上側部17の屈曲部17cを通過する際に、ラップシュートプレートカバー17bが、上になったラップが下のラップから離れていかないようにガイドする。そのため、旧ラップ端と新ラップ端との接合部(重合部)は、ラップコンダクタ15の屈曲部17cを円滑に通過してニッパへ供給され、ラップ巻き交換後のコーマの運転再開が良好に行われる。
【0047】
ラップコンダクタ15のラップシュートプレートカバー17bは、ラップシュートプレート17aに嵌め込む構成のため、作業者がラップシュートプレートカバー17bを、ラップシュートプレート17aに確実に嵌め込まずに、あるいは嵌め込みを忘れてコーマの運転を開始する虞がある。その場合、コーマの運転中にラップシュートプレートカバー17bがニッパフレーム22の前後進揺動運動に伴う揺動によって落下する。ラップシュートプレートカバー17bがニッパに落下すると、カバー18が存在しない場合は、ラップシュートプレートカバー17bがボトムニッパ23とトップニッパ24とに噛み込まれて損傷し、破片が色々な箇所に入り込んでコーマの損傷の原因になる。また、ラップシュートプレートカバー17bがトップコーム26の上に落下してトップコーム26を損傷したり、コーミングシリンダ21の上に落下してそのコーム21aを損傷したりする。
【0048】
しかし、カバー18が存在すると、落下したラップシュートプレートカバー17bはカバー18の上面に衝突する。そして、ラップコンダクタ15側から下降傾斜する状態で延びるカバー18の上面に案内されて案内プレート35上に落下する。カバー18が、デタッチングローラ31,32により案内プレート35上に送り出されたフリースF上に落下すると、フリースFが切断される。フリースFは、引出しローラ36を経てカレンダローラ37へ送られ、カレンダローラ37により圧縮されてスライバSとなる。
【0049】
カレンダローラ37は、被動ローラ37bが駆動ローラ37aに対して軸間距離が変更可能に設けられ、スライバSの太さに対応して駆動ローラ37aに対する軸間距離が変化する被動ローラ37bの変位量を検出する検出部38が設けられている。そのため、スライバSのフリースFの切断部と対応する部分がカレンダローラ37を通過する際、検出部38から正常時と異なる検出信号が制御装置に出力され、制御装置はその検出信号からスライバ切れや太さ異常と判断してコーマの運転を停止する。そのため、ラップシュートプレートカバー17bが落下した異常な状態でのコーマの運転継続が防止される。
【0050】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)コーマは、ラップローラ12の回転によりラップ巻きLWから送り出されるラップLをニッパ装置20へ案内するラップコンダクタ15を備え、デタッチングローラ31,32のトップローラ31a,32aを支持する左右一対のデタッチングローラアーム33がその先端33aにおいてデタッチングローラアームプレート34により連結されている。コーマは、ニッパ(ボトムニッパ23及びトップニッパ24)より上方において、デタッチングローラアームプレート34とラップコンダクタ15の前側カバー16aとの隙間49を覆うカバー18を備えている。この構成によれば、異物がデタッチングローラアームプレート34とラップコンダクタ15の前側カバー16aとの隙間49から下方に落下することが、その隙間49を覆うカバー18により抑制される。したがって、異物がニッパ(ボトムニッパ23及びトップニッパ24)上に落下するのを抑制することができる。すなわち、ラップシュートプレートカバー17bの落下防止に限らず、例えば保全作業などの際に作業者が工具や部品等の異物を誤って落とす場合もある。しかし、その場合も異物がニッパを構成するボトムニッパ23やトップニッパ24上に落下したり、トップコーム26を損傷したり、あるいはコーミングシリンダ21のコーム21a上に落下してコーム21aを損傷したりすることが防止される。
【0051】
(2)ラップコンダクタ15は、斜め上方に向かって延びるラップシュートプレート17aと、ラップシュートプレート17aに嵌め合いにより取り付けられるラップシュートプレートカバー17bとで構成されており、カバー18とラップコンダクタ15の前側カバー16aとの隙間が、ニッパ(ボトムニッパ23及びトップニッパ24)の最前進時に、ラップシュートプレートカバー17bの厚さより狭い。この場合、ラップシュートプレートカバー17bがラップシュートプレート17aから外れて落下したときに、ニッパ(ボトムニッパ23及びトップニッパ24)上に落下するのを防止することができる。
【0052】
(3)カバー18は、ラップシュートプレートカバー17b側に向かって上り傾斜に、即ちラップシュートプレートカバー17b側から下降傾斜する状態で延びるように配置されている。そのため、カバー18上に落下したラップシュートプレートカバー17bが、下降傾斜のカバー18に案内されてデタッチングローラ31,32から送り出されるフリースF上に落下してフリースFが切断される。コーミングヘッド11にはフリースFから形成されたスライバSの太さを検出する検出部38が装備され、検出部38がスライバSの太さの異常を検出すると、制御装置によりコーマの運転が停止されるようになっている。そのため、フリースFが切断されると、検出部38がスライバSの太さの異常を検出してコーマの運転が停止され、ラップシュートプレートカバー17bが落下した異常な状態でのコーマの運転継続が防止される。
【0053】
(4)前側カバー16aは、上端に前方に向かう返し16bを有している。この場合、返し16bが存在することにより、ラップシュートプレートカバー17bが前側カバー16aに接した状態で落下することが防止され、ラップシュートプレートカバー17bの落下時がニッパフレーム22の最前進時から多少ずれても、ラップシュートプレートカバー17bがカバー18上に落下する。カバー18は、ニッパフレーム22と共に前進し、ニッパフレーム22が前進端で停止してもラップシュートプレート17aと嵌合されていない状態のラップシュートプレートカバー17bは前進時の勢いで、返し16bを乗り越えてカバー18上に落下する。
【0054】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ カバー18は、デタッチングローラアームプレート34を延長して一体に形成したものに限らない。例えば、デタッチングローラアームプレート34の形状を変更せずに、カバー18としてデタッチングローラアームプレート34と別部材のプレートを、デタッチングローラアームプレート34にボルトを用いて固定したり、溶接により固定したりしてもよい。
【0055】
○ カバー18はデタッチングローラアームプレート34と一体あるいはデタッチングローラアームプレート34に固定されたものに限らず、少なくともデタッチングローラアームプレート34とラップコンダクタ15の前側カバー16aとの隙間49を覆う状態で設けられていればよい。例えば、カバー18をデタッチングローラアーム33の上面に固定された状態で設けてもよい。
【0056】
○ カバー18は板材に限らず、ラップシュートプレートカバー17bがデタッチングローラアームプレート34とラップコンダクタ15の前側カバー16aとの隙間49からの落下を妨げる形状であればよい。例えば、部分的に孔の空いた部材や、櫛状の部材、網状の部材であってもよい。
【0057】
○ カバー18は、デタッチングローラアームプレート34の延長部を櫛状や網状あるいは部分的に孔の空いた形状としてもよい。
○ コーマはラップ自動継ぎ装置を装備しない構成、即ちラップシュートプレートカバー17bを備えない構成であってもよい。ラップシュートプレートカバー17bを備えない構成であっても、カバー18が存在することにより、保全作業などの際に作業者が工具や部品等の異物を誤って落とした場合も、異物がボトムニッパ23やトップニッパ24上あるいはコーミングシリンダ21上に落下することが抑制される。その結果、トップコーム26を損傷したり、あるいはコーミングシリンダ21のコーム21aを損傷したりすることが抑制される。
【0058】
○
図3に示すように、屈曲部19aを有し屈曲部19aより前側はデタッチングローラアーム33及び引出しローラ36の上方を覆い、屈曲部19aより後側はラップコンダクタ15の上側部17を覆うカバー19を設けてもよい。カバー19は、通常は屈曲部19aより前側がデタッチングローラアーム33の近くに位置し、デタッチングローラアーム33を回動させるとき、あるいはラップシュートプレートカバー17bを取り外すときには、その作業に支障を来さない位置へ移動させるため、基端において回動可能に設けられている。この構成においても、ラップコンダクタ15の前側カバー16aとデタッチングローラアームプレート34との隙間49から異物がニッパ上に落下するのを抑制することができる。
【0059】
○ カバー18は、ラップシュートプレートカバー17b側から下り傾斜に配置されている構成に限らず、例えば、水平に設けられてもよい。
○ 前側カバー16aは、上端に前方に向かう返し16bが無くてもよい。
【0060】
○ スライバSの太さを検出する検出部38は、カレンダローラ37を構成する駆動ローラ37a及び被動ローラ37b間の距離を検出する距離センサに限らない。例えば、案内プレート35と引出しローラ36との間にトランペットを設け、そのトランペットにトランペットを通過するスライバSの太さを検出する検出部を設けてもよい。検出部は、例えば、トランペット内を通過するスライバと接触可能、かつ、トランペット内を通過するスライバの太さに対応してその位置が変化可能に、ばねによって付勢された状態で検出部材を設け、その検出部材の位置の変化を検出する構成としてもよい。
【0061】
○ ラップ自動継ぎ装置は実施形態の構成に限らず、旧ラップ端の上に新ラップ端が重なる状態でラップ継ぎが行われて、旧ラップ端の上に新ラップ端が重なる状態のラップ継ぎ部がラップコンダクタ15に供給されるラップ継ぎ作業を行うラップ自動継ぎ装置であればよい。