(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859733
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】トッピング装置及びトッピング方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/154 20190101AFI20210405BHJP
B29C 48/34 20190101ALI20210405BHJP
B29C 48/76 20190101ALI20210405BHJP
B29K 21/00 20060101ALN20210405BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20210405BHJP
【FI】
B29C48/154
B29C48/34
B29C48/76
B29K21:00
B29L30:00
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-21480(P2017-21480)
(22)【出願日】2017年2月8日
(65)【公開番号】特開2018-126935(P2018-126935A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】本田 慎一郎
【審査官】
山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−182021(JP,A)
【文献】
特開2010−143022(JP,A)
【文献】
実開昭59−129518(JP,U)
【文献】
特開平07−016904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00−48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コードに未加硫のゴムをトッピングするトッピング装置であって、
ゴム押出機と、前記ゴム押出機の先端部に取り付くトッピングヘッドと、前記トッピングヘッドに接続される減圧手段とを具え、
前記トッピングヘッドは、前記ゴム押出機の先端部に取り付くヘッド本体と、前記ヘッド本体に取り付くコード案内部材とを含み、
前記ヘッド本体は、前記ゴム押出機からゴムが流入するトッピング室と、前記トッピング室の前記コードの通過方向の前後の開口部とを具え、
前記コード案内部材は、後の前記開口部に取り付き、
しかも前記コード案内部材は、前記コードを前記トッピング室内に案内するコード案内孔と、一端部が前記コード案内孔に通じかつ他端側が前記減圧手段に接続されるベント孔とを具えたトッピング装置。
【請求項2】
前記コード案内孔の直径と、前記コードの直径との差が0.03mm以下である請求項1記載のトッピング装置。
【請求項3】
前記コード案内部材は、複数本の前記コード案内孔を具えるとともに、
前記ベント孔は、各前記コード案内孔同士を継ぐ連結部と、この連結部に一端部が通じかつ他端側が前記減圧手段に接続される合流流路部とからなる請求項1又は2記載のトッピング装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のトッピング装置を用いて、コードに未加硫のゴムをトッピングするトッピング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コードにゴムをトッピングする際、コードとゴムとの間に空隙部が生じるのを抑制するトッピング装置及びトッピング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの形成工程では、ゴム/コード複合体であるプライ材料が一般に使用される。このプライ材料は、コード並列体を未加硫のゴムでトッピングすることで形成される。そして、例えば下記の特許文献1には、ゴム押出機の先端部に、押出しヘッドを取り付けたプライ材料形成用のトッピング装置が提案されている。
【0003】
前記押出しヘッドは、ヘッド本体とバッフルとダイプレートとを具える。ヘッド本体は、ゴム押出機からのゴムが流入するトッピング室を有し、このトッピング室内を、コード並列体がコード長さ方向に通過する。バッフルは、複数のコード挿入孔を有し、このコード挿入孔により、各コードが平行に並列するコード並列体を前記トッピング室内に導入する。ダイプレートは、トッピング室を通過するコード並列体をゴムとともに吐出させ、これにより、コード並列体をゴムトッピングしたプライ材料が、所定の断面形状で押し出し成形される。
【0004】
しかし上記提案の装置では、トッピング室内の圧力が高くないため、コードとゴムとの間の境界に、ゴムが充填されない空隙部が発生しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−143022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、トッピング時、コードとゴムとの間における空隙部の発生を抑えて接着不良を抑制するトッピング装置及びトッピング方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願第1の発明は、コードに未加硫のゴムをトッピングするトッピング装置であって、
ゴム押出機と、前記ゴム押出機の先端部に取り付くトッピングヘッドと、前記トッピングヘッドに接続される減圧手段とを具え、
前記トッピングヘッドは、前記ゴム押出機からゴムが流入するトッピング室と、前記コードを前記トッピング室内に案内するコード案内孔を有するコード案内部材とを含み
しかも前記コード案内部材は、一端部が前記コード案内孔に通じかつ他端側が前記減圧手段に接続されるベント孔を具える。
【0008】
本発明に係る前記トッピング装置は、前記コード案内孔の直径と、前記コードの直径との差が0.03mm以下であることが好ましい。
【0009】
本発明に係る前記トッピング装置は、前記コード案内部材は、複数本の前記コード案内孔を具えるとともに、前記ベント孔は、各前記コード案内孔同士を継ぐ連結部と、この連結部に一端部が通じかつ他端側が前記減圧手段に接続される合流流路部とからなることが好ましい。
【0010】
本願第2の発明は、第1の発明のトッピング装置を用いて、コードに未加硫のゴムをトッピングしている。
【発明の効果】
【0011】
本発明は叙上の如く、コード案内孔を有するコード案内部材に、一端部が前記コード案内孔に通じかつ他端側が減圧手段に接続されるベント孔を設けている。そのため、コード案内孔を通るコードから空気を吸引しながら、トッピング室にてトッピングを行いうる。従って、コードとゴムとの間に空隙部が発生するのを抑制でき、空隙部に起因する接着不良を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のトッピング装置の一実施例を示す断面図である。
【
図5】コード案内孔を通るコードを示す断面図である。
【
図6】表1の剥離試験に用いるテストサンプルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のトッピング装置1は、ゴム押出機2と、ゴム押出機2の先端部に取り付くトッピングヘッド3と、トッピングヘッド3に接続される減圧手段4とを具える。
【0014】
本例では、トッピング装置1が、タイヤ用のコードCに未加硫のゴムGをトッピングし、これによりタイヤ形成用のプライ材料Pを形成する場合が示される。特に本例では、複数本のコードCを互いに平行に並列させたコード並列体CRにゴムGをトッピングする場合が示される。しかし1本のコードCにゴムGをトッピングしたプライ材料Pを形成するように構成することもできる。
【0015】
図1では、トッピングの状態を解りやすくするために、便宜上、コードCが上下方向に通過するように描かれている。しかし、実際には、
図2に示すようにコードCは略水平方向に通過する。
【0016】
ゴム押出機2は、本例ではベン卜式のゴム押出機であって、シリンダー10にベント孔11を設け、例えば真空ポンプである減圧手段12によって、ゴムGから気体成分(空気を含む)を脱気する。
【0017】
具体的には、前記ゴム押出機2は、押出し方向の後端側にホッパ10Aを設けたシリンダー10と、シリンダー10内に同心に収納されるスクリュー軸13と、スクリュー軸13を回転駆動する駆動部14と、前記減圧手段12とを具える。前記スクリュー軸13は、前記ホッパ10Aよりも押出し方向の前方側(下流側)に、堰13Aを具える。
【0018】
シリンダー10には、前記堰13Aよりも押出し方向の前方側(下流側)に、ベント孔11が設けられ、これによりスクリュー軸13とシリンダー10との間に、ベント孔11に通じるベント領域Yが形成される。なおベント孔11には、前記減圧手段12が接続される。シリンダー10内で混錬されるゴムGは、堰13Aを乗り越えるときに薄肉化し、かつ堰13Aの通過直後に減圧されることで、ゴム中に混在する気体成分が脱気される。本例では、脱気効果をより高めるために、堰13Aの外周面に、堰13Aを乗り越えるゴムの表面積を増やすための複数の条溝が軸心方向に形成される。
【0019】
トッピングヘッド3は、前記ゴム押出機2の先端部に取り付くヘッド本体5、及びこのヘッド本体5に取り付くコード案内部材6とダイプレート7とを具える。
【0020】
前記ヘッド本体5は、内部に、ゴム押出機2からのゴムGが流入しうるトッピング室15を有する。またヘッド本体5は、トッピング室15内を前記コードC(コード並列体CR)がコード長さ方向に通過しうるように、通過方向Fの前後に開口部5F、5Rを具える。本例では、通過方向Fが、ゴム押出機2からのゴムGの流入方向と直交する向きに設定されているが、これに限定されない。
【0021】
前記コード案内部材6は、前記後の開口部5Rに気密に取り付く。このコード案内部材6は、各コードCをトッピング室15内に案内するコード案内孔16を有する。本例では、複数のコード案内孔16が並列しており、これにより、コード並列体CRをなす各コードCを精度良く整列させてトッピング室15内に案内する。
【0022】
図2、3に示すように、前記コード案内部材6は、上下の部材片6R、6Lに分割可能であり、各部材片6R、6Lの割面部18には、コード案内孔16を孔の中心線に沿って2分割したコード案内半孔16aが形成される。
【0023】
図4に示すように、コード案内部材6には、ベント孔19が形成される。このベント孔19は、その一端部が各コード案内孔16に通じ、かつ他端側が減圧手段4に接続される。本例のベント孔19は、各コード案内孔16同士を継ぐ連結部20と、この連結部20に一端部が通じかつ他端側が減圧手段4に接続される合流流路部21とから構成される。
【0024】
図3に示すように、連結部20は、本例では、割面部18に形成される凹溝20aであり、各コード案内半孔16aを横切ってのびる。又凹溝20aは、割面部18からの深さが、コード案内半孔16aの深さより大であり、これにより各コード案内孔16に導通しうる。なお凹溝20a(連結部20)は、部材片6R、6Lの双方に設けることができるが、合流流路部21が形成される部材片6R又は6Lのみに形成しても良い。
【0025】
又合流流路部21は、部材片6R又は6Lの一方を貫通し、一端部が連結部20に導通し、かつ他端側が減圧手段4に接続される。なお減圧手段4として、例えば真空ポンプを挙げることができる。
【0026】
図1に示すように、ダイプレート7は、ヘッド本体5の前の開口部5Fに気密に取り付く。ダイプレート7は、例えば矩形板状をなし、その中央に、プライ材料Pの断面形状を決定する成形口22を有する。そして前記ゴムGとコード並列体CRとが、成形口22を通ることによりゴムトッピングされたプライ材料Pが形成される。
【0027】
前記トッピング装置1は、コード案内部材6に、一端部が各コード案内孔16に通じかつ他端側が減圧手段4に接続されるベント孔19を具える。そのため前記トッピング装置1を用いた場合、コード案内孔16を通るコードCから空気を吸引しながら、このコードCにトッピング室15内にてゴムを被覆させうる。従って、コードCとゴムGとの間に空隙部が発生するのを抑制でき、コードCとゴムGとの接着性を向上しうる。
【0028】
ここで、ベント孔19から空気を吸引する場合、吸引圧によりコードCとコード案内孔16の内周面との間隙部からゴムGが吸い上がり、コード案内孔16が目詰まりを起こし易くなる。そのため、
図5に誇張して示すように、コード案内孔16の直径Dと、コードCの直径dとの差(D−d)を0.03mm以下、さらには0.02mm以下とするのが好ましい。コードCの直径dは、コードCが金属コードの場合、コードCを囲む円のうち、最小径の円の直径で定義される。又コードCが有機繊維コードの場合、撚られたフィラメントの束の断面を囲む円のうち、最小径の円の直径で定義される
【0029】
前記直径の差(D−d)が0.03mmを超えると、吸引圧により、トッピング室15側からコード案内孔16内にゴムGが浸入し易くなって目詰まりの発生傾向となる。
【0030】
減圧手段4による吸引圧p1(ゲージ圧)としては、−20kPa以下、さらには−40kPa以下が好ましい。又トッピング室15内の内圧p2(ゲージ圧)としては、特に+20kPa以上、さらには+40kPa以上が好ましい。
【0031】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0032】
本発明の効果を確認するため、
図1に示す構造を有するトッピング装置1を用い、
図6に示すように、複数枚(例えば3枚の)のプライ材料Pを形成した。実施例では、減圧手段による吸引圧p1(ゲージ圧)は、−20kPaである。比較例では、減圧しておらず、吸引圧p1(ゲージ圧)は0kPaである。そして、最上層のプライ材料P1のコードCが、他のプライ材料P2のコードCと直交する向きで互いに重ね合わせて加硫接着し、テストピースを作成した。そして、最上層のプライ材料P1を剥離させるときの抗力(剥離抗力)を、以下のように測定した。
【0033】
最上層のプライ材料P1の剥離幅Wは25mmであり、剥離される長さLは少なくとも100mmである。剥離幅Wが変化しないように、予め、プライ材料P1には、剥離方向に沿って切り込みが形成される。
【0034】
テストピースを剥離試験機(図示省略)に固定するとともに、プライ材料P1の一端部を、試験機のクランプ具を用いて引っ張ることにより、前記一端部から剥離させる。剥離速度は50.0±2.5mm/分であり、25mmの幅Wに対する剥離力で比較している。
【0035】
【表1】
【0036】
表に示すように、実施例は、比較例に比して剥離抗力が高い(剥離し難い)ことが確認できる。これは比較例の場合、コードとゴムとの間に空隙部が生じて接着力が局部的に弱い部分が発生し、ここが起点となって、プライ材料P1が剥がれ易くなったと考えられる。なお剥離はコードとゴムとの間で発生している。
【符号の説明】
【0037】
1 トッピング装置
2 ゴム押出機
3 トッピングヘッド
4 減圧手段
6 コード案内部材
15 トッピング室
16 コード案内孔
19 ベント孔
20 連結部
21 合流流路部
C コード
F 通過方向
G ゴム
P プライ材料