(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る光トランシーバ及びその製造方法の実施形態について詳細に説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係る光トランシーバ1を示す斜視図である。光トランシーバ1は、当該業界においてその標準的な仕様が決められている、所謂、CFP8モジュールである。光トランシーバ1は、送信側及び受信側において、共に、通信速度が25GbpsとされたNRZ信号をPAM4(Pulse Amplitude Modulation:4値変調[多重度2])信号で駆動することによって、1波長当たり50Gbpsにまで高速化し、50Gbps×4波長の光サブアセンブリ(OSA)を2つずつ搭載することにより、8レーン計400Gbpsの伝送容量を達成する。
【0011】
光トランシーバ1はハウジング2を備えており、ハウジング2は上ハウジング7及び下ハウジング8を含む。ハウジング2の外寸は、CFP8規格に準拠している。例えば、ハウジング2の長さは106mm、ハウジング2の幅は40mm、ハウジング2の高さは9.5mmである。
【0012】
ハウジング2には、LCコネクタである外部の光コネクタを受容するレセプタクル4が設けられる。以下では、図面において「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」の語を用いるが、これらの語は図示する状態に基づく便宜的なものである。以下の説明において、上方向は下ハウジング8から見て上ハウジング7が設けられる方向であり、前方向はハウジング2から見てレセプタクル4が設けられる方向であり、左右方向はハウジング2の幅方向である。
【0013】
レセプタクル4は、ハウジング2の左右方向中央に形成されている。ハウジング2の左右両側からはプルタブ5が前方に延び出している。ハウジング2の左右両側には、プルタブ5の前後方向の動きに連動してスライドするスライダ6を備え、スライダ6の後端には、ホストシステムのケージに形成されたタブを押し広げる突起6aを有する。スライダ6の前側へのスライドに同期して突起6aが当該タブを押し広げることにより、当該タブとハウジング2との係合を解除し、光トランシーバ1をケージから外すことが可能である。また、前述したように、ハウジング2の高さは、10mm程度であり、スライダ6の幅を僅かに上回る程度とされている。これにより、ホストシステムへの光トランシーバ1の装着密度を高めることが可能である。
【0014】
図2は、上ハウジング7の一部を切り欠いた光トランシーバ1の内部構造を示す斜視図である。
図3は、光トランシーバ1の分解斜視図である。光トランシーバ1の内部には、前述のレセプタクル4、レセプタクル4の左右両側に位置する合波器(Optical-Multiplexer:O-Mux)9及び分波器(Optical-De-Multiplexer:O-DeMux)10、TOSA11、ROSA12、回路基板13、並びにFPC14を配置する。
【0015】
光トランシーバ1は、送信側及び受信側共に、8レーンの互いに異なる波長の信号光を送受する。合波器9及び分波器10により、8レーンの光信号を、それぞれ長波長側4レーン、及び短波長側4レーンに分離して、TOSA11及びROSA12のそれぞれに光結合させる。以下の説明では、TOSA11及びROSA12のそれぞれをOSA(光サブアセンブリ)50と称することがある。
【0016】
レセプタクル4は、内部ファイバF及び簡易コネクタCを介してOSA50に光学的に接続される。合波器9には、レセプタクル4から伸びる1本の内部ファイバF、及びTOSA11に向かう2本の内部ファイバFが接続される。分波器10には、ROSA12から延びる2本の内部ファイバF、及びレセプタクル4に向かう1本の内部ファイバFが接続される。
【0017】
合波器9及び分波器10の後側に、2個のTOSA11、及び2個のROSA12が配置される。これらのOSA50は、光信号及び電気信号の光電変換を行う。各OSA50には、合波器9及び分波器10それぞれから延びる2本の内部ファイバFが簡易コネクタCを介して接続される。各内部ファイバFは、各OSA50の光接続ユニットに接続される。OSA50の光接続ユニット内には、レンズ及びアイソレータ等の光学部品が内蔵されている。
【0018】
合波器9及び分波器10は、例えば、互いに同一の形状及び同一の大きさを有する。合波器9及び分波器10は、それぞれの底部9b,10bに、後方に突出する突出部9a,10aを有する。合波器9及び分波器10のそれぞれからは、3本の内部ファイバFがピグテール方式で引き出されている。
【0019】
内部ファイバFは第1内部ファイバF1と第2内部ファイバF2を含んでおり、合波器9及び分波器10のそれぞれは、第1内部ファイバF1を介してレセプタクル4に接続される。また、合波器9及び分波器10のそれぞれは、第2内部ファイバF2を介して簡易コネクタCに接続される。
【0020】
各OSA50は、後述する第1保持部材30及び第2保持部材40を介して回路基板13に装着される。これにより、各OSA50から延び出すFPC14と回路基板13の接続箇所を保護(補強)することができる。従って、接続の信頼性を高めることができる。回路基板13は、OSA50にFPC14を介して電気的に接続される回路を搭載する。回路基板13は、OSA50の後側に配置される。回路基板13は、上側に位置する第1回路基板15、及び下側に位置する第2回路基板16を含む。第1回路基板15上には、2個のTOSA11に対面する2個のLDドライバ17、DSP(Digital Signal Processor)18及びプリアンプIC等を搭載する。DSP18は、第1回路基板15の中央に搭載されている。DSP18は、25Gbpsの2値信号を4値変調信号に変換する信号変換ICであり、送信側8信号、及び受信側8信号に対して信号処理を実行する。
【0021】
第2回路基板16は、その上側に位置する第1回路基板15とスタックコネクタによって接続される。スタックコネクタを用いることにより、FPCと比較して、省スペースで接続を実現させることが可能であり、更に高周波信号にも対応可能である。第1回路基板15は、その両面に回路部品を搭載し、第2回路基板16は、その上面のみに回路部品を搭載する。
【0022】
また、光トランシーバ1は、回路基板13の後方に回路基板13とは別体とされたプラグ基板23を有する。プラグ基板23は、ホストシステムのケージ内に設けられる電気コネクタと係合する。当該電気コネクタとプラグ基板23には100本以上の電極が密に配置されている。
【0023】
よって、当該電気コネクタとプラグ基板23の相対位置の精度を確保するためには当該電気コネクタとプラグ基板23の係合力を高める必要があり、当該電気コネクタに対する光トランシーバ1の挿抜力は大きい。光トランシーバ1の挿抜時にプラグ基板23に及ぼされる応力を回路基板13に波及させないため、及び、プラグ基板23を当該電気コネクタに強固に係合させるために、プラグ基板23を回路基板13とは別体としている。
【0024】
図4に示すように、各OSA50は、矩形のパッケージ11a,12aと、その後側のみから引き出された端子11b,12bを有する。パッケージ11a,12aは、光トランシーバ1の長手方向であって且つレセプタクル4の反対側のみに端子11b,12bを有する。パッケージ11a,12aの各底面11c,12cは、上ハウジング7の内面に当接する。すなわち、各OSA50は、上下が逆にされた状態で上ハウジング7の内部に搭載される。
【0025】
図5及び
図6は第1保持部材30を示す斜視図である。第1保持部材30は、矩形状の外観を有する。第1保持部材30は、前側から順に、突出部31、溝32,33、孔部34,35、係合部36、突起37及び突出部38を有する。突出部31は、左右両側に設けられる。
【0026】
溝32,33は内部ファイバFを配置するガイド溝である。溝32は第1保持部材30の左右内側、溝33は第1保持部材30の左右外側にそれぞれ設けられる。溝32,33は第1保持部材30の内面に設けられる。溝32,33には、合波器9及び分波器10それぞれから引き出されて後部で大きく展開し、その後簡易コネクタCにまで延びる内部ファイバFが挿入される。
【0027】
孔部34は第1保持部材30を第2保持部材40と係合させるための孔である。孔部34は、その断面が円形である。孔部35は、各OSA50の底面11c,12cを露出させる。係合部36は、第1保持部材30を第2保持部材40に係合する部位である。係合部36は、第1保持部材30の左右両側壁の後部それぞれに設けられる。突起37は、第1保持部材30を回路基板13に係合させる部位であり、第1保持部材30の左右両端から後方に延びる突出部38上に設けられる。
【0028】
光トランシーバ1の組み立て時には、突出部31上に合波器9及び分波器10のそれぞれを仮固定することにより、組み立てを効率的に行うことができる。突出部31の根元には凹部31aが形成されている。凹部31aに合波器9及び分波器10それぞれの突出部9a,10aを挿入することにより、合波器9及び分波器10を突出部31上に仮固定する。
【0029】
また、光トランシーバ1を組み立てるときには、第1保持部材30に、合波器9、分波器10及びOSA50を一体に仮保持する。すなわち、第1保持部材30によって、合波器9、分波器10及びOSA50を含む中間アセンブリを組み立てることにより、組み立ての効率が向上する。
【0030】
OSA50の内部に搭載される部品のうち放熱を必要とするものとして、半導体光素子の温度を所定温度に維持するTEC(Thermo Electric Cooler)が挙げられる。特にTECの底面は放熱の必要性が高い。よって、TECの底面が位置するOSA50の底面11c,12cを、孔部35を貫通して上ハウジング7の内面に物理的に接触させることにより、OSA50の放熱効果を高めることができる。
【0031】
また、OSA50の底面11c,12cの面積は各孔部35の面積より小さくてもよく、この場合、OSA50が孔部35から抜け落ちることが抑制される。しかしながら、この状態では、底面11c,12cと上ハウジング7の内面との間に隙間が形成される。よって、当該隙間をゲル状の放熱部材で埋めて当該放熱部材の厚さを第1保持部材30の厚さよりも厚くすることにより、OSA50は、当該放熱部材を介して上ハウジング7の内面に接触する。従って、OSA50から上ハウジング7への放熱経路が確保される。
【0032】
図7及び
図8は第2保持部材40を示す斜視図である。第2保持部材40は、矩形状の外観を有する。第2保持部材40は、突出部41、溝42,43、突出部45,46及び突起49を備える。突出部41は、OSA50を搭載する部分に設けられる。突出部41は、OSA50を上ハウジング7に押し付ける弾性力を備える。
【0033】
突出部41は、OSA50を上ハウジング7の内面に押し付ける応力付与部である。突出部41は、その先端に、断面三角形状の突起41aを有する。突起41aによって、突出部41のOSA50に対する弾性力を高めることができ、各OSA50の底面11c,12cを上ハウジング7の内面に確実に当接させることが可能となる。
【0034】
また、第2保持部材40を第1保持部材30に組み立てたときに、第1保持部材30及び第2保持部材40の全高は、OSA50の全高よりも僅かに低くなる。これにより、OSA50の底面11c,12cが孔部35から確実に上ハウジング7側に突き出ることになり、上ハウジング7の内面にOSA50が確実に当接する機構を実現している。
【0035】
各突出部45には第1保持部材30の係合部36が係合する。突起49は第1保持部材30の孔部34に係合する。よって、第2保持部材40は、突起49及び一対の突出部45の3箇所で第1保持部材30との係合を確保する。突出部45上には孔部45aが形成され、係合部36には突起36aが形成されている。この孔部45aに突起36aを嵌合することによって、第1保持部材30及び第2保持部材40の後側の係合が確保される。
【0036】
突起49は、円柱状とされている。突起49は、その先端の径が根元の径よりも大きい。すなわち、突起49は、その先端に拡径部49aを有しており、突起49を孔部34に挿入したときには拡径部49aが抜け止めとなる。従って、突起49を孔部34に強固に係合できるので、第1保持部材30及び第2保持部材40の前側の係合が確保される。
【0037】
溝42,43は、内部ファイバFをガイドするガイド溝である。溝42は第2保持部材40の前側且つ左右外側に3本ずつ形成されており、溝43は第2保持部材40の前側且つ左右内側に2本形成されている。溝43は、レセプタクル4に対向し、レセプタクル4から延びる第1内部ファイバF1を収容する。溝42は、合波器9及び分波器10のそれぞれに対向する。溝42には、合波器9及び分波器10のそれぞれに向かう1本の第1内部ファイバF1と2本の第2内部ファイバF2を挿入する。溝43には、レセプタクル4に向かう2本の第1内部ファイバF1を挿入する。
【0038】
溝42,43は、共に第2保持部材40の底面47に形成されている。3本の溝42は、そのまま後方に向けて直進し、その後合流する。2本の溝43は後方に向けて直進し、第2保持部材40の後部において、互いに交差した後、左右逆方向に延びている。よって、前述した4個の突出部41のうち、左右外側の2個の突出部41は、左右内側の2個の突出部41よりも幅が狭められている。溝42,43のそれぞれには、複数の突出部46を設けており、突出部46により、溝42,43に挿入された内部ファイバFが外に飛び出ることを抑制している。OSA50は、第1保持部材30と第2保持部材40の間に挟み込まれる。
【0039】
図9は、内部ファイバFの引き回しを説明するための図である。
図9では、第1保持部材30及び第2保持部材40の図示を省略している。レセプタクル4から引き出された第1内部ファイバF1は、そのまま後方に向けて直進し、OSA50上(第2保持部材40の外面)で左右反対側に湾曲し、そのまま曲率を維持しつつ回路基板13上で大きく逆サイドに湾曲し、OSA50の左右外側を通過して合波器9及び分波器10のそれぞれに接続する。
【0040】
合波器9及び分波器10のそれぞれから引き出された2本の第2内部ファイバF2は、3本の溝42のうち左右内側の溝42に配置され、そのまま後方に向けて直進し、回路基板13上において大きく左右逆方向に湾曲し、第1保持部材30後端の係合部36の壁部に沿って前側に引き出され、第1保持部材30の溝33の最も外側に設けられた壁部の更に外側で屈曲して後側に向かい、それぞれ溝32,33に収容されて簡易コネクタCに接続する。溝33の最も外側の壁部に沿って第2内部ファイバF2が屈曲することにより、第2内部ファイバF2の屈曲の曲率を抑えることが可能である。第2内部ファイバF2の曲率は、例えば20mmよりも小さい。
【0041】
次に、OSA50と回路基板13とのFPC14による接続について説明する。
図10は、OSA50及び回路基板13を組み立てた後に第1保持部材30を回路基板13に組み付ける状態を示している。
図4及び
図10に示すように、FPC14は、端子11b,12bの表面と回路基板13の表面を接続する第1FPC14aと、端子11b,12bの裏面と回路基板13の裏面を接続する第2FPC14bを含む。TOSA11及びROSA12では、端子11b,12bを引き出す上下方向の位置が互いに異なっている。よって、TOSA11に接続されるFPC14、及びROSA12に接続されるFPC14のいずれかに対し、大きな応力を付与した上でフォーミングしなければならない。
【0042】
図10の例では、端子12bの表面と回路基板13の表面との高低差がより大きいので、ROSA12に接続されるFPC14に大きな応力が付与される。この状態で光トランシーバ1の組み立てのために種々ハンドリングを施すと、特にROSA12に接続されたFPC14に大きなモーメントが付与されることが想定される。そのため、光トランシーバ1では、組み立て時に、OSA50を第1保持部材30上に仮搭載することによって、FPC14に及ぼされる応力(TOSA11、ROSA12の重さによるモーメント)を緩和する。
【0043】
図11(a)は、合波器9の外観を示す斜視図である。
図11(b)は、分波器10の機能を説明するための図である。分波器10の外観は合波器9の外観と同様であるため、分波器10の外観に関する説明を適宜省略する。合波器9は、その底部9bを上にして光トランシーバ1の内部に搭載される。底部9bを第1保持部材30の突出部31に仮固定しつつ、回路基板13、OSA50、第1保持部材30及び第2保持部材40を組み立てる。
【0044】
突出部9aの厚さは、前述した突出部31の凹部31aの厚さよりも僅かに厚いので、凹部31aへの突出部9aの挿入は、樹脂の弾性力に依存する圧入による。従って、光トランシーバ1の組み立て時に、合波器9が突出部31から滑り落ちることを抑制できる。また、上ハウジング7及び下ハウジング8を組み立てた後であっても、合波器9のがたつきを抑制できる。
【0045】
本実施形態では、突出部9aと凹部31aにより合波器9を第1保持部材30に仮固定しているが、突出部9a及び凹部31a以外の構成により合波器9を第1保持部材30に仮固定してもよい。例えば、突出部31の根元に合波器9を囲むリング部材を設けておき、このリング部材に合波器9を嵌合することで合波器9を第1保持部材30に仮固定してもよい。
【0046】
図11(b)に示すように、分波器10は、波長選択フィルタ10cを有する。光トランシーバ1では、1274nm〜1310nmの範囲において4〜5nmの間隔で設定される8種類の波長の信号光を対象とする。波長選択フィルタ10cは、この8種類の波長の信号光のうち、長波長側の4本(1310nm、1305nm、1300nm、1295nm)の信号光と、短波長側の4本(1274nm、1278nm、1282nm、1286nm)の信号光を分離する。
【0047】
波長選択フィルタ10cは、1286nmと1295nmの間(一例として1290nm)にカットオフ波長を有する。波長選択フィルタ10cは、この波長に対して誘電体多層膜を実質透明な母材上に形成することによって得られる。波長選択フィルタ10cの波長選択機能は、光の入射角、すなわち、波長選択フィルタ10cの法線と入射光の光軸とが成す角度に依存する。光の入射角が0°のときに最良の波長選択機能が得られ、光の入射角が大きくなるほど波長選択機能が低下する。
【0048】
分波器10では、分波器10のポート10dから、前述した各波長を有する8多重の波長多重光が入射し、ミラー10eで全反射してから波長選択フィルタ10cに入射する。8多重の波長多重光のうち、長波長側4本(又は短波長側4本)の光は波長選択フィルタ10cを透過してポート10fから出力し、短波長側4本(又は長波長側)の光は波長選択フィルタ10cで反射する。波長選択フィルタ10cで反射した4本の信号光は、ミラー10gで全反射してポート10hから出力する。また、ポート10d,10f,10hのそれぞれにはコリメートレンズが設けられており、分波器10の内部ではコリメート光学系を採用している。
【0049】
以上、分波器10について説明したが、合波器9については、分波器10の入出力が逆とされている。すなわち、ポート9hから、長波長側4本(又は短波長側4本)の信号光が入射し、ミラー9gで全反射してから波長選択フィルタ9cで再度反射する。一方、短波長側4本(又は長波長側4本)の信号光は、ポート9fから入射し、波長選択フィルタ9cを透過する。波長選択フィルタ9cで反射した4本の信号光と波長選択フィルタ9cを透過した4本の信号光は、ミラー9eで全反射した後にポート9dから出力する。以上より、合波器9の内部に搭載される光学部品は、分波器10の内部に搭載される光学部品と同様とすることができる。
【0050】
図12は、合波器9(分波器10)、レセプタクル4、簡易コネクタC及び内部ファイバFを示す斜視図である。合波器9と内部ファイバFの接続、及びレセプタクル4と内部ファイバFの接続は、所謂ピグテール接続(永久接続)である。また、簡易コネクタCはOSA50に付属されており、OSA50と内部ファイバFとの接続は簡易コネクタCを介して行われる。簡易コネクタCは、その両側にフックC1を有し、フックC1を介してOSA50に接続される。
【0051】
合波器9(分波器10)及びレセプタクル4は、所謂受動部品であるため、部品個々の性能のばらつきは比較的小さい。これに対し、OSA50は、内部にLD又はPD等の半導体光素子を搭載しているので、部品個々の性能のばらつきは比較的大きい。よって、OSA50は、受動部品と比較して交換の頻度が高い。従って、OSA50の接続を簡易コネクタCを用いたコネクタ形式とすることによって、各OSA50を独立して交換することが可能となる。
【0052】
前述したOSA50、LDドライバ17及びDSP18等、回路基板13に搭載される回路部品は発熱体である。よって、
図13に示すように、OSA50、LDドライバ17及びDSP18等の放熱面は、ヒートシンクHが接触する上ハウジング7側に配置されている。これにより、上ハウジング7に対するOSA50、LDドライバ17及びDSP18等の熱的な接続を維持している。
【0053】
また、回路基板13は、水平面(前後左右に延びる平面)に対し若干の傾きを有する。しかしながら、上ハウジング7とLDドライバ17及びDSP18との間等に、ヒートシンクHとして弾性且つ伝熱性を有するシート又はゲルを塗布することによって、上記傾きによる回路基板13の公差を吸収する。
【0054】
次に、光トランシーバ1の組み立てについて説明する。
図14は、第1回路基板15の裏面、並びに、OSA50の天井面を示している。まず、
図14に示すように、第1回路基板15とOSA50を互いに電気的に接続する(第1工程)。両面に回路部品を搭載済みの第1回路基板15と、OSA50のそれぞれをFPC14によって接続する。
【0055】
このとき、各FPC14にフォーミングを行う。具体的には、ROSA12に接続するFPC14を、TOSA11に接続するFPC14よりも大きく曲げてフォーミングを行う。その後、OSA50の端子11b,12bと第1回路基板15のパッドにFPC14をソルダリングしてFPC14を固定する。
【0056】
図15に示すように、OSA50の各スリーブに簡易コネクタCを接続する(第2工程)。
図15では図示していないが、各簡易コネクタCには内部ファイバFが接続されている。次に、
図16に示すように、OSA50を支持しつつ第1回路基板15と第1保持部材30を組み立てる(第3工程)。
【0057】
このとき、第1保持部材30の後端の突起37を第1回路基板15に形成された開孔15aに挿入する。突起37は、その先端の径が開孔15aの径よりも大きいので、開孔15aに突起37が係合した後には開孔15aからの抜けが防止される。また、OSA50に装着される各簡易コネクタCからは内部ファイバFが伸び出している。
【0058】
次に、
図16及び
図17に示す状態において、簡易コネクタCから前方に引き出した内部ファイバFを第1保持部材30の溝32,33に配置する(第4工程)。具体的には、
図18に示すように、左右内側の内部ファイバFそれぞれを溝32(第1溝)内に挿入し、左右外側の内部ファイバFそれぞれを溝33内に挿入し、互いに左右逆方向に曲げる。そして、合波器9及び分波器10のそれぞれを回路基板13の部分まで移動させる。
【0059】
次に、第2保持部材40を第1保持部材30に組み付ける。このとき、
図19に示すように、内部ファイバFを回路基板13上で大きく左右逆方向に湾曲する。そして、レセプタクル4に接続する内部ファイバFを溝43に挿入し、合波器9及び分波器10のそれぞれに接続する内部ファイバFを溝42(第2溝)に挿入する(第5工程)。
【0060】
また、合波器9及び分波器10のそれぞれを突出部31に仮固定し、第1保持部材30によって合波器9及び分波器10を支持する(第6工程)。このとき、突出部9a,10aを、それぞれ凹部31aに挿入して、合波器9及び分波器10を突出部31上に仮固定する。
【0061】
以上の組み立てはハウジング2の外で行う。これにより、回路基板13、OSA50、簡易コネクタC、第1保持部材30、第2保持部材40、合波器9及び分波器10を含む中間アセンブリMをハウジング2の外で効率よく組み立てることができる(中間アセンブリを組み立てる工程)。
【0062】
この組み立て方法によれば、内部ファイバFをハウジング2の外で高い自由度で引き回すことができ、内部ファイバFの引き回しがハウジング2に阻害されるのを回避することができる。また、内部ファイバFを引き回しているときに、第1保持部材30及び第2保持部材40それぞれの溝32,33,42,43に内部ファイバFを効率よく配置することができる。
【0063】
更に、溝42、43のそれぞれには複数の突出部46が設けられているので、一旦配置された内部ファイバFの溝42,43からの抜けを抑制できる。また、自重が大きい合波器9及び分波器10を第1保持部材30に仮固定するので、合波器9及び分波器10それぞれに接続された内部ファイバFの根元にかかる応力を緩和することができる。
【0064】
中間アセンブリMを組み立てた後には、
図20に示すように、中間アセンブリMを上ハウジング7に設置する。続いて、
図21に示すように、レセプタクル4を上ハウジング7の前端且つ左右中央に設置する(第7工程)。なお、上ハウジング7の内面には、レセプタクル4の搭載位置を規定する構造を有していない。当該構造は下ハウジング8の内面に有しており、レセプタクル4の位置は下ハウジング8を上ハウジング7に組み付けることによって規定される。
【0065】
下ハウジング8へのレセプタクル4の組み付けでは、下ハウジング8に開けられた孔部にレセプタクル4のスリーブを通す。このとき、レセプタクル4を含むユニット全体を前方に移動させることによって、当該スリーブを下ハウジング8に組み込む。以上の組み込みを行って得られた上ハウジング7、下ハウジング8、合波器9、分波器10、レセプタクル4、第1保持部材30、第2保持部材40、OSA50及び回路基板13を含む部品群はユニット化されており、表裏(上下)の位置を変えても互いの部品の位置関係が維持されるため、取り扱いが容易である。
【0066】
以上、光トランシーバ及びその製造方法の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において種々の変形及び変更が可能であることは、当業者によって容易に認識される。
【0067】
例えば、第1保持部材30及び第2保持部材40の形状は適宜変更可能である。また、第1保持部材30及び第2保持部材40に代えて1つの保持部材を備えてもよい。更に、前述の光トランシーバの組み立ての順序は適宜変更可能である。
図15に示すように各OSA50に簡易コネクタCが取り付けられた状態から、
図22に示すように第1保持部材30及び上ハウジング7の組み立てを行ってもよい。
【0068】
この場合、
図23に示すように、前述した第1〜第4工程を実行して4本の内部ファイバFを溝32,33に配置した後に、4本の内部ファイバFを上ハウジング7の前側で2本ずつ交差させる。そして、4本の内部ファイバFを互いに左右反対側に位置する上ハウジング7の側壁に向けて引き伸ばす。
【0069】
その後、上ハウジング7の左右外側に内部ファイバFを配線し、回路基板13の位置にまで内部ファイバFを展開する。このとき、第1保持部材30の溝33の最も外側に位置する壁部の外側に内部ファイバFを通過させることにより、内部ファイバFの曲げの曲率を規定値以下に抑えている。
【0070】
内部ファイバFを回路基板13上まで引き延ばした後には、
図20に示すように、第2保持部材40を第1保持部材30に組み付ける。以上のように、回路基板13、OSA50、簡易コネクタC、第1保持部材30及び第2保持部材40を上ハウジング7内に搭載した後に、第1保持部材30により合波器9(分波器10)を支持して前述した第5工程を行う。その後は、前述と同様の手順を経ることにより光トランシーバ1の組み立てを完了させることができる。