(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記太陽電池は、前記壁部における前記第1方向に垂直な法線方向を持つ表面のうちの、少なくとも、当該光発電装置の設置場所において南向きになる表面に、取り付けられる、請求項1に記載の光発電装置。
前記蓋部材は、道路又は野外広場における第1方向に凹む溝又は前記第1方向の穴に、前記溝又は前記穴を覆う態様で設けられるグレーチングにより形成される、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の光発電装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0010】
[実施例1]
図1は、実施例1による光発電装置1を概略的に示す斜視図である。
図1には、X,Y,Zの3軸が定義されている。Z軸は、高さ方向(重力方向)に対応し、Z方向(第1方向の一例)のZ1側(第1側の一例)が上側(太陽に近い側)に対応し、Z方向のZ2側(第2側の一例)が下側に対応する。
図2乃至
図4は、光発電装置1の設置状態の例の説明図であり、
図2は、道路4の概略的な平面図であり、
図3は、
図2のラインA−Aに沿った概略的な断面図であり、
図4は、
図2のラインB−Bに沿った概略的な断面図である。
【0011】
光発電装置1は、道路又は野外広場における溝又は穴に設けられる。道路又は野外広場には、排水用の溝又は穴が存在する場合があり、光発電装置1は、かかる溝や穴に設けることができる。
図2乃至
図4に示す例では、道路4の幅方向両側の側溝6(溝の一例)に設けられる光発電装置1と、道路4のマンホール9(穴の一例)に設けられる光発電装置1とが示されている。尚、マンホール9に設けられる光発電装置1は、外形が
図1に示すものと異なるが、光発電装置1の外形は、溝や穴の形状に応じて決まる。尚、
図4に示すように、下水道管8は、マンホール9を介して道路4上に繋がる。
【0012】
光発電装置1は、
図1に示すように、蓋部材10と、太陽電池30とを含む。
【0013】
蓋部材10は、道路又は野外広場における溝又は穴を覆う。蓋部材10は、道路又は野外広場における溝又は穴を覆うことで、溝又は穴に起因した通行人等の危険(足や体の落下等)を防止する蓋機能を有する。蓋部材10は、蓋機能を高めるために、好ましくは、高い剛性を有する。従って、蓋部材10は、好ましくは、金属により形成され、
図1に示すように、金属製の壁部12が井桁状に形成される。
【0014】
蓋部材10は、Z方向でZ1側からZ2側へと貫通する複数の格子穴11(複数の貫通穴の一例)を有する。蓋部材10は、Z方向の複数の格子穴11を有することで、排水機能を有する。即ち、道路上に溜まりうる雨水などの水は、複数の格子穴11を介して、溝又は穴へと落ち、最終的には下水道管等へと流れていく。蓋部材10は、排水機能を高めるために、好ましくは、複数の格子穴11を高い密度で備える。
【0015】
複数の格子穴11のそれぞれは、同じ形状であってよい。複数の格子穴11のそれぞれは、
図1に示すように、Z方向に視て矩形の外形を有する。但し、複数の格子穴11のそれぞれは、Z方向に視て、円形などの他の外形を有してもよい。複数の格子穴11のそれぞれのサイズは、車椅子などの車輪や、靴のかかとなどが嵌らないように設定されてよい。
【0016】
複数の格子穴11は、好ましくは、X方向(第2又は第3方向の一例)かつY方向(第3又は第2方向の一例)に並ぶ態様で、形成される。即ち、複数の格子穴11は、好ましくは、Z方向に視て、マトリックス状に配列される。尚、
図1に示す例では、複数の格子穴11は、X方向に4つ、Y方向に3つの、4×3の配列パターンであるが、配列パターンは任意である。
【0017】
蓋部材10は、複数の格子穴11を形成する壁部12を備える。壁部12は、Z方向に延在し、Z方向に垂直な法線を持つ表面(以下、単に「壁部12の周壁面」と称する)を有する。壁部12の周壁面には、太陽電池30が設けられる。
【0018】
太陽電池30は、太陽光で発電する装置である。太陽電池30のタイプは任意であり、例えば結晶シリコンやアモルファスシリコンを用いるシリコン型や、InGaAs(インジウムガリウムヒ素)等を用いる化合物型等であってよい。太陽電池30は、パネル状の形態を有する。太陽電池30は、例えば、蓋部材10の壁部12の周壁面に下面(受光面とは逆側の面)が接着剤又はねじ止め等により固定される。但し、太陽電池30は、壁部12に埋設されてもよい。太陽電池30は、受光面が格子穴11側になる向きで、下面が壁部12の周壁面に沿うように設けられる。
【0019】
太陽電池30は、複数の格子穴11を塞がない態様で設けられる。「複数の格子穴11を塞がない態様」とは、複数の格子穴11を1つも塞ぐことがない態様を意味する。「格子穴11を塞ぐ」とは、格子穴11の貫通を完全に無くす態様(即ち当該格子穴11を介した排水が不能となる態様)を意味する。実施例1では、
図1に示すように、太陽電池30のそれぞれは、壁部12の周壁面に下面(受光面とは逆側の面)が沿うように設けられるので、複数の格子穴11を塞がない態様が実現されている。
【0020】
太陽電池30は、蓋部材10よりもZ方向でZ1側に延在しない態様で設けられる。これにより、太陽電池30を強化ガラスなどで特別に保護することなく、蓋部材10により太陽電池30を保護できる。尚、
図1に示す例では、太陽電池30は、最も上側の位置が蓋部材10の上面内に位置する態様で設けられるが、最も上側の位置が蓋部材10の上面よりも下方になる態様で設けられてよい。
【0021】
太陽電池30は、一の蓋部材10あたりの発電能力を高めるために、好ましくは、格子穴11のそれぞれに設けられる。これにより、複数の太陽電池30は、全体として、複数の格子穴11に入射する太陽光を受光可能となる。
【0022】
複数の太陽電池30は、個々の発電能力を高めるために、好ましくは、壁部12の周壁面のうちの、光発電装置1の設置場所において南向きになる表面に、設けられる。
図1に示す例では、壁部12の周壁面のうちの、当該光発電装置の設置場所において南向きになる表面は、Y1側である。これにより、複数の太陽電池30の個々の発電能力が高まり、一の蓋部材10あたりの発電能力を効率的に高めることができる。
【0023】
尚、
図1に示す例では、複数の太陽電池30は、壁部12の周壁面のうちの、光発電装置1の設置場所において南向きになる表面だけに設けられるが、これに限られない。例えば、複数の太陽電池30は、壁部12の周壁面のうちの、光発電装置1の設置場所において南向きになる表面に加えて又は代えて、東向きになる表面や、西向きになる表面に設けられてもよい。
【0024】
図5及び
図6は、蓋部材10における太陽電池30の好ましい配置例の説明図である。
【0025】
図5は、光発電装置1の設置場所における太陽の動きを示す図である。
図5では、夏至、秋分(春分)、及び冬至における太陽70の各動きが模式的に示される。
図5に示す設置場所では、日射角度の最大値は78度である。尚、日射角度の最大値は、夏至で真南に太陽70が来たときに実現される。尚、当然ながら、日射角度の最大値は、場所(地域)によって異なるが、例えば東京といった一地域では、略同じであり、厳密な値である必要はない。
【0026】
図6は、南北方向をY方向として配置された光発電装置1の一部の断面(Y方向に沿った断面)を模式的に示す図である。
図6には、太陽70が模式的に併せて示されるとともに、日射の光線72が模式的に併せて示される。
【0027】
図6において、長さLgrは、Y方向での壁部12間のピッチであり、長さTgrは、Z方向の壁部12の長さであり、角度α1は、値Tgr/Lgrのアークタンジェントに対応する角度である。即ち、α1=tan
−1(Tgr/Lgr)。また、角度α2は、日射角度の最大値である。
【0028】
蓋部材10は、好ましくは、角度α1が、日射角度の最大値である角度α2よりも大きくなるように、形成される。即ち、蓋部材10の長さLgr及び長さTgrは、角度α1が、日射角度の最大値である角度α2よりも大きくなるように、設定される。これにより、
図6に模式的に示すように、複数の格子穴11に入射する太陽光を略全て太陽電池30で受光でき(即ち、格子穴11を通過する光線が略無く)、一の蓋部材10あたりの発電能力を効率的に高めることができる。尚、他の季節では、日射角度は小さくなるので、1年を通じて、複数の格子穴11に入射する太陽光を略全て太陽電池30で受光できる。
【0029】
角度α2=78度の場合、蓋部材10の長さLgr及び長さTgrは、例えば角度α1=80度になるように、設定される。
【0030】
尚、角度α2=78度の場合、tan(2π×78/360)=4.70463である。角度α1=80とすると、tan(2π×80/360)=5.67128である。従って、「角度α1が、日射角度の最大値である角度α2よりも大きいこと」は、「角度α1のタンジェントの値が、日射角度の最大値である角度α2のタンジェントの値よりも大きいこと」と等価である。
【0031】
実施例1による光発電装置1によれば、上述したように、太陽電池30は、複数の格子穴11を塞がない態様でかつ複数の格子穴11に入射する太陽光を受光可能な態様で設けられる。これにより、蓋部材10の排水機能を大きく損なうことなく、1つの蓋部材10あたりの発電能力を高めることができる。
【0032】
また、実施例1によれば、上述したように、太陽電池30は、蓋部材10の壁部12に設けられるので、蓋部材10の上面を強化ガラスなどで保護する必要が無い。即ち、太陽電池30は、耐荷重特性の優れた蓋部材10を利用して設けられるので、太陽電池30に対して、耐荷重特性を高めるための特別な構造を付与する必要が無くなり、低コストな実装が可能である。
【0033】
ここで、実施例1による光発電装置1は、
図7に示すようなグレーチング90を用いて実現されてもよい。
図7は、グレーチング90を示す斜視図である。
図7では、グレーチング90は、説明用に、X方向の一部(手前側)についてカットした状態で示される。具体的には、蓋部材10は、グレーチング90により実現されてもよい。グレーチング90により蓋部材10を実現する場合は、既存のグレーチングを用いて光発電装置1を容易に実現できる。
【0034】
尚、グレーチング90は、
図7に示すように、ベアリングバーとも称される複数の板部材(平鋼)92と、ツイストバーとも称される複数のクロスバー94とを含む。板部材92は、幅h1を有してX方向に延在する。板部材92は、Y方向に沿ってピッチP1で複数配置される。板部材92は、Y方向に延在するクロスバー94により結合される。例えば、各板部材92と各クロスバー94とは溶接により結合される。このようなグレーチング90により蓋部材10を実現する場合、格子穴11は、Z方向に視て板部材92とクロスバー94とで囲まれた範囲に画成され、壁部12は、板部材92により実現される。グレーチング90により蓋部材10を実現する場合は、太陽電池30は、板部材92の表面(Z方向に垂直な法線を持つ表面)に設けられる。この際、太陽電池30は、X方向で複数の格子穴11にわたって連続する態様で延在してもよいし、格子穴11ごとに分離する形態であってもよい。グレーチング90の幅h1は、
図6における長さTgrに対応し、グレーチング90のピッチP1は、
図6における長さLgrに対応する。尚、
図7に示す例では、クロスバー94は、ねじり鋼(例えばねじり六角鋼)により形成されているが、Z方向の長さが比較的小さい平鋼が用いられてもよい。
【0035】
[実施例2]
図8は、実施例2による光発電装置1Aを概略的に示す斜視図である。実施例2においては、上述した実施例1における要素と実質的に同一であってよい要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する場合がある。
【0036】
光発電装置1Aは、
図8に示すように、蓋部材10Aと、太陽電池30Aとを含む。
【0037】
蓋部材10Aは、上述した実施例1による蓋部材10に対して、Z方向の長さが短い点が異なり、他の構成は同様であってよい。尚、蓋部材10Aは、上述した実施例1による蓋部材10の壁部12よりもZ方向の長さが短い壁部12Aを備える。また、蓋部材10Aは、上述した実施例1による格子穴11よりもZ方向の長さが短い格子穴11Aを備える。
【0038】
蓋部材10Aの4隅の角部には、支柱18が結合される。支柱18は、例えば蓋部材10Aの下面に結合されてもよい。支柱18は、Z方向に延在し、太陽電池30Aを支持する。尚、支柱18の下端は、例えば側溝6の底部に支持されてもよい。
【0039】
太陽電池30Aは、上述した実施例1による太陽電池30に対して、配置及びサイズが異なる。太陽電池30Aは、
図8に示すように、受光面が上向きになる向きで支柱18により支持され、蓋部材10Aの下方に位置する。太陽電池30Aは、Z方向に視て複数の格子穴11Aに重なる領域に延在する。これにより、太陽電池30Aは、全体として、複数の格子穴11Aに入射する太陽光を受光可能となる。
【0040】
太陽電池30Aは、上述した実施例1と同様、複数の格子穴11Aを塞がない態様かつ蓋部材10AよりもZ方向でZ1側に延在しない態様で、設けられる。実施例2では、
図8に示すように、太陽電池30Aは、複数の格子穴11Aに対してZ方向でZ2側にオフセットする態様で支持されるので、複数の格子穴11Aを塞がない態様かつ蓋部材10AよりもZ方向でZ1側に延在しない態様が実現されている。尚、
図8には、複数の格子穴11Aに対する太陽電池30AのZ方向のオフセット量ΔZが示されている。これにより、蓋部材10の排水機能を大きく損なうことなく、太陽電池30Aを蓋部材10Aに設けることができる。
【0041】
尚、
図8に示す例では、太陽電池30Aは、一の蓋部材10Aに対して1枚のパネル状の形態であるが、一の蓋部材10Aに対して複数に分割して設けられてもよい。例えば、太陽電池30Aは、複数の格子穴11Aのうちの、1つごとに又は所定数ごとに、設けられてもよい。
【0042】
図9は、南北方向をY方向として配置された光発電装置1Aの一部の断面(Y方向に沿った断面)を模式的に示す図である。
図9には、太陽70が模式的に併せて示されるとともに、日射の光線72が模式的に併せて示される。
【0043】
図9において、長さLgr1は、Y方向での壁部12A間のピッチであり、長さTgr1は、Z方向の壁部12Aの長さであり、角度α3は、値Tgr1/Lgr1のアークタンジェントに対応する角度である。即ち、α3=tan
−1(Tgr1/Lgr1)。また、角度α2は、日射角度の最大値である。
【0044】
蓋部材10Aは、好ましくは、角度α3が、可能な限り小さくなるように形成される。即ち、蓋部材10Aの長さLgr1及び長さTgr1は、角度α3が可能な限り小さくなるように形成される。また、太陽電池30Aは、蓋部材10Aからのオフセット量ΔZが0よりも有意に大きい範囲で可能な限り小さくなるように設定される。これにより、
図9に模式的に示すように、複数の格子穴11Aに入射する太陽光を太陽電池30Aで効率的に受光でき、一の蓋部材10Aあたりの発電能力を効率的に高めることができる。
【0045】
尚、
図8及び
図9に示す例では、太陽電池30Aは、XY平面に平行な態様で設けられるが、これに限られない。太陽電池30Aは、受光面が南向きになる方向にXY平面に対して傾斜する態様で、設けられてもよい。
【0046】
実施例2によっても、上述した実施例1と同様の効果を得ることができる。即ち、太陽電池30Aは、複数の格子穴11Aを塞がない態様でかつ複数の格子穴11Aに入射する太陽光を受光可能な態様で、設けられる。これにより、蓋部材10Aの排水機能を大きく損なうことなく、1つの蓋部材10Aあたりの発電能力を高めることができる。
【0047】
尚、実施例2による蓋部材10Aについても、上述した実施例1による蓋部材10と同様に、
図7に示すようなグレーチング90により実現されてもよい。
【0048】
[実施例3]
次に、実施例3として、上述した実施例1による光発電装置1を備える光発電システムの実施例について説明する。
【0049】
図10は、実施例3による光発電システムが組み込まれるシステム全体を概念的に示す図である。
【0050】
図10のシステムは、街路施設60と、光発電システム80とを含み、
街路施設60は、街路灯601に設けられ、蓄電池62や通信装置64を含む。街路灯601に代えて、電柱などが用いられてもよい。街路灯601は、光発電装置1の設置場所に近い街路灯であり、複数の光発電装置1が設置される場合は、一の街路施設60は、複数の光発電装置1と協動して動作してもよい。
【0051】
光発電システム80は、光発電装置1と、情報解析装置82とを含む。
【0052】
図10に示す例では、光発電装置1で生成される電力は、家や、オフィス、ビルなどの蓄電装置52に供給され、家や、オフィス、ビルなどで消費される。また、光発電装置1で生成される電力は、街路施設60の蓄電池62に供給され、街路施設60により消費される。但し、光発電装置1で生成される電力の消費方法は任意である。
【0053】
情報解析装置82は、光発電装置1から発電情報(後述)を取得し、発電情報に基づいて、光発電装置1が設置される場所における移動物体の状況(道路上又は野外広場上の状況の一例)を表す物体情報を生成する。物体情報の生成方法は後述する。情報解析装置82は、物体情報を、近隣の家や、オフィス、ビルなどに送信するとともに、街路施設60の通信装置64に送信する。これにより、近隣の家や、オフィス、ビルなどに居住や滞在等する人は、特定の場所での通行状況を把握できる。また、街路施設60の通信装置64は、例えば電波604を介して、物体情報を所定施設に送信する。所定施設は、サーバを有し、例えば広域にわたる各光発電装置1から物体情報を収集する。所定施設のサーバは、多数の光発電装置1から得られる物体情報に基づいて、広域にわたる通行状況等を監視や解析する。尚、街路施設60は、例えばネットワークを介して、所定施設に接続される。ネットワークは、例えば、無線通信網や、インターネット、World Wide Web、VPN(virtual private network)、WAN(Wide Area Network)、有線ネットワーク、又はこれらの任意の組み合わせ等を含んでもよい。
【0054】
尚、
図10に示す例では、情報解析装置82は、街路灯601に設けられているが、情報解析装置82の位置は任意である。例えば、情報解析装置82は、光発電装置1に組み込まれてもよいし、光発電装置1や街路灯601に分散して設けられる処理装置により実現されてもよい。或いは、情報解析装置82は、所定施設のサーバにより実現されてもよい。この場合、通信装置64は、光発電装置1から発電情報を受信し、受信した発電情報をサーバに送信する機能を有してよい。
【0055】
図11は、情報解析装置82のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0056】
図11に示す例では、情報解析装置82は、制御部101(処理装置の一例)、主記憶部102、補助記憶部103、ドライブ装置104、ネットワークI/F部106、入力部107を含む。
【0057】
制御部101は、主記憶部102や補助記憶部103に記憶されたプログラムを実行する演算装置であり、入力部107や記憶装置からデータを受け取り、演算、加工した上で、記憶装置などに出力する。
【0058】
主記憶部102は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などである。主記憶部102は、制御部101が実行する基本ソフトウェアであるOS(Operating System)やアプリケーションソフトウェアなどのプログラムやデータを記憶又は一時保存する記憶装置である。
【0059】
補助記憶部103は、HDD(Hard Disk Drive)などであり、アプリケーションソフトウェアなどに関連するデータを記憶する記憶装置である。
【0060】
ドライブ装置104は、記録媒体105、例えばフレキシブルディスクからプログラムを読み出し、記憶装置にインストールする。
【0061】
記録媒体105は、所定のプログラムを格納する。この記録媒体105に格納されたプログラムは、ドライブ装置104を介して情報解析装置82にインストールされる。インストールされた所定のプログラムは、情報解析装置82により実行可能となる。
【0062】
ネットワークI/F部106は、有線及び/又は無線回線などのデータ伝送路により構築されたネットワークを介して接続された通信機能を有する周辺機器と情報解析装置82とのインターフェースである。
【0063】
入力部107は、ユーザからの入力を受け付けるタッチパネル等であってよい。
【0064】
尚、
図11に示す例において、以下で説明する各種処理等は、プログラムを情報解析装置82に実行させることで実現することができる。また、プログラムを記録媒体105に記録し、このプログラムが記録された記録媒体105を情報解析装置82に読み取らせて、以下で説明する各種処理等を実現させることも可能である。なお、記録媒体105は、様々なタイプの記録媒体を用いることができる。例えば、記録媒体105は、CD(Compact Disc)−ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の様に情報を光学的,電気的或いは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等であってよい。なお、記録媒体105には、搬送波は含まれない。
【0065】
図12は、情報解析装置82の機能ブロックの一例を示す図である。
【0066】
情報解析装置82は、発電情報取得部820と、物体情報生成部822と、属性判定用情報記憶部830とを含む。発電情報取得部820及び物体情報生成部822は、記憶装置(例えば主記憶部102)に記憶された1つ以上のプログラムを制御部101が実行することで実現できる。属性判定用情報記憶部830は、例えば補助記憶部103により実現できる。
【0067】
図13は、光発電装置1の各太陽電池30の接続態様の一例を示す図である。
図13は、光発電装置1の各太陽電池30の配列パターンと配線を示すための平面図である。
図13では、光発電装置1は、8×6の配列パターンで太陽電池30を備えている。
【0068】
図13では、光発電装置1は、Y方向の位置が同じである8個の太陽電池30(X方向に並ぶ8個の太陽電池30)(第1の太陽電池の一例)を1組として、組ごとに、8個の太陽電池30が直列に電気的に接続されている。Y方向の位置が同じである太陽電池30は、全部で6組(位置Y0〜Y5分の6組)あるので、6本の配線40〜45が示されている。各配線40〜45の一端は、接地され、他端は、PCS(Power Conditioning System)400〜405に電気的に接続される。PCS400〜405には、光発電装置1から電力供給を受ける負荷や系統など(図示せず)が電気的に接続される。PCS400〜405は、例えば、MPPT(Maximum Power Point Tracking)機能に基づいて、気象条件等の変化で常に変動する最適動作点に追従しながら動作する。
【0069】
発電情報取得部820は、各配線40〜45を流れる電流値と、各配線40〜45の両端間での電圧値(起電力)とを、発電情報として取得する。例えば、発電情報取得部820は、各配線40〜45に設けられる電流センサや電圧センサに接続され、電流センサや電圧センサからの情報を発電情報として取得する。
【0070】
物体情報生成部822は、発電情報取得部820が取得した発電情報に基づいて、上述の物体情報(光発電装置1が設置される場所での移動物体の状況を表す情報)を生成する。物体情報は、通行する物体の有無、通行する物体の位置、通行する物体の移動方向、通行する物体の移動速度、通行する物体のサイズ、通行する物体の属性、及び通行量のうちの、いずれか1つ又はいずれか複数の任意の組みわせを表してもよい。通行する物体の属性とは、例えば人、自転車、車などのような属性(種別)である。通行量は、例えば単位時間当たりの、通行した物体の数であってよい。
【0071】
図14は、
図13に示す光発電装置1の各太陽電池30に、人などに起因した影が発生した状態を模式的に示す図である。
図14には、影Sが模式的に示されている。
図15は、
図13に示す光発電装置1の各太陽電池30から得られる発電情報の例を示す図である。
図15には、横軸に、Y方向の位置(各位置Y0〜Y5)を取り、縦軸に発電電力[W]を取り、各PCS400〜405で得られる発電電力の波形(折れ線)C0,C1が示される。尚、各PCS400〜405は、それぞれ、各位置Y0〜Y5に対応する。波形C0は、
図13に示す光発電装置1の各太陽電池30に影が差していないときの波形であり、波形C1は、
図13に示す光発電装置1の各太陽電池30に影が差した状態(
図14)のときのときの波形である。
【0072】
図15に概念的に示すように、光発電装置1に影が差すと、影の領域に位置する太陽電池30の起電力が低下する。
図14に示す例では、影は、位置Y1〜位置Y4の範囲に位置する。従って、この場合、各位置Y0〜Y5での発電電力のうち、位置Y1〜位置Y4の範囲内の発電電力だけが、
図15にて矢印で模式的に示すように、低下する。このように、影の位置がY方向で変化すると、それに伴い各位置Y0〜Y5での発電電力が変化する。これは、各位置Y0〜Y5での発電電力に基づいて、Y方向のどの位置に影が存在するかを検知できることを意味する。
【0073】
従って、物体情報生成部822は、各位置Y0〜Y5での発電電力に基づいて、光発電装置1に影が差しているか否かを判定できる。影が差している場合は、何らかの物体(例えば人や車)が通行している可能性が高いことを意味する。よって、物体情報生成部822は、各位置Y0〜Y5での発電電力に基づいて、光発電装置1に影が差しているか否かを判定することで、通行の有無を判定できる。
【0074】
また、物体情報生成部822は、各位置Y0〜Y5での発電電力に基づいて、Y方向のどの位置に影が差しているかを検知できる。影が差している位置は、Y方向における物体の位置に応じて変化する。従って、物体情報生成部822は、各位置Y0〜Y5での発電電力に基づいて、Y方向における影が差している位置を特定することで、Y方向における物体の位置を算出できる。また、物体情報生成部822は、Y方向における物体の位置の履歴(変化)を監視することで、Y方向における物体の移動の有無や、移動速度、移動方向を導出できる。
【0075】
また、物体情報生成部822は、各位置Y0〜Y5での発電電力に基づいて、Y方向のどの範囲に影が差しているかを検知できる。影が差している範囲は、日射の角度のみならず、物体のサイズ(ひいては属性)にも依存する。例えば、物体が車である場合は、物体が人である場合よりもサイズが大きく、影が差している範囲が大きくなる。従って、物体情報生成部822は、各位置Y0〜Y5での発電電力に基づいて、Y方向における影が差している範囲を特定することで、Y方向における物体のサイズや、該サイズに基づく物体の属性を導出できる(後出の
図23乃至
図28参照)。
【0076】
尚、
図13乃至
図15では、Y方向の位置が同じである複数の太陽電池30(X方向に並ぶ複数の太陽電池30)が直列に電気的に接続された例であるが、X方向とY方向とが逆であってもよい。即ち、X方向の位置が同じである複数の太陽電池30(Y方向に並ぶ複数の太陽電池30)が直列に電気的に接続されてもよい。この場合は、通行の有無のみならず、X方向における物体の位置や、X方向における物体の移動の有無、移動速度、移動方向、X方向における物体のサイズや、該サイズに基づく物体の属性を導出できる(後出の
図23乃至
図28参照)。
【0077】
図16は、光発電装置1の各太陽電池30の接続態様の他の一例を示す図である。
【0078】
図16は、光発電装置1の各太陽電池30の接続態様の一例を示す図である。
図16は、光発電装置1の各太陽電池30の配列パターンと配線を示すための平面図である。
図16では、光発電装置1は、8×6の配列パターンで太陽電池30を備えている。
【0079】
図16では、光発電装置1は、Y方向の位置が同じである8個の太陽電池30(X方向に並ぶ8個の太陽電池30)のうちの、X方向で1つおきの4つを1組として、組ごとに、4つの太陽電池30が直列に電気的に接続されている。Y方向の位置が同じである太陽電池30は、全部で6組(位置Y0〜Y5分の6組)あるので、6本の配線40A〜45Aが示されている。各配線40A〜45Aの一端は、接地され、他端は、PCS(図示せず)に電気的に接続される。以下では、Y方向で同じ位置にありかつ各配線40A〜45Aで接続される太陽電池30を、「X方向に直列接続された太陽電池」(第1又は第2の太陽電池の一例)とも称する。
図16では、符号30−2は、X方向に直列接続された太陽電池の一部を指している。
【0080】
また、
図16では、光発電装置1は、X方向の位置が同じである6個の太陽電池30(Y方向に並ぶ6個の太陽電池30)のうちの、Y方向で1つおきの3つを1組として、組ごとに、3つの太陽電池30が直列に電気的に接続されている。X方向の位置が同じである太陽電池30は、全部で8組(位置X0〜X7分の8組)あるので、8本の配線50A〜57Aが示されている。以下では、X方向で同じ位置にありかつ各配線50A〜57Aで接続される太陽電池30を、「Y方向に直列接続された太陽電池」(第2又は第1の太陽電池の一例)とも称する。
図16では、Y方向に直列接続された太陽電池は、区別のためにハッチングされており、符号30−1は、Y方向に直列接続された太陽電池の一部を指している。なお、各配線50A〜57Aは、Y方向で、X方向に直列接続された太陽電池を1つずつ飛ばす態様で接続される。同様に、配線40A〜45Aは、X方向で、Y方向に直列接続された太陽電池を1つずつ飛ばす態様で接続される。即ち、X方向に直列接続された太陽電池と、Y方向に直列接続された太陽電池とは、X方向及びY方向で交互に配置されている。
【0081】
図16に示す例によれば、上述した原理に基づき、通行の有無のみならず、X方向における物体の位置や、X方向における物体の移動の有無、移動速度、移動方向、X方向における物体のサイズや、該サイズに基づく物体の属性を導出できる。また、X方向に限らず、Y方向における物体の位置や、Y方向における物体の移動の有無、移動速度、移動方向、Y方向における物体のサイズや、該サイズに基づく物体の属性を導出できる(後出の
図23乃至
図28参照)。
【0082】
次に、
図17乃至
図28を参照して、
図16に示すような接続態様で接続された各太陽電池30から得られる発電情報に基づく物体の属性の判断方法の一例について説明する。
【0083】
図17乃至
図19は、人の影の一例の説明図であり、
図20乃至
図22は、車の影の一例の説明図である。
図17、
図18、
図20、
図21には、太陽や、人、車が模式的に示され、
図17及び
図20には、真南から見たときの各影171,172が模式的に示される。また、
図18及び
図21には、真西から見たときの各影171,172が模式的に示され、日射方向で斜めのときに人及び車で遮られる範囲がハッチングされている。
図19及び
図22は、真上から視た各影171,172を模式的に示す図である。
図17乃至
図19では、人のサイズは、一例として、身長が1.8mであり、横幅が0.5mとしている。尚、これらの値はあくまで一例であるが、人の属性(子供、大人、女性、男性など)を判定する場合には、複数の値が使用されてもよい。同様に、
図20乃至
図21では、車のサイズは、高さが1.5mであり、長さが4mであり、幅が1.7mである。尚、これらの値はあくまで一例であるが、車の属性(軽自動車、乗用車、ワンボックス車、スポーツユーティリティビークルなど)を判定する場合には、複数の値が使用されてもよい。
【0084】
また、
図17乃至
図19では、特定の場所(例えば東京)での特定の季節(例えば夏至)かつ特定の時間帯(例えば正午)における影のでき方が示される。
図19及び
図22に示すように、人の影171と車の影172とではサイズが有意に異なることが分かる。また、X方向及びY方向の影のサイズは、場所や、季節、時間帯に依存して変化する。従って、後述のように、属性判定用情報記憶部830には、季節や時間帯に応じた属性判定用情報が記憶される。
【0085】
図23乃至
図28は、
図17乃至
図22で説明した各影に起因して現れる発電情報の特徴の説明図である。尚、
図23乃至
図28では、一例として、光発電装置1は、16×12の配列パターンで太陽電池30を備えているものとする。即ち、
図16に示した接続態様(8×6の配列パターンでの接続態様)を拡張した配列パターンである。
【0086】
図23及び
図26は、横軸に、Y方向の位置(各位置Y0〜Y11)を取り、縦軸に発電電力[W]を取り、各位置Y0〜Y11で得られる発電電力の波形(折れ線)が示される。
図23は、人の影171が差しているときの波形であり、
図26は、車の影172が差しているときの波形である。また、
図24及び
図27は、横軸に、X方向の位置(各位置X0〜X15)を取り、縦軸に発電電力[W]を取り、各位置X0〜X15で得られる発電電力の波形(折れ線)が示される。
図24は、人の影171が差しているときの波形であり、
図27は、車の影172が差しているときの波形である。
図25は、横軸に、X方向の位置(各位置X0〜X15)を取り、縦軸にY方向の位置(各位置Y0〜Y11)を取り、人の影171の位置を示す図である。
図25には、
図23及び
図24の各波形が、人の影171との関係が分かるように併せて示される。同様に、
図28は、横軸に、X方向の位置(各位置X0〜X15)を取り、縦軸にY方向の位置(各位置Y0〜Y11)を取り、車の影172の位置を示す図である。
図28には、
図26及び
図27の各波形が、車の影172との関係が分かるように併せて示される。
【0087】
図23及び
図25に示すように、Y方向の各位置に係る発電電力の波形には、Y方向での人の影171の位置に応じた極小値(極値)が現れる。このとき、基準電力(例えば、影が差していないときの発電電力)に対する発電電力の低下は、極小値を取る位置を中心として、Y方向での人の影171の長さ(本例では、0.4m)に応じた範囲で生じる。以下、このようなY方向での極小値を取る位置を中心とした発電電力の低下領域の幅の半分を、低下幅ΔY(発電情報における特徴の一例)と称する。従って、人の影171の場合は、低下幅ΔYは、Y方向での人の影171の長さが0.4mであるとき、例えば0.1〜0.2mの範囲となることが予測できる。同様に、
図26及び
図28に示すように、Y方向の各位置に係る発電電力の波形には、Y方向での車の影172の位置に応じた極小値が現れる。同様に、このとき、基準電力(例えば、影が差していないときの発電電力)に対する発電電力の低下は、極小値を取る位置を中心として、Y方向での車の影172の長さ(本例では、2m)に応じた範囲で生じる。従って、車の影172の場合は、低下幅ΔYは、Y方向での車の影172の長さが2mであるとき、例えば0.5〜1.0mの範囲となることが予測できる。
【0088】
このようにして、低下幅ΔYを算出することで、影の物体(正体)の属性を判定できることが分かる。例えば、低下幅ΔYに対する基準値として基準低下幅ΔYrefを、判定したい属性ごとに試験等で得られたデータに基づいて導出しておくことで(
図29参照)、低下幅ΔYに基づいて、影の物体(正体)の属性を精度良く判定できることが分かる。
【0089】
同様に、
図24及び
図25に示すように、X方向の各位置に係る発電電力の波形には、X方向での人の影171の位置に応じた極小値が現れる。このとき、基準電力(例えば、影が差していないときの発電電力)に対する発電電力の低下は、極小値を取る位置を中心として、X方向での人の影171の長さ(本例では、0.5m)に応じた範囲で生じる。以下、このようなX方向での極小値を取る位置を中心とした発電電力の低下領域の幅の半分を、低下幅ΔX(発電情報における特徴の一例)と称する。従って、人の影171の場合は、低下幅ΔXは、X方向での人の影171の長さが0.5mであるとき、例えば0.1〜0.3mの範囲となることが予測できる。同様に、
図27及び
図28に示すように、X方向の各位置に係る発電電力の波形には、X方向での車の影172の位置に応じた極小値が現れる。同様に、このとき、基準電力(例えば、影が差していないときの発電電力)に対する発電電力の低下は、極小値を取る位置を中心として、X方向での車の影172の長さ(本例では、4m)に応じた範囲で生じる。従って、車の影172の場合は、低下幅ΔXは、X方向での車の影172の長さが4mであるとき、例えば1.0〜2.0mの範囲となることが予測できる。
【0090】
このようにして、低下幅ΔXを算出することで、影の物体(正体)の属性を判定できることが分かる。例えば、低下幅ΔXに対する基準値として基準低下幅ΔXrefを、判定したい属性ごとに試験等で得られたデータに基づいて導出しておくことで(
図29参照)、低下幅ΔXに基づいて、影の物体(正体)の属性を精度良く判定できることが分かる。
【0091】
図29は、属性判定用情報記憶部830内の属性判定用情報の一例の説明図である。
図29に示す例では、季節ごとかつ時間帯ごとに、属性に応じた基準低下幅ΔXref(ΔX1〜ΔX20等)及びΔYref(ΔY1〜ΔY20等)が対応付けられている。例えば、春分での時間帯“11:00-12:00”では、属性“人”に応じた基準低下幅ΔXrefは、“ΔX9”であり、属性“車”に応じた基準低下幅ΔXrefは、“ΔX10”である。
【0092】
尚、発電電力の低下領域において、発電電力の波形は、
図23、
図24、
図26、及び
図27に示したように、極小値に向けて緩慢に低下する場合もあれば、境界位置でより急激(ステップ状)に低下する場合もありうる。即ち、発電電力の低下領域における発電電力の波形は、日射の強さや太陽電池30の特性など各種の因子によって変動し得る。従って、属性に応じた基準低下幅ΔXref(ΔX1〜ΔX20等)及びΔYref(ΔY1〜ΔY20等)は、試験データ等に基づいて、例えば分散値などを用いて統計的に導出されてよい。この際、季節ごと、時間帯ごと、かつ属性ごとの発電情報(波形データ)を与える機械学習に基づいて、属性に応じた基準低下幅ΔXref(ΔX1〜ΔX20等)及びΔYref(ΔY1〜ΔY20等)が導出されてもよい。
【0093】
尚、
図29に示す例では、時間帯は1時間ごとであるが、時間帯の幅は任意に設定されてよい。季節についても同様である。また、「季節ごと」については、「月ごと」に変更されてもよい。また、
図29に示す例では、判定対象の物体の属性は“人”か“車”であるが、更に人の属性や、車の属性等を含んでもよい。
【0094】
次に、
図30及び
図31を参照して、情報解析装置82の動作例について説明する。
【0095】
図30は、情報解析装置82により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図30に示す処理は、所定周期ごとに実行されてよい。以下の説明において、発電情報に関して、X方向の電力波形とは、
図24や
図27に示したようなX方向の各位置に係る発電電力の波形を意味し、Y方向の電力波形とは、
図23や
図26に示したようなY方向の各位置に係る発電電力の波形を意味する。
【0096】
ステップS300では、情報解析装置82の発電情報取得部820は、光発電装置1から発電情報を取得する。
【0097】
ステップS302では、物体情報生成部822は、ステップS300で得た発電情報に基づいて、X方向の電力波形及びY方向の電力波形のそれぞれに極小値が存在するか否かを判定する。判定結果が“YES”の場合は、ステップS304に進み、それ以外の場合(X方向の電力波形及びY方向の電力波形のそれぞれに極小値が存在しない場合)は、ステップS313に進む。
【0098】
ステップS304では、物体情報生成部822は、物体検出フラグを“1”に設定(又は維持)する。物体検出フラグが“1”であることは、何らかの物体が検出されていることを表す。
【0099】
ステップS305では、物体情報生成部822は、今回周期で検出された物体の位置(X方向の位置及びY方向の位置)を算出する。物体の位置は、例えば、影の位置(X方向での極小値の位置及びY方向での極小値の位置)と、太陽の現在の位置(
図5参照)とに基づいて導出できる。尚、簡易的には、物体情報生成部822は、影の位置(X方向での極小値の位置及びY方向での極小値の位置)を、物体の位置として算出してもよい。この際、前回周期で検出されていた物体の位置については、該物体に係る物体ID(Identification)(ステップS308参照)に対応付ける。
【0100】
ステップS306では、物体情報生成部822は、ステップS302で得られた極小値に係る物体が、今回周期で新たに検出された物体(新しい物体)であるか否かを判定する。例えば、今回周期で物体検出フラグが“0”から“1”に遷移した場合は、ステップS302で得られた極小値に係る物体は、新たな物体である。或いは、検出済みの物体については、その後の動きを追尾することで、新たな物体の有無を判定できる。判定結果が“YES”の場合は、ステップS308に進み、それ以外の場合は、ステップS312に進む。
【0101】
ステップS308では、物体情報生成部822は、今回周期で新たに検出された物体に対して、新たな物体IDを付与し、物体IDに、ステップS305で得た今回周期で検出された物体の位置を対応付ける。
【0102】
ステップS310では、物体情報生成部822は、今回周期で新たに検出された物体の属性を判定すべく、属性判定処理を実行する。属性判定処理は、
図31を参照して後述する。ステップS310が終了すると、ステップS316に進む。
【0103】
ステップS312では、物体情報生成部822は、同一の物体IDに係る物体の位置(X方向の位置及びY方向の位置)の履歴に基づいて、物体の移動態様(移動の有無、移動速度、移動方向等)を算出する。物体情報生成部822は、算出した物体の移動態様を、物体IDに対応付ける。ステップS312が終了すると、ステップS316に進む。
【0104】
ステップS313では、物体情報生成部822は、今回周期で得られたX方向の電力電力波形に基づいて、X方向の基準電力を設定(更新)するとともに、今回周期で得られたY方向の電力電力波形に基づいて、Y方向の基準電力を設定(更新)する。
【0105】
ステップS314では、物体情報生成部822は、物体検出フラグを“0”にリセット又は維持する。ステップS314が終了すると、ステップS316に進む。
【0106】
ステップS316では、物体情報生成部822は、現在の物体検出フラグの状態と、後述の属性フラグの状態と、物体IDに対応付けられた情報(物体の位置など)とに基づいて、物体情報を生成する。例えば、物体検出フラグが“0”のときは、物体情報生成部822は、“物体が通行していない”ことを表す物体情報を生成してもよい。また、物体検出フラグが“1”のときは、物体情報生成部822は、“物体が通行している”ことを表す物体情報を生成してもよい。この際、物体情報生成部822は、後述の属性フラグの状態に応じて、物体の属性を更に表す物体情報を生成する。また、物体情報生成部822は、物体IDごとに、物体の位置や移動態様を更に表す物体情報を生成する。また、この際、物体情報生成部822は、所定時間当たりの通行量(属性別であってもよい)を更に表す物体情報を生成してもよい。
【0107】
図31は、
図30のステップS308の属性判定処理の一例を示すフローチャートである。
【0108】
ステップS380では、物体情報生成部822は、今回周期で得られたX方向の電力波形に基づいて、X方向の電力波形の極小値の位置を中心とした低下幅ΔXを算出する。例えば、物体情報生成部822は、X方向の基準電力の現在値(ステップS313参照)よりも低い発電電力の領域のうちの、極小値の位置を中心とした両側の各範囲の長さの平均又はいずれか一方を、低下幅ΔXとして算出する。
【0109】
ステップS382では、物体情報生成部822は、今回周期で得られたY方向の電力波形に基づいて、Y方向の電力波形の極小値の位置を中心とした低下幅ΔYを算出する。例えば、物体情報生成部822は、Y方向の基準電力の現在値(ステップS313参照)よりも低い発電電力の領域のうちの、極小値の位置を中心とした両側の各範囲の長さの平均又はいずれか一方を、低下幅ΔYとして算出する。
【0110】
ステップS384では、物体情報生成部822は、属性判定用情報記憶部830内の属性判定用情報(
図29参照)から、現在の日時に応じた各属性の基準低下幅ΔXref及び基準低下幅ΔYrefを抽出する。
【0111】
ステップS386では、物体情報生成部822は、ステップS380及びステップS382で得た低下幅ΔX及び低下幅ΔYと、ステップS384で得た各属性の基準低下幅ΔXref及び基準低下幅ΔYrefとを比較する。具体的には、物体情報生成部822は、ステップS380及びステップS382で得た低下幅ΔX及び低下幅ΔYにそれぞれに対応する基準低下幅ΔXref及び基準低下幅ΔYrefが対応付けられた属性があるか否かを判定する。低下幅ΔXに対応する基準低下幅ΔXrefとは、例えば低下幅ΔXと基準低下幅ΔXrefとの差分が所定値以下である態様であってよい。同様に、低下幅ΔYに対応する基準低下幅ΔYrefとは、例えば低下幅ΔYと基準低下幅ΔYrefとの差分が所定値以下である態様であってよい。判定結果が“YES”の場合は、ステップS388に進み、それ以外の場合は、ステップS390に進む。
【0112】
ステップS388では、物体情報生成部822は、今回周期で新たに検出された物体に係る物体IDに、低下幅ΔX及び低下幅ΔYに対応した基準低下幅ΔXref及び基準低下幅ΔYrefに係る属性を表す属性フラグを対応付ける。即ち、物体情報生成部822は、今回周期で新たに検出された物体に係る物体IDに、属性の判定結果を表す属性フラグを対応付ける。例えば、ステップS386において、低下幅ΔX及び低下幅ΔYが、属性“人”に係る基準低下幅ΔXref及び基準低下幅ΔYrefに対応した場合、物体情報生成部822は、新たな物体に係る物体IDに属性“人”を表す属性フラグを対応付ける。
【0113】
ステップS390では、物体情報生成部822は、今回周期で新たに検出された物体に係る物体IDに、属性が判定できなかったこと(属性が不明であること)を表す情報を対応付ける。尚、この場合、次の周期以降で得られる新たな発電情報に基づいて、再度、属性判定処理が実行されてもよい。
【0114】
このようにして、
図30及び
図31に示す処理によれば、リアルタイムに得られる発電情報に基づいて物体情報を生成できる。また、属性判定用情報記憶部830内の属性判定用情報を用いた属性判定処理が実行されるので、物体の属性を精度良く判定できる。これにより、物体情報の信頼性(精度)を高めることができる。
【0115】
尚、
図30及び
図31に示す処理は、リアルタイムに実行されるが、これに限られない。例えば所定時間分又は所定日数分お発電情報が一括的に(オフラインで)処理されてもよい。
【0116】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0117】
例えば、上述した実施例3による光発電システム80では、光発電装置1の各太陽電池30を一のユニットとして、各ユニットが所定の態様で接続されることで(
図13や
図16参照)、物体情報の生成が可能となっているが、これに限られない。例えば、光発電装置1自体を一のユニットとして、各ユニットを同様の所定の態様で接続することで、物体情報の生成を可能としてもよい。即ち、
図13や
図16において、各太陽電池30が各光発電装置1で置換される態様である。この場合も、物体の位置の算出精度(分解能)は低下するものの、物体情報の生成が依然として可能である。また、この変形例の場合、実施例1による光発電装置1に代えて、実施例2による光発電装置1Aが用いられてもよい。
【0118】
また、上述した実施例3による光発電システム80では、実施例1による光発電装置1が用いられるが、実施例2による光発電装置1Aが用いられてもよい。この場合、光発電装置1Aにおける太陽電池30Aは、一の蓋部材10Aに対して複数に分割して設けられる。例えば、
図13に示すような接続態様を実現する場合は、太陽電池30Aは、Y方向において6個に分離した形態で設けられる。
【0119】
また、上述した実施例1(実施例2や実施例3も同様)では、蓋部材10は、Z方向に視て、X方向の壁部12及びY方向の壁部12が交差する態様で設けられるが、これに限られない。蓋部材10は、X方向の壁部12及びY方向の壁部12のいずれか一方が省略されてもよい。
【0120】
また、
図29に示す例では、属性判定用情報記憶部830内の属性判定用情報は、場所に依存しない情報であるが、属性判定用情報記憶部830内には、場所ごとの各属性判定用情報が記憶されてもよい。この場合、情報解析装置82は、光発電装置1の設置場所に対応した属性判定用情報を用いて、物体の属性を導出すればよい。
【0121】
また、上述した実施例3においては、人口知能を利用して、発電情報を入力して物体情報を出力(生成)することも可能である。人口知能の場合は、機械学習により得られる畳み込みニューラルネットワークを実装することで実現できる。機械学習では、例えば、発電情報に係る実績データを用いて、物体情報に係る誤差が最小になるような畳み込みニューラルネットワークの重み等が学習される。
【0122】
また、上述した実施例1(実施例2や実施例3も同様)では、蓋部材10は、複数の格子穴11の全てに対して太陽電池30が設けられるが、これに限られない。例えば、複数の格子穴11のうちの、2つ以上の格子穴11に対してのみ太陽電池30が設けられてもよい。この場合、複数の格子穴11のうちの、太陽電池30が設けられる2つ以上の格子穴11が、「複数の貫通穴」の一例となる。
【0123】
なお、以上の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
[付記1]
第1方向で第1側から第2側へと貫通する複数の貫通穴を有する蓋部材と、
前記蓋部材に、前記複数の貫通穴を塞がない態様かつ前記第1方向で前記蓋部材よりも前記第1側に延在しない態様で設けられ、前記複数の貫通穴に入射する太陽光を受光可能な太陽電池とを含む、光発電装置。
[付記2]
前記蓋部材は、前記第1方向に延在しかつ前記複数の貫通穴を形成する壁部を備え、
前記太陽電池は、前記壁部に設けられる、付記1に記載の光発電装置。
[付記3]
前記太陽電池は、前記壁部における前記第1方向に垂直な法線方向を持つ表面のうちの、少なくとも、当該光発電装置の設置場所において南向きになる表面に、取り付けられる、付記2に記載の光発電装置。
[付記4]
前記壁部は、一定のピッチで配置される複数の板部材により形成され、
前記第1方向での前記板部材の長さを前記ピッチで除算して得られる値のアークタンジェントに対応する角度は、当該光発電装置の設置場所における日射角度の最大値よりも大きい、付記2又は3に記載の光発電装置。
[付記5]
前記太陽電池は、前記第1方向に視て前記複数の貫通穴に重なる領域に延在しかつ前記複数の貫通穴に対して前記第1方向にオフセットする態様で、支持される、付記1に記載の光発電装置。
[付記6]
前記太陽電池は、受光面が水平面に対して南向きに傾斜する態様で、支持される、付記5に記載の光発電装置。
[付記7]
前記複数の貫通穴は、前記第1方向に垂直な第2方向に並び、かつ、前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向に並ぶ態様で、形成される、付記1〜6のうちのいずれか1項に記載の光発電装置。
[付記8]
前記蓋部材は、道路又は野外広場における第1方向に凹む溝又は前記第1方向の穴に、前記溝又は前記穴を覆う態様で設けられるグレーチングにより形成される、付記1〜7のうちのいずれか1項に記載の光発電装置。
[付記9]
第1方向で第1側から第2側へと貫通する複数の貫通穴を有する蓋部材と、
前記蓋部材に、前記複数の貫通穴を塞がない態様かつ前記第1方向で前記蓋部材よりも前記第1側に延在しない態様で設けられ、前記複数の貫通穴に入射する太陽光を受光可能な太陽電池と、
前記複数の太陽電池から得られる発電情報に基づいて、前記蓋部材の設置場所における移動物体の状況を表す物体情報を生成する処理装置とを含む、光発電システム。
[付記10]
前記複数の太陽電池は、前記第1方向に垂直な第2方向で異なる位置に設けられる複数の第1の太陽電池を含み、
前記処理装置は、複数の前記第1の太陽電池のそれぞれから得られる発電情報に基づいて、前記第2方向の前記移動物体の位置に関する前記物体情報を生成する、付記9に記載の光発電システム。
[付記11]
複数の前記第1の太陽電池は、一の前記蓋部材における前記第2方向に並ぶ異なる前記貫通穴に設けられ、又は、前記第2方向に並ぶ異なる前記蓋部材に設けられる、付記10に記載の光発電システム。
[付記12]
前記複数の太陽電池は、前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向で異なる位置に設けられかつ前記第1の太陽電池とは異なる複数の第2の太陽電池を更に含み、
前記処理装置は、複数の前記第2の太陽電池のそれぞれから得られる発電情報に基づいて、前記第3方向の前記移動物体の位置に関する前記物体情報を生成する、付記10又は11に記載の光発電システム。
[付記13]
複数の前記第2の太陽電池は、一の前記蓋部材における前記第3方向に並ぶ異なる前記貫通穴に設けられ、又は、前記第3方向に並ぶ異なる前記蓋部材に設けられる、付記12に記載の光発電システム。
[付記14]
前記処理装置は、複数の前記第1の太陽電池のそれぞれから得られる発電情報と、複数の前記第2の太陽電池のそれぞれから得られる発電情報とに基づいて、更に前記移動物体の属性に関する前記物体情報を生成する、付記12又は13に記載の光発電システム。
[付記15]
季節別又は月別に前記発電情報における特徴と物体の属性とが対応付けられた属性判定用情報を記憶する属性判定用情報記憶部を更に含み、
前記処理装置は、現在の季節又は月に対応する前記属性判定用情報に基づいて、前記移動物体の属性を判定する、付記14に記載の光発電システム。
[付記16]
前記属性判定用情報は、更に時間帯別に前記発電情報における特徴と物体の属性とが対応付けられており、
前記処理装置は、現在の季節又は月かつ時間帯に対応する前記属性判定用情報に基づいて、前記移動物体の属性を判定する、付記15に記載の光発電システム。
[付記17]
前記属性判定用情報は、更に場所別に前記発電情報における特徴と物体の属性とが対応付けられており、
前記処理装置は、前記複数の太陽電池の設置場所、現在の季節又は月かつ時間帯に対応する前記属性判定用情報に基づいて、前記移動物体の属性を判定する、付記16に記載の光発電システム。
[付記18]
前記発電情報における特徴は、前記複数の太陽電池のうちの、発電電力が最も低くなる太陽電池の位置と、発電電力が所定の基準値よりも低くなる太陽電池の位置とに基づいて、導出される、付記15〜17のうちのいずれか1項に記載の光発電システム。
[付記19]
前記蓋部材は、道路又は野外広場における第1方向に凹む溝又は前記第1方向の穴に、前記溝又は前記穴を覆う態様で設けられるグレーチングにより形成される、付記9に記載の光発電システム。