特許第6859800号(P6859800)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6859800炭化珪素単結晶製造装置およびそれを用いた炭化珪素単結晶の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859800
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】炭化珪素単結晶製造装置およびそれを用いた炭化珪素単結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20210405BHJP
   C30B 23/08 20060101ALI20210405BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20210405BHJP
   F27B 14/04 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   C30B29/36 A
   C30B23/08 Z
   C23C14/06 E
   F27B14/04
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-65593(P2017-65593)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-168010(P2018-168010A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鷹羽 秀隆
(72)【発明者】
【氏名】藤川 陽平
【審査官】 神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−076990(JP,A)
【文献】 特開2016−034880(JP,A)
【文献】 特開2012−171832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/36
C23C 14/06
C30B 23/08
F27B 14/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側が開口させられていると共に、前記一面と反対側となる他面側が底部とされ、円筒状の外周壁を有すると共に、内部が中空部とされた有底円筒状部材で構成される容器本体(1a)と、前記容器本体における前記一面を閉塞する蓋材(1b)と、を有する坩堝(1)と、
前記外周壁を加熱することで前記坩堝の加熱を行う加熱装置(5)と、を備え、
前記容器本体内に炭化珪素原料(4)を充填すると共に、前記蓋材に対して種結晶となる炭化珪素単結晶基板(2)を配置し、前記加熱装置によって前記坩堝を加熱して前記炭化珪素原料を昇華させることで前記炭化珪素単結晶基板の表面に炭化珪素単結晶(3)を成長させる炭化珪素単結晶製造装置であって、
前記坩堝は、前記容器本体における前記底部の上に配置され、該底部の少なくとも中央部を覆うと共に、前記容器本体から取り外し可能に構成された下敷部材(1c)を有しており、
前記容器本体における前記底部には凹部(1d)が形成されており、該凹部内に前記下敷部材が嵌め込まれていて、前記下敷部材の上面が前記容器本体における前記底部のうち前記凹部以外の部分の上面の高さと同じもしくは当該高さよりも低くされている炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項2】
前記下敷部材には、該下敷部材の中央位置に窪み部(1e)が形成されており、該窪み部において、前記下敷部材の上面が前記容器本体における前記底部のうち前記凹部以外の部分の上面の高さよりも低くされている請求項に記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項3】
前記下敷部材には、該下敷部材から上方に伸ばされた棒状部材(1f)が備えられている請求項1または2に記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項4】
一面側が開口させられていると共に、前記一面と反対側となる他面側が底部とされ、円筒状の外周壁を有すると共に、内部が中空部とされた有底円筒状部材で構成される容器本体(1a)と、前記容器本体における前記一面を閉塞する蓋材(1b)と、を有する坩堝(1)と、
前記外周壁を加熱することで前記坩堝の加熱を行う加熱装置(5)と、を備え、
前記容器本体内に炭化珪素原料(4)を充填すると共に、前記蓋材に対して種結晶となる炭化珪素単結晶基板(2)を配置し、前記加熱装置によって前記坩堝を加熱して前記炭化珪素原料を昇華させることで前記炭化珪素単結晶基板の表面に炭化珪素単結晶(3)を成長させる炭化珪素単結晶製造装置であって、
前記坩堝は、前記容器本体における前記底部の上に配置され、該底部の少なくとも中央部を覆うと共に、前記容器本体から取り外し可能に構成された下敷部材(1c)を有しており、
前記下敷部材には、該下敷部材から上方に伸ばされた棒状部材(1f)が備えられている炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項5】
前記容器本体における前記底部のうち前記下敷部材が配置される部分の一部に開口部(1g)が形成されている請求項1ないしのいずれか1つに記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項6】
一面側が開口させられていると共に、前記一面と反対側となる他面側が底部とされ、円筒状の外周壁を有すると共に、内部が中空部とされた有底円筒状部材で構成される容器本体(1a)と、前記容器本体における前記一面を閉塞する蓋材(1b)と、を有する坩堝(1)と、
前記外周壁を加熱することで前記坩堝の加熱を行う加熱装置(5)と、を備え、
前記容器本体内に炭化珪素原料(4)を充填すると共に、前記蓋材に対して種結晶となる炭化珪素単結晶基板(2)を配置し、前記加熱装置によって前記坩堝を加熱して前記炭化珪素原料を昇華させることで前記炭化珪素単結晶基板の表面に炭化珪素単結晶(3)を成長させる炭化珪素単結晶製造装置であって、
前記坩堝は、前記容器本体における前記底部の上に配置され、該底部の少なくとも中央部を覆うと共に、前記容器本体から取り外し可能に構成された下敷部材(1c)を有しており、
記容器本体における前記底部のうち前記下敷部材が配置される部分の一部に開口部(1g)が形成されている炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項7】
前記下敷部材は円盤状で構成されており、
前記炭化珪素原料は粉末状にした炭化珪素であって、
前記下敷部材の径をD1、前記容器本体の内径をD2、前記炭化珪素原料の粒径をD3とすると、D1<D2−D3×2が成り立つ寸法関係とされている請求項1ないし6のいずれか1つに記載の炭化珪素単結晶製造装置。
【請求項8】
一面側が開口させられていると共に、前記一面と反対側となる他面側が底部とされ、円筒状の外周壁を有すると共に、内部が中空部とされた有底円筒状部材で構成される容器本体(1a)と、前記容器本体における前記一面を閉塞する蓋材(1b)と、を有する坩堝(1)と、
前記外周壁を加熱することで前記坩堝の加熱を行う加熱装置(5)と、を備えた炭化珪素単結晶製造装置を用いて、
前記容器本体内に炭化珪素原料(4)を充填すると共に、前記蓋材に対して種結晶となる炭化珪素単結晶基板(2)を配置し、前記加熱装置によって前記坩堝を加熱して前記炭化珪素原料を昇華させることで前記炭化珪素単結晶基板の表面に炭化珪素単結晶(3)を成長させる炭化珪素単結晶の製造方法であって、
前記容器本体における前記底部の上に、該底部の少なくとも中央部を覆うと共に、前記容器本体から取り外し可能に構成された下敷部材(1c)を配置することと、
前記下敷部材を配置したのちに、前記容器本体における前記底部および前記下敷部材の上に前記炭化珪素原料を充填することと、
前記加熱装置にて前記坩堝の加熱を行うことで前記炭化珪素原料を昇華させ、前記炭化珪素単結晶基板の表面に前記炭化珪素単結晶を成長させることと、
前記炭化珪素単結晶の成長後に、前記炭化珪素単結晶および前記蓋材を前記容器本体から取り外し、さらに、前記炭化珪素原料の残渣を除去すると共に、前記炭化珪素単結晶の成長時に前記下敷部材の上に再結晶化した炭化珪素(6)と一緒に前記下敷部材を前記容器本体から除去することと、を含み、
前記炭化珪素単結晶を成長させることにおいては、前記容器本体における前記底部の中央部において、前記下敷部材の上に前記炭化珪素を選択的に再結晶化させる炭化珪素単結晶の製造方法。
【請求項9】
前記下敷部材を前記容器本体から除去することにおいては、前記炭化珪素原料の残渣の除去を同時に行う請求項に記載の炭化珪素単結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素(以下、SiCという)単結晶製造装置およびそれを用いたSiC単結晶の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、SiC単結晶を種結晶上に成長させるSiC単結晶の製造方法として、例えば昇華再結晶法によるSiC単結晶の結晶成長が知られている。昇華再結晶法では、有底筒状の容器本体と蓋部とを有する黒鉛製の坩堝内に昇華用のSiC原料を配置し、加熱装置による加熱によって発生させたSiC原料の昇華ガスを蓋部に配置した種結晶に供給することで、種結晶の表面にSiC単結晶を成長させる。
【0003】
このような昇華再結晶法においては、坩堝の外周側に配置した誘導加熱コイルによって坩堝の外周壁を加熱することなどでSiC原料を加熱していることから、坩堝の底部の中央部近辺で比較的温度が低くなり、SiCが再結晶化され易くなる。近年では、坩堝の再利用が望まれているが、底部に再結晶化したSiCを除去することが難しく、無理に除去しようとすると坩堝が割れてしまう。このため、坩堝の再利用が困難となる。
【0004】
このため、そこでSiCの再結晶化を抑制する手段として、特許文献1において、坩堝の底部に、底部からの放熱を抑制する断熱層を備える構造が提案されている。断熱層としては、例えば、複数の孔が形成された多孔質のカーボンまたはカーボンフェルトを用いており、断熱層の熱伝導率が0.06W/m・k以下と低熱伝導率とされている。このような断熱層を坩堝の底部に配置するとことで、坩堝の底部の低温化が抑制されるため、SiCの再結晶化が抑制される。
【0005】
また、坩堝の底部を電気伝導率の高い材料で構成してより加熱されやすくなるようにしたり、坩堝の外周壁を底部よりも下方まで伸ばしてより誘導加熱される部分が広くなるようにする技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−76990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、SiC単結晶の大口径化に伴って坩堝の大型化が進み、特許文献1のように断熱層を坩堝の底部に配置してもSiCの再結晶化を防ぐことは難しい。また、坩堝の底部を電気伝導率の高い材料で構成する場合や坩堝の外周壁を底部よりも下方まで伸ばす構造についても、特許文献1の構造と同様の問題がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、底部においてSiCが再結晶化したとしても、再利用することが容易になるSiC単結晶製造装置およびそれを用いたSiC単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のSiC単結晶製造装置は、一面側が開口させられていると共に、一面と反対側となる他面側が底部とされ、円筒状の外周壁を有すると共に、内部が中空部とされた有底円筒状部材で構成される容器本体(1a)と、容器本体における一面を閉塞する蓋材(1b)と、を有する坩堝(1)と、外周壁を加熱することで坩堝の加熱を行う加熱装置(5)と、を備え、容器本体内に炭化珪素原料(4)を充填すると共に、蓋材に対して種結晶となる炭化珪素単結晶基板(2)を配置し、加熱装置によって坩堝を加熱して炭化珪素原料を昇華させることで炭化珪素単結晶基板の表面に炭化珪素単結晶(3)を成長させる。このような構成において、坩堝に、容器本体における底部の上に配置され、該底部の少なくとも中央部を覆うと共に、容器本体から取り外し可能に構成された下敷部材(1c)を有しており、容器本体における底部には凹部(1d)が形成されており、該凹部内に下敷部材が嵌め込まれていて、下敷部材の上面が容器本体における底部のうち凹部以外の部分の上面の高さと同じもしくは当該高さよりも低くされている
【0010】
このように、容器本体の底部に下敷部材を配置した構造とされている。このため、再結晶化したSiCを除去する際に下敷部材と共に除去することで、坩堝のうち下敷部材以外の部分を再利用することができる。したがって、坩堝の底部においてSiCが再結晶化したとしても、再利用することが容易になるSiC単結晶製造装置とすることができる。
【0011】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態にかかるSiC単結晶製造装置の断面図である。
図2】第2実施形態にかかるSiC単結晶製造装置の断面図である。
図3】第3実施形態にかかるSiC単結晶製造装置の断面図である。
図4】第4実施形態にかかるSiC単結晶製造装置の断面図である。
図5】第5実施形態にかかるSiC単結晶製造装置の断面図である。
図6】第6実施形態にかかるSiC単結晶製造装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかるSiC単結晶成長装置およびそれを用いたSiC単結晶の製造方法について、図1を参照して説明する。
【0015】
図1に示すSiC単結晶製造装置は、昇華再結晶法によるSiC単結晶成長を実現する装置である。このSiC単結晶製造装置には、容器本体1aと円形状の蓋材1bおよび下敷部材1cによって構成された黒鉛製の坩堝1が備えられている。
【0016】
容器本体1aは、一面側が開口させられていると共に、一面と反対側となる他面側が底部とされ、円筒状の外周壁を有すると共に、内部が中空部とされた有底円筒状部材で構成されている。容器本体1aは、黒鉛製とされており、熱伝達率が50〜150W/m・kとなっている。
【0017】
蓋材1bは、容器本体1aにおける開口する一面側を閉塞する部材であり、円盤状とされ、容器本体1aと同じ材質の黒鉛によって構成されることで、容器本体1aと同じ熱伝達率とされている。この蓋材1bの裏面の中央部に、図示しない接着剤等を介して種結晶となるSiC単結晶基板2が接合され、このSiC単結晶基板2に対してSiC単結晶3が成長させられる。なお、蓋材1bを単なる円盤状の部材によって構成してもよいが、SiC単結晶基板2が配置される中央部分を下方に突き出させることで台座を構成していても良い。
【0018】
下敷部材1cは、円盤状部材とされており、容器本体1aの底部に配置され、少なくとも底部の中央部を覆うように配置されている。下敷部材1cの構成材料は、熱伝達率が容器本体1aの熱伝達率と同じもしくはそれより高い材質の黒鉛によって構成されている。
下敷部材1cは、容器本体1aの底部上に置かれているだけであり、容器本体1aに対して接着剤などを介して固定されてはいない状態となっていて、容器本体1aから取り外し可能な構成とされている。
【0019】
このように構成された坩堝1における容器本体1aの中空部内、より詳しくは容器本体1aの底部および下敷部材1cの上にSiC原料4が充填されている。SiC原料4としては、粉末状にしたSiCが用いられている。
【0020】
そして、坩堝1の外周には誘導加熱コイルなどによって構成される加熱装置5が配置されており、加熱装置5による誘導加熱によって主に坩堝1における容器本体1aの外周壁を加熱し、SiC原料4を加熱昇華させられる。なお、図1では、加熱装置5を坩堝1のうちSiC原料4と対応する位置にのみ備えた構成としたが、SiC単結晶3の成長空間と対応する位置にも備えるようにしても良い。このような構成とする場合、加熱装置5の各部は独立して加熱温度を調整できる構成とされ、SiC原料4よりもSiC単結晶3の成長表面の温度が所定温度低くなるように制御可能とされる。
【0021】
ここで、坩堝1を構成する各部の寸法については任意であるが、粉末状のSiC原料4の最大粒径よりも容器本体1aの側壁面から下敷部材1cまでの距離が大きくなるようにしている。具体的には、下敷部材1cの径をD1、容器本体1aの内径をD2、SiC原料4の最大粒径をD3とすると、D1<D2−D3×2の関係が成り立つ寸法関係としている。下敷部材1cの径D1の下限値については、容器本体1aの内径D2の値に応じて決まる値であり、内径D2が大きくなるほど、径D1の下限値も大きくなる。すなわち、下敷部材1cは、少なくともSiC6が再結晶化して析出する領域を覆うように形成されていれば良く、SiC6が再結晶化して析出する領域は、加熱装置5のパワーを一定と想定した場合、容器本体1aの該壁面からの距離によって決まる。このため、下敷部材1cの径D1については、内径D2が大きくなるほど大きくする。
【0022】
一方、下敷部材1cの径D1については、容器本体1aから容易に取り外せるように、容器本体1aの内径D2よりも小さい方が好ましい。しかしながら、径D1と内径D2との差が小さい場合、つまり容器本体1aと下敷部材1cとの間の隙間が狭いと、その間にSiC原料4の残渣が噛みこんでしまい、下敷部材1cを容器本体1aから取り外し難くなる。このため、D1<D2−D3×2の関係を満たすようにするのが好ましい。
【0023】
なお、図示しないが、坩堝1は、石英容器などの真空容器内に収容され、回転装置の上に載置される。そして、真空容器内にAr等の不活性ガスや水素ガス等を導入しながら、回転装置にて坩堝1を回転させ、加熱装置5にて坩堝1を誘導加熱することで、SiC単結晶3の結晶成長が行われるようになっている。
【0024】
以上のようにして、本実施形態にかかるSiC単結晶製造装置が構成されている。続いて、このように構成されるSiC単結晶製造装置を用いたSiC単結晶3の製造方法について説明する。
【0025】
まず、容器本体1aの底部に下敷部材1cを配置したのちに、容器本体1aの底部および下敷部材1cの上にSiC原料4を充填する。また、蓋材1bの裏面側に種結晶となるSiC単結晶基板2を貼り付けたのち、蓋材1bを容器本体1aに設置する。そして、図示しない真空容器内に成長雰囲気の不活性ガス等を導入すると共に、必要に応じてドーパント源となるガス、例えば窒素源となる窒素ガスを導入する。この状態で加熱装置5のパワーを制御することにより、SiC原料4の近傍の温度がSiC原料4の昇華温度以上となり、かつ、種結晶となるSiC単結晶基板2の近傍の温度がそれよりも10℃〜200℃程度低温となるようにする加熱工程を行う。また、回転装置によって坩堝1を回転させることで、加熱ムラを抑制して、坩堝1の中心軸に対して均等な温度分布となるようにする。このような条件により、例えば窒素がドープされたSiC単結晶3を成長させる。そして、SiC単結晶3を成長させた後には、坩堝1と共にSiC単結晶3を冷却する工程を行った後、蓋材1bおよびSiC単結晶3の取り外し工程を行ったり、SiC原料4の残渣を除去する工程を行い、坩堝1を再利用可能な状態とする。
【0026】
このとき、SiC単結晶3の成長中、つまり加熱工程中に、加熱装置5からの距離が離れている容器本体1aの底部の中央部近辺において、外周壁側よりも温度が低くなる。これにより、SiC原料4の一部がSiC6が再結晶化する。しかしながら、容器本体1aの底部の上に下敷部材1cを配置していることから、下敷部材1cの上にSiC6を再結晶化させる工程とすることが可能となる。
【0027】
このように、下敷部材1cの上にSiC6を選択的に再結晶化させることが可能となる。したがって、SiC原料4の残渣を除去する工程の際に同時に、もしくはその後に、下敷部材1cと一緒に再結晶化されたSiC6を除去する工程を行うことで、容易にSiC6を除去することが可能となる。そして、新しい下敷部材1cを容器本体1aの底部に配置すれば、容器本体1aおよび蓋材1bについてはそのまま利用できるため、坩堝1の再利用が可能となる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態にかかるSiC単結晶製造装置は、容器本体1aの底部に下敷部材1cを配置した構造とされている。このため、再結晶化したSiC6を除去する際に下敷部材1cと共に除去することで、坩堝1のうち下敷部材1c以外の部分を再利用することができる。したがって、坩堝1の底部においてSiCが再結晶化したとしても、再利用することが容易になるSiC単結晶製造装置とすることができる。
【0029】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して容器本体1aの構造を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0030】
図2に示すように、本実施形態では、容器本体1aの底部に凹部1dを形成してあり、この凹部1d内に下敷部材1cを嵌め込んでいる。具体的には、凹部1dは、下敷部材1cと対応する形状および寸法で形成されている。このため、凹部1d内に下敷部材1cが嵌め込まれたときに、下敷部材1cの端面と凹部1dの側面とが対向、好ましくは当接した状態となり、容器本体1aの底部のうち凹部1d以外の部分の上面と下敷部材1cの上面とがほぼ面一となる。
【0031】
このように、下敷部材1cを嵌め込む凹部1dを容器本体1aの底部に形成するようにしても良い。このような構造としても、第1実施形態と同様の効果を得ることができると共に、下敷部材1cの端面にSiC原料4の残渣が付き難くなり、より容器本体1aの底部の中央近辺に選択的にSiC6が再結晶化され易くなるようにできる。
【0032】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に対して容器本体1aの構造を変更したものであり、その他については第2実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0033】
図3に示すように、本実施形態では、容器本体1aの底部に凹部1dが形成してこの凹部1d内に下敷部材1cが嵌め込まれるようにしつつ、容器本体1aの底部のうち凹部1d以外の部分の上面が下敷部材1cの上面よりも高くに位置するようにしている。つまり、凹部1dの深さを下敷部材1cの厚みよりも大きくしている。
【0034】
このような構造としても、第2実施形態と同様の効果を得ることができると共に、容器本体1aの底部のうち凹部1d以外の部分の上面よりも下敷部材1cの上面の方が高さが
低くなることから、下敷部材1cがより低温化され易くなる。このため、さらに容器本体1aの底部の中央近辺に選択的にSiC6が再結晶化され易くなるようにできる。
【0035】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第2、第3実施形態に対して下敷部材1cの構造を変更したものであり、その他については第2、第3実施形態と同様であるため、第2、第3実施形態と異なる部分について主に説明する。なお、ここでは第2実施形態の構成に対して本実施形態の構造を適用する場合を例に挙げて説明するが、第3実施形態の構造に対しても適用できる。
【0036】
図4に示すように、本実施形態では、下敷部材1cのうちの中央位置、つまり容器本体1aの底部の中央位置と対応する部分に、窪み部1eを形成している。つまり、下敷部材1cの中央位置が容器本体1aの底部のうち凹部1d以外の部分の上面よりも低くなるようにしている。
【0037】
このような構造としても、第2、第3実施形態と同様の効果を得ることができると共に、容器本体1aの底部のうち凹部1d以外の部分の上面よりも窪み部1eの上面の方が高
さが低くなることから、窪み部1eにおいて下敷部材1cがより低温化され易くなる。このため、さらに容器本体1aの底部の中央近辺に選択的にSiC6が再結晶化され易くなるようにできる。
【0038】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態は、第1〜第4実施形態に対して下敷部材1cに取り外し機構を備えたものであり、その他については第1〜第4実施形態と同様であるため、第1〜第4実施形態と異なる部分について主に説明する。なお、ここでは第1実施形態の構成に対して本実施形態の構造を適用する場合を例に挙げて説明するが、第2〜第4実施形態の構造に対しても適用できる。
【0039】
図5に示すように、本実施形態では、下敷部材1cのうちの中央位置に、蓋材1b側、つまり上方に伸びる棒状部材1fを取り付けてある。棒状部材1fは、下敷部材1cと同じ材料で構成されている。棒状部材1fの高さは、好ましくはSiC原料4の充填高さよりも高く、かつ、SiC単結晶3の成長に影響を与えない高さに設定されている。
【0040】
このように、下敷部材1cに対して棒状部材1fを取り付けることにより、SiC単結晶3を製造した後に、棒状部材1fを取り外し機構として利用して下敷部材1cを取り外すことが可能となる。これにより、第1〜第4実施形態と同様の効果を得ることができると共に、下敷部材1cの取り外しを容易にすることが可能となる。
【0041】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。本実施形態は、第1〜第5実施形態に対して下敷部材1cの取り外し機構を備えたものであり、その他については第1〜第5実施形態と同様であるため、第1〜第5実施形態と異なる部分について主に説明する。なお、ここでは第1実施形態の構成に対して本実施形態の構造を適用する場合を例に挙げて説明するが、第2〜第5実施形態の構造に対しても適用できる。
【0042】
図6に示すように、本実施形態では、容器本体1aの底部の中央部に開口部1gを形成してある。このような開口部1gを取り外し機構として利用し、開口部1gを通じて下敷部材1cを押し出すことで、下敷部材1cの取り外しが容易に行えるようにできる。
【0043】
このように、容器本体1aの底部に開口部1gを形成することで、SiC単結晶3を製造した後に、開口部1gを取り外し機構として利用して下敷部材1cを取り外すことが可能となる。これにより、第1〜第5実施形態と同様の効果を得ることができると共に、下敷部材1cの取り外しを容易にすることが可能となる。
【0044】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0045】
例えば、上記各実施形態では、坩堝1の構造の一例を示したが、上記各実施形態で示した構造は坩堝1の主要構造を示したに過ぎず、他の構造とされていても良い。例えば、容器本体1aが複数に分割された構造であったり、蓋材1bにSiC単結晶3の成長方向に伸びるガイド壁が備えられた構造などであっても構わない。また、下敷部材1cの形状についても円盤状に限らず、他の形状、例えば多角形板状などであっても良い。
【0046】
また、第5実施形態で説明した棒状部材1fについては下敷部材1cの中央位置に形成しており、第6実施形態で説明した開口部1gについても容器本体1aの底部の中央位置に形成している。しかしながら、これも一例を示したに過ぎず、他の場所に形成してあっても良い。ただし、加熱時の温度分布の対称性を考慮すると、第5、第6実施形態のような場所に棒状部材1fや開口部1gが形成されていることが好ましい。
【0047】
また、坩堝1について黒鉛製としているが、他の材料で構成しても良いし、すべてが黒鉛製である必要はない。例えば、部分的に高融点金属などでコーティングされたものであっても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 坩堝
1a 容器本体
1b 蓋材
1c 下敷部材
1d 凹部
1e 窪み部
2 SiC単結晶基板
3 SiC単結晶
4 SiC原料
5 加熱装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6