(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
<<防カビ積層フィルム>>
本発明の防カビ積層フィルムは、防カビ樹脂フィルムと、第1樹脂層と、第2樹脂層と、を備えた防カビ積層フィルムであって、前記防カビ樹脂フィルムは、前記第1樹脂層と、前記第2樹脂層と、の間に配置され、前記防カビ樹脂フィルムは、下記一般式(1)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(1)」と称することがある)又はその塩を有効成分とする防カビ剤と、樹脂と、を含み、前記防カビ積層フィルムは、平均直径が8000μm以下の貫通孔を有し、かつ40℃、90%RHの雰囲気下における水蒸気透過量が5g/m
2・day以上のものである。
【0017】
【化3】
(式中、Xは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり;Rは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり;mは1〜3の整数であり、mが2以上である場合、複数個のXは互いに同一でも異なっていてもよく;nは0〜5の整数であり、ただしm+nは6以下であり、nが2以上である場合、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0018】
本発明の防カビ積層フィルムは、前記防カビ樹脂フィルムを用いていることで、優れた防カビ性を有し、目的物を収容して保存するための、後述する防カビ包装体の製造に好適である。このような防カビ包装体は、前記貫通孔を有していることで、収容空間内の酸素濃度を適切な範囲に調節できるため、青果物等の非加熱処理食品の鮮度を保持できる。また、このような防カビ包装体は、前記貫通孔を有していることで、さらに収容空間内の水分量を調節でき、加えて前記防カビ樹脂フィルムを備えていることにより、収容物と、これを収容するための収容空間内において、カビの発生を抑制する効果に優れる。
なお、本明細書において、「カビの発生」とは、対象物において、カビが目視確認できない状態から、目視確認できる程度にまで増殖することを意味する。
【0019】
まず、本発明の防カビ積層フィルムの全体構成について説明する。
図1は、本発明の防カビ積層フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0020】
ここに示す防カビ積層フィルム1は、防カビ樹脂フィルム12と、第1樹脂層11と、第2樹脂層13と、を備え、防カビ樹脂フィルム12が、第1樹脂層11と、第2樹脂層13と、の間に配置されて、概略構成されている。すなわち、防カビ積層フィルム1は、第1樹脂層11、防カビ樹脂フィルム12及び第2樹脂層13がこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、第1樹脂層11の露出面が一方の表面となり、第2樹脂層13の露出面が他方の表面となるように構成されている。
【0021】
第1樹脂層11は、防カビ積層フィルム1を用いて目的物を保存するときに、防カビ樹脂フィルム12よりもこの保存対象物側に配置される層である。例えば、防カビ積層フィルム1を用いて作製された袋状等の包装体においては、第1樹脂層11が防カビ樹脂フィルム12よりも、この包装体の収容空間側に配置される。
したがって、例えば、第1樹脂層11が防カビ積層フィルム1の一方の最も外側の層となる場合には、第1樹脂層11は保存対象物と接触する層となる。
このように、第1樹脂層11は、防カビ樹脂フィルム12の保存対象物との接触を防止し、これにより、保存対象物への防カビ剤の過剰な移行を抑制する。
【0022】
第2樹脂層13は、防カビ積層フィルム1を用いて目的物を保存するときに、防カビ樹脂フィルム12よりも、この保存対象物側とは反対側に配置される層である。例えば、防カビ積層フィルム1を用いて作製された袋状等の包装体においては、防カビ樹脂フィルム12が第2樹脂層13よりも、この包装体の収容空間側に配置される。
第2樹脂層13は、防カビ樹脂フィルム12を保護する機能を有する。
【0023】
防カビ積層フィルム1は、その一方の表面(本明細書においては、「第1面」と略記することがある)1aから、その他方の表面(本明細書においては、「第2面」と略記することがある)1bまで貫通する貫通孔14を有している。防カビ積層フィルム1の第1面1aは、換言すると、第2樹脂層13の防カビ樹脂フィルム12を備えている側とは反対側の表面(本明細書においては、「第1面」と略記することがある)13aである。防カビ積層フィルム1の第2面1bは、換言すると、第1樹脂層11の防カビ樹脂フィルム12を備えている側とは反対側の表面(本明細書においては、「第2面」と略記することがある)11bである。
防カビ積層フィルム1おいて、貫通孔14は、第2樹脂層13、防カビ樹脂フィルム12及び第1樹脂層11を連続して貫いて、形成されている。
次に、本発明の防カビ積層フィルムとその構成要素について、詳細に説明する。
【0024】
<第1樹脂層>
前記第1樹脂層の構成材料は、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセンLLDPE)等が挙げられる。
また、第1樹脂層の構成材料としては、これら以外の合成樹脂も挙げられる。
【0025】
第1樹脂層の構成材料は、1種のみでよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0026】
第1樹脂層は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含むことが好ましく、第1樹脂層の直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、例えば、99質量%以上であってもよいし、100質量%であってもよい。
【0027】
第1樹脂層の、25℃、65%RH(相対湿度)の雰囲気下における酸素ガス透過量は、3000cm
3/m
2・atm・day以上であることが好ましく、3000〜10000cm
3/m
2・atm・dayであることがより好ましく、3000〜8000cm
3/m
2・atm・dayであることがさらに好ましく、3000〜6000cm
3/m
2・atm・dayであることが特に好ましい。第1樹脂層の前記酸素ガス透過量が前記下限値以上であることで、防カビ樹脂フィルムの内部から第1樹脂層側へ移行した防カビ剤が、第1樹脂層を介してその外部(防カビ積層フィルムの第1樹脂層側の外部)へ容易に移行する。これにより、防カビ積層フィルムは、優れた防カビ効果を発現する。
なお、前記防カビ剤については、後ほど詳細に説明する。
【0028】
第1樹脂層の前記酸素ガス透過量は、例えば、第1樹脂層の構成材料の種類又は厚さ等を調節することにより、調節できる。
【0029】
第1樹脂層は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。第1樹脂層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0030】
なお、本明細書においては、第1樹脂層の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0031】
第1樹脂層の厚さは、特に限定されないが、5〜200μmであることが好ましく、10〜150μmであることがより好ましく、15〜100μmであることが特に好ましい。第1樹脂層の厚さが前記下限値以上であることで、第1樹脂層の強度がより向上するとともに、保存対象物への防カビ剤の過剰な移行がより抑制される。また、第1樹脂層の厚さが前記上限値以下であることで、防カビ積層フィルムの防カビ効果がより向上する。
第1樹脂層が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい第1樹脂層の厚さとなるようにするとよい。
【0032】
<第2樹脂層>
前記第2樹脂層の構成材料は、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル;ナイロン;ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
また、第2樹脂層の構成材料としては、これら以外の合成樹脂も挙げられる。
【0033】
第2樹脂層の構成材料は、1種のみでよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0034】
第2樹脂層は、ポリエステル、ナイロン及びポリプロピレンからなる群より選択される1種又は2種以上を含むことが好ましく、第2樹脂層のポリエステル、ナイロン及びポリプロピレンの合計含有量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、例えば、99質量%以上であってもよいし、100質量%であってもよい。
【0035】
第2樹脂層の、25℃、65%RH(相対湿度)の雰囲気下における酸素ガス透過量は、3000cm
3/m
2・atm・day以下であることが好ましく、2500cm
3/m
2・atm・day以下であることがより好ましく、2000cm
3/m
2・atm・day以下であることが特に好ましい。
第2樹脂層の前記酸素ガス透過量の上限値が小さいほど、防カビ剤について、防カビ樹脂フィルムの内部から第2樹脂層への移行と、第2樹脂層を介したその外部(防カビ積層フィルムの第2樹脂層側の外部)への移行とが、効果的に抑制される。したがって、防カビ樹脂フィルムの内部から保存対象物側へ移行する防カビ剤の量を、長期間、適切な水準で維持できるため、防カビ積層フィルムは、より優れた防カビ効果を発現する。また、例えば、防カビ積層フィルムを用いて作製された袋状の包装体に目的物を収容して、封止した場合には、この包装体の外部への防カビ剤の移行が抑制され、目的物の保存時に、防カビ剤の使用を全く又はほとんど想起させず、官能上好ましい。
さらに、第2樹脂層の前記酸素ガス透過量の上限値が小さいほど、第2樹脂層を介したその外部(防カビ積層フィルムの第2樹脂層側の外部)から内部への、酸素ガスの移行が効果的に抑制される。したがって、品質を劣化させずに目的物を保存できる効果がより高くなる。
【0036】
一方、第2樹脂層の、25℃、65%RH(相対湿度)の雰囲気下における酸素ガス透過量の下限値は、特に限定されず、例えば、50cm
3/m
2・atm・day、500cm
3/m
2・atm・day、及び1000cm
3/m
2・atm・dayのいずれかとすることができるが、これらは一例である。
【0037】
第2樹脂層の前記酸素ガス透過量は、例えば、第2樹脂層の構成材料の種類又は厚さ等を調節することにより、調節できる。
【0038】
第1樹脂層及び第2樹脂層の前記酸素ガス透過量は、いずれもJIS K7126Bに準拠して測定された値である。
【0039】
第2樹脂層は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。第2樹脂層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0040】
第2樹脂層の厚さは、特に限定されないが、2〜100μmであることが好ましく、5〜70μmであることがより好ましく、8〜40μmであることが特に好ましい。第2樹脂層の厚さが前記下限値以上であることで、第2樹脂層の強度がより向上するとともに、第2樹脂層の前記酸素ガス透過量を小さくした場合と同様の効果がより顕著に得られる。また、第2樹脂層の厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが避けられる。
第2樹脂層が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい第2樹脂層の厚さとなるようにするとよい。
【0041】
<防カビ樹脂フィルム>
前記防カビ樹脂フィルムは、前記化合物(1)又はその塩を有効成分とする防カビ剤と、樹脂と、を含む。化合物(1)及びその塩については、後ほど詳細に説明する。
防カビ樹脂フィルムは、前記防カビ剤を含んでいることにより、優れた防カビ性を有する。
【0042】
防カビ樹脂フィルムにおいては、含まれている化合物(1)又はその塩が、防カビ樹脂フィルムの内部から外部に徐々に移行することで、防カビ性を発現する。
例えば、化合物(1)又はその塩として、揮発性を有するものを用いた場合には、この成分は、防カビ樹脂フィルムの外部へ、気体状となって移行可能である。
【0043】
防カビ樹脂フィルムは、前記防カビ剤、前記樹脂等の、防カビ樹脂フィルムを構成するための成分を含有する樹脂組成物を用いて製造できる。より具体的には、前記樹脂組成物を、防カビ樹脂フィルムの形成対象面に塗工し、必要に応じて乾燥させることで、防カビ樹脂フィルムが得られる。
後述するような複数層からなる防カビ樹脂フィルムは、例えば、1層(単層)の防カビ樹脂フィルムを複数枚作製し、これらを貼り合わせることで、製造できる。
【0044】
前記樹脂組成物は、例えば、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター、マルチコーター等の各種コーターを用いて、塗工できる。
【0045】
[樹脂]
前記樹脂は、前記防カビ樹脂フィルムにおいて、フィルムの形状を維持するために必要な成分である。前記樹脂は、このような機能を有するものであれば、特に限定されず、接着性樹脂(本明細書においては「接着剤」と称することがある)及び非接着性樹脂のいずれであってもよいが、接着性樹脂であることが好ましい。前記樹脂として、接着性樹脂(接着剤)を用いることで、防カビ樹脂フィルムを、接着性を有するもの(すなわち、接着性防カビ樹脂フィルム)とすることができ、例えば、別途接着剤層を設けることなく、後述する防カビ積層フィルムを構成できる。
【0046】
好ましい前記接着性樹脂としては、例えば、ポリウレタン等のウレタン系接着剤(ウレタン結合を有する接着性樹脂);アクリル共重合樹脂等のアクリル系接着剤((メタ)アクリロイル基を有する接着性樹脂);チタネート系接着剤(チタン酸エステルを用いて得られた接着性樹脂);イミン系接着剤(エチレンイミンを用いて得られた接着性樹脂);スチレン・ブタジエン共重合体等のブタジエン系接着剤(モノマー成分としてブタジエンを用いて得られた接着性樹脂);ポリ酢酸ビニル等のポリエステル系接着剤(エステル結合を有する接着性樹脂);イソブテン・無水マレイン酸共重合樹脂等のオレフィン系接着剤(モノマー成分としてオレフィンを用いて得られた接着性樹脂)等が挙げられる。
【0047】
前記防カビ樹脂フィルムにおいて、前記樹脂は1種のみでよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、前記樹脂として、接着性を有しない非接着性樹脂のみを1種又は2種以上用いてもよいし、接着性樹脂のみを1種又は2種以上用いてもよいし、非接着性樹脂及び接着性樹脂を、それぞれ1種又は2種以上用いてもよい。
【0048】
前記防カビ樹脂フィルムは、前記樹脂として、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、チタネート系接着剤、イミン系接着剤、ブタジエン系接着剤、ポリエステル系接着剤及びオレフィン系接着剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含み、接着性を有するものが好ましい。
【0049】
[その他の成分]
前記防カビ樹脂フィルム及び樹脂組成物は、前記防カビ剤及び前記樹脂以外に、その他の成分を含んでいてもよい。
防カビ樹脂フィルム及び樹脂組成物における前記その他の成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、任意に選択できる。
防カビ樹脂フィルム及び樹脂組成物において、前記その他の成分は1種のみでよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0050】
前記防カビ樹脂フィルム及び樹脂組成物における前記その他の成分としては、例えば、硬化剤、架橋剤等が挙げられる。これらは前記樹脂に対して作用するものである。
【0051】
前記樹脂組成物は、必要に応じて前記硬化剤及び架橋剤のいずれにも該当しないその他の成分を含んでいてもよく、この場合の好ましいその他の成分としては、溶媒が挙げられる。
【0052】
前記溶媒は、前記樹脂組成物の取り扱い性を良好にするためのものであり、その種類は本発明の効果を損なわない範囲内において特に限定されない。
好ましい前記溶媒としては、例えば、有機溶媒、水が挙げられる。
【0053】
前記有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル(カルボン酸エステル);メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール等のアルコール;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0054】
前記防カビ樹脂フィルム及び樹脂組成物において、前記溶媒は1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。例えば、2種以上の溶媒を併用する場合、有機溶媒のみを2種以上併用して、有機溶媒のみの混合溶媒を用いてもよいし、1種又は2種以上の有機溶媒と水とを併用して、水性混合溶媒を用いてもよい。
【0055】
防カビ樹脂フィルムの防カビ剤の含有量は、0.02〜2g/m
2であることが好ましく、0.02〜1.75g/m
2であることがより好ましく、0.03〜1.5g/m
2であることが特に好ましい。防カビ剤の含有量が前記下限値以上であることで、防カビ積層フィルムの防カビ効果がより高くなる。また、防カビ剤の含有量が前記上限値以下であることで、防カビ剤の過剰使用が抑制される。
【0056】
防カビ樹脂フィルムの化合物(1)及びその塩の合計含有量(換言すると、前記樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計含有量に対する、化合物(1)及びその塩の合計含有量の割合)は、10〜44質量%であることが好ましく、14〜40質量%であることがより好ましく、18〜36質量%であることが特に好ましい。化合物(1)及びその塩の合計含有量が前記下限値以上であることで、防カビ積層フィルムの防カビ効果がより高くなる。また、化合物(1)及びその塩の合計含有量が前記上限値以下であることで、防カビ樹脂フィルムにおいて、化合物(1)及びその塩が高い均一性でより安定して保持される。
【0057】
防カビ樹脂フィルムの前記樹脂の含有量(換言すると、前記樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計含有量に対する、前記樹脂の含有量の割合)は、30〜90質量%であることが好ましく、40〜75質量%であることがより好ましく、50〜65質量%であることが特に好ましい。前記樹脂の含有量が前記下限値以上であることで、防カビ樹脂フィルムの強度がより向上する。また、前記樹脂の含有量が前記上限値以下であることで、防カビ樹脂フィルムの防カビ効果がより向上する。
【0058】
前記防カビ樹脂フィルムの前記その他の成分の含有量(換言すると、前記樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計含有量に対する、前記その他の成分の含有量の割合)は、前記その他の成分の種類に応じて、適宜選択すればよく、特に限定されない。
【0059】
例えば、前記その他の成分が前記硬化剤又は架橋剤である場合、防カビ樹脂フィルム及び前記樹脂組成物において、前記樹脂の含有量に対する、前記その他の成分の含有量の割合は、10〜40質量%であることが好ましく、20〜30質量%であることがより好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、その他の成分を用いたことによる効果がより顕著に得られ、前記割合が前記上限値以下であることで、その他の成分の過剰使用が抑制される。
【0060】
前記樹脂組成物が溶媒を含有する場合の溶媒の含有量は、10〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。溶媒の含有量が前記下限値以上であることで、溶媒を用いたことによる効果がより顕著に得られ、溶媒の含有量が前記上限値以下であることで、溶媒の過剰使用が抑制される。
【0061】
前記防カビ樹脂フィルムの、前記溶媒、硬化剤及び架橋剤のいずれにも該当しない、その他の成分の含有量は、例えば、0〜10質量%とすることができる。
【0062】
前記防カビ樹脂フィルムは1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。防カビ樹脂フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0063】
前記防カビ樹脂フィルムの厚さは、用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
防カビ樹脂フィルムを用いて、例えば、袋状等の包装体を作製する場合には、防カビ樹脂フィルムの厚さは、0.1〜15μmであることが好ましく、0.2〜12μmであることがより好ましく、0.3〜10μmであることが特に好ましく、例えば、0.3〜7.5μm等であってもよい。
防カビ樹脂フィルムが複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい防カビ樹脂フィルムの厚さとなるようにするとよい。
【0064】
本発明の防カビ積層フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、第1樹脂層、防カビ樹脂フィルム及び第2樹脂層以外に、さらにその他の層を備えていてもよい。
前記その他の層は特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0065】
ただし、本発明の防カビ積層フィルムは、第1樹脂層、防カビ樹脂フィルム及び第2樹脂層が、この順に互いに直接接触して積層されているものが好ましい。このように、第1樹脂層と防カビ樹脂フィルムとの間、防カビ樹脂フィルムと第2樹脂層との間に、いずれも前記その他の層を備えていないことにより、本発明の防カビ積層フィルムは、防カビ効果にさらに優れたものとなる。
【0066】
また、本発明の防カビ積層フィルムは、第1樹脂層の防カビ樹脂フィルムを備えている側とは反対側には、前記その他の層を備えていないことが好ましい。このように、第1樹脂層が防カビ積層フィルムの一方の最も外側の層となっていることにより、本発明の防カビ積層フィルムは、防カビ効果にさらに優れたものとなる。
本発明の防カビ積層フィルムが、前記その他の層を備えている場合、その他の層を、第2樹脂層の防カビ樹脂フィルムを備えている側とは反対側に備えていることが好ましい。
【0067】
本発明の防カビ積層フィルムは、上述のような積層構造を有するのに加え、平均直径(平均径)が8000μm以下の貫通孔(例えば、
図1に示す防カビ積層フィルム1における貫通孔14)を有する。
【0068】
防カビ積層フィルムの表面における前記貫通孔の開口部の形状、及び前記貫通孔の、その長手方向に対して垂直な断面における開口部の形状は、特に限定されず、例えば、円形状;楕円形状;三角形状、四角形状等の多角形状;円形、楕円形及び多角形からなる群より選択される2種以上の形が組み合わされた形状等、いずれであってもよい。ただし、貫通孔の形成が容易である点から、前記形状は、円形状であることが好ましい。
なお、本明細書において、「貫通孔の開口部」とは、特に断りのない限り、上述の防カビ積層フィルムの表面における貫通孔の開口部と、貫通孔の、その長手方向に対して垂直な断面における開口部と、の両方を意味するものとする。
【0069】
貫通孔の前記開口部の形状が、円形状以外である場合、貫通孔の直径は、前記開口部の異なる2点間を結ぶ線分の長さのうち、最大の長さ(最大径)を意味するものとする。
【0070】
前記貫通孔の平均直径は、50〜8000μmであることが好ましく、60〜7500μmであることがより好ましく、70〜7000μmであることが特に好ましい。貫通孔の平均直径がこのような範囲であることで、防カビ積層フィルムを用いて作製された包装体の収容空間内において、収容物(非加熱処理食品)を保存するときに、酸素、二酸化炭素及び水蒸気の濃度を、より適した範囲にバランスよく調節できる。さらに、貫通孔の平均直径が前記下限値以上であることで、防カビ積層フィルムの製造がより容易となる。
【0071】
防カビ積層フィルムが有する前記貫通孔の数は、特に限定されないが、40〜400個/m
2であることが好ましく、50〜360個/m
2であることがより好ましく、60〜320個/m
2であることがさらに好ましく、60〜280個/m
2であることが特に好ましい。貫通孔の数がこのような範囲であることで、防カビ積層フィルムを用いて作製された包装体の収容空間内において、収容物(非加熱処理食品)を保存するときに、酸素、二酸化炭素及び水蒸気の濃度を、より適した範囲にバランスよく調節できる。
【0072】
防カビ積層フィルムが有する前記貫通孔の数、すなわち、防カビ積層フィルムの単位面積(1m
2)あたりの貫通孔の数は、防カビ積層フィルムの面積と、防カビ積層フィルム1枚あたりの貫通孔の数と、のいずれか一方又は両方を調節することで、調節できる。
【0073】
防カビ積層フィルムの面積は、防カビ積層フィルムの用途に応じて適宜調節すればよく、特に限定されないが、例えば、0.01〜1.5m
2であることが好ましく、0.015〜1.2m
2であることがより好ましく、0.02〜1m
2であることが特に好ましく、例えば、0.02〜0.5m
2、0.02〜0.3m
2、及び0.02〜0.1m
2等のいずれかであってもよい。
【0074】
防カビ積層フィルム1枚あたりの貫通孔の数は、1個以上であればよく、1個でもよいし、2個以上でもよく、防カビ積層フィルムの面積や用途に応じて適宜調節すればよい。防カビ積層フィルム1枚あたりの貫通孔の数は、例えば、1〜30個であることが好ましく、1〜25個であることがより好ましく、1〜20個であることが特に好ましい。
【0075】
防カビ積層フィルムにおける貫通孔の位置は、特に限定されないが、後述する防カビ包装体の製造時における接着領域以外の領域であることが好ましい。このようにすることで、防カビ積層フィルムにおける貫通孔を、防カビ包装体においてもすべて有効に機能させることができる。
【0076】
防カビ積層フィルムの、40℃、90%RHの雰囲気下における水蒸気透過量は、5g/m
2・day以上であり、7g/m
2・day以上であることが好ましく、8g/m
2・day以上であることがより好ましく、10g/m
2・day以上であることが特に好ましい。防カビ積層フィルムの前記水蒸気透過量が前記下限値以上であることで、防カビ積層フィルムを用いて作製された包装体の収容空間内において、収容物でのカビの発生が顕著に抑制される。
【0077】
防カビ積層フィルムの、40℃、90%RHの雰囲気下における水蒸気透過量の上限値は、特に限定されない。ただし、防カビ積層フィルムを用いて作製された包装体の収容空間内において、収容物(非加熱処理食品、特に青果物)の乾燥及び萎れの抑制効果がより高くなる点では、防カビ積層フィルムの前記水蒸気透過量は、50g/m
2・day以下であることが好ましい
防カビ積層フィルムの前記水蒸気透過量は、上述のいずれかの下限値と上限値とが適宜任意に組み合わされて設定された範囲内であることが好ましい。
【0078】
防カビ積層フィルムの前記水蒸気透過量は、例えば、前記貫通孔の大きさ若しくは数、又は防カビ積層フィルムを構成する各層の構成材料の種類若しくは厚さ等を調節することにより、調節できる。
【0079】
防カビ積層フィルムの前記水蒸気透過量は、JIS K 7129Bに準拠して、測定できる。
【0080】
防カビ積層フィルムの、20℃、80%RHの雰囲気下における酸素透過量は、特に限定されないが、2.0×10
8cc/m
2・day以下であることが好ましく、1.5×10
8cc/m
2・day以下であることがより好ましく、1.0×10
8cc/m
2・day以下であることが特に好ましい。防カビ積層フィルムの前記酸素透過量が前記上限値以下であることで、防カビ積層フィルムを用いて作製された包装体の収容空間内において、収容物(非加熱処理食品)を、より好ましい品質で保存できる。特に、非加熱処理食品が青果物である場合、保存中の青果物は呼吸を行うが、収容空間内における酸素濃度の上昇を抑制することで、青果物の呼吸を抑制し、青果物の消耗を抑制して、青果物をより高い鮮度で保存できる。
【0081】
防カビ積層フィルムの、20℃、80%RHの雰囲気下における酸素透過量の下限値は、特に限定されない。ただし、収容物(非加熱処理食品、特に青果物)が、前記包装体の収容空間内において、酸欠となるのを抑制するという点では、防カビ積層フィルムの前記酸素透過量は、30g/m
2・day以上であることが好ましい
防カビ積層フィルムの前記酸素透過量は、上述のいずれかの下限値と上限値とが適宜任意に組み合わされて設定された範囲内であることが好ましい。
【0082】
防カビ積層フィルムの前記酸素透過量は、例えば、前記貫通孔の大きさ若しくは数、又は防カビ積層フィルムを構成する各層の構成材料の種類若しくは厚さ等を調節することにより、調節できる。
【0083】
防カビ積層フィルムの前記酸素透過量は、例えば、以下の方法で測定できる。
すなわち、大気下において、防カビ積層フィルムを用いて包装体を作製し、密封した後、包装体の収容空間内の雰囲気を、純度99.9%以上のV(cc)の窒素ガスで置換し、窒素ガスでの置換完了時からの経過時間をt(hr)とし、このときの袋の内部の酸素濃度をC
t(%)として、t=0(すなわち、窒素ガスでの置換完了時)の場合のC
0を測定し、C
0を測定後、この包装体を、20℃、80%RHの条件下で保管し、t≧3の段階でC
tを測定して、下記式(i)により、酸素透過量F(cc/m
2・day)を算出する。
密封した後の包装体の収容空間内の雰囲気は、例えば、注射針を用いることで、純度99.9%以上の窒素ガスで置換できる。また、C
tは、あらかじめ検量線を作成しておき、この検量線を使用して求める。
F=1.143×(C
t−C
0)×V/t ・・・・(i)
【0084】
<<貫通孔を有する防カビ樹脂フィルム>>
前記防カビ積層フィルムにおいて、これを構成する各層(第1樹脂層、防カビ樹脂フィルム、第2樹脂層、及び必要に応じて備える前記その他の層)はいずれも、隣接する層との間で連続して形成されている貫通孔を有している。これらのうち、貫通孔を有する防カビ樹脂フィルムは、新規のものであり、これ単独で、前記防カビ積層フィルム以外の用途でも、有用となり得る。
すなわち、このような貫通孔を有する防カビ樹脂フィルムで好ましいものとしては、例えば、前記防カビ剤と、樹脂と、を含む防カビ樹脂フィルムであって、前記防カビ樹脂フィルムは、平均直径が8000μm以下の貫通孔を、40〜400個/m
2の数で有するもの、が挙げられる。
【0085】
<<防カビ積層フィルムの製造方法>>
本発明の防カビ積層フィルムは、上述の防カビ樹脂フィルム用の樹脂組成物を用い、多層積層フィルムの公知の製造方法を適用することで製造できる。
例えば、第1樹脂層及び第2樹脂層のいずれか一方の表面(片面)に前記樹脂組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させて、防カビ樹脂フィルムを形成することで、第1樹脂層又は第2樹脂層と、防カビ樹脂フィルムと、が積層されてなる第1積層体を形成する。このときの防カビ樹脂フィルムの形成方法は、先に説明した防カビ樹脂フィルムの製造方法と同じである。
【0086】
次いで、前記第1積層体における防カビ樹脂フィルムの露出面(第1樹脂層又は第2樹脂層が設けられていない表面)と、第1樹脂層及び第2樹脂層の他方の表面(片面)と、を貼り合わせることで、第2積層体を形成する。ここで、「第1樹脂層及び第2樹脂層の他方」とは、前記第1積層体において防カビ樹脂フィルムに積層されているものが第1樹脂層である場合には第2樹脂層のことを意味し、前記第1積層体において防カビ樹脂フィルムに積層されているものが第2樹脂層である場合には第1樹脂層のことを意味する。
前記第1積層体と第2樹脂層又は第1樹脂層との貼り合わせは、公知の各種ラミネート法を適用することで、行うことができる。
【0087】
次いで、前記第2積層体に対して、目的とする箇所に目的とする数だけ、前記貫通孔を形成する。
貫通孔は、前記第2積層体に対して、針を突き刺す方法、レーザーを照射する方法等、公知の方法で形成できる。
【0088】
以上により、前記防カビ積層フィルムが得られるが、第1樹脂層、防カビ樹脂フィルム及び第2樹脂層以外に、さらにその他の層を備えてなる防カビ積層フィルムを製造する場合には、上述の製造方法において、前記その他の層が目的の積層位置に配置されるよう、適切なタイミングで、前記その他の層を形成する工程を追加して行うか、又はあらかじめ形成済みの前記その他の層の貼り合わせを追加して行えばよい。この場合、前記第2積層体として、前記その他の層を備えたものを形成し、これに対して、貫通孔を形成すればよい。
【0089】
ここまでは、防カビ積層フィルムの製造方法として、前記樹脂組成物を用いて、防カビ樹脂フィルムと前記第1積層体の形成を同時に行う工程を有するものについて説明した。ただし、防カビ積層フィルムの製造方法としては、他のものも挙げられ、例えば、あらかじめ形成済みの防カビ樹脂フィルムを用いて、第1積層体を形成する工程を有する製造方法も挙げられる。
【0090】
このように、あらかじめ形成済みの防カビ樹脂フィルムを用いる場合には、例えば、以下のように防カビ積層フィルムを製造すればよい。
まず、剥離処理面を有する剥離フィルムの前記剥離処理面に、前記樹脂組成物を用いて、防カビ樹脂フィルムを形成する。このときの防カビ樹脂フィルムの形成方法は、先に説明した防カビ樹脂フィルムの製造方法と同じである。形成済みの防カビ樹脂フィルムは、剥離フィルムを備えていない側の表面に、さらに同様に剥離フィルムを備えたものとしてもよい。
【0091】
次いで、適切なタイミングで剥離フィルムを取り除き、防カビ樹脂フィルムの一方の表面に第1樹脂層を貼り合わせ、防カビ樹脂フィルムの他方の表面に第2樹脂層を貼り合わせることで、第2積層体を形成する。防カビ樹脂フィルムと第1樹脂層との貼り合わせと、防カビ樹脂フィルムと第2樹脂層との貼り合わせは、いずれか一方を先に行い、他方を後で行って、順次行ってもよいし、同時に行ってもよい。
【0092】
次いで、先に説明した方法と同じ方法で、前記第2積層体に対して、目的とする箇所に目的とする数だけ、前記貫通孔を形成することにより、前記防カビ積層フィルムが得られる。
この方法でも、前記その他の層を備えてなる防カビ積層フィルムを製造する場合には、上述の製造方法において、前記その他の層が目的の積層位置に配置されるよう、適切なタイミングで、前記その他の層を形成する工程を追加して行うか、又はあらかじめ形成済みの前記その他の層の貼り合わせを追加して行えばよい。この場合、前記第2積層体として、前記その他の層を備えたものを形成し、これに対して、貫通孔を形成すればよい。
【0093】
[防カビ剤]
次に、前記防カビ樹脂フィルムが含む防カビ剤について、説明する。
前記防カビ剤は、化合物(1)又はその塩を有効成分とし、新規のものである。
前記防カビ剤は、目的とする保存対象物と共存させることで、この保存対象物におけるカビの増殖を抑制する。
【0094】
(化合物(1))
化合物(1)は、防カビ性を有する。
一般式(1)中、Xは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であり、このようなアルキレン基として、より具体的には、メチレン基(−CH
2−)、エチレン基(−CH
2CH
2−)、プロピレン基(−CH(CH
3)CH
2−、メチルエチレン基)、トリメチレン基(−CH
2CH
2CH
2−)が挙げられる。
【0095】
一般式(1)中、Rは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、このようなアルキル基として、より具体的には、メチル基(−CH
3)、エチル基(−CH
2CH
3)、n−プロピル基(−CH
2CH
2CH
3)、イソプロピル基(−CH(CH
3)
2)が挙げられる。
【0096】
一般式(1)中、mは1〜3の整数であり、化合物(1)1分子中の一般式「−O−X−OH(式中、Xは上記と同じである。)」で表される基の数を示す。
mが2以上(すなわち、2又は3)である場合、複数個(すなわち、2個又は3個)のXは互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、mが2以上である場合、Xはすべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
【0097】
mの値によらず、一般式「−O−X−OH」で表される基の、ベンゼン環骨格への結合位置は特に限定されない。
ただし、mが2である場合、一般式「−O−X−OH」で表される基が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している2個の炭素原子は、互いに隣接していないことが好ましい。
また、mが3である場合、一般式「−O−X−OH」で表される基が結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している3個の炭素原子のうち、少なくとも2個の炭素原子は互いに隣接していないことが好ましく、3個の炭素原子すべてが互いに隣接していないことがより好ましい。
【0098】
一般式(1)中、nは0〜5の整数であり、化合物(1)1分子中のRの数を示す。ただしm+nは6以下である。
nが2以上(すなわち、2、3、4又は5)である場合、複数個(すなわち、2個、3個、4個又は5個)のRは互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、nが2以上である場合、Rはすべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
【0099】
nの値によらず、Rのベンゼン環骨格への結合位置は特に限定されない。
ただし、nが2である場合、Rが結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している2個の炭素原子は、互いに隣接していないことが好ましい。
また、nが3である場合、Rが結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している3個の炭素原子のうち、少なくとも2個の炭素原子は互いに隣接していないことが好ましく、3個の炭素原子すべてが互いに隣接していないことがより好ましい。
また、nが4である場合、Rが結合している、前記ベンゼン環骨格を構成している4個の炭素原子のうち、1個の炭素原子は、残りの3個の炭素原子のいずれとも互いに隣接していないことが好ましい。
【0100】
ベンゼン環骨格におけるRと一般式「−O−X−OH」で表される基との相対的な結合位置の関係は、特に限定されない。
【0101】
mが1である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−1Aで表される化合物(本明細書においては、「化合物(1)−1A」と称することがある)が挙げられる。
【0102】
【化4】
(式中、X及びRは上記と同じであり、n1は0〜5の整数である。)
【0103】
一般式(1)−1A中、X及びRは、一般式(1)中のX及びRと同じである。
一般式(1)−1A中、n1は0〜5の整数であり、一般式(1)中のnと同様のものである。
【0104】
mが2である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−2Aで表される化合物、下記一般式(1)−2Bで表される化合物、及び下記一般式(1)−2Cで表される化合物(本明細書においては、付された符号に対応して、それぞれ「化合物(1)−2A」、「化合物(1)−2B」、「化合物(1)−2C」と称することがある)が挙げられる。
【0105】
【化5】
(式中、X及びRは上記と同じであり、n2は0〜4の整数である。)
【0106】
一般式(1)−2A〜一般式(1)−2C中、X及びRは、一般式(1)中のX及びRと同じである。
一般式(1)−2A〜一般式(1)−2C中、n2は0〜4の整数であり、5とはならない点以外は、一般式(1)中のnと同様のものである。
【0107】
mが3である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−3Aで表される化合物、下記一般式(1)−3Bで表される化合物、及び下記一般式(1)−3Cで表される化合物(本明細書においては、付された符号に対応して、それぞれ「化合物(1)−3A」、「化合物(1)−3B」、「化合物(1)−3C」と称することがある)が挙げられる。
【0108】
【化6】
(式中、X及びRは上記と同じであり、n3は0〜3の整数である。)
【0109】
一般式(1)−3A〜一般式(1)−3C中、X及びRは、一般式(1)中のX及びRと同じである。
一般式(1)−3A〜一般式(1)−3C中、n3は0〜3の整数であり、4及び5とはならない点以外は、一般式(1)中のnと同様のものである。
【0110】
化合物(1)において、mは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。このような化合物(1)は、優れた防カビ作用を有するだけでなく、より容易に且つ安価に製造できる。
【0111】
nが0である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−0で表される化合物(本明細書においては、「化合物(1)−0」と称することがある)が挙げられる。
【0112】
【化7】
(式中、X及びRは上記と同じであり、m0は1〜3の整数である。)
【0113】
一般式(1)−0中、X及びRは、一般式(1)中のX及びRと同じである。
一般式(1)−0中、m0は1〜3の整数であり、一般式(1)中のmと同様のものである。
【0114】
nが1である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−1aで表される化合物(本明細書においては、「化合物(1)−1a」と称することがある)が挙げられる。
【0115】
【化8】
(式中、X及びRは上記と同じであり、m1は1〜3の整数である。)
【0116】
一般式(1)−1a中、X及びRは、一般式(1)中のX及びRと同じである。
一般式(1)−1a中、m1は1〜3の整数であり、一般式(1)中のmと同様のものである。
【0117】
nが2である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−2aで表される化合物、下記一般式(1)−2bで表される化合物、及び下記一般式(1)−2cで表される化合物(本明細書においては、付された符号に対応して、それぞれ「化合物(1)−2a」、「化合物(1)−2b」、「化合物(1)−2c」と称することがある)が挙げられる。
【0118】
【化9】
(式中、X及びRは上記と同じであり、m2は1〜3の整数である。)
【0119】
一般式(1)−2a〜一般式(1)−2c中、X及びRは、一般式(1)中のX及びRと同じである。
一般式(1)−2A〜一般式(1)−2C中、m2は1〜3の整数であり、一般式(1)中のmと同様のものである。
【0120】
nが3である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−3aで表される化合物、下記一般式(1)−3bで表される化合物、及び下記一般式(1)−3cで表される化合物(本明細書においては、付された符号に対応して、それぞれ「化合物(1)−3a」、「化合物(1)−3b」、「化合物(1)−3c」と称することがある)が挙げられる。
【0121】
【化10】
(式中、X及びRは上記と同じであり、m3は1〜3の整数である。)
【0122】
一般式(1)−3a〜一般式(1)−3c中、X及びRは、一般式(1)中のX及びRと同じである。
一般式(1)−3A〜一般式(1)−3C中、m3は1〜3の整数であり、一般式(1)中のmと同様のものである。
【0123】
nが4である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−4aで表される化合物、下記一般式(1)−4bで表される化合物、及び下記一般式(1)−4cで表される化合物(本明細書においては、付された符号に対応して、それぞれ「化合物(1)−4a」、「化合物(1)−4b」、「化合物(1)−4c」と称することがある)が挙げられる。
【0124】
【化11】
(式中、X及びRは上記と同じであり、m4は1又は2である。)
【0125】
一般式(1)−4a〜一般式(1)−4c中、X及びRは、一般式(1)中のX及びRと同じである。
一般式(1)−4a〜一般式(1)−4c中、m4は1又は2であり、3とはならない点以外は、一般式(1)中のmと同様のものである。
【0126】
nが5である場合の化合物(1)としては、下記一般式(1)−5aで表される化合物(本明細書においては、「化合物(1)−5a」と称することがある)が挙げられる。
【0127】
【化12】
(式中、X及びRは上記と同じである。)
【0128】
一般式(1)−5a中、X及びRは、一般式(1)中のX及びRと同じである。
一般式(1)−5aで表される化合物は、一般式(1)中のmが1である場合の化合物(1)に相当する。
【0129】
化合物(1)において、nは0〜4の整数であることが好ましく、0〜3の整数であることがより好ましく、0〜2の整数であることがさらに好ましく、0又は1であることが特に好ましい。このような化合物(1)は、優れた防カビ作用を有するだけでなく、より容易に且つ安価に製造できる。
【0130】
化合物(1)において、m及びnはともに、上述の好ましいいずれかの数値であることが好ましい。
例えば、化合物(1)において、mは1又は2であり且つnは0〜4の整数であることが好ましく、mは1又は2であり且つnは0〜3の整数であることがより好ましく、mは1又は2であり且つnは0〜2の整数であることがさらに好ましく、mは1であり且つnは0又は1であることが特に好ましい。
【0131】
化合物(1)で特に好ましいものとしては、例えば、下記一般式(1)−1A−0で表される化合物(本明細書においては、「化合物(1)−1A−0」と称することがある)、及び下記一般式(1)−1A−1で表される化合物が挙げられ、化合物(1)−1A−0が最も好ましい。
【0132】
【化13】
(式中、X及びRは上記と同じである。)
【0133】
<化合物(1)の塩>
化合物(1)の塩は、防カビ性を有する。
化合物(1)の塩としては、例えば、化合物(1)中の一般式「−O−X−OH」で表される基がアニオン(すなわち、一般式「−O−X−O
−」で表される基(式中、Xは上記と同じである。))となったもの(本明細書においては、「化合物(1)由来のアニオン」と称することがある)と、カチオンと、で形成された塩が挙げられる。
【0134】
化合物(1)の塩を形成している前記カチオンの価数は特に限定されず、1(1価)でもよいし2(2価)以上でもよい。前記カチオンが1価である場合、化合物(1)の塩を形成している前記カチオンの個数と、化合物(1)由来のアニオンの個数は、共に1である。また、前記カチオンがp価(pは2以上の整数である)である場合、化合物(1)の塩を形成している前記カチオンの個数は通常1であり、化合物(1)由来のアニオンの個数はp以下であり、pであることが好ましい。
【0135】
上記のように、一分子の化合物(1)の塩を構成するカチオンは、1個のみでもよいし、2個以上でもよく、2個以上である場合、これらカチオンは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
ただし、化合物(1)の塩は分子全体として電気的に中性、すなわち、化合物(1)一分子中のカチオンの価数の合計値とアニオンの価数の合計値とは、同じであることが好ましい。
【0136】
化合物(1)由来のアニオンと共に化合物(1)の塩を形成する前記カチオンは、特に限定されず、無機カチオン及び有機カチオンのいずれであってもよい。
【0137】
前記カチオンのうち、無機カチオンとしては、例えば、リチウムイオン(Li
+)、ナトリウムイオン(Na
+)、カリウムイオン(K
+)等のアルカリ金属のイオン;マグネシウムイオン(Mg
2+)、カルシウムイオン(Ca
2+)、バリウムイオン(Ba
2+)等のアルカリ土類金属のイオン;アルミニウムイオン(Al
3+)、亜鉛イオン(Zn
2+)、スズイオン(Sn
2+、Sn
4+)等の典型金属のイオン;銅イオン(Cu
+、Cu
2+)、鉄イオン(Fe
2+、Fe
3+)、マンガンイオン、ニッケルイオン等の遷移金属のイオン;アンモニウムイオン(NH
4+)等の非金属のイオン等が挙げられる。
【0138】
前記防カビ剤において、有効成分は1種のみでよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、前記防カビ剤は、有効成分として、化合物(1)のみを1種又は2種以上含有していてもよいし、化合物(1)の塩のみを1種又は2種以上含有していてもよいし、化合物(1)及び化合物(1)の塩を、それぞれ1種又は2種以上含有していてもよい。
【0139】
化合物(1)及びその塩は、食品添加物として使用可能なものが好ましい。ここで「食品添加物」とは、日本国厚生労働省が平成25年3月12日現在、その使用を認めているものを意味する。
【0140】
化合物(1)及びその塩は、揮発性を有するものが好ましい。化合物(1)及びその塩で揮発性を有するものは、常温で液体から気体となることで、後述する包装体の収容空間内において継続的に作用するのに有利であり、包装体において、優れた防カビ効果をより長時間維持できる。
なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜25℃の温度等が挙げられる。
【0141】
化合物(1)及びその塩の分子量は、揮発し易いという点においては、300以下であることが好ましく、例えば、250以下、200以下及び150以下等のいずれかであってもよいが、これらは一例である。なお、化合物(1)及びその塩の分子量の下限値は、特に限定されない。
【0142】
化合物(1)及びその塩は、無臭のもの又はにおいの弱いものが好ましい。このような化合物(1)及びその塩は、保存対象物に付着したとしても、保存対象物の使用時に、その存在を全く又はほとんど想起させないため、官能上好ましい。
化合物(1)及びその塩でにおいのあるものは、香料として使用可能なものが好ましい。このような化合物(1)及びその塩としては、例えば、食品添加物の天然香料に分類されるものが挙げられる。
【0143】
このように、食品添加物して使用可能であり、揮発性を有し、無臭であるか又はにおいの弱い化合物(1)又はその塩としては、例えば、化合物(1)−1A−0に相当する、下記式で表される2−フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0145】
化合物(1)及びその塩としては、市販品を用いてもよいし、公知の方法によって製造したものを用いてもよい。
【0146】
<化合物(1)の製造方法>
化合物(1)は、例えば、下記一般式(101)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(101)」と称することがある)と、下記一般式(102)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(102)」と称することがある)と、を反応させ、化合物(1)を得る工程(本明細書においては、「化合物(1)製造工程」と称することがある)を有する製造方法で、製造できる。
【0147】
【化15】
(式中、X、R、m及びnは、上記と同じであり;Lgは離脱基である。)
【0148】
化合物(1)製造工程での反応は、公知であり、反応条件は、使用原料の種類に応じて適宜選択すればよい。
Lgとしては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アルキルスルホニルオキシ基;フルオロアルキルスルホニルオキシ基等が挙げられる。
化合物(1)製造工程においては、例えば、化合物(102)中の水酸基(−OH)等、使用原料中の目的外の反応が進行する可能性のある基については、あらかじめ保護基で保護しておいてから、反応を行い、反応終了後に脱保護を行うことで、化合物(1)を得てもよい。
化合物(101)は、ナトリウムアルコキシドの通常の製造方法を適用することで、製造できる。例えば、原料として対応するフェノール化合物、すなわち、化合物(101)において、式「−O
−Na
+」で表される基が式「−OH」で表される基に置き換えられた化合物を用いて、金属ナトリウムや水素化ナトリウム等を作用させることで、化合物(101)が得られる。
化合物(102)は、原料として対応するアルコール、すなわち、一般式「HO−X−OH(Xは上記と同じである。)」で表される化合物や、その一方の水酸基が保護基で保護された化合物を用いて、Lgを導入する方法で製造できる。保護基を用いた場合には、保護基は適したタイミングで除けば(脱保護すれば)よい。ただし、ここに示す化合物(102)の製造方法は一例である。
【0149】
化合物(1)製造工程においては、化合物(101)及び化合物(102)の反応の終了後、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、目的物である化合物(1)を取り出すことができる。すなわち、反応終了後、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、化合物(1)を取り出すことができる。また、取り出した化合物(1)は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて1回以上行うことで、精製してもよい。
化合物(1)は、反応終了後に必要に応じて後処理を行った後、取り出すことなく、目的とする用途に引き続き用いてもよい。
【0150】
得られた化合物(1)は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)、紫外・可視分光法(UV−VIS吸収スペクトル)等、公知の手法で、その構造を確認できる。
【0151】
<化合物(1)の塩の製造方法>
化合物(1)の塩は、金属アルコキシドの通常の製造方法を適用することで、製造できる。例えば、化合物(1)のナトリウム塩(ナトリウムアルコキシド)の場合には、単離された状態の化合物(1)、又は上述の化合物(1)の製造方法における、取り出し前の化合物(1)に対して、上述の化合物(101)の製造の場合と同様の方法を適用することで、目的物が得られる。単離された状態の化合物(1)としては、市販品を用いてもよい。
化合物(1)の塩は、化合物(1)の場合と同様に、取り出して用いてもよいし、取り出すことなく、目的とする用途に引き続き用いてもよい。
得られた化合物(1)の塩は、化合物(1)の場合と同様の手法で、その構造を確認できる。
【0152】
前記防カビ剤は、化合物(1)又はその塩以外に、その他の成分を含有していてもよい。
防カビ剤における前記その他の成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、任意に選択できる。
例えば、化合物(1)又はその塩は、常温及び常圧下において、固形状及び液状のいずれであってもよく、後述する防カビ樹脂フィルムの種類に応じて、適宜適した性状のものを選択すればよい。そして、化合物(1)又はその塩は、例えば、溶媒に溶解又は分散させて用いてもよく、溶媒で希釈して用いてもよい。すなわち、前記その他の成分としては、例えば、溶媒等が挙げられる。
【0153】
前記溶媒は、化合物(1)又はその塩の種類に応じて適宜選択すればよく、その種類は特に限定されない。
好ましい前記溶媒としては、例えば、先に説明した前記樹脂組成物が含んでいてもよい溶媒と同じものが挙げられる。
【0154】
前記防カビ剤が前記溶媒を含有する場合、溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、10〜90質量%とすることができるが、これは一例に過ぎない。
なお、溶媒を含有する前記防カビ剤は、そのまま、防カビ樹脂フィルムを形成するための前記樹脂組成物として用いることができる。
【0155】
前記防カビ剤が前記溶媒以外のその他の成分を含有する場合、前記その他の成分の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、その他の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
ただし、通常は、前記防カビ剤において、前記溶媒以外の成分(すなわち、化合物(1)、化合物(1)の塩、及び前記溶媒以外のその他の成分)の合計含有量に対する、前記溶媒以外のその他の成分の含有量の割合は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、例えば、2質量%以下、1質量%以下等のいずれかであってもよい。
【0156】
前記防カビ剤の使用によって、増殖抑制効果(防カビ効果)が認められる微生物(カビ)は、一概に特定範囲のものに限定されるものではないが、防カビ効果が高いものとしては、ペニシリウム(Penicillium)属に属する微生物、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する微生物、クラドスポリウム(Cladosporium)属に属する微生物、フザリウム(Fusarium)属に属する微生物、アルテルナリア(Alternaria)属に属する微生物、リゾプス(Rhizopus)属に属する微生物、ボトリチス(Botrytis)属に属する微生物等が挙げられる。
これらのうち、ペニシリウム属に属する微生物としては、例えば、アオカビ、白カビ等が挙げられる。アスペルギルス属に属する微生物としては、例えば、アスペルギルス ニガー(Aspergillus niger)等が挙げられる。クラドスポリウム属に属する微生物としては、例えば、クロカワカビ等が挙げられる。フザリウム属に属する微生物としては、例えば、フザリウム ソラニ(Fusarium solani)等が挙げられる。アルテルナリア属に属する微生物としては、例えば、アルテルナリア テヌイス(Alternaria tenuis)等が挙げられる。リゾプス属に属する微生物としては、例えば、リゾプス ニグリカンス(Rhizopus nigricans)等が挙げられる。ボトリチス属に属する微生物としては、例えば、ハイイロカビ等が挙げられる。
【0157】
前記防カビ剤のうち、2種以上の成分を含有するものは、これらの成分を配合することで得られる。
【0158】
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0159】
配合時の温度、及び配合時間は、各成分が劣化しない限り特に限定されない。配合時の温度は、例えば、5〜50℃とすることができ、配合時間は、例えば、5〜60分とすることができるが、これらは一例である。
【0160】
<<防カビ包装体>>
本発明の防カビ包装体は、上述の本発明の防カビ積層フィルムを用いて得られた防カビ包装体であって、前記第1樹脂層同士の一部が接着され、形成されている収容空間を有し、前記防カビ樹脂フィルムが前記第2樹脂層よりも前記収容空間側に配置されているものである。
本発明の防カビ包装体は、前記防カビ積層フィルム(防カビ樹脂フィルム)を用いていることで、優れた防カビ性を有し、目的物の保存中に収容空間内において、カビの増殖を顕著に抑制するとともに、青果物等の非加熱処理食品の鮮度を保持できる。
【0161】
図2は、本発明の防カビ包装体の一実施形態を模式的に示す断面図である。
ここに示す防カビ包装体10は、
図1に示す防カビ積層フィルム1を用いて形成されたものである。防カビ包装体10は、一対の防カビ積層フィルム1,1の第1樹脂層11,11同士の一部が接着され、形成されている収容空間Sを有しており、防カビ樹脂フィルム12が第2樹脂層13よりも収容空間S側に配置されて、概略構成されている。すなわち、一対の防カビ積層フィルム1,1は、これらの第1樹脂層11,11同士が対向するように配置されている。
防カビ包装体10の収容空間Sには、目的とする保存対象物(図示略)が収容される。
なお、
図2においては、貫通孔の図示を省略している。
【0162】
防カビ包装体10においては、防カビ樹脂フィルム12の内部から第1樹脂層11を介して収容空間S内へ、化合物(1)又はその塩が容易に移行する。これにより、防カビ包装体10は、収容空間S内の化合物(1)又はその塩の濃度を適切な水準で一定期間維持でき、優れた防カビ効果を発現する。
また、防カビ包装体10は、前記貫通孔を有していることで、収容空間S内の水分量を調節できることによっても、優れた防カビ効果を発現する。
また、防カビ包装体10においては、第1樹脂層11により、収容空間S内の保存対象物と防カビ樹脂フィルム12との接触が防止され、保存対象物への防カビ剤の過剰な移行が抑制される。
【0163】
さらに、防カビ包装体10は、前記貫通孔を有していることで、収容空間S内の酸素濃度を適切な範囲に調節できるため、青果物等の非加熱処理食品の鮮度を保持できる。
【0164】
さらに、防カビ包装体10においては、先に防カビ積層フィルムにおいて説明したとおり、第2樹脂層13の構成を調節することで、防カビ効果の持続性や、外部からの酸素ガスによる保存対象物の劣化の抑制効果を、より高めることが可能である。また、化合物(1)又はその塩の種類を調節することで、保存後の保存対象物の使用時に、化合物(1)又はその塩(防カビ剤)の使用を全く又はほとんど想起させないような、官能上好ましいものとすることもできる。
【0165】
ここまでは、本発明の防カビ包装体として、
図1に示す防カビ積層フィルム1を用いたものについて説明したが、本発明の防カビ包装体は、本発明の他の実施形態の防カビ積層フィルムを用いて形成されたものであってもよい。
【0166】
本発明の防カビ包装体は、上述の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、
図2に示す防カビ包装体10は、一対の同じ種類の防カビ積層フィルム1,1を用いたものであるが、本発明の防カビ包装体は、一対の異なる種類の防カビ積層フィルム用いたものであってもよい。
また、本発明の防カビ包装体は、本発明の効果を損なわない範囲内において、防カビ積層フィルム以外のその他の構成を備えていてもよい。前記その他の構成は特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0167】
本発明の防カビ包装体は、本発明の防カビ積層フィルムを用いて、収容空間を有するように、第1樹脂層同士の一部を接着することで製造できる。
第1樹脂層同士の接着は、例えば、公知の各種ラミネート法を適用することで、行うことができる。
第1樹脂層同士の一部を接着するときには、第1樹脂層(防カビ積層フィルム)の貫通孔を有する領域を避けて接着することが好ましい。このようにすることで、防カビ積層フィルムにおける貫通孔を、防カビ包装体においてもすべて有効に機能させることができる。
【0168】
本発明の防カビ包装体は、上述のとおり、非加熱処理食品の包装用であることが好ましい。
前記非加熱処理食品で好ましいものとしては、例えば、野菜、果物、穀物等の青果物が挙げられる。
【0169】
野菜としては、例えば、ナス、ショウガ、トマト、ピーマン、赤ピーマン、ニンジン、キャベツ、はくさい、レタス、大根、ほうれん草、長ネギ、タマネギ、ブロッコリー、カリフラワー、しいたけ、シメジ等が挙げられる。
果物としては、例えば、オレンジ、ネーブルオレンジ、ミカン、レモン、キンカン、柚子、グレープフルーツ、リンゴ、ナシ、洋ナシ、マンゴー、イチジク、ブドウ、イチゴ、パイナップル、キウイ、ブルーベリー、ザクロ、モモ、パパイヤ、メロン、スイカ、バナナ、アボガド等が挙げられる。
穀類としては、例えば、エンドウ、だだちゃ豆、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ等が挙げられる。
【0170】
本発明の防カビ包装体は、青果物の包装用であることが好ましく、オレンジ、ネーブルオレンジ、ミカン、レモン、キンカン、柚子、グレープフルーツ等の柑橘類の包装用であることがより好ましい。
【0171】
本発明の防カビ包装体を用いて、その収容空間内に目的物を収容して包装するときに、防カビ包装体の、収容物(包装物)100gあたりの防カビ剤の含有量は、0.001〜0.1gであることが好ましく、0.001〜0.075gであることがより好ましく、0.001〜0.05gであることが特に好ましい。防カビ剤の前記含有量が前記下限値以上であることで、防カビ包装体の防カビ効果がより高くなる。また、防カビ剤の前記含有量が前記上限値以下であることで、防カビ剤の過剰使用が抑制される。
【実施例】
【0172】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0173】
<防カビ積層フィルムの製造>
[実施例1]
以下に示す手順により、
図1に示す構成の防カビ積層フィルムを製造した。
【0174】
(防カビ樹脂フィルムの製造)
主剤(三井化学株式会社製「タケラック(登録商標) A620」、固形分50質量%、酢酸エチル50質量%)(6質量部)、硬化剤(三井化学株式会社製「タケネート(登録商標) A10」、固形分75質量%、酢酸エチル25質量%)(1質量部)、及び酢酸エチル(6質量部)を混合して、ポリウレタン系接着剤を調製した。得られたポリウレタン系接着剤において、溶媒(酢酸エチル)の合計含有量は71.2質量%である。
次いで、2−フェノキシエタノール(2質量部)を、上記で得られたポリウレタン系接着剤の全量と混合し、溶媒以外の成分の合計含有量に対する2−フェノキシエタノールの含有量の割合が34.8質量%である樹脂組成物を得た。
【0175】
次いで、PETフィルム(厚さ12μm)の一方の表面に、マルチコーターを用いて、上記で得られた樹脂組成物を塗工し、80℃で乾燥させることで、2−フェノキシエタノールの含有量が35質量%である防カビ樹脂フィルム(厚さ5.8μm)をPETフィルム上に形成した。以上により、前記第1積層体を作製した。
【0176】
(防カビ積層フィルムの製造)
さらに、上記で得られた第1積層体における、防カビ樹脂フィルムのPETフィルムが設けられている側とは反対側の表面に、LLDPEフィルム(厚さ30μm)を貼り合わせることにより、PETフィルム、防カビ樹脂フィルム及びLLDPEフィルムがこの順に積層されてなる、大きさが150mm×250mmの透明な第2積層体を得た。
【0177】
次いで、この第2積層体の互いに十分に離れた4箇所の部位に針を突き刺すことにより、第2積層体に平均直径が180μmの貫通孔を4個形成して、防カビ積層フィルムを得た。
得られた防カビ積層フィルムの大きさ(mm×mm)、貫通孔の平均直径(μm)、貫通孔の数(個/1枚)、貫通孔の数(個/m
2)、並びに防カビ樹脂フィルムの防カビ剤の含有量(g/m
2)及び厚さ(μm)を、表1に示す。なお、表1においては、この防カビ樹脂フィルムの防カビ剤の含有量(g/m
2)及び厚さ(μm)を、後述する比較例での包装用フィルムの防カビ剤の含有量(g/m
2)及び厚さ(μm)と同じ欄で示すために、「樹脂フィルムの防カビ剤の含有量(g/m
2)」、「樹脂フィルムの厚さ(μm)」との欄を設け、ここに該当する数値を記載している。
【0178】
<防カビ積層フィルムの酸素透過量の測定>
上記で得られた防カビ積層フィルムについて、下記方法で酸素透過量を測定した。結果を表1に示す。
【0179】
(I)袋の作製
大気下において、上記の防カビ積層フィルムを用いて、ヒートシールにより袋を作製し、密封した。
【0180】
(II)袋への窒素ガスの封入
袋の両面が貼りつくまで袋の内部を脱気した後、袋の内部に純度99.9%以上の窒素ガスを充填した。脱気及び窒素ガスの注入は、注射針を袋に突き刺して行った。窒素ガスの充填量V(cc)は、フィルムに過度なテンションがかからず、僅かにゆるんでいる状態となるように極力多くし、注射筒の目盛りによって、測定した。注射針を袋に刺すときは、フィルムの該当する箇所に両面テープを貼り、さらにこの両面テープの上にポリプロピレンフィルム製粘着テープ(以下「PPテープ」と略記する)を貼り付けた。また、針を抜いた後は、速やかにPPテープで針孔を塞いだ。PPテープの面積は、4.5cm
2以下とした。なお、両面テープ及びPPテープを貼るときは、これらテープでフィルムの貫通孔を塞がないようにした。
【0181】
(III)初期酸素濃度測定
窒素ガスの充填完了時(t=0)の袋の内部から、10cc以下のガスをサンプリングし、ガスクロマトグラフィー(TCD)により、袋の内部の初期酸素濃度C
0(%)を測定した。なお、本明細書においては、窒素ガスの充填完了時からの経過時間をt(hr)とし、このときの袋の内部の酸素濃度を「C
t(%)」で表す。C
0は0.2%以下となるため、0.2%を超えた場合には、上記の作業をやり直すことにした。ガスクロマトグラフィーを行う場合のサンプリングガスの注入量は、1cc程度の一定量とした。さらに、酸素濃度が約1%、約10%の場合を含む2水準以上の標準ガスについても、ガスクロマトグラフィーを行い、検量線を作成した。
【0182】
(IV)袋の保管
初期酸素濃度を測定した袋を、20℃、80%RHの条件下の恒温恒湿庫内で保管した。このとき、袋の上に物が載ったり、恒温恒湿庫のファンの風が袋に直撃したりしないようにして、袋を静置した。
【0183】
(V)保管中の袋の内部の酸素濃度の測定及び酸素透過量の算出
窒素ガス充填完了時(t=0)から3時間以上経過後(t≧3)に、袋の内部の酸素濃度が1〜7%の範囲内となるような2回以上のタイミングも含めて、合計で3〜5回のタイミングで、C
0測定時と同じ方法で、袋の内部からガスをサンプリングし、酸素濃度C
t(%)を測定した。tとC
tとの間に、相関係数が0.98以上の比例関係が成立しない場合には、試験をやり直すこととした。そして、tが最も大きい場合について、下記式(i)により、酸素透過量F(g/m
2・day)を算出した。
なお、フィルムの酸素透過量が大き過ぎて、袋の内部の酸素濃度の上昇が速すぎ、上記の比例関係が成立しない場合には、フィルムの一部に、このフィルムと同じ材質で、かつこのフィルムよりも酸素透過量が既知の小さい値であるフィルムを貼り合わせ、これにより得られた改良袋で、上記と同様に袋の内部の酸素濃度を測定することにした。このときは、元の袋の表面積から、酸素透過量が小さい方のフィルムを貼り合わせた領域の面積を差し引き、改良袋でのフィルムの酸素透過量から、上記の既知の酸素透過量を差し引いた値を、目的とするフィルムの酸素透過量とすることにした。
F=1.143×(C
t−C
0)×V/t ・・・・(i)
【0184】
<防カビ積層フィルムの水蒸気透過量の測定>
上記で得られた防カビ積層フィルムについて、JIS K 7129Bに準拠して、40℃、90%RHの雰囲気下における水蒸気透過量(g/m
2・day)を測定した。結果を表1に示す。
【0185】
[実施例2]
防カビ樹脂フィルムの防カビ剤の含有量及び厚さ、並びに防カビ積層フィルムの大きさを、表1に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で、防カビ積層フィルムを製造し、その酸素透過量及び水蒸気透過量を測定した。結果を表1に示す。
防カビ樹脂フィルムの防カビ剤(2−フェノキシエタノール)の含有量は、前記樹脂組成物の製造時における防カビ剤の使用量を変えることで、調節した。また、防カビ樹脂フィルムの厚さは、前記樹脂組成物の塗工量を変えることで、調節した。防カビ樹脂フィルムの防カビ剤の含有量又は厚さが、実施例1とは異なる他の実施例においても、これらは同様である。
【0186】
[実施例3]
防カビ積層フィルムの大きさを、表1に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で、防カビ積層フィルムを製造し、その酸素透過量及び水蒸気透過量を測定した。結果を表1に示す。
【0187】
[実施例4]
防カビ樹脂フィルムの防カビ剤の含有量及び厚さ、並びに防カビ積層フィルムの大きさを、表2に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で、防カビ積層フィルムを製造し、その酸素透過量及び水蒸気透過量を測定した。結果を表2に示す。
【0188】
[実施例5]
防カビ積層フィルムの大きさを、表2に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で、防カビ積層フィルムを製造し、その酸素透過量及び水蒸気透過量を測定した。結果を表2に示す。
【0189】
[実施例6]
防カビ樹脂フィルムの防カビ剤の含有量及び厚さ、並びに防カビ積層フィルムの大きさ、貫通孔の平均直径、及び貫通孔の数を、表3に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で、防カビ積層フィルムを製造し、その酸素透過量及び水蒸気透過量を測定した。結果を表3に示す。
【0190】
[実施例7]
防カビ樹脂フィルムの防カビ剤の含有量、並びに防カビ積層フィルムの大きさ、貫通孔の平均直径、及び貫通孔の数を、表3に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で、防カビ積層フィルムを製造し、その酸素透過量及び水蒸気透過量を測定した。結果を表3に示す。
【0191】
[実施例8]
防カビ樹脂フィルムの防カビ剤の含有量及び厚さ、並びに防カビ積層フィルムの大きさ、及び貫通孔の数を、表4に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で、防カビ積層フィルムを製造し、その酸素透過量及び水蒸気透過量を測定した。結果を表4に示す。
【0192】
[実施例9]
防カビ樹脂フィルムの防カビ剤の含有量、並びに防カビ積層フィルムの大きさ、及び貫通孔の数を、表4に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で、防カビ積層フィルムを製造し、その酸素透過量及び水蒸気透過量を測定した。結果を表4に示す。
【0193】
<比較用の包装用フィルムの製造>
[比較例1]
大きさが150mm×250mm、厚さが3.1μmの、2軸延伸した透明なポリプロピレン(PP)フィルム(OPPフィルム)に対して、針を突き刺すことにより、平均直径が120μmの貫通孔を万遍なく100000個形成して、比較用の包装用フィルムを得た。
そして、実施例1と同じ方法で、この包装用フィルムの酸素透過量及び水蒸気透過量を測定した。結果を表1に示す。
【0194】
[比較例2〜3]
防カビ剤を用いず、樹脂フィルムの厚さ、及びフィルムの大きさを、表1又は2に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で、比較用の包装用積層フィルムを製造し、その酸素透過量及び水蒸気透過量を測定した。結果を表1又は2に示す。換言すると、比較例2の包装用積層フィルムは、防カビ剤を用いていない点以外は、実施例2の防カビ積層フィルムと同じものであり、比較例3の包装用積層フィルムは、防カビ剤を用いていない点以外は、実施例4の防カビ積層フィルムと同じものである。
【0195】
[比較例4]
防カビ剤を用いず、樹脂フィルムの厚さ、並びにフィルムの大きさ、貫通孔の平均直径、及び貫通孔の数を、表3に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で、比較用の包装用積層フィルムを製造し、その酸素透過量及び水蒸気透過量を測定した。結果を表3に示す。この包装用積層フィルムは、換言すると、防カビ剤を用いていない点以外は、実施例6の防カビ積層フィルムと同じものである。
【0196】
[比較例5]
防カビ剤を用いず、樹脂フィルムの厚さ、並びにフィルムの大きさ、及び貫通孔の数を、表4に示すとおりとした点以外は、実施例1と同じ方法で、比較用の包装用積層フィルムを製造し、その酸素透過量及び水蒸気透過量を測定した。結果を表4に示す。この包装用積層フィルムは、換言すると、防カビ剤を用いず、樹脂フィルムの厚さが異なる点以外は、実施例8〜9の防カビ積層フィルムと同じものである。
【0197】
<防カビ包装体の評価>
[試験例1]
(ネーブルオレンジに対する保存効果の確認)
実施例1の防カビ積層フィルムを2枚用意し、大気下において、これら防カビ積層フィルムの間に、平均質量403gの2個のネーブルオレンジを挟んだ状態で、これら防カビ積層フィルムの周辺部同士を重ね合せ、熱ラミネートした。以上により、上述の防カビ積層フィルムから作製された透明な袋(防カビ包装体)の内部に、上述の2個のネーブルオレンジが収容され、密封されたサンプルを作製した。このようなサンプルを合計で6個作製した。
同様に、比較例1の包装用フィルムを用いて、6個のサンプルを作製した。
得られた袋(防カビ包装体、比較用の包装体)の、収容物100gあたりの防カビ剤の含有量(g)を表1に示す。
【0198】
次いで、上記で得られたサンプルを、20℃で8日間静置保存し、この間、密封されているネーブルオレンジを袋越しに目視観察して、ネーブルオレンジにカビが発生するまでの保存日数を確認した。また、保存終了後のネーブルオレンジについて、萎れの抑制の程度を目視観察し、食べることが可能な部位の食味を確認し、下記評価基準に従って評価した。結果を表1に示す。萎れの抑制及び食味がともに「A」である場合に、収容物の鮮度が保持されていると判断した。
(萎れの抑制)
A:萎れが認められず、収穫直後の状態が保持されている。
B:萎れが認められ、収穫直後の状態が保持されていない。
(食味)
A:収穫直後の風味が感じられ、食味に違和感がない。
B:風味に異変が感じられ、食味に違和感がある。
【0199】
表1に示すように、比較例1の包装用フィルムを用いた場合には、保存日数1日でカビが発生してしまい、食味も不良であり、鮮度が保持されていなかった。
これに対して、実施例1の防カビ積層フィルムを用いた場合には、カビが発生したのは保存日数4日の段階であり、萎れの抑制及び食味も良好であり、鮮度が保持されていた。
【0200】
[試験例2]
(イチジクに対する保存効果の確認(1))
実施例2の防カビ積層フィルムを2枚用意し、大気下において、これら防カビ積層フィルムの間に、約86gの1個のイチジクを挟んだ状態で、これら防カビ積層フィルムの周辺部同士を重ね合せ、熱ラミネートした。以上により、上述の防カビ積層フィルムから作製された透明な袋(防カビ包装体)の内部に、上述の1個のイチジクが収容され、密封されたサンプルを作製した。このようなサンプルを合計で5個作製した。
同様に、実施例3の防カビ積層フィルム、及び比較例2の包装用フィルムを用いて、これら実施例又は比較例ごとに、5個のサンプルを作製した。
得られた袋(防カビ包装体、比較用の包装体)の、収容物100gあたりの防カビ剤の含有量(g)を表1に示す。
【0201】
次いで、上記で得られたサンプルと、包装されていない約86gの1個のイチジク(すなわち、無包装サンプル)とを、10℃で14日間静置保存し、この間、密封されているイチジクはこれを袋越しに目視観察し、包装されていないイチジクはこれを直接目視観察して、イチジクにカビが発生するまでの保存日数を確認した。また、保存終了後のイチジクについて、萎れの抑制の程度を目視観察し、食べることが可能な部位の食味を確認し、試験例1の場合と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0202】
表1に示すように、比較例2の包装用フィルムを用いた場合には、保存日数1日未満でカビが発生してしまい、萎れの抑制及び食味も不良であり、鮮度が保持されていなかった。
これに対して、実施例2の防カビ積層フィルムを用いた場合には、カビが発生したのは保存日数3日の段階であり、萎れの抑制及び食味も良好であり、鮮度が保持されていた。
実施例3の防カビ積層フィルムを用いた場合には、カビが発生したのは保存日数4日の段階であり、萎れの抑制及び食味も良好であり、鮮度が保持されていた。
なお、包装されていないイチジク(無包装サンプル)は、密封されていないことで、周辺環境の水分量が上昇することがなく、カビが発生したのは保存日数11日の段階であったが、包装されていないことにより、この段階で萎れの抑制及び食味が不良であり、そもそも、保存開始の初期から萎れが生じており、鮮度が保持されていなかった。
【0203】
[試験例3]
(イチジクに対する保存効果の確認(2))
実施例3の防カビ積層フィルム、比較例2の包装用フィルムを用いて、サンプルと無包装サンプルを、10℃で14日間静置保存するのに代えて、20℃で7日間静置保存した点以外は、試験例2と同じ方法で評価を行った。結果を表2に示す。
【0204】
表2に示すように、比較例2の包装用フィルムを用いた場合には、保存日数1日の段階でカビが発生してしまった。
これに対して、実施例3の防カビ積層フィルムを用いた場合には、カビが発生したのは保存日数4日の段階であり、萎れの抑制及び食味も良好であり、鮮度が保持されていた。
なお、包装されていないイチジク(無包装サンプル)は、密封されていなかったが、保存温度が試験例2の場合よりも高く、保存日数2日の段階でカビが発生した。さらに、この無包装サンプルは、包装されていないことにより、この段階で萎れの抑制及び食味が不良であり、そもそも、保存開始の初期から萎れが生じており、鮮度が保持されていなかった。
【0205】
[試験例4]
(マンゴーに対する保存効果の確認)
実施例4の防カビ積層フィルムを2枚用意し、大気下において、これら防カビ積層フィルムの間に、約335gの1個のマンゴー(アップルマンゴー、トミーアトキンス種)を挟んだ状態で、これら防カビ積層フィルムの周辺部同士を重ね合せ、熱ラミネートした。以上により、上述の防カビ積層フィルムから作製された透明な袋(防カビ包装体)の内部に、上述の1個のマンゴーが収容され、密封されたサンプルを作製した。このようなサンプルを合計で7個作製した。
同様に、実施例5の防カビ積層フィルム、及び比較例3の包装用フィルムを用いて、これら実施例又は比較例ごとに、7個のサンプルを作製した。
得られた袋(防カビ包装体、比較用の包装体)の、収容物100gあたりの防カビ剤の含有量(g)を表2に示す。
【0206】
次いで、上記で得られたサンプルを、20℃で14日間静置保存し、この間、密封されているマンゴーを袋越しに目視観察して、マンゴーにカビが発生するまでの保存日数を確認した。また、保存終了後のマンゴーについて、萎れの抑制の程度を目視観察し、食べることが可能な部位の食味を確認し、試験例1の場合と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0207】
表2に示すように、比較例3の包装用フィルムを用いた場合には、保存日数4日の段階でカビが発生した。
これに対して、実施例4〜5の防カビ積層フィルムを用いた場合には、いずれもカビが発生したのは保存日数14日の段階であり、萎れの抑制及び食味も良好であり、鮮度が保持されていた。
【0208】
[試験例5]
(ナスに対する保存効果の確認(1))
実施例6の防カビ積層フィルムを2枚用意し、大気下において、これら防カビ積層フィルムの間に、平均質量418gの3本のナスを挟んだ状態で、これら防カビ積層フィルムの周辺部同士を重ね合せ、熱ラミネートした。以上により、上述の防カビ積層フィルムから作製された透明な袋(防カビ包装体)の内部に、上述の3本のナスが収容され、密封されたサンプルを作製した。このようなサンプルを合計で5個作製した。
同様に、実施例7の防カビ積層フィルム、及び比較例4の包装用フィルムを用いて、これら実施例又は比較例ごとに、5個のサンプルを作製した。
得られた袋(防カビ包装体、比較用の包装体)の、収容物100gあたりの防カビ剤の含有量(g)を表3に示す。
【0209】
次いで、上記で得られたサンプルと、包装されていない平均質量418gの3本のナス(すなわち、無包装サンプル)とを、10℃で14日間静置保存し、この間、密封されているナスはこれを袋越しに目視観察し、包装されていないナスはこれを直接目視観察して、ナスにカビが発生するまでの保存日数を確認した。また、保存終了後のナスについて、萎れの抑制の程度を目視観察して、試験例1の場合と同様に評価した。ナスは、通常、加熱処理せずに食べることはないため、食味は確認せず、萎れの抑制が「A」である場合に、収容物の鮮度が保持されていると判断した。結果を表3に示す。
【0210】
表3に示すように、比較例4の包装用フィルムを用いた場合には、保存日数7日の段階でカビが発生した。
これに対して、実施例6の防カビ積層フィルムを用いた場合には、カビが発生したのは保存日数9日の段階であり、萎れの抑制も良好であり、鮮度が保持されていた。
実施例7の防カビ積層フィルムを用いた場合には、カビが発生したのは保存日数11日の段階であり、萎れの抑制も良好であり、鮮度が保持されていた。
なお、包装されていないナス(無包装サンプル)は、密封されていなかったが、保存日数1日の段階でカビが発生してしまった。さらに、この無包装サンプルは、包装されていないことにより、この段階で萎れの抑制が不良であり、そもそも、保存開始の初期から萎れが生じており、鮮度が保持されていなかった。
【0211】
[試験例6]
(ナスに対する保存効果の確認(2))
実施例7の防カビ積層フィルム、比較例4の包装用フィルムを用いて、サンプルと無包装サンプルを、10℃で14日間静置保存するのに代えて、20℃で14日間静置保存した点以外は、試験例5と同じ方法で評価を行った。結果を表4に示す。
【0212】
表4に示すように、比較例4の包装用フィルムを用いた場合には、保存日数2日の段階でカビが発生してしまった。
これに対して、実施例7の防カビ積層フィルムを用いた場合には、カビが発生したのは保存日数4日の段階であり、萎れの抑制も良好であり、鮮度が保持されていた。
なお、包装されていないナス(無包装サンプル)は、密封されていないことで、周辺環境の水分量が上昇することがなく、カビが発生したのは保存日数7日の段階であったが、包装されていないことにより、この段階で萎れの抑制が不良であり、そもそも、保存開始の初期から萎れが生じており、鮮度が保持されていなかった。
【0213】
[試験例7]
(だだちゃ豆に対する保存効果の確認)
実施例8の防カビ積層フィルムを2枚用意し、大気下において、これら防カビ積層フィルムの間に、平均質量257gのだだちゃ豆を挟んだ状態で、これら防カビ積層フィルムの周辺部同士を重ね合せ、熱ラミネートした。以上により、上述の防カビ積層フィルムから作製された透明な袋(防カビ包装体)の内部に、上述の257gのだだちゃ豆が収容され、密封されたサンプルを作製した。このようなサンプルを合計で6個作製した。
同様に、実施例9の防カビ積層フィルム、及び比較例5の包装用フィルムを用いて、これら実施例又は比較例ごとに、6個のサンプルを作製した。
得られた袋(防カビ包装体、比較用の包装体)の、収容物100gあたりの防カビ剤の含有量(g)を表4に示す。
【0214】
次いで、上記で得られたサンプルを、25℃で7日間静置保存し、この間、密封されているだだちゃ豆を袋越しに目視観察して、だだちゃ豆にカビが発生するまでの保存日数を確認した。また、保存終了後のだだちゃ豆について、萎れの抑制の程度を目視観察し、食べることが可能な部位の食味を確認し、試験例1の場合と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0215】
表4に示すように、比較例5の包装用フィルムを用いた場合には、保存日数1日の段階でカビが発生してしまった。
これに対して、実施例8〜9の防カビ積層フィルムを用いた場合には、いずれもカビが発生したのは保存日数3日の段階であり、萎れの抑制及び食味も良好であり、鮮度が保持されていた。
【0216】
【表1】
【0217】
【表2】
【0218】
【表3】
【0219】
【表4】