(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の干渉監視装置は、特定の作業空間(例えば、水門、橋等の既設高架物の下側水域等)において一定の作業を繰り返し行う建設機械に用いられるものである。そのため、この干渉監視装置を種々様々な作業空間において多様な作業を行う建設機械に適用した場合には、作業機と障害物とが干渉してしまうおそれがあった。
【0006】
例えば、この干渉防止装置では、ブームの運動状態の検出情報のみを用いて(具体的には、ブームの運動状態が所定の範囲内にあるか否かのみに基づいて)、干渉の発生を予測している。そのため、アーム又はバケットを運動させた際に、干渉が生じてしまうおそれがあった。
【0007】
このようなアーム又はバケットの運動による干渉を防止するためには、干渉が発生しないと判定されるブームの運動状態の範囲を狭く設定するという方法が考えられる。
【0008】
しかし、そのように設定した場合には、実際には干渉のおそれがない障害物について干渉するおそれがあると判定され、本来必要のない報知又は駆動制御が生じてしまうおそれがあった。
【0009】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、種々様々な作業空間内において多様な作業を行う建設機械に適用した場合であっても、的確に障害物への干渉を監視することができる干渉監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の干渉監視装置は、移動体と、前記移動体に旋回自在に搭載された基体と、前記基体に対して可動である作業機とを備えている建設機械の干渉監視装置であって、前記移動体の移動状態の検出情報を取得する移動状態取得部と、前記基体の旋回状態及び前記作業機の姿勢状態を含む運動状態の検出情報を取得する運動状態取得部と、前記移動状態の検出情報を用いて算出した前記移動体の現在時刻以降の経路、前記運動状態の検出情報を用いて推定した、該経路上における前記建設機械の存在領域及び前記障害物の検出情報を用いて、現在時刻以降における該障害物と前記建設機械との干渉の発生を予測する干渉予測部とを備えていることを
基本構成とする
。
そして、本発明では、前記干渉予測部は、前記移動状態の検出情報を用いて算出した前記移動体の現在時刻以降の経路、前記運動状態の検出情報を用いて推定した、該経路上の複数のサンプリング位置における前記建設機械の存在領域及び前記障害物の検出情報を用いて、現在時刻以降における該障害物と前記建設機械との干渉の発生を予測する。
さらに、前記移動状態取得部、前記運動状態取得部、前記障害物検出部及び前記干渉予測部は、それぞれの処理を逐次実行するように構成されている。
【0011】
ここで、「障害物の検出情報」は、建設機械と建設機械の周囲に存在する障害物との相対的な位置関係を特定し得るような情報をいう。
【0012】
また、ここで
、前記基本構成における「存在領域」は、その内部に建設機械が存在する領域であり、当該領域に障害物が存在する場合には、その障害物と建設機械との干渉が生じ得る領域を指す。この「存在領域」は、例えば、現在時刻以降の複数の時刻での存在領域、現在時刻以降の建設機械の予測される移動経路上の複数の地点での存在領域、又は、当該複数の時刻若しくは複数の地点での存在領域を連設してなる領域(換言すれば、現在時刻以降の建設機械の空間的な通過領域)のいずれであってもよい
。本発明では、「存在領域」として前記経路上の複数のサンプリング位置での存在領域が用いられる。
【0013】
このように、本発明の干渉監視装置では、移動体の移動状態の検出情報、上部旋回体及び作業機の運動状態の検出情報及び障害物の検出情報を用いて、現在時刻以降における障害物と建設機械との干渉の発生を予測している
。この場合、本発明では、前記移動状態の検出情報を用いて移動体の現在時刻以降の経路が算出され、さらに該経路上の複数のサンプリング位置における建設機械の存在領域が前記運動状状態の検出情報を用いて推定される。このため、建設機械の周囲に存在する実際の障害物を検出した状態で、建設機械の将来において予測される動作状態を反映させて、障害物と建設機械との干渉の発生を予測することができる。
【0014】
ここで、その予測に際しては、移動体の経路の算出だけではなく、その経路上における建設機械の存在領域の推定も行っている。また、存在領域を推定する際には、作業機械の姿勢状態だけではなく、基体の旋回状態も考慮している。これにより、建設機械と障害物との干渉を判定すべき空間が明確に限定されることになるので、将来の(現在時刻以降の)干渉の発生の予測が適切に行われる。
【0015】
したがって、本発明の干渉監視装置によれば、種々様々な作業空間内において多様な作業を行う建設機械に適用した場合であっても、的確に障害物への干渉を監視することができる
。さらに、本発明の干渉監視装置においては、前記移動状態取得部、前記運動状態取得部、前記障害物検出部及び前記干渉予測部は、それぞれの処理を逐次実行するように構成されているので、移動体の移動状態の検出情報、作業機の運動状態の検出情報及び障害物の検出情報が逐次更新され、その更新された検出情報を用いて、干渉の発生の予測が行われる。この場合、前記経路上の複数のサンプリング位置での建設機械の存在領域を推定し、該存在領域を用いて干渉の発生の予測を行うことが逐次実行される。このため、建設機械の周囲の障害物の状況変化、又は、建設機械の動作状態の変化を随時反映させながら、干渉の発生を予測できる。ひいては、干渉の発生の予測についての信頼性が高まり、さらに的確に障害物への干渉を監視することができるようになる。
【0016】
また、本発明の干渉監視装置においては、前記干渉予測部は、前記移動体の進行方向における前記建設機械の最前端及び最後端で該進行方向に直交する2つの平面のうち少なくとも最前端側の平面と、前記建設機械の高さ方向における最上端で該高さ方向に直交する平面と、前記移動体の幅方向における前記建設機械の両端で該幅方向に直交する平面とで囲まれた領域を前記存在領域として推定するように構成されていることが好ましい。
【0017】
ここで、移動体の進行方向における建設機械の「最前端」は、移動体の進行方向前方側(移動体が移動する向きに向かう側)の先端を意味し、移動体の進行方向における建設機械の「最後端」は、移動体の進行方向後方側(移動体が移動する向きと逆側)の先端を意味する。また、「幅方向」は、建設機械の進行方向及び高さ方向に直交する方向、又は、ほぼ直交する方向を指す。
【0018】
このように、干渉予測部で認識する存在領域の形状を、建設機械の実際の形状そのもののような複雑な形状ではなく、上記のように規定した直方体のような単純な形状とすることにより、存在領域を推定する処理及び干渉の発生を予測する処理の演算負荷を軽減することができるとともに、干渉の発生の予測を簡易な処理で実現することができるようになる。
【0019】
また、本発明の干渉監視装置においては、前記干渉予測部は、前記存在領域及び前記障害物の検出情報を用いて算出した、前記存在領域から該障害物までの距離に基づいて、該障害物と前記建設機械との干渉の発生を予測するように構成されていることが好ましい。
【0020】
このように、障害物の検出情報を用いて算出した存在領域から障害物までの距離を用いて干渉の発生を予測することにより、干渉の発生の予測の信頼性を高めることができるようになる。
【0021】
また、本発明の干渉監視装置においては、前記干渉予測部によって干渉の発生が予測された場合に、前記障害物と前記建設機械との干渉の可能性が高まる方向への前記作業機の運動、前記移動体の移動又は前記基体の旋回を制限する動作制限部を備えていることが好ましい。
【0022】
このように、干渉予測部が予測した結果に基づいて、作業機の運動、移動体の移動又は基体の旋回といった動作を制限することにより、運転者が干渉の可能性を認識していない場合、又は、運転者が非熟練者である場合であっても、干渉を防止しやすくなる。
【0023】
ここで、動作制限部による「制限」は、その動作の停止、その動作の速度の低減等、その動作そのものの制限の他、その動作を行うための操作(例えば、動作を指示するためのレバー操作)の制限であってもよい。
【0024】
また、本発明の干渉監視装置においては、前記動作制限部を備えている場合には、前記動作制限部は、前記障害物と前記存在領域とが接近する方向を前記干渉の可能性が高まる方向として認識するように構成されていることが好ましい。
【0025】
このように、動作の制限の基準となる「干渉の可能性が高まる方向」として障害物と存在領域とが接近する方向を用いることにより、動作の制限による干渉の防止を的確に行うことができるようになる。
【0026】
また、本発明の干渉監視装置としては、前記干渉予測部によって干渉の発生が予測された場合に、前記建設機械の運転者に報知を行う報知部を備えていることが好ましい。
【0027】
このように、干渉予測部が予測した結果に基づいて報知を行うようにすることにより、容易に運転者が干渉の可能性を認識できるようになる。そのため、運転者は、的確に干渉を防止する処置を行うことができるようになる。
【0028】
ここで、報知部による「報知」は、ブザー等の音声による報知の他、警告灯等による報知等、運転者が五感を通じて干渉の可能性を認識できるものであればどのようなものであってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。まず、
図1〜
図3を参照して、建設機械である油圧ショベルSの概略構成について説明する。
【0033】
図1及び
図2に示すように、油圧ショベルSは、下部走行体1(移動体)と、下部走行体1に搭載されている上部旋回体2(基体)と、上部旋回体2に対して可動である作業機3と、上部旋回体2を下部走行体1に対して旋回可能に支持する旋回機構4とを備えている。
【0034】
下部走行体1は、ロアフレーム1aと、ロアフレーム1aの両側に設けられた一対のクローラ1bとを備えている。クローラ1bは、油圧アクチュエータである走行用油圧モータ(左走行用油圧モータML及び右走行用油圧モータMR(
図3参照))によって駆動される。
【0035】
なお、移動体は、ロアフレームとクローラとによって構成された走行体に限定されるものではなく、基体及び作業機を搭載可能であり、移動可能なものであればよい。例えば、移動体は、車輪で移動する移動体、又は、脚式の移動体であってもよい。また、建設機械が水上で使用されるものである場合には、移動体は、台船等であってもよい。
【0036】
上部旋回体2のキャブ2bには、
図1及び
図2では図示省略されているが、ブザー、表示端末等からなる出力機器2b1(
図4参照)と、運転者が作業機3の運動、上部旋回体2の旋回動作、及び下部走行体1の移動動作を操作するための各種レバー(不図示)とが備えられている。
【0037】
上部旋回体2の機械室2cには、
図1及び
図2では図示省略されているが、下部走行体1のクローラ1b、作業機3、旋回機構4等のアクチュエータに油圧を供給する油圧回路HCが設置されている。
【0038】
図3を参照して、油圧ショベルSの油圧回路HCの主要な構成を概略的に説明する。
【0039】
油圧回路HCには、油圧ショベルSのエンジン(不図示)により駆動される第1油圧ポンプP1及び第2油圧ポンプP2から、油圧が供給される。
【0040】
第1油圧ポンプP1は、2つの吐出ポートを有している。その2つの吐出ポートのうちの1つである第1吐出ポートP1aは、走行直進弁V0を介して、左走行用方向切換弁V1、ブーム用方向切換弁V2及びバケット用方向切換弁V3に接続されている。また、その2つの吐出ポートのうちの1つである第2吐出ポートP1bは、走行直進弁V0を介して、右走行用方向切換弁V4及びアーム用方向切換弁V5に接続されている。
【0041】
方向切換弁である左走行用方向切換弁V1、ブーム用方向切換弁V2、バケット用方向切換弁V3、右走行用方向切換弁V4及びアーム用方向切換弁V5は、それぞれ油圧アクチュエータである、左走行用油圧モータML、ブームシリンダ3d、バケットシリンダ3f、右走行用油圧モータMR、アームシリンダ3eに接続されている。これらの各油圧アクチュエータのそれぞれは、各々に対応する方向切換弁を介して、油圧ポンプP1から圧油が供給されるようになっている。
【0042】
なお、走行直進弁V0は、油圧ショベルSの直進走行時に左走行用油圧モータML及び右走行用油圧モータMRに供給される圧油の流量を均等にするためのものである。
【0043】
第2油圧ポンプP2は、1つの吐出ポートを有している。その吐出ポートである第3吐出ポートP2aは、旋回用方向切換弁V6に接続されている。
【0044】
方向切換弁である旋回用方向切換弁V6は、油圧アクチュエータである旋回用油圧モータMTに接続されている。旋回用油圧モータMTは、旋回用方向切換弁V6介して、油圧ポンプP2から圧油が供給されるようになっている。
【0045】
各方向切換弁は、それぞれに対応する油圧アクチュエータの動作方向及び動作速度を制御するためのスプール弁であり、パイロット操作器(不図示)から与えられるパイロット圧により作動するようになっている。
【0046】
なお、
図3を用いて説明した油圧回路HCは一例であり、油圧回路は、上記と異なる構成のものでもよい。
【0047】
図1及び
図2に戻って、作業機3は、上部旋回体2に回動自在に連結されているブーム3aと、ブーム3aに回動自在に連結されているアーム3bと、アーム3bに回動自在に連結されているバケット3cとを有している。
【0048】
また、作業機3は、上部旋回体2及びブーム3aに両端が取り付けられ、ブーム3aを動作させるブームシリンダ3dと、ブーム3a及びアーム3bに両端が取り付けられ、アーム3bを動作させるアームシリンダ3eと、アーム3b及びバケット3cに両端が取り付けられ、バケット3cを動作させるバケットシリンダ3fとを有している。
【0049】
ブーム3aは、上部旋回体2に第1支軸3gで回動可能に連結されており、その第1支軸3gを支点として、ブームシリンダ3dの伸縮動作によって回動する。アーム3bは、ブーム3aに第2支軸3hで回動可能に連結されており、その第2支軸3hを支点として、アームシリンダ3eの伸縮動作によって回動する。バケット3cは、アーム3bに第3支軸3iで回動可能に連結されており、その第3支軸3iを支点として、バケットシリンダ3fの伸縮動作によって回動する。
【0050】
旋回機構4は、下部走行体1のロアフレーム1aと上部旋回体2のアッパーフレーム2aとの間に配置されている。旋回機構4は、旋回軸線aを軸線として、ロアフレーム1aに対してアッパーフレーム2aをヨー方向に旋回可能に連結している。
【0051】
図4を参照して、油圧ショベルSには、さらに、各種センサと、制御装置Cとが搭載されている。
【0052】
センサには、油圧ショベルSの周囲の障害物(外界物体)を検出するための障害物センサS1と、下部走行体1の移動状態を示す情報として、下部走行体1のヨー方向の角速度及び移動速度をそれぞれ検出するための角速度検出用センサS2及び移動速度検出用センサS3と、作業機3の姿勢状態を検出するための作業機状態検出用センサS4と、上部旋回体2の旋回状態を検出するための旋回体状態検出用センサS5とが含まれる。
【0053】
障害物センサS1は、本実施形態では、例えば、
図1に示すように、キャブ2b及び機械室2cの上部に取り付けられた複数の赤外線カメラ2dにより構成される。
【0054】
複数の赤外線カメラ2dは、それぞれ、油圧ショベルSの周囲(具体的には、前方、側方及び後方)の環境を距離画像として撮影するカメラである。
【0055】
本実施形態では、複数の赤外線カメラ2dには、キャブ2bの上部に設置され、油圧ショベルSの前方の距離画像を撮影する第1カメラ2d1と、機械室2cの上部に設置され、油圧ショベルSの側方の距離画像を撮影する左右一対の第2カメラ2d2と、機械室2cの上部に設置され、油圧ショベルSの後方の距離画像を撮影する第3カメラ2d3とが含まれている。
【0056】
なお、油圧ショベルSは、前方用に1つ、側方用に2つ、後方用に1つの計4つの赤外線カメラ2dを備えているが、赤外線カメラ2dの設置数は、カメラの可動範囲、画角等に応じて適宜変更してもよい。また、赤外線カメラ2dの搭載場所は、上記と異なっていてもよい。
【0057】
また、障害物センサS1は赤外線カメラ2d以外のセンサであってもよい。例えば、赤外線カメラに代わり、レーザレンジファインダ、可視光の撮影を行うステレオカメラ等を障害物センサS1として使用することもできる。
【0058】
角速度検出用センサS2は、例えば下部走行体1に搭載されるジャイロセンサ等により構成される。
【0059】
移動速度検出用センサS3としては、本実施形態では、例えば下部走行体1の移動操作を行うためのレバーの操作量を検出するレバー操作量検出器が用いられる。
【0060】
ここで、下部走行体1の移動速度は、下部走行体1の移動操作用のレバーの操作量に応じて調整されるので、上記レバー操作量検出器を、移動速度検出用センサS3として利用できる。ただし、レバー操作量検出器の代わりに、例えば、クローラ1bの回転速度を検出するセンサ等、下部走行体1の実際の移動速度に応じた検出信号を出力するセンサを移動速度検出用センサS3として用いてもよい。
【0061】
作業機状態検出用センサS4は、本実施形態では、ブーム3a、アーム3b及びバケット3cのそれぞれの回動角度θ1,θ2,θ3を検出する角度センサにより構成される。その角度センサは、例えばポテンショメータ、レゾルバ、ロータリーエンコーダ等により構成され得る。
【0062】
なお、作業機状態検出用センサS4は、作業機3の姿勢状態を検出できるものであればよい。作業機状態検出用センサS4として、例えば、ブームシリンダ3d,アームシリンダ3e,バケットシリンダ3fのそれぞれのストローク長を検出する変位センサを用いることもできる。
【0063】
旋回体状態検出用センサS5は、本実施形態では、例えば下部走行体1に対する上部旋回体2の旋回角度φ(具体的には、ロアフレーム1aに対するアッパーフレーム2aの旋回角度)を検出する角度センサにより構成される。その角度センサは、例えばレゾルバ、ポテンショメータ、ロータリーエンコーダ等により構成され得る。
【0064】
なお、旋回体状態検出用センサS5は、上部旋回体2(基体)の旋回状態を検出できるものであれば、角度センサ以外のセンサを使用し得る。
【0065】
制御装置Cは、干渉監視装置としての機能を含む制御装置である。この制御装置Cは、CPU、RAM、ROM、インターフェース回路等を含む1つ又は複数の電子回路ユニットにより構成される。
【0066】
この制御装置Cは、実装されたハードウェア構成又はプログラムにより実現される機能として、
図4に示すように、油圧ショベルSの周囲に存在する障害物の検出情報を取得する障害物検出部C1と、油圧ショベルSの移動状態の検出情報を取得する移動状態取得部C2と、油圧ショベルSの運動状態の検出情報を取得する運動状態取得部C3と、障害物と油圧ショベルSとの干渉の発生を予測する干渉予測部C4と、油圧ショベルSの運転者に報知を行う報知部C5と、作業機3の運動又は下部走行体1の移動を制限する動作制限部C6とを備えている。これらの各機能部の処理は逐次実行される。
【0067】
障害物検出部C1には、障害物センサS1によって撮影した距離画像を示す画像データが入力される。そして、障害物検出部C1は、入力された画像データにより示される距離画像を、障害物の検出情報として取得する。
【0068】
ここで、「障害物の検出情報」は、油圧ショベルSとその周囲に存在する障害物との相対的な位置関係を特定し得るような情報をいう。上記距離画像は、障害物センサS1の撮影領域に存在する障害物(外界物体)の各部までの距離を示す画像であるので、該距離画像を、障害物の検出情報として利用できる。
【0069】
移動状態取得部C2には、角速度検出用センサS2の検出信号と、移動速度検出用センサS3の検出信号とが入力される。そして、移動状態取得部C2は、角速度検出用センサS2の検出信号により示される下部走行体1のヨー方向の角速度(検出値)と、移動速度検出用センサS3の検出信号により示される下部走行体1の移動速度(指令値)とを、下部走行体1の移動状態の検出情報として取得する。
【0070】
運動状態取得部C3には、作業機状態検出用センサS4の検出信号及び旋回体状態検出用センサS5の検出信号が入力される。そして、運動状態取得部C3は、作業機状態検出用センサS4の検出信号により示される回動角度θ1,θ2,θ3(
図1参照)の検出値を作業機3の姿勢状態の検出情報として取得すると共に、旋回体状態検出用センサS5の検出信号により示される旋回角度φ(
図2参照)の検出値を上部旋回体2の旋回状態の検出情報として取得する。
【0071】
干渉予測部C4は、油圧ショベルSの現在時刻以降の経路を算出する経路算出部C41と、油圧ショベルSの存在領域を推定する存在領域推定部C42とを有している。
【0072】
ここで、「存在領域」は、本実施形態においては、その内部に油圧ショベルSが存在する領域であり、当該領域に障害物が存在する場合には、その障害物と油圧ショベルSとの干渉が生じ得る領域を指す。
【0073】
経路算出部C41は、移動状態取得部C2が取得した検出情報(下部走行体1の角速度(検出値)及び移動速度(指令値))を用いて、油圧ショベルSの現在時刻以降の経路を算出する。
【0074】
具体的には、本実施形態では、経路算出部C41は、取得された検出情報に基づいて認識された下部走行体1の現在の移動状態が継続したと仮定した場合に、油圧ショベルSが現在時刻以降に走行すると予測される経路を算出して認識する。
【0075】
ここで、
図5に示すように、経路上における油圧ショベルSの進行方向は、油圧ショベルSが位置している位置における経路に対する接線方向である。後述する存在領域においては、この接線方向が前後方向に該当する。
【0076】
存在領域推定部C42は、本実施形態では、油圧ショベルSの現在の運動状態(すなわち、作業機3の現在の姿勢状態(回動角度θ1,θ2,θ3)及び上部旋回体2の現在の旋回状態(旋回角度φ))が現在時刻以降も継続すると仮定して、下部走行体1の経路上の各位置における油圧ショベルSの存在領域を推定する。
【0077】
この場合、下部走行体1の経路上の各位置における油圧ショベルSの存在領域(油圧ショベルSの作業空間内での存在領域)は、油圧ショベル上体の現在状態における下部走行体1に対する相対的な存在領域と、経路上の位置及びその位置での下部走行体1の進行方向(経路の接線方向)とに応じて一義的に規定される。
【0078】
そこで、本実施形態では、存在領域推定部C42は、油圧ショベルSの現在状態における上部旋回体2及び作業機3の全体の突出量(下部走行体1から見た突出量)を認識する突出量認識部C421を有している。以降、説明の便宜上、上部旋回体2及び作業機3の全体(油圧ショベルSの下部走行体1を除いた部分の全体)を油圧ショベル上体という。
【0079】
突出量認識部C421は、上部旋回体2及び作業機3に係る既知の寸法、並びに、運動状態取得部C3が取得した現在の回動角度θ1,θ2,θ3(
図1参照)、及び、現在の旋回角度φ(
図2参照)を用いて、突出量を算出する。
【0080】
ここで、
図1に示すように、突出量L1は、下部走行体1に対して固定された点(下部走行体1に対する相対位置があらかじめ設計的に設定された点)である基準点RPから、油圧ショベル上体の最前端までの距離であり、突出量L2は、基準点RPから油圧ショベル上体の最上端までの距離であり、突出量L3は、基準点RPから油圧ショベルSの最後端までの距離である。
【0081】
ここで、移動体の進行方向における建設機械の「最前端」は、移動体の進行方向前方側(移動体が移動する向きに向かう側)の先端を意味し、移動体の進行方向における建設機械の「最後端」は、移動体の進行方向後方側(移動体が移動する向きと逆側)の先端を意味する。
【0082】
なお、油圧ショベル上体の最前端は、より詳しくは、下部走行体1の進行方向前方側の先端であり、油圧ショベル上体の最後端は、より詳しくは、下部走行体1の進行方向後方側の先端である。また、油圧ショベルSでは、下部走行体1の進行方向は、クローラ1bの前後方向である。
【0083】
また、
図2に示すように、突出量L4は、基準点RPから油圧ショベル上体の幅方向右側の最遠端までの距離であり、突出量L5は、基準点RPから油圧ショベル上体の幅方向左側の最遠端までの距離である。
【0084】
ここで「幅方向」は、下部走行体1の進行方向及び高さ方向に直交する方向、又は、ほぼ直交する方向を指す。
【0085】
突出量L1は、下部走行体1の進行方向前方側に作業機3が突出している場合には、作業機3の各構成部材(ブーム3a、アーム3b及びバケット3c)の既知の寸法と、現在の回動角度θ1,θ2,θ3と、現在の旋回角度φとに基づいて算出される。また、上部旋回体2が突出している場合(例えば、下部走行体1の後退時等)には、上部旋回体2の既知の寸法と、現在の旋回角度φとに基づいて算出される。
【0086】
突出量L2は、作業機3の各構成部材の既知の寸法と、現在の回動角度θ1,θ2,θ3と、上部旋回体2の既知の高さとに基づいて算出される。具体的には、現在の回動角度θ1,θ2,θ3から作業機3の最上端の高さを算出した後、その作業機3の高さと上部旋回体2の高さとを比較し、高い方を突出量L2とする。
【0087】
突出量L3は、下部走行体1の進行方向後方側に上部旋回体2が突出している場合には、上部旋回体2の既知の寸法と、現在の旋回角度φとに基づいて算出される。また、作業機3が突出している場合(例えば、下部走行体1の後退時等)には、作業機3の各構成部材(ブーム3a、アーム3b及びバケット3c)の既知の寸法と、現在の回動角度θ1,θ2,θ3と、現在の旋回角度φとに基づいて算出される。
【0088】
突出量L4は、下部走行体1の幅方向右側に作業機3が突出している場合には、作業機3の各構成部材の既知の寸法と、現在の回動角度θ1,θ2,θ3と、現在の旋回角度φとに基づいて算出される。また、上部旋回体2が突出している場合には、上部旋回体2の既知の寸法と、現在の旋回角度φとに基づいて算出される。
【0089】
突出量L5は、下部走行体1の幅方向左側に作業機3が突出している場合には、作業機3の各構成部材の既知の寸法と、現在の回動角度θ1,θ2,θ3と、現在の旋回角度φに基づいて算出される。また、上部旋回体2が突出している場合には、上部旋回体2の既知の寸法と、現在の旋回角度φに基づいて算出される。
【0090】
存在領域推定部C42は、下部走行体1の既知の寸法と算出された油圧ショベル上体の突出量とを比較し、その比較結果に基づいて、下部走行体1の進行方向における油圧ショベルSの最前端及び最後端でその進行方向に直交する2つの平面と、油圧ショベルSの高さ方向における最上端でその高さ方向に直交する平面と、下部走行体1の幅方向における油圧ショベルSの両端でその幅方向に直交する平面とで囲まれた直方体の領域(下部走行体1に対して固定された領域)を、経路算出部C41が算出する経路上の任意の位置での下部走行体1から見た相対的な存在領域として推定する。
【0091】
例えば、油圧ショベルSの現在状態が
図1に示した状態であり、油圧ショベルSが前進している場合、存在領域の進行方向における最前端となる面を規定する際には、まず、基準点RPから進行方向前側における下部走行体1の最前端までの寸法と油圧ショベル上体の最前端までの寸法である突出量L1とを比較する。
図1の姿勢では、突出量L1の方が下部走行体1の対応する寸法よりも大きいので、突出量L1の先端と直交する平面が、存在領域の最前端の面となる(
図1参照)。
【0092】
また、存在領域の最上端となる面を規定するに際には、基準点RPから下部走行体1の最上端までの寸法と油圧ショベル上体の最上端までの寸法である突出量L2とを比較する。
図1の姿勢では、突出量L2の方が下部走行体1の対応する寸法よりも大きいので、突出量L2の先端と直交する面が、存在領域の最後端の面となる(
図1参照)。
【0093】
また、存在領域の進行方向における最後端となる面を規定するに際には、基準点RPから進行方向後側における下部走行体1の最後端までの寸法と油圧ショベル上体の最後端までの寸法である突出量L3とを比較する。
図1の姿勢では、突出量L3の方が下部走行体1の対応する寸法よりも大きいので、突出量L3の先端と直交する面が、存在領域の最後端の面となる(
図1参照)。
【0094】
また、存在領域の幅方向右側の最遠端となる面を規定するに際には、基準点RPから進行方向後側における下部走行体1の幅方向右側の最遠端までの寸法と油圧ショベル上体の最遠端までの寸法である突出量L4とを比較する。
図1の姿勢(すなわち、
図2の姿勢)では、突出量L4の方が下部走行体1の対応する寸法よりも大きいので、突出量L4の先端と直交する面が、存在領域の幅方向右側の最遠端の面となる(
図2参照)。
【0095】
また、存在領域の幅方向左側の最遠端となる面を規定するに際には、基準点RPから進行方向後側における下部走行体1の幅方向左側の最遠端までの寸法と油圧ショベル上体の最遠端までの寸法である突出量L5とを比較する。
図1の姿勢(すなわち、
図2の姿勢)では、突出量L5の方が下部走行体1の対応する寸法よりも大きいので、突出量L5の先端と直交する面が、存在領域の幅方向左側の最遠端の面となる(
図2参照)。
【0096】
存在領域推定部C42は、上記の如く、油圧ショベルSの現在状態が継続すると仮定して、現在時刻以降における下部走行体1に対する相対的な存在領域(下部走行体1から見た油圧ショベルSの存在領域)を推定する。この場合、経路算出部C41が算出した将来の経路上の各位置での油圧ショベルSの存在領域(作業空間での存在領域)は、下部走行体1に対する相対的な存在領域を、経路上の各位置に移動させ、且つ、その位置での経路の接線方向に該存在領域の前後方向を一致させた領域として推定されることとなる。
【0097】
油圧ショベルSでは、存在領域推定部C42で認識する存在領域の形状を、油圧ショベルSの実際の形状そのもののような複雑な形状ではなく、上記のように規定した直方体のような単純な形状としている。これにより、下部走行体1の予測される経路上での存在領域を推定する処理及び干渉の発生を予測する処理の演算負荷を軽減することができるとともに、干渉の発生の予測を簡易な処理で実現することができるようになっている。
【0098】
そして、干渉予測部C4は、下部走行体1の経路上の存在領域及び障害物の検出情報を用いて、存在領域から障害物までの距離を算出し、その算出した距離に基づいて、障害物と建設機械との干渉の発生を予測する。
【0099】
具体的には、干渉予測部C4は、まず、障害物の検出情報である距離画像に基づいて、経路算出部C41が算出した経路上の各位置(経路上の複数のサンプリング位置)における存在領域から障害物までの距離を算出する。次に、干渉予測部C4は、経路算出部C41が算出した経路上の各位置において、存在領域から障害物までの距離が所定の値以下になるか否かを判定して、干渉の発生を予測する。
【0100】
例えば、
図6に示すように、油圧ショベルSの進行方向前方側に、油圧ショベルの存在領域ERと高さ方向で重なり得る位置に存在する障害物Oが検出されており、且つ、下部走行体1の経路上のある位置において、存在領域ERから障害物Oまでの距離が所定の距離D以下になる場合に、干渉が発生すると判定する。
【0101】
報知部C5は、干渉予測部C4によって干渉の発生が予測された場合に、油圧ショベルSの運転者に報知を行う。
【0102】
具体的には、上部旋回体2のキャブ2bに設置された出力機器を介して、運転者に対する報知が行われる。具体的には、ブザー等の音声による報知の他、警告灯による報知が行われる。
【0103】
このように、油圧ショベルSでは、干渉予測部C4が予測した結果に基づいて報知部C5が報知を行うので、容易に運転者が干渉の可能性を認識できる。そのため、運転者は、的確に干渉を防止する処置を行うことができる。
【0104】
ここで、本発明の干渉監視装置における「報知」は、上記のようなブザー等の音声による報知及び警告灯等による報知に限定されるものではなく、運転者が五感を通じて干渉の可能性を認識できるものであればどのようなものであってもよい。
【0105】
動作制限部C6は、干渉予測部C4によって干渉の発生が予測された場合に、障害物と油圧ショベルSとの干渉の可能性が高まる方向への動作(本実施形態では、作業機3の運動及び下部走行体1の移動)を制限する。
【0106】
具体的には、動作制限部C6は、下部走行体1の速度を検出するための移動速度検出用センサS3からの検出信号、及び、作業機3を操作するためのレバー(不図示)からの信号を検出し、その信号が存障害物と存在領域とが接近する方向のものである場合には、その動作を停止させるように、作業機3又は下部走行体1に対応する油圧アクチュエータ(
図3参照)に供給される油圧を制御する。
【0107】
ここで、動作制限部C6による「制限」は、上記のような動作の停止といった制限の他、その動作の速度の低減等のその動作そのものの制限、又は、その動作を行うための操作(例えば、動作を指示するためのレバーの操作)の制限であってもよい。
【0108】
このように動作を制限することにより、油圧ショベルSでは、運転者が干渉の可能性を認識していない場合、又は、運転者が非熟練者である場合にも、干渉を防止できるようになっている。
【0109】
なお、油圧ショベルSでは、動作制限部C6は、動作の制限による干渉の防止を的確に行うために、障害物と存在領域とが接近する方向を「干渉の可能性が高まる方向」として認識するように構成されている。
【0110】
しかし、本発明の干渉監視装置における「干渉の可能性が高まる方向」は、そのような方向に限定されるものではない。例えば、経路の一定区間では干渉の可能性が低くなる方向であっても、経路の全体としては干渉の可能性が高くなる方向がある場合には、その方向を「干渉の可能性が高まる方向」として規定してもよい。
【0111】
また、動作制限部C6による制限としては、作業機3の運動及び下部走行体1(移動体)の移動のいずれか一方を制限するようにしてもよい。また、油圧ショベルSは下部走行体1(移動体)に対して上部旋回体2(基体)が旋回可能に構成されているものであるので、障害物と油圧ショベルSとの干渉の可能性が高まる方向への上部旋回体2の旋回を制限するようにしてもよい。
【0112】
なお、油圧ショベルSでは、制御装置Cに報知部C5及び動作制限部C6を設けているが、本発明の干渉監視装置はそのような構成に限定されるものではなく、報知部C5及び動作制限部C6のいずれか一方又は両方を省略してもよい。
【0113】
次に、
図4、
図5及び
図7を参照して、干渉監視装置が油圧ショベルSと障害物との干渉を監視する際に行う干渉防止処理について説明する。
図7は、制御装置Cが行う干渉防止処理を示すフローチャートである。
【0114】
まず、障害物検出部C1は、障害物センサS1である赤外線カメラ2dによって撮影した障害物の検出情報としての距離画像を取得する(
図7/STEP01)。
【0115】
次に、移動状態取得部C2は、角速度検出用センサS2の検出信号により示される下部走行体1のヨー方向における角速度と、移動速度検出用センサS3の検出信号により示される下部走行体1の移動速度を取得し、周囲の障害物を検出する(
図7/STEP02)。
【0116】
次に、運動状態取得部C3は、作業機状態検出用センサS4の検出信号により示される回動角度θ1,θ2,θ3(
図1参照)、及び、旋回体状態検出用センサS5の検出信号により示される旋回角度φ(
図2参照)を取得する(
図7/STEP03)。
【0117】
次に、干渉予測部C4の経路算出部C41は、移動状態取得部C2が取得した下部走行体1の角速度、及び、移動速度を用いて、油圧ショベルSの現在時刻以降の経路を算出する(
図7/STEP04)。
【0118】
次に、干渉予測部C4の存在領域推定部C42は、油圧ショベル上体の突出量、下部走行体1の既知の寸法及び算出した経路を用いて、経路上の各位置(経路上の複数のサンプリング位置)における存在領域を推定する(
図7/STEP05)。
【0119】
具体的には、まず、干渉予測部C4の存在領域推定部C42の突出量認識部C421が、上部旋回体2及び作業機3に係る既知の寸法、並びに、運動状態取得部C3が取得した回動角度θ1,θ2,θ3(
図1参照)、及び、旋回角度φ(
図2参照)を用いて、油圧ショベル上体の突出量L1〜L5を算出する。次に、干渉予測部C4の存在領域推定部C42が、下部走行体1の既知の寸法と算出された油圧ショベル上体の突出量とを比較し、その比較結果に基づいて、存在領域を推定する。
【0120】
次に、干渉予測部C4は、経路上の各位置における存在領域から障害物までの距離を算出する(
図7/STEP06)。
【0121】
次に、干渉予測部C4は、油圧ショベルSの現在位置から所定の範囲内の位置、又は、所定の時間内に到達する位置において、算出した距離が所定の距離(例えば、
図6で示した距離D)以下となる障害物が存在するか否かを判定する(
図7/STEP07)。
【0122】
障害物が存在する場合(STEP07でYESの場合)には、干渉の発生が予測されたことになるので、報知部C5は、運転者に報知を行う(
図7/STEP08)。
【0123】
次に、動作制限部C6は、下部走行体1及び作業機3を動作させるための信号(例えば、移動速度検出用センサS3からの検出信号)を検出し、その信号に基づく指示が干渉の可能性が高まる方向のものであるか否かを判定する(
図7/STEP09)。
【0124】
指示が干渉の可能性が高まる方向のものである場合(STEP09でYESの場合)には、下部走行体1又は作業機3の動作を制限するように、作業機3又は下部走行体1に対応する油圧アクチュエータ(
図3参照)に供給される油圧を制御する(
図7/STEP10)。
【0125】
動作制限部C6による動作制限が行われた後、又は、障害物が存在しない場合(STEP07でNOの場合)若しくは指示が干渉の可能性が高まる方向のものでない場合(SYEP09でNOの場合)には、制御装置Cは今回の干渉防止処理を終了する。
【0126】
上記の干渉防止処理は、所定の時間の経過する度、又は、所定の距離を移動する度に、逐次実行される。そのため、油圧ショベルSの制御装置Cでは、下部走行体1の移動状態の検出情報、上部旋回体2の旋回状態及び作業機3の姿勢状態を含む運動状態の検出情報及び障害物の検出情報が逐次更新され、その更新された検出情報を用いて、干渉の発生の予測が行われる。
【0127】
このよう構成することにより、下部走行体1の移動状態の検出情報、上部旋回体2の旋回状態及び作業機3の姿勢状態を含む運動状態の検出情報及び障害物の検出情報が逐次更新され、その更新された検出情報を用いて、干渉の発生の予測が行われる。このため、油圧ショベルSの周囲の障害物の状況変化、又は、油圧ショベルSの動作状態の変化を随時反映させながら、干渉の発生を予測できる。
【0128】
なお、干渉防止処理で行われる処理の全てについて逐次実行せずに、適宜必要な処理のみを行うようにしてもよい。例えば、経路や存在領域の認識(
図7のSTEP02〜STEP05)は、上部旋回体2の旋回状態及び作業機3の姿勢状態を含む運動状態又は下部走行体1の移動状態の変更が行われた場合にのみに行うようにしてもよい。
【0129】
以上説明したように、油圧ショベルSの制御装置Cでは、下部走行体1の移動状態の検出情報、上部旋回体2の旋回状態及び作業機3の姿勢状態を含む運動状態の検出情報及び障害物の検出情報を用いて、現在時刻以降における障害物と油圧ショベルSとの干渉の発生を予測している。このため、油圧ショベルSの周囲に存在する実際の障害物を検出した状態で、油圧ショベルSの将来において予測される動作状態を反映させて、障害物と油圧ショベルSとの干渉の発生を予測することができる。
【0130】
したがって、制御装置Cによれば、油圧ショベルSが種々様々に環境な作業空間内において多様な作業を行う場合であっても、的確に障害物への干渉を監視することができる。
【0131】
以上、図示の実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限られるものではない。
【0132】
例えば、上記実施形態においては、存在領域推定部C42で推定される存在領域は、現在時刻以降の油圧ショベルSの予測される経路上の複数のサンプリング位置における所定の時刻において、その内部に油圧ショベルSが存在する領域であり、当該領域に障害物が存在する場合には、その障害物と作業機3との干渉が生じ得る領域を指している。しかし、本発明の存在領域はそのような領域に限定されるものではない。
【0133】
例えば、現在時刻以降の複数の時刻での存在領域、又は、当該複数の時刻若しくは複数の地点での存在領域を連設してなる領域(換言すれば、現在時刻以降の建設機械の空間的な通過領域)のいずれであってもよい。
【0134】
また、上記実施形態においては、経路算出部C41は、取得された検出情報に基づいて認識された現在の運動状態が継続したと仮定した場合に、油圧ショベルSが現在時刻以降に走行すると予測される経路を算出して認識している。しかし、本発明の経路の算出方法は、このような取得された検出情報に基づいて認識された現在の運動状態が継続したと仮定する方法に限定されるものではない。
【0135】
例えば、過去の所定期間における取得された移動体の移動状態の検出情報(すなわち、検出情報の履歴)を参照して、外挿的な手法によって将来の経路を予測する方法等を用いてもよい。
【0136】
また、上記実施形態においては、存在領域推定部C42の突出量認識部C421は、存在領域を推定する際に用いる突出量として、上部旋回体2(基体)及び作業機3の全体である油圧ショベル上体の突出量を用いている。しかし、本発明の干渉監視装置は、このような構成に限定されるものではない。例えば、基体の突出量と作業機の突出量を個別に算出し、それぞれと移動体の既知の寸法とを比較して、存在領域を推定するようにしてもよい。
【0137】
また、上記実施形態においては、存在領域の形状は、建設機械と障害物との干渉の発生の予測に用い得る形状であれば、必ずしも直方体である必要はない。例えば、推定する存在領域は、建設機械の実際の形状そのもののような形状又はそれに近似させた形状であってもよい。
【0138】
また、移動体は、進行方向前方に向かって移動するので、一般には、移動体の進行方向後方側で建設機械と障害物との干渉が発生する可能性はないか、もしくはほとんどない。したがって、建設機械の存在領域のうちの進行方向後方側の境界(上記実施形態の油圧ショベルSにおいては、上部旋回体2の後方側の突出量L3)を考慮せずに存在領域を推定してもよい。
【0139】
また、上記実施形態においては、経路算出部C41及び存在領域推定部C42において、存在領域の推定及び経路の算出を行って、現在時刻以降における障害物と建設機械である油圧ショベルSとの干渉の発生を予測している。しかし、本発明の干渉監視装置は、存在領域の推定や経路の算出を行わずに、干渉の発生を予測するようにしてもよい。
【0140】
例えば、基体及び作業機の運動状態の検出情報から現在時刻における建設機械の高さのみを認識し、移動体の移動状態の検出情報に基づいて算出された経路上に、建設機械の高さよりも低い障害物があるか否かを判定するようにしてもよい。