特許第6859827号(P6859827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6859827スカム堰、双ロール式連続鋳造装置、及び、薄肉鋳片の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859827
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】スカム堰、双ロール式連続鋳造装置、及び、薄肉鋳片の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/06 20060101AFI20210405BHJP
   C04B 37/00 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   B22D11/06 330B
   C04B37/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-83053(P2017-83053)
(22)【出願日】2017年4月19日
(65)【公開番号】特開2018-176249(P2018-176249A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直嗣
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−253552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00〜11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する一対の冷却ロールと一対のサイド堰によって形成された溶融金属プール部に、溶融金属を供給し、前記冷却ロールの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する双ロール式連続鋳造装置において、前記溶融金属プール部に配設されるスカム堰であって、
堰本体と、この堰本体の少なくとも前記溶融金属プール部の溶融金属と接触する領域の前記冷却ロール側を向く面に貼り付けされた多孔質層と、を備え
前記多孔質層は、気孔率が50%以上98%以下の範囲内、厚さが0.5mm以上10mm以下の範囲内とされていることを特徴とするスカム堰。
【請求項2】
前記多孔質層は、セラミックスファイバーからなる多孔質シートで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスカム堰。
【請求項3】
前記多孔質層は、アルミナ又はジルコニアで構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスカム堰。
【請求項4】
回転する一対の冷却ロールと一対のサイド堰によって形成された溶融金属プール部に、溶融金属を供給し、前記冷却ロールの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する双ロール式連続鋳造装置であって、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のスカム堰が、前記溶融金属プール部に配設されていることを特徴とする双ロール式連続鋳造装置。
【請求項5】
回転する一対の冷却ロールと一対のサイド堰によって形成された溶融金属プール部に、溶融金属を供給し、前記冷却ロールの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造方法であって、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のスカム堰を、前記溶融金属プール部に配設することを特徴とする薄肉鋳片の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の冷却ロールと一対のサイド堰によって形成された溶融金属プール部に溶融金属を供給し、前記冷却ロールの周面に凝固シェルを形成・成長させて、薄肉鋳片を製造する双ロール式連続鋳造装置において、前記溶融金属プール部に配設されるスカム堰、このスカム堰を用いた双ロール式連続鋳造装置及び薄肉鋳片の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属の薄肉鋳片を製造する方法として、内部に水冷構造を有し互いに逆方向に回転する一対の冷却ロールを備え、回転する一対の冷却ロールと一対のサイド堰によって形成された溶融金属プール部に溶融金属を供給し、前記冷却ロールの周面に凝固シェルを形成・成長させ、一対の冷却ロールの外周面にそれぞれ形成された凝固シェル同士をロールキス点で圧着して所定の厚さの薄肉鋳片を製造する双ロール式連続鋳造装置が提供されている。このような双ロール式連続鋳造装置は、各種金属において適用されている。
【0003】
ここで、上述の溶融金属プール部においては、酸化物等が溶融金属プール部の湯面上に浮上して、スカムと称する膜状の異物が形成され、このスカムが冷却ロールの周面に断続的に巻き込まれるおそれがあった。巻き込まれたスカムは、薄肉鋳片の冷却不均一、薄肉鋳片の表面割れ、表面疵、鋳片品質の低下等の原因となる。
そこで、上述の双ロール式連続鋳造装置を用いて薄肉鋳片を鋳造する際には、溶融金属プール部内にスカム堰を配置し、湯面上のスカムが冷却ロールの周面に巻き込まれることを抑制する技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、溶融金属プール部内の浸漬ノズルと冷却ロールの間隙に、板形状のスカム堰を配設し、スカム堰とサイド堰とで囲まれたスペースに、スカムを溶融状態に保持する成分からなるフラックスを連続的あるいは間歇的に添加し、かつ溶融状態にあるスカムを連続的あるいは間歇的に除去しながら該スペース内に溶湯を注入する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、3〜15mass%の黒鉛と、60〜90mass%の金属酸化物を主成分とするスカム堰が提案されている。このスカム堰材質は、高耐熱衝撃性および高耐食性を有し、長時間使用しても溶鋼接触部が溶鋼と反応することなく、鋳片への悪影響も少なく低コストであるとされている。
【0006】
さらに、特許文献3には、スカム堰の少なくとも冷却ロール側を向く面のうち、溶融金属と接触する領域がCaOを10mass%以上50mass%以下の範囲内で含有するCaO含有耐火材で構成されたスカム堰が提案されている。このスカム堰は、溶融金属プール部の湯面上に形成されたアルミナを主成分とする被膜と接触すると、スカム堰と接触したアルミナ被膜にCaOが供給され、被膜の融点が低下するにともない強度が低下することになり、強固なアルミナ被膜を形成する前に低強度となったスカムを連続的に冷却ロールに巻き込ませ、強固なアルミナ被膜の断続的な巻き込みを防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−339754号公報
【特許文献2】特開2003−039139号公報
【特許文献3】特開2015−062948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、双ロール式連続鋳造装置を用いて薄肉鋳片を製造する際においては、上述のように、溶融金属プール部に浮遊する膜状酸化物(いわゆるスカム)は、薄肉鋳片の表面品質を悪化させるため、溶融金属プール部の冷却ロール/浸漬ノズルの間隙にスカム堰を設けて、溶融金属/冷却ロールの接触開始点からのスカム巻込みを防止する必要がある。
【0009】
ここで、スカム堰は、溶融金属プール部に浸漬されるために、浸漬ノズルから吐出流が衝突することになる。また、スカム堰は、その上方部分が支持され、下方部分が溶融金属に浸漬されることから、温度差が生じ、大きな熱応力が作用することになる。
このため、スカム堰には、溶融金属と接触しても反応及び溶融しないこと、及び、熱応力や熱衝撃に対して優れた耐性を有することが求められる。
【0010】
さらに、スカム堰は冷却ロールと浸漬ノズルの間隙に配設されるため、予熱は極めて困難であり、溶融金属が接すると表面に溶融金属が凝固した地金が生じることがある。特に鋳造初期においては、溶鋼からの熱供給が不十分なためスカム堰への地金付着が生じやすい。スカム堰への地金付着が生じると、薄肉鋳片の鋳造中に地金が脱落して、薄肉鋳片とともに巻き込まれるおそれがあり、薄肉鋳片の品質を損なうとともに安定製造を妨げる障壁となる。
【0011】
地金が薄肉鋳片とともに一対の冷却ロール間に引き込まれると、薄肉鋳片とともに地金がロール間で圧着されるため、薄肉鋳片の板厚が局所的に大きくなり、地金がロールに噛み込む際に一時的に冷却ロール間隔が開き、薄肉鋳片の幅全体で厚くなる現象(地金のない部分では、凝固が遅れ高温となる、いわゆるホットバンド)の発生や、それに伴う薄肉鋳片の板厚変動、表面疵等の品質欠陥や板破断、湯漏れ等の操業上のトラブルの原因となる。したがって、双ロール式連続鋳造装置を用いて薄肉鋳片を製造する際において、冷却ロールの周面上の凝固を均一に進行させて健全な薄肉鋳片を製造するためには、スカム堰表面に形成する地金の発生と成長を防止することが重要な課題の一つである。
【0012】
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、スカム堰表面における地金の生成及び成長を抑制し、安定して鋳造を行うことが可能なスカム堰、このスカム堰を備えた双ロール式連続鋳造装置、及び、薄肉鋳片の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係るスカム堰は、回転する一対の冷却ロールと一対のサイド堰によって形成された溶融金属プール部に、溶融金属を供給し、前記冷却ロールの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する双ロール式連続鋳造装置において、前記溶融金属プール部に配設されるスカム堰であって、堰本体と、この堰本体の少なくとも前記溶融金属プール部の溶融金属と接触する領域の前記冷却ロール側を向く面に貼り付けされた多孔質層と、を備え、前記多孔質層は、気孔率が50%以上98%以下の範囲内、厚さが0.5mm以上10mm以下の範囲内とされていることを特徴としている。
【0014】
この構成のスカム堰によれば、スカム堰のうち少なくとも前記溶融金属と接触する領域の前記冷却ロール側を向く面に多孔質層が貼り付けられており、この多孔質層は気孔部にガスを有し、断熱性に優れ、かつ、熱容量も小さいことから、溶融金属からスカム堰側への抜熱が抑えられ、スカム堰表面における地金の生成及び成長を抑制することができる。
【0015】
特に、スカム堰の温度が低く地金が生成しやすい鋳造初期においても、断熱性に優れた多孔質層により、地金の生成及び成長を抑制することが可能となる。これにより、スカム堰による流動制御機能を鋳造初期から発揮することができ、スカムの冷却ロールへの巻き込みを抑制することができるとともに、冷却ロールの周面近傍での溶融金属の流動を安定させることができ、薄肉鋳片の表面品質の向上を図ることができる。
【0016】
さらに、スカム堰が、堰本体に多孔質層が貼り付けられた構造とされているので、堰本体自体を多孔質にする必要がなく、安価な材料を使用できるなど、堰本体の設計の自由度を大きくすることができる。
多孔質層の気孔率が50%以上とされているので、気孔部が十分に確保されており、断熱性に優れている。一方、多孔質層の気孔率が98%以下とされているので、多孔質層の強度が確保される。
また、多孔質層の厚さが0.5mm以上とされているので、強度及び断熱性を確保することができる。さらに、多孔質層の厚さが10mm以下とされているので、この多孔質層自体の破損やスカム堰からの脱落を抑制することができる。
【0017】
ここで、本発明のスカム堰においては、前記多孔質層は、セラミックスファイバーからなる多孔質シートで構成されていることが好ましい。
この場合、従来のスカム堰の表面にセラミックスファイバーからなる多孔質シートを配設することで多孔質層を形成することができ、構造が非常に簡単となる。また、鋳造条件に応じて、熱伝導性、耐熱性等を考慮してセラミックスファイバーからなる多孔質シートを選択することで、的確にスカム堰表面における地金の生成及び成長を抑制することが可能となる。
【0018】
また、本発明のスカム堰においては、前記多孔質層は、アルミナ又はジルコニアで構成されていることが好ましい。
アルミナ及びジルコニアは、溶融金属との濡れ性が悪く、かつ、スカムとの濡れ性が良いことから、スカム堰の溶融金属と接触する領域に多孔質層を形成することによってスカム除去効果が高くなる。また、溶融金属と接した際に多孔質層の気孔部に溶融金属が入り込むことが抑制され、断熱性が維持されることになる。
【0020】
本発明の双ロール式連続鋳造装置は、回転する一対の冷却ロールと一対のサイド堰によって形成された溶融金属プール部に、溶融金属を供給し、前記冷却ロールの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する双ロール式連続鋳造装置であって、前述のスカム堰が、前記溶融金属プール部に配設されていることを特徴としている。
【0021】
また、本発明の薄肉鋳片の製造方法は、回転する一対の冷却ロールと一対のサイド堰によって形成された溶融金属プール部に、溶融金属を供給し、前記冷却ロールの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する双ロール式連続鋳造装置であって、前述のスカム堰を、前記溶融金属プール部に配設することを特徴としている。
【0022】
この構成の双ロール式連続鋳造装置及び薄肉鋳片の製造方法によれば、多孔質層を有するスカム堰が溶融金属プール部に配設されているので、溶融金属からスカム堰側への抜熱が抑えられ、スカム堰表面における地金の生成及び成長を抑制することができる。また、スカム堰によってスカムが冷却ロールに巻き込まれることを抑制でき、薄肉鋳片の鋳造を安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
上述のように、本発明によれば、スカム堰表面における地金の生成及び成長を抑制し、安定して鋳造を行うことが可能なスカム堰、このスカム堰を備えた双ロール式連続鋳造装置、及び、薄肉鋳片の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態である双ロール式連続鋳造装置の一例を示す説明図である。
図2図1に示す双ロール式連続鋳造装置の一部拡大説明図である。
図3図1に示す双ロール式連続鋳造装置の溶鋼プール部の断面説明図である。
図4図3に示す溶鋼プール部の上面説明図である。
図5】本発明の実施形態であるスカム堰の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態について、添付した図面を参照して説明する。以下の実施形態においては、鋳造する対象金属を鋼として説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態では、溶融金属として溶鋼を用いており、鋼材からなる薄肉鋳片1を製造するものとされている。なお、鋼種としては、例えば0.001〜0.01%C極低炭鋼、0.02〜0.05%C低炭鋼、0.06〜0.4%C中炭鋼、0.5〜1.2%C高炭鋼、SUS304鋼に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼、SUS430鋼に代表されるフェライト系ステンレス鋼、3.0〜3.5%Si方向性電磁鋼、0.1〜6.5%Si無方向性電磁鋼等(なお、%は、質量%)が挙げられる。
また、本実施形態では、製造される薄肉鋳片1の幅が200mm以上1800mm以下の範囲内、厚さが0.8mm以上5mm以下の範囲内とされている。
【0026】
本実施形態である薄肉鋳片の製造方法に用いられる双ロール式連続鋳造装置10について説明する。
図1に示す双ロール式連続鋳造装置10は、一対の冷却ロール11、11と、薄肉鋳片1を支持するピンチロール12,12及び13,13と、一対の冷却ロール11、11の幅方向端部に配設されたサイド堰15と、これら一対の冷却ロール11、11とサイド堰15とによって画成された溶鋼プール部16に供給される溶鋼3を保持するタンディッシュ18と、このタンディッシュ18から溶鋼プール部16へと溶鋼3を供給する浸漬ノズル19と、を備えている。
【0027】
この双ロール式連続鋳造装置10においては、溶鋼3が回転する冷却ロール11,11に接触して冷却されることにより、冷却ロール11,11の周面の上で凝固シェル5、5が成長し、一対の冷却ロール11,11にそれぞれ形成された凝固シェル5、5同士がロールキス点で圧着されることによって、所定厚みの薄肉鋳片1が鋳造される。
【0028】
ここで、図3に示すように、溶鋼プール部16には、溶鋼3が貯留されており、溶鋼面には、アルミナ皮膜等からなるスカムXが形成されている。
このスカムXが冷却ロール11に巻き込むことを抑制するために、溶鋼プール部16には、スカム堰20が配設される。詳述すると、図2から図4に示すように、スカム堰20は、浸漬ノズル19と冷却ロール11、11との間に配置され、その一部が溶鋼3内に浸漬されている。
【0029】
上述のように、溶鋼プール部16にスカム堰20を配設した際にスカム堰20の周囲に地金が発生した場合には、この地金が冷却ロール11上の凝固シェル5に捕捉されて薄肉鋳片1に巻き込まれ、薄肉鋳片1の表面欠陥の原因となる。
特に、スカム堰20は、溶鋼プール部16の浸漬ノズル19と冷却ロール11、11との間に配置されることから、鋳造開始前に予熱をすることが困難であり、地金が発生しやすい傾向にある。
【0030】
そこで、本実施形態であるスカム堰20は、上述の地金の発生を抑制するために、少なくとも溶鋼3と接触する領域の冷却ロール11側を向く面に、多孔質層22が形成されている。
ここで、スカム堰20は、矩形平板状をなしており、図3に示すように、溶鋼3への浸漬深さ(鉛直方向の深さ)Dが5mm以上とされており、この溶鋼3に浸漬される領域に多孔質層22が形成されている。なお、この浸漬深さDが5mmを下回った場合には、溶鋼プール部16の表面の波立ちや表面流れによって、スカムXがスカム堰20を潜り抜けることがある。
【0031】
詳述すると、本実施形態であるスカム堰20は、図5に示すように、堰本体21と、弧の堰本体21の一部の表面に積層配置された多孔質層22と、を備えている。
ここで、堰本体21は、強度と耐熱性を有し、熱変形の少ない材料で構成されている。具体的には、シリカ、アルミナ、ジルコニア等の酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、黒鉛、および、これらの複合材料を用いることができる。
【0032】
多孔質層22は、セラミックスファイバーからなる多孔質シートが堰本体21の表面に貼り付けられることで構成されている。これにより、堰本体21自体を多孔質にする必要がなくなって、安価な材料を使用できるなど、堰本体21の設計の自由度を大きくすることができる。なお、多孔質層22(多孔質シート)を貼り付ける際には、骨材としてアルミナ又はジルコニアを含有し、無機バインダーとしてリン酸塩、ホウ酸塩やケイ酸塩等を含有する耐熱性接着剤を用いることが好ましい。
【0033】
また、この多孔質層22(多孔質シート)は、溶鋼に対して耐食性を有するアルミナ又はジルコニアで構成されている。すなわち、アルミナ又はジルコニアの繊維の集合体とされている。具体的には、アルミナ又はジルコニアの繊維からなるフェルトやクロスを適用することができる。
ここで、多孔質層22(多孔質シート)を構成する繊維の外径は、例えば1μm以上20μm以下の範囲内とされている。
また、多孔質層22(多孔質シート)の密度は、0.08g/cm以上3.0g/cm以下の範囲内とされている。
【0034】
そして、本実施形態においては、多孔質層22(多孔質シート)は、気孔率Pが50%以上98%以下の範囲内とされている。
ここで、上述の気孔率P(%)は、多孔質層22(多孔質シート)の見掛け密度をM、多孔質層22(多孔質シート)と同組成物質の密度Mとした際に、以下の式で算出される。
P=100×(1−M/M
なお、上述のアルミナ又はジルコニアの繊維の集合体からなる多孔質層22(多孔質シート)においては、1/3程度の厚さまで圧縮しても元の厚さに復元するため、見掛け密度は圧縮する前の状態で測定したものを用いた。
【0035】
ここで、上述の気孔率Pを50%以上とすることで断熱効果を十分確保することができる。一方、上述の気孔率Pを98%以下とすることで多孔質層22(多孔質シート)の強度を確保することができる。
このため、本実施形態では、多孔質層22(多孔質シート)の気孔率Pを50%以上98%以下の範囲内に設定している。
なお、断熱効果を確実に奏功せしめるためには、多孔質層22(多孔質シート)の気孔率Pの下限を80%以上とすることが好ましく、88%以上とすることがさらに好ましい。また、多孔質層22(多孔質シート)の強度を十分に確保するためには、多孔質層22(多孔質シート)の気孔率Pの上限を97%以下とすることが好ましく、96%以下とすることがさらに好ましい。
【0036】
また、本実施形態においては、多孔質層22(多孔質シート)は、その厚さtが0.5mm以上10mm以下の範囲内とされている。
厚さtを0.5mm以上とすることにより、十分な断熱効果を得ることができ、かつ、強度を確保することができる。一方、厚さtを10mm以下とすることにより、多孔質層22(多孔質シート)自体の破損や堰本体21からの脱落を抑制することができる。
このため、本実施形態では、多孔質層22(多孔質シート)の厚さtを0.5mm以上10mm以下の範囲内に設定している。
なお、強度を確保するとともに断熱効果を確実に奏功せしめるためには、多孔質層22(多孔質シート)の厚さtの下限を1.0mm以上とすることが好ましく、2.0mm以上とすることがさらに好ましい。また、多孔質層22(多孔質シート)自体の破損や堰本体21からの脱落を的確に抑制するためには、多孔質層22(多孔質シート)の厚さtの上限を8mm以下とすることが好ましく、6mm以下とすることがさらに好ましい。
【0037】
また、本実施形態においては、多孔質層22は、スカム堰20の溶鋼3と接触する領域の冷却ロール11側を向く面、浸漬ノズル19側を向く面、及び、下面に、それぞれ形成されている。
ここで、多孔質層22の上端は、湯面変動が生じても溶鋼3と多孔質層22とが接するように、定常の湯面高さから上方に少なくとも10mm以上、好ましくは30mm以上の位置まで設置することが好ましい。
【0038】
以上のような構成とされた本実施形態によれば、スカム堰20のうち少なくとも溶鋼3と接触する領域の冷却ロール11側を向く面に、断熱性に優れ、かつ、熱容量の小さな多孔質層22が形成されているので、溶鋼3からスカム堰20側への抜熱が抑えられ、スカム堰20表面における地金の生成及び成長を抑制することができる。なお、本実施形態においては、スカム堰20の溶鋼3と接触する領域の冷却ロール11側を向く面、浸漬ノズル19側を向く面、及び、下面に、それぞれ多孔質層22が形成されているので、スカム堰20への地金の生成及び成長をさらに確実に抑制することができる。
【0039】
また、鋳造初期においてスカム堰20の温度が低く地金が生成しやすい時期であっても、断熱性に優れた多孔質層22により、スカム堰20側への放熱が抑制され、地金の生成及び成長を抑制することが可能となる。これにより、スカム堰20による流動制御機能を鋳造初期から発揮することができ、スカムXの冷却ロール11への巻き込みを抑制することができるとともに、冷却ロール11の周面近傍での溶鋼3の流動を安定させることができ、薄肉鋳片1の表面品質の向上を図ることができる。
【0040】
さらに、本実施形態では、多孔質層22がセラミックスファイバーからなる多孔質シートで構成されていることから、従来のスカム堰の表面に多孔質シートを貼り付けることで多孔質層22を形成することができ、構造が非常に簡単となる。また、鋳造条件に応じて、熱伝導性、耐熱性等を考慮してセラミックスファイバーからなる多孔質シートを選択することで、的確にスカム堰20の表面における地金の生成及び成長を抑制することが可能となる。
【0041】
また、本実施形態においては、多孔質層22が、溶鋼3との濡れ性が悪く、かつ、スカムXとの濡れ性が良いアルミナ又はジルコニアで構成されているので、スカム堰20の溶鋼3と接触する領域に多孔質層22を形成することによってスカム除去効果が高くなる。また、溶鋼3と接した際に多孔質層22の気孔部に溶鋼3が入り込むことが抑制され、断熱性が維持されることになる。
【0042】
また、本実施形態においては、多孔質層22(多孔質シート)の気孔率Pが50%以上とされているので、気孔部が十分に確保されており、断熱性に優れている。また、多孔質層22(多孔質シート)の気孔率Pが98%以下とされているので、多孔質層22の強度を確保することができる。
【0043】
さらに、本実施形態においては、多孔質層22(多孔質シート)の厚さtが0.5mm以上とされているので、強度及び断熱性を確保することができる。さらに、多孔質層22(多孔質シート)の厚さtが10mm以下とされているので、この多孔質層22自体の破損や堰本体21からの脱落を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態においては、スカム堰20が堰本体21と多孔質層22とを備えた構造とされているので、溶鋼3が堰本体21に直接接触することがなく、浸漬ノズル19からの吐出流が堰本体21に衝突することも抑制される。よって、堰本体21に生じる熱応力が緩和され、堰本体21の熱変形や熱衝撃割れの発生を抑制することができる。また、堰本体21への熱負荷、溶鋼3との反応が抑制される。
このため、堰本体21を構成する材質、形状等の許容範囲が広くなり、設計の自由度が向上する。例えば、多孔質層22を配設しない場合に比べて、堰本体21の厚さを2/3〜1/2程度まで薄肉化することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、アルミナ及びジルコニアを有する耐熱性接着剤を用いて、堰本体21の表面に多孔質シートが貼り付けられることで多孔質層22が形成されているので、鋳造時に、多孔質層22(多孔質シート)が容易に剥離することを防止できる。よって、鋳造中においても、スカム堰20の表面における地金の生成及び成長を抑制することができ、鋳造を安定して実施することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態であるスカム堰、双ロール式連続鋳造装置及び薄肉鋳片の製造方法について具体的に説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、図1に示すように、ピンチロールを配設した双ロール式連続鋳造装置を例に挙げて説明したが、これらのロール等の配置に限定はなく、適宜設計変更してもよい。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明の効果を確認すべく、実施した実験結果について説明する。
【0048】
以下に示すスカム堰を用いて、冷却ロールの直径600mm、冷却ロールの幅800mm、溶鋼プール部における溶鋼深さ212mm、冷却ロールの周速度50m/minにて、厚さ2mmの薄肉鋳片を鋳造した。この薄肉鋳片の組成は、質量%で0.05%C、0.6%Si、1.5%Mn、0.03%Al、残部Fe及び不純物である。この組成の鋼の液相線温度は1517℃であり、過熱度30〜50℃となるように溶鋼プール部に注入する溶鋼温度は1547〜1567℃とした。
【0049】
(本発明例1)
本発明例1では、以下に示すスカム堰を用いて鋳造を実施した。
・堰本体の材質:窒化ホウ素
・堰本体のサイズ:幅720mm、厚さ12mm、高さ200mm
・浸漬深さ:25mm
・多孔質層の材質:ジルコニアファイバー
・多孔質層の気孔率:96%
・多孔質層の厚さ:2.5mm
・堰本体と多孔質層の取り付け:ジルコニア系接着剤使用
・多孔質層の範囲:浸漬部分を含めスカム堰の下部100mm
【0050】
(本発明例2)
本発明例2では、以下に示すスカム堰を用いて鋳造を実施した。
・堰本体の材質:酸化アルミニウム及び黒鉛の複合材
・堰本体のサイズ:幅720mm、厚さ10mm、高さ240mm
・浸漬深さ:40mm
・多孔質層の材質:アルミナファイバー
・多孔質層の気孔率:85%
・多孔質層の厚さ:3mm
・堰本体と多孔質層の取り付け:アルミナ系接着剤使用
・多孔質層の範囲:浸漬部分を含めスカム堰の下部70mm
【0051】
(従来例)
従来例では、以下に示すように、多孔質層を有していないスカム堰を用いて鋳造を実施した。
・スカム堰の材質:窒化ホウ素
・スカム堰のサイズ:幅720mm、厚さ12mm、高さ200mm
・浸漬深さ:25mm
【0052】
本発明例1,2においては、地金の発生が確認されずに、薄肉鋳片を安定して鋳造することができた。
他方、従来例においては、鋳造開始直後の40秒後にスカム堰に生成した地金が冷却ロール間に噛み込む事象が発生し、薄肉鋳片にも地金の巻き込みが確認された。このとき、通常2mmの鋳片厚さは局所的に増大し、最大3.7mmに達し、均一形状を損ねた。地金はスカム堰表面に形成した凝固層が薄肉鋳片とともに冷却ロール間で圧下され生じたものと推定された。
【0053】
以上の結果から、本発明によれば、スカム堰表面における地金の発生及び成長を抑制することが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0054】
1 薄肉鋳片
3 溶鋼
5 凝固シェル
11 冷却ロール
16 溶鋼プール部(溶融金属プール部)
20 スカム堰
22 多孔質層
図1
図2
図3
図4
図5