(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859832
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】流体軸受装置、モータおよびディスク駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16C 17/04 20060101AFI20210405BHJP
H02K 7/08 20060101ALI20210405BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20210405BHJP
G11B 19/20 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
F16C17/04 A
H02K7/08 A
F16C17/02 A
G11B19/20 E
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-88596(P2017-88596)
(22)【出願日】2017年4月27日
(65)【公開番号】特開2018-185027(P2018-185027A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】下村 巧
(72)【発明者】
【氏名】今堀 正博
(72)【発明者】
【氏名】杉信 進悟
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 勝也
【審査官】
中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−199520(JP,A)
【文献】
特開2006−147129(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0277831(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00−17/26
F16C 33/00−33/28
G11B 19/20
H02K 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体軸受装置であって、
静止部材と、
前記静止部材に対して回転軸を中心に回転する回転部材と、
を備え、
前記静止部材の軸受面および前記回転部材の軸受面は、流体が充填された微小間隙を介して対向し、
前記軸受面の少なくとも一方は、第1動圧溝列を有し、
前記第1動圧溝列は、周方向に沿って、全て異なる間隔で配列された複数の第1動圧溝を有し、
隣接する前記第1動圧溝の周方向の間隔は、不定である、
流体軸受装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体軸受装置であって、
前記軸受面の少なくとも一方は、第2動圧溝列を有し、
前記第2動圧溝列は、前記第1動圧溝列よりも径方向外側に、前記周方向に沿って、不定な間隔で不均等に配列された複数の第2動圧溝を有する、
流体軸受装置。
【請求項3】
請求項2に記載の流体軸受装置であって、
複数の前記第1動圧溝それぞれと、複数の前記第2動圧溝それぞれとは、不連続である、
流体軸受装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の流体軸受装置であって、
前記第1動圧溝および前記第2動圧溝は、それぞれ、前記周方向の一端である第1端と、前記周方向の他端である第2端とを有し、
第1端が、第2端よりも前記径方向の内側に配置されている、
流体軸受装置。
【請求項5】
請求項4に記載の流体軸受装置であって、
前記複数の第1動圧溝のうちの一の第1動圧溝の第1端は、前記径方向において、他の少なくとも二つの第1動圧溝と重なっている、
流体軸受装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の流体軸受装置であって、
前記複数の第1動圧溝のうちの一の第1動圧溝の第2端は、前記径方向において、少なくとも三つの第2動圧溝と重なっている、
流体軸受装置。
【請求項7】
請求項2から請求項6までのいずれか一つに記載の流体軸受装置であって、
前記第1動圧溝または前記第2動圧溝は、
総数Nで表すと、(360°/N)±10°の間隔で、前記周方向に沿って配列されている、
流体軸受装置。
【請求項8】
請求項2から請求項6までのいずれか一つに記載の流体軸受装置であって、
前記第1動圧溝または前記第2動圧溝は、
総数Nで表すと、(360°/N)±(150°/N)の間隔で、前記周方向に沿って配列されている、
流体軸受装置。
【請求項9】
請求項2から請求項6までのいずれか一つに記載の流体軸受装置であって、
前記第1動圧溝または前記第2動圧溝の総数N、前記流体動圧軸受部の回転数Rで表すと、
500<(R/60)*N<5000を満たす、
流体軸受装置。
【請求項10】
請求項2から請求項9までのいずれか一つに記載の流体軸受装置であって、
前記静止部材は、
前記中心軸に沿って延びるシャフトと、
前記シャフトの軸方向に間隔をおいて上下それぞれに、前記シャフトの外周面に設けられる環状部材と、
を有し、
前記回転部は、前記シャフトおよび前記環状部材に対して、潤滑オイルを介して、前記中心軸を中心として回転可能に支持され、前記シャフトに対向するラジアル軸受面と、前記ラジアル軸受面の少なくとも一方端に設けられ、前記環状部材に対向するスラスト軸受面と、を有し、
前記スラスト軸受面は、前記第1動圧溝列および前記第2動圧溝列を有し、
前記ラジアル軸受面は、前記周方向に沿って配列された複数の第3動圧溝を含む、第3動圧溝列を有する、
流体軸受装置。
【請求項11】
請求項10に記載の流体軸受装置であって、
前記第1動圧溝の総数N1、前記第2動圧溝の総数N2、前記第3動圧溝の総数N3で表すと、N1<N3<N2である、
流体軸受装置。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の流体軸受装置であって、
前記第1動圧溝列は、14本の前記第1動圧溝を有し、
前記第2動圧溝列は、20本の前記第2動圧溝を有し、
前記第3動圧溝列は、15本の前記第3動圧溝を有する、
流体軸受装置。
【請求項13】
請求項12に記載の流体軸受装置であって、
前記複数の第1動圧溝は、前記中心軸から特定の径方向を開始位置として、前記周方向に沿って、25.20°、29.63°、21.32°、21.18°、33.12°、33.80°、22.56°、19.08°、22.42°、24.23°、29.69°、34.00°、25.69°、18.07°の間隔で配列されている、
流体軸受装置。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の流体軸受装置であって、
前記複数の第2動圧溝は、前記中心軸から特定の径方向を開始位置として、前記周方向に沿って、21.84°、21.67°、19.77°、16.78°、14.27°、14.19°、16.88°、20.09°、20.83°、18.65°、16.26°、16.60°、19.38°、21.39°、20.08°、16.41°、13.68°、14.10°、17.00°、20.13°の間隔で配列されている、
流体軸受装置。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのいずれか一つに記載の流体軸受装置
を備えるモータ。
【請求項16】
請求項15に記載のモータと、
前記モータを収容する内部空間を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記内部空間において、前記モータに支持されるディスクと、
前記ディスクに対して情報の読み出しおよび書き込みの少なくとも一方を行うアクセス部と、
を備える、ディスク駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体軸受装置、モータおよびディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスクドライブ等のディスク駆動装置が知られている。ディスク駆動装置には、ディスクを回転させるためのモータが搭載されている。モータは、回転体と非回転体との間に動圧軸受を設けて、高速回転を行う。従来の回転装置については、例えば、特開2000−199520号公報に記載されている。当該公報の回転装置は、ラジアル固定部材と、ラジアル固定部材に対して回転可能な回転ユニットとを備える。ラジアル固定部材と回転ユニットとに対向する動圧軸受部には、複数の動圧発生溝が等間隔に形成されている。複数の動圧発生溝それぞれは、溝の長さ、または、溝の深さが異なる。これにより、高速回転で安定した回転性能が得られる回転装置を実現している。
【特許文献1】特開2000−199520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特開2000−199520号公報に記載の回転装置では、動圧発生溝は、回転軸の周方向に等間隔に形成されている。動圧発生溝を等間隔に形成すると、その間隔に合った特定周波数の騒音が顕著に現れることがある。この場合、特開2000−199520号公報に記載の回転装置では、特定周波数の騒音を抑制できない。
【0004】
このような問題を鑑みて、本発明の目的は、回転部材の回転時に、特定周波数の騒音の発生を抑制する流体軸受装置、モータおよびディスク駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、流体軸受装置であって、静止部材と、前記静止部材に対して回転軸を中心に回転する回転部材と、を備え、前記静止部材の軸受面および前記回転部材の軸受面は、流体が充填された微小間隙を介して対向し、前記軸受面の少なくとも一方は、第1動圧溝列を有し、前記第1動圧溝列は、周方向に沿って、
全て異なる間隔で配列された複数の第1動圧溝を有
し、隣接する前記第1動圧溝の周方向の間隔は、不定である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、回転部材の回転時に、特定周波数の騒音の発生を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本願の例示的な実施形態に係るディスク駆動装置の断面図である。
【
図3】
図3は、回転軸の上側から視た、スリーブの第1内周面の平面図である。
【
図4】
図4は、不均等に配列した複数の第1動圧溝を説明するための図である。
【
図5】
図5は、不均等に配列した複数の第2動圧溝を説明するための図である。
【
図6】
図6は、回転軸を中心とした、第1動圧溝および第2動圧溝それぞれの配置角度を数値で表した図である。
【
図7】
図7は、径方向から視た、スリーブの第1内周面および第2内周面の平面図である。
【
図8】
図8は、流体軸受装置の別の構成例を示す図である。
【
図9】
図9は、流体軸受装置の別の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本願の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、「流体軸受装置」を備える「モータ」の一例として、スピンドルモータを例に挙げて説明する。また、モータの中心軸と平行な方向を「軸方向」、モータの中心軸に直交する方向を「径方向」、モータの中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。また、本願では、軸方向を上下方向とし、ベース部に対してステータユニット側を上として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、この上下方向の定義により、本願に係るモータ、およびディスク駆動装置の使用時の向きを限定する意図はない。
【0009】
また、本願において「平行な方向」とは、略平行な方向も含む。また、本願において「直交する方向」とは、略直交する方向も含む。
【0010】
<1.ディスク駆動装置の構成>
図1は、本願の例示的な実施形態に係るディスク駆動装置100の断面図である。
【0011】
ディスク駆動装置100は、3枚の磁気ディスク101を回転させつつ、磁気ディスク101からの情報の読み出し、磁気ディスク101への情報の書き込みを行うハードディスク装置である。ディスク駆動装置100は、スピンドルモータ1と、3枚の磁気ディスク101と、3つのアクセス部102と、これらを収容するハウジング103とを備える。
【0012】
ハウジング103は、ベース部40と、カバー部材104と、を有する。ベース部40は、後述のスピンドルモータ1の一部でもある。ベース部40は、例えば、鋳造にて成型される。ベース部40は、アルミダイキャストである。ベース部40は開口を有する。カバー部材104は、ベース部40の開口に嵌められる。これにより、ハウジング103が構成される。ハウジング103の内部空間には、後述するスピンドルモータ1のシャフト10、回転部20、およびステータユニット30、が収容される。ベース部40とカバー部材104とは、ハウジング103内の気密性が損なわれないように、組み合わされる。
【0013】
ハウジング103の内部空間には、空気よりも低密度の気体、例えば、ヘリウムガスが充填されている。ヘリウムガスが充填されることで、磁気ディスク101の回転時の風切り音等が低減する。なお、ハウジング103の内部空間には、水素ガス、空気等が充填されていてもよい。
【0014】
複数の磁気ディスク101は、情報が記録される媒体である。複数の磁気ディスク101は、間に、スペーサ105と、スペーサ106とが配置され、上下方向に延びる回転軸9に沿って積層される。そして、複数の磁気ディスク101は、後に詳述するスピンドルモータ1に支持される。複数の磁気ディスク101は、スピンドルモータ1により、回転軸9を中心として回転する。
【0015】
アクセス部102は、ヘッド107と、アーム108と、ヘッド移動機構109とを有する。ヘッド107は、磁気ディスク101の表面に接近して、磁気ディスク101に記録された情報の読み出し、および、磁気ディスク101への情報の書き込み、の少なくともいずれか一方を磁気的に行う。ヘッド107は、アーム108に支持される。アーム108は、ヘッド移動機構109に支持される。
【0016】
<2.スピンドルモータの構成>
図2は、
図1のスピンドルモータ1の拡大図である。
【0017】
スピンドルモータ1は、シャフト10と、環状部材11と、回転部20と、ステータユニット30と、ベース部40と、を有する。本願の例示的な各実施形態にかかるスピンドルモータ1は、三相モータである。
【0018】
シャフト10は、回転軸9に沿って配置された、略円柱形状の部材である。シャフト10は、回転部20を、回転軸9を中心として回転可能に支持する。シャフト10は、例えば、ステンレス等の金属により形成される。シャフト10の上端部は、ハウジング103のカバー部材104に固定される。シャフト10の下端部は、ベース部40に固定される。
【0019】
シャフト10の外周面には、2つの環状部材11が設けられる。2つの環状部材11は、軸方向に間隔を空けて、シャフト10の上下に設けられる。環状部材11は、シャフト10の外周面から径方向外側に突出し、シャフト10に固定され、または、シャフト10と一体成形される部材である。なお、以下の説明では、シャフト10の軸方向上側に固定された環状部材11について説明する。
【0020】
環状部材11の外周面において、軸方向の略中央から上部の外周面11Aは、上向きに漸次小径となる。また、環状部材11の外周面において、軸方向の略中央から下部の外周面11Bは、下向きに漸次小径となる。シャフト10と、環状部材11と、により、本願の例示的な実施形態にかかる「静止部材」が構成される。
【0021】
回転部20は、シャフト10および環状部材11に対して、回転軸9を中心に回転する回転部材である。回転部20は、スリーブ21と、ロータハブ22と、クランプ部材23(
図1参照)と、ロータマグネット24と、ヨーク25とを備える。
【0022】
スリーブ21は、回転軸9を中心として、シャフト10および環状部材11に対して、回転可能である。スリーブ21は、環状部材11の外周面11Bと対向する第1内周面21Aと、シャフト10の外周面と対向する第2内周面21Bと、を有する。スリーブ21の第1内周面21Aおよび第2内周面21Bと、シャフト10の外周面、および、環状部材11の外周面11Bとは、潤滑オイル等の流体が充填された微小間隙を介し対向する。第2内周面21Bは、径方向外側に窪む溝21Cを有する。溝21Cは、流体の界面安定用のための空気循環用の溝である。
【0023】
第1内周面21Aは、環状部材11の外周面11Bに対向するスラスト軸受面である。第2内周面21Bは、シャフト10の外周面に対向するラジアル軸受面である。第1内周面21Aおよび第2内周面21Bそれぞれには、流体の動圧を発生させるための動圧溝列が設けられる。動圧溝列は、後に詳述する。シャフト10と、環状部材11と、スリーブ21とで、本発明の「流体軸受装置」が構成される。
【0024】
スリーブ21の軸方向上側および軸方向下側それぞれには、スピンドルモータ1の外部への流体の漏洩を防ぐためにシール部材210が設けられる。シール部材210は、環状部材11、および、スリーブ21の上面および下面を覆い、スリーブ12に固定される。
【0025】
ロータハブ22は円筒状である。ロータハブ22は、スリーブ21に支持される。そして、ロータハブ22は、スリーブ21と共に、回転軸9を中心として回転する。スリーブ21とロータハブ22とは、一繋がりの部材で形成されてもよいし、別部材であってもよい。スリーブ21およびロータハブ22の材料には、例えば、アルミニウム合金または強磁性ステンレス鋼等の金属が使用される。
【0026】
クランプ部材23は、ロータハブ22に支持される。
図1に示すように、クランプ部材23は、ロータハブ22との間に、複数の磁気ディスク101を支持する。これにより、複数の磁気ディスク101は、回転部20に支持され、回転軸9を中心として回転する。
【0027】
ロータマグネット24は、ヨーク25を介して、ロータハブ22の内周面に固定される。ロータマグネット24は、回転軸9を中心とする円環形状をなす。ロータマグネット24の内周面は、周方向に沿ってN極とS極とが交互に配列された磁極面である。
【0028】
ステータユニット30は、ロータハブ22の径方向内側に配置される。ステータユニット30は、回転部20を回転させるトルクを発生させる。ステータユニット30は、複数のコイル31と、ステータコア32とを有する。
【0029】
ステータコア32は、回転軸9を中心とする円環状の磁性体が、複数積層された積層構造体である。ステータコア32は、ベース部40に固定される。ステータコア32は、径方向外側に突出する複数のティースを有する。
【0030】
複数のコイル31は、複数のティースに巻かれ、回転軸9を中心として環状に配置される。複数のコイル31は、3つのコイル群により構成される。3つのコイル群は、それぞれU相用、V相用、W相用である。各コイル群は、1つの導線により構成される。コイル31およびステータコア32と、ロータマグネット33とは、径方向に対向する。コイル31に駆動電流が与えられると、径方向の磁束が発生する。発生した磁束は、ロータマグネット33の磁束と互いに作用し、回転軸9を中心として回転部20を回転させるためのトルクを発生させる。
【0031】
<3.動圧溝について>
<3.1.第1内周面21Aの動圧溝について>
【0032】
図3は、回転軸9の上側から視た、スリーブ21の第1内周面21Aの平面図である。
【0033】
第1内周面21Aには、第1動圧溝列51と、第2動圧溝列52とが設けられる。なお、第1動圧溝列51と第2動圧溝列52とは、同一の第1内周面21A上に設けられるが、説明の便宜上、
図3では、第2動圧溝列52は、破線で示す。
【0034】
第1動圧溝列51は、複数(この例では、14本)の第1動圧溝511を有する。第1動圧溝511は、第1端と、第2端とを繋ぐ線が曲線状となる三日月形状である。第1動圧溝511は、第1端が第2端よりも、径方向の内側に配置される。複数の第1動圧溝511は、周方向に沿って、不定な間隔で不均等に配列される。また、複数の第1動圧溝511それぞれは、
図3に示す線分(A)に示すように、径方向において、一の第1動圧溝511の第1端と、他の少なくとも二つの第1動圧溝511とが重なって配置される。
【0035】
ここで、「不定な間隔」とは、隣接する第1動圧溝511の周方向の間隔が一定でないことを言う。より詳しくは、隣接する第1動圧溝511の第1端近傍の間隔と、第2端近傍の間隔とが異なる。また、「不均等」とは、14本の第1動圧溝511がすべて異なる間隔で周方向に配列されることを言う。「不均等」については、後に詳述する。
【0036】
第2動圧溝列52は、複数(この例では、20本)の第2動圧溝521を有する。第2動圧溝521は、第1端と、第2端とを繋ぐ線が曲線状となる三日月形状である。第2動圧溝521は、第2端が第1端よりも、径方向の外側に配置される。複数の第2動圧溝521は、第1動圧溝511よりも径方向外側において、周方向に沿って、不定な間隔で不均等に配列される。複数の第2動圧溝521それぞれは、複数の第1動圧溝511それぞれと不連続である。また、複数の第2動圧溝521それぞれは、
図3に示す線分(B)に示すように、径方向において、一の第1動圧溝511の第2端と、少なくとも三つ(
図3では4つ)の第2動圧溝521とが重なって配置される。
【0037】
なお、スリーブ21の下側の第1内周面21Aにも、
図3と同様に、第1動圧溝列、および、第2動圧溝列が設けられている。
【0038】
図4は、不均等に配列した複数の第1動圧溝511を説明するための図である。
図5は、不均等に配列した複数の第2動圧溝521を説明するための図である。
図6は、回転軸9を中心とした、第1動圧溝511および第2動圧溝521それぞれの配置角度を数値で表した図である。なお、
図4では、第2動圧溝521の図示は省略している。また、
図5では、第1動圧溝511の図示は省略している。
【0039】
図6のカッコ書きの数値、例えば(1)等は、
図4および
図5のカッコ書きの数値に対応している。例えば、
図4に示す(1)における角度は、25.20°である。また、
図5に示す(1)における角度は、21.84°である。
【0040】
14本の第1動圧溝511は、回転軸9から特定の径方向を開始位置として、周方向に沿って、25.20°、29.63°、21.32°、21.18°、33.12°、33.80°、22.56°、19.08°、22.42°、24.23°、29.69°、34.00°、25.69°、18.07°の間隔で配列される。本実施形態では、複数の第1動圧溝511の第1端が、上記間隔となっている。ただし、複数の第1動圧溝511の第2端が、上記間隔となっていてもよい。また、複数の第1動圧溝511の中心部が、上記間隔となっていてもよい。
【0041】
同様に、20本の第2動圧溝521は、回転軸9から特定の径方向を開始位置として、周方向に沿って、21.84°、21.67°、19.77°、16.78°、14.27°、14.19°、16.88°、20.09°、20.83°、18.65°、16.26°、16.60°、19.38°、21.39°、20.08°、16.41°、13.68°、14.10°、17.00°、20.13°の間隔で配列される。本実施形態では、複数の第2動圧溝521の第2端が、上記間隔となっている。ただし、複数の第2動圧溝521の第1端が、上記間隔となっていてもよい。また、複数の第2動圧溝521の中心部が、上記間隔となっていてもよい。
【0042】
<3.2.第2内周面21Bの動圧溝について>
図7は、径方向内側から視た、スリーブ21の第1内周面21Aおよび第2内周面21Bの平面図である。
図7では、シャフト10を破線で示す。また、第1動圧溝511および第2動圧溝521は、三日月形状であるが、
図7では、直線状で示す。
【0043】
第2内周面21Bには、第3動圧溝列53が設けられる。第3動圧溝列53は、複数の第3動圧溝531が、周方向に沿って配列される。第3動圧溝531は、等間隔に配列されてもよいし、不等間隔に設けられてもよい。また、第3動圧溝531の形状は特に限定されない。また、第3動圧溝531の総数は、適宜変更可能であるが、第1動圧溝511の総数をN1、第2動圧溝521の総数をN2、第3動圧溝531の総数をN3で表すと、N1<N3<N2を満たすことが好ましい。例えば、前記のように、第1動圧溝の総数が14本、第2動圧溝521の総数が20本である場合、第3動圧溝531の総数は、例えば15本である。
【0044】
以上のように、スリーブ21の第1内周面21Aおよび第2内周面21Bに、動圧溝を設けることで、スリーブ21とシャフト10および環状部材11とが微小間隙を介して接触することを抑制可能である。そして、スラスト軸受面である第1内周面21Aに、不定な間隔で不等配に複数の第1動圧溝511を設けることで、特定周波数の騒音の発生を抑制できる。また、スラスト軸受面である第1内周面21Aに、複数の第2動圧溝521を不定な間隔で不均等にさらに設けることで、第1動圧溝列51および第2動圧溝列52の双方について、特定周波数の騒音の発生を抑制できる。
【0045】
<4.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0046】
第1動圧溝511の数、および、第2動圧溝521の数は、実施形態の数値に限定されない。第1動圧溝511の数、および、第2動圧溝521の数は、スピンドルモータ1の回転数に応じて、適宜変更可能である。例えば、第1動圧溝511の総数をN、スピンドルモータ1の回転数をRで表すと、総数Nは、500<(R/60)*N<5000を満たすことが好ましい。第2動圧溝521についても同様である。
【0047】
また、複数の第1動圧溝511を配列する間隔は、実施形態の数値に限定されない。複数の第1動圧溝511は、第1動圧溝511の総数をNで表すと、(360°/N)±10°、または、(360°/N)±(150°/N)の間隔で、周方向に沿って配列されていればよい。第2動圧溝521についても同様である。
【0048】
上記の実施形態では、第1動圧溝列51および第2動圧溝列52は、スリーブ21の第1内周面21Aに設けられているが、環状部材11の外周面11Bに設けられてもよい。また、第3動圧溝列53は、スリーブ21の第2内周面21Bに設けられているが、シャフト10の外周面に設けられてもよい。
【0049】
また、流体軸受装置の構成は、上記の実施形態に限定されない。例えば、流体軸受装置は、シャフト10が、回転軸9を中心として回転する構成であってもよい。以下に、流体軸受装置の2つの例を挙げる。
図8および
図9は、流体軸受装置の別の構成例を示す図である。
【0050】
図8に示す流体軸受装置では、シャフト10の径方向外側に、微小間隙を介して、スリーブ211が配置される。また、シャフト10の下側に、キャップ212が配置される。シャフト10は、スリーブ211およびキャップ212により、回転可能に支持される。シャフト10の上側端部には、ロータハブ22が固定される。そして、シャフト10と、ロータハブ22とは共に回転する。対向する、シャフト10の外周面10Aと、スリーブ211の内周面211Aの一方には、第3動圧溝列が設けられる。第3動圧溝列は、軸方向において、間隔を空けた二か所に、設けられてもよいし、一か所にのみ設けられてもよい。
【0051】
シャフト10の下側端部には、環状部材111が固定される。シャフト10と、環状部材111とは、別部材であってもよいし、単一の部材であってもよい。環状部材111の軸方向の上面111Aは、スリーブ211の下面211Bと微小間隙を介して対向する。また、環状部材111の軸方向の下面111Bが、キャップ212の上面212Aと微小間隙を介して対向する。環状部材111の上面111Aと、スリーブ211の下面211Bとの一方には、第1動圧溝列および第2動圧溝列が設けられる。また、環状部材111の下面111Bと、キャップ212の上面212Aとの一方にも、第1動圧溝列および第2動圧溝列が設けられる。
【0052】
図9に示す流体軸受装置では、シャフト10の径方向外側に、微小間隙を介して、軸受ハウジング211およびスリーブ21が配置される。また、シャフト10の下側に、キャップ212が配置される。シャフト10は、スリーブ21、軸受ハウジング211およびキャップ212により、回転可能に支持される。対向するシャフト10の外周面10Aと、スリーブ21の内周面21Dの一方には、第3動圧溝列が設けられる。
【0053】
シャフト10の下端部は、径方向に突出する。突出した部分の上面10Bは、スリーブ21の下面21Eと、微小間隙を介して軸方向に対向する。また、シャフト10の下面10Cと、キャップ212の上面212Aとは、微小間隙を介して軸方向に対向する。シャフト10の下端部上面10Bと、スリーブ21の下面21Eとの一方には、第1動圧溝列および第2動圧溝列が設けられる。また、シャフト10の下面10Cと、キャップ212の上面212Aとの一方にも、第1動圧溝列および第2動圧溝列が設けられる。
【0054】
上記の実施形態および変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本願は、流体軸受装置、モータおよびディスク駆動装置に利用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 :スピンドルモータ
9 :回転軸
10 :シャフト
11 :環状部材
20 :回転部
21 :スリーブ
21A :第1内周面
21B :第2内周面
21C :溝
30 :ステータユニット
51 :第1動圧溝列
52 :第2動圧溝列
53 :第3動圧溝列
100 :ディスク駆動装置
511 :第1動圧溝
521 :第2動圧溝
531 :第3動圧溝