特許第6859890号(P6859890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859890
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】通信制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20210405BHJP
   H04L 29/06 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   H04L12/28 200A
   H04L13/00 305C
   H04L12/28 100A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-151049(P2017-151049)
(22)【出願日】2017年8月3日
(65)【公開番号】特開2019-29972(P2019-29972A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細 幸広
【審査官】 宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−224006(JP,A)
【文献】 特開2010−260441(JP,A)
【文献】 特開2005−260828(JP,A)
【文献】 特開2017−079351(JP,A)
【文献】 特開2005−312017(JP,A)
【文献】 米国特許第05519878(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第102955437(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/28,12/44−12/46,29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械に設けられる通信制御装置であって、
前記作業機械に設置される複数の電子機器と、
複数の前記電子機器のそれぞれに接続される通信路と、
前記通信路を介して、複数の前記電子機器のそれぞれと相互に通信可能であるコントローラと、
を備え、
複数の前記電子機器のそれぞれには、前記電子機器ごとに異なる番号である機器固有番号が設定され、
前記コントローラには、前記電子機器の設置位置と前記機器固有番号との対応関係が予め設定され、
複数の前記電子機器のそれぞれは、前記対応関係から定まる設置位置に設置され、
前記コントローラは、前記電子機器の設置位置に対応する番号であって前記電子機器ごとに異なる番号である通信固有番号を、前記機器固有番号と前記対応関係とに基づいて、複数の前記電子機器のそれぞれに付与し、
前記コントローラと前記電子機器とは、前記通信固有番号を用いて相互に通信する、
通信制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信制御装置であって、
前記コントローラは、前記通信固有番号を不揮発性記憶領域に記憶する、
通信制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の通信制御装置であって、
前記電子機器は、前記コントローラから前記電子機器が切り離される前および後に前記通信固有番号を、不揮発性記憶領域に記憶する、
通信制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の通信制御装置であって、
番号を記憶する記憶部を備え、
前記記憶部は、前記コントローラから前記電子機器が切り離される前および後に前記機器固有番号および前記通信固有番号を記憶する、
通信制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に設けられる通信制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1などに、従来の通信制御装置が記載されている。同文献に記載の技術(同文献の図5参照)では、CAN通信バス(通信路)に、複数のセンサ(電子機器)と、制御装置(コントローラ)と、が接続される。センサとCAN通信バスとのコネクタには、センサから制御装置にデータを送信するための端子とは別に、複数のセンサを制御装置に識別させるための端子(バス側識別用接続端子およびセンサ側識別用接続端子)がある。これにより、複数のセンサにデータ識別番号(通信固有番号)を記憶させる作業の不要化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−224006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、同文献に記載の技術では、複数の電子機器をコントローラに識別させるためにのみ用いられる、識別専用の端子を設ける必要がある。そのため、通信制御装置の構成が複雑になる。例えば、コネクタのピンの数が増える。例えば、識別専用の端子にコンデンサや抵抗などを追加する必要がある。また、例えば、識別専用の端子を接地する必要などがある。
【0005】
そこで本発明は、各電子機器をコントローラに識別させるための識別専用の端子を設けなくても、コントローラが各電子機器を識別できる、通信制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の通信制御装置は、作業機械に設けられる。通信制御装置は、複数の電子機器と、通信路と、コントローラと、を備える。複数の前記電子機器は、前記作業機械に設置される。前記通信路は、複数の前記電子機器のそれぞれに接続される。前記コントローラは、前記通信路を介して、複数の前記電子機器のそれぞれと相互に通信可能である。複数の前記電子機器のそれぞれには、前記電子機器ごとに異なる番号である機器固有番号が設定される。前記コントローラには、前記電子機器の設置位置と前記機器固有番号との対応関係が予め設定される。複数の前記電子機器のそれぞれは、前記対応関係から定まる設置位置に設置される。前記コントローラは、前記電子機器の設置位置に対応する番号であって前記電子機器ごとに異なる番号である通信固有番号を、前記機器固有番号と前記対応関係とに基づいて、複数の前記電子機器のそれぞれに付与する。前記コントローラと前記電子機器とは、前記通信固有番号を用いて相互に通信する。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、各電子機器をコントローラに識別させるための識別専用の端子を設けなくても、コントローラが各電子機器を識別できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】建設機械を上から見た図である。
図2図1に示す建設機械に設けられる通信制御装置を示す図である。
図3図2に示す通信制御装置の制御の流れを示す図である。
図4図2に示すセンサが交換された場合の図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図4を参照して、図1に示す作業機械1の、通信制御装置10(図2参照)について説明する。
【0010】
作業機械1は、建設作業などの作業を行う機械である。作業機械1は、例えば車両機械であり、例えばショベルであり、例えば油圧ショベルなどである。作業機械1は、下部走行体3と、上部旋回体5と、アタッチメント7と、通信制御装置10(図2参照)と、を備える。
【0011】
下部走行体3は、作業機械1を走行させる部分である。下部走行体3は、例えばクローラを備える。
【0012】
上部旋回体5は、下部走行体3よりも上側に配置され、下部走行体3に対して旋回可能である。上部旋回体5は、キャビン5aと、カウンターウエイト5bと、を備える。キャビン5aは、上部旋回体5の前側部分に設けられる運転室である。カウンターウエイト5bは、上部旋回体5の後側部分に設けられる、おもりである。上部旋回体5には、エンジン(図示なし)などが設けられる。
【0013】
アタッチメント7は、作業を行う部分である。アタッチメント7は、例えば、ブーム7aと、アーム7bと、バケット7cと、を備える。ブーム7aは、上部旋回体5に対して起伏可能に、上部旋回体5に取り付けられる。アーム7bは、ブーム7aに対して回転可能に、ブーム7aに取り付けられる。バケット7cは、アーム7bに対して回転可能に、アーム7bに取り付けられる。
【0014】
通信制御装置10(通信制御システム)は、図2に示すように、コントローラ40とセンサ20(電子機器)との通信路30を介した相互通信を制御する装置である。通信制御装置10は、センサ20と、通信路30と、コントローラ40と、を備える。
【0015】
センサ20(電子機器)は、コントローラ40に電子制御される機器である。例えば、センサ20は、検出を行う部分と、データの送受信などを行う部分と、が一体化された機器(センサユニット)である。
【0016】
このセンサ20は、複数設けられ、図1に示す例では4つ設けられる。4つのセンサ20を、第1センサ21、第2センサ22、第3センサ23、および第4センサ24とする。センサ20の数は、2でもよく、3でもよく、5以上でもよい。図2に示すように、複数のセンサ20のそれぞれは(各センサ20は)、同一の通信路30に接続され、同一のコントローラ40に接続される。各センサ20は、同一の機能を有する(同一の目的で設けられる)。各センサ20は、図1に示す作業機械1の周囲の障害物を検出する。各センサ20は、作業機械1に設置される。各センサ20は、例えば上部旋回体5に設置され、下部走行体3に設置されてもよく、アタッチメント7に設置されてもよい。例えば、センサ20が設置される位置(取付位置)には、設置位置A・B・C・Dがある。設置位置A・B・C・Dには、順が予め決められる。具体的には例えば、上部旋回体5を上から見たときに、上部旋回体5の右前の部分から、時計回りに、設置位置A(右前)、設置位置B(右後)、設置位置C(左後)、および設置位置D(左前)が設定される。なお、上記「右」は、上部旋回体5の後側から前側に向かって見たときの右である(「左」も同様)。図2に示すように、各センサ20は、センサ記憶部20m(電子機器記憶部)(記憶部)を備える。
【0017】
センサ記憶部20mは、番号などの情報を記憶する。センサ記憶部20mには、不揮発性記憶領域がある。センサ記憶部20mは、センサ固有番号(機器固有番号)および通信固有番号(後述)を記憶する。
【0018】
このセンサ記憶部20mに記憶されるセンサ固有番号(センサユニット番号)は、各センサ20に設定され、センサ20ごとに異なる。「番号」は、順を表す情報である。「番号」は、例えば、数字、文字、記号、またはこれらを組み合わせたものなどである(センサ固有番号以外の「番号」についても同様)。センサ固有番号の順は、予め決められている。例えばセンサ固有番号が数字の場合、センサ固有番号の順は、数字の小さい順などである。例えばセンサ固有番号がアルファベットの場合、センサ固有番号の順は、アルファベット順などである。センサ固有番号は、センサ20とコントローラ40とが通信する前に、センサ20に設定される。センサ固有番号のセンサ20への設定の具体例は次の通りである。
【0019】
[設定の例1]センサ固有番号は、センサ20の製造時に設定される。この場合、センサ固有番号は、例えばセンサ20の製造番号などである。具体的には、図2に示す例では、第1センサ21のセンサ固有番号は「XXXXX101」である。第2センサ22のセンサ固有番号は「XXXXX102」である。第3センサ23のセンサ固有番号は「XXXXX103」である。第4センサ24のセンサ固有番号は「XXXXX104」である。
【0020】
[設定の例2]センサ固有番号は、センサ20の製造後、かつ、コントローラ40との通信前に設定されてもよい。センサ固有番号は、センサ20の作業機械1(図1参照)への取り付け前に設定されてもよく、センサ20の作業機械1への取り付け後に設定されてもよい。この場合、センサ20は、コントローラ40と通信することなく、センサ固有番号を設定できるように構成される。例えば、センサ20は、センサ固有番号を設定するための、センサ固有番号設定手段を備える。センサ固有番号設定手段は、例えばスイッチであり、例えばロータリースイッチなどである。この場合、作業者がスイッチを切り換えることで、スイッチ番号(センサ固有番号)が切り換わる。例えば、第1センサ21のスイッチ番号は「01」、第2センサ22のスイッチ番号は「02」、第3センサ23のスイッチ番号は「03」、第4センサ24のスイッチ番号は「04」などに設定される。
【0021】
(センサ20の設置位置A・B・C・D)
各センサ20は、次のように設置される。予め、センサ固有番号の順と、センサ20の設置位置A・B・C・Dの順と、の対応関係が決められる。少なくとも、センサ20とコントローラ40とが通信する前までに、この対応関係が決められる。この対応関係は、コントローラ40に予め設定される。そして、各センサ20は、予め決められた対応関係から定まる設置位置A・B・C・Dに設置される。センサ20の設置の具体例は次の通りである。以下、作業機械1および設置位置A・B・C・Dについては図1を参照して説明する。
【0022】
[設置の例1]例えば、図2に示すように、第1センサ21のセンサ固有番号(例えば製造番号「XXXXX101」)は、各センサ20のセンサ固有番号の中で1番目の(例えば1番小さい)センサ固有番号である。また、設置位置Aは、設置位置A・B・C・Dの中で1番目と予め決められている。そこで、第1センサ21は、センサ固有番号の順(1番目)に対応する順の設置位置A(1番目の位置)に設置される。さらに具体的には例えば、作業者が、各センサ20の中で1番小さい製造番号のセンサ20(第1センサ21)を選ぶ。また、作業者が、例えば説明書などで、設置位置A・B・C・Dの順において、設置位置Aが1番目の位置である事を確認する。そして、作業者が、第1センサ21を設置位置Aに設置する。同様に、第2センサ22のセンサ固有番号(例えば「XXXXX102」)は2番目であるので、第2センサ22は、設置位置B(2番目の位置)に設置される。同様に、第3センサ23のセンサ固有番号(例えば「XXXXX103」)は3番目であるので、第3センサ23は、設置位置C(3番目の位置)に設置される。第4センサ24のセンサ固有番号(例えば「XXXXX104」)は4番目であるので、第4センサ24は、設置位置D(4番目の位置)に設置される。
【0023】
[設置の例2]センサ固有番号設定手段によりセンサ20にセンサ固有番号が設定された後に、センサ20が設置されてもよい。具体的には例えば、第1センサ21のセンサ固有番号が、各センサ20のセンサ固有番号の中で1番目の(例えば1番小さい)センサ固有番号(例えばスイッチ番号「01」)に設定される。その後、第1センサ21が、センサ固有番号の順(1番目)に対応する順の設置位置A(1番目の位置)に設置される。同様に、第2センサ22のセンサ固有番号が2番目(例えば「02」)に設定された後、第2センサ22が、設置位置B(2番目の位置)に設置される。第3センサ23のセンサ固有番号が3番目(例えば「03」)に設定された後、第3センサ23が設置位置C(3番目の位置)に設置される。第4センサ24のセンサ固有番号が4番目(例えば「04」)に設定された後、第4センサ24が設置位置D(4番目の位置)に設置される。
【0024】
[設置の例3]センサ20が設置された後に、センサ固有番号設定手段によりセンサ20にセンサ固有番号が設定されてもよい。具体的には例えば、まず、各センサ20が作業機械1に設置される。その後、設置位置A・B・C・Dの順に応じたセンサ固有番号が、各センサ20に設定される。例えば、設置位置A(1番目の位置)に設置された第1センサ21に、設置位置Aの順(1番目)に対応する順(1番目)のセンサ固有番号(例えばスイッチ番号「01」)が設定される。同様に、設置位置B(2番目の位置)に設置された第2センサ22に、2番目のセンサ固有番号(例えば「02」)が設定される。設置位置C(3番目の位置)に設置された第3センサ23に、3番目のセンサ固有番号(例えば「03」)が設定される。設置位置D(4番目の位置)に設置された第4センサ24に、4番目のセンサ固有番号(例えば「04」)が設定される。
【0025】
通信路30は、センサ20とコントローラ40との相互通信に用いられる経路である。通信路30は、各センサ20に接続される。通信路30は、コントローラ40に接続される。通信路30は、各センサ20共通の経路(バス)である。通信路30は、有線でもよく、無線でもよく、有線と無線とを組み合わせたものでもよい。具体的には例えば、通信路30は、例えばCAN(Controller Area Network)バスである。この場合、通信制御装置10は、CAN通信制御装置である。
【0026】
コントローラ40(システムコントローラ)は、信号やデータ(情報)の入出力、演算などを行う。コントローラ40は、例えば作業機械1(図1参照)の作動を制御する装置でもある。コントローラ40は、作業機械1の作動を制御する装置でなくてもよい。コントローラ40は、通信路30を介して、各センサ20と相互に通信可能である。コントローラ40は、コントローラ記憶部40m(記憶部)を備える。
【0027】
コントローラ記憶部40mは、番号などの情報を記憶する。コントローラ記憶部40mには、不揮発性記憶領域がある。コントローラ記憶部40mは、センサ固有番号および通信固有番号(後述)などを記憶する。
【0028】
外部記憶部50(記憶部)は、作業機械1(図1参照)の外部に設けられ、番号などの情報を記憶する。外部記憶部50は、例えばサーバであり、例えば作業機械1の稼働を管理するサーバである。なお、作業機械1の内部であって、センサ20以外、かつ、コントローラ40以外の部分に記憶部が設けられてもよい。
【0029】
(作動)
通信制御装置10は、次のように作動する。
【0030】
(通信固有番号の初期設定)
図3に示すように、コントローラ40および各センサ20の電源が投入される(図3における「電源ON」)。すると、コントローラ40は、コントローラ40が起動した旨を宣言する信号(コントローラ40の起動信号)を通信路30に送信する。コントローラ40の起動信号には、例えばコントローラ用ID(ID;identification)などが含まれる。この「ID」は、具体的には例えばCAN通信用のIDであるCAN IDなどである(以下のIDについても同様)。各センサ20は、コントローラ40の起動信号を受信し、コントローラ40が起動したことを確認する。
【0031】
また、各センサ20は、センサ20が起動した旨を宣言する信号(センサ20の起動信号)を通信路30に送信する。センサ20の起動信号には、センサ共通ID(機器共通ID)などが含まれる。センサ共通IDは、センサ20の製造時に、センサ20に設定される。センサ共通IDは、各センサ20で共通である。そのため、コントローラ40は、センサ共通IDでは、各センサ20を識別(区別)できない。そこで、各センサ20は、センサ共通IDだけでなく、センサ固有番号(例えば「XXXXX101」など)を、通信路30に送信する。センサ20の起動信号には、センサ固有番号が含まれる。
【0032】
コントローラ40は、各センサ20が送信したセンサ固有番号を受信する。ここで、コントローラ40には、センサ20の設置位置A・B・C・Dと、センサ固有番号と、の対応関係が予め設定される。コントローラ40には、設置位置A・B・C・Dの順と、センサ固有番号の順と、の対応関係が予め設定される。よって、コントローラ40は、各センサ20のセンサ固有番号を受信すると、各センサ20の設置位置A・B・C・Dを判別できる。その結果、コントローラ40は、各センサ20を識別できる。そして、コントローラ40は、設置位置A・B・C・Dに応じた通信固有番号を各センサ20に割り当てる。さらに詳しくは、コントローラ40は、各センサ20のセンサ固有番号と、予め設定された対応関係と、に基づいて、各センサ20のそれぞれに通信固有番号を割り当てる。
【0033】
通信固有番号(データ識別番号、専用ID、専用CAN ID)は、センサ20の設置位置A・B・C・Dに対応する番号である。センサ20ごとに異なる通信固有番号が割り当てられる。具体的には例えば、設置位置Aに設置されるセンサ20(例えば第1センサ21)に割り当てられる通信固有番号は「xxx1」である。設置位置Bに設置されるセンサ20(例えば第2センサ22)に割り当てられる通信固有番号は「xxx2」である。設置位置Cに設置されるセンサ20(例えば第3センサ23)に割り当てられる通信固有番号は「xxx3」である。設置位置Dに設置されるセンサ20(例えば第4センサ24)に割り当てられる通信固有番号は「xxx4」である。
【0034】
コントローラ40は、各センサ20に通信固有番号を付与する。さらに詳しくは、コントローラ40は、センサ固有番号(例えば「XXXXX101」)と、通信固有番号(例えば「xxx1」)とを、通信路30を介して各センサ20に送信する。各センサ20は、自らのセンサ固有番号(例えば「XXXXX101」)を含むデータを受信する。各センサ20は、受信したデータに含まれる通信固有番号(例えば「xxx1」)を、センサ記憶部20m(図2参照)に記憶する。
【0035】
その後、コントローラ40と各センサ20とが、通信固有番号(例えば「xxx1」)を用いて相互に通信する(データを送受する)。例えば、コントローラ40は、センサ20を制御するためのデータを、各センサ20に送信する。例えば、各センサ20は、検出結果のデータを、コントローラ40に送信する。
【0036】
(記憶)
図2に示す記憶部(センサ記憶部20m、コントローラ記憶部40m、および外部記憶部50の少なくともいずれか)は、センサ固有番号および通信固有番号を記憶する。記憶部は、コントローラ40からセンサ20が切り離される前および後に、センサ固有番号および通信固有番号を記憶する。「切り離される」とは、例えば相互通信が不可能な状態になる事を意味する。第1センサ21のセンサ記憶部20mは、第1センサ21のセンサ固有番号(例えば「XXXXX101」)と、通信固有番号(例えば「xxx1」)と、を記憶する(他のセンサ20も同様)。コントローラ記憶部40mは、各センサ20のセンサ固有番号と、各センサ20の通信固有番号(設置位置A・B・C・Dに対応する番号)と、を関連付けて記憶する(管理する)(外部記憶部50も同様)。これらの記憶は、不揮発性記憶領域に記憶されることが好ましい。
【0037】
(センサ20の交換)
図4に示すように、センサ20が交換された場合、次のように通信固有番号が設定される。
【0038】
1つのセンサ20が、例えば故障などにより交換された場合、次のように通信固有番号が設定される。例えば、設置位置Bのセンサ20が、第2センサ22から第5センサ25に交換される。さらに詳しくは、第2センサ22が、通信路30から切り離され、設置位置Bから取り外される。そして、第5センサ25が、通信路30につながれ、設置位置Bに設置される。そして、コントローラ40およびセンサ20の電源が投入されると、各センサ20は、センサ共通IDと、センサ固有番号を通信路30に送信する(図3参照)。
【0039】
コントローラ40は、第5センサ25のセンサ固有番号(例えば「XXXXX201」)を受信する。ここで、コントローラ40は、第2センサ22が交換される前の各センサ20について、センサ固有番号と通信固有番号とを関連付けて、コントローラ記憶部40mに記憶している。一方、第5センサ25のセンサ固有番号は、コントローラ記憶部40mに記憶されていない。よって、コントローラ40は、第5センサ25が新たに設置されたことを判別できる。また、コントローラ40は、第2センサ22のセンサ固有番号(例えば「XXXXX102」)を受信しないので、第2センサ22が通信路30から(コントローラ40から)切り離されたことを判別できる。また、コントローラ40は、第2センサ22の通信固有番号(例えば「xxx2」)を受信しないことからも、第2センサ22が通信路30から切り離されたことを判別できる。また、コントローラ40は、第2センサ22の通信固有番号(例えば「xxx2」)から、センサ20が交換された位置が、設置位置Bであることを判別できる。そして、コントローラ40は、交換された第2センサ22に割り当てていた通信固有番号(例えば「xxx2」)を、新たに設置された第5センサ25に、割り当て、付与する。このように、コントローラ40は、どの設置位置A・B・C・Dの、どのセンサ20が交換されたかを判断でき、新たに設置されたセンサ20に通信固有番号を設定できる。また、コントローラ40は、第5センサ25のセンサ固有番号(例えば「XXXXX201」)と通信固有番号(例えば「xxx2」)とを関連付けてコントローラ記憶部40mに記憶する。
【0040】
2つ以上のセンサ20が交換された場合の通信固有番号の設定について、主に、1つのセンサ20が交換された場合の通信固有番号の設定との相違点について説明する。例えば、設置位置Bのセンサ20が、第2センサ22から第5センサ25に交換される。また、設置位置Cのセンサ20が、第3センサ23から第6センサ26に交換される。
【0041】
上記のように、予め、センサ固有番号の順と、センサ20の設置位置A・B・C・Dの順と、の対応関係が決められる。この対応関係と同様の対応関係が、新たなセンサ20のセンサ固有番号の順と、センサ20が交換された設置位置B・Cの順と、の関係にも適用される。具体例は次の通りである。第5センサ25のセンサ固有番号(例えば製造番号「XXXXX201」)は、新たなセンサ20(第5センサ25および第6センサ26)のセンサ固有番号の中で1番目の(例えば1番小さい)センサ固有番号である。また、設置位置A・B・C・Dの中では、設置位置B・Cは「2番目」および「3番目」と決められている。よって、センサ20が交換された設置位置B・Cの中では、設置位置Bは「1番目」であり、設置位置Cは「2番目」である。そこで、第5センサ25は、センサ固有番号の順(1番目)に対応する順の設置位置B(1番目の位置)に設置される。また、第6センサ26のセンサ固有番号(例えば「XXXXX301」)は2番目であるので、設置位置C(2番目の位置)に設置される。なお、上記[設置の例3]のように、第5センサ25および第6センサ26が作業機械1に設置された後に、第5センサ25および第6センサ26のそれぞれのセンサ固有番号(例えばスイッチ番号)が設定されてもよい。そして、コントローラ40およびセンサ20の電源が投入される。
【0042】
コントローラ40は、第5センサ25のセンサ固有番号(例えば「XXXXX201」)、および第6センサ26のセンサ固有番号(例えば「XXXXX301」)を受信する。また、第2センサ22および第3センサ23のそれぞれの、センサ固有番号および通信固有番号を受信しない。よって、コントローラ40は、設置位置Bに設置されていた第2センサ22が交換され、設置位置Cに設置されていた第3センサ23が交換されたことを判別できる。また、コントローラ40には、設置位置B・Cの順と、センサ固有番号の順と、の対応関係が予め設定される。よって、コントローラ40は、新たなセンサ20(第5センサ25および第6センサ26)のセンサ固有番号を受信すると、新たなセンサ20の設置位置B・Cを判別できる。具体的には、コントローラ40は、第5センサ25が設置位置Bに設置され、第6センサ26が設置位置Cに設置されたことを判別できる。そして、コントローラ40は、設置位置Bに対応する通信固有番号(例えば「xxx2」)を第5センサ25に割り当て、付与する。また、コントローラ40は、設置位置Cに対応する通信固有番号(例えば「xxx3」)を第6センサ26に割り当て、付与する。
【0043】
センサ20が3つ以上交換された場合も同様に、コントローラ40は、通信固有番号を新たなセンサ20に割り当て、付与する。このように、センサ20が2つ以上交換された場合でも、コントローラ40は、どの設置位置A・B・C・Dの、どのセンサ20が交換されたかを判断でき、新たに設置されたセンサ20に通信固有番号を設定できる。センサ20が2つ以上交換された場合でも、コントローラ40は、1つのセンサ固有番号に対して、1つの通信固有番号を(1対1で)関連付けることができる。
【0044】
(交換後)
交換されたセンサ20は、交換後も、通信固有番号をセンサ記憶部20mに記憶していることが好ましい。この場合、センサ20がコントローラ40から(通信路30から)切り離されても、センサ記憶部20mから通信固有番号を読み出せば、交換されたセンサ20が交換前に設置されていた設置位置A・B・C・Dが分かる。その結果、例えばどの設置位置A・B・C・Dでセンサ20が故障したかが分かる。その結果、例えば、センサ20の故障原因などを調べやすい(追跡しやすい)。
【0045】
コントローラ記憶部40mまたは外部記憶部50は、交換されたセンサ20の機器固有番号と通信固有番号とを、センサ20の交換後も、記憶していることが好ましい。この場合、センサ20がコントローラ40から切り離されても、どのセンサ20がどの設置位置A・B・C・Dに設置されていたかが分かる。その結果、例えばどの設置位置A・B・C・Dでセンサ20が故障したかが分かる。その結果、例えば、センサ20の故障原因などを調べやすい(追跡しやすい)。
【0046】
図2に示す通信制御装置10による効果は次の通りである。
【0047】
(第1の発明の効果)
通信制御装置10は、作業機械1(図1参照)に設けられる。通信制御装置10は、複数のセンサ20(電子機器)と、通信路30と、コントローラ40と、を備える。複数のセンサ20は、作業機械1に設置される。通信路30は、複数のセンサ20のそれぞれに接続される。コントローラ40は、通信路30を介して、複数のセンサ20のそれぞれと相互に通信可能である。複数のセンサ20のそれぞれには、センサ20ごとに異なる番号であるセンサ固有番号(機器固有番号)が設定される。
【0048】
[構成1]コントローラ40には、センサ20の設置位置A・B・C・Dとセンサ固有番号との対応関係が予め設定される。複数のセンサ20のそれぞれは、対応関係から定まる設置位置A・B・C・Dに設置される。コントローラ40は、センサ固有番号と対応関係とに基づいて、複数のセンサ20のそれぞれに、通信固有番号を付与する。通信固有番号は、センサ20の設置位置A・B・C・Dに対応する番号であって、センサ20ごとに異なる番号である。コントローラ40とセンサ20とは、通信固有番号を用いて相互に通信する。
【0049】
上記[構成1]により、コントローラ40は、複数のセンサ20のそれぞれ(各センサ20)がどの設置位置A・B・C・Dに設置されているかを、センサ固有番号と対応関係とから判別できる。その結果、コントローラ40は、各センサ20を識別できる。したがって、各センサ20をコントローラ40に識別させるための識別専用の端子を設けなくても、コントローラ40は、各センサ20を識別できる。
【0050】
また、次の効果が得られてもよい。各センサ20を識別するための煩雑な作業を行う必要がない。上記「煩雑な作業」は、具体的には例えば次の通りである。1つのセンサ20(第1センサ21)を通信路30につなぎ、第1センサ21の電源を入れ、コントローラ40に第1センサ21を認識させ、コントローラ40が第1センサ21に通信固有番号を付与する。そして、第1センサ21を通信路30から切り離す。残りのセンサ20についても同様に、1つずつ、コントローラ40が通信固有番号を付与する。そして、すべてのセンサ20に通信固有番号が付与された後、すべてのセンサ20が通信路30に接続される。一方、本実施形態の通信制御装置10では、すべてのセンサ20を通信路30に接続した状態で、コントローラ40が各センサ20に通信固有番号を付与できる。
【0051】
(第2の発明の効果)
[構成2]コントローラ40(コントローラ記憶部40m)は、通信固有番号を不揮発性記憶領域に記憶する。
【0052】
上記[構成2]により、コントローラ40からセンサ20が切り離されても、コントローラ40は、コントローラ40から切り離されたセンサ20に付与していた通信固有番号を特定できる。ここで、通信固有番号は、センサ20の設置位置A・B・C・Dに対応する番号である(上記[構成1]参照)。よって、コントローラ40は、コントローラ40から切り離されたセンサ20が設置されていた設置位置A・B・C・Dを特定できる。
【0053】
また、コントローラ40から切り離された20が設置されていた設置位置A・B・C・Dに、新たなセンサ20が設置された場合、次の効果が得られてもよい。コントローラ40は、コントローラ40から切り離されたセンサ20に付与していた通信固有番号を、新たに設置されたセンサ20に付与できる。その結果、センサ20が交換されても、コントローラ40とセンサ20とが相互通信できる。
【0054】
(第3の発明の効果)
[構成3]センサ20(センサ記憶部20m)は、コントローラ40からセンサ20が切り離される前および後に、通信固有番号を記憶する。
【0055】
上記[構成3]により、コントローラ40からセンサ20が切り離されても、このセンサ20に付与されていた通信固有番号(設置位置A・B・C・Dに対応する番号)が分かる。よって、コントローラ40からセンサ20が切り離された後でも、このセンサ20が設置されていた設置位置A・B・C・Dが分かる。
【0056】
(第4の発明の効果)
[構成4]通信制御装置10は、番号を記憶する記憶部(コントローラ記憶部40m、および外部記憶部50の少なくともいずれか)を備える。記憶部は、コントローラ40からセンサ20が切り離される前および後に、センサ固有番号および通信固有番号を記憶する。
【0057】
上記[構成4]により、コントローラ40からセンサ20が切り離されても、コントローラ40から切り離されたセンサ20のセンサ固有番号と、このセンサ20に付与されていた通信固有番号(設置位置A・B・C・Dに対応する番号)と、が分かる。よって、コントローラ40からセンサ20が切り離された後でも、コントローラ40から切り離されたセンサ20が、どのセンサ20であり、どの設置位置A・B・C・Dに設置されていたかが分かる。
【0058】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、センサ記憶部20m、コントローラ記憶部40m、および外部記憶部50の少なくともいずれかは、不揮発性記憶領域を有さなくてもよい。例えば、外部記憶部50は設けられなくてもよい。
【0059】
例えば、コントローラ40と相互に通信可能である電子機器は、センサ20でなくてもよい。例えば、電子機器は、コントローラ40とは別のコントローラでもよい。この場合、コントローラ40は、例えば作業機械1の作動を制御する装置であり、「電子機器」としてのコントローラは、例えば作業機械1の機能を拡張するための装置などである。例えば、電子機器は、表示装置でもよく、アクチュエータでもよい。電子機器は、例えば油圧機器でもよく、例えば油圧アクチュエータでもよく、油圧バルブでもよい。電子機器は、障害物の検出とは異なる用途に用いられるセンサでもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 作業機械
10 通信制御装置
20 センサ(電子機器)
30 通信路
40 コントローラ
40m コントローラ記憶部(記憶部)
50 外部記憶部(記憶部)
図1
図2
図3
図4