(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記端末装置から非接触で供給される電力によって動作し、前記無線通信部で受信された前記フィールド機器への第1データと、前記有線通信部で受信された前記端末装置への第2データとを記憶する記憶部を備えており、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記第1データを読み出して前記有線通信部に出力し、前記有線通信部で受信された前記第2データを前記記憶部に記憶させる、
請求項1記載のモデム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態によるモデム及び電子機器について詳細に説明する。尚、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、必要に応じて各部材の寸法を適宜変えて図示している。また、以下の説明においては、図中に設定されたXYZ直交座標系(原点の位置は適宜変更する)を必要に応じて参照しつつ各部材の位置関係について説明する。
【0013】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による電子機器の要部構成を示すブロック図である。
図1に示す通り、本実施形態の電子機器1は、端末装置10とモデム20と、を備える。このような電子機器1では、端末装置10とモデム20との間で近距離無線通信が行われ、モデム20とフィールド機器FDとの間で有線通信が行われることで、端末装置10とフィールド機器FDとが通信可能に接続される。
【0014】
端末装置10とモデム20との間で行われる近距離無線通信は、NFC(Near Field Communication)である。ここで、NFCとは、通信する装置間の距離が、例えば数十cm以下である場合に可能となる通信(非接触通信)を意味し、通信する装置の筐体が接触した状態で行われる通信も含まれる。また、モデム20とフィールド機器FDとの間で行われる有線通信は、HART(登録商標)、BRAIN、ファウンデーションフィールドバス(Foundation Fieldbus:登録商標)、プロフィバス(PROFIBUS:登録商標)等のプロセス工業用の汎用通信プロトコルを用いた通信である。
【0015】
尚、上記のフィールド機器FDは、例えば流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、プラント内の状況や対象物を撮影するカメラやビデオ等の撮像機器、プラント内の異音等を収集したり警報音等を発したりするマイクやスピーカ等の音響機器、各機器の位置情報を出力する位置検出機器、その他の機器である。
【0016】
端末装置10は、NFC制御モジュール11及びループアンテナ12(アンテナ)を備えており、モデム20との間で近距離無線通信(NFC)を行う。端末装置10は、例えばノート型、タブレット型等の携帯性のあるコンピュータにより実現される。NFC制御モジュール11は、端末装置10に設けられた不図示の制御装置の制御の下で、モデム20との間で行われる近距離無線通信の制御を行う。例えば、NFC制御モジュール11は、一定の周期(例えば、数ミリ秒)でモデム20のメモリ23に記憶されたステータスST(詳細は後述する)を読み出す制御を行う。このような制御を行うのは、端末装置10とフィールド機器FDとの間のモデム20を介した双方向通信を高速化するとともに、モデム20に対する安定した電力供給を行うためである。
【0017】
また、NFC制御モジュール11は、フィールド機器FDに送信すべきデータをループアンテナ12から無線信号にして送信させ、ループアンテナ12の負荷変動を検出することでモデム20からのデータを受信する。ループアンテナ12は、NFC制御モジュール11に接続されており、近距離無線通信で用いられる無線信号を送受信するためのアンテナである。尚、上述の通り、端末装置10から一定の周期で無線信号を送信することでモデム20に対して一定の周期で非接触により電力が供給されることから、ループアンテナ12は、モデム20に対して非接触で電力を送電するアンテナということもできる。また、本実施形態では、端末装置10がループアンテナ12を備える例について説明するが、端末装置10に設けられるアンテナは、モデム20との間で近距離無線通信が可能であれば、ループアンテナ12に制限されない。
【0018】
モデム20は、ループアンテナ21(第1ループアンテナ)、NFC制御モジュール22(無線通信部)、メモリ23(記憶部)、制御部24、通信部25(有線通信部)、ケーブル26、及び電源部27を備えており、端末装置10との間で近距離無線通信を行い、フィールド機器FDとの間で上述した有線通信を行う。モデム20内の各ブロック(NFC制御モジュール22、メモリ23、制御部24、及び通信部25)は、端末装置10から非接触で供給される電力(正確には、電源部27で整流及び平滑された直流電力)によって動作する。
【0019】
ループアンテナ21は、NFC制御モジュール22に接続されており、近距離無線通信で用いられる無線信号を送受信するためのアンテナである。ループアンテナ21は、端末装置10との間の近距離無線通信を実現するために、端末装置10に設けられたループアンテナ12に近接するように配置される。尚、上述の通り、端末装置10から一定の周期で送信される無線信号を受信することで、モデム20には一定の周期で非接触により電力が供給されることから、ループアンテナ21は、端末装置10から非接触で供給される電力を受電するアンテナということもできる。
【0020】
NFC制御モジュール22は、端末装置10から非接触で供給される電力によって動作し、端末装置10から送信されるデータを受信し、端末装置10に送信すべきデータを送信する。ここで、NFC制御モジュール22は、端末装置10に送信すべきデータに応じた負荷変動を生じさせることにより、端末装置10に送信すべきデータを送信する。つまり、端末装置10とモデム20との間で行われる近距離無線通信では、端末装置10から無線信号が自発的に送信されることはあるが、モデム20から無線信号が自発的に送信されることはない。
【0021】
メモリ23は、端末装置10から非接触で供給される電力によって動作し、データDT及びステータスSTを記憶する。このメモリ23としては、揮発性のものよりも不揮発性のものを用いることが望ましい。データDTには、NFC制御モジュール22で受信されたフィールド機器FDへのデータ(第1データ)と、通信部25で受信された端末装置10へのデータ(第2データ)とが含まれる。ステータスSTは、モデム20の状態を示す情報である。このステータスSTには、例えばメモリ23にデータDTが記憶されているか否かを示す情報、メモリ23に記憶されているデータDTの種別を示す情報(例えば、データDTが上記の第1データであるのか、又は上記の第2データであるのかを示す情報)等が含まれる。
【0022】
制御部24は、端末装置10から非接触で供給される電力によって動作し、NFC制御モジュール22と通信部25との間で授受されるデータを制御する。具体的には、NFC制御モジュール22によってメモリ23にデータDTとして記憶された上記第1データを読み出して通信部25に出力する制御を行う。また、制御部24は、通信部25で受信された上記第2データをメモリ23にデータDTとして記憶させる制御を行う。
【0023】
通信部25は、ケーブル26によってフィールド機器FDに接続され、ケーブル26を介してフィールド機器FDとの間で前述した有線通信を行う。ケーブル26は、通信部25とフィールド機器FDとを接続するためのケーブルである。このケーブル26は、フィールド機器FDに直接接続されても良く、伝送線又はネットワークに接続されても良い。後者の接続がなされた場合には、通信部25は、ケーブル26及び伝送線又はネットワークを介してフィールド機器FDに接続されることになる。
【0024】
電源部27は、端末装置10から非接触で供給される電力(交流電力)を直流電力に変換して、モデム20内の各ブロック(NFC制御モジュール22、メモリ23、制御部24、及び通信部25)を動作させる電力を生成する。具体的に、電源部27は、整流回路及び平滑回路を備えており、端末装置10とモデム20との間で近距離無線通信が行われることによってループアンテナ21に流れる誘導電流を整流及び平滑することによって、端末装置10から非接触で供給される電力(交流電力)を直流電力に変換する。尚、本実施形態では、メモリ23及び電源部27が、NFC制御モジュール22とは別に設けられている例について説明するが、メモリ23及び電源部27の少なくとも一方が、NFC制御モジュール22内に設けられていても良い。
【0025】
図2は、本発明の第1実施形態によるモデムの外観を示す斜視図である。
図3は、
図2中のA−A線に沿う断面矢視図であり、
図4は、
図2中のB−B線に沿う断面矢視図である。
図2〜
図4に示す通り、本実施形態のモデム20は、直方体形状の本体部30と、本体部30の一側面(本体部30の−X側に位置するYZ平面に平行な面)から延在する2本のケーブル26,26と、を備える。尚、ケーブル26,26は、
図1に示すケーブル26に相当するものである。
【0026】
本体部30は、 アンテナモジュール31、モデム回路基板32、磁性部材33、プラスチックケース34、及び導電性ケース35(筐体)を備える。アンテナモジュール31は、例えば
図1に示すループアンテナ21、NFC制御モジュール22、メモリ23、及び電源部27を備えており、主として端末装置10との間で近距離無線通信を行う平板状のモジュールである。モデム回路基板32は、例えば
図1に示す制御部24及び通信部25を備えており、主としてフィールド機器FDとの間で有線通信を行う平板状の基板である。
【0027】
アンテナモジュール31及びモデム回路基板32は、モデム20内において、例えばXY面に平行となるように、且つアンテナモジュール31が+X側に位置し、モデム回路基板32が−X側に位置するようにX軸に沿って配置されている。これにより、アンテナモジュール31に設けられたループアンテナ21は、その巻回面がXY面に平行となるように配置されている。尚、アンテナモジュール31及びモデム回路基板32は、不図示のコネクタを介して電気的に接続されている。
【0028】
磁性部材33は、ループアンテナ21の一面側(+Z側)を除いてループアンテナ21を覆うように配置されている。このように磁性部材33を配置するのは、端末装置10のループアンテナ12から放射される電磁界を効率的にループアンテナ21に結合させ、導電性ケース35による遮蔽下でも自由空間と同等以上の磁界特性を得るためである。尚、上記の磁性部材33としては、フェライトで形成された部材を用いることができる。また、磁性部材33の背面(−Z側)に金属板を挿入することで、金属板の背面(−Z側)と導電性ケース35との間に電子基板を挿入することができ、より多くの実装面積を確保することができる。
【0029】
図5は、本発明の第1実施形態によるモデムに設けられた磁性部材を示す斜視図である。
図5に示す通り、磁性部材33は、例えば平板状の底板部材33aと、底板部材33aの各辺に沿って配置された平板状の側板部材33b,33c,33d,33eとを組み合わせてなる有底四角環状の部材である。底板部材33aは、例えばXY面内に配置されており、側板部材33b,33cは、例えば底板部材33aの−X側及び+X側の辺に沿ってYZ平面に平行となるようそれぞれ配置されており、側板部材33d,33eは、例えば底板部材33aの−Y側及び+Y側の辺に沿ってZX平面に平行となるようそれぞれ配置されている。
【0030】
図5に示す通り、アンテナモジュール31は、−Z側に底板部材33aが位置し、−X側に側板部材33bが位置し、+X側に側板部材33cが位置し、−Y側に側板部材33dが位置し、+Y側に側板部材33eが位置するように磁性部材33の内部空間に配置される。このように配置されることで、ループアンテナ21に作用する電磁界は、磁性部材33をなす底板部材33a及び側板部材33b,33c,33d,33eに沿うものになる。このため、導電性ケース35による遮蔽下でも自由空間と同等以上の磁界特性を得ることができる。
【0031】
プラスチックケース34は、アンテナモジュール31、モデム回路基板32、及び磁性部材33を収容するケースである。プラスチックケース34は、その内部において、アンテナモジュール31、モデム回路基板32、及び磁性部材33の位置ずれが生じないように収容する。例えば、プラスチックケース34は、アンテナモジュール31、モデム回路基板32、及び磁性部材33とともにモールドされたものが望ましい。
【0032】
導電性ケース35は、プラスチックケース34を覆う導電性のケースである。導電性ケース35は、例えばCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic:炭素繊維強化プラスチック)や導電性ABS等の金属と同等の導電性を有する導電性樹脂によって形成される。この導電性ケース35は、直方体形状であり、その+Z側の面の一部(ループアンテナ21の+Z側の位置する部分)に開口部が形成されている。この開口部が形成された部分は、近距離無線通信に用いられる無線信号が送受信される送受信部RTとされている。送受信部RTの面積は、防爆上の制限から、例えば400[mm
2]以下に設定される。
【0033】
送受信部RTを除いてプラスチックケース34を導電性ケース35で覆うのは、防爆規格を満たすためである。つまり、プラスチックケース34が導電性ケース35で覆われていない場合には、例えばモデム20を扱う作業者の衣服とプラスチックケース34とが擦れ合うことで静電気が発生する可能性がある。これに対し、プラスチックケース34を導電性ケース35で覆うことで、このような静電気の発生が防止されて、防爆規格が満たされることになる。また、送受信部RTを導電性ケース35で覆わないのは、無線信号の経路を確保して近距離無線通信を可能にするためである。
【0034】
図6は、本発明の第1実施形態によるモデムの装着例を示す断面図である。尚、
図6では、端末装置10がタブレット型のコンピュータである場合の装着例を図示している。
図6に示す通り、モデム20は、その送受信部RTが端末装置10におけるループアンテナ12の取り付け位置に密着するように端末装置10に装着される。これにより、端末装置10のループアンテナ12と、モデム20のアンテナモジュール31(ループアンテナ21)とが近接した状態に配置され、端末装置10とモデム20との間の近距離無線通信が可能な状態になる。
【0035】
また、
図6に示す通り、端末装置10のループアンテナ12と、モデム20のアンテナモジュール31(ループアンテナ21)との間の空間の周囲の殆どが磁性部材33(
図5に示す側板部材33b,33c,33d,33e)によって覆われ、モデム20のアンテナモジュール31の−Z側も磁性部材33(
図5に示す底板部材33a)によって覆われている。これにより、導電性ケース35による遮蔽下でも自由空間と同等以上の磁界特性を得ることができ、端末装置10とモデム20との間の近距離無線通信が可能である。
【0036】
次に、上記構成における電子機器1の動作について説明する。以下では、端末装置10がモデム20のメモリ23に記憶されたステータスSTを読み出す動作(以下、「ステータス読み出し動作」という)、端末装置10からフィールド機器FDに対してデータを送信する動作(以下、「データ送信動作」という)、及びフィールド機器FDから送信されてくるデータを端末装置10が受信する動作(以下、「データ受信動作」という)について説明する。
【0037】
〈ステータス読み出し動作〉
端末装置10では、不図示の制御装置によってNFC制御モジュール11が制御され、NFC制御モジュール11の制御の下で、一定の周期(例えば、数ミリ秒)でモデム20のメモリ23に記憶されたステータスSTを読み出す動作が行われる。これにより、端末装置10のループアンテナ12からは、ステータスSTの読み出し要求を示す無線信号が一定の周期で送信される。
【0038】
端末装置10のループアンテナ12から送信された無線信号は、モデム20のループアンテナ21で受信される。尚、端末装置10のループアンテナ12から送信された無線信号は、モデム20に設けられた磁性部材33によって遮蔽されるため、外部へ輻射されることが防止される。無線信号がループアンテナ21で受信されると、ループアンテナ21には誘導電流が流れる。この誘導電流が電源部27で整流及び平滑されることによって、モデム20を動作させる電力が生成される。
【0039】
電源部27で生成された電力は、モデム20に設けられたNFC制御モジュール22、メモリ23、制御部24、及び通信部25に供給され、これによりモデム20は動作状態になる。モデム20が動作状態なると、端末装置10から送信されてきた読み出し要求に従って、メモリ23に記憶されたステータスSTがNFC制御モジュール22によって読み出される。そして、ステータスSTを端末装置10に返信するために、ステータスSTの内容に応じた負荷変動を生じさせる動作がNFC制御モジュール22で行われる。
【0040】
モデム20のNFC制御モジュール22で負荷変動を生じさせる動作が行われると、その負荷変動はループアンテナ12の負荷変動として現れる。このため、モデム20のNFC制御モジュール22でステータスSTに応じた負荷変動を生じさせる動作が行われると、ループアンテナ12で現れる負荷変動はステータスSTに応じたものとなる。従って、ループアンテナ12の負荷変動を検出することにより、NFC制御モジュール11はステータスSTを受信することができる。このようにして、モデム20のメモリ23に記憶されたステータスSTが、端末装置10で読み出される。
【0041】
このような動作が行われることで、以下で説明する端末装置10とフィールド機器FDとの間のモデム20を介した双方向通信を高速化することができる。また、端末装置10からモデム20に対する非接触での電力供給が一定の周期で行われることから、モデム20は安定して動作することができる。
【0042】
〈データ送信動作〉
端末装置10において、不図示の制御装置によってフィールド機器FDに対するデータ送信が指示されると、NFC制御モジュール11の制御の下で、フィールド機器FDに送信すべきデータを、モデム20のメモリ23にデータDTとして記憶させる動作が行われる。これにより、端末装置10のループアンテナ12からは、データの書き込み要求を示す無線信号が送信される。
【0043】
端末装置10のループアンテナ12から送信された無線信号は、モデム20のループアンテナ21で受信される。そして、端末装置10から送信されてきた書き込み要求に従って、送信されてきたデータをデータDTとしてメモリ23に記憶させる制御がNFC制御モジュール22によって行われる。かかる動作が終了すると、例えばメモリ23にデータDTが記憶されており、そのデータDTがNFC制御モジュール22で受信されたフィールド機器FDへのデータ(第1データ)である旨を示す情報をステータスSTに反映させ、且つ制御部24に通知する動作がNFC制御モジュール22によって行われる。
【0044】
NFC制御モジュール22からの通知を受け取ると、メモリ23に記憶されたデータDTを読み出して通信部25に出力し、ステータスSTの内容をクリアする動作が制御部24によって行われる。制御部24から出力されたデータDTは、通信部25からケーブル26を介してフィールド機器FDに送信される。このようにして、端末装置10からフィールド機器FDへのデータ送信が行われる。
【0045】
〈データ受信動作〉
端末装置10において、不図示の制御装置によってフィールド機器FDからのデータ受信が指示されると、NFC制御モジュール11の制御の下で、フィールド機器FDからのデータを受信する動作が行われる。これにより、端末装置10のループアンテナ12からは、データの受信要求を示す無線信号が送信される。
【0046】
端末装置10のループアンテナ12から送信された無線信号は、モデム20のループアンテナ21で受信される。そして、端末装置10から送信されてきた受信要求を制御部24に通知する動作がNFC制御モジュール22によって行われる。NFC制御モジュール22からの通知を受け取ると、通信部25で受信されたデータをデータDTとしてメモリ23に記憶させる動作が制御部24によって行われる。
【0047】
データDTがメモリ23に記憶されると、メモリ23に記憶されたデータDTを読み出し、データDTの内容に応じた負荷変動を生じさせる動作がNFC制御モジュール22で行われる。前述の通り、モデム20のNFC制御モジュール22で負荷変動を生じさせる動作が行われると、その負荷変動は端末装置10のループアンテナ12の負荷変動として現れる。このため、端末装置10のNFC制御モジュール11がループアンテナ12の負荷変動を検出することにより、NFC制御モジュール11はフィールド機器FDからのデータを受信することができる。このようにして、フィールド機器FDから送信されてくるデータが端末装置10で受信される。
【0048】
以上の通り、本実施形態では、端末装置10との間で近距離無線通信を行うNFC制御モジュール22、フィールド機器FDとの間で有線通信を行う通信部25、及びNFC制御モジュール22と通信部25との間で授受されるデータを制御する制御部24をモデム20に設け、端末装置10から非接触で供給される電力によってモデム20を動作させるようにしている。これにより、モデム20から無線信号が自発的に送信されることはなく、端末装置10に物理的に接続されて端末装置19から電力供給を受ける必要もなく、電池を内蔵する必要もない。このため、無線規格認証及び防爆認証に要する時間を少なくすることができ、しかも大型化及び重量増を招くこともない。
【0049】
また、本実施形態では、モデム20に設けられたループアンテナ21の一面側(+Z側)を除いてループアンテナ21を磁性部材33で覆うようにしている。これにより、端末装置10のループアンテナ12から放射される電磁界を効率的にループアンテナ21に結合させることができるため、近距離無線通信の品質を高めることができるとともに、モデム20に対する給電効率を高めることができる。
【0050】
また、モデム20の送受信部RTが端末装置10におけるループアンテナ12の取り付け位置に密着するようにモデム20を端末装置10に装着することで、導電性ケース35により密閉される構造となるため、近距離無線通信に用いられる無線信号が外部に輻射されるのを防止することができる。これにより、EMC(Electro Magnetic Compatibility:電磁的両立性)の対策を行うことができる。また、本実施形態では、モデム20の外表面が送受信部RTを除いて導電性ケース35で覆われているため、静電気の発生を防止することができ、防爆規格が満たされる。
【0051】
〔第2実施形態〕
図7は、本発明の第2実施形態による電子機器の要部構成を示すブロック図である。尚、
図7においては、
図1に示したブロックに相当するブロックについては同一の符号を付してある。本実施形態による電子機器2は、モデム20がループアンテナ21に加えてループアンテナ41(第2ループアンテナ)を備えており、モデム20の電源部27がループアンテナ21,41に流れる電力からモデム20の動作に必要な電力を生成する点が、
図1に示す電子機器1と相違する。
【0052】
ループアンテナ41は、端末装置10から非接触で供給される電力をより多く受電するために設けられる。前述の通り、送受信部RTの面積は、防爆上の制限から、例えば400[mm
2]以下に設定される。ループアンテナ21の大きさは、送受信部RTの面積に応じて設定されるが、ループアンテナ21が小さくなると、ループアンテナ21で受電することのできる電力も小さくなり、モデム20の動作に必要な電力が不足する可能性が考えられる。本実施形態では、ループアンテナ21に加えてループアンテナ41を設けることで、モデム20の動作に十分な電力を得るようにしている。
【0053】
図8は、本発明の第2実施形態におけるループアンテナの実装例を示す図である。
図8に示す通り、ループアンテナ41が設けられたアンテナモジュール42は、ループアンテナ21が設けられたアンテナモジュール31に対して重なるように、アンテナモジュール31の−Z側に配置される。例えば、+Z側から−Z側を見た場合に、ループアンテナ21とループアンテナ41とが同心(或いは、略同心)になるように、アンテナモジュール42とアンテナモジュール31とが重なるように配置される。尚、アンテナモジュール42は、アンテナモジュール31の+Z側に配置されても良い。アンテナモジュール31,42は、このように重ねられた状態で、磁性部材33の内部空間(
図5参照)に配置される。
【0054】
以上の通り、本実施形態では、ループアンテナ21に加えてループアンテナ41をモデム20に設け、モデム20の電源部27がループアンテナ21,41に流れる電力からモデム20の動作に必要な電力を生成するようにしている。このため、送受信部RTの面積が制限される場合であっても、端末装置10から非接触で供給される電力から、モデム20の動作に十分な電力を受電することができる。また、本実施形態の電子機器2は、モデム20がループアンテナ21に加えてループアンテナ41を備える点を除いて、第1実施形態の電子機器1と同様であることから、第1実施形態と同様に、無線規格認証及び防爆認証に要する時間を少なくすることができ、しかも大型化及び重量増を招くこともない等の効果を得ることができる。
【0055】
〔第3実施形態〕
図9は、本発明の第3実施形態による電子機器の要部構成を示すブロック図である。尚、
図9においては、
図7と同様に、
図1に示したブロックに相当するブロックについては同一の符号を付してある。本実施形態による電子機器3は、モデム20が電池50を備えており、モデム20が電源部27で生成される電力と電池50の電力とを用いて動作する点が、
図1に示す電子機器1と相違する。
【0056】
図10は、本発明の第3実施形態における電源部と電池との接続回路の構成例を示す図である。
図10(a),(b)に示す通り、電源部27は、入力端がループアンテナ21に接続された全波整流回路27aと、全波整流回路27aの出力端に接続された平滑用コンデンサ27bと、を備える。
図10(a)に示す接続回路では、3つの電池セルが直列接続された電池50が用いられており、
図10(b)に示す接続回路では、1つの電池セルのみからなる電池50が用いられている。
【0057】
図10(a)に示す接続回路は、入力端が電源部27の出力端に接続されたDC/DCコンバータ51、一端がDC/DCコンバータ51の出力端に接続された抵抗52、アノードが抵抗52の他端に接続され、カソードがモデム20の各ブロック(NFC制御モジュール22、メモリ23、制御部24、及び通信部25)に接続されたダイオード53、及びアノードが電池50の正極に接続され、カソードがダイオード53のカソードに接続されたダイオード54と、を備える。
【0058】
図10(a)に示す接続回路は、電源部27及び昇圧回路(DC/DCコンバータ51)を含む回路と電池50とを並列接続する回路である。この接続回路が用いられる場合には、電池50の電圧が、モデム20の各ブロックで必要となる電圧に設定され、電源部27の出力電圧が、DC/DCコンバータ51によって電池50の電圧と等しい(ほぼ等しい)電圧まで昇圧される。
【0059】
図10(b)に示す接続回路は、一端が電源部27の出力端に接続された抵抗52、アノードが抵抗52の他端に接続され、カソードがDC/DCコンバータ51の入力端に接続されたダイオード53、出力端がモデム20の各ブロック(NFC制御モジュール22、メモリ23、制御部24、及び通信部25)に接続されたDC/DCコンバータ51、
及びアノードが電池50の正極に接続され、カソードがダイオード53のカソードに接続されたダイオード54と、を備える。
【0060】
図10(b)に示す接続回路は、電源部27を含む回路と電池50とを並列接続した上で、昇圧回路(DC/DCコンバータ51)の入力端に接続する回路である。この接続回路が用いられる場合には、電源部27及び電池50の出力電圧の双方がモデム20の各ブロックで必要となる電圧よりも低く、電源部27及び電池50の出力電圧がDC/DCコンバータ51によってモデム20の各ブロックで必要となる電圧まで昇圧される。
【0061】
以上の通り、本実施形態では、電池50をモデム20に設け、電源部27で生成される電力と電池50の電力とを用いてモデム20を動作させるようにしている。このため、電池50の消費電力を抑えることができ、電池50の交換周期を長くすることができる。また、本実施形態の電子機器3は、モデム20が電池50を備える点を除いて、第1実施形態の電子機器1と同様であることから、第1実施形態と同様に、無線規格認証及び防爆認証に要する時間を少なくすることができ、しかも大型化及び重量増を招くこともない等の効果を得ることができる。
【0062】
〔第4実施形態〕
図11は、本発明の第4実施形態によるモデムの断面図である。
図11に示す通り、本実施形態のモデム20は、
図3に示すモデム20と同様に、アンテナモジュール31、モデム回路基板32、磁性部材33、プラスチックケース34、及び導電性ケース35を備える。但し、モデム回路基板32が、磁性部材33の−Z側に配置されている点が相違する。
【0063】
以上の通り、本実施形態では、モデム回路基板32が、磁性部材33の−Z側に配置されているため、第1実施形態のモデム20(
図2〜
図4参照)に比べてXY面内における大きさを小さくすることができる。また、本実施形態のモデム20は、モデム回路基板32が、磁性部材33の−Z側に配置されている点を除いて、第1実施形態のモデム20と同様であることから、第1実施形態と同様に、無線規格認証及び防爆認証に要する時間を少なくすることができ、しかも大型化及び重量増を招くこともない等の効果を得ることができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態によるモデム及び電子機器について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記第1〜第4実施形態を適宜組み合わせることができる。また、モデム20に設けられるループアンテナの数は1つ又は2つに制限される訳ではなく3つ以上であっても良い。ループアンテナを増設することで、100[mW]程度の電力を受信することができるようにすれば、IrDAに準拠した赤外線による光無線データ通信が可能な通信モジュールを収容することも可能になる。
【0065】
また、端末装置10からモデム20に非接触で供給される電力の一部を、モデム20からフィールド機器FDに供給するようにしてもよい。このようにすることで、フィールド機器FDの電源が無い状態でもフィールド機器FDに対する各種設定や各種調整を行うことができる。