(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(D)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、3質量%以上50質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物層。
(B)成分が、フェノール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤から選択される1種以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物層。
(A)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、3質量%以上50質量%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物層。
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、2質量%以上40質量%以下である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂組成物層。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
以下の説明において、樹脂組成物の「樹脂成分」とは、樹脂組成物に含まれる不揮発成分のうち、(C)成分及び(D)成分を除いた成分をいう。
【0013】
[樹脂組成物層]
本発明の樹脂組成物層は、所定値以下の厚みを有する薄い樹脂組成物層である。また、本発明の樹脂組成物層が含む樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)水酸化マグネシウム、及び(D)シリカを含む。
【0014】
このような樹脂組成物層を用いることにより、所定値以下の薄い絶縁層を得ることができる。そして、ビアホールを形成された絶縁層に粗化処理を施した場合のハローイング現象を抑制できるという、本発明の所望の効果を得ることができる。
【0015】
樹脂組成物は、必要に応じて、さらに(E)熱可塑性樹脂、(F)硬化促進剤、及び(G)任意の添加剤を含み得る。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0016】
<(A)エポキシ樹脂>
(A)成分としてのエポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、(A)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0018】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよいが、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含むことが好ましい。(A)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いることで、樹脂組成物層の可撓性を向上させたり、樹脂組成物層の硬化物の破断強度を向上させたりできる。
【0019】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0020】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、シクロヘキサン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0021】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4−グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0023】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビスフェノールAF型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0024】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP−7200HH」、「HP−7200H」、「EXA−7311」、「EXA−7311−G3」、「EXA−7311−G4」、「EXA−7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG−100」、「CG−500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
(A)エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、好ましくは1:1〜1:40、より好ましくは1:3〜1:30、特に好ましくは1:5〜1:20である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比が斯かる範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができる。さらに、通常は、樹脂シートの形態で使用する場合に、適度な粘着性がもたらされる。また、通常は、樹脂シートの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する。さらに、通常は、十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる。
【0026】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50〜5000、より好ましくは50〜3000、さらに好ましくは80〜2000、さらにより好ましくは110〜1000である。この範囲となることで、樹脂組成物層の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0027】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100〜5000、より好ましくは250〜3000、さらに好ましくは400〜1500である。
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0028】
樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、好ましくは3質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、30質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
【0029】
<(B)硬化剤>
樹脂組成物は、(B)成分として、硬化剤を含む。(B)硬化剤は、通常、(A)エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。
【0030】
(B)硬化剤としては、(A)エポキシ樹脂を硬化させる作用を有するものを用いることができる。(B)硬化剤としては、例えば、活性エステル系硬化剤、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤などが挙げられる。また、硬化剤は1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を併用してもよい。
【0031】
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を用いることができる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
【0032】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0033】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0034】
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンチレン−フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0035】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」、「HPC−8000H−65TM」、「EXB−8000L−65TM」、「EXB−8150−65T」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416−70BK」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
【0036】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するものが好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。
【0037】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成社製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;新日鉄住金化学社製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN−495V」「SN375」;DIC社製の「TD−2090」、「LA−7052」、「LA−7054」、「LA−1356」、「LA−3018−50P」、「EXB−9500」;等が挙げられる。
【0038】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P−d」、「F−a」が挙げられる。
【0039】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL−950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0040】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V−03」、「V−07」等が挙げられる。
【0041】
樹脂組成物における(B)硬化剤の量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0042】
上述した中でも、(B)硬化剤としては、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、フェノール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤から選択される1種以上であることが好ましく、活性エステル系硬化剤であることがより好ましい。
【0043】
(B)硬化剤が、活性エステル系硬化剤を含む場合、活性エステル系硬化剤の含有率は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは8質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0044】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、(B)硬化剤の活性基数は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.24以上であり、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1以下、特に好ましくは0.5以下である。ここで、「(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(A)エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「(B)硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(B)硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合の(B)硬化剤の活性基数が前記範囲にあることにより、本発明の所望の効果を顕著に得ることができ、更に通常は、樹脂組成物層の硬化物の耐熱性がより向上する。
【0045】
<(C)水酸化マグネシウム>
樹脂組成物は、(C)成分として、水酸化マグネシウムを含む。(C)成分を樹脂組成物に含有させることにより、ハローイング現象を抑制可能な絶縁層を得ることができ、さらに樹脂組成物層の硬化物の難燃性を向上させることもできる。
【0046】
(C)成分として使用する水酸化マグネシウムとしては、合成物、天然物のいずれであってもよい。(C)成分は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
水酸化マグネシウムの市販品としては、例えば神島化学工業社製の「EP−4A」、「EP−2E」、「EP−2A」、「EP−1SII」、タテホ化学工業社製の「エコーマグ Z−10」、「エコーマグ PZ−1」、堺化学工業社製の「MGZ−1」、「MGZ−3」、協和化学工業社製の「キスマ5E」、「キスマ8SN」、「キスマ5A」、「キスマ5L」等が挙げられる。
【0048】
通常、水酸化マグネシウムは、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。水酸化マグネシウムの平均粒径は、ハローイング現象を効果的に抑制する観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは0.8μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下である。
【0049】
水酸化マグネシウムの形状は粒子状であれば特に限定されないが、ハローイング現象を効果的に抑制する観点から、楕円状(フレーク状)であってもよい。この場合、アスペクト比としては好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.4以上、好ましくは10以下、より好ましくは9以下、さらに好ましくは8以下である。アスペクト比とは、粒子の長軸(粒子径の最も長い部分の長さ)の長さを短軸(長径の垂直方向の長さ)の長さで除して求めたものを意味する。
【0050】
水酸化マグネシウムの平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、水酸化マグネシウムの粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、水酸化マグネシウムを超音波によりメチルエチルケトン中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA−500」、島津製作所社製「SALD−2200」等を使用することができる。
【0051】
水酸化マグネシウムは、ハローイング現象をより抑制する観点から、表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられ、特にハローイング現象を抑制する観点からアルコキシシラン化合物が好ましい。
【0052】
アルコキシシラン化合物は、「X−Si(OR
1)
a(R
2)
3−a」の構造を有することが好ましい。式中、R
1は炭素原子数1〜3のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルコキシアルキル基又は炭素原子数6〜10のアリール基を表し、R
2は水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は炭化水素基を表す。aは1〜3の整数を表す。aが2又は3の場合、複数のR
1は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、aが1の場合、複数のR
2は、同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、ビニル基、イソシアネート基、メタクリル基、ウレア基、フェニル基、炭素原子数1〜3のアルキル基、及びこれらの基を2以上組み合わせた基を表す。
【0053】
アルコキシシラン化合物としては、ハローイング現象を効果的に抑制する観点から、上記式中のXがアミノ基、ビニル基、アミノフェニル基を含む基を表すことが好ましい。即ち、アルコキシシラン化合物は、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物、又はビニル基を有するアルコキシシラン化合物が好ましい。
【0054】
アルコキシシラン化合物の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM5783」(N−フェニル−3−アミノオクチルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM−4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)等が挙げられる。アルコキシシラン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
表面処理剤の量は、ハローイング現象を効果的に抑制する観点から、水酸化マグネシウム100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下、さらに好ましくは4質量部以下であり、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.6質量部以上、さらに好ましくは0.7質量部以上である。
【0056】
表面処理剤による表面処理の程度は、水酸化マグネシウムの単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。水酸化マグネシウムの単位表面積当たりのカーボン量は、水酸化マグネシウムの分散性向上の観点から、0.02mg/m
2以上が好ましく、0.1mg/m
2以上がより好ましく、0.2mg/m
2以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m
2以下が好ましく、0.8mg/m
2以下がより好ましく、0.5mg/m
2以下が更に好ましい。
【0057】
水酸化マグネシウムの単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理剤で表面処理した後の水酸化マグネシウムを溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された水酸化マグネシウムに加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて水酸化マグネシウムの単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA−320V」等を使用することができる。
【0058】
(C)成分の含有量は、ハローイング現象を効果的に抑制する観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。上限は、ビアホールの形状を良好にする観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは38質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。
【0059】
<(D)シリカ>
樹脂組成物は、(D)成分として、シリカを含む。(D)シリカを樹脂組成物に用いることで、樹脂組成物の硬化物の熱膨張率を小さくでき、誘電正接も小さくできる。
【0060】
(D)シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられ、球状シリカが好ましい。(D)シリカは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
(D)シリカの市販品としては、例えば、日本触媒社製の「KE−P30」、新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60−05」、「SP507−05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C−MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP−30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS−3N」、「シルフィルNSS−4N」、「シルフィルNSS−5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO−C4」、「SO−C2」、「SO−C1」;などが挙げられる。
【0062】
通常、(D)シリカは、粒子の状態で樹脂組成物に含まれる。(D)シリカの平均粒径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下、1.0μm以下、0.5μm以下、0.3μm以下である。(D)シリカの平均粒径が前記の範囲にあることにより、薄膜の絶縁層であっても、絶縁信頼性に優れるようになり、ビアホールの壁面の抉れ部の発生を抑制することができる。また、通常は、樹脂組成物層の回路埋め込み性を向上させたり、絶縁層の表面粗さを小さくしたりできる。(D)シリカの平均粒径は、(C)水酸化マグネシウムの平均粒径と同様の方法にて測定することができる。
【0063】
(D)シリカの比表面積は、ビアホールの形状のコントロールを容易にして良好な形状を実現する観点から、好ましくは15m
2/g以上、より好ましくは20m
2/g以上、特に好ましくは30m
2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m
2/g以下、50m
2/g以下又は40m
2/g以下である。シリカの比表面積は、BET法によって測定できる。
【0064】
(D)シリカは、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていてもよい。表面処理剤としては、(C)水酸化マグネシウムにおける表面処理剤と同様のものを使用することができる。表面処理剤による表面処理の程度は、(C)水酸化マグネシウムの場合と同様である。
【0065】
(D)シリカの含有量は、所望の効果を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは3質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、25質量%以上である。上限は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0066】
(D)シリカ及び(C)水酸化マグネシウムの合計含有量は、ハローイング現象をより効果的に抑制する観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。上限は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
【0067】
<(E)熱可塑性樹脂>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に(E)熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
【0068】
(E)成分としての熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、本発明の所望の効果を顕著に得る観点、並びに、表面粗さが小さく導体層との密着性に特に優れる絶縁層を得る観点から、フェノキシ樹脂が好ましい。また、熱可塑性樹脂は、1種類単独で用いてもよく、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。
【0070】
フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「FX280」及び「FX293」;三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」;等が挙げられる。
【0071】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000−2」、「電化ブチラール5000−A」、「電化ブチラール6000−C」、「電化ブチラール6000−EP」;積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX−5Z)、KSシリーズ(例えばKS−1)、BLシリーズ、BMシリーズ;等が挙げられる。
【0072】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報及び特開2000−319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0073】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0074】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0075】
ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE−2St 1200」等が挙げられる。
【0076】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0077】
(E)熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは70,000以下、より好ましくは60,000以下、特に好ましくは50,000以下である。
【0078】
(E)熱可塑性樹脂を使用する場合、樹脂組成物における(E)熱可塑性樹脂の量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0079】
<(F)硬化促進剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に、(F)硬化促進剤を含んでいてもよい。
【0080】
硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。中でも、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0082】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン等が挙げられ、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセンが好ましい。
【0083】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
【0084】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200−H50」等が挙げられる。
【0085】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンが好ましい。
【0086】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0087】
(F)硬化促進剤を使用する場合、樹脂組成物における(F)硬化促進剤の量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、樹脂組成物の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0088】
<(G)任意の添加剤>
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、有機充填材;増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤等の樹脂添加剤;などが挙げられる。これらの添加剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
<樹脂組成物層の厚み>
樹脂組成物層は、上述した樹脂組成物で形成された層であって、所定値以下の厚みを有する。樹脂組成物層の具体的な厚みは、通常15μm以下、好ましくは14μm以下、更に好ましくは12μm以下である。従来、プリント配線板の絶縁層形成用の樹脂組成物層の厚みは、これよりも厚いことが一般的であった。これに対し、本発明者が、一般的な組成の樹脂組成物層を前記のように薄くしたところ、そのような薄い樹脂組成物層では、ハローイング現象の発生という、従来知られていなかった課題が生じることを見い出した。このような新たな課題を解決してプリント配線板の薄膜化に寄与する観点から、本発明の樹脂組成物層は、前記のように薄く設けられる。樹脂組成物層の厚みの下限は、任意であり、例えば1μm以上、3μm以上としうる。
【0090】
<樹脂組成物層の特性>
本発明の樹脂組成物層を硬化させることにより、樹脂組成物層の硬化物で形成された薄い絶縁層を得ることができる。この絶縁層にビアホールを形成した場合に、ビアホールの周囲の絶縁層の樹脂が変色するハローイング現象を抑制することができる。以下、これらの効果について、図面を参照して説明する。
【0091】
図1は、本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物層を硬化させて得た絶縁層100を、内層基板200と共に模式的に示す断面図である。この
図1においては、ビアホール110のボトム120の中心120Cを通り且つ絶縁層100の厚み方向に平行な平面で、絶縁層100を切断した断面を示す。
【0092】
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係る絶縁層100は、導体層210を含む内層基板200上に形成された樹脂組成物層を硬化させて得られた層であって、前記樹脂組成物層の硬化物からなる。また、絶縁層100には、ビアホール110が形成されている。ビアホール110は、一般に、導体層210とは反対側の絶縁層100の面100Uに近いほど径が大きく、導体層210に近いほど径が小さい順テーパ状に形成され、理想的には、絶縁層100の厚み方向において一定の径を有する柱状に形成される。このビアホール110は、通常、導体層210とは反対側の絶縁層100の面100Uにレーザー光を照射して、絶縁層100の一部を除去することで、形成される。
【0093】
前記のビアホール110の導体層210側のボトムを、適宜「ビアボトム」と呼び、符号120で示す。そして、このビアボトム120の径を、ボトム径Lbと呼ぶ。また、ビアホール110の導体層210とは反対側に形成された開口を、適宜「ビアトップ」と呼び、符号130で示す。そして、このビアトップ130の径を、トップ径Ltと呼ぶ。通常、ビアボトム120及びビアトップ130は、絶縁層100の厚み方向から見た平面形状が円形状に形成されるが、楕円形状であってもよい。ビアボトム120及びビアトップ130の平面形状が楕円形状である場合、そのボトム径Lb及びトップ径Ltは、それぞれ、前記の楕円形状の長径を表す。
【0094】
このとき、ボトム径Lbをトップ径Ltで割って得られるテーパー率Lb/Lt(%)が100%に近いほど、そのビアホール110の形状は良好である。本発明の樹脂組成物層を用いれば、ビアホール110の形状を容易に制御することが可能であるので、テーパー率Lb/Ltが100%に近いビアホール110を実現することができる。ビアホールのテーパー率とは、ビアホールのトップ径に対するボトム径の比率をいう。
【0095】
例えば、樹脂組成物層を100℃で30分間加熱し、次いで180℃で30分間加熱して硬化させて得た絶縁層100に、マスク径1mm、パルス幅16μs、エネルギー0.2mJ/ショット、ショット数2、バーストモード(10kHz)の条件でCO
2レーザー光を照射して、トップ径Ltが30μm±2μmのビアホール110を形成した場合、そのビアホール110のテーパー率Lb/Ltを、好ましくは75%〜100%、より好ましくは80%〜100%、特に好ましくは85%〜100%にできる。
【0096】
ビアホール110のテーパー率Lb/Ltは、ビアホール110のボトム径Lb及びトップ径Ltから計算できる。また、ビアホール110のボトム径Lb及びトップ径Ltは、FIB(集束イオンビーム)を用いて、絶縁層100を、当該絶縁層100の厚み方向に平行で且つビアボトム120の中心120Cを通る断面が現れるように削り出した後、その断面を電子顕微鏡で観察することにより、測定できる。
【0097】
図2は、本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物層を硬化させて得た絶縁層100の、導体層210(
図2では図示せず。)とは反対側の面100Uを模式的に示す平面図である。
【0098】
図2に示すように、ビアホール110を形成された絶縁層100を見ると、ハローイング現象により、このビアホール110の周囲に、絶縁層100が変色した変色部140が観察されることがある。この変色部140は、ビアホール110の形成時における樹脂劣化によって形成されうるもので、通常、ビアホール110から連続して形成される。また、多くの場合、変色部140は、白化部分となっている。
【0099】
図3は、本発明の第一実施形態に係る樹脂組成物層を硬化させて得た、粗化処理後の絶縁層100を、内層基板200と共に模式的に示す断面図である。この
図3においては、ビアホール110のビアボトム120の中心120Cを通り且つ絶縁層100の厚み方向に平行な平面で、絶縁層100を切断した断面を示す。
図3に示すように、ビアホール110が形成された絶縁層100に粗化処理を施すと、変色部140の絶縁層100が導体層210から剥離し、ビアボトム120のエッジ150から連続した間隙部160が形成されることがある。この間隙部160は、通常、粗化処理の際に変色部140が浸食されて形成される。
【0100】
本発明の樹脂組成物層を用いることにより、前記のハローイング現象を抑制できる。そのため、変色部140のサイズを小さくすることができる。よって、導体層210からの絶縁層100の剥離を抑制することができるので、間隙部160のサイズを小さくできる。
【0101】
図3に示すように、本発明の樹脂組成物層を用いることにより、変色部140のサイズを小さくでき、理想的には変色部140を無くすことができる。変色部140のサイズは、ビアホール110のビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtによって評価できる。
【0102】
ビアトップ130のエッジ180は、変色部140の内周側の縁部に相当する。ビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtとは、ビアトップ130のエッジ180から、変色部140の外周側の縁部190までの距離を表す。ビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtが小さいほど、変色部140の形成を効果的に抑制できたと評価できる。
【0103】
例えば、樹脂組成物層を100℃で30分間加熱し、次いで180℃で30分間加熱して硬化させて得た絶縁層100に、マスク径1mm、パルス幅16μs、エネルギー0.2mJ/ショット、ショット数2、バーストモード(10kHz)の条件でCO
2レーザー光を照射して、トップ径Ltが30μm±2μmのビアホール110を形成した場合、ビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtを、好ましくは6μm以下、より好ましくは5μm以下にできる。
【0104】
ビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtは、光学顕微鏡による観察によって測定できる。
【0105】
また、本発明者の検討によれば、一般に、ビアホール110の径が大きいほど、変色部140のサイズが大きくなり易い傾向があることが判明している。よって、ビアホール110の径に対する変色部140のサイズの比率によって、変色部140の形成の抑制の程度を評価できる。例えば、ビアホール110のトップ半径Lt/2に対するハローイング比Htにより、評価ができる。ここで、ビアホール110のトップ半径Lt/2とは、ビアホール110のビアトップ130の半径をいう。また、ビアホール110のトップ半径Lt/2に対するハローイング比Htとは、ビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtを、ビアホール110のトップ半径Lt/2で割って得られる比率である。ビアホール110のトップ半径Lt/2に対するハローイング比Htが小さいほど、変色部140の形成を効果的に抑制できたことを表す。
【0106】
例えば、樹脂組成物層を100℃で30分間加熱し、次いで180℃で30分間加熱して硬化させて得た絶縁層100に、マスク径1mm、パルス幅16μs、エネルギー0.2mJ/ショット、ショット数2、バーストモード(10kHz)の条件でCO
2レーザー光を照射して、トップ径Ltが30μm±2μmのビアホール110を形成した場合、ビアホール110のトップ半径Lt/2に対するハローイング比Htを、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは35%以下にできる。
【0107】
ビアホール110のトップ半径Lt/2に対するハローイング比Htは、ビアホール110のトップ径Lt、及び、ビアホール110のビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtから計算できる。
【0108】
ビアボトム120のエッジ150は、間隙部160の内周側の縁部に相当する。よって、ビアボトム120のエッジ150から、間隙部160の外周側の端部(即ち、ビアボトム120の中心120Cから遠い側の端部)170までの距離Wbは、間隙部160の面内方向のサイズに相当する。ここで、面内方向とは、絶縁層100の厚み方向に垂直な方向をいう。また、以下の説明において、前記の距離Wbを、ビアホール110のビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbということがある。このビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbにより、ハローイング現象の抑制の程度を評価できる。具体的には、ビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbが小さいほど、ハローイング現象を効果的に抑制できたと評価できる。
【0109】
例えば、樹脂組成物層を100℃で30分間加熱し、次いで180℃で30分間加熱して硬化させて得た絶縁層100に、マスク径1mm、パルス幅16μs、エネルギー0.2mJ/ショット、ショット数2、バーストモード(10kHz)の条件でCO
2レーザー光を照射して、トップ径Ltが30μm±2μmのビアホール110を形成する。その後、膨潤液に60℃で10分間浸漬し、次いで、酸化剤溶液に80℃で20分間浸漬し、次いで、中和液に40℃で5分間浸漬した後、80℃で15分間乾燥する。本発明の樹脂組成物層を用いれば、このようにして得られた絶縁層100のビアホール110のビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbを、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは4μm以下、特に好ましくは3μm以下にできる。
【0110】
ビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbは、FIB(集束イオンビーム)を用いて、絶縁層100を、当該絶縁層100の厚み方向に平行で且つビアボトム120の中心120Cを通る断面が現れるように削り出した後、その断面を電子顕微鏡で観察することにより、測定できる。
【0111】
また、本発明の樹脂組成物層を用いることにより、粗化処理前の絶縁層100のビアホール110の形状を容易に制御できるので、通常は、粗化処理後の絶縁層100でも、ビアホール110の形状を容易に制御することが可能である。よって、粗化処理後においても、粗化処理前と同じく、ビアホール110の形状を良好にできる。したがって、本発明の樹脂組成物層を用いれば、粗化処理後の絶縁層において、テーパー率Lb/Ltが100%に近いビアホール110を実現することができる。
【0112】
例えば、樹脂組成物層を100℃で30分間加熱し、次いで180℃で30分間加熱して硬化させて得た絶縁層100に、マスク径1mm、パルス幅16μs、エネルギー0.2mJ/ショット、ショット数2、バーストモード(10kHz)の条件でCO
2レーザー光を照射して、トップ径Ltが30μm±2μmのビアホール110を形成する。その後、膨潤液に60℃で10分間浸漬し、次いで、酸化剤溶液に80℃で20分間浸漬し、次いで、中和液に40℃で5分間浸漬した後、80℃で15分間乾燥する。本発明の樹脂組成物層を用いれば、このようにして得られた絶縁層100に形成されたビアホール110のテーパー率Lb/Ltを、好ましくは76%〜100%、より好ましくは80%〜100%、特に好ましくは85%〜100%にできる。
【0113】
ビアホール110のテーパー率Lb/Ltは、ビアホール110のボトム径Lb及びトップ径Ltから計算できる。また、ビアホール110のボトム径Lb及びトップ径Ltは、FIB(集束イオンビーム)を用いて、絶縁層100を、当該絶縁層100の厚み方向に平行で且つビアボトム120の中心120Cを通る断面が現れるように削り出した後、その断面を電子顕微鏡で観察することにより、測定できる。
【0114】
さらに、本発明者の検討によれば、一般に、ビアホール110の径が大きいほど、変色部140のサイズが大きくなり易いので、間隙部160のサイズも大きくなり易い傾向があることが判明している。よって、ビアホール110の径に対する間隙部160のサイズの比率によって、ハローイング現象の抑制の程度を評価できる。例えば、ビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbにより、評価ができる。ここで、ビアホール110のボトム半径Lb/2とは、ビアホール110のビアボトム120の半径をいう。また、ビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbとは、ビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbを、ビアホール110のボトム半径Lb/2で割って得られる比率である。ビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbが小さいほど、ハローイング現象を効果的に抑制できたことを表す。
【0115】
例えば、樹脂組成物層を100℃で30分間加熱し、次いで180℃で30分間加熱して硬化させて得た絶縁層100に、マスク径1mm、パルス幅16μs、エネルギー0.2mJ/ショット、ショット数2、バーストモード(10kHz)の条件でCO
2レーザー光を照射して、トップ径Ltが30μm±2μmのビアホール110を形成する。その後、膨潤液に60℃で10分間浸漬し、次いで、酸化剤溶液に80℃で20分間浸漬し、次いで、中和液に40℃で5分間浸漬した後、80℃で15分間乾燥する。本発明の樹脂組成物層を用いれば、このようにして得られた絶縁層100に形成されたビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbを、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは30%以下にできる。
【0116】
ビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbは、ビアホール110のボトム径Lb、及び、ビアホール110のビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbから計算できる。
【0117】
プリント配線板の製造過程において、ビアホール110は、通常、導体層210とは反対側の絶縁層100の面100Uに別の導体層(図示せず)が設けられていない状態で、形成される。そのため、プリント配線板の製造過程が分かれば、導体層210側にビアボトム120があり、導体層210とは反対側にビアトップ130が開口している構造が、明確に認識できる。しかし、完成したプリント配線板では、絶縁層100の両側に導体層が設けられている場合がありうる。この場合、導体層との位置関係によってビアボトム120とビアトップ130とを区別することが難しいことがありえる。しかし、通常、ビアトップ130のトップ径Ltは、ビアボトム120のボトム径Lb以上の大きさである。したがって、前記の場合、径が大きさによって、ビアボトム120とビアトップ130とを区別することが可能である。
【0118】
<樹脂組成物層の用途>
本発明の樹脂組成物層は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物層(プリント配線板の絶縁層形成用の樹脂組成物層)として好適に使用することができ、更に、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物層(プリント配線板の層間絶縁層形成用の樹脂組成物層)としてより好適に使用することができる。
【0119】
特に、ハローイング現象を抑制できる観点から、前記の樹脂組成物層は、ビアホールを有する絶縁層を形成するための樹脂組成物層(ビアホールを有する絶縁層形成用の樹脂組成物層)として好適であり、中でも、トップ径35μm以下のビアホールを有する絶縁層形成用の樹脂組成物層として特に好適である。
【0120】
[樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた本発明の樹脂組成物層とを含む。
【0121】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0122】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」と略称することがある。)等のアクリルポリマー、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(以下「TAC」と略称することがある。)、ポリエーテルサルファイド(以下「PES」と略称することがある。)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0123】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0124】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の処理が施されていてもよい。
【0125】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種類以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック社製の「SK−1」、「AL−5」、「AL−7」;東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」;等が挙げられる。
【0126】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm〜75μmの範囲が好ましく、10μm〜60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚みが上記範囲であることが好ましい。
【0127】
また、樹脂シートは、必要に応じて、支持体及び樹脂組成物層以外の任意の層を含んでいてもよい。斯かる任意の層としては、例えば、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)に設けられた、支持体に準じた保護フィルム等が挙げられる。保護フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm〜40μmである。保護フィルムにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを抑制することができる。
【0128】
樹脂シートは、例えば、有機溶剤及び樹脂組成物を含む樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより、製造することができる。
【0129】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶剤;等を挙げることができる。有機溶剤は、1種類単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0130】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の方法により実施してよい。乾燥条件は、特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃〜150℃で3分間〜10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0131】
樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、通常は、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0132】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、上述したように薄い樹脂組成物層の硬化物で形成された絶縁層を含む。また、この絶縁層は、ハローイング現象を抑制可能である。よって、本発明の樹脂組成物層を用いることにより、ハローイング現象を抑制しながら、プリント配線板の薄型化を達成することができる。
【0133】
ビアホールは、通常、当該ビアホールを有する絶縁層の両側に設けられた導体層を導通させるために設けられる。よって、本発明のプリント配線板は、通常、第1の導体層、第2の導体層、及び、第1の導体層と第2の導体層との間に形成された絶縁層を含む。そして、絶縁層にビアホールが形成され、そのビアホールを通じて第1の導体層と第2の導体層とが導通しうる。
【0134】
ハローイング現象の抑制が可能であり、且つ、良好な形状のビアホールを形成できるという樹脂組成物層の利点を活用することにより、従来は実現が困難であった特定プリント配線板を実現することができる。この特定プリント配線板は、第1の導体層、第2の導体層、及び、第1の導体層と第2の導体層との間に形成された絶縁層を含むプリント配線板であって、下記の要件(i)〜(iv)を全て満たす。
(i)絶縁層の厚みが、15μm以下である。
(ii)絶縁層が、トップ径35μm以下のビアホールを有する。
(iii)該ビアホールのビアトップのエッジからのハローイング距離が、5μm以下である。
(iv)該ビアホールのトップ半径に対するハローイング比が、35%以下である。
【0135】
以下、図面を示して、特定プリント配線板について説明する。
図4は、本発明の第二実施形態に係るプリント配線板300の模式的な断面図である。この
図4においては、ビアホール110のビアボトム120の中心120Cを通り且つ絶縁層100の厚み方向に平行な平面で、プリント配線板300を切断した断面を示す。また、
図4においては、
図1〜
図3に記載された要素に相当する部位は、
図1〜
図3で用いたのと同様の符号を付して示す。
【0136】
図4に示すように、本発明の第二実施形態に係る特定プリント配線板300は、第1の導体層210、第2の導体層220、及び、第1の導体層210と第2の導体層220との間に形成された絶縁層100を含む。絶縁層100には、ビアホール110が形成されている。また、通常、第2の導体層220は、ビアホール110が形成された後で設けられたものである。よって、第2の導体層220は、通常、絶縁層100の面100Uだけでなく、ビアホール110内にも形成され、このビアホール110を通して第1の導体層210と第2の導体層220とが導通している。
【0137】
特定プリント配線板300が含む絶縁層100の厚みTは、通常15μm以下、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。特定プリント配線板300は、このように薄い絶縁層100を有するものであるので、特定プリント配線板300自体の薄型化を達成できる。絶縁層100の厚みTの下限は、絶縁層100の絶縁性能を高くする観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、特に好ましくは3μm以上である。ここで、絶縁層100の厚みTとは、第1の導体層210と第2の導体層220との間の絶縁層100の寸法を表し、第1の導体層210又は第2の導体層220が無い位置での絶縁層100の寸法を表すものではない。絶縁層100の厚みTは、通常、当該絶縁層100を介して対向する第1の導体層210の主面210Uと第2の導体層220の主面220Dとの間の距離に一致し、また、ビアホール110の深さに一致する。
【0138】
特定プリント配線板300が含む絶縁層100が有するビアホール110のトップ径Ltは、通常35μm以下、好ましくは33μm以下、特に好ましくは32μm以下である。特定プリント配線板300は、このようにトップ径Ltが小さいビアホール110を有する絶縁層100を含むので、第1の導体層210及び第2の導体層220を含む配線の微細化を促進することができる。ビアホール110のトップ径Ltの下限は、ビアホール110の形成を容易に行う観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは15μm以上である。
【0139】
特定プリント配線板300が含む絶縁層100が有するビアホール110のビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtは、通常5μm以下、好ましくは4μm以下である。特定プリント配線板300は、ビアトップ130のエッジ180からのハローイング距離Wtがこのように小さい。よって、特定プリント配線板300は、通常、第1の導体層210と第2の導体層220との間の導通の信頼性を高めることができる。
【0140】
特定プリント配線板300が含む絶縁層100が有するビアホール110のトップ半径Lt/2に対するハローイング比Htは、通常35%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下である。特定プリント配線板300は、トップ半径Lt/2に対するハローイング比Htがこのように小さく、よって、第1の導体層210からの絶縁層100の剥離が小さい。このようにハローイング比Htが小さい絶縁層100を含む特定プリント配線板300は、通常、第1の導体層210と第2の導体層220との間の導通の信頼性を高めることができる。トップ半径Lt/2に対するハローイング比Htの下限は、理想的にはゼロであるが、通常は5%以上である。
【0141】
特定プリント配線板300が含む絶縁層100が有するビアホール110のビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbは、通常5μm以下、好ましくは4μm以下、更に好ましくは3μm以下である。特定プリント配線板300は、ビアボトム120のエッジ150からのハローイング距離Wbがこのように小さく、よって、第1の導体層210からの絶縁層100の剥離が小さい。よって、特定プリント配線板300は、通常、第1の導体層210と第2の導体層220との間の導通の信頼性を高めることができる。
【0142】
特定プリント配線板300が含む絶縁層100が有するビアホール110のボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbは、通常35%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下である。特定プリント配線板300は、ボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbがこのように小さく、よって、第1の導体層210からの絶縁層100の剥離が小さい。このようにハローイング比Hbが小さい絶縁層100を含む特定プリント配線板300は、通常、第1の導体層210と第2の導体層220との間の導通の信頼性を高めることができる。ボトム半径Lb/2に対するハローイング比Hbの下限は、理想的にはゼロであるが、通常は5%以上である。
【0143】
特定プリント配線板300が含む絶縁層100が有するビアホール110のテーパー率Lb/Lt(%)は、通常80%〜100%である。特定プリント配線板300は、このようにテーパー率Lb/Ltが高い良好な形状のビアホール110を有する絶縁層100を含むものである。よって、特定プリント配線板300は、通常、第1の導体層210と第2の導体層220との間の導通の信頼性を高めることができる。
【0144】
特定プリント配線板300が含む絶縁層100が有するビアホール110の数は、1個でもよく、2個以上でもよい。絶縁層100が2個以上のビアホール110を有する場合、その一部が要件(i)〜(iv)を満たしていてもよいが、その全部が要件(i)〜(iv)を満たすことが好ましい。また、例えば、絶縁層100から無作為に選んだ5箇所のビアホール110が、平均で、要件(i)〜(iv)を満たすことが好ましい。
【0145】
上述した特定プリント配線板300は、本発明の樹脂組成物層の硬化物によって絶縁層100を形成することにより、実現できる。この際、絶縁層100に形成されるビアホール110のビアボトム120及びビアトップ130の平面形状は任意であるが、通常は円形状又は楕円形状であり、好ましくは円形状である。
【0146】
特定プリント配線板等のプリント配線板は、例えば、樹脂シートを用いて、下記の工程(I)〜工程(IV)を含む製造方法を行うことにより、製造できる。
(I)内層基板上に、樹脂組成物層が内層基板と接合するように、樹脂シートを積層する工程。
(II)樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する工程。
(III)絶縁層にビアホールを形成する工程。
(IV)絶縁層に粗化処理を施す工程。
【0147】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、プリント配線板の基板となる部材である。内層基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。通常、内層基板としては、その片面又は両面に、導体層を有しているものを用いる。そして、この導体層上に、絶縁層を形成する。この導体層は、例えば回路として機能させるために、パターン加工されていてもよい。基板の片面または両面に回路として導体層が形成された内層基板は、「内層回路基板」ということがある。また、プリント配線板を製造する際に更に絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物も、「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用してもよい。
【0148】
内層基板と樹脂シートとの積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより、内層基板に樹脂組成物層を貼り合わせることで、行うことができる。樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ということがある。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0149】
内層基板と樹脂シートとの積層は、例えば、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは80℃〜140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa〜1.77MPa、より好ましくは0.29MPa〜1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間〜400秒間、より好ましくは30秒間〜300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0150】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアップリケーター、バッチ式真空加圧ラミネーター等が挙げられる。
【0151】
積層の後に、常圧下(大気圧下)で、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0152】
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は、特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して採用される条件を任意に使用してよい。
【0153】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は、通常120℃〜240℃の範囲(好ましくは150℃〜220℃の範囲、より好ましくは170℃〜200℃の範囲)、硬化時間は、通常5分間〜120分間の範囲(好ましくは10分間〜100分間、より好ましくは15分間〜90分間)とすることができる。
【0154】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を、硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を、通常5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間、さらに好ましくは15分間〜100分間)予備加熱してもよい。
【0155】
工程(III)において、絶縁層にビアホールを形成する。ビアホールの形成方法としては、レーザー光の照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。中でも、一般にハローイング現象が生じ易いので、ハローイング現象の抑制という効果を有効に活用する観点から、レーザー光の照射が好ましい。
【0156】
このレーザー光の照射は、例えば、光源として、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー等のレーザー光源を有するレーザー加工機を用いて行うことができる。用いられ得るレーザー加工機としては、例えば、ビアメカニクス社製CO
2レーザー加工機「LC−2k212/2C」、三菱電機社製の605GTWIII(−P)、松下溶接システム社製のレーザー加工機、などが挙げられる。
【0157】
レーザー光の波長、パルス数、パルス幅、出力等のレーザー光の照射条件は、特に限定されず、レーザー光源の種類に応じた適切な条件を設定してよい。
【0158】
工程(IV)において、絶縁層に粗化処理を施す。粗化処理の手順及び条件は、特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して使用される任意の手順及び条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に実施して、絶縁層を粗化処理することができる。
【0159】
膨潤液としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液が挙げられる。該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン社製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。また、膨潤液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃〜90℃の膨潤液に絶縁層を1分間〜20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃〜80℃の膨潤液に絶縁層を5分間〜15分間浸漬させることが好ましい。
【0160】
酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、酸化剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間〜30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は、5質量%〜10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン社製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0161】
中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン社製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。また、中和液は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃〜80℃の中和液に5分間〜30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃〜70℃の中和液に5分間〜20分間浸漬する方法が好ましい。
【0162】
ところで、支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)と工程(III)との間に除去してもよく、工程(III)と工程(IV)との間に除去してもよく、工程(IV)の後で除去してもよい。
【0163】
プリント配線板の製造方法は、更に、(V)導体層を形成する工程を含んでいてもよい。この工程(V)は、プリント配線板の製造に用いられる各種方法に従って実施してよい。
【0164】
工程(V)は、導体層を形成する工程である。導体層に使用する導体材料は、特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種類以上の金属を含む。導体層は、単金属層であってもよく、合金層であってもよい。合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種類以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層;又は、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層;が好ましい。さらには、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層;又はニッケル・クロム合金の合金層;がより好ましく、銅の単金属層が特に好ましい。
【0165】
導体層は、単層構造であってもよく、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層を2層以上含む複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0166】
導体層の厚みは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm〜35μm、好ましくは5μm〜30μmである。
【0167】
導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。中でも、製造の簡便性の観点から、セミアディティブ法により形成することが好ましい。
【0168】
以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0169】
また、必要に応じて、工程(I)〜工程(V)による絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層プリント配線板を製造してもよい。
【0170】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、前記のプリント配線板を含む。この半導体装置は、プリント配線板を用いて製造することができる。
【0171】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0172】
半導体装置は、例えば、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは、半導体を材料とする電気回路素子を任意に用いることができる。
【0173】
半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されない。実装方法の例としては、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例】
【0174】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。
【0175】
<使用した水酸化マグネシウム>
水酸化マグネシウム1:水酸化マグネシウム(神島化学工業社製「EP−4A」、平均粒径1.1μm(無機物処理済))100部に対して、信越化学工業社製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)3部で表面処理したもの。
水酸化マグネシウム2:水酸化マグネシウム(神島化学工業社製「EP−4A」、平均粒径1.1μm(無機物処理済))100部に対して、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリメトキシシラン)3部で表面処理したもの。
【0176】
<使用したシリカ>
シリカ1:球状シリカ(電気化学工業社製「UFP−30」、平均粒径0.1μm、比表面積30.7m
2/g)100部に対して、信越化学工業社製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)2部で表面処理したもの。
シリカ2:球形シリカ(電気化学工業社製「UFP−30」、平均粒径0.1μm、比表面積30.7m
2/g)100部に対して、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリメトキシシラン)2部で表面処理したもの。
シリカ3:球状シリカ(日本触媒社製「KE−P30」、平均粒径0.3μm、比表面積35m
2/g)100部に対して、信越化学工業社製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)2部で表面処理したもの。
シリカ4:球状シリカ(日本触媒社製「KE−P30」、平均粒径0.3μm、比表面積35m
2/g)100部に対して、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリメトキシシラン)2部で表面処理したもの。
【0177】
<実施例1>
ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)6部、ナフタレン型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ESN475V」、エポキシ当量約332)5部、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7760」、エポキシ当量約238)15部、シクロヘキサン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「ZX1658GS」、エポキシ当量約135)2部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7500BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液、Mw=44000)2部を、ソルベントナフサ20部及びシクロヘキサノン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、活性エステル系硬化剤(DIC社製「EXB−8000L−65TM」、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のトルエン:MEKの1:1溶液)6部、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(DIC社製「LA−3018−50P」、水酸基当量約151、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)4部、水酸化マグネシウム1を15部、シリカ1を35部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.05部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO社製「SHP020」)で濾過して、樹脂組成物1を調製した。
【0178】
<実施例2>
樹脂組成物1の調製において、水酸化マグネシウム1の量を15部から25部に変え、シリカ1の量を35部から25部に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物1の調製と同様にして樹脂組成物2を調製した。
【0179】
<実施例3>
樹脂組成物1の調製において、15部の水酸化マグネシウム1を、15部の水酸化マグネシウム2に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物1の調製と同様にして樹脂組成物3を調製した。
【0180】
<実施例4>
樹脂組成物1の調製において、35部のシリカ1を、35部のシリカ2に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物1の調製と同様にして樹脂組成物4を調製した。
【0181】
<実施例5>
樹脂組成物1の調製において、35部のシリカ1を、35部のシリカ3に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物1の調製と同様にして樹脂組成物5を調製した。
【0182】
<実施例6>
樹脂組成物1の調製において、35部のシリカ1を、35部のシリカ4に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物1の調製と同様にして樹脂組成物6を調製した。
【0183】
<比較例1>
樹脂組成物1の調製において、水酸化マグネシウム1を含有させず、シリカ1の量を35部から50部に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物1の調製と同様にして樹脂組成物7を調製した。
【0184】
<比較例2>
樹脂組成物7の調製において、50部のシリカ1を50部のシリカ2に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物7の調製と同様にして樹脂組成物8を調製した。
【0185】
<比較例3>
樹脂組成物7の調製において、50部のシリカ1を50部のシリカ3に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物7の調製と同様にして樹脂組成物9を調製した。
【0186】
<比較例4>
樹脂組成物7の調製において、50部のシリカ1を50部のシリカ4に変えた。以上の事項以外は樹脂組成物7の調製と同様にして樹脂組成物10を調製した。
【0187】
樹脂組成物1〜10の調製に用いた成分とその配合量を下記表に示した。なお、下記表中の略語等は以下のとおりである。
YX4000HK:ビキシレノール型エポキシ樹脂、三菱ケミカル社製、エポキシ当量約185
ESN475V:ナフタレン型エポキシ樹脂、新日鉄住金化学社製、エポキシ当量約332
YL7760:ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、三菱ケミカル社製、エポキシ当量約238
ZX1658GS:シクロヘキサン型エポキシ樹脂、三菱ケミカル社製、エポキシ当量約135
LA−3018−50P:トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤、DIC社製、水酸基当量約151、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液
EXB−8000L−65M:活性エステル系硬化剤、DIC社製、活性基当量約220、不揮発成分65質量%のMEK溶液
YX7500BH30:フェノキシ樹脂、三菱ケミカル社製、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液、重量平均分子量=44000
DMAP:アミン系硬化促進剤、4−ジメチルアミノピリジン
合計含有量(樹脂成分換算):樹脂組成物に含まれる不揮発成分のうち、(C)成分及び(D)成分を除いた量
(B)成分の合計含有量:樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合の(B)成分の合計含有量
活性エステル系硬化剤の含有量:樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合の活性エステル系硬化剤の含有量
(C)成分及び(D)成分の合計含有量:樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)成分及び(D)成分の合計含有量
(C)成分の含有量:樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合の(C)成分の含有量
【0188】
【表1】
【0189】
<樹脂シートの作製>
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL−5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃、「離型PET」)を用意した。
【0190】
各樹脂組成物を離型PET上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが10μmとなるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、70℃から95℃で2分間乾燥することにより、離型PET上に樹脂組成物層を得た。次いで、樹脂シートの支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス社製「アルファンMA−411」、厚み15μm)の粗面を、樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、離型PET(支持体)、樹脂組成物層、及び保護フィルムの順からなる樹脂シートAを得た。
【0191】
<樹脂組成物層等の厚みの測定>
厚みは、接触式膜厚計(ミツトヨ社製、MCD−25MJ)を用いて、測定した。
【0192】
<レーザービア加工後のハローイングの評価>
−評価基板Aの作製−
(1)銅張積層板
銅張積層板として、両面に銅箔層を積層したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ3μm、基板厚み0.15mm、三菱ガス化学社製「HL832NSF LCA」、255×340mmサイズ)を用意した。
【0193】
(2)樹脂シートのラミネート
樹脂組成物1〜10を用いて作製した各樹脂シートAから保護フィルムを剥がし、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター、CVP700)を用いて、樹脂組成物層が銅張積層板と接するように、銅張積層板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、130℃、圧力0.74MPaにて45秒間圧着させることにより実施した。次いで、120℃、圧力0.5MPaにて75秒間熱プレスを行った。
【0194】
(3)樹脂組成物層の熱硬化
樹脂シートがラミネートされた銅張積層板を、100℃のオーブンに投入後30分間、次いで180℃のオーブンに移し替えた後30分間、熱硬化して絶縁層を形成し、離形PETを剥離した。これを硬化基板Aとする。
【0195】
(4)レーザービア加工
三菱電機社製CO
2レーザー加工機「605GTWIII(−P)」を使用して、絶縁層上よりレーザーを照射して、絶縁層にトップ径(直径)30μmのビアホールを形成した。レーザーの照射条件は、マスク径1mm、パルス幅16μs、エネルギー0.2mJ/ショット、ショット数2、バーストモード(10kHz)であった。これをビア加工基板Aとする。
【0196】
(5)粗化処理を行う工程
ビア加工基板Aに粗化処理としてのデスミア処理を行った。なお、デスミア処理としては、下記の湿式デスミア処理を実施した。
【0197】
湿式デスミア処理:
膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で10分間、次いで酸化剤溶液(アトテックジャパン社製「コンセントレート・コンパクトCP」、過マンガン酸カリウム濃度約6%、水酸化ナトリウム濃度約4%の水溶液)に80℃で20分間、最後に中和液(アトテックジャパン社製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間、浸漬した後、80℃で15分間乾燥した。これを粗化基板Aとする。
【0198】
<デスミア処理後のビア径の測定>
粗化基板Aを、FIB−SEM複合装置(SIIナノテクノロジー社製「SMI3050SE」)を用いて、断面観察を行った。詳細には、レーザービアの垂直な方向における断面をFIB(集束イオンビーム)により削り出し、断面SEM画像から、デスミア処理後のレーザービア径を測定した。各サンプルにつき、無作為に選んだ5箇所の断面SEM画像から、デスミア処理後のビアトップ径を測定し、その平均値をビアトップ径Lt(μm)とし、下記表に示した。
【0199】
<粗化処理後のハローイング距離の測定>
粗化基板Aを、光学顕微鏡(ハイロックス社製「KH8700」)で観察した。詳細には、ビアホールの周辺の絶縁層を、光学顕微鏡(CCD)を用いて、粗化基板Aの上部から観察した。この観察は、ビアトップに光学顕微鏡の焦点を合わせて行った。観察の結果、ビアホールの周囲に、当該ビアホールのビアトップのエッジから連続して、絶縁層が白色に変色したドーナツ状のハローイング部が見られた。そこで、観察された像から、ビアホールのビアトップの半径(ハローイング部の内周半径に相当)r1と、ハローイング部の外周半径r2とを測定し、これら半径r1と半径r2との差r2−r1を、その測定地点のビアトップのエッジからのハローイング距離として算出した。
【0200】
前記の測定を、無作為に選んだ5か所のビアホールで行った。そして、測定された5か所のビアホールのハローイング距離の測定値の平均を、そのサンプルのビアトップのエッジからのハローイング距離Wtとして採用した。
【0201】
下記表において、ハローイング比Htとは、粗化処理後のビアトップのエッジからのハローイング距離Wtと、粗化処理後のビアホールのビアトップの半径(Lt/2)との比(「Wt/(Lt/2)」を表す。このハローイング比Htが35%以下であれば「○」と判定し、ハローイング比Htが35%より大きければ「×」と判定した。
【0202】
【表2】
【0203】
実施例1〜6は、厚みが10μmと薄い樹脂組成物層を用いて絶縁層を形成しても、ハローイング比Htが小さいことが分かる。この結果から、本発明の樹脂組成物層により、厚みが薄くてもハローイング現象の抑制が可能な絶縁層を実現できることが確認できた。また、実施例1〜6は、難燃性にも優れることを確認している。
【0204】
実施例1〜6において、(E)成分〜(F)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。