(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記取得部において取得した速度がしきい値よりも低い場合に、前記3軸の加速度センサの出力値の分散値、あるいは前記3軸のジャイロセンサの出力値の分散値が大きくなると、前記初期姿勢導出部における導出期間を長くさせることを特徴とする請求項1に記載の角速度導出装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例1)
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本実施例は、車両等に搭載され、3軸のジャイロセンサを使用して角速度を導出する角速度導出装置に関する。角速度導出装置は、3軸の加速度センサから導出した初期姿勢を3軸のジャイロセンサの出力値によって更新し、更新された姿勢と前回の姿勢との差分から角速度を導出する。姿勢角は、3軸のジャイロセンサを車両等に取り付ける際に生じる傾きや、坂あるいはバンク等の車両状態による傾きを合成したものであり、最終的に地表水平面を基準とした上下/前後/左右の3軸に対して求められる。3軸のジャイロセンサの出力値である角速度は、センサ自体を基準とした座標系で表されており、地表水平面を基準とした座標系で表されていない。そのため、3軸のジャイロセンサから出力された角速度を、地表水平面を基準とした座標系に座標変換する必要がある。
【0012】
そのため、3軸の加速度センサからの出力値をもとに初期姿勢を導出するとともに、3軸のジャイロセンサから出力された角速度によって初期姿勢を更新していくことによって、姿勢が導出される。ここで、姿勢の表現方法には、オイラー角、方向余弦行列、クォータニオンの3種類がある。初期姿勢と姿勢にはオイラー角が使用され、更新処理にはクォータニオンが使用される。このような3軸の加速度センサからの出力値をもとにした姿勢角の導出では、初期姿勢の導出と、姿勢の更新において、絶対姿勢角の誤差が蓄積するおそれがあり、このような誤差の蓄積によってヨー角速度の導出精度が低下する。本実施例では、初期姿勢の導出における誤差を抑制し、それによって姿勢角および角速度の導出精度の悪化を抑制することを目的とする。
【0013】
車両が停止している場合、車両の並進加速度および向心加速度が0になるので初期姿勢を精度よく導出できるが、高速道路高架、橋等の人工的建造物の振動、乗降に伴う車両の振動の影響を受けた場合において、その加速度成分により初期姿勢の導出精度が悪化する。そのため、本実施例に係る角速度導出装置は、車両の速度がしきい値よりも低い場合に、姿勢の変化の程度に応じて初期姿勢の導出期間を調節する。
【0014】
図1は、実施例1に係る角速度導出装置100の構成を示す。角速度導出装置100は、3軸加速度センサ10、初期姿勢導出部12、第1変換部14、3軸ジャイロセンサ16、更新部18、第2変換部20、角速度導出部22、出力部24、速度センサ26、制御部28を含む。また、制御部28は、略停止判定部50、分散値取得部52、正規化部54、調節部56を含む。角速度導出装置100は、図示しない車両に搭載可能である。
【0015】
3軸加速度センサ10は、3軸のそれぞれに対応した加速度を測定する。ここでは、3軸を説明するために
図2を使用する。
図2は、実施例1に係る座標系を示す。3軸として、x軸、y軸、z軸からなる直交座標系が規定される。x軸は車両200の進行方向を向き、z軸は車両200の床面から下方への法線方向を向き、y軸はx軸およびz軸に垂直方向を向く。3軸加速度センサ10は、測定によってx軸方向の加速度a
x、y軸方向の加速度a
y、x軸方向の加速度a
zを取得する。
図1に戻る。3軸加速度センサ10は、これらを3軸加速度センサ10の出力値として、初期姿勢導出部12に出力する。
【0016】
初期姿勢導出部12は、3軸加速度センサ10の出力値を入力する。初期姿勢導出部12は、3軸加速度センサ10の出力値をもとにオイラー角表現の初期姿勢を導出する。オイラー角表現では、x軸まわりの回転角をロール角φと呼び、y軸まわりの回転角をピッチ角θ、z軸まわりの回転角をヨー角ψと呼ぶ。初期姿勢のφとθは次のように示される。
【数1】
なお、ψの初期値は、任意の値でよく、例えば、「0」に設定される。
【0017】
第1変換部14は、初期姿勢導出部12において導出したオイラー角表現の初期姿勢を方向余弦行列による初期姿勢に変換してから、方向余弦行列による初期姿勢をクォータニオンによる初期姿勢に変換する。オイラー角表現の初期姿勢は、方向余弦行列Eを用いて次のように変換される。
【数2】
また、方向余弦行列Eの各成分は次のように示される。
【数3】
クォータニオンは、回転方向の単位ベクトルと回転角の4成分で定義される。方向余弦行列Eによる初期姿勢は、クォータニオンによる初期姿勢q
1、q
2、q
3、q
4に次のように変換される。
【数4】
第1変換部14は、クォータニオンによる初期姿勢q
1、q
2、q
3、q
4を更新部18に出力する。
【0018】
3軸ジャイロセンサ16は、角速度ベクトルω=[p q r]
Tを出力値として順次出力する。各成分p、q、rは
図2のように示される。3軸ジャイロセンサ16は、出力値を更新部18に順次出力する。
【0019】
更新部18は、次のクォータニオンによる姿勢の微分方程式を解く。
【数5】
初期の段階において、更新部18は、第1変換部14において変換したクォータニオンによる初期姿勢q
1、q
2、q
3、q
4を初期値として微分方程式の右辺に代入し、そのタイミングにおける角速度ベクトルの各成分p、q、rも微分方程式の右辺に代入する。微分方程式を解くことによって、更新部18は、更新したクォータニオンによる姿勢q
1、q
2、q
3、q
4を導出する。
【0020】
これに続いて、更新部18は、導出したクォータニオンによる姿勢q1、q2、q3、q4を微分方程式の右辺に代入し、新たな角速度ベクトルの各成分p、q、rも微分方程式の右辺に代入する。微分方程式を解くことによって、更新部18は、クォータニオンによる姿勢q
1、q
2、q
3、q
4を再度導出する。つまり、更新部18は、3軸ジャイロセンサ16の出力値を順次代入しながら、クォータニオンによる姿勢の微分方程式を繰り返し解くことによって、クォータニオンによる姿勢q
1、q
2、q
3、q
4を更新する。更新部18は、更新したクォータニオンによる姿勢q
1、q
2、q
3、q
4を第2変換部20に出力する。
【0021】
第2変換部20は、更新部18において更新したクォータニオンによる姿勢q
1、q
2、q
3、q
4を方向余弦行列Eによる姿勢に変換してから、方向余弦行列Eによる姿勢をオイラー角表現の姿勢に変換する。更新したクォータニオンによる姿勢q
1、q
2、q
3、q
4は、方向余弦行列Eによる姿勢に次のように変換される。
【数6】
方向余弦行列Eは、オイラー角表現の姿勢に次のように変換される。
【数7】
第2変換部20は、オイラー角表現の姿勢のうち、ヨー角ψを角速度導出部22に出力する。
【0022】
角速度導出部22は、第2変換部20において変換したオイラー角表現の姿勢のうち、ヨー角ψを入力する。角速度導出部22は、ヨー角ψの時間変化t[sec]をもとに角速度を導出する。例えば、着目する時刻nのヨー角をψ
nと示し、時刻n−1のヨー角をψ
n−1と示す場合、角速度は、(ψ
n−ψ
n−1)/tによって導出される。出力部24は、角速度導出部22において導出した角速度を出力する。
【0023】
速度センサ26は、ドライブシャフトの回転に対応して回転するスピードメータケーブルの中間に設置され、ドライブシャフトの回転に伴った速度パルス信号を出力する。また、速度センサ26は、車両の移動に伴って出力される速度パルス信号を所定の期間ごとに計数することによって、周期的にパルス数を検出する。このパルス数は車両200の速度に比例するので、速度センサ26は、車両200の速度を測定するといえる。速度センサ26は、測定した速度を制御部28に出力する。なお、車両200の速度は、速度センサ26ではなく、GNSS(Global Navigation Satellite System)によって取得されてもよい。
【0024】
制御部28の略停止判定部50は、速度センサ26から速度の情報を入力する。略停止判定部50は、速度の情報が所定期間にわたってしきい値よりも低い場合、例えば、「0」である場合に、車両200が略停止状態であること判定する。略停止判定部50は、車両200が略停止状態であること判定した場合に、これを分散値取得部52に通知する。ここで、しきい値は、車両200がほとんど停止していると判断できる場合を特定可能な値に設定される。車両200がほとんど停止していると判断できる場合は、例えば、速度センサ26がパルスを所定期間検出できない場合に相当する。
【0025】
分散値取得部52は、略停止判定部50から通知を入力した場合、3軸ジャイロセンサ16の出力値の分散値Var_gyroを取得する。分散値を計算する期間は、例えば10秒間、サンプリング周波数は、例えば10[Hz]であり、これによって車両200の姿勢の短周期的な変化が検出される。分散値取得部52は、分散値Var_gyroを正規化部54に出力する。
【0026】
正規化部54は、分散値取得部52から分散値Var_gyroを入力する。正規化部54は、予め実験により測定された3軸ジャイロセンサ16の出力値の分散TypVar_gyroを保持する。正規化部54は、分散値Var_gyroを分散TypVar_gyroで除算し、正規化する。正規化部54は、(Var_gyro/TypVar_gyro)を調節部56に出力する。
【0027】
調節部56は、正規化部54から(Var_gyro/TypVar_gyro)を入力する。調節部56は、予め実験により決定される姿勢角導出基準期間Term_defaultを保持する。これには、温度が急激に変化する期間より小さく、かつ、ホワイトノイズに影響される期間より大きい期間を設定、例えば、3秒が設定される。調節部56は、姿勢角導出基準期間Term_defaultに(Var_gyro/TypVar_gyro)を乗算する。乗算結果が導出期間に相当する。つまり、3軸ジャイロセンサ16の出力値の分散値が大きくなると、初期姿勢導出部12における導出期間が長くなるように、調節部56は導出期間を調節する。ここで、(Var_gyro/TypVar_gyro)が1以下の場合、導出期間はTerm_defaultにされる。また、導出期間が10秒間を超える場合、導出期間は10秒間とされる。調節部56は、導出期間を初期姿勢導出部12に設定する。初期姿勢導出部12は、設定された導出期間にわたって初期姿勢を平均化する。
【0028】
これは、略停止状態において、正規化した角速度の分散値を使用して導出期間を決定することに相当する。角速度の分散値が大きい場合には、車両200の姿勢が短周期的に変化して、3軸加速度センサ10の出力値にはノイズ成分が入り込む。そのため、導出期間を長くすることによってノイズ成分の影響が低減される。
【0029】
なお、分散値取得部52、正規化部54、調節部56は、次の処理を実行してもよい。分散値取得部52は、略停止判定部50から通知を入力した場合、3軸加速度センサ10の出力値の分散値Var_acclを取得する。分散値を計算する期間は、例えば10秒間、サンプリング周波数は、例えば10[Hz]であり、これによって車両200の姿勢の変化が検出される。分散値取得部52は、分散値Var_acclを正規化部54に出力する。
【0030】
正規化部54は、分散値取得部52から分散値Var_acclを入力する。正規化部54は、予め実験により測定された3軸加速度センサ10の出力値の分散TypVar_acclを保持する。正規化部54は、分散値Var_acclを分散TypVar_acclで除算し、正規化する。正規化部54は、(Var_accl/TypVar_accl)を調節部56に出力する。
【0031】
調節部56は、正規化部54から(Var_accl/TypVar_accl)を入力する。調節部56は、予め実験により決定される姿勢角導出基準期間Term_defaultを保持する。これには、温度が急激に変化する期間より小さく、かつ、ホワイトノイズに影響される期間より大きい期間を設定、例えば、3秒が設定される。調節部56は、姿勢角導出基準期間Term_defaultに(Var_accl/TypVar_accl)を乗算する。乗算結果が導出期間に相当する。つまり、3軸加速度センサ10の出力値の分散値が大きくなると、初期姿勢導出部12における導出期間が長くなるように、調節部56は導出期間を調節する。ここで、(Var_accl/TypVar_accl)が1以下の場合、導出期間はTerm_defaultにされる。また、導出期間が10秒間を超える場合、導出期間は10秒間とされる。調節部56は、導出期間を初期姿勢導出部12に設定する。初期姿勢導出部12は、設定された導出期間にわたって初期姿勢を平均化する。これは、略停止状態において、正規化した加速度の分散値を使用して導出期間を決定することに相当する。加速度の分散値が大きい場合には、車両200の姿勢が変化している。そのため、導出期間を長くすることによって精度が向上する。
【0032】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0033】
以上の構成による角速度導出装置100の動作を説明する。
図3は、角速度導出装置100による導出期間の調節手順を示すフローチャートである。速度がしきい値より小さい場合(S10のY)、調節部56は、3軸ジャイロセンサ16の出力値の分散値、あるいは3軸加速度センサ10の出力値の分散値をもとに導出期間を調節する(S12)。速度がしきい値より小さくない場合(S10のN)、ステップ12はスキップされる。
【0034】
本発明の実施例によれば、車両200の速度がしきい値よりも低い場合に、3軸加速度センサ10の出力値の分散値をもとに、初期姿勢の導出期間を調節するので、車両200の振動の影響を抑制できる。また、車両200の速度がしきい値よりも低い場合に、3軸ジャイロセンサ16の出力値の分散値をもとに、初期姿勢の導出期間を調節するので、車両200の振動の影響を抑制できる。また、車両200の振動の影響が抑制されるので、3軸ジャイロセンサ16を使用する場合に姿勢の導出精度の悪化を抑制できる。また、3軸ジャイロセンサ16を使用する場合に姿勢の導出精度の悪化が抑制されるので、3軸ジャイロセンサ16を使用する場合に角速度の導出精度の悪化を抑制できる。
【0035】
また、車両200の速度がしきい値よりも低い場合に、3軸ジャイロセンサ16の出力値の分散値が大きくなると導出期間を長くするので、ノイズ成分の影響を低減できる。また、ノイズ成分の影響が低減されるので、姿勢の導出精度の悪化を抑制できる。また、車両200の速度がしきい値よりも低い場合に、3軸加速度センサ10の出力値の分散値が大きくなると導出期間を長くするので、車両200の姿勢が変化していても、姿勢の導出精度の悪化を抑制できる。
【0036】
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。実施例2は、実施例1と同様に、3軸のジャイロセンサを使用して角速度を導出する角速度導出装置に関する。本実施例では、姿勢の更新によって蓄積される姿勢角の誤差、およびそれによって生ずるヨー角速度の導出精度の悪化を抑制することを目的とする。3軸の加速度センサの出力値から計算された初期姿勢を3軸ジャイロセンサの出力値によって更新する場合、時間の経過とともに、計算に使用する3軸のジャイロセンサのオフセットおよび感度の誤差が姿勢に蓄積される。これにより、姿勢の精度が悪化するため、その差分から計算される角速度の精度も悪化する。一方、1軸のジャイロセンサの出力値から角速度を導出する場合、車両の姿勢の変化による検出軸の傾きの影響を受け、精度が悪化する。
【0037】
本実施例に係る角速度導出装置では、角速度を導出するための2種類の処理について、精度の高い方の処理を選択して実行することによって、角速度の導出精度を高める。具体的には、3軸の加速度センサの出力値から初期姿勢を導出したタイミングを起点として、3軸のジャイロセンサの出力値を使用して導出した角速度の絶対値の積分値が導出される。角速度導出装置は、積分値がしきい値以上になった場合、1軸のジャイロセンサの出力値から導出した角速度を出力する。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0038】
図4は、実施例2に係る角速度導出装置100の構成を示す。角速度導出装置100は、3軸加速度センサ10、初期姿勢導出部12、第1変換部14、3軸ジャイロセンサ16、更新部18、第2変換部20、角速度導出部22、出力部24、速度センサ26、ピッチ角導出部30、1軸角速度導出部32を含む。
【0039】
ピッチ角導出部30は、3軸加速度センサ10の出力値を入力するとともに、速度センサ26の出力値を入力する。ピッチ角導出部30は、これらをもとに車両200のピッチ角θを導出する。
図5は、ピッチ角導出部30における処理の概要を示す。斜面を走行している車両200において、これまでと同様にx軸、y軸、z軸が定義されるので、x軸方向の加速度a
x、y軸方向の加速度a
y、x軸方向の加速度a
zが3軸加速度センサ10によって取得される。また、速度センサ26の出力値である車両200の速度は、vの方向を示す。ピッチ角導出部30は、速度vを微分することによって、加速度aを取得する。この加速度aも速度vと同一の方向を有する。重力加速度をgと示す場合、
図5における関係は次のように示される。
【数8】
この連立方程式を解くことによって、
図5における斜面の傾きθが導出され、斜面の傾きθがピッチ角θに相当する。ピッチ角導出部30は、ピッチ角θを1軸角速度導出部32に出力する。
【0040】
1軸角速度導出部32は、3軸ジャイロセンサ16の出力値のうち、1軸の出力値を取得する。また、1軸角速度導出部32は、ピッチ角導出部30からピッチ角θを入力する。1軸角速度導出部32は、次のように角速度ωを導出する。
【数9】
ここで、Voutは、1軸の出力値であり、Voffsetは、3軸ジャイロセンサ16のオフセット値、S(mV/deg/sec)は、3軸ジャイロセンサ16の感度係数である。1軸角速度導出部32は、角速度ωを出力部24に出力する。
【0041】
出力部24は、角速度導出部22において導出した角速度(以下、「3軸角速度」ということもある)を入力する。また、出力部24は、1軸角速度導出部32において導出した角速度(以下、「1軸角速度」ということもある)を入力する。出力部24は、初期姿勢導出部12において初期姿勢が導出されてから、3軸角速度の絶対値の積分値の計算を開始する。出力部24は、積分値がしきい値より小さい場合、3軸角速度を出力する。一方、出力部24は、積分値がしきい値以上である場合、3軸角速度の代わりに、1軸角速度を出力する。なお、出力部24は、初期姿勢導出部12において新たな初期姿勢が導出されると、積分値をリセットする。
【0042】
以上の構成による角速度導出装置100の動作を説明する。
図6は、角速度導出装置100による切替手順を示すフローチャートである。出力部24は、3軸角速度の絶対値の積分値を導出する(S30)。積分値がしきい値以上である場合(S32のY)、出力部24は1軸角速度を出力する(S34)。積分値がしきい値以上でない場合(S32のN)、出力部24は3軸角速度を出力する(S36)。
【0043】
本発明の実施例によれば、3軸角速度の絶対値の積分値をしきい値と比較することで、姿勢の更新過程において積分される誤差の増加を検出できる。また、3軸角速度の絶対値の積分値がしきい値以上である場合、3軸角速度の代わりに、1軸角速度を出力するので、姿勢の誤差の影響を受けた3軸加速度の出力を回避できる。また、姿勢の誤差の影響を受けた3軸角速度の出力が回避されるので、出力される角速度の導出精度の悪化を抑制できる。また、1軸角速度が出力されるので、姿勢に蓄積された絶対姿勢角の誤差がもたらす、ヨー軸角速度への誤差を抑制できる。
【0044】
(実施例3)
次に、実施例3を説明する。実施例3は、これまでと同様に、3軸のジャイロセンサを使用して角速度を導出する角速度導出装置に関する。また、実施例3は、実施例2と同様に、姿勢の更新によって蓄積される姿勢角の誤差、およびそれによって生ずるヨー角速度の導出精度の悪化を抑制することを目的とする。本実施例に係る角速度導出装置でも、角速度を導出するための2種類の処理について、精度の高い方の処理を選択して実行することによって、角速度の導出精度を高める。具体的には、3軸の加速度センサの出力値から初期姿勢を導出した後、温度の変化が導出される。角速度導出装置は、温度の変化がしきい値以上になった場合、1軸のジャイロセンサの出力値から導出した角速度を出力する。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0045】
図7は、実施例3に係る角速度導出装置100の構成を示す。角速度導出装置100は、3軸加速度センサ10、初期姿勢導出部12、第1変換部14、3軸ジャイロセンサ16、更新部18、第2変換部20、角速度導出部22、出力部24、速度センサ26、ピッチ角導出部30、1軸角速度導出部32、温度センサ34、取得部36を含む。
【0046】
温度センサ34は、例えば、半導体温度センサ等に相当し、3軸ジャイロセンサ16の内部、あるいは近傍に設置される。つまり、温度センサ34は、3軸ジャイロセンサ16の温度またはその周囲の温度を検出する。これは、3軸ジャイロセンサ16が設置されているセンサ設置部の環境温度が検出されることに相当する。検出された温度は、例えば、温度に比例した0V〜5Vのアナログ信号として出力される。取得部36は、温度センサ34からのアナログ信号を入力する。これは温度を取得することに相当する。取得部36は、AD(Analog to Digital)変換装置を備え、温度センサ34の電圧値に対して、例えば、サンプリング間隔100msecでのAD変換を実行する。取得部36は、AD変換の結果のデジタル信号を温度として出力部24に出力する。
【0047】
出力部24は、取得部36からの温度を入力する。また、出力部24は、角速度導出部22からの3軸角速度を入力するとともに、1軸角速度導出部32からの1軸角速度も入力する。出力部24は、初期姿勢導出部12において初期姿勢が導出された後、温度の変化を導出する。出力部24は、温度の変化がしきい値より小さい場合、3軸角速度を出力する。一方、出力部24は、温度の変化がしきい値以上である場合、3軸角速度の代わりに、1軸角速度を出力する。
【0048】
以上の構成による角速度導出装置100の動作を説明する。
図8は、角速度導出装置100による切替手順を示すフローチャートである。取得部36は温度を取得する(S50)。温度の変化がしきい値以上である場合(S52のY)、出力部24は1軸角速度を出力する(S54)。温度の変化がしきい値以上でない場合(S52のN)、出力部24は3軸角速度を出力する(S56)。
【0049】
本発明の実施例によれば、温度をしきい値と比較するので、環境の変化によるジャイロセンサの誤差の増加を検出できる。また、温度がしきい値以上である場合、3軸角速度の代わりに、1軸角速度を出力するので、誤差の影響を受けた3軸角速度の出力を回避できる。また、誤差の影響を受けた3軸角速度の出力が回避されるので、出力される角速度の導出精度の悪化を抑制できる。また、1軸角速度が出力されるので、環境の変化による誤差の増加の影響を抑制できる。
【0050】
(実施例4)
次に、実施例4を説明する。実施例4は、これまでと同様に、3軸のジャイロセンサを使用して角速度を導出する角速度導出装置に関する。また、実施例4は、実施例2、3と同様に、姿勢の更新によって蓄積される姿勢角の誤差、およびそれによって生ずるヨー角速度の導出精度の悪化を抑制することを目的とする。本実施例に係る角速度導出装置でも、角速度を導出するための2種類の処理について、精度の高い方の処理を選択して実行することによって、角速度の導出精度を高める。具体的には、3軸のジャイロセンサの出力値によって更新された姿勢のピッチ角と、3軸の加速度センサと速度センサから算出したピッチ角との差分が導出される。角速度導出装置は、差分がしきい値以上になった場合、1軸のジャイロセンサの出力値から導出した角速度を出力する。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0051】
図9は、実施例4に係る角速度導出装置100の構成を示す。角速度導出装置100は、3軸加速度センサ10、初期姿勢導出部12、第1変換部14、3軸ジャイロセンサ16、更新部18、第2変換部20、角速度導出部22、出力部24、速度センサ26、ピッチ角導出部30、1軸角速度導出部32を含む。
【0052】
ピッチ角導出部30は、ピッチ角θを1軸角速度導出部32に出力するとともに、出力部24にも出力する。第2変換部20は、オイラー角表現の姿勢のうち、ピッチ角θを出力部24に出力する。出力部24は、第2変換部20からのピッチ角θ(以下、「第1ピッチ角」ともいう)を入力するとともに、ピッチ角導出部30からのピッチ角θ(以下、「第2ピッチ角」ともいう)を入力する。出力部24は、初期姿勢導出部12において初期姿勢が導出された後、第1ピッチ角と第2ピッチ角との差異を導出する。出力部24は、差異がしきい値より小さい場合、3軸角速度を出力する。一方、出力部24は、差異がしきい値以上である場合、3軸角速度の代わりに、1軸角速度を出力する。
【0053】
以上の構成による角速度導出装置100の動作を説明する。
図10は、角速度導出装置100による切替手順を示すフローチャートである。第2変換部20は、3軸ジャイロセンサ16の出力値と3軸加速度センサ10の出力値とをもとに第1ピッチ角を導出する(S70)。ピッチ角導出部30は、3軸加速度センサ10の出力値と速度センサ26の出力値とをもとに第2ピッチ角を導出する(S72)。第1ピッチ角と第2ピッチ角との差異がしきい値以上である場合(S74のY)、出力部24は1軸角速度を出力する(S76)。第1ピッチ角と第2ピッチ角との差異がしきい値以上でない場合(S74のN)、出力部24は3軸角速度を出力する(S78)。
【0054】
本発明の実施例によれば、3軸ジャイロセンサ16と3軸加速度センサ10とからの出力値とをもとに導出した第1ピッチ角と、3軸加速度センサ10と速度センサ26とからの出力値とをもとに導出した第2ピッチ角との差異をしきい値と比較するので、絶対姿勢角の誤差を検出できる。また、差異がしきい値以上である場合、3軸角速度の代わりに、1軸角速度を出力するので、誤差の影響を受けた3軸加速度の出力を回避できる。また、誤差の影響を受けた3軸角速度の出力が回避されるので、出力される角速度の導出精度の悪化を抑制できる。また、1軸角速度が出力されるので、絶対姿勢角の誤差の影響を抑制できる。
【0055】
以上、本発明について実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0056】
本実施例1から4の任意の組合せも有効である。本変形例によれば、本実施例1から4を任意に組み合わせた効果を得ることができる。