(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<本発明の実施形態の概要>
以下、本発明の実施形態の概要を列記して説明する。
【0014】
(1) 本実施形態のPONシステムは、複数の収納部を含む筐体を有する局側装置と、前記局側装置から離れた位置において宅側装置とPON通信を行うリモートノードと、を備え、前記収納部への装着対象として選択可能な通信ノードに、下記に定義する回線ノード及び中継ノードが含まれる。
回線ノード:収納部に装着された状態で宅側装置とPON通信を行う通信ノード
中継ノード:収納部に装着された状態でリモートノードと光ファイバを伝送路とするイーサネット通信を行う通信ノード
【0015】
本実施形態のPONシステムによれば、収納部への装着対象として選択可能な通信ノードに、リモートノードと光ファイバを伝送路とするイーサネット通信を行う中継ノードが含まれる。
このため、収納部への装着対象として中継ノードを選択すれば、中継ノード/リモートノード間の光ファイバの伝送路の分だけ、局側装置を中心とした宅側装置の設置可能範囲を拡大することができる。
【0016】
一方、局側装置から離れた位置においてリモートノードがPON通信を行うので、PONシステムの運用に必要な消費電力を局側装置からリモートノードに分散できる。このため、局側装置の電源容量が少量で足り、局舎の冷房設備もより簡便化できる。
従って、設備コストの増大を抑えつつ、サービスエリアを拡張できるPONシステムを構築することができる。よって、上述の第1の目的が達成される。
【0017】
(2) 本実施形態のPONシステムにおいて、前記リモートノードが、PON回線の幹線ファイバを接続可能な複数のPON通信ポートを有する場合には、前記複数のPON通信ポートのうちの少なくとも2つに、前記PON回線の幹線ファイバが接続されることが好ましい。
【0018】
本実施形態のPONシステムによれば、リモートノードから2つ以上のPON回線が接続される接続形態を採用できる。
従って、多数の加入者が存在する密集エリアに複数のPON回線を増設する必要が生じた場合は、密集エリアの近傍にリモートノードを設置し、リモートノードに複数のPON回線を接続すればよい。
【0019】
この場合、局側装置から1本の光ファイバを密集エリアまで敷設し、敷設した光ファイバの先端にリモートノードに接続すれば足りる。
このため、局側装置を起点として複数の幹線ファイバを敷設する必要がなくなり、敷設工事が簡便になる。従って、大規模な敷設工事を行わなくても、加入者の増加に対応できる。よって、上述の第2の目的が達成される。
【0020】
(3) 本実施形態のPONシステムにおいて、前記中継ノードが、前記光ファイバを接続可能な複数のイーサネット通信ポートを有する場合には、前記複数のイーサネット通信ポートのうちの少なくとも2つに、前記リモートノードに繋がる前記光ファイバが接続されることが好ましい。
【0021】
本実施形態のPONシステムによれば、複数のイーサネット通信ポートのうちの少なくとも2つに、リモートノードに繋がる光ファイバが接続されるので、中継ノードとリモートノードの接続形態を1対多にすることができる。
【0022】
(4) 本実施形態のPONシステムにおいて、前記リモートノードが、前記光ファイバを接続可能な複数のイーサネット通信ポートを有する場合には、前記複数のイーサネット通信ポートのうちの1つである第1ポートに、前記中継ノードに通じる前記光ファイバが接続され、前記複数のイーサネット通信ポートのうちの別の1つである第2ポートに、別の前記リモートノードに通じる前記光ファイバが接続されることが好ましい。
【0023】
本実施形態のPONシステムによれば、リモートノードの第1ポートに中継ノードを接続でき、リモートノードの第2ポートに別のリモートノードを接続できるので、2つのリモートノードを多段に接続することができる。
このため、互いに遠距離にある複数のサービスエリアが、河川などに沿って点在する場合でも、それぞれのサービスエリアに通信サービスを提供できるようになる。
【0024】
(5) 本実施形態のPONシステムにおいて、前記リモートノードが、前記光ファイバを接続可能な複数のイーサネット通信ポートを有する場合には、前記複数のイーサネット通信ポートのうちの1つである第1ポートに、前記中継ノードに通じる前記光ファイバが接続され、前記複数のイーサネット通信ポートのうちの別の1つである第2ポートに、別の前記中継ノードに通じる前記光ファイバが接続されることが好ましい。
【0025】
本実施形態のPONシステムによれば、リモートノードの第1ポートに中継ノードを接続でき、リモートノードの第2ポートに別の中継ノードを接続できるので、中継カードとリモートノードの間のイーサネット通信の通信経路を冗長化できる。
このため、イーサネット通信の耐障害性を高めたり、イーサネット通信の通信帯域を拡張したりすることができる。
【0026】
(6) 本実施形態のPONシステムにおいて、前記中継ノード及び前記リモートノードは、前記光ファイバにより伝送される通信フレームうち、制御フレームの伝送を保証する帯域制御部を有することが好ましい。
このようにすれば、光ファイバでのイーサネット通信においてユーザフレームが輻輳しても、制御フレームをほぼ確実に伝送することができる。このため、中継カードとリモートノードの間の制御通信を確保することができる。
【0027】
<本発明の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0028】
〔用語の定義等〕
一般に、レイヤ2の通信で用いるPDU(Protocol Data Unit)を「フレーム」と呼び、レイヤ3の通信で用いるPDUを「パケット」と呼ぶが、本実施形態では、両者を特に明確に区別しない。
本実施形態では、局側(通信事業者側)の光回線終端装置の集合体を「局側装置」といい、宅側(加入者側)の光回線終端装置(ONU)を「宅側装置」という。また、局側装置を「OLT」と略記し、宅側装置を「ONU」と略記することがある。
【0029】
本実施形態では、PONはイーサネットベースのEPON(例えば10G−EPON)よりなるものとする。
EPONでは、IEEE802.3ahで定義されたMPCP(Multi-Point Control Protocol)フレームにより、ONUの登録、離脱、ONUからの帯域要求、及び帯域要求に応じたONUへの帯域割当などが実行される。
【0030】
〔PONシステムの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係るPONシステムの概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態のPONシステムは、通信事業者の局舎などに設置される局側装置(OLT)1と、複数の宅側装置(ONU)2と、支線側に宅側装置2が接続されるPON回線3とを備える。PON回線3の幹線側は、局側装置1に収容された回線カード30、或いは、局側装置1から離れたリモートノード50に接続される。
【0031】
PON回線3は、受動光分岐ノードである光スプリッタ4により、光ファイバ5,6を分岐させたツリー構造の光ファイバ網よりなる。
すなわち、PON回線3は、幹線ファイバ5と、幹線ファイバ5に接続された光スプリッタ4と、光スプリッタ4から分岐する複数本の支線ファイバ6とを備える。PON回線3には、2つ以上の光スプリッタ4が存在してもよい。この場合は、分岐点が複数箇所のPON回線となる。
【0032】
局側装置1は、幅方向に並ぶ複数のスロットSLを有するシャーシ型のOLTである。局側装置1は、同じ形状の複数のスロットSLを有する筐体10と、筐体10に収容された管理カード20、回線カード30及び中継カード40とを備える。
回線カード30及び中継カード40は、筐体10のいずれかのスロットSLに装着される。
図1の構成例では、管理カード20がスロットSLの奥側(上位側)に収容されているが、管理カード20をスロットSLに装着してもよい。
【0033】
管理カード20は、PONシステムの全体的な管理及び制御を担う通信ノードである。管理カード20は、L2及びL3スイッチを含む上位装置11に接続されている。上位装置11は、コアネットワークなどよりなる上位網12に接続されている。
管理カード20には、パーソナルコンピュータなどよりなる通信事業者の管理用の端末装置13が接続される。端末装置13は、所定の通信プロトコルに則って管理カード20と通信可能である。
【0034】
端末装置13は、上位網12又は上位装置11に接続されていてもよい。この場合、端末装置13は、Telnet又はSSH(Secure SHell)などの遠隔操作の通信プロトコルに則って管理カード20と通信すればよい。
【0035】
回線カード30は、PON回線3の幹線ファイバ5が接続される局側の光回線終端装置であり、従来のOSUに相当する。従って、回線カード30は、MPCPフレームにより宅側装置2とPON通信を行うPON制御部36を有する。
リモートノード50は、局舎から離れた遠隔地に設置されるが、PON回線3の幹線ファイバ5が接続される光回線終端装置である。従って、リモートノード50は、MPCPフレームにより宅側装置2とPON通信を行うPON制御部55を有する。
【0036】
中継カード40とリモートノード50は、光ファイバ7を介して通信可能に接続されており、光ファイバ7に伝送される光信号を搬送信号とするイーサネット通信を行う。
従って、中継カード40は、光信号を用いたイーサネット通信の局側(上位側)の光回線終端装置であり、リモートノード50は、光信号を用いたイーサネット通信の宅側(下位側)の光回線終端装置である。
【0037】
図1に例示するPONシステムでは、回線カード30及び中継カード40がそれぞれ1つずつ筐体10のスロットSLに装着されているが、筐体10のすべてのスロットSLに回線カード30又は中継カード40を装着することもできる。
すなわち、通信事業者は、所望するシステムの接続形態を実現できるように、筐体10のスロットSLに回線カード30及び中継カード40のいずれを装着するかを、任意に選択することができる。
【0038】
宅側装置2には、イーサネット通信が可能なユーザ端末14が接続される。宅側装置2に接続されるユーザ端末14の数及び種類は特に限定されない。
ユーザ端末14を宅側装置2に直接接続することも必須ではない。すなわち、宅側装置2には、ユーザネットワーク(図示せず)が接続されてもよい。ユーザ端末14は、ユーザネットワークを介して宅側装置2に接続されてもよい。
【0039】
支線ファイバ6に伝送される上り方向の光信号は、光スプリッタ4において合流する。従って、同じ波長の光信号が合流後に衝突しないための多重化が必要である。
PON通信では、MPCPに則った時分割多重化が行われる。具体的には、PON制御部36,55は、宅側装置2から受信したレポートに基づいて、宅側装置2によるデータの上り方向の送信開始時刻及び送信許可量を演算する。
【0040】
PON制御部36,55は、上記の時刻及び許可量を含むグラントを、PON回線3を用いて宅側装置2にそれぞれ送信する。
各宅側装置2は、グラントをPON制御部36,55から受信すると、グラントにより指定された時刻に、許可量に相当するデータと、自機のバッファ内のデータ量に相当する次回送信分のデータ量を要求するレポートをPON制御部36,55に送信する。
【0041】
その他、PON制御部36,55は、自身が担当するPON回線3の宅側装置2を検出するディスカバリ処理、及び、検出した宅側装置2のLLID(Logical Link ID)を自機に登録する登録処理などを実行する。
【0042】
〔管理カードの構成〕
図2は、管理カード20の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、管理カード20は、リジッドなプリント基板よりなる回路基板21と、回路基板21に実装された各種の回路部品とを備える。管理カード20の回路部品には、管理通信ポート22、上位通信ポート23、制御部24、フレーム処理部25、制御通信ポート26、ユーザ通信ポート27、及び記憶部28が含まれる。
【0043】
管理通信ポート22は、制御部24と電気的に接続された管理通信のためのコネクタよりなる。管理通信ポート22には、所定規格の通信ケーブル(図示せず)が接続される。この通信ケーブルは、端末装置13に接続される。
上位通信ポート23は、フレーム処理部25と電気的に接続されたユーザ通信のためのコネクタよりなる。上位通信ポート23には、所定規格の通信ケーブル(図示せず)が接続される。この通信ケーブルは、上位装置11に接続される。
【0044】
制御部24は、CPU(Central Processing Unit)を含む情報処理装置よりなる。制御部24のCPUの数は1つ又は複数のいずれでもよい。制御部24は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路を含んでもよい。
制御部24は、RAM(Random Access Memory)を含む。RAMは、SRAM(Static RAM)又はDRAM(Dynamic RAM)などのメモリ素子で構成され、CPUなどが実行するコンピュータプログラム及びその実行に必要なデータを一時的に記憶する。
【0045】
記憶部28は、フラッシュメモリ若しくはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性のメモリ素子を有する。
記憶部28は、ネットワークOSや当該OS上で動作する種々のアプリケーションソフトウェア(以下、「アプリケーション」と略記する。)を記憶している。記憶部28が記憶するアプリケーションには、制御部24を、「DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバ」として機能させるためのソフトウェアが含まれる。
【0046】
制御通信ポート26は、制御部24と電気的に接続された制御通信のためのバックプレーンコネクタよりなる。制御通信ポート26には、バックプレーン伝送路C1の上位側端部が接続される。
バックプレーン伝送路C1の下位側端部は、回線カード30の制御通信ポート32(
図3参照)又は中継カード40の制御通信ポート42(
図4参照)に接続される。
【0047】
ユーザ通信ポート27は、フレーム処理部25と電気的に接続されたユーザ通信のためのバックプレーンコネクタよりなる。ユーザ通信ポート27には、バックプレーン伝送路C2の上位側端部が接続される。
バックプレーン伝送路C2の下位側端部は、回線カード30のユーザ通信ポート33(
図3参照)又は中継カード40のユーザ御通信ポート43(
図4参照)に接続される。
【0048】
フレーム処理部25は、例えばL2スイッチよりなる。このスイッチは、例えばFPGAなどの集積回路を含む。
フレーム処理部25は、受信したレイヤ2の通信フレームの宛先に応じて、自身の出力ポートのうちのどの出力ポートから通信フレームを送出するかを決定する。
【0049】
図2において、直線の帯状矢印で示す管理通信経路R1は、端末装置13と制御部24の間で行われる管理通信のための通信経路である。
破線の帯状矢印で示す制御通信経路R2は、制御部24と回線カード30又は中継カード40の間で行われる制御通信のための通信経路である。
【0050】
管理通信経路R1により伝送される管理情報には、どのスロットSLにどのカード(通信ノード)を搭載するかを表す「マウント情報」が含まれる。
端末装置13は、通信事業者の作業員によるコマンド入力に応じてマウント情報を生成し、生成したマウント情報を制御部24に送信する。マウント情報には、スロットSLのスロット番号iの番号値(例えば♯1〜♯8)と、所定の番号値に対応させるカードの識別情報(以下、「ノードID」という。)が含まれる。
【0051】
記憶部28は、スロット番号iとノードIDの対応関係を纏めたマウント管理テーブルMTを記憶している。マウント管理テーブルMTには、スロット番号iの番号値ごとのエントリと、各番号値に対応させるノードIDの値(例えばMACアドレスのアドレス値)が含まれる。
制御部24は、端末装置13から受信したマウント情報から、スロット番号iの番号値とノードIDの値を抽出し、抽出した番号値のエントリに、抽出したノードIDの値を記録する。
【0052】
管理通信経路R1により伝送される管理情報には、PON通信に関する設定情報である「PON設定情報」が含まれる。端末装置13は、通信事業者の作業員によるコマンド入力に応じてPON設定情報を生成し、生成したPON設定情報を制御部24に送信する。制御部24は、受信したPON設定情報を制御通信ポート26から送出する。
従って、制御通信経路R2により伝送される制御情報には、上記のPON設定情報が含まれる。PON制御情報には、例えば次の情報が含まれる。
【0053】
PON通信ポートのオン/オフ情報:PON通信ポート37,56を有効又は無効にするための設定情報
動作パラメータ:PON制御部36,55が上り方向の動的帯域割当(DBA)を実行する場合に必要となる、最低保証帯域などのパラメータ
ONU設定情報:PON制御部36,55がPON回線3を開通する際に必要となる、課金情報などのONUごとの設定情報
【0054】
制御通信経路R2により伝送される制御情報には、各ノード30,40,50に固有の状態情報である「ノード固有情報」が含まれる。
制御部24は、PONシステムに含まれる各ノード30,40,50にそれぞれノード固有情報の送信要求を送信し、各ノード30,40,50のノード固有情報を収集する。制御部24は、収集したノード固有情報に基づいて、PONシステム全体の接続形態(トポロジ)を確認する。
【0055】
仮想線の帯状矢印で示すユーザ通信経路R3は、宅側装置2に接続されたユーザ端末14(
図1参照)が送受信するユーザフレームの通信経路である。ユーザフレームは、上位網12からユーザ端末14まで流通する必要がある。
従って、ユーザ通信経路R3は、管理カード20の上位通信ポート23、フレーム処理部25及びユーザ通信ポート27を経由する。
【0056】
図2では、図示の簡略化のため、制御通信ポート26及びユーザ通信ポート27を1つだけ有する管理カード20が例示されている。
もっとも、管理カード20は、局側装置1に収容可能なカード数(例えば8枚)と同数の制御通信ポート26及びユーザ通信ポート27を備え、制御部24は、複数の通信ノードとのバックプレーン通信を実行可能である。従って、管理カード20には、回線カード30及び中継カード40のうちの少なくとも2つを接続することができる。
【0057】
〔回線カードの構成〕
図3は、回線カード30の構成例を示すブロック図である。
図3に示すように、回線カード30は、リジッドなプリント基板よりなる回路基板31と、回路基板31に実装された各種の回路部品とを備える。回線カード30の回路部品には、制御通信ポート32、ユーザ通信ポート33、制御部34、フレーム処理部35、PON制御部36、PON通信ポート37、及び記憶部38が含まれる。
【0058】
制御通信ポート32は、制御部34と電気的に接続された制御通信のためのバックプレーンコネクタよりなる。制御通信ポート32には、バックプレーン伝送路C1の下位側端部が接続される。
バックプレーン伝送路C1の上位側端部は、管理カード20の制御通信ポート26(
図2参照)に接続される。
【0059】
ユーザ通信ポート33は、フレーム処理部35と電気的に接続されたユーザ通信のためのバックプレーンコネクタよりなる。ユーザ通信ポート33には、バックプレーン伝送路C2の下位側端部が接続される。
バックプレーン伝送路C2の上位側端部は、管理カード20のユーザ通信ポート27(
図2参照)に接続される。
【0060】
制御部34は、CPUを含む情報処理装置よりなる。制御部34のCPUの数は1つ又は複数のいずれでもよい。制御部34は、FPGAやASICなどの集積回路を含んでもよい。
制御部34は、RAMを含む。RAMは、SRAM又はDRAMなどのメモリ素子で構成され、CPUなどが実行するコンピュータプログラム及びその実行に必要なデータを一時的に記憶する。
【0061】
記憶部38は、フラッシュメモリ若しくはEEPROMなどの不揮発性のメモリ素子を有する。記憶部38は、ネットワークOSや当該OS上で動作する種々のアプリケーションを記憶している。
記憶部38は、自ノードに固有の状態情報である「ノード固有情報」を記憶している。回線カード30のノード固有情報には、例えば次の情報a1〜a5が含まれる。
【0062】
情報a1) 自ノードの識別情報(例えばMACアドレスのアドレス値)
情報a2) 自ノードのカードタイプ(
図3の例では「回線カード」)
情報a3) PON通信ポート37のポート数
情報a4) PON通信ポート37に繋がるONUの数
情報a5) ファームウェア(OS)のバーション
【0063】
フレーム処理部35は、例えばL2スイッチよりなる。このスイッチは、例えばFPGAなどの集積回路を含む。
フレーム処理部35は、受信したレイヤ2の通信フレームの宛先に応じて、自身の出力ポートのうちのどの出力ポートから通信フレームを送出するかを決定する。
【0064】
PON制御部36は、宅側装置2とのPON通信に関する情報処理を施す集積回路よりなる。例えば、PON制御部36は、フレーム処理部35から入力された下りのユーザフレームを、対応するPON通信ポート37に送信する。
【0065】
PON制御部36は、光トランシーバ39からの上りの電気信号に、上位網12に送信すべきユーザフレームが含まれる場合には、そのユーザフレームをフレーム処理部35に送信する。
PON制御部36は、光トランシーバ39からの上りの電気信号に、宅側装置2が送信元の制御フレーム(レポート)が含まれる場合には、そのレポートに基づいて送信元の宅側装置2のための制御フレーム(グラント)を生成し、光トランシーバ39に送信する。
【0066】
PON通信ポート37は、PON制御部36と電気的に接続されたPON通信のためのコネクタよりなる。PON通信ポート37には、光トランシーバ39を着脱自在に装着することができる。
光トランシーバ39は、光信号の送受信回路を含む光デバイス(例えば、プラガブル光トランシーバ)よりなり、PON回線3から入力される上りの光信号を電気信号に変換し、PON制御部36から入力される下りの電気信号を光信号に変換する。
【0067】
図3において、破線の帯状矢印で示す制御通信経路R2は、管理カード20と制御部34の間で行われる制御通信のための通信経路である。
制御通信経路R2により伝送される制御情報には、上述の「PON設定情報」が含まれる。制御部34は、管理カード20からPON設定情報を受信すると、受信したPON設定情報をPON制御部36に通知する。
【0068】
PON制御部36は、通知されたPON設定情報に応じた所定の処理を実行する。例えば、PON制御部36は、通知されたPON通信ポート37のオン/オフ情報に従って、PON通信ポート37を有効化又は無効化する。
PON制御部36は、通知された動作パラメータに基づいて、宅側装置2が送出する上りフレームの動的帯域割当を実行する。
【0069】
制御通信経路R2により伝送される制御情報には、自ノードの「ノード固有情報」が含まれる。制御部34は、管理カード20の制御部24からの送信要求に応じて、自ノードのノード固有情報を管理カード20に送信する。
【0070】
仮想線の帯状矢印で示すユーザ通信経路R3は、宅側装置2に接続されたユーザ端末14(
図1参照)が送受信するユーザフレームの通信経路である。ユーザフレームは、上位網12からユーザ端末14まで流通する必要がある。
従って、ユーザ通信経路R3は、回線カード30内のユーザ通信ポート33、フレーム処理部35、PON制御部36及びPON通信ポート37を経由する。
【0071】
〔中継カードの構成〕
図4は、中継カード40の構成例を示すブロック図である。
図4に示すように、中継カード40は、リジッドなプリント基板よりなる回路基板41と、回路基板41に実装された各種の回路部品とを備える。中継カード40の回路部品には、制御通信ポート42、ユーザ通信ポート43、制御部44、フレーム処理部45、イーサネット通信ポート46、及び記憶部47が含まれる。
【0072】
制御通信ポート42は、制御部44と電気的に接続された制御通信のためのバックプレーンコネクタよりなる。制御通信ポート42には、バックプレーン伝送路C1の下位側端部が接続される。
バックプレーン伝送路C1の上位側端部は、管理カード20の制御通信ポート26(
図2参照)に接続される。
【0073】
ユーザ通信ポート43は、フレーム処理部45と電気的に接続されたユーザ通信のためのバックプレーンコネクタよりなる。ユーザ通信ポート43には、バックプレーン伝送路C2の下位側端部が接続される。
バックプレーン伝送路C2の上位側端部は、管理カード20のユーザ通信ポート27(
図2参照)に接続される。
【0074】
制御部44は、CPUを含む情報処理装置よりなる。制御部44のCPUの数は1つ又は複数のいずれでもよい。制御部44は、FPGAやASICなどの集積回路を含んでもよい。
制御部44は、RAMを含む。RAMは、SRAM又はDRAMなどのメモリ素子で構成され、CPUなどが実行するコンピュータプログラム及びその実行に必要なデータを一時的に記憶する。
【0075】
記憶部47は、フラッシュメモリ若しくはEEPROMなどの不揮発性のメモリ素子を有する。記憶部47は、ネットワークOSや当該OS上で動作する種々のアプリケーションを記憶している。記憶部47が記憶するアプリケーションには、制御部44を、「DHCPサーバ」として機能させるためのソフトウェアが含まれていてもよい。
記憶部47は、自ノードに固有の状態情報である「ノード固有情報」を記憶している。中継カード40のノード固有情報には、例えば次の情報b1〜b5が含まれる。
【0076】
情報b1) 自ノードの識別情報(例えばMACアドレスのアドレス値)
情報b2) 自ノードのカードタイプ(
図4の例では「中継カード」)
情報b3) イーサネット通信ポート46のポート数
情報b4) イーサネット通信ポート46に繋がるリモートノード50の識別情報(例えばMACアドレスのアドレス値)
情報b5) ファームウェア(OS)のバーション
【0077】
フレーム処理部45は、例えばL2スイッチよりなる。このスイッチは、例えばFPGAなどの集積回路を含む。
フレーム処理部45は、受信したレイヤ2の通信フレームの宛先に応じて、自身の出力ポートのうちのどの出力ポートから通信フレームを送出するかを決定する。
【0078】
イーサネット通信ポート46は、フレーム処理部45と電気的に接続されたイーサネット通信のためのコネクタよりなる。イーサネット通信ポート46には、光トランシーバ48を着脱自在に装着することができる。
光トランシーバ48は、光信号の送受信回路を含む光デバイス(例えば、プラガブル光トランシーバ)よりなり、光ファイバ7から入力される上りの光信号を電気信号に変換し、フレーム処理部45から入力される下りの電気信号を光信号に変換する。
【0079】
図4において、破線の帯状矢印で示す制御通信経路R2は、管理カード20と制御部44の間で行われる制御通信のための通信経路である。
ハッチング付きの帯状矢印で示す制御通信経路R4は、制御部44とリモートノード50の間で行われる制御通信のための通信経路である。
【0080】
制御通信経路R2により伝送される制御情報には、上述の「PON設定情報」が含まれる。制御部44は、自ノードに繋がるリモートノード50のPON設定情報を受信すると、受信したPON設定情報をフレーム処理部45に入力する。フレーム処理部45は、入力されたPON設定情報をリモートノード50に転送する。
従って、制御通信経路R4により伝送される制御情報には、上述の「PON設定情報」が含まれる。
【0081】
制御通信経路R2により伝送される制御情報には、自ノードの「ノード固有情報」が含まれる。制御部44は、管理カード20の制御部24からの送信要求に応じて、自ノードのノード固有情報を管理カード20に送信する。
【0082】
制御通信経路R4により伝送される制御情報には、自ノードに繋がるリモートノード50が送信した「ノード固有情報」が含まれる。制御部44は、自ノードに繋がるリモートノード50からノード固有情報を受信すると、受信したノード固有情報を制御通信ポート42に入力する。
従って、制御通信経路R2により伝送される制御情報には、リモートノード50の「ノード固有情報」が含まれる。
【0083】
仮想線の帯状矢印で示すユーザ通信経路R3は、宅側装置2に接続されたユーザ端末14(
図1参照)が送受信するユーザフレームの通信経路である。ユーザフレームは、上位網12からユーザ端末14まで流通する必要がある。
従って、ユーザ通信経路R3は、中継カード40内のユーザ通信ポート43、フレーム処理部45及びイーサネット通信ポート46を経由する。
【0084】
〔リモートノードの構成〕
図5は、リモートノード50の構成例を示すブロック図である。
図5に示すように、リモートノード50は、リジッドなプリント基板よりなる回路基板51と、回路基板51に実装された各種の回路部品とを備える。リモートノード50の回路部品には、イーサネット通信ポート52、制御部53、フレーム処理部54、PON制御部55、PON通信ポート56、及び記憶部57が含まれる。
【0085】
イーサネット通信ポート52は、フレーム処理部54と電気的に接続されたイーサネット通信のためのコネクタよりなる。イーサネット通信ポート52には、光トランシーバ58を着脱自在に装着することができる。
光トランシーバ58は、光信号の送受信回路を含む光デバイス(例えば、プラガブル光トランシーバ)よりなり、光ファイバ7から入力される下りの光信号を電気信号に変換し、フレーム処理部54から入力される上りの電気信号を光信号に変換する。
【0086】
制御部53は、CPUを含む情報処理装置よりなる。制御部53のCPUの数は1つ又は複数のいずれでもよい。制御部53は、FPGAやASICなどの集積回路を含んでもよい。
制御部53は、RAMを含む。RAMは、SRAM又はDRAMなどのメモリ素子で構成され、CPUなどが実行するコンピュータプログラム及びその実行に必要なデータを一時的に記憶する。
【0087】
記憶部57は、フラッシュメモリ若しくはEEPROMなどの不揮発性のメモリ素子を有する。記憶部57は、ネットワークOSや当該OS上で動作する種々のアプリケーションを記憶している。記憶部57が記憶するアプリケーションには、制御部53を、「DHCPクライアント」として機能させるためのソフトウェアが含まれる。
記憶部57は、自ノードに固有の状態情報である「ノード固有情報」を記憶している。リモートノード50のノード固有情報には、例えば次の情報c1〜c7が含まれる。
【0088】
情報c1) 自ノードの識別情報(例えばMACアドレスのアドレス値)
情報c2) 自ノードのカードタイプ(
図5の例では「リモートノード」)
情報c3) イーサネット通信ポート52のポート数
情報c4) イーサネット通信ポート52に繋がる中継カード40の識別情報(例えばMACアドレスのアドレス値)
情報c5) PON通信ポート56のポート数
情報c6) PON通信ポート56に繋がるONUの数
情報c7) ファームウェア(OS)のバーション
【0089】
フレーム処理部54は、例えばL2スイッチよりなる。このスイッチは、例えばFPGAなどの集積回路を含む。
フレーム処理部54は、受信したレイヤ2の通信フレームの宛先に応じて、自身の出力ポートのうちのどの出力ポートから通信フレームを送出するかを決定する。
【0090】
PON制御部55は、宅側装置2とのPON通信に関する情報処理を施す集積回路よりなる。例えば、PON制御部55は、フレーム処理部54から入力された下りのユーザフレームを、対応するPON通信ポート56に送信する。
【0091】
PON制御部55は、光トランシーバ59からの上りの電気信号に、上位網12に送信すべきユーザフレームが含まれる場合には、そのユーザフレームをフレーム処理部54に送信する。
PON制御部55は、光トランシーバ59からの上りの電気信号に、宅側装置2が送信元の制御フレーム(レポート)が含まれる場合には、そのレポートに基づいて送信元の宅側装置2のための制御フレーム(グラント)を生成し、光トランシーバ59に送信する。
【0092】
PON通信ポート56は、PON制御部55と電気的に接続されたPON通信のためのコネクタよりなる。PON通信ポート56には、光トランシーバ59を着脱自在に装着することができる。
光トランシーバ59は、光信号の送受信回路を含む光デバイス(例えば、プラガブル光トランシーバ)よりなり、PON回線3から入力される上りの光信号を電気信号に変換し、PON制御部55から入力される下りの電気信号を光信号に変換する。
【0093】
図5において、ハッチング付きの帯状矢印で示す制御通信経路R4は、中継カード40と制御部53の間で行われる制御通信のための通信経路である。
制御通信経路R4により伝送される制御情報には、上述の「PON設定情報」が含まれる。制御部55は、中継カード40からPON設定情報を受信すると、受信したPON設定情報をPON制御部55に通知する。
【0094】
PON制御部55は、通知されたPON設定情報に応じた所定の処理を実行する。例えば、PON制御部55は、通知されたPON通信ポート56のオン/オフ情報に従って、PON通信ポート56を有効化又は無効化する。
PON制御部55は、通知された動作パラメータに基づいて、宅側装置2が送出する上りフレームの動的帯域割当を実行する。
【0095】
制御通信経路R4により伝送される制御情報には、自ノードの「ノード固有情報」が含まれる。制御部53は、管理カード20の制御部24からの送信要求に応じて、自ノードのノード固有情報を管理カード20に送信する。
具体的には、制御部53は、管理カード20に宛てたノード固有情報をフレーム処理部54に入力する。フレーム処理部54は、入力されたノード固有情報を中継カード40に送信し、中継カード40は、受信したノード固有情報を管理カード20に転送する。
【0096】
仮想線の帯状矢印で示すユーザ通信経路R3は、宅側装置2に接続されたユーザ端末14(
図1参照)が送受信するユーザフレームの通信経路である。ユーザフレームは、上位網12からユーザ端末14まで流通する必要がある。
従って、ユーザ通信経路R3は、リモートノード50内のイーサネット通信ポート52、フレーム処理部54、PON制御部55及びPON通信ポート56を経由する。
【0097】
〔比較例に係るPONシステムの問題点〕
図6は、本実施形態のPONシステムの比較例に係る接続形態を示す説明図である。
図6の接続形態では、回線カード(OSU)30のみが局側装置1のスロットSLに収容され、当該回線カード30に複数(図例では3つ)のPON回線3が接続されている。
【0098】
10G−EPONでは、1つのPON回線3を延伸できる最大距離は20kmである。
このため、
図6の接続形態を採用すると、宅側装置2の設置可能範囲は、局側装置1が設置される局舎を中心とした半径20km以内の範囲に限定されるという問題(以下、「問題点1」という。)がある。
【0099】
図6の接続形態では、局舎に設置される局側装置1に、複数の回線カード(OSU)30を集中的に収容する方式を採用している。
このため、局側装置1の消費電力が増大し、電源容量が大きな局側装置1が必要になる。また、消費電力の増大に応じて発熱量も増大するので、大規模な冷却設備を局舎に設置せねばならない。従って、PONシステムの設備コストが大きくなるという問題(以下、「問題点2」という。)がある。
【0100】
10G−EPONでは、1つのPON回線3における支線ファイバ6の最大分岐数(=宅側装置2の最大収容数)は128である。
このため、
図6の接続形態を採用すると、多数の加入者が存在する密集エリアにおいて、更に加入者が増加したためPON回線3を増設する必要が生じた場合には、局側装置1を起点として複数の幹線ファイバ5を密集エリアまで敷設せねばならず、大規模な敷設工事が必要になるという問題(以下、「問題点3」という。)がある。
【0101】
上記の問題点1を解決する方策、すなわち、宅側装置2の設置可能範囲を広げる方策として、従来、光信号を増幅する中継装置を幹線ファイバ5の途中に挿入することが行われている。
しかし、光信号を途中で増幅する中継装置を採用する方策では、上記の問題点1のみを解決できるに止まり、上記の問題点2及び3を同時に解決することはできない。
【0102】
〔PONシステムの好適な接続形態〕
図7は、本実施形態のPONシステムの好ましい接続形態を示す説明図である。
図7の接続形態では、回線カード30の他に中継カード40が局側装置1のスロットSLに収容されている。また、中継カード40は、局舎から離れた屋外に設置されたリモートノード50と光ファイバ7により接続され、屋外のリモートノード50に複数(図例では2つ)のPON回線3が接続されている。
【0103】
中継カード40とリモートノード50との間の光信号を用いたイーサネット通信では、10Gベースの通信の場合には、最大で40kmまで延伸可能である。
このため、
図7の接続形態を採用すると、宅側装置2の設置可能範囲は、局側装置1が設置される局舎を中心として、半径60km以内の範囲にまで拡大することができる。従って、上述の問題点1を解決することができる。
【0104】
本実施形態のリモートノード50は、消費電力が比較的大きいPON制御部55(
図5参照)を有する。
このため、
図7の接続形態を採用すると、回線カード30を局側装置1に集中させる
図6の接続形態に比べて、PONシステムの運用に必要な消費電力を局側装置1からリモートノード50に分散できる。従って、局側装置1の電源容量が少量で足り、局舎の冷房設備もより簡便化できる。よって、上述の問題点2を解決することができる。
【0105】
例えば、複数のスロットSLのすべてに回線カード30を装着した局側装置1の消費電力が、約10kwになる場合を想定する。
この場合、回線カード30の代わりに中継カード40を装着し、中継カード40に接続したリモートノード50によりPON通信を行うことにすれば、局側装置1の消費電力をほぼ1/5の約2kwに削減することができる。これに伴い、局舎における給電系の設備も大幅に簡素化することができ、波及的な効果も大きくなる。
【0106】
本実施形態のリモートノード50は、複数のPON通信ポート56(
図5参照)を有するので、複数のPON回線3の幹線ファイバ5をリモートノード50に接続できる。
このため、
図7の接続形態を採用すると、多数の加入者が存在する密集エリアに複数のPON回線3を増設する必要が生じた場合は、密集エリアの近傍にリモートノード50を設置し、リモートノード50に複数のPON回線3を接続すればよい。
【0107】
この場合、局側装置から1本の光ファイバ7を密集エリアまで敷設し、敷設した光ファイバ7の先端にリモートノード50に接続すれば足りる。
このため、局側装置1を起点として複数の幹線ファイバ5を敷設する必要がなくなり、敷設工事が簡便になる。従って、上述の問題点3を解決することができる。
【0108】
〔PONシステムの好適な接続態様のバリエーション〕
図8〜
図11は、本実施形態のPONシステムの好ましい接続形態を示すブロック図である。
本実施形態の中継カード40及びリモートノード50は、イーサネット通信とPON通信の通信インタフェースをそれぞれ複数備えているので、
図8〜
図11に示すように、種々の接続形態のPONシステムを構成することができる。
【0109】
図8の構成例では、1つの中継カード40と1つのリモートノード50が1対1で接続されている。
図8の中央のリモートノード50には、1つのPON回線3が接続されている。もっとも、本実施形態のリモートノード50は、複数のPON通信ポート56を有するので(
図5参照)、
図8の下側のリモートノード50のように、1つのリモートノード50に複数(図例では2つ)のPON回線3を接続することもできる。
【0110】
図9の構成例では、1つの中継カード40と複数(図例では2つ)が1対多で接続されている。本実施形態の中継カード40は、複数のイーサネット通信ポート46を有するので(
図4参照)、
図9の構成例が可能となる。
【0111】
図10の構成例では、1つのリモートノード50に別のリモートノード50が多段に接続されている。本実施形態のリモートノード50は、複数のイーサネット通信ポート52を有するので(
図5参照)、
図10の構成例が可能となる。
図10の構成例を採用すれば、リモートノード50の設置範囲を、局側装置1から最大で80km(=40km+40km)まで遠隔化することができる。
【0112】
図10の構成例は、互いに遠距離にある複数のサービスエリアA1〜A3が、河川などに沿って点在する場合に特に有効である。
例えば、河川の下流域にある局舎の近隣にサービスエリアA1が存在し、そこから40km離れた河川の中流域にサービスエリアA2が存在し、そこから更に40km離れた河川の上流域にサービスエリアA3が存在する場合を想定する。
【0113】
この場合、サービスエリアA1については、回線カード30のPON回線3により通信サービスを提供し、サービスエリアA2については、1段目のリモートノード50のPON回線3により通信サービスを提供し、サービスエリアA3については、2段目のリモートノード50のPON回線3により通信サービスを提供すればよい。
【0114】
図11の構成例では、複数(図例では2つ)の中継カード40と1つのリモートノード50が多対1で接続されている。本実施形態の中継カード40は、複数のイーサネット通信ポート46を有するので(
図4参照)、
図11の構成例が可能となる。
図11の構成例を採用すれば、中継カード40とリモートノード50の間のイーサネット通信の通信経路が冗長化される。このため、イーサネット通信の耐障害性を高めたり、イーサネット通信の通信帯域を拡張したりすることができる。
【0115】
〔スロット番号の仮想化〕
図12は、スロット番号の仮想化の一例を示す説明図である。
上述の通り、管理カード20の記憶部28は、通信ノードのマウント位置(カードの収納位置)を管理するためのマウント管理テーブルMTを記憶している(
図2参照)。マウント管理テーブルMTには、実際のスロットSLに対応するスロット番号i(例えば♯1〜♯8。以下、「実スロット番号i」という。)と、実スロット番号iに対応させるノードID(MACアドレスのアドレス値)が含まれる。
【0116】
ここで、ノードIDの値が「EE:FF:AA:BB:CC:DD」である回線カード30を、実スロット番号i=♯1のスロットSLに装着する場合のコマンドは、例えば次の通りである。
pon-system(config) # slot 1
pon-system(config-slot) # mac-address EE:FF:AA:BB:CC:DD
上記のコマンドを受信した管理カード20の制御部24は、マウント管理テーブルMTの♯1の欄に「EE:FF:AA:BB:CC:DD」の値を記す。
【0117】
スロット番号iが♯1の回線カード30に含まれる番号1のPONインタフェース(
図3のPON通信ポート37)を有効化するためのコマンドは、例えば次の通りである。
pon-system(config) # interface 1/1
pon-system(config-interface) # enable
上記のコマンドにおいて、「interface 1/1」は、interface <slot番号>/<PON IF番号>を意味する。
【0118】
本実施形態のPONシステムでは、1つの中継カード40に対して複数のリモートノード50を接続可能である。
従って、中継カード40は実スロット番号iと1対1で対応するが、1つの実スロット番号iに1つのリモートノード50が対応するとは限らない。すなわち、1つの実スロット番号iとリモートノード50との対応関係が1対多になり得る。このため、回線カード30をスロットSLに装着する場合には想定できない新たな問題が生じる。
【0119】
例えば、
図12に示すように、実スロット番号i=♯8に装着された中継カード40に2つのリモートノードN1,N2を接続すると仮定する。
この場合、「pon-system(config) # interface 8/1」のコマンドでは、管理カード20の制御部24は、リモートノードN1,N2を識別できない。従って、制御部24は、上記のコマンドを受信しても、リモートノードN1,N2のPONインタフェースを有効化できず、リモートノードN1,N2のPON通信を開通できなくなる。
【0120】
本実施形態では、スロット番号を仮想化する新たな手法を導入することにより、回線カード30の場合と同等のコマンドを用いて、リモートノード50のPONインタフェースを有効化できるようにする。
具体的には、管理カード20の制御部24は、中継カード40の接続を検出すると、実スロット番号i(=♯1〜♯8)に割り当てていない仮想のスロット番号j(以下、「仮想スロット番号j」という。)のエントリをマウント管理テーブルMTに追加する。
【0121】
或いは、スロットSLに対応する実スロット番号i(=♯1〜♯8)以外の、リモートノードノード50のための仮想のスロット番号jのエントリを、マウント管理テーブルMTに予め割り当ておいてもよい。
【0122】
その後、管理カード20の制御部24は、リモートノード50のノードIDを含むマウント情報を端末装置13から受信すると、当該リモートノード50のノードIDを仮想スロット番号jのエントリに記録する。
これにより、管理カード20の制御部24は、リモートノード50が恰も1つのスロットSLに挿入されているかのように認識可能となり、回線カード30と同様の従来のコマンドでリモートノード50のPONインタフェースを有効化できるようになる。
【0123】
例えば、
図12の例では、実スロット番号iに♯1〜♯8までの値が割り当てられ、仮想スロット番号jに♯9と♯10の値が割り当てられている。
この場合、2つのリモートノードN1,N2のノードIDを、仮想スロット番号j=♯9と仮想スロット番号j=♯10にそれぞれマウントすれば、仮想スロット番号jとリモートノード50が1対1の対応関係になる。
【0124】
従って、仮想スロット番号jを導入すれば、スロットSLと回線カード30が1対1対応であることを前提とするPON回線の開通のためのコマンドを、そのままリモートノード50にも適用可能になる。
なお、リモートノードN1,N2が接続される中継カード40の実スロット番号iと、リモートノードN1,N2に適用する仮想スロット番号jを、コマンド入力などにより制御部24に通知すれば、制御部24は、リモートノードN1,N2がどの中継カード40に接続されたかを判定可能となる。
【0125】
例えば、次のコマンドを端末装置13に入力すれば、マウント管理テーブルMTの仮想スロット番号j=♯9,♯10のエントリに、それぞれリモートノードN1,N2のノードIDを登録することができる。
pon-system(config) # virtualslot 9
pon-system(config-virtualslot) # mac-address AA:BB:CC:DD:EE:FF
pon-system(config) # virtualslot 10
pon-system(config-virtualslot) # mac-address CC:DD:EE:FF:AA:BB
【0126】
そして、次のコマンドを端末装置13に入力すれば、リモートノードN1,N2に含まれる番号1のPONインタフェースを有効化することができる。
pon-system(config) # interface 9/1
pon-system(config-interface) # enable
pon-system(config) # interface 10/1
pon-system(config-interface) # enable
【0127】
〔遠隔制御によるリモートノードの起動〕
図13は、リモートノード50によるPON通信を遠隔制御で起動するための処理の流れを示すシーケンス図である。
図13では、各処理の動作主体が「管理カード20」、「中継カード40」及び「リモートノード50」となっているが、実際の動作主体は、各ノードに搭載された制御部24,44,53である。
【0128】
管理カード20と回線カード30又は中継カード40との間の制御通信経路R2は、バックプレーン伝送路C1よりなる(
図2及び
図3参照)。
従って、管理カード20の制御部24は、バックプレーン通信のプラグアンドプレイ機能により、バックプレーン伝送路C1を介して回線カード30又は中継カード40と接続されると、接続先の回線カード30又は中継カード40からノード固有情報などを自動的に取得し、接続先との制御通信を自動的に開始することができる。
【0129】
しかし、管理カード20からリモートノード50までの通信経路には、中継カード40/リモートノード50間のイーサネット通信が介在する。従って、管理カード20は、通信相手がリモートノード50であるか否かを自動的に認識することはできない。
すなわち、イーサネット通信は汎用的な通信方法であるため、通信インタフェースのリンクアップのみでは、管理カード20の制御部24は、接続相手が管理対象のリモートノード50であるか否かを判定できない。
【0130】
そこで、本実施形態では、リモートノード50は、イーサネット通信ポート52のリンクアップ後にDHCPパケットを中継カード40に送出し、管理カード20が、受信したDHCPパケットに基づいてリモートノード50の個体識別を行うこととした。
リモートノード50には、固有のMACアドレスが割り当てられている。従って、管理カード20の制御部24は、DHCPパケットに含まれるMACアドレスがマウント管理テーブルMTに存在するか否かにより、送信元の通信ノードの適否を判定する。
【0131】
管理カード20の制御部24は、接続を要求してきた通信ノードが管理対象のリモートノード50であると判定すると、PON通信の開設に必要なPON設定情報を含むリモートノード50宛ての制御フレームを、中継カード40に送信する。
従って、上記の制御フレームを取得したリモートノード50は、PON設定情報に従って自ノードのPON制御部55の設定などを実行することにより、配下の宅側装置2とのPON通信を開始できるようになる。
【0132】
図13に示すように、管理カード20は、マウント管理テーブルMTを既に作成済みであるとする(ステップST10)。
リモートノード50は、中継カード40と物理的に接続されたあと(ステップST11)、自身のイーサネット通信ポート52のリンクアップを検知すると(ステップST12)、DHCPパケットを上り方向にブロードキャストし、自ノードで使用するローカルIPアドレスの割り当てを要求する(ステップST13)。
【0133】
次に、管理カード20は、マウント管理テーブルMTを参照し、受信したDHCPパケットに含まれるMACアドレスの適否を確認する(ステップST14)。
具体的には、管理カード20は、DHCPパケットに含まれるMACアドレスが、マウント管理テーブルMTに存在する場合には、送信元の通信ノードを、管理対象のリモートノード50であると判定する。存在しない場合には、管理カード20は、ステップST15以降の処理を実行せず、送信元の通信ノードにIPアドレスを割り当てない。
【0134】
DHCPパケットの送信元の通信ノードを、管理対象のリモートノード50であると判定した場合は、管理カード20は、DHCPプロトコルに準じて、制御通信に用いるローカルIPアドレスの払い出しを実行する(ステップST15)。
具体的には、管理カード20は、リモートノード50用に定めたローカルIPアドレスを、DHCPパケットの送信元の通信ノード宛てに送信する。これにより、リモートノード50は、制御通信に用いるローカルIPアドレスを取得する。
【0135】
なお、管理カード20は、中継カード40の個体識別とローカルIPアドレスの割り当てについては、バックプレーン通信によって個別に実行する。
また、
図13のシーケンスにおいて、中継カード40がDHCPサーバとして機能する場合には、リモートノード50に対するローカルIPアドレスの割り当てを中継カード40が実行することにしてもよい。
【0136】
次に、管理カード20は、リモートノード50のノード固有情報の取得処理を実行する(ステップST16)。
具体的には、管理カード20は、ノード固有情報を要求する制御フレームをリモートノード50に送信する(ステップST17)。上記の制御フレームを受信したリモートノード50は、自ノードのノード固有情報を含む制御フレームを生成し、生成した制御フレームを管理カード20に返信する(ステップST18)。
【0137】
次に、管理カード20は、リモートノード50から取得したノード固有情報に基づいて、当該リモートノード50に対する初期設定を実施する(ステップST19)。
具体的には、管理カード20は、PON設定情報を含む制御フレームをリモートノード50に送信する(ステップST20)。PON設定情報を受信したリモートノード50は、PON設定情報に含まれるONU設定情報などに従ってPON回線3を開通し、宅側装置2とのPON通信を開始する。
【0138】
〔フレーム処理部によるフレーム転送処理〕
図14は、中継カード40及びリモートノード50のフレーム処理部45,54による転送処理の一例を示すフローチャートである。
上述の通り、本実施形態のPONシステムでは、中継カード40とリモートノード50の間の通信については、光信号を用いたイーサネット通信が採用されている。
【0139】
このため、中継カード40とリモートノード50の間の通信経路(光ファイバ7)にはユーザフレームと制御フレームの双方が伝送される。
そこで、本実施形態では、中継カード40とリモートノード50が、イーサネット通信がユーザ通信及び制御通信のいずれであるかを識別できるように、制御通信を表す識別情報をヘッダの適当な格納場所に格納することとする。具体的には、VLAN IDに格納された所定値(例えば「4095」)を、制御通信を表す識別情報とする。
【0140】
VLAN IDを利用すれば、フレーム処理部(例えばL2スイッチ)45,54の論理回路により制御フレームを判別できる。
このため、制御部44,53が情報処理を行わなくても制御フレームを選別できる。従って、ユーザ通信と制御通信の統合/分離を行う場合に、イーサネット通信のパフォーマンス(帯域や遅延)が悪化するのを防止できる。
【0141】
また、本実施形態では、中継カード40とリモートノード50が、イーサネット通信の通信経路を流れる制御フレーム(VLAN ID=4095の通信フレーム)が、自身宛てであるか否かを判定できるように、中継カード40とリモートノード50のそれぞれにローカルIPアドレスを割り当てる。
IPアドレスを提供するDHCPサーバの機能は、管理カード20にあってもよいし、中継カード40にあってもよいし、局側装置1の外部(例えば、上位装置11に搭載される汎用のDHCPサーバ)にあってもよい。
【0142】
管理カード20は、DHCPパケットに含まれるMACアドレスが適正か否かを判定する必要があるが、DHCPパケットの場合はスヌーピングが可能である。このため、ローカルIPアドレスを払い出す通信ノードは、局側装置1の外部にあってもよい。
IPアドレスが自身宛てかどうかの判定処理についても、フレーム処理部45,54の論理回路が実行するようにすれば、当該判定処理を高速に行うことができる。以下、
図14に基づいて、上記の考え方に基づくフレーム転送処理の内容を説明する。
【0143】
図14に示すように、フレーム処理部45,54は、受信した通信フレームについて、ヘッダに含まれるVLAN IDの値が制御用であるか否かを判定する(ステップST30,ST31)。
具体的には、フレーム処理部45,54は、ヘッダのVLAN IDの値が予め制御用と定義した所定値(本実施形態では「4095」)であるか否かを判定する。
【0144】
ステップST31の判定結果が肯定的である場合は、受信した通信フレームが制御フレームであるから、フレーム処理部45,54は、受信した通信フレームについて、更にIPアドレスが自身宛てか否かを判定する(ステップST32)。
ステップST31の判定結果が否定的である場合は、受信した通信フレームがユーザフレームであるから、フレーム処理部45,54は、受信した通信フレームをイーサネット通信ポート46,52に転送する。
【0145】
ステップST32の判定結果が肯定的である場合は、受信した通信フレームが自身宛ての制御フレームであるから、フレーム処理部45,54は、受信した通信フレームを制御部44,53に転送する(ステップST33)。
この場合、制御部44,53は、転送された制御フレームに含まれるデータの内容を読み取り、読み取ったデータの内容に応じた所定の制御動作を実行する。
【0146】
ステップST32の判定結果が否定的である場合は、更に、受信した通信フレームのIPアドレスが、自身が既知のリモートノード50のIPアドレスであるか否かを判定する(ステップST35)。
【0147】
ステップST35の判定結果が肯定的である場合は、受信した通信フレームが他のリモートノード50宛ての制御フレームであるから、受信した通信フレームを適切なイーサネット通信ポート46,52に転送する(ステップST36)。
ステップST35の判定結果が肯定的である場合は、受信した通信フレームが他のリモートノード50宛ての制御フレームであるとは言えないので、受信した通信フレームを破棄する(ステップST37)。
【0148】
ステップST35〜ステップST37の処理が必要である理由は、次の通りである。
すなわち、複数のリモートノード50を多段に接続する構成例(
図10参照)を採用するPONシステムでは、イーサネット通信の中継点となるリモートノード50は、中継カード40から受信した制御フレームが他のリモートノード50宛てである場合には、受信した制御フレームを他のリモートノード50に転送する必要があるからである。
【0149】
〔第1の変形例〕
上述の実施形態において、回線カード30のフレーム処理部45とリモートノード50のフレーム処理部54は、帯域制御部45A,54Aを有することが好ましい。
帯域制御部45A,54Aは、光ファイバ7により伝送する通信フレームのうち、制御フレームの伝送を保証する機能を有する。すなわち、帯域制御部45A,54Aは、例えば、制御フレームの伝送を最優先する帯域制御(QoS:Quality of Service)を実行することにより、制御フレームの伝送を常に確保する。
【0150】
上記の帯域制御部45A,54Aを設けることにすれば、光ファイバ7でのイーサネット通信においてユーザフレームが輻輳しても、制御フレームをほぼ確実に伝送することができ、中継カード40とリモートノード50の間の制御通信を確保することができる。
【0151】
〔第2の変形例〕
上述の実施形態において、マウント管理テーブルMTを記憶する記憶部28と、中継カード40と通信するリモートノード50のMACアドレスと対応づける仮想スロット番号jをマウント管理テーブルMTに追加する制御部24を、局側装置1に収容される管理カード20ではなく、通信事業者の端末装置13に搭載してもよい。
【0152】
また、端末装置13に搭載した上記の制御部24が、
図13に示すシーケンスなどを実行することにより、回線カード30及びリモートノード50が行うPON通信を管理することにしてもよい。
すなわち、回線カード30及びリモートノード50が行うPON通信を管理する管理部は、局側装置1に収容される管理カード20であってもよいし、局側装置1と通信可能に接続される端末装置13であってもよい。
【0153】
〔その他の変形例〕
上述の実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲によって示され、その範囲と均等の意味及びその範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0154】
上述の実施形態(変形例を含む)では、回路基板21,31,41を装着可能な複数のスロットSLを含む筐体10を例示したが、筐体10の収納部の構造は、スロットタイプに限定されるものではない。
従って、筐体10に収納する通信ノードの構造も、必ずしもカードタイプ(管理カード20、回線カード30及び中継カード40)である必要はなく、筐体10内に形成された所定形状の収納部に収まる構造であればよい。