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特許6859944走査型荷電粒子顕微鏡及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859944
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】走査型荷電粒子顕微鏡及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20210405BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20210405BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   H01J37/22 502H
   H01J37/28 B
   H01J37/147 B
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-247219(P2017-247219)
(22)【出願日】2017年12月25日
(65)【公開番号】特開2019-114426(P2019-114426A)
(43)【公開日】2019年7月11日
【審査請求日】2020年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(72)【発明者】
【氏名】大越 暁
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−078234(JP,A)
【文献】 特開2017−076559(JP,A)
【文献】 特開平07−244722(JP,A)
【文献】 特開2001−175861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/22
H01J 37/147
H01J 37/28
G01B 15/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線を試料に照射する荷電粒子線照射部と、
試料表面上の測定領域内に荷電粒子線を走査させることにより基準画像を取得する基準画像取得処理部と、
前記基準画像取得後に、前記測定領域内に荷電粒子線を走査させることにより測定画像を取得する測定画像取得処理部と、
前記基準画像の中から特徴点を含む複数の領域をテンプレートとして抽出するテンプレート抽出処理部と、
前記テンプレート抽出処理部により抽出された複数のテンプレートを測定画像中の対応する各注目領域と比較することにより、各注目領域における基準画像に対する測定画像のドリフト量を算出するドリフト量算出処理部とを備えることを特徴とする走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項2】
算出されたドリフト量に基づいて、前記測定画像取得処理部により荷電粒子線を走査させる位置を補正する走査位置補正処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項3】
前記走査位置補正処理部は、前記測定画像取得処理部による測定画像の取得中に、荷電粒子線を走査させる位置を補正することを特徴とする請求項2に記載の走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項4】
前記基準画像取得処理部及び前記測定画像取得処理部は、主走査方向への荷電粒子線の走査を1ラインずつ副走査方向にずらしながら繰り返すことにより、前記測定領域内に荷電粒子線を走査させるものであり、
前記走査位置補正処理部は、主走査方向の各ラインにおけるドリフト量に基づいて、次に走査させるラインの位置を補正することを特徴とする請求項3に記載の走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項5】
前記走査位置補正処理部は、主走査方向の荷電粒子線の走査が複数ライン完了した後、複数のテンプレートと各注目領域との比較により算出されるドリフト量の平均値に基づいて、次に走査させるラインの位置を補正することを特徴とする請求項4に記載の走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項6】
前記テンプレート抽出処理部により抽出された複数のテンプレートの中から、各テンプレートにおける各画素の輝度に基づいて特定のテンプレートを選択するテンプレート選択処理部をさらに備え、
前記ドリフト量算出処理部は、前記テンプレート選択処理部により選択された複数のテンプレートを測定画像中の対応する各注目領域と比較することにより、各注目領域における基準画像に対する測定画像のドリフト量を算出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の走査型荷電粒子顕微鏡。
【請求項7】
荷電粒子線を試料表面上で走査させることにより画像を取得する走査型荷電粒子顕微鏡の制御プログラムであって、
試料表面上の測定領域内に荷電粒子線を走査させることにより基準画像を取得する基準画像取得処理部と、
前記基準画像取得後に、前記測定領域内に荷電粒子線を走査させることにより測定画像を取得する測定画像取得処理部と、
前記基準画像の中から特徴点を含む複数の領域をテンプレートとして抽出するテンプレート抽出処理部と、
前記テンプレート抽出処理部により抽出された複数のテンプレートを測定画像中の対応する各注目領域と比較することにより、各注目領域における基準画像に対する測定画像のドリフト量を算出するドリフト量算出処理部としてコンピュータを機能させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項8】
算出されたドリフト量に基づいて、前記測定画像取得処理部により荷電粒子線を走査させる位置を補正する走査位置補正処理部としてコンピュータを機能させることを特徴とする請求項7に記載の制御プログラム。
【請求項9】
前記走査位置補正処理部は、前記測定画像取得処理部による測定画像の取得中に、荷電粒子線を走査させる位置を補正することを特徴とする請求項8に記載の制御プログラム。
【請求項10】
前記基準画像取得処理部及び前記測定画像取得処理部は、主走査方向への荷電粒子線の走査を1ラインずつ副走査方向にずらしながら繰り返すことにより、前記測定領域内に荷電粒子線を走査させるものであり、
前記走査位置補正処理部は、主走査方向の各ラインにおけるドリフト量に基づいて、次に走査させるラインの位置を補正することを特徴とする請求項9に記載の制御プログラム。
【請求項11】
前記走査位置補正処理部は、主走査方向の荷電粒子線の走査が複数ライン完了した後、複数のテンプレートと各注目領域との比較により算出されるドリフト量の平均値に基づいて、次に走査させるラインの位置を補正することを特徴とする請求項10に記載の制御プログラム。
【請求項12】
前記テンプレート抽出処理部により抽出された複数のテンプレートの中から、各テンプレートにおける各画素の輝度に基づいて特定のテンプレートを選択するテンプレート選択処理部としてコンピュータを機能させ、
前記ドリフト量算出処理部は、前記テンプレート選択処理部により選択された複数のテンプレートを測定画像中の対応する各注目領域と比較することにより、各注目領域における基準画像に対する測定画像のドリフト量を算出することを特徴とする請求項7〜11のいずれか一項に記載の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線を試料表面上で走査させることにより画像を取得する走査型荷電粒子顕微鏡、及び、当該走査型荷電粒子顕微鏡の制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
走査型荷電粒子顕微鏡では、荷電粒子線が試料表面上で走査されて、試料表面から発せられる二次電子やX線などが検出され、その検出結果に基づいて、試料表面の形状や元素分布が測定される。
この種の走査型荷電粒子顕微鏡として、電子線マイクロアナライザ(EPMA)が利用されている。
【0003】
電子線マイクロアナライザを用いて試料表面の形状を測定する場合には、電子線が試料表面上で走査されるとともに、所定の時間間隔で試料表面から発せられる二次電子が検出器で検出される。そして、試料表面上の複数の測定点から得られた検出信号に基づいて、試料表面の二次電子像が作成される。
【0004】
一方、電子線マイクロアナライザを用いて試料表面の元素分布を測定する場合には、電子線が、二次電子像を作成する場合に比べて低速で試料表面上で走査される。そして、試料表面から発せられるX線が検出器で検出され、検出信号に基づいて試料表面の元素分布が測定される(X線像が作成される)。このように、電子線を試料表面上で低速で走査させることにより、試料表面から発せられるX線の強度が低くても、十分な強度の検出信号を得ることができる。
【0005】
電子線マイクロアナライザにおいて、電子線を低速で走査させると、その走査にかかる時間が長くなる。そして、電子線マイクロアナライザにおいて、電子線を試料表面上で長時間走査し続けると、電子線源の安定性や磁場変動などの影響を受けて、電子線の走査位置がずれることがある。このような不具合を解消するため、電子線を試料表面上で長時間走査する際に、電子線の走査位置を補正する電子線マイクロアナライザが提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に記載の電子線マイクロアナライザでは、まず、測定前に補正の基準画像となる二次電子像が作成される。このとき、電子線の走査は、高速で行われる。その後、電子線が試料表面上で低速で走査され、X線像とともに二次電子像が作成される。そして、低速走査の際に作成される二次電子像が基準画像と比較され、2つの像の間でずれがある場合には、そのずれを直すように、電子線の走査位置が補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017−76559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の電子線マイクロアナライザでは、走査位置の補正の精度が低いという不具合があった。具体的には、上記の電子線マイクロアナライザでは、低速走査の際に作成される二次電子像を複数の領域(テンプレート)に分割し、それらの各領域と、基準画像における対象領域とを比較(マッチング)している。一方で、分割したテンプレート領域や基準画像における対象領域には、画像の変化が少ない領域(輝度変化が少ない領域)などのように、他の領域と類似する画像を有する領域が複数存在することがある。この場合、基準画像において、ある領域と他の領域とを区別することが困難となる。そして、二次電子像のあるテンプレート領域を、基準画像における正しい領域とは異なる領域と比較することがある。そのため、誤った比較結果に基づいて、電子線の走査位置を補正することがある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、荷電粒子線を走査させる位置を補正する際のドリフト量を精度よく算出できる走査型荷電粒子顕微鏡、及び、当該走査型荷電粒子顕微鏡の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る走査型荷電粒子顕微鏡は、荷電粒子線照射部と、基準画像取得処理部と、測定画像取得処理部と、テンプレート抽出処理部と、ドリフト量算出処理部とを備える。前記荷電粒子線照射部は、荷電粒子線を試料に照射する。前記基準画像取得処理部は、試料表面上の測定領域内に荷電粒子線を走査させることにより基準画像を取得する。前記測定画像取得処理部は、前記基準画像取得後に、前記測定領域内に荷電粒子線を走査させることにより測定画像を取得する。前記テンプレート抽出処理部は、前記基準画像の中から特徴点を含む複数の領域をテンプレートとして抽出する。前記ドリフト量算出処理部は、前記テンプレート抽出処理部により抽出された複数のテンプレートを測定画像中の対応する各注目領域と比較することにより、各注目領域における基準画像に対する測定画像のドリフト量を算出する。
【0011】
このような構成によれば、テンプレート抽出処理部は、基準画像の中から特徴点を含む複数の領域をテンプレートとして抽出する。すなわち、テンプレート抽出処理部は、基準画像の中から、他の領域と区別が容易な領域をテンプレートとして抽出する。そして、ドリフト量算出処理部は、抽出された複数のテンプレートを測定画像中の対応する各注目領域と比較することにより、各注目領域における基準画像に対する測定画像のドリフト量を算出する。
【0012】
そのため、比較対象のテンプレートを正確に判別し、そのテンプレートを測定画像中の注目領域と比較して、測定画像のドリフト量を算出できる。
その結果、測定画像のドリフト量、すなわち、荷電粒子線を走査させる位置を補正する際のドリフト量を精度よく算出できる。
なお、特徴点とは、固有の画像情報を有する点であって、他の画像と容易に区別できる点(誤認識が生じにくい点)である。特徴点は、例えば、基準画像に含まれるコーナー部や、エッジ部など、複数方向に画像の変化がある(輝度変化がある)点である。
【0013】
(2)また、前記走査型荷電粒子顕微鏡は、走査位置補正処理部をさらに備えてもよい。前記走査位置補正処理部は、算出されたドリフト量に基づいて、前記測定画像取得処理部により荷電粒子線を走査させる位置を補正する。
【0014】
このような構成によれば、精度よく算出されたドリフト量に基づいて、荷電粒子線を走査させる位置を補正できる。
そのため、荷電粒子線を走査させる位置を精度よく補正できる。
【0015】
(3)また、前記走査位置補正処理部は、前記測定画像取得処理部による測定画像の取得中に、荷電粒子線を走査させる位置を補正してもよい。
このような構成によれば、走査型荷電粒子顕微鏡における測定時間が長くなることを抑制できる。
【0016】
(4)また、前記基準画像取得処理部及び前記測定画像取得処理部は、主走査方向への荷電粒子線の走査を1ラインずつ副走査方向にずらしながら繰り返すことにより、前記測定領域内に荷電粒子線を走査させてもよい。前記走査位置補正処理部は、主走査方向の各ラインにおけるドリフト量に基づいて、次に走査させるラインの位置を補正してもよい。
【0017】
このような構成によれば、走査型荷電粒子顕微鏡における測定時間が長くなることを抑制できる。
【0018】
(5)また、前記走査位置補正処理部は、主走査方向の荷電粒子線の走査が複数ライン完了した後、複数のテンプレートと各注目領域との比較により算出されるドリフト量の平均値に基づいて、次に走査させるラインの位置を補正してもよい。
【0019】
このような構成によれば、荷電粒子線を走査させる位置を精度よく補正できる。
【0020】
(6)また、前記走査型荷電粒子顕微鏡は、テンプレート選択処理部をさらに備えてもよい。前記テンプレート選択処理部は、前記テンプレート抽出処理部により抽出された複数のテンプレートの中から、各テンプレートにおける各画素の輝度に基づいて特定のテンプレートを選択する。前記ドリフト量算出処理部は、前記テンプレート選択処理部により選択された複数のテンプレートを測定画像中の対応する各注目領域と比較することにより、各注目領域における基準画像に対する測定画像のドリフト量を算出してもよい。
【0021】
このような構成によれば、テンプレート選択処理部により、比較対象として適したテンプレートを選択できる。そして、ドリフト量算出処理部により、その選択されたテンプレートを測定画像中の注目領域と比較して、測定画像のドリフト量を算出できる。
そのため、荷電粒子線を走査させる位置を補正する際のドリフト量を一層精度よく算出できる。
【0022】
(7)本発明に係る制御プログラムは、荷電粒子線を試料表面上で走査させることにより画像を取得する走査型荷電粒子顕微鏡の制御プログラムである。前記制御プログラムは、基準画像取得処理部と、測定画像取得処理部と、テンプレート抽出処理部と、ドリフト量算出処理部としてコンピュータを機能させる。前記基準画像取得処理部は、試料表面上の測定領域内に荷電粒子線を走査させることにより基準画像を取得する。前記測定画像取得処理部は、前記基準画像取得後に、前記測定領域内に荷電粒子線を走査させることにより測定画像を取得する。前記テンプレート抽出処理部は、前記基準画像の中から特徴点を含む複数の領域をテンプレートとして抽出する。前記ドリフト量算出処理部は、前記テンプレート抽出処理部により抽出された複数のテンプレートを測定画像中の対応する各注目領域と比較することにより、各注目領域における基準画像に対する測定画像のドリフト量を算出する。
【0023】
(8)また、前記制御プログラムは、走査位置補正処理部としてコンピュータを機能させてもよい。前記走査位置補正処理部は、算出されたドリフト量に基づいて、前記測定画像取得処理部により荷電粒子線を走査させる位置を補正する。
【0024】
(9)また、前記走査位置補正処理部は、前記測定画像取得処理部による測定画像の取得中に、荷電粒子線を走査させる位置を補正してもよい。
【0025】
(10)また、前記基準画像取得処理部及び前記測定画像取得処理部は、主走査方向への荷電粒子線の走査を1ラインずつ副走査方向にずらしながら繰り返すことにより、前記測定領域内に荷電粒子線を走査させてもよい。前記走査位置補正処理部は、主走査方向の各ラインにおけるドリフト量に基づいて、次に走査させるラインの位置を補正してもよい。
【0026】
(11)また、前記走査位置補正処理部は、主走査方向の荷電粒子線の走査が複数ライン完了した後、複数のテンプレートと各注目領域との比較により算出されるドリフト量の平均値に基づいて、次に走査させるラインの位置を補正してもよい。
【0027】
(12)また、前記制御プログラムは、テンプレート選択処理部としてコンピュータを機能させてもよい。前記テンプレート選択処理部は、前記テンプレート抽出処理部により抽出された複数のテンプレートの中から、各テンプレートにおける各画素の輝度に基づいて特定のテンプレートを選択する。前記ドリフト量算出処理部は、前記テンプレート選択処理部により選択された複数のテンプレートを測定画像中の対応する各注目領域と比較することにより、各注目領域における基準画像に対する測定画像のドリフト量を算出してもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、テンプレート抽出処理部は、基準画像の中から、他の領域と区別が容易な領域をテンプレートとして抽出する。ドリフト量算出処理部は、抽出された複数のテンプレートを測定画像中の対応する各注目領域と比較することにより、各注目領域における基準画像に対する測定画像のドリフト量を算出する。そのため、比較対象のテンプレートを正確に抽出し、そのテンプレートを測定画像中の注目領域と比較して、測定画像のドリフト量を算出できる。その結果、測定画像のドリフト量、すなわち、荷電粒子線を走査させる位置を補正する際のドリフト量を精度よく算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る電子線マイクロアナライザの構成例を示した概略図である。
図2】制御部及びその周辺の部材の電気的構成を示したブロック図である。
図3】電子線マイクロアナライザにおける電子線の走査方法を説明するための図である。
図4】制御部の制御動作の一例を示したフローチャートである。
図5】電子線マイクロアナライザにおいて取得された基準画像のイメージを示した図である。
図6】電子線マイクロアナライザにおいて抽出されたテンプレートのイメージを示した図である。
図7】電子線マイクロアナライザにおいて選択されたテンプレートのイメージを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1.電子線マイクロアナライザの全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る電子線マイクロアナライザ(EPMA)1の構成例を示した概略図である。
電子線マイクロアナライザ1は、電子線(荷電粒子線)を試料Sの表面上で走査させることにより画像を取得するための装置である。電子線マイクロアナライザ1は、試料ステージ2と、電子線照射部3と、駆動部4と、電子検出器5と、X線検出器6とを備えている。
試料ステージ2は、水平面上に拡がる平板状に形成されている。試料ステージ2の上面には、試料Sが載置されている。
【0031】
電子線照射部3は、電子線を試料Sに照射するためのものであって、試料ステージ2と対向する位置に設けられている。電子線照射部3は、電子源31と、集束レンズ32と、走査コイル33と、対物レンズ34とを備えている。
【0032】
電子源31は、試料ステージ2と間隔を隔てて設けられている。電子源31は、電子線を出射するように構成されている。集束レンズ32、走査コイル33及び対物レンズ34は、電子源31と試料ステージ2との間に設けられており、かつ、電子源31から試料ステージ2に向かう方向において、この順で配置されている。
【0033】
駆動部4は、走査コイル33に駆動力を付与するように構成されている。走査コイル33は、駆動部4から駆動力が付与されることにより、電子線の照射位置を移動させるように動作する。
【0034】
電子検出器5及びX線検出器6は、試料ステージ2と間隔を隔てて設けられている。電子検出器5は、試料Sの表面から発生する二次電子を検出する。X線検出器6は、試料Sの表面から発生するX線を検出する。
【0035】
電子線マイクロアナライザ1を用いて試料Sの表面の形状を測定する場合には、電子源31から試料ステージ2に向けて電子線が出射される。電子源31からの電子線は、集束レンズ32により集束された後、対物レンズ34により小さいスポット状となって試料Sの表面に照射される。このとき、試料Sの表面に照射される電子線は、走査コイル33の動作により、試料Sの表面上の測定領域内で水平方向(X方向及びY方向)に走査される。そして、電子線が照射された試料Sの表面から二次電子が発生し、発生した二次電子は、電子検出器5で検出される。電子検出器5の検出信号に基づいて、試料Sの表面の二次電子像が作成されて、試料Sの表面の凹凸情報が測定される。
【0036】
また、電子線マイクロアナライザ1を用いて元素分布を測定する場合には、二次電子像の作成の場合と同様に、電子源31から電子線が出射され、その電子線が試料Sの表面に照射される。このとき、電子線は、走査コイル33の動作により、二次電子像の作成の場合に比べて低速で、試料Sの表面上の測定領域内で水平方向(X方向及びY方向)に走査される。そして、電子線が照射された試料Sの表面からX線が発生し、発生したX線は、X線検出器6で検出される。X線検出器6の検出信号に基づいて、試料Sの表面のX線像が作成されて、試料Sの表面の元素分布が測定される。
【0037】
このように、電子線マイクロアナライザ1を用いて元素分布を測定する場合(X線像を作成する場合)には、試料Sの表面の凹凸情報を測定する場合(二次電子像を作成する場合)に比べて、電子像が低速で走査されるため、長時間にわたって電子線が走査されることとなる。そのため、測定中において、電子線の走査位置がずれることがある。このような電子線の走査位置のずれを精度よく補正するため、電子線マイクロアナライザ1では、以下の構成を備え、また、以下の制御を行っている。
【0038】
2.制御部及びその周辺の部材の電気的構成
図2は、制御部20及びその周辺の部材の電気的構成を示したブロック図である。
電子線マイクロアナライザ1は、上記した駆動部4、電子検出器5及びX線検出器6に加えて、記憶部10及び制御部20などを備えている。
記憶部10は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスクなどにより構成されている。記憶部10は、基準画像101を記憶している。
【0039】
基準画像101は、電子線の走査位置を補正する際の基準となる画像情報である。詳しくは後述するが、基準画像101は、制御部20(基準画像取得処理部201)が電子検出器5からの検出信号に基づいて取得する二次電子像の画像や反射電子像である。制御部20(基準画像取得処理部201)が二次電子像の画像を取得すると、その情報が基準画像101として記憶部10に格納される。
【0040】
制御部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む構成である。制御部20には、駆動部4、電子検出器5、X線検出器6及び記憶部10などが電気的に接続されている。制御部20は、CPUがプログラムを実行することにより、基準画像取得処理部201、測定画像取得処理部202、テンプレート抽出処理部203、テンプレート選択処理部204、ドリフト量算出処理部205、走査位置補正処理部206及びX線像取得処理部207などとして機能する。
【0041】
基準画像取得処理部201は、駆動部4の動作を制御するとともに、電子検出器5からの検出信号に基づいて、二次電子像(基準画像101)を取得する。
測定画像取得処理部202は、駆動部4の動作を制御するとともに、電子検出器5からの検出信号に基づいて、二次電子像(測定画像)を取得する。
テンプレート抽出処理部203は、記憶部10が記憶する基準画像101に基づいて、複数のテンプレート(後述する)を抽出する。
【0042】
テンプレート選択処理部204は、テンプレート抽出処理部203が抽出した複数のテンプレートの中から、特定のテンプレートを選択する。
ドリフト量算出処理部205は、測定画像取得処理部202が取得した測定画像、及び、テンプレート選択処理部204が選択したテンプレートに基づいて、走査位置の補正のためのドリフト量を算出する。
【0043】
走査位置補正処理部206は、ドリフト量算出処理部205が算出したドリフト量に基づいて、駆動部4の動作を制御して、走査コイル33の動作を制御する(電子線の走査位置を補正する)。
X線像取得処理部207は、X線検出器6からの検出信号に基づいて、X線像を取得する。
【0044】
3.電子線の走査
図3は、電子線マイクロアナライザ1における電子線の走査方法を説明するための図である。
電子線マイクロアナライザ1では、試料Sの表面上の測定領域に電子線を走査させることにより、二次電子像及びX線像を取得する。図3では、試料Sの測定領域である領域S1が示されている。領域S1は、矩形状の測定対象範囲である。図3のX方向が主走査方向であり、Y方向が副走査方向である。
【0045】
電子線マイクロアナライザ1では、試料Sの領域S1(測定領域)において、主走査方向の各測定点に順次電子線を照射し、それらの各点から発生する二次電子及びX線の強度を検出する。領域S1において主走査方向の最終の測定点での電子線の照射が終了すると、電子線の走査位置が副走査方向に1ラインずらされる。そして、領域S1において主走査方向の最初の測定点での電子線の照射が開始され、その後は、主走査方向の各測定点に順次電子線が照射される(電子線が主走査方向に走査される)。
【0046】
このように、電子線マイクロアナライザ1では、試料Sの領域S1において、主走査方向において電子線を走査させる動作と、副走査方向に1ライン走査位置をずらす動作とが交互に行われる。
【0047】
具体的には、電子線マイクロアナライザ1において、試料Sの領域S1に電子線を走査させる場合には、まず、副走査方向における最初のラインであり、かつ、主走査方向において最初の測定点である点A1に電子線が照射される。そして、副走査方向における走査位置を保ったまま(点A1と同じラインで)、主走査方向の各測定点に順次電子線が照射される。また、点A1と同じラインに位置し、かつ、主走査方向において最後の測定点である点A2に電子線が照射された後、電子線の走査位置が副走査方向に1ラインずらされる。そして、そのラインにおいて、主走査方向で最初の測定点である点A3に電子線が照射される。その後は、このような電子線の走査が繰り返される。そして、副走査方向における最後のラインに位置し、かつ、主走査方向において最後の測定点である点A4に電子線が照射されると、電子線の走査が終了する。
【0048】
4.制御部の制御動作
以下では、図4図7を用いて、電子線マイクロアナライザ1で試料Sを測定する際における制御部20の制御動作について説明する。図4は、制御部20の制御動作の一例を示したフローチャートである。図5は、電子線マイクロアナライザ1において取得された基準画像101のイメージを示した図である。図6は、電子線マイクロアナライザ1において抽出されたテンプレートのイメージを示した図である。図7は、電子線マイクロアナライザ1において選択されたテンプレートのイメージを示した図である。
【0049】
電子線マイクロアナライザ1において、試料SのX線像を作成する際には、まず、ユーザによって、操作部(図示せず)が操作されて、測定開始のための入力が行われる。すると、基準画像取得処理部201は、駆動部4からの駆動力を走査コイル33に付与させて、電子線を試料Sの測定領域(領域S1)内で走査させる。このとき、基準画像取得処理部201は、電子線を高速で走査させる。そのため、このときの電子線の走査は、短時間で終了する。そして、基準画像取得処理部201は、電子検出器5からの検出信号に基づいて、二次電子像(基準画像)を取得する(ステップS101)。基準画像取得処理部201は、この二次電子像を基準画像101として、記憶部10に格納する。
【0050】
図5には、この基準画像101のイメージが示されている。この例では、基準画像101には、第1画像102と、第2画像103とが含まれている。
第1画像102及び第2画像103のそれぞれは、矩形状に表示される画像である。この基準画像101では、第1画像102の各頂点102a、及び、第2画像103の各頂点103aが特徴点として表れている。特徴点とは、固有の画像情報を有する点であって、他の画像と容易に区別できる点(誤認識が生じにくい点)である。特徴点は、例えば、基準画像101に含まれるコーナー部や、エッジ部など、複数方向に画像の変化がある(輝度変化がある)点である。
【0051】
また、テンプレート抽出処理部203は、記憶部10の基準画像101を読出し、その基準画像101からテンプレートを抽出する(ステップS102)。テンプレート抽出処理部203が抽出するテンプレートは、基準画像101中に含まれる複数の画像領域であって、特徴点を含む領域である。図5では、テンプレート抽出処理部203によって、基準画像101から抽出されるテンプレートが領域Bとして示されている。
【0052】
テンプレート抽出処理部203は、まず、基準画像101を所定のXYピクセル数で分割する。そして、テンプレート抽出処理部203は、その分割した画像に特徴点が含まれるか否かを判定し、特徴点があると判定された分割画像のみをテンプレートとして抽出する。例えば、テンプレートにおけるX方向の画素数は、20ピクセルであり、Y方向の画素数は、8ピクセルである。具体的には、テンプレート抽出処理部203は、二次微分によるエッジ抽出や、SUSANオペレータやHarrisオペレータなどの特徴点抽出アルゴリズムを用いて特徴点を抽出し、その特徴点に基づいてテンプレートを抽出する。
【0053】
図6には、基準画像101から抽出された複数のテンプレートを含む第1テンプレート画像301が示されている。図5では図示しないが、基準画像101には、第1画像102及び第2画像103に加えて、特徴点を有する複数の画像が含まれている。そして、テンプレート抽出処理部203によって、これらの画像の特徴点を含むテンプレートが抽出された結果、図6に示す第1テンプレート画像301が取得される。図6では、テンプレートの部分を斜線で示している。このように、テンプレート抽出処理部203は、基準画像101を複数の領域に分割し、その領域に特徴点が含まれる場合に、特徴点を含む領域をテンプレートとして抽出する処理を行っている。そのため、第1テンプレート画像301において画像がある領域の全てには、各領域を容易に判別できる固有の画像情報(特徴点)が含まれることとなる。
【0054】
そして、テンプレート選択処理部204は、テンプレート抽出処理部203が抽出した複数のテンプレートの中から、テンプレートにおける各画素の輝度に基づいて、特定のテンプレートを選択する(ステップS103)。具体的には、テンプレート選択処理部204は、テンプレート抽出処理部203が抽出した複数のテンプレートの中から、輝度変化の値が閾値以下となるテンプレートを削除する処理を行う。具体的には、テンプレート選択処理部204は、テンプレートにおける画素の輝度値の標準偏差や、テンプレートにおける画素輝度値の最大値と最小値との差の値などに基づいて、これらの値が閾値以下となる場合に、テンプレートを削除する処理を行う。
【0055】
図7には、第1テンプレート画像301から特定のテンプレートが選択された後の画像である第2テンプレート画像302が示されている。第2テンプレート画像302では、第1テンプレート画像301に含まれる複数のテンプレート(斜線部分)の一部が削除されている。このように、第2テンプレート画像302では、輝度変化の大きい領域がテンプレートとして存在している。
【0056】
このようにしてテンプレートが作成されると、測定画像取得処理部202は、駆動部4からの駆動力を走査コイル33に付与させて、低速での電子線の走査を開始させる(ステップS104)。このときの電子線の走査は、長時間にわたって行われる。この長時間での電子線の走査の際に、X線像取得処理部207は、X線検出器6からの検出信号に基づいて、X線像を取得し、測定画像取得処理部202は、電子検出器5からの検出信号に基づいて、二次電子像(測定画像)を取得する。すなわち、長時間での電子線の走査の際には、X線像取得処理部207によるX線像の取得と、測定画像取得処理部202による測定画像の取得が並行して行われる。
【0057】
そして、主走査方向での電子線の走査が所定回数繰り返されて、所定数のラインの走査が終了すると(ステップS105でYES)、測定画像取得処理部202は、その所定数のラインに対応する二次電子像を測定画像として取得する。この測定画像は、試料Sの測定領域を副走査方向に複数に分割したときの画像であって、部分的な二次電子像である。
【0058】
また、ドリフト量算出処理部205は、測定画像取得処理部202が取得した測定画像と、テンプレート選択処理部204が選択したテンプレート(第2テンプレート画像302)とを比較し、測定画像のドリフト量(補正量)を算出する(ステップS106)。
【0059】
具体的には、ドリフト量算出処理部205は、テンプレート選択処理部204が選択したテンプレート(第2テンプレート画像302)のうち、走査が終了した部分に対応するテンプレートと、測定画像取得処理部202が取得した測定画像中の対応する注目領域とを比較してドリフト量を算出する。
【0060】
例えば、この例では、ドリフト量算出処理部205は、第2テンプレート画像302のうち、走査が終了した部分に対応するテンプレートC,Dを、測定画像中の注目領域と照合する。測定画像中の注目領域とは、測定画像中において、各テンプレートに対応する領域であって、各テンプレートと同様の画像が表示される領域である。そして、ドリフト量算出処理部205は、測定画像中の各注目領域と各テンプレート(テンプレートC,D)との間でずれがある場合には、各注目領域におけるずれ量(X方向及びY方向のそれぞれでのずれ量)を、ドリフト量(X方向のドリフト量、及び、Y方向のドリフト量)として算出する。ドリフト量算出処理部205は、各注目領域で算出したドリフト量に基づいて、ドリフト量の平均値(X方向のドリフト量の平均値、及び、Y方向のドリフト量の平均値)を算出する。
【0061】
このような画像の照合において、上記したように、各テンプレートには、特徴点が含まれる。そのため、比較対象であるテンプレートが正しく判別されて、そのテンプレートを用いて照合が行われる。
【0062】
また、走査位置補正処理部206は、ドリフト量算出処理部205が算出したドリフト量の平均値(X方向のドリフト量の平均値、及び、Y方向のドリフト量の平均値)に基づいて、駆動部4からの駆動力を走査コイル33に付与させて、電子線の走査位置(次に電子線を走査させるラインの位置)を補正する(ステップS107)。
【0063】
その後は、電子線マイクロアナライザ1における試料Sの測定が完了するまで、ステップS104からステップS107までの処理が繰り返される。すなわち、主走査方向での電子線の走査が所定回数繰り返されて、所定数のラインの走査が終了するたびに、新たに走査が終了した部分に対応するテンプレートと、測定画像中の新たな注目領域とを照合し、電子線の走査位置を補正する処理が行われる。そして、試料Sの測定が完了すると(ステップS108でYES)、制御部20による一連の制御動作が終了する。
【0064】
このように、電子線マイクロアナライザ1における試料Sの測定中(X線画像の取得中)は、電子線の走査位置の補正が並行して行われる。また、その補正は、特徴点の画像を含むテンプレートと、測定画像の注目領域との照合結果に基づいて行われる。そのため、テンプレートと測定画像との照合を正確に行って、電子線の走査位置を精度よく補正できる。
【0065】
なお、測定画像との照合が最初に行われるテンプレートを位置決め用テンプレートとし、位置決め用テンプレートと測定画像とを照合した結果のずれ量を基準量とし、この基準量を用いて走査位置を補正してもよい。この場合には、テンプレートを測定画像と照合し、基準量からさらにずれている量が、ドリフト量として算出される。そして、算出したドリフト量に基づいて、走査位置が補正される。
また、輝度差のあるテンプレートが少なく、テンプレートの位置が分散している場合には、照合されない領域が多く発生するため、テンプレートサイズを大きくしてテンプレート間の隙間を小さくしてもよい。
【0066】
5.作用効果
(1)本実施形態によれば、図2に示すように、電子線マイクロアナライザ1の制御部20は、テンプレート抽出処理部203及びテンプレート選択処理部204を備える。テンプレート抽出処理部203は、基準画像101から特徴点を含む複数の領域をテンプレートとして抽出する。すなわち、テンプレート抽出処理部203は、基準画像101の中から、他の領域と区別が容易な領域(判別が容易な領域)をテンプレートとして抽出する。そして、ドリフト量算出処理部205は、抽出された複数のテンプレートを測定画像中の対応する各注目領域と比較(照合)することにより、各注目領域における基準画像に対する測定画像のドリフト量を算出する(図4のステップS106)。
【0067】
そのため、比較対象のテンプレートを正確に判別し、そのテンプレートを測定画像中の注目領域と比較(照合)して、測定画像のドリフト量を算出できる。
その結果、測定画像のドリフト量、すなわち、電子線の走査位置を補正する際のドリフト量を精度よく算出できる。
【0068】
(2)また、本実施形態によれば、図2に示すように、電子線マイクロアナライザ1の制御部20は、走査位置補正処理部206を備える。走査位置補正処理部206は、ドリフト量算出処理部205により算出されたドリフト量に基づいて、電子線の走査位置を補正する(図4のステップS107)。
【0069】
そのため、精度よく算出されたドリフト量に基づいて、電子線の走査位置を補正できる。
その結果、電子線の走査位置を精度よく補正できる。
【0070】
(3)また、本実施形態によれば、電子線マイクロアナライザ1において、走査位置補正処理部206は、測定画像取得処理部202による測定画像の取得中(試料Sの測定中)に、電子線の走査位置を補正する(図4のステップS107)。
【0071】
そのため、電子線マイクロアナライザ1における測定時間が一連の補正処理によって長くなることを抑制できる。
【0072】
(4)また、本実施形態によれば、電子線マイクロアナライザ1において、基準画像取得処理部201及び測定画像取得処理部202は、主走査方向への電子線の走査を1ラインずつ副走査方向にずらしながら繰り返すことにより、試料Sの測定領域内に電子線を走査させる。走査位置補正処理部206は、主走査方向における電子線の走査が所定回数繰り返されて、所定数のラインの走査が終了すると、ドリフト量算出処理部205が算出したドリフト量に基づいて、次に走査させるラインの位置を補正する(図4のステップS107)。
【0073】
そのため、電子線マイクロアナライザ1における測定時間が一連の補正処理によって長くなることを抑制できる。
【0074】
(5)また、本実施形態によれば、走査位置補正処理部206は、ドリフト量算出処理部205が算出したドリフト量の平均値(X方向のドリフト量の平均値、及び、Y方向のドリフト量の平均値)に基づいて、駆動部4からの駆動力を走査コイル33に付与させて、次に電子線を走査させるラインの位置を補正する(図4のステップS107)。
【0075】
そのため、電子線を走査させる主走査方向のラインを精度よく補正できる。
【0076】
(6)また、本実施形態によれば、電子線マイクロアナライザ1の制御部20は、テンプレート選択処理部204を備える。テンプレート選択処理部204は、テンプレート抽出処理部203により抽出された複数のテンプレートの中から、各テンプレートにおける各画素の輝度に基づいて特定のテンプレートを選択する。そして、ドリフト量算出処理部205は、テンプレート選択処理部204により選択された複数のテンプレートを測定画像中の対応する各注目領域と比較することにより、各注目領域における基準画像に対する測定画像のドリフト量を算出する。
【0077】
そのため、テンプレート選択処理部204により、比較対象として適したテンプレートを選択できる。そして、ドリフト量算出処理部205により、その選択されたテンプレートを測定画像中の注目領域と比較して、測定画像のドリフト量を算出できる。
その結果、電子線の走査位置を補正する際のドリフト量を一層精度よく算出できる。
【0078】
6.変形例
上記した実施形態では、走査位置補正処理部206は、主走査方向における電子線の走査が所定回数繰り返された後に、ドリフト量算出処理部205が算出したドリフト量に基づいて、次に走査させるラインの位置を補正するとして説明した。しかし、走査位置補正処理部206は、主走査方向における電子線の走査が1ライン終了するたびに、ドリフト量算出処理部205が算出したドリフト量に基づいて、次に走査させるラインの位置を補正してもよい。
【0079】
また、上記した実施形態では、ドリフト量算出処理部205は、テンプレート選択処理部204により選択された複数のテンプレートを測定画像中の対応する各注目領域と比較することにより、各注目領域における基準画像に対する測定画像のドリフト量を算出するとして説明した。しかし、制御部20にテンプレート選択処理部204が含まれない構成であって、ドリフト量算出処理部205が、テンプレート抽出処理部203により抽出されたテンプレートを測定画像中の対応する各注目領域と比較してドリフト量を算出する構成であってもよい。
【0080】
また、上記した実施形態では、制御プログラムが組み込まれた電子線マイクロアナライザ1について説明したが、上記した制御動作を実施するための制御プログラム自体を提供することも可能である。この場合、制御プログラムは、記憶媒体に記憶された状態で提供される構成であってもよいし、制御プログラム自体が提供されるような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 電子線マイクロアナライザ
3 電子線照射部
20 制御部
31 電子源
32 集束レンズ
33 走査コイル
34 対物レンズ
101 基準画像
201 基準画像取得処理部
202 測定画像取得処理部
203 テンプレート抽出処理部
204 テンプレート選択処理部
205 ドリフト量算出処理部
206 走査位置補正処理部
S1 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7