【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、がん免疫治療用医薬組成物、及び/又は、免疫活性化用医薬組成物の創製を目的に鋭意検討した結果、化合物A、即ち6-エチル-3-({3-メトキシ-4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)ピペリジン-1-イル]フェニル}アミノ)-5-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イルアミノ)ピラジン-2-カルボキサミド又はその製薬学的に許容される塩に優れた免疫活性化作用があり、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を有効成分とする医薬組成物が、当該作用に基づき、がん免疫治療用医薬組成物、及び/又は、免疫活性化用医薬組成物としての使用が期待されることを知見して本発明を完成した。
【0015】
即ち、本発明は、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有するがん免疫治療用医薬組成物、ある態様としては、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、AXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対するがん免疫治療用医薬組成物、またある態様としては、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、免疫活性化用医薬組成物、またある態様としては、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、AXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対する免疫活性化用医薬組成物、またある態様としては、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、AXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対するCD8陽性細胞数の増加作用を介した免疫活性化用医薬組成物に関する。
【0016】
本発明のある態様を以下に示す。
【0017】
(1)化合物A又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有するがん免疫治療用医薬組成物。ある態様としては、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有するAXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対するがん免疫治療用医薬組成物。またある態様としては、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する免疫活性化用医薬組成物。またある態様としては、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有するAXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対する免疫活性化用医薬組成物。またある態様としては、化合物A又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有するAXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対するCD8陽性細胞数の増加作用を介した免疫活性化用医薬組成物。
【0018】
(2)がん免疫治療用医薬組成物の製造のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。ある態様としては、AXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対するがん免疫治療用医薬組成物の製造のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。またある態様としては、免疫活性化用医薬組成物の製造のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。またある態様としては、AXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対する免疫活性化用医薬組成物の製造のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。またある態様としては、AXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対するCD8陽性細胞数の増加作用を介した免疫活性化用医薬組成物の製造のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【0019】
(3)がん免疫治療のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。ある態様としては、AXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対するがん免疫治療のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。またある態様としては、免疫活性化のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。またある態様としては、AXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対する免疫活性化のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。またある態様としては、AXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対するCD8陽性細胞数の増加作用を介した免疫活性化のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の使用。
【0020】
(4)がん免疫治療のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩。ある態様としては、AXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対するがん免疫治療のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩。またある態様としては、免疫活性化のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩。またある態様としては、AXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対する免疫活性化のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩。またある態様としては、AXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対するCD8陽性細胞数の増加作用を介した免疫活性化のための、化合物A又はその製薬学的に許容される塩。
【0021】
(5)化合物A又はその製薬学的に許容される塩の有効量を対象に投与することからなる、がん免疫を介したがんの治療方法。ある態様としては、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の有効量を対象に投与することからなる、AXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対するがん免疫を介したがんの治療方法。またある態様としては、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の有効量を対象に投与することからなる、免疫活性化を介したがんの治療方法。またある態様としては、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の有効量を対象に投与することからなる、AXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対する免疫活性化を介したがんの治療方法。またある態様としては、化合物A又はその製薬学的に許容される塩の有効量を対象に投与することからなる、AXL及び/又はMERの発現により免疫逃避機構を獲得したがんに対するCD8陽性細胞数の増加作用を介した免疫活性化を介したがんの治療方法。
【0022】
(6)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体と組み合わせて投与されることを特徴とする、(1)の医薬組成物。
【0023】
(7)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体が、ニボルマブ(nivolumab)、ペンブロリズマブ(pembrolizumab)、アテ
ゾリズマブ(ate
zolizumab)、ピディリズマブ(pidilizumab)、アヴェルマブ(avelumab)及びデュルバルマブ(durvalumab)から選択される抗体である、(6)の医薬組成物。
【0024】
(8)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体と同時に、別々に、連続して、或いは、間隔をあけて投与されることを特徴とする、(7)の医薬組成物。
【0025】
(9)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体との併用治療用である(6)〜(8)の医薬組成物。
【0026】
(10)悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、再発性膠芽腫、頭頚部癌、胃癌、食道癌、結腸直腸癌、膀胱癌、尿路上皮癌、肝細胞癌、前立腺癌、メルケル細胞癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、又はC型慢性肝炎の治療用である(1)、(6)〜(9)の医薬組成物。
【0027】
(11)化合物A又はその製薬学的に許容される塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有する、(1)、(6)〜(10)に記載の医薬組成物。
【0028】
(12)化合物A又はその製薬学的に許容される塩が化合物A ヘミフマル酸塩である(1)、(6)〜(11)の医薬組成物。
【0029】
(13)化合物A又はその製薬学的に許容される塩が化合物A ヘミフマル酸塩である(2)の使用。
【0030】
(14)化合物A又はその製薬学的に許容される塩が化合物A ヘミフマル酸塩である(3)の使用。
【0031】
(15)(4)において、化合物A又はその製薬学的に許容される塩が化合物A ヘミフマル酸塩である(4)の化合物A又はその製薬学的に許容される塩。
【0032】
(16)化合物A又はその製薬学的に許容される塩が化合物A ヘミフマル酸塩である(5)の治療方法。
【0033】
また、本願発明は以下の発明にも関する。
(17)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体と組み合わせて投与されることを特徴とする、(2)又は(13)の使用。
(18)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテ
ゾリズマブ、ピディリズマブ、アヴェルマブ及びデュルバルマブから選択される抗体である、(17)の使用。
(19)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体と同時に、別々に、連続して、或いは、間隔をあけて投与されることを特徴とする、(17)又は(18)の使用。
(20)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体の投与を受けている対象におけるがんの治療用である(17)〜(19)の使用。
(21)悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、再発性膠芽腫、頭頚部癌、胃癌、食道癌、結腸直腸癌、膀胱癌、尿路上皮癌、肝細胞癌、前立腺癌、メルケル細胞癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、又はC型慢性肝炎の治療用である(17)〜(20)の使用。
【0034】
また、本願発明は以下の発明にも関する。
(22)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体と組み合わせて併用投与されることを特徴とする、(3)又は(14)の使用。
(23)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテ
ゾリズマブ、ピディリズマブ、アヴェルマブ及びデュルバルマブから選択される抗体である、(22)の使用。
(24)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体と同時に、別々に、連続して、或いは、間隔をあけて投与されることを特徴とする、(22)又は(23)の使用。
(25)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体の投与を受けている対象におけるがんの治療用である(22)〜(24)の使用。
(26)悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、再発性膠芽腫、頭頚部癌、胃癌、食道癌、結腸直腸癌、膀胱癌、尿路上皮癌、肝細胞癌、前立腺癌、メルケル細胞癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、又はC型慢性肝炎の治療用である(22)〜(25)の使用。
【0035】
また、本願発明は以下の発明にも関する。
(27)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体と組み合わせて併用投与されることを特徴とする、(4)又は(15)の化合物又はその塩。
(28)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテ
ゾリズマブ、ピディリズマブ、アヴェルマブ及びデュルバルマブから選択される抗体である、(27)の化合物又はその塩。
(29)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体と同時に、別々に、連続して、或いは、間隔をあけて投与されることを特徴とする、(27)又は(28)の化合物又はその塩。
(30)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体の投与を受けている対象におけるがんの治療用である(27)〜(29)の化合物又はその塩。
(31)悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、再発性膠芽腫、頭頚部癌、胃癌、食道癌、結腸直腸癌、膀胱癌、尿路上皮癌、肝細胞癌、前立腺癌、メルケル細胞癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、又はC型慢性肝炎の治療用である(27)〜(30)の化合物又はその塩。
【0036】
また、本願発明は以下の発明にも関する。
(32)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体の併用治療に用いる場合の治療有効用量、並びに化合物A又はその製薬学的に許容される塩を併用治療に用いる場合の治療有効用量とを組み合わせて、対象に投与することを特徴とするがん免疫治療方法。
(33)化合物A又はその製薬学的に許容される塩が化合物A ヘミフマル酸塩である(32)のがん免疫治療方法。
(34)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテ
ゾリズマブ、ピディリズマブ、アヴェルマブ及びデュルバルマブから選択される抗体である、(32)又は(33)の治療方法。
(35)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体と同時に、別々に、連続して、或いは、間隔をあけて投与されることを特徴とする、(32)〜(34)の治療方法。
(36)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体の投与を受けている対象におけるがんの治療用である(32)〜(35)の治療方法。
(37)悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、再発性膠芽腫、頭頚部癌、胃癌、食道癌、結腸直腸癌、膀胱癌、尿路上皮癌、肝細胞癌、前立腺癌、メルケル細胞癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、又はC型慢性肝炎の治療用である(32)〜(36)の治療方法。
【0037】
また、本願発明は以下の発明にも関する。
(38)化合物A又はその製薬学的に許容される塩を含有する免疫活性化によるがん治療剤。
(39)(38)の治療剤であって、PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体と併用されることを特徴とする剤。
(40)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体が、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテ
ゾリズマブ、ピディリズマブ、アヴェルマブ及びデュルバルマブから選択される抗体である、(39)の剤。
(41)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体と同時に、別々に、連続して、或いは、間隔をあけて投与されることを特徴とする、(39)又は(40)の剤。
(42)PD-1とPD-L1との結合を阻害するモノクローナル抗体の投与を受けている対象におけるがんの治療用である(39)〜(41)の剤。
(43)悪性黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、再発性膠芽腫、頭頚部癌、胃癌、食道癌、結腸直腸癌、膀胱癌、尿路上皮癌、肝細胞癌、前立腺癌、メルケル細胞癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病、又はC型慢性肝炎の治療用である(39)〜(42)の剤。
【0038】
なお、「対象」とは、その予防若しくは治療を必要とするヒト又はその他の動物であり、ある態様としては、その予防若しくは治療を必要とするヒトである。