(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。また、本明細書において、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
【0020】
以下、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、及びハロゲン原子は、各々、次の意味である。
【0021】
炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、及びヘキシル基が挙げられる。
【0022】
炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、及びt−ブチル基が挙げられる。
【0023】
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、及びヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0024】
炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、及びt−ブトキシ基が挙げられる。
【0025】
炭素原子数6以上14以下のアリール基は、非置換である。炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族単環炭化水素基、炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合二環炭化水素基、及び炭素原子数6以上14以下の非置換の芳香族縮合三環炭化水素基が挙げられる。より具体的な炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、及びフェナントリル基が挙げられる。
【0026】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0027】
また、以下において「炭素原子数1以上4以下のアルキル基で置換されていてもよい」とは、官能基の水素原子の一部又は全部が炭素原子数1以上4以下のアルキル基で置換されていてもよいことを意味する。「ハロゲン原子で置換されていてもよい」についても同様である。
【0028】
<第一実施形態:電子写真感光体>
本発明の第一実施形態に係る電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある。)の構造を説明する。
図1、
図2及び
図3は、第一実施形態の一例である感光体1の構造を示す部分断面図である。
図1に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3とを備える。感光層3は、単層の感光層である。
図1に示すように、感光層3は導電性基体2上に直接的に設けられてもよい。また、
図2に示すように、感光体1は、例えば、導電性基体2と、中間層4(例えば下引き層)と、感光層3とを備えてもよい。
図2に示す例では、感光層3は、導電性基体2上に中間層4を介して間接的に設けられている。また、
図3に示すように、感光体1は、最表面層として保護層5を備えてもよい。
【0029】
以下、感光体1の要素(導電性基体2、感光層3、及び中間層4)を説明する。更に感光体1の製造方法も説明する。
【0030】
[1.導電性基体]
導電性基体2は、感光体1の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体2としては、少なくとも表面部が導電性を有する材料で構成される導電性基体を用いることができる。導電性基体2としては、例えば、導電性を有する材料(導電性材料)で構成される導電性基体、及び導電性材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、及びインジウムが挙げられる。これらの導電性材料は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。二種以上の組合せとしては、例えば、合金(より具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、真鍮等)が挙げられる。これらの導電性材料の中でも、感光層3から導電性基体2への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。
【0031】
導電性基体2の形状は、使用する画像形成装置の構造に合わせて適宜選択することができる。導電性基体2の形状としては、例えば、シート状、及びドラム状が挙げられる。また、導電性基体2の厚みは、導電性基体2の形状に応じて、適宜選択することができる。
【0032】
[2.感光層]
感光層3は、下記化学式(1)で表されるチタニルフタロシアニン(以下、チタニルフタロシアニン(1)と記載することがある。)と、正孔輸送剤と、二種以上の電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含有する。感光層3は、後述する他の電荷発生剤及び/又は添加剤を更に含有してもよい。感光層3の厚さは、感光層としての機能を十分に発現できれば、特に限定されない。具体的には、感光層3の厚さは、5μm以上100μm以下であってもよく、10μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0034】
以下、チタニルフタロシアニン(1)、正孔輸送剤、二種以上の電子輸送剤、バインダー樹脂及び任意成分である他の電荷発生剤及び添加剤について説明する。
【0035】
(チタニルフタロシアニン(1))
チタニルフタロシアニン(1)は、通常、感光層3において電荷発生剤として機能する。チタニルフタロシアニン(1)は、電荷発生剤の中でも電荷発生の効率が比較的優れる。チタニルフタロシアニン(1)は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。結晶であるチタニルフタロシアニン(1)としては、例えば、チタニルフタロシアニン(1)のα型、β型及びY型結晶(以下、それぞれα型、β型及びY型チタニルフタロシアニン(1)と記載することがある。)が挙げられる。チタニルフタロシアニン(1)は、700nm以上の波長領域で高い量子収率を有する。そのため、感光体1は、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター及びファクシミリ)の像担持体として好適に用いることができる。
【0036】
チタニルフタロシアニン(1)の含有量は、電荷を効率よく発生させる観点から、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上30質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることが更に好ましく、0.5質量部以上4質量部以下であることが特に好ましい。チタニルフタロシアニン(1)の含有量がバインダー樹脂100質量部に対して4質量部以下であると、感光層3における過剰な電荷発生を抑制できると共に、感光層3の適度に深い位置で電荷を発生させることができる。その結果、感光層3における残留電荷が低減し、感光体1の転写メモリーがより効果的に抑制される傾向にある。
【0037】
感光層3は、電荷発生剤として、チタニルフタロシアニン(1)のみを含有することが好ましいが、他の電荷発生剤を更に含有してもよい。他の電荷発生剤としては、例えば、チタニルフタロシアニン(1)以外のフタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム及びアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料及びキナクリドン系顔料が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0038】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤としては、例えば、含窒素環式化合物及び縮合多環式化合物が挙げられる。含窒素環式化合物及び縮合多環式化合物としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体;ジアミン誘導体(より具体的には、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、ジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体等);オキサジアゾール系化合物(より具体的には、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等);スチリル系化合物(より具体的には、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等);カルバゾール系化合物(より具体的には、ポリビニルカルバゾール等);有機ポリシラン化合物;ピラゾリン系化合物(より具体的には、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等);ヒドラゾン系化合物;インドール系化合物;オキサゾール系化合物;イソオキサゾール系化合物;チアゾール系化合物;チアジアゾール系化合物;イミダゾール系化合物;ピラゾール系化合物;トリアゾール系化合物が挙げられる。これらの正孔輸送剤は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
これらの正孔輸送剤のうち、転写メモリーをより効果的に抑制する観点から、下記一般式(9)で表される化合物(以下、正孔輸送剤(9)と記載することがある。)が好ましい。
【0041】
一般式(9)中、R
41、R
42及びR
43は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。m1及びm2は、各々独立に、1以上3以下の整数を表す。n1、n2及びn3は、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。n1が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR
41は互いに同一であっても異なってもよい。n2が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR
42は互いに同一であっても異なってもよい。n3が2以上5以下の整数を表す場合、複数のR
43は互いに同一であっても異なってもよい。
【0042】
一般式(9)中、R
41、R
42及びR
43は、転写メモリーを更に効果的に抑制する観点から、各々独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基を表すことが好ましい。
【0043】
一般式(9)中、m1及びm2は、転写メモリーを更に効果的に抑制する観点から、2又は3を表すことが好ましい。
【0044】
一般式(9)中、n1は、転写メモリーを更に効果的に抑制する観点から、1又は2を表すことが好ましい。同様の観点から、一般式(9)中、n2及びn3は、0を表すことが好ましい。
【0045】
一般式(9)中、m1及びm2が2又は3を表し、n1が1又は2を表し、n2及びn3が0を表す場合、転写メモリーを特に効果的に抑制する観点から、以下の条件a又は条件bを満たすことが好ましい。
条件a:R
41がn−ブチル基を表す。
条件b:m1及びm2が3を表す。
【0046】
正孔輸送剤(9)としては、例えば、下記化学式(HT−1)〜(HT−7)で表される化合物(以下、それぞれ正孔輸送剤(HT−1)〜(HT−7)と記載することがある。)が挙げられる。
【0048】
これらの正孔輸送剤のうち、転写メモリーを最も効果的に抑制する観点から、正孔輸送剤(HT−1)がより好ましい。
【0049】
正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
【0050】
(電子輸送剤)
電子輸送剤は、感光層3に二種以上が含有されている。電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸及びジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物及びジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。
【0051】
感光体1は、感光層3がチタニルフタロシアニン(1)と、二種以上の電子輸送剤とを含有することにより、転写メモリーを抑制でき、かつ感度を向上できる。その理由は以下のように推測される。
【0052】
感光層3が含有するチタニルフタロシアニン(1)は、電荷の発生効率が比較的高い電荷発生剤である。また、感光層3は、二種以上の電子輸送剤を含有することにより、同量の電子輸送剤を一種単独で含有する場合と比較し、電子輸送剤の結晶化を抑制し、効率的に電子を輸送することができる。更に、感光層3は、二種以上の電子輸送剤を含有することにより、電荷発生剤及び電子輸送剤の間での電子の受け渡し効率に優れる。特に、チタニルフタロシアニン(1)は、他の電荷発生剤と比較し、二種以上の電子輸送剤を含有することによる電荷発生剤及び電子輸送剤の間での電子の受け渡し効率の増加幅が大きい。これらにより、感光層3は、電荷を効率的に発生させることができると共に、発生した比較的多量の電荷を効率的に輸送することができる。そのため、感光体1は、感度を向上できると共に、残留電荷に起因する転写メモリーを抑制することができると考えられる。
【0053】
電子輸送剤としては、転写メモリーをより効果的に抑制し、かつ感度をより向上させる観点から、下記一般式(ET1)、(ET2)、(ET3)、(ET4)、(ET5)及び(ET6)で表される化合物(以下、それぞれ電子輸送剤(ET1)〜(ET6)と記載することがある。)のうちの二種以上を含むことが好ましい。
【0055】
一般式(ET1)中、R
11及びR
12は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。一般式(ET2)中、R
13、R
14、R
15及びR
16は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。一般式(ET3)中、R
17及びR
18は、各々独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基で置換されていてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。一般式(ET4)中、R
19及びR
20は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。R
21は、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基を表す。一般式(ET5)中、R
22、R
23、R
24及びR
25は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。一般式(ET6)中、R
26〜R
31は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は水素原子を表す。
【0056】
一般式(ET1)中、R
11及びR
12は、転写メモリーを更に効果的に抑制し、かつ感度を更に向上させる観点から、各々独立に、炭素原子数1以上6以下の分枝鎖状のアルキル基を表すことが好ましい。
【0057】
一般式(ET2)中、R
13、R
14、R
15及びR
16は、転写メモリーを更に効果的に抑制し、かつ感度を更に向上させる観点から、各々独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表すことが好ましい。
【0058】
一般式(ET3)中、R
17及びR
18は、転写メモリーを更に効果的に抑制し、かつ感度を更に向上させる観点から、各々独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基で置換されたフェニル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基で2つの水素原子が置換されたフェニル基を表すことがより好ましい。
【0059】
一般式(ET4)中、R
19及びR
20は、転写メモリーを更に効果的に抑制し、かつ感度を更に向上させる観点から、各々独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表すことが好ましい。一般式(ET4)中、R
21は、ハロゲン原子で置換されたフェニル基を表すことが好ましく、塩素原子で置換されたフェニル基を表すことがより好ましい。
【0060】
一般式(ET5)中、R
22、R
23、R
24及びR
25は、転写メモリーを更に効果的に抑制し、かつ感度を更に向上させる観点から、各々独立に、炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表すことが好ましい。
【0061】
一般式(ET6)中、R
26、R
27及びR
29は、転写メモリーを更に効果的に抑制し、かつ感度を更に向上させる観点から、各々、水素原子を表すことが好ましい。同様の観点から、一般式(ET6)中、R
28は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表すことが好ましい。同様の観点から、一般式(ET6)中、R
30及びR
31は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基又はエチル基を表すことが更に好ましい。
【0062】
電子輸送剤(ET1)〜(ET6)としては、例えば、下記化学式(ET1−1)〜(ET6−1)で表される化合物(以下、それぞれ電子輸送剤(ET1−1)〜(ET6−1)と記載することがある。)が挙げられる。なお、化学式(ET6−1)中、n−Buは、n−ブチル基を表す。
【0064】
感光層3は、転写メモリーを特に効果的に抑制し、かつ感度を特に向上させる観点から、電子輸送剤(ET1)、(ET2)、(ET3)及び(ET6)のうちの二種以上を含有することが好ましく、電子輸送剤(ET1)と、電子輸送剤(ET2)、(ET3)又は(ET6)とを含有することがより好ましく、電子輸送剤(ET1−1)と、電子輸送剤(ET2−1)、(ET3−1)又は(ET6−1)とを含有することが更に好ましい。
【0065】
感光層3が二種の電子輸送剤を含有する場合、転写メモリーをより効果的に抑制し、かつ感度をより向上させる観点から、一方の電子輸送剤の質量に対する他方の電子輸送剤の質量の比率(一方の電子輸送剤の質量/他方の電子輸送剤の質量)は、0.20以上0.80以下であることが好ましく、0.40以上0.60以下であることが好ましい。
【0066】
二種以上の電子輸送剤の合計含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上100質量部以下であることが好ましく、10質量部以上80質量部以下であることがより好ましく、25質量部以上60質量部以下であることが更に好ましい。
【0067】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、下記一般式(2−1)で表される第一繰り返し単位と、下記一般式(2−2)で表される第二繰り返し単位とを有するポリアリレート樹脂(以下、ポリアリレート樹脂(2)と記載することがある。)を含む。感光層3は、ポリアリレート樹脂(2)の一種又は二種以上を含むことができる。ポリアリレート樹脂(2)は、第一繰り返し単位の一種のみを有してもよく、二種以上を有してもよい。また、ポリアリレート樹脂(2)は、第二繰り返し単位の一種のみを有してもよく、二種以上を有してもよい。
【0069】
一般式(2−1)中、krは、2又は3を表す。
【0071】
一般式(2−2)中、Xは、下記化学式(2A)、(2B)、(2C)、(2D)、(2E)、(2F)又は(2G)で表される二価の基である。
【0073】
化学式(2A)〜(2G)中、*は、各々、一般式(2−2)における−CO−の炭素原子との結合部位を表す。
【0074】
ポリアリレート樹脂(2)としては、例えば、繰り返し単位(2−1)及び繰り返し単位(2−2)が交互に並んだ樹脂を用いることができる。この場合、ポリアリレート樹脂(2)が有する繰り返し単位(2−1)及び繰り返し単位(2−2)のそれぞれの物質量は、略同一であることが好ましい。具体的には、ポリアリレート樹脂(2)が有する繰り返し単位(2−2)に対する繰り返し単位(2−1)の物質量の比率(モル分率)は、49/51以上51/49以下が好ましい。
【0075】
なお、本願明細書において、ポリアリレート樹脂(2)における各繰り返し単位の物質量は、1本の樹脂鎖から得られる値ではなく、感光層3に含有されるポリアリレート樹脂(2)全体(複数の樹脂鎖)から得られる数平均値である。また、各繰り返し単位の物質量は、例えばプロトン核磁気共鳴分光計を用いてポリアリレート樹脂(2)の
1H−NMRスペクトルを測定し、得られた
1H−NMRスペクトルから算出することができる。
【0076】
感光体1は、感光層3がポリアリレート樹脂(2)を含有することにより、耐摩耗性を向上させることができる。その理由は以下のように推測される。
【0077】
ポリアリレート樹脂(2)は、繰り返し単位(2−1)及び繰り返し単位(2−2)を有することにより、分子鎖同士の絡み合いが低下し難い。そのため、感光層3は、ポリアリレート樹脂(2)を含むバインダー樹脂を含有することで層密度が向上し、これにより感光体1の耐摩耗性が向上すると考えられる。
【0078】
一般式(2−1)中、krは、耐摩耗性をより向上させる観点から、3を表すことが好ましい。
【0079】
ポリアリレート樹脂(2)は、耐摩耗性をより向上させる観点から、一種の繰り返し単位(2−1)を有することが好ましい。
【0080】
一般式(2−2)中、Xは、耐摩耗性をより向上させる観点から、化学式(2A)、(2C)、(2D)、(2E)、(2F)又は(2G)で表される二価の基を表すことが好ましい。
【0081】
ポリアリレート樹脂(2)は、耐摩耗性をより向上させる観点から、二種の繰り返し単位(2−2)を有することが好ましい。具体的には、繰り返し単位(2−2)は、一般式(2−2−1)で表される繰り返し単位と、一般式(2−2−2)で表される繰り返し単位とを含むことが好ましい。
【0083】
一般式(2−2−1)及び(2−2−2)中、Xは、一般式(2−2)中のXと同義である。一般式(2−2−1)中のXが表す二価の基と、一般式(2−2−2)中のXが表す二価の基とは、互いに異なる。t1+t2=1.00である。0.00<t1<1.00である。0.00<t2<1.00である。
【0084】
ポリアリレート樹脂(2)は、耐摩耗性を更に向上させる観点から、二種の繰り返し単位(2−2)を有し、一般式(2−2)中、Xは化学式(2A)、(2C)、(2D)、(2E)、(2F)又は(2G)で表される二価の基を表し、一般式(2−1)中、krは3を表すことがより好ましい。
【0085】
一般式(2−2−1)及び(2−2−2)中、t1及びt2は、各々独立に、0.10以上0.90以下とであることが好ましく、0.30以上0.70以下であることがより好ましい。
【0086】
ポリアリレート樹脂(2)は、繰り返し単位(2−1)及び繰り返し単位(2−2)のみを有していることが好ましいが、他の繰り返し単位を更に有していてもよい。ポリアリレート樹脂(2)中の繰り返し単位の合計物質量に対する他の繰り返し単位の物質量の比率(モル分率)は、0.20以下が好ましく、0.10以下がより好ましく、0.00が更に好ましい。
【0087】
ポリアリレート樹脂(2)としては、例えば下記化学式(R−A)〜(R−F)で表されるポリアリレート樹脂(以下、それぞれポリアリレート樹脂(R−A)〜(R−F)と記載することがある。)が挙げられる。
【0089】
ポリアリレート樹脂(R−A)〜(R−F)としては、下記式(R−1)〜(R−10)で表されるポリアリレート樹脂(以下、それぞれResin(1)〜Resin(10)と記載することがある。)が好ましい。
【0092】
なお、下記式(R−1)〜(R−10)中、各繰り返し単位に付された添え字は、各繰り返し単位の含有割合(モル比)を表す百分率である。
【0093】
ポリアリレート樹脂(2)の製造方法としては、例えば、繰り返し単位(2−1)を構成するための芳香族ジオールと、繰り返し単位(2−2)を構成するための芳香族ジカルボン酸とを縮重合させる方法が挙げられる。縮重合させる方法は特に限定されず、公知の合成方法(より具体的には、溶液重合、溶融重合、界面重合等)を採用することができる。
【0094】
繰り返し単位(2−1)を構成するための芳香族ジオールは、2つのフェノール性水酸基を有し、下記一般式(2−1a)で表される。下記一般式(2−1a)中のkrは、一般式(2−1)中のkrと同義である。
【0096】
なお、芳香族ジオールは、ジアセテート等のような誘導体として用いることもできる。また、縮重合に用いる芳香族ジオールは、一般式(2−1a)で表される芳香族ジオール以外に、他の芳香族ジオールを含んでもよい。
【0097】
繰り返し単位(2−2)を構成するための芳香族ジカルボン酸は、2つのカルボキシル基を有し、下記一般式(2−2b)で表される。下記一般式(2−2b)中のXは、一般式(2−2)中のXと同義である。
【0099】
なお、芳香族ジカルボン酸は、ジ酸クロライド、ジメチルエステル、ジエチルエステル等のような誘導体として用いることもできる。また、縮重合に用いる芳香族ジカルボン酸は、一般式(2−2b)で表される芳香族ジカルボン酸以外の他の芳香族ジカルボン酸を含んでもよい。
【0100】
バインダー樹脂は、ポリアリレート樹脂(2)のみを単独で用いてもよいし、ポリアリレート樹脂(2)と、ポリアリレート樹脂(2)以外の樹脂(その他の樹脂)とを併用してもよい。その他の樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(ポリアリレート樹脂(2)以外のポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等)、熱硬化性樹脂(シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、これら以外の架橋性熱硬化性樹脂等)、及び光硬化性樹脂(エポキシ−アクリル酸系樹脂、ウレタン−アクリル酸系共重合体等)が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。ポリアリレート樹脂(2)の含有量は、バインダー樹脂の合計質量に対し、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0101】
バインダー樹脂の粘度平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることが更に好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が10,000以上であると、感光体1の耐摩耗性がより向上する傾向がある。一方、バインダー樹脂の粘度平均分子量は、80,000以下であることが好ましく、70,000以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が80,000以下であると、バインダー樹脂が感光層形成用の溶剤に溶解し易くなり、感光層3の形成が容易になる傾向がある。
【0102】
(添加剤)
任意成分である添加剤としては、例えば、劣化防止剤(より具体的には、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、消光剤、紫外線吸収剤等)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、及びレベリング剤が挙げられる。添加剤を添加する場合は、これらの添加剤の一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0103】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、チオエーテル化合物、及びホスファイト化合物が挙げられる。これらの酸化防止剤の中でも、ヒンダードフェノール化合物及びヒンダードアミン化合物が好ましい。
【0104】
(組み合わせ)
感光層3におけるポリアリレート樹脂(2)と、二種類の電子輸送剤との組み合わせとしては、下記表1に示す組み合わせ(j−1)〜(j−9)が好ましい。また、感光層3におけるポリアリレート樹脂(2)と、正孔輸送剤と、二種類の電子輸送剤との組み合わせとしては、下記表2に示す組み合わせ(k−1)〜(k−15)が好ましい。
【0107】
[3.中間層]
上述したように感光体1は、中間層4(例えば、下引き層)を有してもよい。中間層4は、例えば、無機粒子、及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層4を介在させると、リークを抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体1を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、電気抵抗の上昇を抑えることができる。
【0108】
無機粒子としては、例えば、金属(より具体的には、アルミニウム、鉄、銅等)の粒子、金属酸化物(より具体的には、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化亜鉛等)の粒子、及び非金属酸化物(より具体的には、シリカ等)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。なお、無機粒子は、表面処理を施してもよい。
【0109】
中間層用樹脂としては、中間層4を形成する樹脂として用いることができれば、特に限定されない。
【0110】
[4.感光体の製造方法]
感光体1の製造方法について説明する。感光体1の製造方法は、例えば、感光層形成工程を有する。感光層形成工程では、感光層3を形成するための感光層用塗布液を調製する。次いで、感光層用塗布液を導電性基体2上に塗布する。次いで、適宜な方法で乾燥することによって、塗布した感光層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去して感光層3を形成する。感光層用塗布液は、例えば、チタニルフタロシアニン(1)と、正孔輸送剤と、二種以上の電子輸送剤と、バインダー樹脂と、溶剤とを含む。このような感光層用塗布液は、チタニルフタロシアニン(1)と、正孔輸送剤と、二種の電子輸送剤と、バインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散させることにより調製する。感光層用塗布液は、必要に応じて各種任意成分を加えてもよい。
【0111】
以下、感光層形成工程の詳細を説明する。感光層用塗布液に含有される溶剤は、感光層用塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できれば、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル、酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの溶剤のうち、非ハロゲン溶剤を用いることが好ましい。
【0112】
感光層用塗布液は、それぞれ各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散器を用いることができる。
【0113】
感光層用塗布液は、各成分の分散性を向上させるために、例えば、界面活性剤を含有してもよい。
【0114】
感光層用塗布液を塗布する方法としては、感光層用塗布液を均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、及びバーコート法が挙げられる。
【0115】
感光層用塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、感光層用塗布液中の溶剤の少なくとも一部を蒸発させ得る方法であれば、特に限定されない。除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、減圧乾燥機等を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
【0116】
なお、感光体1の製造方法は、必要に応じて中間層4を形成する工程等を更に有してもよい。中間層4を形成する工程は、公知の方法を適宜選択することができる。
【0117】
以上説明した第一実施形態に係る感光体は、感度及び耐摩耗性に優れ、かつ転写メモリーを抑制することができるため、種々の画像形成装置で好適に使用できる。
【0118】
<第二実施形態:画像形成装置>
以下、第二実施形態に係る画像形成装置の一態様について、タンデム方式のカラー画像形成装置を例に挙げて説明する。
図4は、第二実施形態に係る画像形成装置の一例を示す図である。第二実施形態に係る画像形成装置100は、像担持体30と、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48とを備える。像担持体30は、第一実施形態に係る感光体である。帯電部42は、像担持体30の表面を帯電する。帯電部42の帯電極性は、正極性である。露光部44は、帯電された像担持体30の表面を露光して、像担持体30の表面に静電潜像を形成する。現像部46は、静電潜像をトナー像として現像する。転写部48は、像担持体30の表面と記録媒体P(被転写体)とを接触させながらトナー像を像担持体30から記録媒体Pへ転写する。以上、第二実施形態に係る画像形成装置100の概要を説明した。
【0119】
第二実施形態に係る画像形成装置100は、鮮明な画像を形成することができ、耐久性に優れ、かつ画像不良を抑制することができる。その理由は、以下のように推測される。第二実施形態に係る画像形成装置100は、像担持体30として第一実施形態に係る感光体を備える。第一実施形態に係る感光体は、感度及び耐摩耗性に優れる。よって、第二実施形態に係る画像形成装置100は、鮮明な画像を形成することができ、かつ耐久性に優れる。また、第一実施形態に係る感光体は、転写メモリーを抑制することができる。よって、第二実施形態に係る画像形成装置100は、例えば後述する画像ゴースト等の画像不良を抑制することができる。以下、転写メモリーに起因する画像ゴーストについて説明する。
【0120】
画像形成プロセスで転写メモリーが発生すると、像担持体30の表面における基準周(連続的に画像が形成される場合の任意の1周)の周回の非露光領域は、基準周の周回の露光領域に比べ、基準周の次周回の帯電時に電位が低下する傾向がある。このため、基準周の非露光領域は、次周回の現像工程において正常時よりも正帯電トナーを引き付け易くなる。その結果、基準周の次周回において、基準周の非画像部(非露光領域)を反映した画像が形成され易い。このような基準周の非画像部を反映した画像が次周回で形成される画像不良が、転写メモリーに起因して発生する画像ゴーストである。
【0121】
図5を参照して、画像ゴーストについて説明する。
図5は、画像ゴーストが発生した画像60を示す図である。画像60は、領域62及び領域64を含む。領域62は像担持体1周分(基準周の1周分)に相当する領域であり、領域64も像担持体1周分(基準周の次周回1周分)に相当する領域である。領域62は画像66を含む。画像66は、正方形状のソリッド画像から構成される。領域64は画像68及び画像69を含む。画像68は、正方形状のハーフトーン画像である。画像69は、領域64における画像68を除いた領域のハーフトーン画像である。なお、領域64の設計画像は、全面一様なハーフトーン画像である。
図5に示すように、画像69は、画像68に比べ画像濃度が濃い。画像69は、領域62の非露光領域を反映し、設計画像濃度より濃くなった画像不良(画像ゴースト)である。
【0122】
以下、
図4を参照して画像形成装置100の各部について詳細に説明する。
【0123】
画像形成装置100は、直接転写方式を採用する。つまり、画像形成装置100では、転写部48が、像担持体30の表面と記録媒体Pとを接触させながらトナー像を記録媒体Pに転写する。通常、直接転写方式を採用する画像形成装置では、像担持体が転写バイアスの影響を受けやすいため、転写メモリーが発生し易い。しかし、第二実施形態に係る画像形成装置100は、像担持体30として第一実施形態に係る感光体を備える。第一実施形態に係る感光体は、転写メモリーを抑制することができる。よって、像担持体30として第一実施形態に係る感光体を備えると、直接転写方式を採用する画像形成装置100であっても、転写メモリーに起因する画像不良が抑制される。
【0124】
画像形成装置100は、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dと、転写ベルト50と、定着部54とを備える。以下、区別する必要がない場合には、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dの各々を、画像形成ユニット40と記載する。
【0125】
画像形成ユニット40は、像担持体30と、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48と、像担持体30の表面を清掃するクリーニング部52とを備える。クリーニング部52は、クリーニングブレードである。通常、クリーニングブレードを備えた画像形成装置では、像担持体とクリーニングブレードとが接触することにより、像担持体が摩擦帯電し易い。そのため、クリーニングブレードを備えた画像形成装置は、摩擦帯電により発生した電荷が像担持体中に残留することによって、転写メモリーが発生し易い。しかし、第二実施形態に係る画像形成装置100は、像担持体30として第一実施形態に係る感光体を備える。第一実施形態に係る感光体は、転写メモリーを抑制することができる。よって、像担持体30として第一実施形態に係る感光体を備えると、クリーニングブレードを備えた画像形成装置100であっても、転写メモリーに起因する画像不良が抑制される。
【0126】
像担持体30は、画像形成ユニット40の中央位置において、矢符方向(反時計回り)に回転可能に設けられる。像担持体30の周囲には、帯電部42を基準として像担持体30の回転方向の上流側から順に、帯電部42、露光部44、現像部46、転写部48、及びクリーニング部52が設けられる。なお、画像形成ユニット40には、除電部(不図示)が更に備えられてもよい。
【0127】
画像形成ユニット40a〜40dの各々によって、転写ベルト50上の記録媒体Pに、複数色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色)のトナー像が順に重ねられる。
【0128】
帯電部42は、帯電ローラーである。帯電ローラーは、像担持体30の表面と接触しながら像担持体30の表面を帯電する。なお、他の接触帯電方式の帯電部としては、例えば、帯電ブラシが挙げられる。また、帯電部は、非接触方式であってもよい。非接触方式の帯電部としては、例えば、コロトロン帯電部、及びスコロトロン帯電部が挙げられる。
【0129】
帯電部42が印加する電圧は、特に限定されない。帯電部42が印加する電圧としては、直流電圧、交流電圧、及び重畳電圧(直流電圧に交流電圧が重畳した電圧)が挙げられ、より好ましくは直流電圧が挙げられる。直流電圧は交流電圧及び重畳電圧に比べ、以下に示す優位性がある。帯電部42が直流電圧のみを印加すると、像担持体30に印加される電圧値が一定であるため、像担持体30の表面を一様に一定電位まで帯電させ易い。また、帯電部42が直流電圧のみを印加すると、感光層の磨耗量が減少する傾向がある。その結果、好適な画像を形成することができる。
【0130】
露光部44は、帯電された像担持体30の表面を露光する。これにより、像担持体30の表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、画像形成装置100に入力された画像データに基づいて形成される。
【0131】
現像部46は、像担持体30の表面にトナーを供給し、静電潜像をトナー像として現像する。現像部46としては、例えば、像担持体30の表面と接触しながら静電潜像をトナー像として現像する現像部を採用することができる。
【0132】
転写ベルト50は、像担持体30と転写部48との間に記録媒体Pを搬送する。転写ベルト50は、無端状のベルトである。転写ベルト50は、矢符方向(時計回り)に回転可能に設けられる。
【0133】
転写部48は、現像部46によって現像されたトナー像を、像担持体30の表面から記録媒体Pへ転写する。像担持体30から記録媒体Pにトナー像が転写されるときに、像担持体30は記録媒体Pと接触している。転写部48としては、例えば、転写ローラーが挙げられる。
【0134】
定着部54は、転写部48によって記録媒体Pに転写された未定着のトナー像を、加熱及び/又は加圧する。定着部54は、例えば、加熱ローラー及び/又は加圧ローラーである。トナー像を加熱及び/又は加圧することにより、記録媒体Pにトナー像が定着する。その結果、記録媒体Pに画像が形成される。
【0135】
以上、第二実施形態に係る画像形成装置の一例について説明したが、第二実施形態に係る画像形成装置は、上述した画像形成装置100に限定されない。例えば、上述した画像形成装置100はタンデム方式の画像形成装置であったが、第二実施形態に係る画像形成装置はこれに限定されず、例えばロータリー方式の画像形成装置であってもよい。また、第二実施形態に係る画像形成装置は、モノクロ画像形成装置であってもよい。この場合、画像形成装置は、例えば画像形成ユニットを1つだけ備えていればよい。また、第二実施形態に係る画像形成装置は、中間転写方式を採用してもよい。第二実施形態に係る画像形成装置が中間転写方式を採用する場合、被転写体は中間転写ベルトに相当する。
【実施例】
【0136】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
【0137】
<実施例及び比較例で用いた材料>
感光層を作製するための材料として、以下の電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、及びバインダー樹脂を準備した。
【0138】
[電荷発生剤]
下記式(CG−1)で表される無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、電荷発生剤(CG−1)と記載する。)と、第一実施形態で述べたY型チタニルフタロシアニン(1)(以下、電荷発生剤(CG−2)と記載する。)とを準備した。
【0139】
【化20】
【0140】
[正孔輸送剤]
正孔輸送剤として、第一実施形態で述べた正孔輸送剤(HT−1)〜(HT−7)を準備した。
【0141】
[電子輸送剤]
電子輸送剤として、第一実施形態で述べた電子輸送剤(ET1−1)、(ET2−1)、(ET3−1)及び(ET6−1)を準備した。電子輸送剤(ET6−1)は、以下の通り合成した。
【0142】
(電子輸送剤(ET6−1)の合成)
反応式(r−a)及び反応式(r−b)で表される反応(以下、反応(r−a)及び(r−b)と記載することがある)に従って、電子輸送剤(ET6−1)を合成した。
【0143】
【化21】
【0144】
反応(r−a)では、化合物(A−1)及び化合物(B−1)を反応させて、化合物(C−1)を得た。詳しくは、化合物(A−1)1.41g(10mmol)、化合物(B−1)1.96g(10mmol)、及び塩化アルミニウム3.96g(30mmol)をニトロベンゼン(30mL)に溶解させた。得られたニトロベンゼン溶液を窒素ガス雰囲気下、80℃で5時間攪拌した。その後、ニトロベンゼン溶液に10%シュウ酸水溶液(100mL)を加えて、クロロホルムで抽出し、蒸留により溶媒を留去して残渣を得た。展開溶媒としてクロロホルムを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで残渣を精製した。これにより、化合物(C−1)が得られた。化合物(C−1)の収量は、1.21gであった。化合物(A−1)からの化合物(C−1)の収率は、60%であった。
【0145】
【化22】
【0146】
反応(r−b)では、化合物(C−1)及び化合物(D−1)を反応させて、電子輸送剤(ET6−1)を得た。詳しくは、化合物(C−1)2.02g(10mmol)及び化合物(D−1)1.4g(10mmol)をピリジン(50mL)に溶解させた。得られたピリジン溶液を室温(25℃)で3時間攪拌した。その後、ピリジン溶液に水100mLを加えて、生じた固体をろ取した。ろ取した固体を、展開溶媒としてクロロホルムを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、電子輸送剤(ET6−1)を1.60g得た。化合物(C−1)からの電子輸送剤(ET6−1)の収率は、50%であった。
【0147】
1H−NMR(プロトン核磁気共鳴分光計)を用いて、電子輸送剤(ET6−1)の
1H−NMRスペクトルを測定した。磁場強度は300MHzに設定した。溶媒として、重水素化クロロホルム(CDCl
3)を使用した。内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を使用した。電子輸送剤(ET6−1)の
1H−NMRスペクトルの化学シフト値を以下に示す。測定された
1H−NMRスペクトルの化学シフト値から、電子輸送剤(ET6−1)の化学構造を確認した。
【0148】
電子輸送剤(ET6−1):
1H−NMR(300MHz,CDCl
3)δ=8.82(d,2H),7.85−7.88(m,1H),7.74−7.75(m,1H),7.61−7.65(m,1H),2.58(t,2H),2.14(s,6H),1.55−1.66(m,2H),1.31−1.45(m,2H),0.95(t,3H)
【0149】
[バインダー樹脂]
第一実施形態で説明したResin(1)〜Resin(7)を準備した。更に、下記化学式(r−1)及び(r−2)で表されるポリアリレート樹脂(以下、それぞれポリアリレート樹脂(r−1)及び(r−2)と記載することがある。)を準備した。
【0150】
【化23】
【0151】
<感光体の作製>
以下に示す方法により感光体(A−1)〜(A−16)及び(B−1)〜(B−4)を作製した。
【0152】
[感光体(A−1)の作製]
電荷発生剤(CG−2)(3質量部)と、Resin(1)100質量部と、正孔輸送剤(HT−1)(50質量部)と、二種の電子輸送剤としての電子輸送剤(ET1−1)(20質量部)及び電子輸送剤(ET2−1)(20質量部)と、溶剤としてのテトラヒドロフラン(800質量部)とをボールミル内に投入した。これらをボールミルにより50時間混合して、材料を溶剤に分散させた。これにより、感光層用塗布液を得た。得られた感光層用塗布液を、導電性基体としてのアルミニウム製のドラム状支持体上に、ディップコート法を用いて塗布した。塗布した感光層用塗布液を100℃で40分間処理して塗膜よりテトラヒドロフランを除去した。これにより、導電性基体上に感光層(膜厚30μm)を備える正帯電単層型電子写真感光体である感光体(A−1)を得た。
【0153】
[感光体(A−2)〜(A−16)及び(B−1)〜(B−4)の作製]
以下の点を変更した以外は、感光体(A−1)の作製と同様の方法で、感光体(A−2)〜(A−16)及び(B−1)〜(B−4)を作製した。
【0154】
(変更点)
感光体(A−1)の作製に用いた電荷発生剤(CG−2)(3質量部)を、表3に示す電荷発生剤(CGM)の種類及び含有量に変更した。感光体(A−1)の作製に用いた正孔輸送剤(HT−1)を、表3に示す正孔輸送剤(HTM)に変更した。感光体(A−1)の作製に用いた電子輸送剤(ET1−1)(20質量部)及び(ET2−1)(20質量部)を、表3に示す電子輸送剤(ETM)の種類及び含有量に変更した。感光体(A−2)〜(A−16)及び(B−1)〜(B−4)の作製に用いたそれぞれの電子輸送剤の合計質量は、感光体(A−1)の作製に用いた電子輸送剤の合計質量と同じであった。感光体(A−1)の作製に用いたバインダー樹脂としてのResin(1)を、表3に示す樹脂に変更した。なお、表3の「バインダー樹脂」におけるr−1及びr−2は、それぞれポリアリレート樹脂(r−1)及び(r−2)を示す。
【0155】
【表3】
【0156】
<感光体の評価>
[感度評価]
感光体(A−1)〜(A−16)及び(B−1)〜(B−4)の各々に対して、感度評価を行った。評価には、画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」)を用いた。この画像形成装置は、直流電圧を印加する接触方式の帯電ローラーを帯電部として備えていた。また、この画像形成装置は、中間転写ベルト状にトナー像を転写する中間転写方式を採用していた。この帯電ローラーは、帯電性ゴム(エピクロルヒドリン樹脂を主たる構成材料とし、そこに導電性カーボンを分散させたもの)で形成されている帯電スリーブを備えていた。
【0157】
まず、画像形成装置に各感光体を装着し、帯電部の帯電電圧を調整し、非露光時の現像部位置に対応する感光体の帯電電位(白紙部電位Vs)を+570V±10Vに設定した。記録媒体としては、京セラドキュメントソリューションズ株式会社販売の「京セラドキュメントソリューションズブランド紙VM−A4」(A4サイズ紙)を用いた。測定環境は、温度23℃かつ湿度50%RHであった。
【0158】
次いで、バンドパスフィルターを用いて、ハロゲンランプの白色光から単色光を取り出した。取り出した単色光は、波長780nm、半値幅20nm、光強度1.16μJ/m
2であった。この単色光で感光体の表面の一部を露光し、現像部位置に対応する感光体の露光領域及び非露光領域について、それぞれ表面電位を測定した。測定された露光領域の表面電位を、露光後電位V
L(単位:+V)とした。露光後電位V
Lは、その絶対値が小さいほど感光体の感度が優れていることを示す。感光体の感度は、露光後電位V
Lが120V以下である場合を良好(A)、露光後電位V
Lが120V超である場合を不十分(B)と判定した。
【0159】
[転写メモリーの評価]
感光体(A−1)〜(A−16)及び(B−1)〜(B−4)の各々に対して、転写メモリーの評価を行った。評価には、上述の感度評価に用いた画像形成装置及び記録媒体を用いた。
【0160】
まず、この画像形成装置に各感光体を装着し、転写バイアスをオフにした時の白紙部電位と転写バイアスをオンにした時の白紙部電位との差を転写メモリー電位として評価した。具体的には、転写バイアスをオフにした状態で、上述の感度評価と同様の方法で取り出した単色光で感光体の表面の一部を露光し、現像部位置に対応する感光体の非露光領域の表面電位を測定した。測定された非露光領域(白紙部)の表面電位を白紙部電位V
1(単位:V)とした。
【0161】
次いで、−2.0kVの転写バイアスを印加し、転写バイアスをオンにした状態で測定したこと以外は、白紙部電位V
1の測定と同様の条件で非露光領域の表面電位を測定した。得られた非露光領域(白紙部)の表面電位を、白紙部電位V
2(単位:V)とした。得られたV
1とV
2とから数式「転写メモリー電位ΔVtc=V
1−V
2」を用いて転写メモリー電位ΔVtc(単位:V)を得た。なお、測定環境は、温度23℃かつ湿度50%RHであった。転写メモリー電位ΔVtcは、その値の絶対値が小さいほど感光体の転写メモリーが抑制されていることを示す。感光体の転写メモリーの抑制は、転写メモリー電位ΔVtcの絶対値が25V未満である場合を良好(A)、25V以上である場合を不十分(B)と判定した。
【0162】
[耐摩耗性の評価]
感光体(A−1)〜(A−16)及び(B−1)〜(B−4)のそれぞれの作製にて調製した感光層用塗布液を、アルミパイプ(直径:78mm)に巻きつけたポリプロピレンシート(厚さ:0.3mm)の外周面に塗布した。塗布した感光層用塗布液を120℃で40分間乾燥させた。これにより、膜厚30μmの感光層が形成された耐摩耗性評価試験用のシートを得た。
【0163】
得られた耐摩耗性評価試験用のシートから、感光層を剥離した。剥離した感光層をウィールS−36(テーバー社製)に貼り付けることで、耐摩耗性評価試験用のサンプルを得た。得られたサンプルをロータリーアブレージョンテスタ(株式会社東洋精機製作所製)にセットし、摩耗輪CS−10(テーバー社製)を用いて、荷重600gfかつ回転速度60rpmの条件で1,000回転させ、耐摩耗性評価試験を実施した。各サンプルの摩耗量(耐摩耗性評価試験前後のサンプルの質量変化)を測定し、この摩耗量に基づいて、感光体の耐摩耗性を評価した。感光体の耐摩耗性は、摩耗量が7.0mgを超える場合を不十分(B)、摩耗量が7.0mg以下である場合を良好(A)と判定した。
【0164】
感光体(A−1)〜(A−16)及び感光体(B−1)〜(B−4)の感度、転写メモリー及び耐摩耗性の評価結果を表4に示す。
【0165】
【表4】
【0166】
表3に示すように、感光体(A−1)〜(A−16)では、感光層が、単層であり、かつチタニルフタロシアニン(1)と、正孔輸送剤と、二種以上の電子輸送剤と、バインダー樹脂とを含有していた。このバインダー樹脂は、ポリアリレート樹脂(2)を含んでいた。
【0167】
表4に示すように、感光体(A−1)〜(A−16)では、感度、転写メモリー電位及び耐摩耗性がいずれも良好であり、かつ画像評価も合格であった。
【0168】
一方、表3に示すように、感光体(B−1)及び(B−2)では、感光層が、ポリアリレート樹脂(2)を含有しなかった。具体的には、感光体(B−1)の感光層が含有するバインダー樹脂は、繰り返し単位(2−1)を有しないポリアリレート樹脂であった。また、感光体(B−2)の感光層が含有するバインダー樹脂は、繰り返し単位(2−2)を有しないポリアリレート樹脂であった。更に、感光体(B−3)では、感光層が電子輸送剤を一種しか含有していた。更に、感光体(B−4)では、感光層がチタニルフタロシアニン(1)を含有していなかった。
【0169】
表4に示すように、感光体(B−1)及び(B−2)は、摩耗減量が7.0mg超であった。感光体(B−3)及び(B−4)は、転写メモリー電位ΔVtcの絶対値が25V以上であり、かつ画像評価が不合格であった。感光体(B−4)は、露光後電位V
Lが120V超であった。
【0170】
以上の結果から明らかなように、感光体(A−1)〜(A−16)は、感光体(B−1)及び(B−2)に比べ、耐摩耗性に優れていた。また、感光体(A−1)〜(A−16)は、感光体(B−3)及び(B−4)に比べ、転写メモリーを抑制できていた。更に、感光体(A−1)〜(A−16)は、感光体(B−4)に比べ、感度に優れていた。