(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記前側回動アーム(1200)の前記後端側と、前記後側回動アーム(1300)の前記前端側とは、前記クローラフレーム(1100)に対して共通の回動支点において回動可能に連結されており、
前記共通の回動支点を中心とした、前記前側回動アーム(1200)と前記後側回動アーム(1300)との間の回動可能範囲を規制する規制部材(1201、1301)が設けられており、
前記付勢部材(1010)は、前記前側回動アーム(1200)と前記後側回動アーム(1300)とを、前記規制部材(1201、1301)による前記規制が作用する方向に付勢する、ことを特徴とする請求項2記載の移植機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の移植機においては、転輪回動アームは、一枚のプレートが左右方向の回動軸により前後に回動する構成であるので、石等を噛んで前後に配置された転輪の内の一方の転輪に負荷がかかっても、転輪回動アームが回動できない状態であれば、石等が詰まった状態が続き、走行クローラが負荷で破損したり、駆動がロックされて走行停止してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来の移植機のこの様な課題に鑑みて、クローラ装置が石等を噛んだ場合でも、クローラ装置にかかる負荷を軽減することが出来る移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明は、
走行車体(100)に設けられたクローラ装置(1000)と、
前記走行車体(100)に設けられ、移植対象物を畝に植え付ける植付装置(700)と、を備え、
前記クローラ装置(1000)は、
少なくとも駆動輪(1400)が回動可能に装着されたクローラフレーム(1100)と、
前後方向にそれぞれ配置された複数の転輪(1510、1520)が回動可能に装着され、前記クローラフレーム(1100)に連結された転輪回動部材(1200、1300)と、
少なくとも前記駆動輪(1400)及び前記複数の転輪(1510、1520)に巻き掛けられたクローラベルト(1700)と、を有し、
前記転輪回動部材(1200、1300)に装着された前記複数の転輪(1510、1520)の前後間隔は、変化可能であり、
前記複数の転輪(1510、1520)の数は、2つであり、
前記前後方向に配置された前記2つの転輪(1510、1520)は、前記クローラベルト(1700)を接地させる接地転輪(1510、1520)であり、
前記クローラベルト(1700)の内周面には、複数の突起部(1710)が形成されており、
少なくとも前記前後方向に配置された前記2つの接地転輪(1510、1520)の内側又は外側には、それぞれプーリ(3200)が設けられており、
それぞれの前記プーリ(3200)には、所定のベルト(3100)が巻き掛けられており、
前記所定のベルト(3100)の外周側には、連続的に又は不連続的にリブ状部材(3110)が立設されており、
前記リブ状部材(3110)は、前記クローラベルト(1700)の内、少なくとも接地している範囲の前記クローラベルト(1700)に位置する前記突起部同士の前後間の隙間の全部又は一部と、側面視でオーバーラップする、ことを特徴とする移植機である。
第2の本発明は、
前記転輪回動部材(1200、1300)は、
前記2つの転輪(1510、1520)の内、前側の転輪(1510)を前端側で回動可能に支持すると共に後端側で前記クローラフレーム(1100)に回動可能に連結された前側回動アーム(1200)と、
前記2つの転輪(1510、1520)の内、後側の転輪(1520)を後端側で回動可能に支持すると共に前端側で前記クローラフレーム(1100)に回動可能に連結された後側回動アーム(1300)と、を有し、
前記前側回動アーム(1200)と前記後側回動アーム(1300)とは、付勢部材(1010)により連結されている、ことを特徴とする第1の本発明の移植機である。
第3の本発明は、
前記前側回動アーム(1200)の前記後端側と、前記後側回動アーム(1300)の前記前端側とは、前記クローラフレーム(1100)に対して共通の回動支点において回動可能に連結されており、
前記共通の回動支点を中心とした、前記前側回動アーム(1200)と前記後側回動アーム(1300)との間の回動可能範囲を規制する規制部材(1201、1301)が設けられており、
前記付勢部材(1010)は、前記前側回動アーム(1200)と前記後側回動アーム(1300)とを、前記規制部材(1201、1301)による前記規制が作用する方向に付勢する、ことを特徴とする第2の本発明の移植機である。
第4の本発明は、
前記2つの転輪(1510、1520)より上方に配置された上側転輪(1600)と、
先端部側に前記上側転輪(1600)を回動可能に連結し、基部側を前記クローラフレーム(1100)に連結した上側可動アーム(1620)と、を備え、
前記上側可動アーム(1620)は、前記基部側と前記先端部側とを繋ぐ方向に沿って伸縮可能である、ことを特徴とする第1乃至3の何れか一つの本発明の移植機である。
本発明に関連する第1の発明は、走行車体(100)に設けられたクローラ装置(1000)と、
前記走行車体(100)に設けられ、移植対象物を畝に植え付ける植付装置(700)と、を備え、
前記クローラ装置(1000)は、
少なくとも駆動輪(1400)が回動可能に装着されたクローラフレーム(1100)と、
前後方向にそれぞれ配置された複数の転輪(1510、1520)が回動可能に装着され、前記クローラフレーム(1100)に連結された転輪回動部材(1200、1300)と、
少なくとも前記駆動輪(1400)及び前記複数の転輪(1510、1520)に巻き掛けられたクローラベルト(1700)と、を有し、
前記転輪回動部材(1200、1300)に装着された前記複数の転輪(1510、1520)の前後間隔は、変化可能である、ことを特徴とする移植機である。
【0009】
本発明に関連する第2の発明は、前記複数の転輪(1510、1520)の数は、2つであり、
前記転輪回動部材(1200、1300)は、
前記2つの転輪(1510、1520)の内、前側の転輪(1510)を前端側で回動可能に支持すると共に後端側で前記クローラフレーム(1100)に回動可能に連結された前側回動アーム(1200)と、
前記2つの転輪(1510、1520)の内、後側の転輪(1520)を後端側で回動可能に支持すると共に前端側で前記クローラフレーム(1100)に回動可能に連結された後側回動アーム(1300)と、を有し、
前記前側回動アーム(1200)と前記後側回動アーム(1300)とは、付勢部材(1010)により連結されている、ことを特徴とする上記
本発明に関連する第1の発明の移植機である。
【0010】
本発明に関連する第3の発明は、前記前側回動アーム(1200)の前記後端側と、前記後側回動アーム(1300)の前記前端側とは、前記クローラフレーム(1100)に対して共通の回動支点において回動可能に連結されており、
前記共通の回動支点を中心とした、前記前側回動アーム(1200)と前記後側回動アーム(1300)との間の回動可能範囲を規制する規制部材(1201、1301)が設けられており、
前記付勢部材(1010)は、前記前側回動アーム(1200)と前記後側回動アーム(1300)とを、前記規制部材(1201、1301)による前記規制が作用する方向に付勢する、ことを特徴とする上記
本発明に関連する第2の発明の移植機である。
【0011】
本発明に関連する第4の発明は、前記複数の転輪(1510、1520)より上方に配置された上側転輪(1600)と、
先端部側に前記上側転輪(1600)を回動可能に連結し、基部側を前記クローラフレーム(1100)に連結した上側可動アーム(1620)と、を備え、
前記上側可動アーム(1620)は、前記基部側と前記先端部側とを繋ぐ方向に沿って伸縮可能である、ことを特徴とする上記
本発明に関連する第1乃至第3の何れか一つの発明の移植機である。
【0012】
本発明に関連する第5の発明は、前記前後方向に配置された前記2つの転輪(1510、1520)は、前記クローラベルト(1700)を接地させる接地転輪(1510、1520)であり、
前記クローラベルト(1700)の内周面には、複数の突起部(1710)が形成されており、
少なくとも前記前後方向に配置された前記2つの接地転輪(1510、1520)の内側又は外側には、それぞれプーリ(3200)が設けられており、
それぞれの前記プーリ(3200)には、所定のベルト(3100)が巻き掛けられており、
前記所定のベルト(3100)の外周側には、連続的に又は不連続的にリブ状部材(3110)が立設されており、
前記リブ状部材(3110)は、前記クローラベルト(1700)の内、少なくとも接地している範囲の前記クローラベルト(1700)に位置する前記突起部同士の前後間の隙間の全部又は一部と、側面視でオーバーラップする、ことを特徴とする上記
本発明に関連する第1乃至第4の何れか一つの発明の移植機である。
【0013】
本発明に関連する第6の発明は、前記走行車体(100)の前側に設けられたゲージ輪機構(5000)を備え、
前記ゲージ輪機構(5000)は、
ゲージ輪(110)と、
前記ゲージ輪(110)を前端部で回動可能に支持する第1支持アーム(5100)と、
前記走行車体(100)の下部側に基部が連結され、前記第1支持アーム(5100)の後端部を回動可能に支持する先端部が接地面側に向けて前下がりの傾斜姿勢を成して突き出した第2支持アーム(5200)と、を有し、
前記第1支持アーム(5100)の後端部は、前記前下がりの傾斜姿勢と同じ傾斜姿勢の回動軸(5130)を介して、前記第2支持アーム(5200)の前記先端部に連結されており、
前記回動軸(5130)の前記前下がりの傾斜姿勢を成した軸線と地面との交点は、前記ゲージ輪(110)と前記地面との接地点よりも、側面視で前側に位置する、ことを特徴とする上記
本発明に関連する第1乃至第5の何れか一つの発明の移植機である。
【0014】
本発明に関連する第7の発明は、前記第2支持アーム(5200)の前記先端部には、前記第1支持アーム(5100)の前記後端部の左右両側を囲む様に、前記先端部の左右両側から前方に突き出した左右突起部(5221a)を有する突き出しアーム部(5221)が設けられており、
前記突き出しアーム部(5221)の前記左右突起部(5221a)には、前記第1支持アーム(5100)の回動範囲を規制するストッパー部材(5221b)が位置調整可能に装着されている、ことを特徴とする上記
本発明に関連する第6の発明の移植機である。
【発明の効果】
【0015】
第1の本発明によれば、例えば、クローラ装置(1000)が石等を噛んだ場合において、クローラ装置に過負荷がかかりそうになった際に、転輪の前後間隔が自動的に変化することにより、クローラ装置にかかる負荷を軽減することが出来る。
さらに、クローラベルト(1700)の内、前後に配置された転輪が接地する地面に近い領域において、クローラベルト(1700)の突起部同士の前後間の隙間の全部又は一部を、所定のベルト(3100)のリブ状部材で覆うことにより、その隙間へ石等が入り込むことを防止することが出来るので、クローラ装置の過負荷による破損や、石等によりロックしてクローラ装置が停止することが防止される。
第2の本発明によれば、第1の本発明の効果に加えて、前後方向に配置された前側の転輪と後側の転輪とが、それぞれ前側回動アーム(1200)と後側回動アーム(1300)とにより、クローラフレーム(1100)に対して回動可能に連結されているので、クローラ装置(1000)が石等を噛んだ場合において、クローラ装置に過負荷がかかりそうになった際に、転輪の前後間隔が自動的に変化し、クローラベルト(1700)にかかる張力が変わるので、過負荷による破損や、石噛みによるクローラ装置の停止が防止される。
第3の本発明によれば、第2の本発明の効果に加えて、前側回動アーム(1200)と後側回動アーム(1300)との間の回動可能範囲を規制する規制部材(1201、1301)が設けられ、付勢部材(1010)は、前側回動アーム(1200)と後側回動アーム(1300)とを、規制部材(1201、1301)による規制が作用する方向に付勢する構成としたことにより、クローラ装置(1000)に過負荷がかからない状態では転輪の前後間隔を一定に保つことが出来るので、走行性が安定する。
また、クローラ装置に過負荷がかかることで付勢部材(1010)による付勢力に対抗する方向に前側回動アーム(1200)と後側回動アーム(1300)とが回動し得るので、転輪の前後間隔が自動的に変更されて、クローラ装置にかかる負荷を軽減することが出来、クローラ装置の耐久性が向上する。
第4の本発明によれば、第1乃至第3の何れか一つの本発明の効果に加えて、クローラ装置に更に別の過負荷がかかった場合でも、上側可動アーム(1620)がクローラフレーム(1100)に対して伸縮可能に連結されているので、クローラ装置の破損やロックを防止出来る。
また、前後に配置された転輪が石等を噛んだ場合において、転輪の前後間隔が自動的に変化した際のクローラベルト(1700)の張力の変化を、クローラフレーム(1100)に対して伸縮可能に連結されている上側可動アーム(1620)により吸収し得るので、クローラベルト(1700)が外れることを防止することが出来る。
本発明に関連する第1の発明によれば、例えば、クローラ装置(1000)が石等を噛んだ場合において、クローラ装置に過負荷がかかりそうになった際に、転輪の前後間隔が自動的に変化することにより、クローラ装置にかかる負荷を軽減することが出来る。
【0016】
本発明に関連する第2の発明によれば、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、前後方向に配置された前側の転輪と後側の転輪とが、それぞれ前側回動アーム(1200)と後側回動アーム(1300)とにより、クローラフレーム(1100)に対して回動可能に連結されているので、クローラ装置(1000)が石等を噛んだ場合において、クローラ装置に過負荷がかかりそうになった際に、転輪の前後間隔が自動的に変化し、クローラベルト(1700)にかかる張力が変わるので、過負荷による破損や、石噛みによるクローラ装置の停止が防止される。
【0017】
本発明に関連する第3の発明によれば、本発明に関連する第2の発明の効果に加えて、前側回動アーム(1200)と
後側回動アーム(1300)との間の回動可能範囲を規制する規制部材(1201、1301)が設けられ、付勢部材(1010)は、前側回動アーム(1200)と後側回動アーム(1300)とを、規制部材(1201、1301)による規制が作用する方向に付勢する構成としたことにより、クローラ装置(1000)に過負荷がかからない状態では転輪の前後間隔を一定に保つことが出来るので、走行性が安定する。
【0018】
また、クローラ装置に過負荷がかかることで付勢部材(1010)による付勢力に対抗する方向に前側回動アーム(1200)と後側回動アーム(1300)とが回動し得るので、転輪の前後間隔が自動的に変更されて、クローラ装置にかかる負荷を軽減することが出来、クローラ装置の耐久性が向上する。
【0019】
本発明に関連する第4の発明によれば、本発明に関連する第1乃至第3の何れか一つの発明の効果に加えて、クローラ装置に更に別の過負荷がかかった場合でも、上側可動アーム(1620)がクローラフレーム(1100)に対して伸縮可能に連結されているので、クローラ装置の破損やロックを防止出来る。
【0020】
また、前後に配置された転輪が石等を噛んだ場合において、転輪の前後間隔が自動的に変化した際のクローラベルト(1700)の張力の変化を、クローラフレーム(1100)に対して伸縮可能に連結されている上側可動アーム(1620)により吸収し得るので、クローラベルト(1700)が外れることを防止することが出来る。
【0021】
本発明に関連する第5の発明によれば、第2乃至第4の何れか一つの発明の効果に加えて、クローラベルト(1700)の内、前後に配置された転輪が接地する地面に近い領域において、クローラベルト(1700)の突起部同士の前後間の隙間の全部又は一部を、所定のベルト(3100)のリブ状部材で覆うことにより、その隙間へ石等が入り込むことを防止することが出来るので、クローラ装置の過負荷による破損や、石等によりロックしてクローラ装置が停止することが防止される。
【0022】
本発明に関連する第6の発明によれば、本発明に関連する第1乃至第5の何れか一つの発明の効果に加えて、前下がりの傾斜(キャスター角)を付けて第2支持アーム(5200)を配置したことにより、機体重量をゲージ輪(110)にかけ、ゲージ輪を地面に対して鉛直姿勢とすることができるので、平坦な場所を走行するときには第1支持アーム(5100)が回動することが防止され、直進性が向上する。
【0023】
また、第1支持アーム(5100)の回動により、地面が機体に対して左右傾斜している時などには、ゲージ輪(110)にキャンバ角を付けて、所謂ポジティブキャンバとすると、畝と畝溝の境目近く、即ち畝の法面の下端部付近にゲージ輪の接地部が接触するので、畝に沿わせることが出来て、傾斜地でも走行性が低下しにくくなる。
【0024】
本発明に関連する第7の発明によれば、本発明に関連する第6の発明の効果に加えて、突き出しアーム部(5221)に装着されたストッパー部材(5221b)により、第1支持アーム(5100)の回動の範囲を規制することにより、ゲージ輪(110)のキャンバ角が過度について走行の抵抗になることや、ゲージ輪(110)が接地しなくなり機体の姿勢が乱れることが防止される。
【0025】
また、ストッパー部材(5221b)による規制位置を調整自在としたことにより、圃場の作業条件に合わせてゲージ輪(110)の回動量を変更出来るので、走行性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の移植機の一実施の形態の野菜移植機について、図面を用いて説明する。
【0028】
まず、
図1、
図2を用いて、本実施の形態の野菜移植機1の構成を中心に説明する。
【0029】
ここに、
図1は、本発明における実施の形態の野菜移植機1の左側面図であり、
図2は、本発明における実施の形態の野菜移植機1の平面図である。
【0030】
本実施の形態の野菜移植機1は、
図1、
図2に示す様に、走行車体100、エンジン200、操作部400、トレー供給装置500、苗取出装置600、植付装置700、鎮圧輪機構800、およびクローラ装置1000などを備える。クローラ装置1000については、
図3を用いて更に後述する。
【0031】
走行車体100の前部下方には、左右一対のゲージ輪110が配置されている。
【0032】
操作部400は、作業者が走行車体100の後方を歩きながら走行車体の操向操作を行うための操縦ハンドル120の中央部に配置されており、昇降操作レバー410などを有する。
【0033】
植付深さ調節機構140は、車高を調節することによって移植物の一例である野菜の苗の植付深さを一定に保つためのセンサー板141を有する機構である。
【0034】
トレー供給装置500は、苗を収容する多数の育苗ポットが縦方向および横方向に形成されたトレーを供給する装置である。
【0035】
走行車体100の後部下方には、左右一対のクローラ装置1000とともに、植付具710を軌跡Tに沿って移動させ、苗取出装置600によって育苗ポットから取出された苗を植付ける植付装置700などが配置されている。
【0036】
鎮圧輪機構800は、植付けられた苗の周辺の土壌に鎮圧荷重を負荷することによって土壌を鎮圧する機構である。
【0037】
次に、クローラ装置1000について、
図3を用いて説明する。
【0038】
図3は、クローラ装置1000の左側面図である。
【0039】
なお、クローラ装置1000は、走行車体100の下方の左右にそれぞれ配置されているが、双方とも同じ構成であるので、ここでは、走行車体100の下方左側に配置されたクローラ装置1000について説明し、走行車体100の下方右側に配置されたクローラ装置1000についての説明は省略する。
【0040】
即ち、本実施の形態のクローラ装置1000は、
図3に示す様に、クローラフレーム1100と、前側回動アーム1200と、後側回動アーム1300と、駆動輪1400と、前側回動アーム1200の前端部1210に回動可能に装着された前側接地転輪1510と、後側回動アーム1300の後端部1310に回動可能に装着された後側接地転輪1520と、従動輪1600と、圧縮スプリング1010と、クローラベルト1700とを有している。
【0041】
クローラベルト1700は、駆動輪1400、前側接地転輪1510、後側接地転輪1520、及び従動輪1600に巻き掛けられている。また、クローラベルト1700の内周面の幅方向中央部には、複数個の突起部1710が所定間隔をあけて長手方向に沿って形成されている。
【0042】
駆動輪1400は、クローラフレーム1100の前端側に回動可能に装着されており、従動輪1600は、クローラフレーム1100の後端部上側に回動可能に装着されている。また、クローラフレーム1100の後端部下側に左外側に向けて立設固定された転輪回動軸1020に対して、前側回動アーム1200の第1基部1220と後側回動アーム1300の第2基部1320とが、回動可能に連結されている。
【0043】
また、前側回動アーム1200の第1基部1220の外周縁部の上面側には上方に向けて突き出した回動規制用突起部1201が形成されており、後側回動アーム1300の第2基部1320の近傍には、回動規制用突起部1201の前側縁部と当接可能な円柱状の回動規制用ピン1301が左外側に向けて立設固定されている。
【0044】
また、圧縮スプリング1010は、前側回動アーム1200の中央部1230の上端縁部と、後側回動アーム1300の第2基部1320から前方に向けて伸びた延長第2基部1330の下端縁部との間に配置されている。
【0045】
そして、圧縮スプリング1010が伸びようとする復元力の作用により、前側回動アーム1200と後側回動アーム1300は、それらの成す角度θが小さくなる方向に回動しようとするが、最終的には、回動規制用突起部1201と回動規制用ピン1301とが互いに当接しあった位置でそれ以上の回動が規制されることで、前側回動アーム1200と後側回動アーム1300とが側面視で略ハの字を成す様に位置し、前側接地転輪1510の回動軸芯と後側接地転輪1520の回動軸芯との前後間隔が一定に保たれる様に構成されている。
【0046】
これにより、前側接地転輪1510及び後側接地転輪1520の何れにも過負荷がかからない状態では双方の接地転輪の前後間隔を一定に保つことが出来るので、走行性が安定する。
【0047】
また、前側接地転輪1510及び後側接地転輪1520の少なくとも何れか一方とクローラベルト1700との間に石等が挟まって過負荷がかかると、圧縮スプリング1010による復元力(付勢力)に対抗する方向に、即ち、前側回動アーム1200と後側回動アーム1300の成す角度θが大きくなる方向に前側回動アーム1200及び後側回動アーム1300の少なくとも何れか一方が回動し得るので、双方の接地転輪の前後間隔が自動的に広がる方向に変更されて、クローラベルト1700等にかかる負荷が軽減され、挟まっていた石等が外れやすくなるので、クローラ装置1000の耐久性が全体として向上する。
【0048】
また、野菜移植機1がクローラ装置1000を下向きにして落下したような場合は、クローラ装置1000が接地すると同時に、圧縮スプリング1010による復元力(付勢力)に対抗する方向に、即ち、前側回動アーム1200と後側回動アーム1300の成す角度θが大きくなる方向に前側回動アーム1200及び後側回動アーム1300の少なくとも何れか一方が回動し得るので、双方の接地転輪の前後間隔が自動的に広がる方向に変更されて、落下による衝撃が緩和される。
【0049】
なお、エンジン200から出力される回転動力の一部は、走行伝動ケース300及び走行伝動ケース出力軸310を介して、駆動輪1400に伝達される。また、クローラフレーム1100の前端側は、昇降操作レバー410の切替え操作、および植付時におけるセンサー板141の上下動に応じた油圧昇降シリンダー機構130(
図1参照)の伸縮にともなって、走行伝動ケース出力軸310の周りに上下方向に回動可能に構成されている。即ち、クローラ装置1000は、走行伝動ケース出力軸310の周りに上下方向に回動可能である。また、先端部にゲージ輪110を回動可能に取り付けたゲージ輪支持アーム111の後端部は、クローラ装置1000の上下方向への回動動作に連動して車高を上げ下げ出来る様に、走行車体100の下方側において回動可能に連結されている。
【0050】
なお、本実施の形態の前側接地転輪1510と後側接地転輪1520は、本発明の複数の転輪の一例にあたる。また、本実施の形態の前側回動アーム1200と後側回動アーム1300とを包括する構成は、本発明の転輪回動部材の一例にあたる。また、本実施の形態の圧縮スプリング1010は、本発明の付勢部材の一例にあたる。また、本実施の形態の回動規制用突起部1201と回動規制用ピン1301とを包括する構成は、本発明の規制部材の一例にあたる。
【0051】
なお、上記実施の形態では、本発明の転輪回動部材は、前側回動アーム1200と後側回動アーム1300の2つのアームにより構成されている場合について説明したが、これに限らず例えば、クローラフレーム1100に回動可能に連結された1枚の側面視で略三角形状の板状部材で構成されていても良い。この構成の場合、略三角形状の板状部材の三角形の上側の頂点側がクローラフレーム1100に回動可能に連結されており、前側の頂点側に前側接地転輪1510が回動可能に連結され、後側の頂点側に後側接地転輪1520が回動可能に連結されている。更にこの構成の場合、前側接地転輪1510の回動軸は、略三角形状の板状部材に形成された後上がり姿勢の長孔に装着されたバネ部材によって前後方向に移動可能に保持されており、且つ、後側接地転輪1520の回動軸は、略三角形状の板状部材に形成された前上がり姿勢の長孔に装着されたバネ部材によって前後方向に移動可能に保持されている。これにより、前側接地転輪1510及び後側接地転輪1520の少なくとも何れか一方とクローラベルト1700との間に石等が挟まって過負荷がかかると、バネ部材が変形することで、双方の接地転輪の前後間隔が自動的に変更されて、クローラベルト1700等にかかる負荷が軽減され、挟まっていた石等が外れやすくなるので、クローラ装置1000の耐久性が全体として向上する。
【0052】
また、上記実施の形態では、前側回動アーム1200と後側回動アーム1300の双方の基部が、クローラフレーム1100に対して、同一の転輪回動軸1020を介して回動可能に連結されている場合について説明したが、これに限らず例えば、クローラフレーム1100に対して、回動可能に別々に連結されていても良い。
【0053】
また、上記実施の形態で説明した様に、圧縮スプリング1010、回動規制用突起部1201、及び回動規制用ピン1301を構成した場合について説明したが、これに限らず例えば、引っ張りスプリングを前側回動アーム1200と後側可動アーム1300の成す角度θ(
図3参照)を規定した側に配置しても良い。また、回動規制用突起部1201、及び回動規制用ピン1301の配置についても、上記構成例に限定されるものではなく、上記と同様の効果を発揮出来さえすれば、どこに配置しても良い。
【0054】
また、上記実施の形態では、従動輪1600は、クローラフレーム1100に立設された回動軸に回動可能に連結されている場合について説明したが、これに限らず例えば、
図4(a)に示す様に、アーム基部1621がクローラフレーム1100に固定された、バネ部材1610により矢印A方向に伸縮可能な上側可動アーム1620を更に備え、その上側可動アーム1620のアーム先端部1622に従動輪1600を回動可能に連結した構成としても良い。ここで、
図4(a)は、第2クローラ装置2000を示す概略左側面図である。上述したクローラ装置1000(
図3参照)と同じ構成には同じ符号を付した。
【0055】
これにより、第2クローラ装置2000において、接地転輪が石噛みする等の過負荷がかかる場合以外に、更に別の過負荷がかかった場合でも、上側可動アーム1620がクローラフレーム1100に対して伸縮可能に連結されているので、クローラベルト1700等の破損やロックを防止出来る。
【0056】
また、前後の接地転輪が石等を噛んだ場合において、それら接地転輪の前後間隔が自動的に変化した際のクローラベルト1700の張力の変化を、クローラフレーム1100に対して伸縮可能に連結されている上側可動アーム1620により吸収し得るので、クローラベルト1700が外れる(脱落する)ことを防止することが出来る。
【0057】
また、上記実施の形態では、前側接地転輪1510、後側接地転輪1520、及び従動輪1600は、その回動軸の軸芯方向の幅は固定である場合について説明したが、これに限らず例えば、
図4(b)に示す様に、前側接地転輪1510、後側接地転輪1520、及び従動輪1600を、それぞれ左右に2分割して、内輪部1810と、外輪部1820と、スライド軸1830と、スライド軸1830の両端に配置された、内輪部1810及び外輪部1820をクローラベルト1700の突起部1710側へ付勢する圧縮バネ部材1840とを備えた構成とし、内輪部1810と外輪部1820とを矢印B方向にスライド可能としても良い。ここで、
図4(b)は、左右に2分割された転輪構造を説明するための背面模式図である。
【0058】
これにより、石噛み等によりクローラベルト1700等に過負荷がかかった際に、内輪部1810と外輪部1820の少なくとも何れか一方が、圧縮バネ部材1840の付勢力に対抗してクローラベルト1700の突起部1710から離れる方向(
図4(b)の矢印B参照)に移動するので、内輪部1810と外輪部1820との間に通常時より大きな隙間Wが生じて、石等が外れやすくなり、クローラ装置の破損やロックを防止出来る。
【0059】
また、上記実施の形態では、前側接地転輪1510や後側接地転輪1520とクローラベルト1700との間に石等が挟まって過負荷がかかった際に、前側接地転輪1510と後側接地転輪1520との前後間隔が自動的に変化する様に構成されている場合について説明したが、これに加えて、
図5(a)、
図5(b)に示す様に、クローラベルト1700の内、少なくとも前後に配置された前側接地転輪1510と後側接地転輪1520が接地する地面に近い領域において、クローラベルト1700の突起部1710同士の前後間の隙間1720の全部又は一部を、隙間塞ぎベルト3100の外周側に立設された隙間塞ぎ突起3110で覆う構成としても良い。この構成の場合、前側接地転輪1510、後側接地転輪1520、及び従動輪1600のそれぞれの内側面又は外側面には、プーリ3200が配置されており、隙間塞ぎベルト3100は、それら3つのプーリ3200に巻き掛けられている。これにより、駆動輪1400からの回動力がクローラベルト1700を介して前側接地転輪1510、後側接地転輪1520、及び従動輪1600に伝達されることで、3つのプーリ3200がそれに同期して回動するので、隙間塞ぎベルト3100の外周側に立設された隙間塞ぎ突起3110が、クローラベルト1700の内、少なくとも前後に配置された前側接地転輪1510と後側接地転輪1520が接地する地面に近い領域においてクローラベルト1700の突起部1710同士の前後間の隙間1720の全部又は一部を覆うので、その隙間1720へ石等の異物が入り込むことを防止出来る。ここで、
図5(a)は、前側接地転輪1510、後側接地転輪1520、及び従動輪1600のそれぞれの外側面に配置されたプーリ3200に隙間塞ぎベルト3100が巻き掛けられた第3クローラ装置3000の概略側面図であり、
図5(b)は、
図5(a)の前側接地転輪1510周辺の概略部分拡大図である。
【0060】
また、この構成の場合、
図5(a)、
図5(b)に示す構成に限らず例えば、従動輪1600にはプーリ3200を設けずに、前側接地転輪1510及び後側接地転輪1520のそれぞれの内側面又は外側面に配置されたプーリ3200に隙間塞ぎベルト3100が巻き掛けられた構成であっても良い。この構成の場合でも、上記と同様の効果を発揮する。
【0061】
また、
図5(a)、
図5(b)に示す構成では、隙間塞ぎベルト3100の外周側において隙間塞ぎ突起3110が飛び飛びに、即ち不連続的に立設配置されている場合について説明したが、これに限らず例えば、石等の異物が入り込まない様に、隣接する隙間塞ぎ突起同士の隙間の幅を極力小さくし、且つプーリ3200に巻き掛けられた部位を通過する際にスムーズな移動を確保するために、隣接する隙間塞ぎ突起同士の間に幅の細いスリット状の切込みを設けただけの隙間塞ぎベルトを構成しても良い。
【0062】
また、上記実施の形態では、ゲージ輪110とクローラ装置1000とを備えた構成について説明したが、これに限らず例えば、ゲージ輪110を廃止して、フルクローラ構成としても良い。これにより直進性が向上する。また、この構成の場合、例えば、
図6(a)に示す第4クローラ装置4000は、走行車体100の下方に回動可能に取り付けられた前輪アーム4100の上端部には前上側転輪4110を、また、下端部には前下側転輪4120を、それぞれ回動可能に配置している。また、第4クローラ装置4000には、油圧昇降シリンダー機構130(
図1参照)の伸縮にともなって走行伝動ケース出力軸310の周りに上下方向に回動可能に構成された後輪ステー4200と、前側接地転輪1510と後側接地転輪1520を前後に配置すると共に、後輪ステー4200に対して回動軸4310を介して矢印D方向(
図6(a)参照)に回動可能に連結された略三角形状の接地転輪回動プレート4300とが、設けられている。また、後輪ステー4200に形成された長孔4210と当該長孔4210に配置された圧縮バネ4220により、接地転輪回動プレート4300の上端部に左右方向に立設された回動軸4310が長孔4210に沿って矢印C方向(
図6(a)参照)にスライド移動可能に構成されている。これにより、例えば、前側接地転輪1510や後側接地転輪1520が石等を噛み込むなどして第4クローラ装置4000に過負荷がかかった場合に、接地転輪回動プレート4300が矢印C方向に伸縮するので、クローラベルト1700等にかかる負荷が軽減され、挟まっていた石等が外れやすくなる。ここで、
図6(a)は、第4クローラ装置4000の概略構成を説明するための概略左側面図である。
【0063】
また、この構成の場合、
図6(a)に示す様に、前輪アーム4100と後輪ステー4200とを連結リンク4400で連結しても良い。即ち、この構成の場合、連結リンク4400の一端側が伸縮(摺動)可能であり、前輪アーム4100と後輪ステー4200の間に連結リンク4400の各端部を各々固定し、前輪アーム4100または後輪ステー4200が回動すると、他方が連結リンク4400の伸縮により回動する様にすれば良い。これにより、比較的タイムラグを小さくしつつ前輪アーム4100と後輪ステー4200を回動させて機体高さを昇降できる。
【0064】
また、
図6(a)に示す第4クローラ装置4000において、連結リンク4400に代えて、前輪アーム4100と接地転輪回動プレート4300とを連結した跳ね上げリンク4500を設けた構成としても良い。この構成により、リフトアップの為に車高を高くする場合、油圧昇降シリンダー機構130(
図1参照)が作動して、後輪ステー4200が走行伝動ケース出力軸310を軸芯として矢印E方向(
図6(b)参照)に回動すると、接地転輪回動プレート4300は、跳ね上げリンク4500による矢印F方向(
図6(b)参照)の力を受けて、回動軸4310を回動軸芯として矢印G方向(
図6(b)参照)に回動し、後側接地転輪1520が上昇して前側接地転輪1510が接地した状態となる。これにより、圃場において、作業者が、前側接地転輪1510を支点として操縦ハンドル120を押し下げて、走行車体100の前側を上方にリフトアップさせて機体を旋回させる場合、後側接地転輪1520を支点とするよりも、支点が機体の重心に近い位置にあるので、てこの原理で小さい荷重で操縦ハンドル120を押し下げることが出来て旋回させ易い。ここで、
図6(b)は、第4クローラ装置4000の連結リンク4400に代えて跳ね上げリンク4500を設けた場合の概略構成を説明するための概略左側面図であり、クローラベルト1700の図示を省略した。
【0065】
また、上記実施の形態では、先端部にゲージ輪110が回動可能に取り付けられ、走行車体100の下方側に後端部が回動可能に連結されたゲージ輪支持アーム111は、当該先端部から当該後端部に至るまで一体的に構成されており、正面視で、ゲージ輪110の上部が外側又は内側に傾くことが無い構成について説明したが、これに限らず例えば、正面視で、ゲージ輪110の上部が外側又は内側に傾くことが可能なゲージ輪機構5000(
図7(a)、
図7(b)参照)を備えた構成としても良い。ここで、
図7(a)は、ゲージ輪機構5000を説明するための概略左側面図であり、
図7(b)は、ゲージ輪機構5000を
図7(a)に示す矢印H方向から見たときの概略図である。
図1乃至
図6で既に説明した構成と同じものには同じ符号を付した。なお、ゲージ輪機構5000は走行車体100の左右両側に設けられており、双方の構造は同じであるので、ここでは、左側のゲージ輪機構5000について説明する。
【0066】
即ち、ゲージ輪機構5000は、
図7(a)、
図7(b)に示す様に、(1)ゲージ輪110と、(2)ゲージ輪110を前端部5110で回動可能に左右両側から支持する第1支持アーム5100と、(3)走行車体100の下部側に設けられた支持部材101に対して基部5210が回動可能に連結され、第1支持アーム5100の後端部5120を当該後端部5120から突出したキャンバ角回動軸5130を介して回動可能に支持する先端部5220が接地面側に向けて前下がりの傾斜姿勢を成して突き出した第2支持アーム5200と、を有している。
【0067】
即ち、第1支持アーム5100の後端部5120は、前下がりの傾斜姿勢と同じ傾斜姿勢のキャンバ角回動軸5130が、第2支持アーム5200の先端部5220に設けられた穴部5230に回動可能に挿入されて連結されている。
【0068】
また、車高が通常高さの場合において、キャンバ角回動軸5130の前下がりの傾斜姿勢を成した軸線5131と地面との交点5131aは、ゲージ輪110と地面との接地点110aよりも、側面視で前側に位置する様にキャスター角Φ(
図7(a)参照)が設定されている。
【0069】
この様にキャスター角Φが設定されていることにより、機体重量をゲージ輪110にかけ、ゲージ輪110を地面に対して鉛直姿勢とすることができるので、平坦な場所を走行するときには第1支持アーム5100が軸線5131の直線上に位置するキャンバ角回動軸5130を回動軸芯として回動することが防止され、直進性が向上する。
【0070】
また、第1支持アーム5100が軸線5131の直線上に位置するキャンバ角回動軸5130を回動軸芯として回動可能に構成されていることにより、地面が機体に対して左右傾斜している時などには、
図8に示す様に、ゲージ輪110にキャンバ角を付けて畝900に沿わせることが出来るので、傾斜地でも走行性が低下しにくくなる。即ち、左右のゲージ輪110の接地部分が互いに機体内側に傾斜して、正面視で略逆ハの字状の所謂ポジティブキャンバとすると、畝と畝溝の境目近く、つまり畝の法面910の下端部付近に左右のゲージ輪110の接地部が接触するので、傾斜地でも畝900に沿った走行をし易くなる。ここで、
図8は、左右のゲージ輪110の接地部分が互いに機体内側に傾斜している状態を示す概略正面模式図である。
【0071】
また、第2支持アーム5200の先端部5220には、第1支持アーム5100の後端部5120の下部の左右両側を囲む様に、先端部5220の左右両側から前方に突き出した左右突起部5221aを有する突き出しアーム部5221が設けられている。
【0072】
また、突き出しアーム部5221の左右突起部5221aには、軸線5131を回動軸芯とした第1支持アーム5100の回動範囲(即ち、キャンバ角の範囲)を規制するストッパー用ボルト5221bが位置調整可能に装着されている。即ち、ストッパー用ボルト5221bの先端部の、第1支持アーム5100の後端部5120側への突き出し寸法を変更することが出来る構成である。
【0073】
上記構成によれば、突き出しアーム部5221に装着されたストッパー用ボルト5221bの位置調整により、軸線5131を回動軸芯とした第1支持アーム5100の回動の範囲を規制することにより、ゲージ輪110のキャンバ角が過度について走行の抵抗になることや、ゲージ輪110が接地しなくなり機体の姿勢が乱れることが防止される。
【0074】
また、ストッパー用ボルト5221bによる規制位置を調整自在としたことにより、圃場の作業条件に合わせて第1支持アーム5100の回動量を変更出来るので、走行性が向上する。
【0075】
また、リフト時に車高を高くした場合、クローラフレーム1100の前端側は、油圧昇降シリンダー機構130(
図1参照)の作動にともなって、走行伝動ケース出力軸310の周りに下方向(
図7(a)中では時計回りの方向)に回動すると、これに連動して、第2支持アーム5200が支持部材101を回動中心として下方向(
図7(a)中では反時計回りの方向)に回動することにより、キャンバ角回動軸5130の軸線5131と、走行伝動ケース出力軸310の軸芯を通るクローラフレーム1100の第2軸線1101との成す車高角ω(
図7(a)参照)が小さくなる。その結果、キャスター角Φ(
図7(a)参照)が小さくなり、キャンバ角回動軸5130の軸線5131と地面との交点5131aは、ゲージ輪110と地面との接地点110aよりも、側面視で後側に移動する。
【0076】
その結果、傾斜地で谷側がリフトすると、軸線5131の直線上に位置するキャンバ角回動軸5130を回動軸芯としてゲージ輪110が回動し、内側に舵をとる。このため、谷側のゲージ輪110が畝面に食い込む状態になり、谷側へ向かって機体が自重で流れていくことが防止され、機体を苗の植付位置に合わせて移動させ直す労力が不要となる。
【0077】
次に、乗用野菜移植機2のフロアステップ50の構成について、
図9(a)〜
図9(c)を用いて説明する。
【0078】
図9(a)は、乗用野菜移植機2のフロアステップ50周辺の要部拡大概略斜視図であり、
図9(b)は、フロアステップ50を構成する板状部材の部分側面図であり、
図9(c)は、
図9(a)の破線で囲んだJ部の拡大概略斜視図である。
【0079】
乗用野菜移植機2は、
図9(a)に示す様に、移植対象物の野菜の苗が投入される複数のポットが平面視で略楕円形状に回転移動可能に配置されたターンテーブル60が機体の後部に配置されており、その前側にはポットに苗を供給する作業者用の座席70が配置されている。
【0080】
フロアステップ50は、
図9(a)に示す様に、2種類の短冊状の長板部材を適宜所定長さに切断したものを格子状に組み合わせて構成されている。なお、2種類の短冊状の長板部材は着脱可能な構成としても良い。また、2種類の短冊状の長板部材は、金属製であっても良いし、樹脂製であっても良い。
【0081】
即ち、2種類の短冊状の長板部材としては、
図9(b)に示す様に、互いに格子状に組み合わせが可能な様に、下面側に一定間隔ごとに下側スリット51aが形成された所定長さの第1長板部材51と、上面側に一定間隔ごとに上側スリット52aが形成された所定長さの第2長板部材52とから構成されている。第1長板部材51と第2長板部材52は、上端縁部に滑り止め用の凹凸部が形成されている。
【0082】
所定長さの第1長板部材51と第2長板部材52を、所定形状の金枠53内において下側スリット51a及び上側スリット52aを嵌合させて格子状に組み合わせることによりフロアステップ50が構成されている。
【0083】
この様に、フロアステップ50が、2種類の短冊状の長板部材を格子状に組み合わせて構成されているので、従来の一枚板の構成に比べて強度の向上が図られる。また、2種類の短冊状の長板部材を着脱可能とすることで、状況に応じて一部だけを取り換えることが可能となり、メンテナンス性が向上する。
【0084】
また、フロアステップ50の外側は、
図9(a)に示す様に、樹脂製カバー80で保護されている。
【0085】
また、フロアステップ50の後端側は、ターンテーブル60の下方から下面側に向けて傾斜しながら立ち上がる様に形成されている。そして、その傾斜部の金枠53の左右中央位置に装着された格子状ガード部54には、左右上部に取っ手54aが取り付けられており、作業者がその取っ手54aを掴んで、格子状ガード部54を金枠53に着脱することが出来る構成である。
【0086】
これにより、格子状ガード部54が容易に取り外せるので、植付ミッション部を露出させることが出来て、メンテナンスが容易に行える。また、格子状ガード部54を取り外すことで、作業者は機体後部に対して容易に手を入れることが可能となり、灌水量を機体上から調節することが出来る。
【0087】
また、上述した様に、フロアステップ50の後端側の格子面は傾斜しているので、作業者が座席70に座った状態で苗の植付けを目視することが出来る。
【0088】
また、上記実施の形態では、移植対象物として野菜の苗を植付ける場合について説明したが、これに限らず例えば、移植対象物は種芋等であっても良い。