特許第6859993号(P6859993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6859993電池外装材、電池、およびそれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859993
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】電池外装材、電池、およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/10 20210101AFI20210405BHJP
【FI】
   H01M2/02 K
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-185384(P2018-185384)
(22)【出願日】2018年9月28日
(65)【公開番号】特開2020-57463(P2020-57463A)
(43)【公開日】2020年4月9日
【審査請求日】2019年6月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雅人
(72)【発明者】
【氏名】東 努
(72)【発明者】
【氏名】冨村 宏紀
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−052100(JP,A)
【文献】 特開2013−107084(JP,A)
【文献】 特開2003−126979(JP,A)
【文献】 特開2002−361457(JP,A)
【文献】 特開2002−079388(JP,A)
【文献】 特開2010−158717(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/159425(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/030918(WO,A1)
【文献】 特許第5740036(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合されたステンレス箔により形成されている、電池要素を収容する電池室と、
前記電池室の周囲の少なくとも一部に配置された接合部と、を有し、
前記接合部は、前記ステンレス箔同士がレーザ溶接されて形成された溶接部を少なくとも一部に含み、
レーザを照射された側の前記ステンレス箔を第1のステンレス箔とし、反対側の前記ステンレス箔を第2のステンレス箔とすると、
前記第1のステンレス箔および前記第2のステンレス箔は、板厚が20μm以上100μm以下であり、
前記溶接部は、該溶接部の延伸方向に垂直な面で切ったときの断面において、
該溶接部の近傍における前記第1のステンレス箔と前記第2のステンレス箔との板間隙間Gが下記式(1)を満足するとともに、
前記第1のステンレス箔の表面における前記溶接部の前記延伸方向に対して垂直な方向の溶接幅Wが下記式(2)を満足するように形成されている電池外装材であって
G≦1t・・・(1)
1t≦W≦10t・・・(2)
(ここで、
t:前記第1のステンレス箔の厚さ)
前記電池室の一部は、前記第1のステンレス箔によって形成されており、
前記第1のステンレス箔における前記電池室を形成する凸部の周囲の部分を周辺部とし、
前記電池外装材の前記断面において、前記周辺部から前記凸部の側壁部に向かって前記第1のステンレス箔が曲線を描いて立ち上がる部分を立ち上がり部とし、前記第1のステンレス箔の表面における該立ち上がり部の始端をR止まり点とすると、
前記溶接部の少なくとも一部は、前記溶接幅Wの中心位置と前記R止まり点との距離が1mm以上5mm以下の範囲内となるように形成されていることを特徴とする、電池外装材。
【請求項2】
前記溶接部は、長さ100mm以上にわたって連続して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電池外装材。
【請求項3】
前記第1のステンレス箔におけるレーザを照射された側の面を第1の面とし、前記第2のステンレス箔における前記第1の面から遠い側の面を第2の面とすると、
前記溶接部は、前記断面において、前記第1の面および前記第2の面のいずれにおいても、該溶接部の外縁から該溶接部の中心に向かって凹むように形成された薄厚部を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電池外装材。
【請求項4】
前記第1および第2のステンレス箔は、溶接部が形成された部分における互いに対向する面に樹脂層を有していないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池外装材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電池外装材と、前記電池室に収容されている前記電池要素と、を有する電池。
【請求項6】
第1のステンレス箔および第2のステンレス箔を互いに重ね合わせて、電池要素を収容する電池室となる内部空間を形成する空間形成工程と、
前記電池室の周囲の少なくとも一部にて、前記第1のステンレス箔にレーザを照射することにより前記第1および第2のステンレス箔をレーザ溶接して溶接部を形成するレーザ溶接工程と、を含み、
前記第1のステンレス箔および前記第2のステンレス箔は、板厚が20μm以上100μm以下であり、
前記レーザ溶接工程では、前記溶接部の延伸方向に垂直な面で切ったときの断面において、
前記レーザを照射する箇所における前記第1のステンレス箔と前記第2のステンレス箔との板間隙間Gが下記式(1)を満足するとともに、
前記第1のステンレス箔の表面における前記溶接部の前記延伸方向に対して垂直な方向の溶接幅Wが下記式(2)を満足するように前記溶接部を形成する電池外装材の製造方法であって
G≦1t・・・(1)
1t≦W≦10t・・・(2)
(ここで、
t:前記第1のステンレス箔の厚さ)
前記電池室の一部は、前記第1のステンレス箔によって形成され、
前記第1のステンレス箔における前記電池室を形成する凸部の周囲の部分を周辺部とし、
前記電池外装材の前記断面において、前記周辺部から前記凸部の側壁部に向かって前記第1のステンレス箔が曲線を描いて立ち上がる部分を立ち上がり部とし、前記第1のステンレス箔の表面における該立ち上がり部の始端をR止まり点とすると、
前記レーザ溶接工程では、前記溶接部の少なくとも一部を、前記溶接幅Wの中心位置と前記R止まり点との距離が1mm以上5mm以下の範囲内となるように形成することを特徴とする、電池外装材の製造方法。
【請求項7】
前記レーザ溶接工程では、前記溶接部を長さ100mm以上にわたって連続して形成することを特徴とする請求項6に記載の電池外装材の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の電池外装材の製造方法において、前記電池室に前記電池要素を収容する工程をさらに含む、電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池外装材、電池、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車の開発が精力的に行われており、世界的に電気自動車の急速な普及が見込まれている。電気自動車に搭載される蓄電池(二次電池)は、省スペース化および更なる寿命延長の両方を求められている。また、高機能化が進展する携帯型の各種電子機器に搭載される二次電池についても同様の要望がある。
【0003】
リチウムイオン電池は、代表的な二次電池である。リチウムイオン電池の一例として、2つの金属箔を互いに接合して形成された電池容器と該容器内に封入された電池要素とを有する電池が知られている。この種の電池では、一般に、電池外装用材料として片面または両面に樹脂をラミネート被覆した金属箔が用いられている。上記電池容器は、2つの上記金属箔を当接させて互いに熱圧着(ヒートシール)することにより形成される。
【0004】
特許文献1には、アルミニウム箔の両面に樹脂を貼り付けて形成されるラミネートフィルムを用いて製造されたラミネート型電池が記載されている。また、特許文献2には、ラミネート被覆した二つの金属箔を互いにヒートシールした後に、ヒートシール部の一部(端面)をレーザ溶接することによって接合部のガスバリア性を高める技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−103291号公報
【特許文献2】特開2013−184290号公報
【特許文献3】特開2004−71290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、電池室から電池外縁までの長さ(いわゆるフランジ長さ)として例えば10mm〜20mm程度の長さを要する。このようなフランジ長さは、電池の性能劣化を長期間にわたって抑制するため、すなわちヒートシール部における水分透過を抑制するために必要となっている(例えば、特許文献3参照)。その結果、電池容器によって生じるデッドスペースが必然的に大きくなる。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術においても同様に、ヒートシール部およびレーザ溶接部により生じるデッドスペースが大きくなる。そのため、電池を搭載する空間におけるスペース効率(空間利用効率)を向上させること、すなわち電池の省スペース化には限界があった。
【0008】
本発明の一態様は、記従来の問題点に鑑みなされてものであり、その目的は、占有スペースの小さい電池外装材、電池、およびそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電池外装材は、接合されたステンレス箔により形成されている、電池要素を収容する電池室と、前記電池室の周囲の少なくとも一部に配置された接合部と、を有し、前記接合部は、前記ステンレス箔同士がレーザ溶接されて形成された溶接部を少なくとも一部に含み、レーザを照射された側の前記ステンレス箔を第1のステンレス箔とし、反対側の前記ステンレス箔を第2のステンレス箔とすると、前記溶接部は、該溶接部の延伸方向に垂直な面で切ったときの断面において、該溶接部の近傍における前記第1のステンレス箔と前記第2のステンレス箔との板間隙間Gが下記式(1)を満足するとともに、前記第1のステンレス箔の表面における前記溶接部の前記延伸方向に対して垂直な方向の溶接幅Wが下記式(2)を満足するように形成されている。
【0010】
G≦1t・・・(1)
1t≦W≦10t・・・(2)
ここで、tは前記第1のステンレス箔の厚さである。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電池は、前記電池外装材と、前記電池室に収容されている前記電池要素と、を有する。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電池外装材の製造方法は、第1のステンレス箔および第2のステンレス箔を互いに重ね合わせて、電池要素を収容する電池室となる内部空間を形成する空間形成工程と、前記電池室の周囲の少なくとも一部にて、前記第1のステンレス箔にレーザを照射することにより前記第1および第2のステンレス箔をレーザ溶接して溶接部を形成するレーザ溶接工程と、を含み、前記レーザ溶接工程では、前記溶接部の延伸方向に垂直な面で切ったときの断面において、前記レーザを照射する箇所における前記第1のステンレス箔と前記第2のステンレス箔との板間隙間Gが下記式(1)を満足するとともに、前記第1のステンレス箔の表面における前記溶接部の前記延伸方向に対して垂直な方向の溶接幅Wが下記式(2)を満足するように前記溶接部を形成する。
【0013】
G≦1t・・・(1)
1t≦W≦10t・・・(2)
ここで、tは前記第1のステンレス箔の厚さである。
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る電池の製造方法は、前記電池外装材の製造方法において、前記電池室に前記電池要素を収容する工程をさらに含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、占有スペースの小さい電池外装材、電池、およびそれらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態における電池外装材または電池の構成を概略的に示す斜視図である。
図2】2枚のステンレス箔を板押え治具にて固定するとともに板間隙間を調節可能とした状態にて行ったレーザ溶接試験について説明するための図である。
図3】レーザ溶接部の断面について、光学顕微鏡を用いて観察した様子を示す模式図であって、(a)〜(c)はそれぞれ板間隙間が10μm、80μm、40μmの場合の結果について示す図である
図4】本発明の実施形態1における電池外装材または電池の製造過程であって、(a)はレーザ溶接部が形成された後であってヒートシール部が形成される前の状態を示す斜視図であり、(b)は図4の(a)に示す状態の次工程にて熱融着シートをセットした状態の側面図、(c)は図4の(b)に示す状態の後の工程にてヒートシール後にフランジ部のうち不要な部分を除去した後の電池外装材または電池を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態におけるレーザ溶接部を拡大して示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態における電池外装材の製造方法に用いられるレーザ溶接装置の一例を示す図である。
図7】参考例におけるレーザ溶接部の断面について、光学顕微鏡を用いて観察した様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態における、ステンレス箔同士を重ね合わせてレーザ溶接することにより電池室を形成した、占有スペースの小さい電池外装材および該電池外装材を有する電池について説明する。なお、以下の記載は発明の趣旨をより良く理解させるためのものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上B以下」を意味する。本出願における各図面に記載した構成の形状および寸法(長さ、奥行き、幅等)は、実際の形状および寸法を必ずしも反映させたものではなく、図面の明瞭化および簡略化のために適宜変更している。
【0018】
以下では、先ず、本発明の一実施形態における電池外装材または電池の構成を概略的に説明し、次いで、本発明者らが見出した本発明の知見の概略について説明する。その後、上記電池外装材または電池について詳細に説明する。
【0019】
<電池外装材(電池)の概要>
図1は、本実施形態における電池外装材1または該電池外装材1を有する電池100の構成を概略的に示す斜視図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態における電池外装材1は、電池室2およびフランジ部(接合部)3を有している。この電池室2に電池要素が収容されるとともに、該電池要素と電極部4とが電池室2の外部へ電力を供給可能となるように電気的に接続されることによって、電池100が形成される。
【0021】
電池室2は、電池要素を収容するための内部空間である。例えば、電池室2は、平面視したときの形状が矩形である凸部を有する二枚のステンレス箔1a・1bを、当該凸部を向い合せて重ねたときに当該2つの凸部によって形成される空間である。電池室2は、ステンレス箔1aおよびステンレス箔1bを接合することにより形成されたフランジ部3によって封止されている。
【0022】
フランジ部3は、電池室2の周囲の全周にわたって配置されている。フランジ部3は、ステンレス箔1aおよびステンレス箔1bが互いにレーザ溶接されることにより形成されたレーザ溶接部5と、二枚のステンレス箔1a・1bの間に配された熱融着シートの熱融着により形成されたヒートシール部6とを含む。レーザ溶接部5の端部は、ヒートシール部6に密着し、あるいは包含されている。このレーザ溶接部5について詳しくは後述する。なお、図1に示す電池外装材1(電池100)は、製品として使用される前に、フランジ部3の不要部分(具体的にはレーザ溶接部5の周縁部)は削除される。
【0023】
ヒートシール部6は、フランジ部3の一部であり、熱融着シートの熱融着によって形成されている部分である。また、ヒートシール部6は、ステンレス箔1a・1bの接合部のうちの、電極部4を挟持する部分である。ヒートシール部6は、例えば、熱融着シートのスリット部に電極部4が挿通されている熱融着シートの熱融着によって形成されている。なお、ヒートシール部6の具体的な態様は特に限定されない。
【0024】
電極部4は、フランジ部3によって、より具体的にはヒートシール部6によって、挟持されている。電極部4は、電池室2内の電池要素と電池室2の外部とを電気的に接続するための部材である。
【0025】
<本発明の知見>
上記のようなステンレス箔1a・1b(ステンレス鋼の極薄厚の薄板)は、アルミニウムよりも強度や剛性が高いため、電池外装材の素材として好適に用いることができる。その一方で、ステンレス鋼はアルミニウムよりも比重が大きい。よって、上記ステンレス箔1a・1bの厚さは、軽量化、省スペース化、およびコスト低減等の理由により、電池外装材1として十分な物性(例えば、強度など)を有する範囲においてなるべく薄くすることが求められる。例えば、ステンレス箔1a・1bは、実用上、100μm程度以下の板厚であり得る。
【0026】
そして、ステンレス箔1a・1bを電池外装材に適用するにあたって、上記のようにフランジ部3にレーザ溶接部5を形成することができれば、フランジ長さを短くすることができる。なお、レーザ溶接を行う場合、ステンレス箔1a・1bは、ラミネート樹脂による表面被覆を要しない。
【0027】
ここで、上述のような凸部を形成するためにプレス加工等を行ったステンレス箔1a・1bは、凸部の周辺(フランジ)にシワが生じる。つまり、凸部を形成後のフランジは、平坦ではなく、波打ったりひねりが生じたりしている。また、ステンレス箔1a・1bは、厚さが薄いことから、シワが非常に生じ易くかつ熱歪みの影響を大きく受ける。
【0028】
このようなステンレス箔1a・1bのフランジ同士を重ね合わせてレーザ溶接することによって、気密性を確保したレーザ溶接部5を形成することは容易では無い。ましてや、そのようなレーザ溶接部を電池室2の周囲に(或る程度の長距離にわたって)安定して形成することは非常に困難であった。
【0029】
本発明者らは、薄厚のステンレス箔同士をレーザ溶接して電池外装材を製造するに際して、レーザ溶接部を安定して形成するために要求される条件について鋭意検討を行った。その結果、本発明者は、以下の着想および知見を得て本発明を想到した。
【0030】
レーザ溶接の際、レーザの照射を受けた側のステンレス箔の溶融により形成される溶融金属が、ステンレス箔同士の板間隙間を埋める。そのため、板間隙間が広すぎると溶け落ち等の不具合が生じ易い。ここで、100μm程度以下の板厚であるステンレス箔1a・1bをレーザ溶接する場合、熱歪によってシワが生じ易く、該シワによって板間隙間が増大する。
【0031】
ステンレス鋼は、鉄やアルミニウムに比べて熱伝導率が小さいことから局所的な温度変化が生じ易く、そのため熱歪によるシワが発生し易い。特に、例えばSUS304のようなオーステナイト系のステンレス鋼を用いる場合、熱膨張係数が比較的大きいことから、レーザによって加熱された際の熱歪が大きく成り得る。
【0032】
本発明者らは、以下のように着想した。すなわち、レーザ溶接により形成される溶接部の幅(以下、溶接幅と称することがある)が広いと溶融金属量も多くなり、溶け落ち等の不具合を防止しやすくなる。その一方で、溶接幅が広すぎると溶接部近傍に熱歪によるシワが生じ易く、局所的に板間隙間を増大させる要因となり得る。上記のような板厚の薄いステンレス箔1a・1bをレーザ溶接するにあたって、溶接時の溶け落ちや穴開きを防止するには、板間隙間を制御するのみならず、溶接幅を適切に管理することが重要であると推察した。
【0033】
(検証試験)
上記の着想に基づいて本発明者らが実施した検証試験について、図2および図3を参照して以下に説明する。図2は、2枚のステンレス箔を板押え治具にて固定するとともに板間隙間を調節可能とした状態にて行ったレーザ溶接試験について説明するための図である。検証試験は、結果の解釈を容易にするために薄厚のステンレス平板(凸部を形成する加工を行っていないステンレス箔)を用いて行った。
【0034】
図2に示すように、支持台11の上に、下側板押え治具12b、ステンレス箔10b、シム板13、ステンレス箔10a、および上側板押え治具12aをこの順に載置して検証試験を行った。シム板13は、ステンレス箔10aおよびステンレス箔10bに挟持されており、シム板13の厚さを変化させることによって、ステンレス箔10aとステンレス箔10bとの間の距離(板間隙間G1)を調節することができる。この場合、板間隙間G1は、シム板13の厚さと略同一である。
【0035】
ステンレス箔10aおよびステンレス箔10bとして、SUS304のBA材(鏡面に近い光沢を有するような表面仕上げの状態の素材)を用いた。
【0036】
上側板押え治具12aには、ステンレス箔10aにレーザビームLB1を照射するための溝14aが形成されている。下側板押え治具12bには、溝14aに対応する位置に溝14bが形成されている。この下側の溝14bは、レーザビームLB1の照射熱の伝熱により下側板押え治具12bが溶解することを防止する。なお、溝14aおよび溝14bは、実際は、紙面を貫く方向の手前側から奥側に連続して形成されている(図2のように平面視した場合、矩形の開口部となる)。
【0037】
(試験1:板間隙間の条件)
板厚が40μmのステンレス箔10aおよびステンレス箔10bを用いて、シム板13の厚さ(すなわち、板間隙間G1)を10μm〜80μmに変化させた条件にて、溝14aを介してステンレス箔10aにレーザビームLB1を照射してレーザ溶接を行った。レーザ溶接機としてファイバーレーザ溶接機を用い、Arガスを20L/minで流すことによりシールドガスとした。レーザビームLB1は、焦点位置をステンレス箔10aの表面とし、レーザスポット径をφ(直径)100μm、レーザ出力を150Wとした。また、溶接速度(レーザの掃射速度)を12.5m/minとした。
【0038】
上記の試験を行った結果について、図3を用いて説明する。図3は、レーザ溶接部の断面が観察可能となるように処理を行った観察用試料について、光学顕微鏡を用いて上記断面を観察した様子について示す模式図である。図3の(a)〜(c)は、それぞれ板間隙間G1が10μm、80μm、40μmの場合の結果について示す図である。ここで、図3に示す断面は、レーザ溶接部が延びる方向(延伸方向)に垂直な面で切ったときの断面である。
【0039】
図3の(a)に示すように、板間隙間G1を10μmとして試験した結果、均整のとれた形状のレーザ溶接部15aが形成された。ここで、上記断面における、ステンレス箔10aのレーザ照射側の表面S1にて計測されるレーザ溶接部の幅を溶接幅W1とする。レーザ溶接部15aの溶接幅W1は約190μmであった。
【0040】
これに対して、図3の(b)に示すように、板間隙間G1を80μmとして試験した結果、レーザ溶接によりステンレス箔10aが溶け落ち、レーザ溶接部を形成することができなかった。
【0041】
そこで、本発明者らは、板間隙間G1を調整して試験を繰り返し、その結果、板間隙間G1が40μm以下である場合、溶け落ちが発生せずレーザ溶接部を形成できることがわかった。図3の(c)に示すように、板間隙間G1を40μmとして試験をした結果、レーザ溶接によりレーザ溶接部15bが形成された。レーザ溶接部15bは、概略的には以下のように形成されるものと推察される。すなわち、レーザビームLB1によって溶融した金属(溶融金属)が、重力によって垂下することによりステンレス箔10bと接触する。レーザビームLB1の照射による熱が、溶融金属を介してステンレス箔10bに伝播してステンレス箔10aおよびステンレス箔10bが融合する。その後、熱影響部が急冷されて、凝固収縮することによりレーザ溶接部15bが形成される。レーザ溶接部15bは、ステンレス箔10bにおける熱影響部の幅よりもステンレス箔10aにおける熱影響部の幅の方が大きくなっている。
【0042】
図3の(c)に示す断面において、レーザ溶接部15bの溶接幅W1は以下のように定義される。すなわち、上記断面における、ステンレス箔10aの表面S1とレーザ溶接部15bとの境界を2点特定することができる。これら2点のうち、一方を境界点16aとし、他方を境界点16bとする。レーザ溶接部15bの溶接幅W1は、境界点16aと境界点16bとの間の距離として表され、約390μmであった。
【0043】
さらに、ステンレス箔の板厚を10μm〜100μmと変化させて同様の試験を行った。その結果、板間隙間G1は、ステンレス箔の板厚をtとすると、下記式(3)の関係を満足することを要することがわかった;
G1≦1t・・・(3)
ここで、ステンレス箔10aおよびステンレス箔10bの厚さが互いに異なる場合、上記板厚tはステンレス箔10aの厚さである。これは、レーザの照射を受ける側のステンレス箔の厚さが重要となるためである。
【0044】
上記式(3)の関係を満たすことにより、レーザ溶接の際に、溶融金属が下方に曲がるように垂れていき、下板に接触するという現象が生じる安定性を高めることができる。
【0045】
(試験2:溶接幅の条件)
ここで、上述したように、電池外装材1を製造する際には、フランジに存在するシワによって板間隙間が変動し得る。そのような場合であっても、レーザ溶接部を安定して形成することが求められる。そこで、本発明者らは、上記式(3)の関係を踏まえて、板間隙間G1を最も厳しい条件である1tに固定して、上記板厚tを20μm〜100μmと変化させるとともに、溶接幅W1を変化させて試験を行った。
【0046】
溶接幅W1の調整は以下のように行った。すなわち、レーザビームLB1のスポット径をφ30μm、100μm、200μmに変化させるとともに、レーザ出力を300W以下、溶接速度を12.5m/min以下の範囲にて種々変化させて調整した。その他の条件は上記試験1と同じである。
【0047】
試験結果をまとめて表1に示す。なお、表1において、溶接幅W1を板厚tの倍数にて表記している。例えば、表1における板厚tが20μmの例では、溶接幅W1を10μm〜400μmの範囲、すなわち0.5t〜20tの範囲で変化させて試験を行った。
【0048】
【表1】
【0049】
上記表1では、レーザ照射側の板(上板)であるステンレス箔10aに穴が開いたり溶け落ちが生じたりした条件に×印を付している。また、ステンレス箔10aに穴が開くことなくレーザ溶接部を形成することができた条件に○印を付している。
【0050】
いずれの板厚tの条件においても、溶接幅W1が10tを超えると不適であった。これは、熱歪により深いシワが発生することによって、板間隙間が大きくなりすぎてステンレス箔10aの穴あきを誘発したと考えられる。また、溶接幅W1が1t未満の場合も不適であった。これは、レーザが局所的に照射されることによって溶融部が狭くなりすぎ、板間隙間1tを埋めるための溶融金属を生成することができず、ステンレス箔10aに穴が開いたと考えられる。
【0051】
したがって、溶接幅W1は、下記式(4)の関係を満足することを要することがわかった;
1t≦W1≦10t・・・(4)。
【0052】
以上のように、本発明者らは、上記式(3)の条件(板間隙間G1が1t以下)かつ上記式(4)の条件を共に満たすことにより、レーザ溶接の際に適正量の溶融金属によって板間隙間G1を埋めることができ、レーザ溶接部を安定して形成することができるという知見を得た。
【0053】
<電池外装材1の詳細な説明>
以上のような知見に基づいて本発明者らが想到した本実施形態の電池外装材1について、図4および図5を用いて以下に詳細に説明する。本実施形態の電池外装材1は、上記知見に基づく方法(詳しくは電池外装材の製造方法として後述する)にてレーザ溶接を行うことによって製造されるものである。
【0054】
図4は、本実施形態の電池外装材1または電池100の製造過程であって、(a)はレーザ溶接部5が形成された後であって、ヒートシール部6が形成される前の状態を示す斜視図である。
【0055】
図4の(a)に示すように、電池外装材1は、フランジ部3にレーザ溶接部5を有している。レーザ溶接部5は、凸部が形成された2つのステンレス箔1a・1bを、互いに異なる方向に凸部が向くように重ね合わせた状態にて、一方のステンレス箔1aのフランジにレーザを照射して重ね合わせ部をレーザ溶接することにより形成される。
【0056】
(ステンレス箔)
ステンレス箔1a・1bは、フェライト系ステンレス鋼であってもよく、その他のステンレス鋼種であってもよい。ステンレス箔1a・1bは、強度および成形加工性の観点から、SUS304等のオーステナイト系ステンレス鋼が好ましい。
【0057】
ステンレス箔1a・1bの厚さは、その強度の観点から、20μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがさらに好ましい。また、ステンレス箔1a・1bの厚さは、軽量化および溶接の安定性の観点から、100μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。例えば、ステンレス箔1a・1bの厚さは、20μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0058】
より具体的に、ステンレス箔1a・1bは、強度、化学的安定性および成形加工性などの観点から、その引張強さが700MPa以上であり、その伸びが45%以上であるオーステナイト系ステンレス鋼であることが好ましい。
【0059】
ステンレス箔1a・1bの引張強さは、上記強度の観点から、700MPa以上であることが好ましく、750MPa以上であることがより好ましい。また、ステンレス箔1a・1bの引張強さの上限値は、入手の容易さなどの実現性の観点から適宜に決めることができ、例えば、900MPa以下であることが好ましく、800MPa以下であることがより好ましい。ステンレス箔1a・1bの引張強さは、引張試験によって測定することができ、例えば焼鈍または調質圧延によって調整することができる。
【0060】
ステンレス箔1a・1bの伸びは、上記成形加工性の観点から、45%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましい。ステンレス箔1a・1bの伸びの上限値は、入手の容易さなどの実現性の観点から適宜に決めることができ、例えば、75%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましい。ステンレス箔1a・1bの伸びは、引張試験によって測定することができ、例えば圧延した後に希ガスまたは非酸化性ガス(水素ガスなど)の雰囲気で焼鈍することによって高めることができる。
【0061】
また、ステンレス箔1a・1bは、溶接の安定性の観点から、ラミネートなどの樹脂層を表面に有さないことが好ましい。
【0062】
ステンレス箔1a・1bの上記凸部は、例えば絞り加工や張り出し加工等、凸部を形成するための通常の加工法によって形成することができる。上記凸部は、フランジにおけるシワの発生を抑制する観点から、張り出し加工によって形成されていることが好ましい。
【0063】
ステンレス箔1aおよびステンレス箔1bは、互いに同じ素材であってよく、互いに異なる素材であってもよい。例えば、ステンレス箔1aおよびステンレス箔1bの板厚が互いに同じであってよく、互いに異なっていてもよい。
【0064】
(電極部)
電極部4は、電池要素の一部であってもよいし、電池外装材1の構成に含まれていてもよい。電極部4の位置および数は、特に限定されない。電極部4は、電池の電極に使用可能な部材から適宜に選ぶことが可能である。たとえば、電極部4の形状の例には、板状、円柱状、線状が含まれる。電極部4の材料の例には、アルミニウム、銅および炭素が含まれる。
【0065】
(電池要素および電池)
図4の(b)は、図4の(a)に示す状態の次工程にて熱融着シートをセットした状態側面図である。図4の(b)に示すように、電池要素20は、電池室2に収容される。電池要素20は、電池を構成する公知の部材の組み合わせによって構成され、フィルム等によって絶縁を施されて電池室2に収容される。電池要素20の構成要素の例には、正極、負極、セパレータおよび電解質が含まれ、当該電解質の例には、電解液、固体電解質およびゲル状電解質が含まれる。これらは、電池要素20の種類に応じて適宜に組み合わされて電池要素20を構成する。電池要素20を含むことにより構成される電池100の種類は、一次電池であってもよいし二次電池であってもよい。当該二次電池の例には、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、ニッケル水素電池およびニッケルカドミウム電池が含まれる。
【0066】
(ヒートシール部)
図4の(a)および(b)に示すように、熱融着シート7は折り曲げ部を有しているとともに折り曲げ部の折線に沿って開口するスリット部を含んでおり、該スリット部に電極部4が挿通された状態にて熱融着シート7を熱融着することにより、ヒートシール部6(図1参照)を形成することができる。
【0067】
熱融着シート7は、熱可塑性樹脂の連続相で構成されている。当該熱可塑性樹脂は、ヒートシール用の熱融着シートの樹脂材料に使用可能な熱可塑性樹脂であればよく、その例には、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、ならびにポリエチレンテレフタレートが含まれる。
【0068】
熱融着シート7の厚さは、ヒートシールが可能な範囲であればよく、例えば50〜150μmであればよい。
【0069】
熱融着シート7は、熱融着シートの形態を維持する観点から、熱融着シートを補強する骨材をさらに含んでいてもよい。当該骨材の例には、フィラーおよび非溶融性のシートが含まれる。当該フィラーの例には、柔軟性のある短繊維が含まれる。上記非溶融性のシートは、熱融着シートのヒートシールによって溶融せずに残存するシートであり、その例には、不織布および織物が含まれる。
【0070】
上記非溶融性のシートを有する熱融着シートは、熱融着シートと非溶融性のシートとを貼り合わせてなるシートであってもよいし、市販品であってもよい。当該市販品の例には、大日本印刷株式会社製の熱融着フィルムPPa−F(72)、PPa−F(100)、PPa−N(72)、PPa−N(100)およびPPa−Yが含まれる。
【0071】
ヒートシール部6における熱融着シート7の状態は、ヒートシール部6の断面の観察または超音波により、確認することが可能である。
【0072】
ヒートシール部6における熱融着シート7の折り曲げ部は、ヒートシール部6におけるレーザ溶接部5に連なる位置に位置している。すなわち、熱融着シート7は、折り曲げられることによって形成された稜線が、フランジ部3の奥に位置するように配されている。なお、熱融着シート7は、上記稜線が電池外装材1の外部側の方向を向くように配されていてもよい。
【0073】
(レーザ溶接部)
レーザ溶接部5は、ステンレス箔(第1のステンレス箔)1aにレーザが照射され、ステンレス箔1aおよびステンレス箔(第2のステンレス箔)1bがレーザ溶接されることにより形成された部分である。本実施形態では、レーザ溶接部5は、ステンレス箔1a・1bの二本の長辺および一方の短辺に沿って形成されている。レーザ溶接部5は、上記長辺において、ステンレス箔1aの一方の短辺から溶接されていない他方の短辺に向けて、当該他方の短辺から適当な間隔を有する位置まで形成されている。この他方の短辺側における上記間隔は、ヒートシール部6のシール長さと実質的に同じである。
【0074】
図4の(c)は、図4の(b)に示す状態の後の工程にてヒートシール後にフランジ部3のうち不要な部分を除去した後の電池外装材1または電池100を示す斜視図である。図4の(c)に示すように、レーザ溶接部5およびヒートシール部6を形成した後、フランジ部3のうち不要な部分を除去することによって、フランジ部3aを有する電池外装材1(電池100)が得られる。
【0075】
フランジ部3aにおけるレーザ溶接部5を有する部分の突出長さ(電池室2の側壁からステンレス箔1a・1bの側縁までの距離)は、レーザ溶接部5を形成することが可能な範囲であって、レーザ溶接部5によって気密および液密に電池室2を密閉可能な範囲となっていればよい。上記突出長さが小さいほど、占有スペースの小さい電池外装材1(電池100)とすることができる。上記突出長さは、6mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましく、4mm以下であることがさらに好ましい。上記突出長さは、レーザ溶接部5を形成する際の作業性の観点から、1mm以上であることが好ましい。
【0076】
レーザ溶接部5について、図5を用いてさらに詳細に説明する。図5は、レーザ溶接部5が延びる方向(レーザ溶接部5の延伸方向)に垂直な面で切ったときの断面を拡大して示す断面図である。
【0077】
図5に示すように、上記断面において、レーザが照射された側のステンレス箔(第1のステンレス箔)1aの表面S11と、レーザ溶接部5との境界を2点特定することができる。これら2点のうち、電池室2に近い側の点を境界点5aとし、他方を境界点5bとする。境界点5aと境界点5bとの間の距離を、レーザ溶接部5の溶接幅Wとする。
【0078】
ここで、上記断面において、レーザ溶接部5の近傍におけるステンレス箔1aとステンレス箔1bとの板間隙間として、電池室2側の板間隙間G11と、他方側の板間隙間G12とが存在する。板間隙間G11・G12は、レーザ溶接を行う際のステンレス箔1a・1bの板間隙間と対応している。本明細書において、板間隙間G11・G12を、レーザ溶接部5におけるレーザ溶接前の板間隙間Gとして特定する。これは、レーザ溶接を行う際のステンレス箔1a・1bの板間隙間について、レーザ溶接を行った後には、もはや直接的に知ることはできないためである。なお、板間隙間G11と板間隙間G12とが異なる場合、値が大きい方をレーザ溶接前の板間隙間Gとして採用する。
【0079】
レーザ溶接部5の近傍における板間隙間とは、例えば、レーザ溶接部5から40〜80μm離れた位置の板間隙間である。板間隙間G11・G12は、上記断面を観察することにより直接的に計測してもよく、非接触光学式厚み計を用いてレーザ溶接部5の近傍を計測することにより得られた計測値からステンレス箔1a・1bの合計板厚を減じることにより測定してもよい。板間隙間G11・G12は、レーザ溶接部5から40〜80μmの範囲内の複数箇所を測定して得られた結果を平均した平均値であってよい。或いは、板間隙間G11・G12は、上記範囲内における測定結果のうち最大値を採用してもよい。
【0080】
(板間隙間および溶接幅)
本実施形態の電池外装材1は、上記断面において、下記式(1)および式(2)の条件を満たすレーザ溶接部5を有している;
G≦1t・・・(1)
1t≦W≦10t・・・(2)
上記式において、
G:上記板間隙間G11・G12に基づく値であって、間接的に特定されたレーザ溶接前の板間隙間
t:ステンレス箔1aの厚さ
W:上記溶接幅
である。
【0081】
上記のようなレーザ溶接部5は、例えば、溶接幅Wを制御しつつ板間隙間Gを低減するようにレーザ溶接を行うことができるレーザ溶接装置を用いて形成することができる。そのようなレーザ溶接装置の一例については、電池外装材1の製造方法として後述する。これにより、電池外装材1(電池100)のフランジ部3aにおけるレーザ溶接部5を有する部分の突出長さ(電池室2の側壁からステンレス箔1a・1bの側縁までの距離)を6mm以下とすることができる。
【0082】
(溶接位置)
また、レーザ溶接部5は、ステンレス箔1aにおける電池室2を形成する凸部の側壁を側壁部21とすると、側壁部21からの位置関係として以下の条件をさらに満たしていることが好ましい。このことについて、図5を参照して以下に説明する。
【0083】
図5に示すように、電池室2の一部を形成するステンレス箔1aにおける凸部1a1の周囲の部分を周辺部1a2とし、周辺部1a2から側壁部21に向かうようにステンレス箔1aが曲線を描いて立ち上がる部分を立ち上がり部22とする。そして、ステンレス箔1aの表面S11における電池室2から遠い側の立ち上がり部22の始端をR止まり部(R止まり点)23とする。
【0084】
レーザ溶接部5は、図5に示す断面において、溶接幅Wの中心位置とR止まり部23との間の距離Dが1mm以上5mm以下の範囲内となっていることが好ましい。この理由は以下のとおりである。すなわち、レーザ溶接後に、フランジ部3を短く切断することによって省スペースかつ軽量な電池外装材1となることから、レーザ溶接は、側壁部21にできるだけ近い位置にて行うことが好ましい。また、側壁部21の近傍は、形状効果により剛性が高く、加工によるシワ(波打ち)が比較的少ないためレーザ溶接に好適である。一方で、レーザ溶接時には、側壁部21の近傍に治具を配置する必要がある。そのため、距離Dは、R止まり部23から1mm以上であることが好ましい。また、距離Dが側壁部21から離れるほどフランジのシワの影響を受けて板間隙間Gが必然的に大きくなり、上記条件(1)を満たし難くなる。そのため、距離DがR止まり部23から6mm程度となるようにレーザ溶接を行った場合、ステンレス箔1aの溶け落ちが生じることがある。
【0085】
なお、レーザ溶接部5は、少なくとも一部が上記距離Dの範囲内となっていてよい。本実施形態においては、電池外装材1を上方から見て平面視した場合、電池室2(凸部1a1)の四隅の部分の側壁と、レーザ溶接部5との距離については上記範囲外となることがあってもよい。他の実施形態において、電池室が種々の形状であったとしても、レーザ溶接部5の少なくとも一部について、溶接幅Wの中心位置とR止まり部23との間の距離Dが上記範囲内となっていればよい。
【0086】
(形状)
また、本実施形態の電池外装材1が有するレーザ溶接部5は、一側面では、以下のような特徴を有している。
【0087】
ステンレス箔1bの表面であって、ステンレス箔1aの表面S11から遠い側の面を表面S12とする。
【0088】
図5に示すように、レーザ溶接部5は、ステンレス箔1aおよびステンレス箔1bのいずれにおいても、表面S11および表面S12からレーザ溶接部5の中心に向かって凹んで形成されている。換言すれば、レーザ溶接部5の表ビードおよび裏ビードはレーザ溶接部5の中心に向かって窪むように形成されている。これは、レーザ溶接された直後に、急冷されることによって凝固収縮が生じたためであると考えられる。本明細書において、このようなレーザ溶接部5を薄厚部25と称する。
【0089】
本実施形態の電池外装材1は、レーザ溶接部5の少なくとも一部が上記薄厚部25となっている。このような薄厚部25は、板厚の非常に薄いステンレス箔同士を、適正な条件にてレーザ溶接することにより形成することができる。薄厚部25は、レーザ溶接によって形成された緻密な溶接部となっており、高い気密性を有するとともに高い強度を有する。したがって、レーザ溶接部5の気密性および強度が向上する。
【0090】
(その他の構成)
電池外装材1は、本実施の形態における効果が得られる範囲において、前述した構成以外の他の構成を有していてもよい。当該他の構成の例には、前述した電極部4のほかに、安全弁が含まれる。
【0091】
また、電池外装材1または電池100は、レーザ溶接部5が形成された部分およびその周辺部における、ステンレス箔1aの表面であってステンレス箔1bに対向する面、および、ステンレス箔1bの表面であってステンレス箔1aに対向する面、に樹脂層を有していない。なお、ステンレス箔1a・1bは、レーザ溶接部5が形成されるフランジ部分の表面に樹脂層を有していないとともに、その一方でレーザ溶接部5が形成される箇所以外の部分の表面に樹脂層などの被覆層を有していてもよい。
【0092】
<電池外装材の製造方法>
本実施形態における電池外装材1の製造方法について、図6を用いて以下に説明する。図6は、本実施形態における電池外装材1の製造方法に用いられるレーザ溶接装置の一例を示す図である。
【0093】
先ず、プレス加工等により凸部が形成されたステンレス箔1a・1bのフランジ同士を重ね合わせて、電池要素20を収容するための電池室2となる内部空間を形成する(空間形成工程)。
【0094】
次いで、ステンレス箔1aのフランジにレーザを照射することにより、ステンレス箔1aおよびステンレス箔1bを互いにレーザ溶接する。これによりレーザ溶接部5を形成する(レーザ溶接工程)。なお、本実施形態における製造方法では、複数回のレーザ照射ではなく1回のレーザ照射にてレーザ溶接を行うことによりレーザ溶接部5を形成する。
【0095】
電池外装材1(電池100)を製造するためには、板厚100μm以下程度のステンレス箔同士をレーザ溶接することによって、例えば長さ100mm以上程度に渡るレーザ溶接部5を、気密性を確保するように連続して形成することが求められる。そのようなレーザ溶接部5は、本発明者らが見出した上述の知見に基づいて、例えば図6に示すようなレーザ溶接装置を用いて形成することができる。なお、上述の板間隙間および溶接幅の条件を満たすようにレーザ溶接を行うことができればよく、レーザ溶接装置の具体的な態様は特に限定されるものではない。
【0096】
図6に示すように、本実施形態におけるレーザ溶接装置40は、支持台41の上に下側板押え治具42を載置し、下側板押え治具42と板押えローラ43・44とによってステンレス箔1a・1bのフランジを挟持した状態にて、レーザビームLB2を照射するようになっている。ここでは、ステンレス箔1a・1bにより形成される電池室2には、電池要素20が収容されている。
【0097】
下側板押え治具42の高さは、ステンレス箔1bの成形高さと同じになっており、支持台41の上にステンレス箔1bを載置すると、フランジが下側板押え治具42に載置される。板押えローラ43は、側壁部21の近傍に配置されている。板押えローラ43と下側板押え治具42とによって、ステンレス箔1a・1bのフランジを押圧して固定する。
【0098】
また、板押えローラ44は、レーザビームLB2をステンレス箔1aに照射するための光路を形成するように、板押えローラ43から離間して、ステンレス箔1a・1bの外縁に近い側に配置されている。
【0099】
板押えローラ43・44はそれぞれ、ステンレス箔1aに接触するように配置されているとともに、支持部材45・46によって回転可能に軸支されている。支持部材45・46にはそれぞれ弾性体47が接続されている。弾性体47は、例えばバネ、ゴム等により形成されている。弾性体47は、支持部材45・46を介して板押えローラ43・44に対してステンレス箔1aを押圧するように力を加える。
【0100】
或いは、支持部材45・46にはそれぞれ、弾性体47の代わりにまたは弾性体47と組み合わせて、図示しない油圧シリンダまたは空圧シリンダが接続されていてもよい。この場合、油圧シリンダまたは空圧シリンダは、支持部材45・46を介して板押えローラ43・44に対してステンレス箔1aを押圧するように力を加える。
【0101】
板押えローラ43・44と下側板押え治具42とによって、ステンレス箔1a・1bのフランジを押圧して固定する。これにより、ステンレス箔1a・1bのフランジに押え力を及ぼすことができる。
【0102】
図6に示す断面において、板押えローラ43がステンレス箔1aに接触する位置と、板押えローラ44がステンレス箔1aに接触する位置との間の距離(板押え間距離)Xは、適宜設定されてよく、例えば2.5mmであってよい。
【0103】
また、板押えローラ43および板押えローラ44による押え力は、弾性体47による押付け量やバネ定数を変化させて調節してもよい。或いは、油圧シリンダまたは空圧シリンダが設けられている場合、圧力調整バルブを用いて油圧シリンダまたは空圧シリンダによる押え力を調整してもよい。これにより、ステンレス箔1a・1bの凸部が、絞り成形により形成された場合と、張出成形により形成された場合とに応じて(シワの量および深さに応じて)、押え力を変化させて板間隙間Gを調整することができる。
【0104】
レーザ溶接工程により、ステンレス箔1a・1bの三辺(一対の長辺および一端側の短辺)に沿ってレーザ溶接部5が形成される。それにより、電池室2の三方(一対の長辺および一端側の短辺)がレーザ溶接部5によって液密かつ気密に封止される。
【0105】
本実施形態のレーザ溶接工程では、ステンレス箔1a・1bの三辺を溶接するが、ステンレス箔1a・1bの電極部4側には、ヒートシール部6となる部分を残す。したがって、レーザ溶接部5の二か所の端部(溶接端)は、ステンレス箔1a・1bの端縁までには至らない。
【0106】
その後、ステンレス箔1a・1bの周縁部の残りの部分に、折り曲げ部で折り曲げられた熱融着シート7を挟む(融着前準備工程)。
【0107】
次いで、上記周縁部の残りの部分を加熱して熱融着シート7を熱融着させてヒートシールする(封止工程)。封止工程では、ステンレス箔1a・1bに挟まれる熱融着シート7を熱融着させることが可能なシール方法を用いることができる。当該シール方法の例には、超音波振動を発生する押圧子または加熱される押圧子によって押圧する加熱圧着法が含まれる。上記封止工程により、熱融着シート7が融け、樹脂成分がレーザ溶接部5の端部を包むように密着する。こうして、ヒートシール部6が形成され、電池室2は、完全に液密かつ気密に密閉される。
【0108】
上記製造方法は、本実施の形態の効果が得られる範囲において、前述の工程以外の他の工程をさらに含んでいてもよい。たとえば、上記製造方法は、ヒートシール部6となる上記周縁部の残りの部分に電極部4を挟む工程(電極挟持工程)をさらに含んでいてもよい。
【0109】
電極挟持工程は、上記封止工程までに行われていればよい。たとえば、電極挟持工程は、上記空間形成工程、上記レーザ溶接工程、または上記融着前準備工程と同時に行われてもよい。また、上記レーザ溶接工程から上記融着前準備工程までの間に行われてもよいし、上記融着前準備工程後に行われてもよい。
【0110】
より具体的には、電極部4は、上記空間形成工程時に電池要素20が上記凸部に収容されるとともにステンレス箔1a・1bの周縁部における端部に配置されていてもよい。また、電極部4は、レーザ溶接部5が形成された後に、電池室2に予め収容されている電池要素20の適所に差し込まれることにより、ステンレス箔1a・1bの周縁部における他端部に配置されてもよい。或いは、電極部4は、熱融着シート7のスリット部に挿通された状態で、熱融着シート7の配置とともに電池室2に挿入されて、ステンレス箔1a・1bの周縁部における他端部に配置されてもよい。或いは、電極部4は、ステンレス箔1a・1bの周縁部における他端部に配置された熱融着シート7のスリット部を通って電池室2の外部から電池室2内に挿入されて、ステンレス箔1a・1bの周縁部における他端部に配置されてもよい。
【0111】
このように、電極挟持工程は、熱融着シート7がスリット部を有する場合では、スリット部に電極部4を挿通させるように行われる。電極部4は、スリット部を挿通することにより、電池室2の短手方向の所期の位置に配置されやすく、短手方向への位置のずれを生じにくい。
【0112】
以上のように、本実施形態における電池外装材の製造方法は上記レーザ溶接工程を含み、該レーザ溶接工程では、レーザ溶接部5の延伸方向に垂直な面で切ったときの断面において、レーザビームLB2を照射する箇所におけるステンレス箔1aとステンレス箔1bとの板間隙間Gが下記式(1)を満足するとともに、ステンレス箔1aの表面におけるレーザ溶接部5の上記延伸方向に対して垂直な方向の溶接幅Wが下記式(2)を満足するようにレーザ溶接部5を形成する;
G≦1t・・・(1)
1t≦W≦10t・・・(2)
ここで、tはステンレス箔1aの厚さである。
【0113】
これにより、板厚100μm以下程度のステンレス箔同士をレーザ溶接することによって、例えば長さ100mm以上程度に渡るレーザ溶接部5を、気密性を確保するように連続して形成することができる。そのようなレーザ溶接部5を形成した後、フランジ部3の不要部分(具体的にはレーザ溶接部5の周縁部)を削除して、占有スペースの小さい電池外装材1を製造することができる(図4の(c)参照)。
【0114】
また、本実施形態における電池外装材の製造方法は、複数回のレーザ照射ではなく1回のレーザ照射にてレーザ溶接を行うことによりレーザ溶接部5を形成することができる。そのため、製造効率を高めることができる。
【0115】
また、上記レーザ溶接工程では、前述のように溶接幅Wの中心位置とR止まり部23との距離が1mm以上5mm以下の範囲内となるようにレーザ溶接部5の少なくとも一部を形成する。これにより、ステンレス箔1aの溶け落ちが生じる虞をより一層抑制することができる。その結果、レーザ溶接部5を安定して形成することができる。
【0116】
<電池およびその製造方法>
本発明の一実施の形態に係る電池100は、電池外装材1と、電池室2に収容されている電池要素20とを有する(図1図4図6参照)。電池100は、前述の電池外装材1の製造方法において、ステンレス箔1a・1bの凸部により形成される内部空間(電池室2)に電池要素20を収容する工程をさらに含む方法によって製造することが可能である。
【0117】
(変形例)
なお、ステンレス箔1a・1bの平面視したときの形状は、矩形でなくてもよい。また、上記凸部の平面視したときの形状も、矩形でなくてもよい。これらの平面視したときの形状は、円形であってもよいし、三角形および六角形などの矩形以外の多角形であってもよいし、楕円形などの非円形であってもよいし、その他の形状であってもよい。また、上記凸部の断面形状も、矩形でなくてもよく、U字またはV字状の形状などのであって他の形状を含んでいてもよい。
【0118】
また、フランジ部は、電池室の全周にわたって配置されていなくてもよい。たとえば、電池室は、必要に応じて上記凸部が2つ形成されている一枚のステンレス箔を折り曲げて溶接し、そしてヒートシールすることによって形成されていてもよい。この場合、フランジ部は、上記ステンレス箔の周縁部における、上記ステンレス箔の折り返し部分以外の部分に形成される。このように、本実施の形態では、フランジ部は、電池室の周縁部の少なくとも一部に配置される。
【0119】
また、電極部およびヒートシール部の位置は、電池室の両端部のうちの一方の端部に限定されない。電極部およびヒートシール部は、フランジ部の任意の位置に配置され得る。たとえば、電池室の両端部のそれぞれから電極部が一つずつ外部へ延出する場合には、ヒートシール部は、上記ステンレス箔の両端部のそれぞれに形成される。この場合、レーザ溶接部5は、上記ステンレス箔の両側縁(長辺)のそれぞれに、上記ステンレス箔の両端部にヒートシール部6のシール長さを残して形成される。
【0120】
熱融着シート7は、スリット部を有していなくてもよい。この場合、電極部4は、上記ステンレス箔の周縁部に挿入された熱融着シート7を破って電池室2に挿入されてもよい。あるいは、熱融着シート7は、積層方向における電極部4の両側、すなわち電池外装材1の厚さ方向における上記ステンレス箔の周縁部と電極部4との間のそれぞれ、に折り曲げられた状態で挟まれてもよい。
【0121】
ステンレス箔1a・1bは、例えばSUS304のBA材であるが、これに限定されない。例えば、SUS304よりも熱伝導率が高いステンレス鋼種、またはSUS304よりも熱膨張係数が低いステンレス鋼種について、本発明を適用できることは勿論である。これは、熱伝導率および熱膨張係数が、熱歪の生じ易さ、すなわちレーザ溶接部における穴あきと関係するためである。
【0122】
また、電池外装材1(または電池100)は、フランジ部3の一部が電極部4を絶縁しつつ挟持することができるようになっていればよい。そのため、フランジ部3の一部が、ヒートシール以外の方法により形成されていてもよい。
【0123】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上記説明において開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0124】
以下、実施例および比較例により、本発明の一態様における電池外装材(電池)についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0125】
ステンレス箔として、寸法165mm×220mm、板厚20、40、60、80、100μmのSUS304のBA材を用いた。それらのステンレス箔をプレス成形することにより、成形加工品であるステンレス箔外包材を作製した。当該ステンレス箔外包材は、平面視したときに、矩形の成形部とその周囲のフランジ部とによって構成される。上記プレス成形の条件は、パンチRが1mm、ダイRが1mmであり、成形部の寸法は、成形高さが4mm、平面視したときの大きさが140mm×190mm角、コーナRが5mmである。レーザ溶接する際の3辺のフランジの長さは、上記成形部の側壁から10mmとした。電極端子を取り付けてヒートシールする辺のフランジの長さは、側壁から15mmとした。
【0126】
同じ板厚同士の上記ステンレス箔外包材を、上記成形部が互いに逆方向を向くようにして重ね合わせた。上記成形部により形成される内部空間(電池室)に電池要素を収容した。上記電池要素は、積層した正極、負極およびセパレータを含み、フィルムで覆われて絶縁を施されている。上記電池要素を、電極端子(電極部)を付けた状態で上記電池室に収容した。電極部は、上記正極および負極のそれぞれに接続される。上記電極部は、厚さ約0.4mmの細長な矩形のアルミ製の板状部材であり、ヒートシールする辺のフランジの部分を経て電池室の外部に延出するように配置した。
【0127】
前述したレーザ溶接装置(図6参照)を用いてレーザ溶接することによりレーザ溶接部を形成した。レーザスポット径はφ30、100、200μm、レーザ出力は300W以下とし、溶接速度は最大12.5m/minとした。板押え間距離は2.5mmとした。
【0128】
(実施例1:溶接位置)
フランジにおけるレーザ溶接する位置を、側壁部のR止まり点から1mmの位置とし、そこから順次遠ざけて6mmの位置まで変化させて、各種の位置条件にてそれぞれレーザ溶接を行った。成形部の長手方向に沿って溶接する場合、電極端子が取り付けられる辺の端から13mmまでは未溶接のままとした。そして、成形部の長手方向に沿って溶接した溶接線と、成形部の短手方向に沿って溶接した溶接線とが交差するようにして、上記ステンレス箔外包材のフランジの3辺をレーザ溶接した。このようにして、電極部が配置されない部分にレーザ溶接部を形成した。
【0129】
以上のように形成したレーザ溶接部について、結果を表2に示す。
【0130】
【表2】
【0131】
上記表2では、レーザ照射側のステンレス箔(上板)に溶け落ちが生じた条件に×印を付している。また、上板に穴が開くことなくレーザ溶接部を形成することができた条件に○印を付している。
【0132】
表2に示すように、いずれの板厚tにおいても、レーザ溶接部の中心位置と側壁部のR止まり点との距離が6mm以上となると、上板に溶け落ちが生じることがわかる。これは、側壁部から離れるほど、フランジのシワの影響を受けて板間隙間が大きくなるためである。
【0133】
(実施例2:板間隙間)
次いで、フランジにおけるレーザ溶接位置を、側壁部のR止まり点から1mm以上5mm以内の範囲内とするとともに、溶接幅Wが10tとなるようにレーザ溶接条件を調整してレーザ溶接を行った。レーザ溶接後の板間隙間の測定には、非接触光学式厚み計(ユニオン光学製THS-10)を用いた。不具合のないレーザ溶接部については、レーザ溶接部が延びる方向に直交する方向において、レーザ溶接部の端から40〜80μm離れた位置にて厚みを測定し、得られた測定値から2枚のステンレス箔の厚みを減じることにより板間隙間を求めた。一方で、溶け落ちで穴が開いた部分については、当該部分の近傍の位置(40〜80μm離れた位置)にて厚みを測定し、得られた測定値から2枚のステンレス箔の厚みを減じることにより板間隙間を求めた。
【0134】
板厚tが20、40、60、80、100μmの上記ステンレス箔外包材について、レーザ溶接部の種々の位置における板間隙間Gを測定するとともに穴あきの有無を調べた。また、参考例として、板厚tが400μmの上記ステンレス箔外包材を作製し、該ステンレス箔外包材についても試験を行った。結果をまとめて表3に示す。
【0135】
【表3】
【0136】
表3に示すように、板間隙間Gが1t以下の場合、上板の溶け落ちが生じることなく、そのため穴あきは発生しなかった(本発明例)。一方で、板間隙間Gが1tを超えると、上板の溶け落ちが生じることによって穴あきが発生した(比較例)。
【0137】
また、板厚tが400μmのステンレス箔外包材(No.22および23の参考例)の場合、板間隙間Gが0.8tの条件であっても穴あきが生じることがあった。これは、本発明例である板厚tが20〜100μmのステンレス箔外包材の場合とは異なる結果である。本発明例では、板間隙間Gが0.8tの場合であっても、正常に溶接することができる。
【0138】
この理由は、参考例のように板厚が厚い場合、熱容量が大きくレーザ溶接時に抜熱しにくいため金属の溶融状態が本発明例に比べて長く続くことから、溶融金属が垂れて穴あきを生じ易いためであると考えられる。
【0139】
(参考例)
また、本発明例との比較のために、板厚tが400μmの参考例について、板間隙間Gが0.8tよりもさらに小さい場合におけるレーザ溶接部の穴あきの有無を調査する試験を行った。具体的には、溶接幅Wが3.5tの条件にて板間隙間Gを110μm〜200μm、すなわち板厚比0.28t〜0.5tとした場合について試験した。結果を表4に示す。
【0140】
【表4】
【0141】
表4に示すように、板厚tが400μmのステンレス箔外包材を用いる場合、板厚比0.28tでは穴あきが生じなかったものの(No.31)、0.28tよりも大きい板厚比では穴あきが生じた(No.32〜34)。
【0142】
また、板間隙間Gを120μm(0.3t)として試験を行った結果、図7に示すようにレーザ溶接部に穴あきが生じた。図7は、参考例におけるレーザ溶接部の断面について、光学顕微鏡を用いて観察した様子を示す模式図である。
【0143】
図7に示すように、ステンレス箔100aおよびステンレス箔100bはそれぞれ、板厚tが400μmであり、板間隙間Gは120μm(板厚比0.3t)である。また、溶接幅Wは1.4mm(板厚比3.5t)である。この参考例では、板厚tが400μmと厚いことから、ステンレス箔の熱容量が大きい。そのため、板間隙間Gが本発明の範囲内の条件であっても、レーザ溶接時に溶融状態が比較的長く続き、溶融金属が垂れてしまって穴あきが生じると考えられる。これに対して、上述の本発明の実施例に示すように、同程度の板厚比において、板厚が小さい場合は溶け落ちが生じることなく健全な溶接部を形成することができる。
【0144】
以上の結果を総括すると、本発明例では板厚が20〜100μmという薄い材料を対象としており、溶融状態での熱容量が小さいことから、溶融金属の冷却が早く、かつ熱影響部は収縮を伴って凝固してレーザ溶接部を形成する。そのため、板間隙間Gの板厚比が 1.0tと大きい場合であっても、また溶接幅Wが10tと大きい場合であっても、穴あきを生じることなくレーザ溶接部を形成することができる。換言すれば、本発明例では、板厚が薄いことによって熱容量が小さいこと等の理由により、例えば400μmのような板厚のステンレス箔を用いる場合とは明確に異なる現象が生じている。よって、従来技術に基づいて、本発明の板間隙間および溶接幅の条件範囲(技術的思想)には容易に想到し得ないことがわかる。
【0145】
(密閉性評価)
上述の試験において、外観検査にて問題の無かった(穴あきが生じなかった)試料を供試材とした。165mm×26mm×0.1mmのポリオレフィン系熱融着フィルム(大日本印刷株式会社製)に、スリット部を形成し、スリット部を含む中心線で折り曲げた。そして、得られた熱融着シートを、供試材の未溶接の部分から2本のレーザ溶接部の端に突き当たるまで挿入した。熱融着シートのスリット部に電池室から延出する電極部を挿通し、熱融着シートで電極部を挟んだ。そして、電極部および熱融着シートをステンレス箔外包材の未溶接部のフランジで挟み、当該部分をヒートシーラーで190℃、10秒間加圧してヒートシールにより接合した。そして、レーザ溶接部の不要な部分を切断して除去した。これにより、電池を作製した(図4の(c)参照)。
【0146】
作製した電池における電池外装材の一部に穴を開け、電池室内を抜気することにより負圧にした状態で、Heリーク試験を行い気密性の調査を行った。その結果、外観観察で問題のなかった供試材を用いて作製した電池は、Heリーク試験において問題は無く、充分な気密性を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は、リチウムイオン電池などの二次電池に好適に利用することができる。例えば、電気自動車等の車両に搭載される二次電池、各種電子機器に搭載される二次電池、等に利用することができる。
【符号の説明】
【0148】
1 電池外装材
1a・1b ステンレス箔
2 電池室
3 フランジ部(接合部)
5 レーザ溶接部(溶接部)
20 電池要素
100 電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7