特許第6859995号(P6859995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6859995
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/04 20060101AFI20210405BHJP
   B60T 7/08 20060101ALI20210405BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20210405BHJP
   B60T 11/04 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   B60T7/04 C
   B60T7/08 B
   B60T1/06 D
   B60T11/04
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-233148(P2018-233148)
(22)【出願日】2018年12月13日
(65)【公開番号】特開2020-93672(P2020-93672A)
(43)【公開日】2020年6月18日
【審査請求日】2020年11月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久岡 泰裕
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−065577(JP,A)
【文献】 特開2017−058000(JP,A)
【文献】 特開昭61−012458(JP,A)
【文献】 特開2001−248670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/00−7/10
B60T 10/00−11/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源によって発生した動力が伝達され、差動装置を介して駆動輪に動力を伝達する駆動軸部と、
ブレーキペダルが踏み込まれた場合に、前記駆動軸部で制動力を発生させる駆動軸制動機構と
ブレーキレバーが操作された場合に、前記駆動輪の車軸のうち、一方の車軸で制動力を発生させる車軸制動機構と、
前記ブレーキペダル、または前記ブレーキレバーが操作された場合に、前記駆動軸制動機構、および前記車軸制動機構を作動させるリンク機構と
を備えることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記リンク機構は、
前記ブレーキペダル、または前記ブレーキレバーが操作された場合に、前記駆動軸制動機構を作動させた後に、前記車軸制動機構を作動させる
ことを特徴とする請求項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右の後輪をそれぞれ制動する左ブレーキ、および右ブレーキを備え、左ブレーキペダル、または右ブレーキペダルが踏み込まれた場合には、一方のブレーキで制動力を発生させる作業車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような作業車両では、左ブレーキペダル、および右ブレーキペダルを連結し、左右のブレーキに同時に制動力を発生させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−192849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来の作業車両では、走行中には大きなトルクがかかる後輪の車軸に制動力を発生させるため、制動装置が大型になる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、コンパクトな制動装置を用いた作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態の一態様に係る作業車両(1)は、動力源(13)によって発生した動力が伝達され、差動装置(25)を介して駆動輪(8)に動力を伝達する駆動軸部(22)と、ブレーキペダル(81)が踏み込まれた場合に、駆動軸部(22)で制動力を発生させる駆動軸制動機構(20)と、ブレーキレバー(80)が操作された場合に、駆動輪(8)の車軸のうち、一方の車軸で制動力を発生させる車軸制動機構(21)と、ブレーキペダル(81)、またはブレーキレバー(80)が操作された場合に、駆動軸制動機構(20)、および車軸制動機構(21)を作動させるリンク機構(50)とを備える。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、作業車両の制動装置をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、作業車両の概略側面図である。
図2図2は、リアアクスルハウジング付近におけるトラクタの構成を示す図である。
図3図3は、可動部を示す概略図である。
図4図4は、図3のIV-IV断面図である。
図5図5は、トラクタの一部を示す右前方斜視図である。
図6図6は、トラクタの一部を示す左前方斜視図である。
図7図7は、ブレーキペダルが操作された場合のリンク機構の動作を示す図である。
図8図8は、ブレーキレバーが操作された場合のリンク機構の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両1の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。図1は、作業車両1の概略側面図である。なお、以下では、作業車両1として、トラクタ1を例に説明する。
【0011】
以下参照する図面では、説明を分かりやすくするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする直交座標系を示すことがある。
【0012】
また、ここでは、Y軸正方向を前方とし、Y軸負方向を後方とする前後方向を規定し、X軸正方向を右方とし、X軸負方向を左方とする左右方向を規定する。また、Z軸正方向を上方とし、Z軸負方向を下方とする上下方向を規定する。
【0013】
また、前後方向とは、トラクタ1の前後方向である。さらに言えば、前後方向とは、トラクタ1が直進するときの進行方向であり、進行方向前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。また、作業者(操縦者ともいう)が座席10に座り、前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。
【0014】
トラクタ1は、車体フレーム2の前方下側に揺動自在に取り付けられたフロントアクスル3と、車体フレーム2の後方下側に揺動自在に取り付けられたミッションケース4と、ミッションケース4から左右方向に延出する一対のリアアクスルハウジング5とを備える。
【0015】
フロントアクスル3は、左右一対の前輪7を備える。リアアクスルハウジング5は、左右一対の後輪8を備える。
【0016】
また、トラクタ1は、前後方向における車体フレーム2の中間部にステップフロア9を備える。ステップフロア9上の操縦部には、座席10、操作パネル11、ステアリングハンドル12、各種操作レバー、操作ペダル類が設けられる。
【0017】
また、トラクタ1は、ステップフロア9よりも前方で、車体フレーム2に支持されるエンジン13(動力源)と、エンジン13を覆うボンネット14とを備える。トラクタ1は、エンジン13で発生した動力を、駆動軸部22(図2参照)などを介して後輪8に伝達し、走行する。
【0018】
次に、トラクタ1の制動機構20、21の構成について図2を参照し説明する。図2は、リアアクスルハウジング5付近におけるトラクタ1の構成を示す図である。
【0019】
トラクタ1は、駆動軸制動機構20と、車軸制動機構21とを備える。駆動軸制動機構20は、駆動軸部22に制動力を発生させることで、後輪8を制動する。
【0020】
なお、駆動軸部22は、エンジン13(図1参照)によって発生した動力が伝達されるプロペラシャフト23と、歯車部24とを備える。歯車部24は、軸24aと共に回転する第1歯車24bと、軸24aと共に回転する第2歯車24cとを備える。
【0021】
第1歯車24bは、傘歯車であり、プロペラシャフト23の先端に設けられた傘歯車23aと噛み合う。第2歯車24cは、例えば、平歯車であり、差動装置25のファイナルギア25aと噛み合う。
【0022】
駆動軸制動機構20は、駆動軸部22の軸24aと共に回転するディスク30と、駆動軸制動アーム15の回動に応じてディスク30を挟持可能な挟持部31とを備える。
【0023】
挟持部31は、固定部31aと、可動部31bとを備える。固定部31aは、リアアクスルハウジング5に固定される。なお、固定部31aは、ベアリング17を介して駆動軸部22の軸24aを回転自在に支持する。
【0024】
可動部31bは、図3に示すように、円環状に形成される。可動部31bには、駆動軸制動アーム15が係合する係合穴31cと、ボール31eの一部が収容されるボール穴31dとが形成される。図3は、可動部31bを示す概略図である。ボール穴31dは、複数形成され、図4に示すように、底面が傾斜するように形成される。図4は、図3のIV-IV断面図である。
【0025】
可動部31bは、駆動軸制動アーム15によって回動可能であり、ボール穴31dに収容されるボール31eがボール穴31dの深さが深い非作動位置にある場合には、ディスク30とは接触しない。そのため、ボール31eが非作動位置にある場合には、駆動軸制動機構20は、駆動軸部22で制動力を発生させず、後輪8を制動しない。
【0026】
また、可動部31bは、ボール31eが非作動位置にある状態から駆動軸制動アーム15によって回動された場合には、ボール31eに対し、軸24aの軸方向に沿ってディスク30側に移動し、ディスク30と接触する。これにより、挟持部31が、ディスク30を挟持し、駆動軸制動機構20は、駆動軸部22で制動力を発生させ、後輪8を制動する。
【0027】
車軸制動機構21は、後輪8の車軸8a、8bの一方で制動力を発生させる。例えば、車軸制動機構21は、左側の後輪8の車軸8aで制動力を発生させる。
【0028】
車軸制動機構21は、車軸8aと共に回転するディスク40と、車軸制動アーム16の回動に応じてディスク40を挟持可能な挟持部41とを備える。
【0029】
挟持部41は、固定部41aと、可動部41bとを備える。固定部41aは、リアアクスルハウジング5に固定される。
【0030】
可動部41bの構成は、駆動軸制動機構20の可動部31bと同様であり、詳しい説明は省略する。可動部41bは、ボール41cが非作動位置にある場合には、ディスク40とは接触しない。そのため、車軸制動機構21は、車軸8aで制動力を発生させず、後輪8を制動しない。
【0031】
また、可動部41bは、車軸制動アーム16によって回動可能であり、ボール41cが非作動位置にある状態から車軸制動アーム16によって回動された場合には、ボール41cに対し、車軸8aの軸方向に沿ってディスク40側に移動し、ディスク40と接触する。これにより、挟持部41が、ディスク40を挟持し、車軸制動機構21は、車軸8aで制動力を発生させ、後輪8を制動する。
【0032】
次に、駆動軸制動機構20、および車軸制動機構21を作動させるリンク機構50について図5、および図6を参照し説明する。図5は、トラクタ1の一部を示す右前方斜視図である。図6は、トラクタ1の一部を示す左前方斜視図である。
【0033】
リンク機構50は、第1回動部51と、第2回動部52と、第1リンク53と、第2リンク54と、第3リンク55と、第4リンク56と、第5リンク57とを備える。
【0034】
第1回動部51は、回動軸60と、第1回動プレート61と、第2回動プレート62とを備える。回動軸60は、左右方向に延設され、例えば、車体フレーム2に回動自在に支持される。
【0035】
第1回動プレート61は、回動軸60の右側の端部に取り付けられ、回動軸60と一体に回動する。第1回動プレート61には、第1取付孔61aと、第2取付孔(不図示)とが形成される。第1取付孔61aは、長孔である。
【0036】
第2回動プレート62は、回動軸60の左側の端部に取り付けられ、回動軸60と一体に回動する。第2回動プレート62には、取付孔62aが形成される。取付孔62aは、長孔である。
【0037】
第2回動部52は、回動軸70と、第1回動プレート71と、第2回動プレート72とを備える。回動軸70は、左右方向に延設され、例えば、車体フレーム2に回動自在に支持される。
【0038】
第1回動プレート71は、回動軸70の右側の端部に取り付けられ、回動軸70と一体に回動する。第1回動プレート71には、取付孔71aが形成される。取付孔71aは、長孔である。
【0039】
第2回動プレート72は、回動軸70の左側の端部に取り付けられ、回動軸70と一体に回動する。第2回動プレート72には、第1取付孔(不図示)と、第2取付孔72aとが形成される。第2取付孔72aは、長孔である。第2回動プレート72は、ワイヤ82を介してブレーキレバー80に連結される。第1取付孔には、ワイヤ82が取り付けられる。
【0040】
第1リンク53は、ブレーキペダル81と第1回動部51とを連結する。具体的には、第1リンク53は、ブレーキペダル81と第1回動部51の第1回動プレート61とを連結する。第1リンク53は、ブレーキペダル81、および第1回動プレート61に回動自在に取り付けられる。
【0041】
第1リンク53の前端に設けられた第1ピン53aは、ブレーキペダル81に設けられた取付孔(不図示)に回動自在に挿入される。第1リンク53の後端に設けられた第2ピン53bは、図6に示すように、第1回動プレート61の第1取付孔61aに摺動可能に挿入される。なお、図6では、第1取付孔61aと第1リンク53の第2ピン53bとの関係を模式的に示しており、第1取付孔61aの形状などを限定するものではない。他の取付孔62a、71a、72aにおいても同様である。
【0042】
ブレーキペダル81、およびブレーキレバー80が操作されていない解放状態において、第1リンク53の第2ピン53bは、第1取付孔61aの前端に当接するように設けられる。
【0043】
第2リンク54は、第1回動部51と駆動軸制動アーム15とを連結する。具体的には、第2リンク54は、第1回動部51の第1回動プレート61と駆動軸制動アーム15とを連結する。第2リンク54は、第1回動プレート61、および駆動軸制動アーム15に回動自在に取り付けられる。第2リンク54の前端に設けられた第1ピン54aは、第1回動プレート61の第2取付孔(不図示)に回動自在に挿入される。第2リンク54の後端に設けられた第2ピン54bは、駆動軸制動アーム15の第1取付孔(不図示)に回動自在に挿入される。
【0044】
第3リンク55は、第2回動部52と駆動軸制動アーム15とを連結する。具体的には、第3リンク55は、第2回動部52の第1回動プレート71と駆動軸制動アーム15とを連結する。第3リンク55は、第1回動プレート71、および駆動軸制動アーム15に回動自在に取り付けられる。
【0045】
第3リンク55の前端に設けられた第1ピン55aは、図6に示すように、第1回動プレート71の取付孔71aに摺動可能に挿入される。解放状態において、第3リンク55の第1ピン55aは、解放状態において、取付孔71aの後端に当接するように設けられる。
【0046】
第3リンク55の後端に設けられた第2ピン55bは、駆動軸制動アーム15に形成された第2取付孔(不図示)に回動自在に挿入される。
【0047】
第4リンク56は、第1回動部51と車軸制動アーム16とを連結する。具体的には、第4リンク56は、第1回動部51の第2回動プレート62と車軸制動アーム16とを連結する。第4リンク56は、第2回動プレート62、および車軸制動アーム16に回動自在に取り付けられる。
【0048】
第4リンク56の前端に設けられた第1ピン56aは、図6に示すように、第2回動プレート62の取付孔62aに摺動可能に挿入される。第4リンクの第1ピン56aは、解放状態において、第1ピン56aと、取付孔62aの前端、および後端との間に隙間が生じるように設けられる。
【0049】
第4リンク56の後端に設けられた第2ピン56bは、車軸制動アーム16に形成された第1取付孔(不図示)に回動自在に挿入される。
【0050】
第5リンク57は、第2回動部52と車軸制動アーム16とを連結する。具体的には、第5リンク57は、第2回動部52の第2回動プレート72と車軸制動アーム16とを連結する。第5リンク57は、第2回動プレート72、および車軸制動アーム16に回動自在に取り付けられる。
【0051】
第5リンク57の前端に設けられた第1ピン57aは、図6に示すように、第2回動プレート72の第2取付孔72aに摺動可能に挿入される。第5リンク57の第1ピン57aは、解放状態において、第1ピン57aと、第2取付孔72aの前端、および後端との間に隙間が生じるように設けられる。
【0052】
第5リンク57の後端に設けられた第2ピン57bは、車軸制動アーム16に形成された第2取付孔(不図示)に回動自在に挿入される。
【0053】
リンク機構50は、このような構成により、ブレーキペダル81、またはブレーキレバー80が操作された場合に、駆動軸制動機構20、および車軸制動機構21でタイミングをずらして制動力を発生させる。
【0054】
次に、リンク機構50の作用について説明する。
【0055】
まず、ブレーキペダル81が操作された場合について、図7を参照し説明する。図7は、ブレーキペダル81が操作された場合のリンク機構50の動作を示す図である。図7では、ブレーキペダル81が操作され、リンク機構50において回動する箇所を実線の矢印で示す。
【0056】
ブレーキペダル81が踏み込まれた場合には、ブレーキペダル81の踏み込みに応じて第1リンク53が解放状態の位置から前方側に移動する。解放状態では、第1リンク53の第2ピン53bが第1回動プレート61の第1取付孔61aの前端に当接しているため(図6参照)、第1回動部51は、前方に向けて回動する。
【0057】
また、第1回動部51が前方に向けて回動することで、第1回動プレート61の第2取付孔(不図示)に取り付けられた第2リンク54が第1回動部51の回動に伴い前方に移動し、駆動軸制動アーム15は、前方に向けて回動する。
【0058】
これにより、駆動軸制動機構20(図2参照)では、制動力が発生する。このように、駆動軸制動機構20は、ブレーキペダル81が踏み込まれると直ぐに駆動軸部22で制動力を発生させる。なお、ブレーキペダル81は、解放状態から所定の踏み込み量に対し、制動力を発生させない余裕代を設けてもよい。
【0059】
解放状態では、第1回動部51の第2回動プレート62の取付孔62aの後端と、取付孔62aに挿入される第4リンク56の第1ピン56aとの間には、隙間が設けられている(図6参照)。そのため、ブレーキペダル81が踏み込まれ、第4リンク56の第1ピン56aと第2回動プレート62の取付孔62aの後端とが当接するまで、第4リンク56は、前方には移動しない。
【0060】
第4リンク56の第1ピン56aが第2回動プレート62の取付孔62aの後端に当接し、さらにブレーキペダル81が踏み込まれた場合には、第4リンク56は、第2回動プレート62の回動に伴い前方に移動する。そして、第4リンク56の前方への移動に伴い、車軸制動アーム16が、前方に向けて回動する。
【0061】
これにより、車軸制動機構21(図2参照)では、制動力が発生する。すなわち、ブレーキペダル81が踏み込まれた場合には、リンク機構50は、駆動軸制動機構20によって制動力を発生させた後に、車軸制動機構21によって制動力を発生させる。
【0062】
なお、第2リンク54を介して駆動軸制動アーム15が前方に向けて回動し、第3リンク55が駆動軸制動アーム15に伴って前方側に移動した場合であっても、第3リンク55の第1ピン55aが第2回動部52の第1回動プレート71の取付孔71aの前端に当接しないように、第3リンク55の第1ピン55aと、取付孔71aの前端との間には、隙間が形成されている。そのため、ブレーキペダル81が踏み込まれ、駆動軸制動アーム15が回動した場合であっても、駆動軸制動アーム15の前方への回動が、第3リンク55、および第2回動部52を介して車軸制動アーム16に伝達されることはない。
【0063】
また、第4リンク56を介して車軸制動アーム16が回動した場合であっても、第5リンク57の第1ピン57aが第2回動部52の第2回動プレート72の第2取付孔72aの前端に当接しないように、第5リンク57の第1ピン57aと、第2取付孔72aの前端との間には隙間が形成されている。そのため、ブレーキペダル81が踏み込まれ、車軸制動アーム16が回動した場合であっても、車軸制動アーム16の前方への回動が、第5リンク57を介して第2回動部52に伝達されることはない。
【0064】
次に、ブレーキレバー80が操作された場合について、図8を参照し説明する。図8は、ブレーキレバー80が操作された場合のリンク機構50の動作を示す図である。図8では、ブレーキレバー80が操作され、リンク機構50において回動する箇所を実線の矢印で示す。
【0065】
ブレーキレバー80が操作され、上方に引き上げられた場合には、ブレーキレバー80の引き上げに応じて第2回動部52の第2回動プレート72が、解放状態の位置から回動する。これにより、第2回動部52の第1回動プレート71が、回動する。
【0066】
解放状態では、第3リンク55の第1ピン55aが、第2回動部52の第1回動プレート71の取付孔71aの後端に当接しているため(図6参照)、第3リンク55は、第2回動部52の回動に伴い、前方に移動し、第3リンク55によって駆動軸制動アーム15は、前方に向けて回動する。
【0067】
これにより、駆動軸制動機構20(図2参照)では、制動力が発生する。このように、駆動軸制動機構20は、ブレーキレバー80が引き上げられると直ぐに制動力を発生させる。なお、ブレーキレバー80は、解放状態から所定の引き上げ量に対し、制動力を発生させない余裕代を設けてもよい。
【0068】
解放状態では、第2回動部52の第2回動プレート62の第2取付孔72aの後端と、第2取付孔72aに挿入される第5リンク57の第1ピン57aとの間には、隙間が設けられている(図6参照)。そのため、ブレーキレバー80が引き上げられ、第5リンク57の第1ピン57aと第2取付孔72aの後端とが当接するまで、第5リンク57は、前方に移動しない。
【0069】
第5リンク57の第1ピン57aが第2回動プレート62の第2取付孔72aの後端に当接し、さらに、ブレーキレバー80が引き上げられた場合には、第5リンク57は、第2回動プレート72の回動に伴い前方に移動する。そして、第5リンク57の移動に伴い、車軸制動アーム16が、前方に向けて回動する。
【0070】
これにより、車軸制動機構21(図2参照)では、制動力が発生する。すなわち、ブレーキレバー80が引き上げられた場合にも、駆動軸制動機構20によって制動力が発生した後に、車軸制動機構21によって制動力が発生する。
【0071】
なお、第5リンク57を介して車軸制動アーム16が前方に向けて回動し、第4リンク56が車軸制動アーム16に伴って前方に移動した場合であっても、第4リンク56の第1ピン56aと、第1回動部51の第2回動プレート62の取付孔62aの前端との間には、隙間が形成されている(図6参照)。そのため、ブレーキレバー80が引き上げられ、車軸制動アーム16が前方に向けて回動した場合であっても、車軸制動アーム16の回動が、第4リンク56を介して第1回動部51に伝達されることはない。
【0072】
また、第3リンク55を介して駆動軸制動アーム15が前方に向けて回動し、第2リンク54が駆動軸制動アーム15に伴って前方に移動した場合であっても、第1リンク53の第1ピン53aと、第1回動部51の第1回動プレート61の第1取付孔61aの後端との間には、隙間が形成されている(図6参照)。そのため、ブレーキレバー80が引き上げられ、駆動軸制動アーム15が回動した場合であっても、駆動軸制動アーム15の回動が、第1リンク53に伝達されることはない。
【0073】
このように、ブレーキレバー80が引き上げられた場合であっても、ブレーキペダル81が動くことはない。そのため、ブレーキレバー80が引き上げられた場合に、作業者がブレーキペダル81を操作していない状況で、ブレーキペダル81が動くことはない。従って、トラクタ1は、作業者に違和感を与えることを抑制することができる。
【0074】
次に、本実施形態に係るトラクタ1の効果について説明する。
【0075】
トラクタ1は、ブレーキペダル81が踏み込まれた場合に、エンジン13によって発生した動力を、差動装置25を介して後輪8に伝達する駆動軸部22と、駆動軸部22で制動力を発生させる駆動軸制動機構20とを備える。
【0076】
これにより、トラクタ1は、車軸8a、8bよりもトルクが小さい駆動軸部22で制動力を発生させることができ、コンパクトな駆動軸制動機構20によって制動力を発生させることができる。従って、トラクタ1を小型化することができる。また、トラクタ1は、1つの駆動軸制動機構20によって左右の後輪8を制動することができる。
【0077】
トラクタ1は、ブレーキレバー80が引き上げられた場合に、車軸8aで制動力を発生させる車軸制動機構21を備える。
【0078】
これにより、トラクタ1は、ブレーキレバー80の操作によって制動力を発生させることができ、例えば、停車中にトラクタ1が動くことを抑制することができる。すなわち、トラクタ1は、車軸制動機構21をパーキングブレーキとして用いることができる。また、トラクタ1は、コンパクトな車軸制動機構21によって制動力を発生させることができる。従って、トラクタ1を小型化することができる。
【0079】
トラクタ1は、ブレーキペダル81が踏み込まれた場合に、駆動軸制動機構20、および車軸制動機構21を作動させるリンク機構50を備える。
【0080】
これにより、トラクタ1は、ブレーキペダル81の操作によって、2つの制動機構20、21で制動力を発生させることができる。そのため、トラクタ1は、安定して静止状態を保持することができる。
【0081】
トラクタ1は、ブレーキレバー80が引き上げられた場合に、駆動軸制動機構20、および車軸制動機構21を作動させるリンク機構50を備える。
【0082】
これにより、トラクタ1は、ブレーキレバー80の操作によって、2つの制動機構20、21で制動力を発生させることができる。そのため、トラクタ1は、安定して静止状態を保持することができる。
【0083】
トラクタ1は、ブレーキペダル81、またはブレーキレバー80が操作された場合に、駆動軸制動機構20を作動させた後に、車軸制動機構21を作動させる。
【0084】
これにより、トラクタ1は、駆動軸部22で制動力を発生させて、車速が十分に低くなった後、または、停車させた後に、車軸8aで制動力を発生させることができる。そのため、トラクタ1は、車軸8aのみに制動力を発生させる片ブレーキとなることを防止することができる。
【0085】
変形例に係るトラクタ1は、ブレーキペダル81が踏み込まれた場合には、駆動軸制動機構20のみで制動力を発生させてもよい。これにより、変形例に係るトラクタ1は、走行中にブレーキペダル81が踏み込まれた場合に、片ブレーキとなることを防止することができる。
【0086】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 トラクタ
2 車体フレーム
8 後輪
8a 車軸
8b 車軸
13 エンジン
15 駆動軸制動アーム
16 車軸制動アーム
20 駆動軸制動機構
21 車軸制動機構
22 駆動軸部
25 差動装置
50 リンク機構
80 ブレーキレバー
81 ブレーキペダル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8