(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態における蓄電素子について説明する。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
【0018】
また、以下で説明する実施の形態は、それぞれ本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程の順序などは一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0019】
まず、
図1〜
図3を用いて、実施の形態における蓄電素子10の全般的な説明を行う。
【0020】
図1は、実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。
図2は、実施の形態に係る蓄電素子10の分解斜視図である。
図3は、実施の形態に係る蓋板構造体180の分解斜視図である。なお、
図3では、蓋板構造体180が有する正極集電体140及び負極集電体150に接合される正極リード板145及び負極リード板155は、点線で図示されている。
【0021】
また、
図1及び以降の図について、説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明しているが、実際の使用態様において、Z軸方向と上下方向とが一致しない場合もある。
【0022】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)またはプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等に適用される。なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。
【0023】
図1及び
図2に示すように、蓄電素子10は、電極体400と、電極体400を収容する容器100とを備える。本実施の形態では、容器100の蓋板110に各種の要素が配置されることで構成された蓋板構造体180が、電極体400の上方に配置されている。
【0024】
蓋板構造体180は、容器100の蓋板110、正極端子200、負極端子300、上部絶縁部材125及び135、下部絶縁部材120及び130、正極集電体140並びに負極集電体150を有する。
【0025】
正極端子200は、正極集電体140を介して電極体400の正極と電気的に接続され、負極端子300は、負極集電体150を介して電極体400の負極と電気的に接続される。これら正極端子200等の、電極体400と電気的に接続される導電部材のそれぞれは、下部絶縁部材120等の絶縁部材によって容器100と絶縁されている。
【0026】
上部絶縁部材125及び135並びに下部絶縁部材120及び130のそれぞれは、少なくとも一部が、容器100の壁部と導電部材との間に配置された絶縁部材である。本実施の形態では、略直方体の外形を有する容器100を形成する6つの壁部のうちの、上壁部を形成する蓋板110に沿って各絶縁部材が配置されている。
【0027】
本実施の形態に係る蓄電素子10は上記構成に加え、蓋板構造体180と電極体400との間に配置された、上部スペーサ500と緩衝シート600とを有する。
【0028】
上部スペーサ500は、電極体400の、タブ部410及び420が設けられた端部と蓋板110との間に配置され、蓋板構造体180の一部に係止される係止部510を有している。言い換えると、上部スペーサ500は、蓋板構造体180の一部に引っ掛かる部分である係止部510を有している。
【0029】
具体的には、上部スペーサ500は全体として平板状であり、かつ、2つの係止部510と、タブ部410及び420が挿入される(タブ部410及び420を貫通させる)2つの開口部520とを有している。本実施の形態では、開口部520は、上部スペーサ500において切り欠き状に設けられている。上部スペーサ500は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、または、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等の絶縁性を有する素材によって形成されている。
【0030】
上部スペーサ500は、例えば、電極体400の上方(蓋板110の方向)への移動を直接的もしくは間接的に規制する部材、または、蓋板構造体180と電極体400との間における短絡を防止する部材として機能する。上部スペーサ500は、2つの係止部510を有し、2つの係止部510のそれぞれは、蓋板構造体180が有する取付部122または132に係止される。
【0031】
緩衝シート600は、発泡ポリエチレンなどの、柔軟性の高い多孔質の素材で形成されており、電極体400と上部スペーサ500との間の緩衝材として機能する部材である。また、緩衝シート600にも、上部スペーサ500と同じく、タブ部410及び420が挿入される(タブ部410及び420を貫通させる)2つの開口部620が形成されており、本実施の形態では、開口部620は、緩衝シート600において切り欠き状に設けられている。
【0032】
また、本実施の形態では、電極体400の、電極体400と蓋板110との並び方向(Z軸方向)と交差する方向の側面(本実施の形態ではX軸方向の両側面)と、容器100の内面との間にサイドスペーサ700が配置されている。サイドスペーサ700は、例えば、電極体400の位置を規制する役割を果たしている。サイドスペーサ700は、例えば上部スペーサ500と同様に、PC、PP、PE、またはPPS等の絶縁性を有する素材によって形成されている。
【0033】
なお、蓄電素子10は、
図1〜
図3に図示された要素に加え、例えば電極体400を包み込む絶縁フィルム、電極体400と容器100(本体111)の底面との間に配置された緩衝シートなど、他の要素を備えてもよい。また、蓄電素子10の容器100の内部には電解液(非水電解質)が封入されているが、電解液の図示は省略する。
【0034】
容器100は、矩形筒状で底を備える本体111と、本体111の開口を閉塞する板状部材である蓋板110とで構成されている。容器100は、全体として直方体の形状であり、上述のように6つの壁部で形成されている。具体的には、蓋板110によって形成される上壁部と、上壁部に対向する下壁部と、上壁部及び下壁部を接続する4つの側壁部とを有する。つまり、本体111により下壁部と4つの側壁部とが形成されている。
【0035】
また、容器100は、電極体400等を内部に収容後、蓋板110と本体111とが溶接等されることにより、内部を密封することができるものとなっている。なお、蓋板110及び本体111の材質は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0036】
蓋板110には、
図2及び
図3に示されるように、安全弁170、注液口117、貫通孔110a及び110b、並びに、2つの膨出部160が形成されている。安全弁170は、容器100の内圧が上昇した場合に開放することで、容器100の内部のガスを放出する役割を有する。
【0037】
注液口117は、蓄電素子10の製造時に電解液を注液するための貫通孔である。また、
図1〜
図3に示すように、蓋板110には、注液口117を塞ぐように、注液栓118が配置されている。つまり、蓄電素子10の製造時に、注液口117から容器100内に電解液を注入し、注液栓118を蓋板110に溶接して注液口117を塞ぐことで、電解液が容器100内に収容される。容器100に封入される電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく様々なものを選択することができる。また、注液口117から電解液を注入する際に、例えば、容器100の内部を減圧した状態で電解液を注入することで、必要な量の電解液を、容器100の内部に効率よく注入することができる。
【0038】
なお、本実施の形態に係る蓄電素子10が有する、注液口117に関する構造上の特徴については、
図5〜
図7を用いて後述する。
【0039】
2つの膨出部160のそれぞれは、本実施の形態では、蓋板110の一部が膨出状に形成されていることで蓋板110に設けられており、例えば、上部絶縁部材125または135の位置決めに利用される。また、膨出部160の裏側(電極体400に対向する側)には上方に凹状の部分である凹部(図示せず)が形成されており、凹部の一部に、下部絶縁部材120または130の係合部120bまたは130bが係合する。これにより、下部絶縁部材120または130も位置決めされ、その状態で蓋板110に固定される。
【0040】
上部絶縁部材125は、正極端子200と蓋板110とを電気的に絶縁する部材であり、下部絶縁部材120は、正極集電体140と蓋板110とを電気的に絶縁する部材である。上部絶縁部材135は、負極端子300と蓋板110とを電気的に絶縁する部材であり、下部絶縁部材130は、負極集電体150と蓋板110とを電気的に絶縁する部材である。上部絶縁部材125及び135は、例えば上部パッキンと呼ばれる場合もあり、下部絶縁部材120及び130は、例えば下部パッキンと呼ばれる場合もある。つまり、本実施の形態では、上部絶縁部材125及び135並びに下部絶縁部材120及び130は、電極端子(200または300)と容器100との間を封止する機能も有している。
【0041】
なお、上部絶縁部材125及び135、並びに、下部絶縁部材120及び130は、例えば上部スペーサ500と同様に、PC、PP、PE、またはPPS等の絶縁性を有する素材によって形成されている。また、下部絶縁部材120の、注液口117の直下に位置する部分には、注液口117から注入される電解液を電極体400の方向に導く貫通孔121が設けられている。
【0042】
正極端子200は、正極集電体140を介して、電極体400の正極に電気的に接続された電極端子であり、負極端子300は、負極集電体150を介して、電極体400の負極に電気的に接続された電極端子である。つまり、正極端子200及び負極端子300は、電極体400に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出し、また、電極体400に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。なお、正極端子200及び負極端子300は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成されている。
【0043】
また、正極端子200には、容器100と正極集電体140とを締結する締結部210が設けられ、負極端子300には、容器100と負極集電体150とを締結する締結部310が設けられている。
【0044】
締結部210は、正極端子200から下方に延設された部材(リベット)であり、正極集電体140の貫通孔140aに挿入されてかしめられる。具体的には、締結部210は、上部絶縁部材125の貫通孔125a、蓋板110の貫通孔110a、下部絶縁部材120の貫通孔120a、及び、正極集電体140の貫通孔140aに挿入されてかしめられる。これにより、正極端子200と正極集電体140とが電気的に接続され、正極集電体140は、正極端子200、上部絶縁部材125及び下部絶縁部材120とともに、蓋板110に固定される。
【0045】
締結部310は、負極端子300から下方に延設された部材(リベット)であり、負極集電体150の貫通孔150aに挿入されてかしめられる。具体的には、締結部310は、上部絶縁部材135の貫通孔135a、蓋板110の貫通孔110b、下部絶縁部材130の貫通孔130a、及び、負極集電体150の貫通孔150aに挿入されてかしめられる。これにより、負極端子300と負極集電体150とが電気的に接続され、負極集電体150は、負極端子300、上部絶縁部材135及び下部絶縁部材130とともに、蓋板110に固定される。
【0046】
なお、締結部210は、正極端子200との一体物として形成されていてもよく、正極端子200とは別部品として作製された締結部210が、かしめまたは溶接などの手法によって正極端子200に固定されていてもかまわない。締結部310と負極端子300との関係についても同様である。
【0047】
正極集電体140は、電極体400と容器100との間に配置され、電極体400と正極端子200とを電気的に接続する部材である。正極集電体140は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成されている。本実施の形態では、正極集電体140は、正極リード板145を介して電極体400の正極側のタブ部410と電気的に接続されている。
【0048】
負極集電体150は、電極体400と容器100との間に配置され、電極体400と負極端子300とを電気的に接続する部材である。負極集電体150は、銅または銅合金などで形成されている。本実施の形態では、負極集電体150は、負極リード板155を介して電極体400の負極側のタブ部420と電気的に接続されている。
【0049】
なお、リード板を介した集電体とタブ部との接続部分の詳細については、
図7を用いて後述する。
【0050】
次に、電極体400の構成について、
図4を用いて説明する。
図4は、実施の形態に係る電極体400の構成を示す斜視図である。なお、
図4では、電極体400の巻回状態を一部展開して図示している。
【0051】
電極体400は、電気を蓄えることができる発電要素であり、
図4に示すように、正極450及び負極460と、セパレータ470a及び470bとが交互に積層されかつ巻回されることで形成されている。つまり、電極体400は、正極450と、セパレータ470aと、負極460と、セパレータ470bとがこの順に積層され、かつ、断面が長円形状になるように巻回されることで形成されている。
【0052】
正極450は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などからなる長尺帯状の金属箔である正極基材層の表面に、正極活物質層が形成された電極板である。なお、正極活物質層に用いられる正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、正極活物質として、LiMPO
4、LiMSiO
4、LiMBO
3(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のポリアニオン化合物、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のスピネル化合物、LiMO
2(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のリチウム遷移金属酸化物等を用いることができる。
【0053】
負極460は、銅または銅合金などからなる長尺帯状の金属箔である負極基材層の表面に、負極活物質層が形成された電極板である。なお、負極活物質層に用いられる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、負極活物質として、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−錫、リチウム−アルミニウム−錫、リチウム−ガリウム、及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、金属酸化物、リチウム金属酸化物(Li
4Ti
5O
12等)、ポリリン酸化合物などが挙げられる。
【0054】
セパレータ470a及び470bは、樹脂からなる微多孔性のシートである。なお、蓄電素子10に用いられるセパレータ470a及び470bの素材としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければ適宜公知の材料を使用できる。
【0055】
正極450は、巻回軸方向の一端において外方に突出する複数の突出部411を有する。負極460も同様に、巻回軸方向の一端において外方に突出する複数の突出部421を有する。これら、複数の突出部411及び複数の突出部421は、活物質が塗工されず基材層が露出した部分(活物質未塗工部)である。
【0056】
なお、巻回軸とは、正極450及び負極460等を巻回する際の中心軸となる仮想的な軸であり、本実施の形態では、電極体400の中心を通るZ軸方向に平行な直線である。
【0057】
複数の突出部411と複数の突出部421とは、巻回軸方向の同一側の端(
図4におけるZ軸方向プラス側の端)に配置され、正極450及び負極460が積層されることにより、電極体400の所定の位置で積層される。具体的には、複数の突出部411は、正極450が巻回によって積層されることにより、巻回軸方向の一端において周方向の所定の位置で積層される。また、複数の突出部421は、負極460が巻回によって積層されることにより、巻回軸方向の一端において、複数の突出部411が積層される位置とは異なる周方向の所定の位置で積層される。
【0058】
その結果、電極体400には、複数の突出部411が積層されることで形成されたタブ部410と、複数の突出部421が積層されることで形成されたタブ部420とが形成される。タブ部410は、例えば積層方向の中央に向かって寄せ集められて、正極リード板145と、例えば超音波溶接によって接合される。また、タブ部420は、例えば積層方向の中央に向かって寄せ集められて、負極リード板155と、例えば超音波溶接によって接合される。タブ部410と接合された正極リード板145は、正極集電体140と接合され、タブ部420と接合された負極リード板155は負極集電体150と接合される。
【0059】
なお、タブ部(410、420)は、電極体400において、電気の導入及び導出を行う部分であり、「リード(部)」、「集電部」等の他の名称が付される場合もある。
【0060】
ここで、タブ部410は、基材層が露出した部分である突出部411が積層されることで形成されているため、発電に寄与しない部分となる。同様に、タブ部420は、基材層が露出した部分である突出部421が積層されることで形成されているため、発電に寄与しない部分となる。一方、電極体400のタブ部410及び420と異なる部分は、基材層に活物質が塗工された部分が積層されることで形成されているため、発電に寄与する部分となる。以降、当該部分を発電部分430と称する。つまり、本実施の形態では、タブ部410及び420のそれぞれは、電極体400の本体部である発電部分430の端部の一部から突出して設けられている、と表現できる。
【0061】
次に、本実施の形態に係る蓄電素子10が有する、注液口117に関する構造上の特徴について、
図5〜
図7を用いて説明する。
【0062】
図5は、実施の形態に係る注液口117及びその周辺の構造を示す斜視図であり、
図6は、実施の形態に係る注液口117及びその周辺の構造を示す分解斜視図である。なお、
図5では、容器100の内部における、注液口117からタブ部410までの構造を表すために、電極体400以外の要素については、注液口117を通るYZ平面で切断し、切断面よりも奥側(X軸方向マイナス側)のみが図示されている。また、
図6では、蓄電素子10の、注液口117が存在する正極端子200側の部分のみを図示し、負極端子300側の部分の図示が省略されている。さらに、
図5及び
図6において、注液口117を塞ぐ注液栓118の図示は省略されている。
【0063】
図7は、実施の形態に係る電極体400の上端部及びその周辺の構造を示す断面概要図である。なお、
図7には、
図3におけるVII−VII線を通るYZ平面で切断した場合の蓄電素子10の一部の断面が図示されており、X軸方向マイナス側のサイドスペーサ700(
図2参照)の図示は省略されている。また、電極体400は簡略化されて図示されている。
【0064】
図5及び
図6に示すように、本実施の形態に係る蓄電素子10では、容器100の壁部の、電極体400のタブ部410と対向する位置に、電解液を容器100内に注入するための注液口117が形成されている。本実施の形態では、容器100の上壁部を形成する蓋板110に、注液口117が形成されている。より具体的には、本実施の形態では、電極体400と、注液口117が形成された壁部(蓋板110)との並び方向(Z軸方向)から容器100を見た場合において、注液口117は、タブ部410と重なる位置に配置されている。
【0065】
このように、注液口117がタブ部410と対向する位置に配置されていることで、注液口117から注入された電解液は、タブ部410に即座に到達する。タブ部410は、上述のように、正極450の基材における正極活物質が塗工されていない部分(活物質未塗工部)が積層することで形成された部分である。また、タブ部410の一部が正極リード板145と接合されている。従って、タブ部410に対向する位置に配置された注液口117から注入された電解液は、タブ部を伝って電極体400(より詳細には、電極体400が有する正極450及び負極460の活物質層、並びに、セパレータ470a及び470b)に効率よく浸透する。
【0066】
また、電極体400の、タブ部410以外の端部(つまり、発電部分430のタブ部410が設けられた部分以外の上端部)については、例えば、セパレータ470a及び470bの端縁を折り曲げること、または、構造物を配置するなどの、異物の侵入抑制のための対策を施すことが可能である。
【0067】
本実施の形態では、
図2及び
図7に示すように、発電部分430の、タブ部410及び420が設けられた部分以外の上端部を覆うように、上部スペーサ500及び緩衝シート600が配置されている。そのため、仮に、容器100内において、微小な金属片等の異物が存在する場合であっても、積層方向に並ぶセパレータ470a及び470bの端縁の隙間から発電部分430の内方への当該異物の侵入が、上部スペーサ500または緩衝シート600によって抑制される。つまり、本実施の形態に係る蓄電素子10によれば、電解液を効率よく電極体400に浸透させることができ、また、電極体400の内方への異物の侵入を抑制することができる。
【0068】
また、本実施の形態に係る蓄電素子10において、正極集電体140と蓋板110との間に配置された下部絶縁部材120には、注液口117とタブ部410との間の位置に貫通孔121が形成されている。
【0069】
つまり、注液口117から注入される電解液の流れを阻害しない態様で、正極集電体140と、注液口117が設けられた蓋板110とを電気的に絶縁する下部絶縁部材120が配置されている。
【0070】
ここで、本実施の形態では、タブ部410に対向する位置に注液口117が配置される。そのため、タブ部410と電気的に接続される正極集電体140と蓋板110とを絶縁する下部絶縁部材120は、電解液の注入方向から見た場合に、注液口117と重なる位置に存在する。この場合であっても、下部絶縁部材120の、注液口117とタブ部410との間の位置に貫通孔121を形成することで、注液口117から注入された電解液を、貫通孔121を介してタブ部410に到達させることができる。つまり、電解液の注液口117からタブ部410への直線状の流路が確保される。
【0071】
また、本実施の形態に係る蓄電素子10において、電極体400のタブ部410が設けられた端部と、蓋板110との間に配置された上部スペーサ500には、タブ部410が挿入される開口部520が形成されている。
【0072】
つまり、電極体400の位置規制、電極体400と蓋板構造体180との短絡防止、または、電極体400の内方への異物の侵入抑制等の役割を上部スペーサ500に担わせるために、上部スペーサ500は、電極体400のタブ部410が設けられた端部と蓋板110との間に配置される。このような位置に上部スペーサ500が配置された場合であっても、タブ部410は、上部スペーサ500に設けられた開口部520に挿入されることで、注液口117に対して露出する。従って、本実施の形態に係る蓄電素子10によれば、上部スペーサ500による上記効果を得ながら、注液口117から注入された電解液をタブ部410に即座に到達させることができる。その結果、電極体400への電解液の浸透が効率よく行われる。
【0073】
また、電極体400の発電部分430と蓋板110との間に上部スペーサ500を配置することで、発電部分430と蓋板110とを、上部スペーサ500を挟んで近づけることが可能となる。これにより、例えば、容器100の容積に占める電極体400の割合を増加させることが可能となる。
【0074】
なお、本実施の形態では、正極集電体140及び正極リード板145も、注液口117から注入された電解液を通過させるための構造を有している。具体的には、
図6に示すように、正極集電体140は、端縁から内側に切り欠き状に形成された切欠部141を有し、正極リード板145は、端縁から内側に切り欠き状に形成された切欠部146を有する。
【0075】
つまり、注液口117から注入された電解液は、主として、下部絶縁部材120の貫通孔121、正極集電体140の切欠部141、及び、正極リード板145の切欠部146を、この順に通過して、タブ部410に到達する。
【0076】
このように、本実施の形態では、正極集電体140及び正極リード板145には、電解液の流れを阻害しないための構成として、切欠部141及び146が形成されている。これにより、例えば、電解液の注液口117からタブ部410への直線状の流路を確保するために、正極集電体140及び正極リード板145それぞれの細かな位置調整を行う必要がない。
【0077】
ここで、本実施の形態に係る正極リード板145は、例えば
図7に示されるように、断面がU字状である。また、上部スペーサ500によって、タブ部410と正極リード板145との接合部分と、電極体400の発電部分430とが仕切られており、タブ部410は、上部スペーサ500に設けられた開口部520に挿入されて配置される。上記構造は、例えば以下の手順で作製される。
【0078】
平板状の正極リード板145の端部(第一端部)と電極体400のタブ部410とを、例えば超音波溶接によって接合する。さらに、正極リード板145の第一端部とは反対側の端部(第二端部)を、蓋板構造体180に組み込まれた正極集電体140と、例えばレーザー溶接によって接合する。その後、正極リード板145を、第一端部と第二端部との間の所定の位置で折り曲げることでU字状に変形させる。その結果、
図7に示すように、断面がU字状の正極リード板145を介した、電極体400のタブ部410と正極集電体140との接続構造が形成される。その後、上部スペーサ500が、電極体400の発電部分430と蓋板構造体180との間に挿入される。
【0079】
なお、正極リード板145とタブ部410との接合の際に、負極リード板155とタブ部420との接合も行われ、正極リード板145と正極集電体140との接合の際に、負極リード板155と負極集電体150との接合も行われる。さらに、平板状の正極リード板145がU字状に変形される際に、平板状の負極リード板155もU字状に変形される。つまり、負極リード板155周辺の構造も、正極リード板145周辺の構造と同様である。すなわち、電極体400のタブ部420と、負極集電体150とは、断面がU字状の負極リード板155(例えば
図2参照)を介して電気的に接続されている。また、上部スペーサ500によって、タブ部420と負極リード板155との接合部分と、電極体400の発電部分430とが仕切られており、タブ部420は、上部スペーサ500に設けられた開口部520に挿入されて配置される。
【0080】
このように、電極体400と、正極集電体140及び負極集電体150とを、正極リード板145及び負極リード板155とを介して接続することで、電極体400のタブ部410及び420の長さ(巻回軸方向(Z軸方向)の長さ)を比較的短くすることができる。
【0081】
つまり、電極体400の製造に必要な、正極450及び負極460の電極板の幅(巻回軸方向(Z軸方向)の長さ)を比較的短くすることができる。このことは、例えば電極体400の製造効率の観点から有利である。
【0082】
また、本実施の形態に係る電極体400は、正極450及び負極460が巻回されることで形成されている(
図4参照)。また、注液口117は、容器100における、電極体400の巻回軸方向に存在する蓋板110に形成されている。
【0083】
そのため、例えば、タブ部410から電極体400の内方に電解液を浸透させるとともに、容器100の底(蓋板110と対向する下壁部の上方)にたまった電解液を、巻回軸方向においてタブ部とは反対側の端部から電極体400の内方に浸透させることができる。このことは、電極体400への電解液の効率的な浸透という観点から有利である。
【0084】
(他の実施の形態)
以上、本発明に係る蓄電素子について、実施の形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0085】
例えば、蓄電素子10が備える電極体400の個数は1には限定されず、2以上であってよい。蓄電素子10が複数の電極体400を備える場合、同一体積(容積)の容器100に単数の電極体400を収容する場合に比べ、容器100のコーナー部のデッドスペースを減らすことができる。このため、容器100の容積に占める電極体400の割合を増加させることが可能となり、その結果、蓄電素子10の容量の増加が図られる。
【0086】
また、蓄電素子10が備える電極体400は巻回型である必要はない。蓄電素子10は、例えば平板状極板を積層した積層型の電極体を備えてもよい。また、蓄電素子10は、例えば、長尺帯状の極板を山折りと谷折りとの繰り返しによって蛇腹状に積層した構造を有する電極体を備えてもよい。
【0087】
また、電極体400が有する正極側のタブ部410と負極側のタブ部420との位置関係は特に限定されない。例えば、巻回型の電極体400において、タブ部410とタブ部420とが巻回軸方向の互いに反対側に配置されていてもよい。また、蓄電素子10が、積層型の電極体を備える場合、積層方向から見た場合において、正極側のタブ部と負極側のタブ部とが異なる方向に突出して設けられていてもよい。
【0088】
また、上記実施の形態では、電極体400の正極側のタブ部410に対向する位置に、注液口117が配置されているが、注液口117は、電極体400の負極側のタブ部420に対向する位置に配置されてもよい。つまり、正極450及び負極460が積層された構造を有する電極体400が備える、外部との電気的な接続部分に対向する位置に注液口117が設けられることで、電解液を電極体400の内方に効率的に浸透させることができる。
【0089】
また、容器100において、注液口117は、蓋板110以外の壁部に設けられてもよい。例えば、タブ部410または420が、容器100の下壁部(本体111の底面を形成する壁部)に向く姿勢で電極体400が配置された場合を想定する。この場合、下壁部において、タブ部410または420に対向する位置に、注液口117が設けられてもよい。なお、注液口117が下壁部に配置される場合において、注液口117に対向するタブ部410または420と電気的に接続された電極端子は、下壁部に固定されてもよく、上壁部(蓋板110)に固定されてもよい。
【0090】
また、注液口117の形状に特に限定はなく、丸孔、角孔、または、スリット状の孔など、各種の形状の中から、例えば注液に用いるノズルの形状等に応じて選択されてもよい。また、注液口117のサイズについても、注液効率または蓋板110の強度維持等の観点から適切なサイズが決定されてもよい。
【0091】
また、上記実施の形態では、注液口117の直下に下部絶縁部材120が配置されていることとしたが、下部絶縁部材120の配置位置は特に限定されない。つまり、注液口117の直下を避けて下部絶縁部材120を配置することで、下部絶縁部材120に貫通孔121を形成する必要がなく、簡易に下部絶縁部材120を作製することができる。