特許第6860046号(P6860046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860046
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】塗料、塗膜及び塗装方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20210405BHJP
   C09D 5/29 20060101ALI20210405BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20210405BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20210405BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20210405BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   C09D133/00
   C09D5/29
   C09D7/41
   B05D7/24 301E
   B05D3/00 D
   B05D5/06 101Z
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-148417(P2019-148417)
(22)【出願日】2019年8月13日
(65)【公開番号】特開2021-31498(P2021-31498A)
(43)【公開日】2021年3月1日
【審査請求日】2019年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】矢部 一也
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 一
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−071733(JP,A)
【文献】 特開2017−186436(JP,A)
【文献】 特開2017−186437(JP,A)
【文献】 特開2018−203908(JP,A)
【文献】 特開2005−013888(JP,A)
【文献】 特開2007−262350(JP,A)
【文献】 特開2008−044991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
B05D 1/00− 7/26
B32B 1/00− 43/00
C09C 1/00− 3/12
C09D15/00− 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色塗料がゲル化膜で包まれた複数のゲル状着色粒子を含む塗料であって、
前記複数のゲル状着色粒子が、前記塗料を塗装する被塗装面と同系色のゲル状着色粒子と、前記被塗装面と非同系色かつ粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子とからなり、前記複数のゲル状着色粒子の総質量に対する前記同系色のゲル状着色粒子の割合が95質量%以上であり、
前記同系色のゲル状着色粒子として、粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子、粒径2.0mm以上10.0mm未満の中サイズのゲル状着色粒子、及び粒径10.0mm以上の大サイズのゲル状着色粒子のうちの少なくとも2種が組み合わされた、塗料。
【請求項2】
着色塗料がゲル化膜で包まれた複数のゲル状着色粒子を含む塗料であって、
前記複数のゲル状着色粒子が、前記塗料を塗装する被塗装面と同系色のゲル状着色粒子のみからなるか、又は、前記同系色のゲル状着色粒子と、前記被塗装面と非同系色かつ粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子とからなり、前記複数のゲル状着色粒子の総質量に対する前記同系色のゲル状着色粒子の割合が95質量%以上であり、
前記同系色のゲル状着色粒子として、粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子及び粒径10.0mm以上の大サイズのゲル状着色粒子のうちの少なくともと、粒径2.0mm以上10.0mm未満の中サイズのゲル状着色粒子とが組み合わされた、塗料。
【請求項3】
着色塗料がゲル化膜で包まれた複数のゲル状着色粒子を含む塗料であって、
前記複数のゲル状着色粒子が、前記塗料を塗装する被塗装面と同系色のゲル状着色粒子のみからなるか、又は、前記同系色のゲル状着色粒子と、前記被塗装面と非同系色かつ粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子とからなり、前記複数のゲル状着色粒子の総質量に対する前記同系色のゲル状着色粒子の割合が95質量%以上であり、
前記同系色のゲル状着色粒子として、粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子、粒径2.0mm以上10.0mm未満の中サイズのゲル状着色粒子、及び粒径10.0mm以上の大サイズのゲル状着色粒子のうちのいずれか2種が組み合わされており、前記いずれか2種のゲル状着色粒子のうち相対的にサイズの大きい方のゲル状着色粒子の割合が、前記同系色のゲル状粒子の総質量に対して5.0〜40質量%である、塗料。
【請求項4】
着色塗料がゲル化膜で包まれた複数のゲル状着色粒子を含む、被塗装面に形成された塗膜であって、
前記複数のゲル状着色粒子が、前記被塗装面と同系色のゲル状着色粒子と、前記被塗装面と非同系色かつ粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子とからなり、前記複数のゲル状着色粒子の総質量に対する前記同系色のゲル状着色粒子の割合が95質量%以上であり、
前記同系色のゲル状着色粒子として、粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子、粒径2.0mm以上10.0mm未満の中サイズのゲル状着色粒子、及び粒径10.0mm以上の大サイズのゲル状着色粒子のうちの少なくとも2種が組み合わされた、塗膜。
【請求項5】
着色塗料がゲル化膜で包まれた複数のゲル状着色粒子を含む、被塗装面に形成された塗膜であって、
前記複数のゲル状着色粒子が、前記被塗装面と同系色のゲル状着色粒子のみからなるか、又は、前記同系色のゲル状着色粒子と、前記被塗装面と非同系色かつ粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子とからなり、前記複数のゲル状着色粒子の総質量に対する前記同系色のゲル状着色粒子の割合が95質量%以上であり、
前記同系色のゲル状着色粒子として、粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子及び粒径10.0mm以上の大サイズのゲル状着色粒子のうちの少なくともと、粒径2.0mm以上10.0mm未満の中サイズのゲル状着色粒子とが組み合わされた、塗膜。
【請求項6】
着色塗料がゲル化膜で包まれた複数のゲル状着色粒子を含む、被塗装面に形成された塗膜であって、
前記複数のゲル状着色粒子が、前記被塗装面と同系色のゲル状着色粒子のみからなるか、又は、前記同系色のゲル状着色粒子と、前記被塗装面と非同系色かつ粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子とからなり、前記複数のゲル状着色粒子の総質量に対する前記同系色のゲル状着色粒子の割合が95質量%以上であり、
前記同系色のゲル状着色粒子として、粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子、粒径2.0mm以上10.0mm未満の中サイズのゲル状着色粒子、及び粒径10.0mm以上の大サイズのゲル状着色粒子のうちのいずれか2種が組み合わされており、前記いずれか2種のゲル状着色粒子のうち相対的にサイズの大きい方のゲル状着色粒子の割合が、前記同系色のゲル状粒子の総質量に対して5.0〜40質量%である、塗膜。
【請求項7】
着色塗料がゲル化膜で包まれた複数のゲル状着色粒子を含む塗料を被塗装面に塗装する方法であって、
前記複数のゲル状着色粒子が、前記被塗装面と同系色のゲル状着色粒子と、前記被塗装面と非同系色かつ粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子とからなり、前記複数のゲル状着色粒子の総質量に対する前記同系色のゲル状着色粒子の割合が95質量%以上であり、
前記同系色のゲル状着色粒子として、粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子、粒径2.0mm以上10.0mm未満の中サイズのゲル状着色粒子、及び粒径10.0mm以上の大サイズのゲル状着色粒子のうちの少なくとも2種を組み合わせる、塗装方法。
【請求項8】
着色塗料がゲル化膜で包まれた複数のゲル状着色粒子を含む塗料を被塗装面に塗装する方法であって、
前記複数のゲル状着色粒子が、前記被塗装面と同系色のゲル状着色粒子のみからなるか、又は前記同系色のゲル状着色粒子と、前記被塗装面と非同系色かつ粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子とからなり、前記複数のゲル状着色粒子の総質量に対する前記同系色のゲル状着色粒子の割合が95質量%以上であり、
前記同系色のゲル状着色粒子として、粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子及び粒径10.0mm以上の大サイズのゲル状着色粒子のうちの少なくともと、粒径2.0mm以上10.0mm未満の中サイズのゲル状着色粒子とを組み合わせる、塗装方法。
【請求項9】
着色塗料がゲル化膜で包まれた複数のゲル状着色粒子を含む塗料を被塗装面に塗装する方法であって、
前記複数のゲル状着色粒子が、前記被塗装面と同系色のゲル状着色粒子のみからなるか、又は前記同系色のゲル状着色粒子と、前記被塗装面と非同系色かつ粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子とからなり、前記複数のゲル状着色粒子の総質量に対する前記同系色のゲル状着色粒子の割合が95質量%以上であり、
前記同系色のゲル状着色粒子として、粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子、粒径2.0mm以上10.0mm未満の中サイズのゲル状着色粒子、及び粒径10.0mm以上の大サイズのゲル状着色粒子のうちのいずれか2種を組み合わせ、前記いずれか2種のゲル状着色粒子のうち相対的にサイズの大きい方のゲル状着色粒子の割合を、前記同系色のゲル状粒子の総質量に対して5.0〜40質量%とする、塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、塗膜及び塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
壁材等の意匠性を高めるために、複数の着色粒子を含む多彩塗料が用いられる。例えば、壁材の上に下塗り塗膜を形成し、その上に上塗り塗膜として多彩塗料の塗膜を形成することで、複数の着色粒子による模様が付与される。着色粒子としては、着色塗料がゲル化膜で包まれたゲル状着色粒子が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−132747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多彩塗料は、模様が目立つように、被塗装面と非同系色(以下、「アクセント色」ともいう。)で、視認しやすい大きさの着色粒子を含むことが多いが、アクセント色の着色粒子を含まず、被塗装面と同系色の着色粒子のみを含むこともある。
【0005】
アクセント色の着色粒子を含む場合は、被塗装面への塗装中に、塗料中のアクセント色の着色粒子を視認できるので、塗料を被塗装面のどこまで塗装したか(以下、「塗装状況」ともいう。)が分かりやすい。
しかし、塗料が被塗装面と同系色の着色粒子を含み、アクセント色の着色粒子を含まない場合は、塗料及び形成される塗膜の外観は被塗装面と同系色となるため、塗装状況が分かりにくい。
塗料がアクセント色の着色粒子を含んでいても、そのサイズが小さく含有量が少ない場合、未乾燥状態では、アクセント色の着色粒子を視認しにくく、外観上は主たる着色粒子の色のみが認識され、被塗装面と同系色となる。そのため、アクセント色の着色粒子を含まない場合と同様に、塗装状況が分かりにくい。
【0006】
本発明は、被塗装面と同系色でありながら塗装状況の視認性に優れる塗料及び塗膜、並びに被塗装面と同系色の塗料を用いていながら塗装状況の視認性に優れる塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
〔1〕着色塗料がゲル化膜で包まれた複数のゲル状着色粒子を含む塗料であって、
前記複数のゲル状着色粒子が、前記塗料を塗装する被塗装面と同系色のゲル状着色粒子のみからなるか、又は、前記同系色のゲル状着色粒子と、前記被塗装面と非同系色かつ粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子とからなり、前記複数のゲル状着色粒子の総質量に対する前記同系色のゲル状着色粒子の割合が95質量%以上であり、
前記同系色のゲル状着色粒子として、粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子、粒径2.0mm以上10.0mm未満の中サイズのゲル状着色粒子、及び粒径10.0mm以上の大サイズのゲル状着色粒子のうちの少なくとも2種が組み合わされた、塗料。
〔2〕着色塗料がゲル化膜で包まれた複数のゲル状着色粒子を含む、被塗装面に形成された塗膜であって、
前記複数のゲル状着色粒子が、前記被塗装面と同系色のゲル状着色粒子のみからなるか、又は、前記同系色のゲル状着色粒子と、前記被塗装面と非同系色かつ粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子とからなり、前記複数のゲル状着色粒子の総質量に対する前記同系色のゲル状着色粒子の割合が95質量%以上であり、
前記同系色のゲル状着色粒子として、粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子、粒径2.0mm以上10.0mm未満の中サイズのゲル状着色粒子、及び粒径10.0mm以上の大サイズのゲル状着色粒子のうちの少なくとも2種が組み合わされた、塗膜。
〔3〕着色塗料がゲル化膜で包まれた複数のゲル状着色粒子を含む塗料を被塗装面に塗装する方法であって、
前記複数のゲル状着色粒子が、前記被塗装面と同系色のゲル状着色粒子のみからなるか、又は前記同系色のゲル状着色粒子と、前記被塗装面と非同系色かつ粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子とからなり、前記複数のゲル状着色粒子の総質量に対する前記同系色のゲル状着色粒子の割合が95質量%以上であり、
前記同系色のゲル状着色粒子として、粒径2.0mm未満の小サイズのゲル状着色粒子、粒径2.0mm以上10.0mm未満の中サイズのゲル状着色粒子、及び粒径10.0mm以上の大サイズのゲル状着色粒子のうちの少なくとも2種を組み合わせる、塗装方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塗料は、被塗装面と同系色でありながら、塗装状況の視認性に優れる。
本発明の塗膜は、被塗装面と同系色でありながら、塗装状況の視認性に優れる。
本発明の塗装方法は、被塗装面と同系色の塗料を用いていながら、塗装状況の視認性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一態様に係る塗料からなる未乾燥塗膜を被塗装面上に形成した状態を示す模式断面図である。
図2図1の未乾燥塗膜の模式上面図である。
図3】比較例に係る塗料からなる未乾燥塗膜を被塗装面上に形成した状態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、「塗膜」は、特に記載のない限り、液状媒体を含む未乾燥塗膜と、未乾燥塗膜から液状媒体が除去された乾燥塗膜を包含する。
「被塗装面と同系色」とは、被塗装面との色差(ΔE)が13以下であることを示す。
「被塗装面と非同系色」とは、同系色ではないこと、つまり被塗装面との色差(ΔE)が13よりも大きいことを示す。
「色差(ΔE)」は、色の定量的な差を示すものであり、市販の色差計により測定される。
「小サイズのゲル状着色粒子」は、粒径2.0mm未満のゲル状着色粒子を示す。
「中サイズのゲル状着色粒子」は、粒径2.0mm以上10.0mm未満のゲル状着色粒子を示す。
「大サイズのゲル状着色粒子」は、粒径10.0mm以上のゲル状着色粒子を示す。
小サイズのゲル状着色粒子、中サイズのゲル状着色粒子、大サイズのゲル状着色粒子それぞれの粒径は、各ゲル状着色粒子の分散液についてふるい分け法により測定したふるい径による粒度分布(質量基準)におけるモード径である。
図1〜3における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
【0011】
(塗料)
本発明の塗料(以下、「本塗料」ともいう。)は、複数のゲル状着色粒子を含む。
本塗料は、典型的には、液状媒体をさらに含む。
本塗料は、必要に応じて、他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0012】
本塗料100質量%中の複数のゲル状着色粒子の合計の割合は、5.0〜80質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。
【0013】
<ゲル状着色粒子>
ゲル状着色粒子は、着色塗料がゲル化膜で包まれたものである。
着色塗料及びゲル化膜については後で詳しく説明する。
【0014】
本塗料中の複数のゲル状着色粒子は、本塗料を塗装する被塗装面と同系色のゲル状着色粒子(以下、「同系色粒子(A)」ともいう。)のみからなるか、又は、同系色粒子(A)と、被塗装面と非同系色かつ小サイズのゲル状着色粒子(以下、「アクセント色小粒子(B)」ともいう。)とからなる。
【0015】
同系色粒子(A)の色調は、被塗装面との色差(ΔE)が13以下であれば特に限定されない。
複数のゲル状着色粒子の総質量に対する同系色粒子(A)の割合は、95質量%以上が好ましい。
複数のゲル状着色粒子の総質量に対するアクセント色小粒子(B)の割合は、5質量%以下が好ましい。
複数のゲル状着色粒子の総質量に対する同系色粒子(A)とアクセント色小粒子(B)との合計の割合は100質量%である。
【0016】
本塗料においては、同系色粒子(A)として、小サイズのゲル状着色粒子(以下、「同系色小粒子(A1)」ともいう。)、中サイズのゲル状着色粒子(以下、「同系色中粒子(A2)」ともいう。)、及び大サイズのゲル状着色粒子(以下、「同系色大粒子(A3)」ともいう。)のうちの少なくとも2種が組み合わされている。これにより、本塗料は、被塗装面と同系色の塗料でありながら、塗装状況の視認性に優れる。
【0017】
具体的な組み合わせとしては、同系色小粒子(A1)と同系色中粒子(A2)との組み合わせ、同系色小粒子(A1)と同系色大粒子(A3)との組み合わせ、同系色中粒子(A2)と同系色大粒子(A3)との組み合わせ、同系色小粒子(A1)と同系色中粒子(A2)と同系色大粒子(A3)との組み合わせが挙げられ、所望の意匠に応じて自由に選べばよい。
【0018】
上記各組み合せにおいて、同系色小粒子(A1)、同系色中粒子(A2)、同系色大粒子(A3)それぞれの色や被塗装面との色差(ΔE)は同じでもよく異なってもよい。同系色粒子(A)同士の色差(ΔE)は、13以下であることが好ましい。
同系色小粒子(A1)、同系色中粒子(A2)、同系色大粒子(A3)はそれぞれ、1種を単独で用いてもよく、色調や被塗装面との色差(ΔE)が異なる2種以上を併用してもよい。
【0019】
同系色小粒子(A1)の粒径は、2.0mm未満であり、0.1mm以上2.0mm未満が好ましく、0.1mm以上1.0mm以下がより好ましい。
同系色中粒子(A2)の粒径は、2.0mm以上10.0mm未満であり、3.0mm以上8.0mm以下が好ましい。
同系色大粒子(A3)の粒径は、10.0mm以上であり、10.0mm以上50.0mm以下が好ましく、20mm以上40mm以下がより好ましい。
【0020】
同系色小粒子(A1)と同系色中粒子(A2)との組み合わせ、又は同系色小粒子(A1)と同系色中粒子(A2)と同系色大粒子(A3)との組み合わせにおいて、同系色小粒子(A1)の粒径と同系色中粒子(A2)の粒径との差は、塗装状況の視認性の観点から、2.0mm以上が好ましく、4.0mm以上がより好ましい。
同系色中粒子(A2)と同系色大粒子(A3)との組み合わせ、又は同系色小粒子(A1)と同系色中粒子(A2)と同系色大粒子(A3)との組み合わせにおいて、同系色中粒子(A2)の粒径と同系色大粒子(A3)の粒径の差は、塗装状況の視認性の観点から、10mm以上が好ましく、20mm以上がより好ましい。
【0021】
同系色小粒子(A1)と同系色中粒子(A2)との組み合わせ、同系色小粒子(A1)と同系色大粒子(A3)との組み合わせ、同系色中粒子(A2)と同系色大粒子(A3)との組み合わせにおいて、同系色粒子(A)の総質量に対する、相対的にサイズの大きい方の同系色粒子の割合は、塗装状況の視認性の観点から、5.0〜40質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。
「相対的にサイズの大きい方の同系色粒子」は、同系色小粒子(A1)と同系色中粒子(A2)との組み合わせにおいては同系色中粒子(A2)であり、同系色小粒子(A1)と同系色大粒子(A3)との組み合わせ及び同系色中粒子(A2)と同系色大粒子(A3)との組み合わせにおいては同系色大粒子(A3)である。
【0022】
アクセント色小粒子(B)は、被塗装面との色差(ΔE)が13超、粒径が2.0mm未満のゲル状着色粒子である。アクセント色小粒子(B)は、必要に応じて、意匠性の向上、視認性の向上等の目的で用いられる。
アクセント色小粒子(B)の被塗装面との色差(ΔE)は、20以上が好ましく、40以上がより好ましい。該色差(ΔE)の上限は特に限定されないが、例えば90である。
アクセント色小粒子(B)の粒径は、0.1mm以上2.0mm未満が好ましく、0.1mm以上1.0mm以下がより好ましい。
【0023】
同系色粒子(A)とアクセント色小粒子(B)との色差(ΔE)は、13以上が好ましく、20以上がより好ましく、40以上がさらに好ましい。該色差(ΔE)の上限は特に限定されないが、例えば90である。
同系色粒子(A)として複数色のゲル状着色粒子を含む場合、アクセント色小粒子(B)の同系色粒子(A)との色差(ΔE)は、同系色粒子(A)よりも濃色のアクセント色小粒子(B)については、同系色粒子(A)のうち最も濃色のゲル状着色粒子の色調を基準として求め、同系色粒子(A)よりも淡色のアクセント色小粒子(B)については、同系色粒子(A)のうち最も淡色のゲル状着色粒子の色調を基準として求める。
【0024】
「着色塗料」
着色塗料としては、樹脂エマルションと親水性コロイド形成物質と着色顔料とを含む塗料(以下、「エマルション塗料」ともいう。)が挙げられる。
【0025】
樹脂エマルションを構成する樹脂としては、例えばアクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ウレタン樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル重合体、ベオバ(分岐脂肪酸ビニルエステル)重合体、天然ゴム、合成ゴム及びこれらの樹脂の共重合体が挙げられる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合せて用いてもよい。樹脂エマルションとしては、アクリル樹脂エマルションが好ましい。
【0026】
エマルション塗料100質量%中の樹脂エマルションの固形分(樹脂分)の割合は、例えば10〜40質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。
【0027】
親水性コロイド形成物質は、後述するゲル化剤と反応してエマルション塗料をゲル化膜で包む(すなわち、エマルション塗料をゲル化膜でカプセル化する)ものである。
親水性コロイド形成物質としては、例えばセルロース誘導体、ポリチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、天然高分子(カゼイン、デンプン、ガラクトマンノン、グアルゴム、ローカストビーンゴム等)等が挙げられる。これらの親水性コロイド形成物質は、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合せて用いてもよい。
親水性コロイド形成物質は、典型的には、水溶液の形態で用いられる。親水性コロイド形成物質の水溶液の濃度は、特に限定するものではないが、例えば0.5〜5質量%である。
【0028】
樹脂エマルションの固形分100質量部に対する親水性コロイド形成物質(固形分)の割合は、例えば0.05〜5.0質量部であり、好ましくは0.1〜3.0質量部である。親水性コロイド形成物質の割合が上記範囲内であれば、安定したゲル化膜が得られやすい。
【0029】
着色顔料としては、例えばカーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、クロム酸鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド等の無機顔料;パール顔料、マイカ顔料、マイカコーティングパール顔料、アルミニウム粉、ステンレス粉等の光輝性顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド等の有機顔料等が挙げられる。これら着色顔料は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0030】
エマルション塗料100質量%中の着色顔料の割合は、例えば0.5〜20質量%であり、好ましくは1.0〜15質量%である。
【0031】
エマルション塗料は、必要に応じて、樹脂エマルション、親水性コロイド形成物質及び着色顔料に加えて、添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば体質顔料、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、レベリング剤が挙げられる。体質顔料としては、例えば炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム、含水ケイ酸マグネシウムが挙げられる。分散剤としては、例えばアニオン性高分子分散剤が挙げられる。これら添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてももよい。
【0032】
エマルション塗料は、前記した各成分を混合することにより調製できる。各成分の混合順序は特に限定されない。
エマルション塗料の調製方法の一例として、樹脂エマルションと、親水性コロイド形成物質の水溶液とを混合して第1の混合液を得、着色顔料と水と必要に応じて添加剤とを混合して第2の混合液を得、第1の混合液と第2の混合液とを混合する方法が挙げられる。
【0033】
「ゲル化膜」
ゲル化膜は、着色塗料を包む(カプセル化する)ゲル状の膜である。着色塗料がゲル化膜で包まれていることで、ゲル状着色粒子が塗料中に安定して分散することができる。
ゲル化膜としては、親水性コロイド形成物質の水溶液がゲル化剤の作用でゲル化したものが挙げられる。
ゲル化剤としては、例えば、マグネシウムモンモリロナイト粘土、ナトリウムペンタクロロフェノール、ホウ酸塩(重ホウ酸アンモニウム等)、タンニン酸、乳酸チタン、塩化カルシウム等が挙げられる。
【0034】
「ゲル状着色粒子の製造方法」
ゲル状着色粒子は公知の技術で製造できる。
ゲル状着色粒子の製造方法の一例として、前記したエマルション塗料と、ゲル化剤を含む分散媒とを混合し、ディソルバ等の分散機で攪拌しながら細分化する方法が挙げられる。エマルション塗料と分散媒とを混合し、細分化する際に、エマルション塗料の液滴の表面(分散媒との界面)及びその近傍で、エマルション塗料中の親水性コロイド形成物質にゲル化剤が作用してゲル化膜が形成され、ゲル化膜の中にエマルション塗料が閉じ込められる。細分化する際の攪拌条件を調整することで、所望の粒径のゲル状着色粒子が分散媒に分散した分散液が得られる。
【0035】
分散媒100質量部に対するエマルション塗料の割合は、100〜500質量部が好ましく、150〜400質量部がより好ましい。エマルション塗料の割合が上記範囲内であれば、形状が均一なゲル状着色粒子が得られやすい。
【0036】
分散媒は、典型的には、ゲル化剤と水とを含む。
分散媒100質量%中のゲル化剤(固形分)の割合は、例えば0.05〜5.0質量%であり、好ましくは0.1〜3.0質量%である。ゲル化剤の割合が上記範囲内であれば、安定したゲル化膜が得られやすい。
【0037】
分散媒は、必要に応じて、体質顔料、水溶性高分子化合物等を含んでいてもよい。
体質顔料としては、前記と同様のものが挙げられる。分散媒100質量%中の体質顔料の割合は、例えば0.05〜10質量%である。
水溶性高分子化合物としては、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これら水溶性高分子化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。分散媒100質量%中の水溶性高分子化合物(固形分)の割合は、例えば0.05〜3.0質量%である。
【0038】
分散媒は、例えば、ゲル化剤を含む水溶液を、必要に応じて体質顔料を含む分散液や水溶性高分子化合物を含む水溶液と撹拌混合し、水で希釈することに調製できる。
【0039】
<液状媒体>
液状媒体としては、ゲル状着色粒子を分散可能なものであればよく、特に限定されないが、典型的には水が用いられる。
【0040】
<他の成分>
他の成分としては、例えばバインダ樹脂、添加剤が挙げられる。
バインダ樹脂としては、例えばアクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ウレタン樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル重合体、ベオバ(分岐脂肪酸ビニルエステル)重合体、天然ゴム、合成ゴム及びこれらの樹脂の共重合体が挙げられる。これらバインダ樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合せて用いてもよい。バインダ樹脂は典型的には、樹脂エマルションの形態とされている。
添加剤としては、例えば増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、レベリング剤、難燃剤が挙げられる。
【0041】
本塗料は、同系色粒子(A)と同系色の被塗装面に塗装される。
本塗料を用いた塗装方法については後で詳しく説明する。
【0042】
(塗料の製造方法)
本塗料は、例えば、組み合わせる少なくとも2種の同系色粒子(A)それぞれの分散液(例えば同系色小粒子(A1)と同系色中粒子(A2)との組み合わせの場合は同系色小粒子(A1)の分散液と同系色中粒子(A2)の分散液)を調製し、各分散液を混合することにより調製できる。各分散液を混合する際、必要に応じて、アクセント色小粒子(B)の分散液、他の成分及びさらなる液状媒体のいずれか1以上を各分散液とともに混合する。各分散液の調製方法は前記したとおりである。
【0043】
(塗膜)
本発明の塗膜(以下、「本塗膜」ともいう。)は、複数のゲル状着色粒子を含む、被塗装面に形成された塗膜であって、複数のゲル状着色粒子が、同系色粒子(A)のみからなるか、又は、同系色粒子(A)とアクセント色小粒子(B)とからなり、複数のゲル状着色粒子の総質量に対する同系色粒子(A)の割合が95質量%以上であり、同系色粒子(A)として、同系色小粒子(A1)、同系色中粒子(A2)、及び同系色大粒子(A3)のうちの少なくとも2種が組み合わされたものである。
本塗膜は、複数のゲル状着色粒子に加えて液状媒体を含む未乾燥塗膜であってもよく、未乾燥塗膜から液状媒体が除去された乾燥塗膜であってもよい。
本塗膜は、必要に応じて、他の成分をさらに含んでいてもよい。
複数のゲル状着色粒子、液状媒体、他の成分はそれぞれ前記したとおりである。
本塗膜は、本塗料を被塗装面に塗装することにより得られる。
【0044】
(塗装方法)
本発明の塗装方法は、着色塗料がゲル化膜で包まれた複数のゲル状着色粒子を含む塗料を被塗装面に塗装する方法であって、複数のゲル状着色粒子が、同系色粒子(A)のみからなるか、又は同系色粒子(A)とアクセント色小粒子(B)とからなり、複数のゲル状着色粒子の総質量に対する同系色粒子(A)の割合が95質量%以上であり、同系色粒子(A)として、同系色小粒子(A1)、同系色中粒子(A2)、及び同系色大粒子(A3)のうちの少なくとも2種を組み合わせる方法である。
【0045】
本発明の塗装方法は、前記した本塗料を用いて実施できる。
以下、本塗料を用いた塗装方法を、添付の図面を用い、実施形態を示して説明する。
図1は、被塗装面20a上に、本発明の一態様に係る塗料を塗装し、該塗料からなる未乾燥塗膜30を形成した状態を示す模式断面図である。図2は、未乾燥塗膜30の模式上面図である。
本実施形態の塗装方法では、被塗装面20a上に、本発明の一態様に係る塗料を塗装することで、該塗料からなる未乾燥塗膜30を形成し、未乾燥塗膜30を乾燥させることで、乾燥塗膜(図示略)を形成する。
本実施形態において被塗装面20aは、基材10上に設けられた下塗り塗膜20の表面である。本実施形態では、基材10と、基材10上に設けられた下塗り塗膜20と、下塗り塗膜20上に設けられた未乾燥塗膜30又は乾燥塗膜(本塗膜)とを有する塗装体が得られる。
【0046】
基材10としては、特に制限はなく、例えば、軽量気泡コンクリート、モルタル、窯業サイディング、漆喰、石膏ボード、金属板、コンクリート、木材、プラスチック、繊維強化プラスチック(FRP)が挙げられる。
基材10の具体的形態としては、建築物の外壁材、内壁材、ブロック塀等が挙げられる。
基材10の表面は、平滑でもよく、凹凸が存在していてもよい。
【0047】
下塗り塗膜20は、防水性向上、プライマー、意匠性等の目的で設けられる。
下塗り塗膜20は、典型的には、バインダ樹脂と着色顔料とを含む。バインダ樹脂、着色顔料はそれぞれ前記と同様のものが挙げられる。
下塗り塗膜20は、必要に応じて、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、レベリング剤、難燃剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
下塗り塗膜20は、例えば、基材10上に、バインダ樹脂と着色顔料とを含む塗料(下塗り塗料)を塗装することにより形成できる。塗装方法に特に制限はなく、例えば、刷毛、こて、ローラー、スプレー等の公知の塗装手段を用いて塗装できる。
なお、下塗り塗膜20を設けず、基材10の表面を被塗装面としてもよい。
【0048】
本実施形態において未乾燥塗膜30の形成に用いる塗料は、複数のゲル状着色粒子と液状媒体とを含み、複数のゲル状着色粒子として同系色粒子(A)のみを用い、同系色粒子(A)として同系色小粒子(A1)と同系色中粒子(A2)とを組み合わせたものである。この塗料を被塗装面20a上に塗装することにより、未乾燥塗膜30が形成される。塗装方法に特に制限はなく、例えば、刷毛、こて、ローラー、スプレー等の公知の塗装手段を用いて塗装できる。
【0049】
形成される未乾燥塗膜30は、図1に示すように、同系色小粒子(A1)31と同系色中粒子(A2)32と液状媒体33とを含む。
図1に示すように、未乾燥塗膜30の表面30aは、同系色中粒子(A2)32(相対的にサイズの大きい方の同系色粒子)の存在する部分が、同系色小粒子(A1)31の存在する部分から突出する。これにより、図2に示すように、同系色中粒子(A2)32の存在する部分の外縁付近に、視認できる程度の陰影が生じる。この陰影の存在する範囲を、未乾燥塗膜30が形成されている部分とみなすことができる。そのため、被塗装面20a上のどの部分に未乾燥塗膜30が存在するのかが分かりやすく、塗装状況の視認性に優れる。
なお、図2においては説明の便宜上、未乾燥塗膜30の縁(上面視での被塗装面20aとの境界)を実線で示したが、実際にはこの縁は視認できない。
【0050】
未乾燥塗膜30を形成した後、未乾燥塗膜30を乾燥させることで、液状媒体33が除去され、乾燥塗膜(図示略)が形成される。乾燥塗膜の表面は、同系色小粒子(A1)、同系色中粒子(A2)それぞれに対応する部分が突出した凹凸面となる。
【0051】
なお、上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、複数のゲル状着色粒子として同系色粒子(A)のみを用い、同系色粒子(A)として同系色小粒子(A1)と同系色中粒子(A2)とを組み合わせる例を示したが、複数のゲル状着色粒子として同系色粒子(A)とアクセント色小粒子(B)とを併用してもよい。同系色粒子(A)として、同系色小粒子(A1)と同系色大粒子(A3)とを組み合わせてもよく、同系色中粒子(A2)と同系色大粒子(A3)とを組み合わせてもよく、同系色小粒子(A1)と同系色中粒子(A2)と同系色大粒子(A3)とを組み合わせてもよい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。「%」は「質量%」である。
【0053】
<エマルション塗料の調製>
以下に示すアクリル樹脂エマルションと、以下に示す親水性コロイド形成物質水溶液とを、表1に示す配合割合で配合し、攪拌混合することにより、混合液(a)を得た。別途、以下に示す着色顔料と、以下に示す分散剤と、水とを、表1に示す配合割合で配合し、攪拌混合することにより、混合液(b)を得た。そして、混合液(a)に混合液(b)を加えて攪拌混合することにより、表1に示す単色エマルション塗料(B−1)〜(B−4)を得た。表1において、各成分の配合割合の単位は質量部である。
【0054】
[アクリル樹脂エマルション]
アニオン性高分子アクリル樹脂エマルション:「プライマルAC−38(登録商標)」、ダウ・ケミカル社製、固形分50%。
【0055】
[親水性コロイド形成物質水溶液]
非イオン性グアルガム誘導体の1.5%水溶液。
【0056】
[着色顔料]
A−1:ブラック顔料(「三菱カーボンブラックMA−100」、三菱化学社製、カーボンブラック)。
A−2:ブラウン顔料(「T−10」、チタン工業社製、鉄−亜鉛複合酸化物)。
A−3:イエロー顔料(「LLXLO」、チタン工業社製、酸化鉄)。
A−4:ホワイト顔料(「R−930」、石原産業社製、酸化チタン)。
【0057】
[分散剤]
アニオン性高分子分散液:「オロタン731(登録商標)」、ダウ・ケミカル社製。
【0058】
【表1】
【0059】
そして、得られた単色エマルション塗料(B−1)〜(B−4)を、表2に示す配合割合で配合し、攪拌混合することにより、表2に示すエマルション塗料(C−1)〜(C−4)を得た。表2において、単色エマルション塗料の配合割合の単位は質量部である。
各エマルション塗料の色調を表2に記した。
【0060】
【表2】
【0061】
<ゲル状着色粒子の作製>
体質顔料(含水ケイ酸マグネシウム)の4質量%水分散液25質量部に、ゲル化剤(重ホウ酸アンモニウム)の5質量%水溶液5質量部と、水溶性高分子化合物(ナトリウムカルボキシメチルセルロース)の1質量%水溶液25質量部とを加え、攪拌混合した後、水45質量部を加えて希釈し、分散媒を得た。
次に、この分散媒と、表3に示すエマルション塗料とを、表3に示す配合割合で配合し、ディゾルバで攪拌し、粒径が所定サイズになるまでエマルション塗料を分散させて、表3に示すゲル状着色粒子分散液(D−1)〜(D−6)を得た。
表3において、分散媒及びエマルション塗料の配合割合の単位は質量部である。
各ゲル状着色粒子分散液の色調、後述する塗装状況の視認性の評価で使用した下塗り塗料の塗膜との色差(ΔE)、各ゲル状着色粒子分散液中のゲル状着色粒子の粒子サイズ(小、中、大)及び粒径を表3に併記した。ゲル状着色粒子分散液の色調は、ゲル状着色粒子分散液中のゲル状着色粒子の色調とみなすことができる。
【0062】
【表3】
【0063】
(実施例1〜4、比較例1〜4)
<多彩模様塗料の調製>
前記したアクリル樹脂エマルション25質量部と、表4〜5に示す配合割合で上記ゲル状粒子分散液(D−1)〜(D−6)を配合してなるゲル状着色粒子分散液70質量部と、アルカリ増粘剤(「SNシックナー636(登録商標)」サンノプコ社製)1質量部と、25質量%アンモニア水0.1質量部と、水3.9質量部とを配合し、ディゾルバで攪拌することにより、実施例1〜4及び比較例1〜4の塗料を得た。
表4〜5において、ゲル状着色粒子分散液の配合割合の単位は質量部である。各ゲル状着色粒子分散液の配合割合は、全てのゲル状着色粒子分散液の合計を100質量部としたときの値である。
【0064】
<塗装状況の視認性の評価>
得られた塗料について、以下の手順で、塗装状況の視認性の評価を行った。
まず、評価対象の塗料と同色(遠目で見て同じ色相)の下塗り塗料を塗装したスレート板を準備した。このスレート板に評価対象の塗料を吹付け塗装し、その際の視認性を以下の基準で評価した。吹付けは晴天時及び曇天時の屋外で実施した。〇を合格、×を不合格とした。
〇:塗装作業者本人がどこを塗装しているか、どこまで塗装したかを視認できる。
×:塗装作業者本人がどこを塗装しているか、どこまで塗装したかを視認できない。
【0065】
【表4】
【0066】
【表5】
【0067】
実施例1〜4の塗料を用いた場合は、晴天時、曇天時に関わらず合格となった。
これに対し、比較例1〜4の多彩模様塗料を用いた場合は、晴天時、曇天時に関わらず不合格となった。
以上の結果から、被塗装面と同系色で、塗装状況の視認性が悪い塗料でも、サイズの異なる2種以上のゲル状着色粒子を組み合わせることで、塗装状況の視認性が改善されることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
複数のゲル状着色粒子を含み、複数のゲル状着色粒子が同系色粒子(A)のみからなるか、又は同系色粒子(A)とアクセント色小粒子(B)とからなり、同系色粒子(A)の割合が95質量%以上である塗料は外観上、被塗装面と同系色となる。従来、被塗装面と同系色の塗料は、塗装状況の視認性が悪かった。
本発明にあっては、同系色粒子(A)として、同系色小粒子(A1)、同系色中粒子(A2)、及び同系色大粒子(A3)のうちの少なくとも2種を組み合わせているので、被塗装面と同系色の塗料でありながら、塗装状況の視認性に優れる。
【符号の説明】
【0069】
10 基材
20 下塗り塗膜
20a 被塗装面
30 未乾燥塗膜
31 同系色小粒子(A1)
32 同系色中粒子(A2)
33 液状媒体
図1
図2
図3