(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補助駆動部は、前記回転検知部による検知結果に基づいて前記定着部材または前記加圧部材の回転速度を算出し、その回転速度で前記定着部材または前記加圧部材を回転させる請求項1に記載の定着装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示す「Fr」は「前」を示し、「Rr」は「後」を示し、「L」は「左」を示し、「R」は「右」を示し、「U」は「上」を示し、「D」は「下」を示している。また、「上流」および「下流」並びにこれらに類する用語は、シートSの搬送方向(通過方向)の「上流」および「下流」並びにこれらに類する概念を指す。
【0013】
[カラープリンターの全体構成]
図1および
図2を参照して、画像形成装置の一例としてのカラープリンター1について説明する。
図1はカラープリンター1を示す斜視図である。
図2はカラープリンター1の内部構造を示す概略図(正面図)である。
【0014】
図1に示すように、カラープリンター1は、略直方体状の外観を構成する装置本体2を備えている。装置本体2の下部には、紙製のシートS(媒体)を収容する給紙カセット3が着脱可能に設けられている。装置本体2の上面には、排紙トレイ4が設けられている。装置本体2の上部には、排紙トレイ4に向かって開口した排紙口4Aが形成されている(
図2参照)。なお、シートSは、紙製に限らず、樹脂製のシート等であってもよい。
【0015】
図2に示すように、カラープリンター1は、給紙装置5と、作像装置6と、定着装置7と、を備えている。給紙装置5は、給紙カセット3から排紙口4Aまで略S字状に延びた搬送路8の上流端部に設けられている。定着装置7は搬送路8の下流側に設けられ、作像装置6は搬送路8において給紙装置5と定着装置7との間に設けられている。搬送路8の後方には、反転したシートSを作像装置6に再搬送するための反転搬送路9が設けられている。
【0016】
作像装置6は、4つのトナーコンテナ10と、中間転写ベルト11と、4つのドラムユニット12と、光走査装置13と、を含んでいる。4つのトナーコンテナ10には、4色(イエロー,マゼンタ,シアン,ブラック)のトナー(現像剤)が収容されている。ドラムユニット12は、感光体ドラム14と、帯電装置15と、現像装置16と、一次転写ローラー17と、クリーニング装置18と、を含んでいる。一次転写ローラー17は、感光体ドラム14との間に中間転写ベルト11を挟むように設けられている。中間転写ベルト11の後側には、二次転写ローラー19が接触して転写ニップを形成している。
【0017】
カラープリンター1の制御装置47は各装置を適宜制御し、以下のように画像形成処理を実行する。帯電装置15は、感光体ドラム14の表面を帯電させる。感光体ドラム14は、光走査装置13から出射された走査光を受け、静電潜像を担持する。現像装置16は、トナーコンテナ10から供給されたトナーを用いて感光体ドラム14上の静電潜像をトナー像に現像する。一次転写ローラー17は、感光体ドラム14上のトナー像を回転する中間転写ベルト11に一次転写する。中間転写ベルト11は、回転しながら4色のトナー像を重ねたフルカラーのトナー像を担持する。シートSは、給紙装置5によって給紙カセット3から搬送路8に送り出される。二次転写ローラー19は、転写ニップを通過するシートSの表面に中間転写ベルト11上のトナー像を二次転写する。定着装置7は、トナー像をシートSに定着させる。その後、シートSは排紙口4Aから排紙トレイ4に排出される。各クリーニング装置18は感光体ドラム14上に残ったトナーを除去する。
【0018】
シートSの両面に印刷を行う場合、定着装置7を通過したシートSは、搬送路8の下流端部でスイッチバックして反転搬送路9に送られる。シートSは、反転搬送路9から再び搬送路8に進入し、作像装置6に向けて再搬送される。そして、シートSの裏面にも画像が形成される。
【0019】
[定着装置]
図3ないし
図9を参照して、定着装置7について説明する。
図3は定着装置7を模式的に示す断面図である。
図4は定着装置7を模式的に示す平面図である。
図5は定着装置7の圧力調整部23等(加圧状態)を示す側面図である。
図6は圧力調整部23等(減圧状態)を示す側面図である。
図7はカラープリンター1の開閉扉2Aを開いた状態を模式的に示す概略図(正面図)である。
【0020】
図3および
図4に示すように、定着装置7は、筐体20と、定着ベルト21と、加圧ローラー22と、圧力調整部23と、発熱ユニット24と、を含んでいる。筐体20は、装置本体2に支持されている(
図2参照)。定着ベルト21および加圧ローラー22は、筐体20の内部にてそれぞれの軸周りに回転可能に設けられている。圧力調整部23は加圧ローラー22に対向して配置され、発熱ユニット24は定着ベルト21に対向して配置されている。
【0021】
<筐体>
筐体20は、左右方向に長い略直方体状に形成されている(
図4参照)。筐体20の内部には、シートSが通過する搬送路8の一部が形成されている。筐体20の下側には、定着ベルト21と加圧ローラー22との接触部分(加圧領域N)にシートSを導くための進入ガイド20Aが設けられている(
図3参照)。筐体20の上側には、加圧領域Nを通過したシートSを定着ベルト21から剥がすための分離爪20Bが設けられている(
図3参照)。
【0022】
<定着ベルト>
図3および
図4に示すように、定着部材の一例としての定着ベルト21は、無端状のベルトであって、左右方向に長い略円筒状に形成されている。定着ベルト21は、例えば、耐熱性および弾性を有する合成樹脂等で形成されている。
【0023】
図3に示すように、定着ベルト21の内部には、支持部材25と、押圧パッド26と、ベルトガイド27と、が設けられている。
【0024】
支持部材25は、例えば、鉄やステンレス等の金属材料によって左右方向(軸方向)に長い略角筒状に形成されている。支持部材25は定着ベルト21を軸方向に貫通している。支持部材25の軸方向両端部は定着ベルト21よりも外側に延びて筐体20に固定されている(
図4参照)。
【0025】
押圧パッド26は、支持部材25の後面に固定されている。押圧パッド26は、例えば、耐熱性を有する合成樹脂等によって軸方向に長い略厚板状に形成されている。押圧パッド26には、定着ベルト21との摩擦を低減するための摺動シート26Aが巻き付けられている。摺動シート26Aは、例えば、PTFE繊維等を用いて織った織物である。押圧パッド26は、定着ベルト21を挟んで押し付けられる加圧ローラー22を受け止める機能を有している。
【0026】
ベルトガイド27は、支持部材25の前側に固定されている。ベルトガイド27は、例えば、磁性を有するステンレス等の金属材料によって軸方向に長い略半円筒状に形成されている。ベルトガイド27は、湾曲面を定着ベルト21の前側内面に接触させ、定着ベルト21を挟んで発熱ユニット24に対向配置されている。ベルトガイド27は、定着ベルト21を略円筒形状に維持する機能等を有している。
【0027】
図4に示すように、定着ベルト21の左右両端部には、一対のキャップ28が取り付けられている。キャップ28は、定着ベルト21の外径よりも大きな外径を有する略円環状に形成されている。キャップ28は、定着ベルト21の内周面に対して滑る状態で接触する形状保持部(図示せず)を有している。定着ベルト21は、一対のキャップ28を介して支持部材25に回転可能に支持されている。
【0028】
また、キャップ28の軸方向外面には、定着ギア28Gが一体に形成されている。定着ギア28Gは、いわゆる平歯車であって、キャップ28と同一軸心上に設けられている。左側のキャップ28の定着ギア28Gには、複数のギアによって構成されるギア列29を介して駆動モーターM1(ピニオンギアG1)が接続されている(
図8参照)。
【0029】
<加圧ローラー>
図3および
図4に示すように、加圧部材の一例としての加圧ローラー22は、左右方向に長い略円筒状に形成され、定着ベルト21の後側に配置されている。加圧ローラー22は、金属製の芯金22Aと、その外周面に積層されたシリコンスポンジ等の弾性層22Bと、を含んでいる。加圧ローラー22(芯金22A)の軸方向両端部は、一対の可動フレーム30に回転可能に支持されている(
図4参照)。可動フレーム30は、前後方向(定着ベルト21に離接する方向)に揺動する状態で筐体20に支持されている。
【0030】
<圧力調整部>
図4および
図5に示すように、圧力調整部23は、一対の押圧アーム31と、一対の押圧バネ32と、一対の偏心カム33と、カムモーターM2と、を含んでいる。
【0031】
押圧アーム31は、可動フレーム30の後側に配置され、回動軸31Aに回動可能に支持されている。押圧アーム31の下部内側面には、作動コロ31Bが回転可能に支持されている。押圧バネ32は、押圧アーム31の下部で可動フレーム30と押圧アーム31との間に架設されたコイルスプリングである。押圧バネ32は、可動フレーム30と押圧アーム31とを互いに引き離す方向に付勢している。
【0032】
偏心カム33は、加圧ローラー22と略平行に延びたカム連結軸34に固定されている。カム連結軸34の軸方向両端部は、筐体20に回転可能に支持されている。偏心カム33は、回転中心(カム連結軸34)から外周面までの距離(偏心半径)を不定とした所謂円板カムである。押圧アーム31の作動コロ31Bは、押圧バネ32に付勢されて偏心カム33の外周面に押し付けられている。偏心カム33の周面には、加圧カム面F1と、これよりも偏心半径の大きな減圧カム面F2とが連続して形成されている。カムモーターM2は、カム連結軸34の左端部にギア列(図示せず)を介して接続されている。
【0033】
<圧力調整部の作用>
カムモーターM2の駆動によって、偏心カム33がカム連結軸34を中心に正逆回転すると、押圧アーム31は回動軸31Aを中心に前後方向に往復移動(揺動)する。例えば、
図5に示すように、偏心カム33の加圧カム面F1が作動コロ31Bに接触すると、押圧アーム31および可動フレーム30が前方に押された状態になる。この状態で、加圧ローラー22が定着ベルト21に食い込むように強く押し付けられ、定着ベルト21と加圧ローラー22との間に形成された加圧領域Nが加圧された加圧状態になる。一方、
図6に示すように、減圧カム面F2が作動コロ31Bに接触するまで偏心カム33を回転させると、押圧アーム31および可動フレーム30は押圧バネ32に付勢されて後方に移動する。すると、加圧ローラー22が定着ベルト21から離れる方向に移動し、加圧領域Nが減圧された減圧状態になる。減圧状態では、加圧ローラー22が定着ベルト21に軽く接触し、加圧状態よりも圧力が低くなっている。なお、加圧領域Nとは、圧力が0Paである上流側の位置から最大圧力となる位置を経由して再び圧力が0Paとなる下流側の位置までの領域を指している。
【0034】
<発熱ユニット>
図3に示すように、発熱ユニット24は、隙間を挟んで定着ベルト21の前方に配置されている。発熱ユニット24は、コイルホルダー24Aと、IHコイル24Bと、アーチコア24Cと、を含んでいる。コイルホルダー24Aは、定着ベルト21の上側外面に沿うように左右方向に長い略半円筒状に形成されている。IHコイル24Bは、コイルホルダー24Aに保持され、フェライト等の強磁性体で形成されたアーチコア24Cに覆われている。なお、熱源として誘導加熱型の発熱ユニット24を定着ベルト21の外側に配置しているが、これに代えて、定着ベルト21の内部にハロゲンヒーターやカーボンヒーター等を配置してもよい。
【0035】
なお、筐体20には、定着ベルト21の表面温度を検知するための温度センサー(図示せず)が設けられている。駆動モーターM1、カムモーターM2、発熱ユニット24(IHコイル24B)および温度センサー等は、各種の駆動回路(図示せず)を介してカラープリンター1の制御装置47に電気的に接続されている。制御装置47は、接続された装置等を制御する。
【0036】
[定着装置の作用]
ここで、定着装置7の作用(定着処理)について説明する。なお、定着処理を実施する場合、加圧領域Nは加圧状態とされている。
【0037】
まず、制御装置47は、駆動モーターM1やIHコイル24B等を駆動制御する。定着ベルト21は駆動モーターM1の駆動力を受けて回転し、加圧ローラー22は定着ベルト21に従動して回転する(
図3の実線細矢印参照)。IHコイル24Bは、電源(図示せず)から電力の供給を受けて磁界を発生させ、定着ベルト21を誘導加熱する。なお、ベルトガイド27は、定着ベルト21を透過した漏洩磁束を吸収して自己発熱し、定着ベルト21の加熱を補助する。温度センサーは、定着ベルト21の表面温度を検出し、入力回路を介して検出信号を制御装置47に送信する。制御装置47は、温度センサーから設定温度(例えば150〜200℃)に達したことを示す検出信号を受信すると、その設定温度を維持するようにIHコイル24Bを制御しながら、既に説明した画像形成処理の実行を開始する。トナー像が転写されたシートSは筐体20内に進入し、定着ベルト21は、軸周りに回転しながら加圧領域Nを通過するシートS上のトナー(トナー像)を加熱する。加圧ローラー22は、軸周りに回転しながら加圧領域Nを通過するシートS上のトナーを加圧する。すると、トナー像がシートSに定着する。そして、トナー像が定着したシートSは、筐体20の外部に送り出されて排紙トレイ4に排出される。
【0038】
なお、カラープリンター1の停止(休止)時において、または、定着装置7(加圧領域N)でシートSの搬送不良(ジャム)が発生した場合や封筒等の皺になりやすい媒体に画像形成処理(定着処理)を実施する場合等において、制御装置47はカムモーターM2を駆動制御し、加圧領域Nを減圧状態とする(
図6参照)。
【0039】
カラープリンター1では、定着装置7の加圧領域Nや搬送路8,9のローラー対等においてシートSが詰まることがある(ジャムが発生することがある)。この詰まったシートSを除去するために、装置本体2の背面には開閉扉2Aが開閉可能に設けられている(
図1および
図2参照)。開閉扉2Aは、その下部の開閉軸2Bを中心に回動可能に設けられている(
図2および
図7参照)。制御装置47は、定着装置7の内部や搬送路8等に配置されたジャムセンサー(図示せず)からの出力を受信してジャムを検知する。ジャムを検知した制御装置47は、画像形成動作を停止させ、ジャムの発生を示すメッセージ等を液晶画面等(図示せず)に表示する。ユーザーは、そのメッセージに従ってジャム処理を実行する。すなわち、ユーザーは、開閉扉2Aを開いて搬送路8や定着装置7等を露出させ(
図7参照)、詰まったシートSを取り除く。
【0040】
定着装置7(加圧状態となった加圧領域N)でジャムが発生した場合、ユーザーは、シートSを搬送方向の上流側または下流側に引き抜くことになる。この場合、シートSが定着ベルト21と加圧ローラー22とに大きな圧力で挟まれた状態で停止することになる。そのため、シートSの引き抜きに大きな力が必要になり、ユーザーがジャム処理を容易に行うことができない虞がある。そこで、本実施形態のカラープリンター1は、ジャム処理を容易化するための補助装置40を備えている。
【0041】
[補助装置]
図8A、
図8B、および
図9を参照して、補助装置40について説明する。
図8Aは定着装置7を模式的に示す側面図であり、
図8Bは
図8Aに示された矢印VIIIBの矢視図である。
図9は制御装置47等を示すブロック図である。
【0042】
図8Aに示すように、補助装置40は、回転検知部41と、補助駆動部42と、圧力調整部23(
図4等参照)と、を含んでいる。回転検知部41は、定着ベルト21の回転を検知する機能を有している。補助駆動部42は、回転検知部41による検知結果に基づいて駆動モーターM1を制御する機能を有している。上記したように、圧力調整部23は、加圧ローラー22を定着ベルト21に接近させる方向に移動させて加圧領域Nを加圧し、加圧ローラー22を定着ベルト21から離間させる方向に移動させて加圧領域Nを減圧する機能を有している。
【0043】
<回転検知部>
回転検知部41は、パルス板43と、2つの光電センサー44A,44Bと、を含んでいる。パルス板43は、軸周りに回転可能に筐体20に支持されている。2つの光電センサー44A,44Bは、パルス板43に隣接する位置で筐体20に支持されている。
【0044】
パルス板43は、円盤部43Aの外周から径方向に延びた3つの遮光片43Bを有する形状(すなわち、三ツ矢形状)を成している。3つの遮光片43Bは円盤部43Aの周方向に略等間隔に配置されており、隣り合う遮光片43Bの間には隙間43Cが形成されている。すなわち、パルス板43は、周方向に交互に並べられた3つの遮光片43Bと3つの隙間43Cとを有している。パルス板43の円盤部43Aには、ギア列29の最終ギア29Gに噛み合う検知ギア43Gが固定されている。検知ギア43Gは、いわゆる平歯車であって、円盤部43Aと同一軸心上に設けられている。パルス板43は、定着ベルト21の回転に同期して定着ベルト21と同一方向に軸周りに回転する。
【0045】
2つの光電センサー44A,44Bは、それぞれ、パルス板43の遮光片43Bを挟んで対向する発光部45A,45Bと受光部46A,46Bとを有する透過型光電センサーである(
図8B参照)。光電センサー44A,44Bは、それぞれ、発光部45A,45Bから出射されて隙間43Cを通過した光を受光部46A,46Bで検知する。各光電センサー44A,44Bは、パルス板43の回転に伴って正弦波形に近似したパルス信号を出力する(
図11等参照)。2つの光電センサー44A,44Bは、パルス板43の後側に隣接し、上下に並んで配置されている。2つの光電センサー44A,44Bは、互いに1/4周期ずれたパルス信号を出力するように配置されている。すなわち、2つの光電センサー44A,44Bは、パルス板43の回転に伴って、2つの受光部46A,46Bが同時期に受光する状態と、2つの受光部46A,46Bが同時期に受光しない状態と、2つの受光部46A,46Bの何れか一方のみが受光する状態(すなわち、2つの受光部46A,46Bの何れか一方のみが受光しない状態)と、の間で状態遷移するように配置されている。
【0046】
<補助駆動部>
図8Aに示すように、補助駆動部42は、駆動モーターM1(駆動源)と、制御装置47(制御部)と、を含んでいる。上記したように、駆動モーターM1は、定着ベルト21を軸周りに回転させるための駆動源である。また、制御装置47は、カラープリンター1を制御するための構成であって、補助装置40の構成要素でもある。
【0047】
駆動モーターM1は、例えば、ステッピングモーターや速度制御モーター等、回転速度を制御することができる電動機である。
【0048】
図9に示すように、制御装置47は、演算処理部47Aと、メモリー47Bと、インターフェース47Cと、を含んでいる。演算処理部47Aは、プロクラム等に従って演算処理を実行する。メモリー47Bには、様々な制御に用いるプログラムやデータ等(例えば、パルス板43の遮光片43B(隙間43C)のピッチ、駆動モーターM1の回転速度制御に関する情報、ギア列29等の複数のギアの歯数やギア比等)が記憶されている。また、メモリー47Bには、演算処理部47Aによる演算結果等も記憶されることがある。駆動モーターM1や光電センサー44A,44B等、カラープリンター1の様々な装置(
図9では省略する。)は、インターフェース47Cを介して制御装置47に接続されている。制御装置47は、回転検知部41の2つの光電センサー44A,44Bの検知結果に基づいて定着ベルト21の回転方向および回転速度を決定し、その決定に基づいて駆動モーターM1の回転方向および回転速度を制御する。
【0049】
[補助装置の作用]
次に、
図8A、
図8B、および
図10ないし
図13を参照して、補助装置40の作用(ジャム処理の手順)について説明する。
図10は回転検知部41の作用(反時計回り)を説明する説明図(側面図)である。
図11は2つの光電センサー44A,44Bが出力するパルス信号(反時計回り)を示す説明図である。
図12は回転検知部41の作用(時計回り)を説明する説明図(側面図)である。
図13は2つの光電センサー44A,44Bが出力するパルス信号(時計回り)を示す説明図である。
【0050】
定着装置7の加圧領域NでシートSの搬送不良(ジャム)が発生すると、制御装置47は、液晶画面等にメッセージを表示する。ユーザーは、開閉軸2Bを中心に開閉扉2Aを後方に回動させ、搬送路8や定着装置7を露出させる(
図7参照)。この状態で、ユーザーは搬送路8に詰まったシートSを除去することができる。また、装置本体2には、開閉扉2Aの開閉を検知するスイッチ(図示せず)が設けられており、制御装置47は、スイッチを介して開閉扉2Aの開放を検知すると、カムモーターM2を駆動させ、加圧領域Nを加圧状態から減圧状態に変更する(
図6参照)。
【0051】
次に、シートSが定着ベルト21と加圧ローラー22とに挟まれた状態で停止した場合(加圧領域Nでジャムが発生した場合)について説明する。ユーザーは、シートSを搬送方向(通過方向)の上流側(下方)または下流側(上方)に引っ張る(
図7の二点鎖線参照)。なお、加圧領域Nが減圧状態に設定されているため、加圧領域Nが加圧状態である場合に比べて、ユーザーは小さな力でシートSを引き抜くことができる。
【0052】
まず、例えば、ユーザーがシートSを搬送方向の上流側に引っ張った場合について説明する。なお、以下の説明では、定着ベルト21等の回転方向は、
図8Aにおける定着ベルト21等の回転方向を基準にする。
【0053】
ユーザーがシートSを上流側に引っ張ると、シートSが加圧領域Nから引き抜かれるに連れて、定着ベルト21は反時計回りに回転し、加圧ローラー22は時計回りに回転する。また、パルス板43も反時計回りに回転する。
【0054】
図10の最上段に示すように、例えば、2つの光電センサー44A,44Bがパルス板43の遮光片43Bに対向している場合、発光部45A,45Bからの光が遮光片43Bで遮断される。このため、光電センサー44A,44Bは、それぞれ、Low(OFF)となるパルス信号を出力する(
図11の(1)参照)。
【0055】
図10の二段目に示すように、パルス板43の回転が進むと、光電センサー44Bは遮光片43Bに対向した状態に維持されるが、光電センサー44Aはパルス板43の隙間43Cに対向した状態になる。発光部45Aからの光は隙間43Cを通過して受光部46Aに入光するため、光電センサー44AはHigh(ON)となるパルス信号を出力する(
図11の(2)参照)。なお、光電センサー44BはLow(OFF)を出力し続ける。
【0056】
図10の三段目に示すように、更にパルス板43の回転が進むと、2つの光電センサー44A,44Bは、それぞれ、パルス板43の隙間43Cに対向するため、High(ON)を出力する(
図11の(3)参照)。また、
図10の最下段に示すように、更にパルス板43の回転が進むと、光電センサー44Bは隙間43Cに対向した状態に維持されるが、光電センサー44Aは遮光片43Bに対向した状態になる。このため、光電センサー44AはLow(OFF)を出力し、光電センサー44BはHigh(ON)を出力し続ける(
図11の(4)参照)。更にパルス板43の回転が進むと、
図10の最上段に示す状態に戻る。
【0057】
制御装置47は、2つの光電センサー44A,44Bから
図11に示すパルス信号を受信すると、ユーザーによるシートSの引き抜きが継続していると判別し、且つパルス板43(定着ベルト21)が反時計回りに回転していると判別する。また、制御装置47は、パルス信号の1周期の時間および1周期当たりの出力パルス数等に基づいて定着ベルト21の回転速度を算出する。さらに、制御装置47は、駆動モーターM1の回転数の変化や駆動モーターM1に流れる電流値の変化等を計測することで、ユーザーによるシートSの引き抜きが継続しているか否かを判別する。制御装置47は、シートSの引き抜きが継続している場合に、決定された回転方向および回転速度で定着ベルト21が回転するように駆動モーターM1を回転駆動させる。ユーザーは、反時計回りに回転する定着ベルト21によって搬送方向上流側に送り出されるシートSを加圧領域Nから引き抜く。
【0058】
制御装置47は、シートSの引き抜きが中断すると(シートSが完全に引き抜かれると)、駆動モーターM1の回転駆動を停止させる。以上によって、加圧領域Nに詰まったシートSが除去される。ユーザーは、開閉扉2Aを閉じて、ジャム処理を完了させる。なお、制御装置47は、定着装置7の内部または搬送路8に設けたジャムセンサー(図示せず)の出力に基づいてシートSが引き抜かれたことを判別し、駆動モーターM1の回転駆動を停止してもよい。
【0059】
一方、ユーザーがシートSを搬送方向の下流側に引っ張った場合、定着ベルト21およびパルス板43は時計回りに回転し、加圧ローラー22は反時計回りに回転する。
図12の最上段に示すように、2つの光電センサー44A,44Bが、それぞれ、パルス板43の遮光片43Bに対向した状態(Low(
図13の(1)参照))からパルス板43が時計回りに回転すると、
図12の二段目に示すように、光電センサー44Aは遮光片43Bに対向した状態に維持され、光電センサー44Bはパルス板43の隙間43Cに対向した状態になる。このため、光電センサー44AはLowを出力し続け、光電センサー44BはHighを出力する(
図13の(2)参照)。
【0060】
図12の三段目に示すように、更にパルス板43の回転が進むと、2つの光電センサー44A,44Bは、それぞれ、パルス板43の隙間43Cに対向するため、Highを出力する(
図13の(3)参照)。また、
図12の最下段に示すように、更にパルス板43の回転が進むと、光電センサー44AはHighを出力し続け、光電センサー44Bは遮光片43Bに対向してLowを出力する(
図13の(4)参照)。
【0061】
制御装置47は、2つの光電センサー44A,44Bから上記したようなパルス信号を受信すると、シートSの引き抜きが継続していると判別し、且つパルス板43が時計回りに回転していると判別する。なお、制御装置47によるその他の制御は、上記したパルス板43が反時計回りに回転している場合の制御と略同様であるため、その説明は省略する。
【0062】
以上説明した本実施形態に係る定着装置7では、回転検知部41が、加圧領域Nでジャムが発生した場合に、シートSを搬送方向(通過方向)の上流側または下流側に引き抜く過程で生じる定着ベルト21の回転を検知する。また、補助駆動部42が、シートSの引き抜きが継続している場合に、回転検知部41による検知結果に基づいて定着ベルト21の回転方向を判別し、その回転方向に定着ベルト21を回転させる。以上の構成によれば、定着ベルト21がシートSの引き抜き方向に応じた回転方向に回転するため、シートSを引き抜く方向に送り出すことができる。これにより、シートSの引き抜きにかかる負荷を軽減することができ、ジャム処理時におけるシートSの千切れ等を有効に抑制することができる。また、以上の構成によれば、シートSの引き抜きが継続している場合に定着ベルト21を回転させるため、シートSが引き抜かれているか否かを問わず無理やりシートSを送り出す場合に比べて、シートSの形状の崩れを抑制することができる。以上のように、シートSの引き抜きを補助するように定着ベルト21が回転することで、適切なジャム処理を容易に行うことができる。
【0063】
また、本実施形態に係る定着装置7では、補助駆動部42が、回転検知部41による検知結果に基づいて定着ベルト21の回転速度を算出し、その回転速度で定着ベルト21を回転させる。この構成によれば、シートSを引き抜く速度に応じた回転速度で定着ベルト21を回転させることができるため、シートSの引き抜き作業を適切に補助することができる。これにより、ユーザーはシートSの引き抜き作業を自然に行うことができる。
【0064】
また、本実施形態に係る定着装置7によれば、2つの光電センサー44A,44Bを設けることでパルス板43の回転方向と回転速度を検知することができる。これにより、パルス板43と同一方向に回転する定着ベルト21を、決定した回転方向と回転速度で回転させることができ、シートSの引き抜き作業を補助することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る定着装置7によれば、ジャム処理を行う場合、圧力調整部23によって加圧領域Nに作用する圧力を弱めることができるため、シートSの引き抜き作業を更に小さな力で行うことができる。
【0066】
また、本実施形態に係るカラープリンター1によれば、上記した定着装置7を備える画像形成装置が実現される。
【0067】
なお、本実施形態に係る定着装置7では、補助駆動部42(制御装置47)が、定着ベルト21の回転方向の他に、シートSの引き抜き速度に応じた定着ベルト21の回転速度を算出して、その回転速度で定着ベルト21を回転させていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、補助駆動部42は、定着ベルト21の回転速度の算出は省略し、予め設定された一定の回転速度で定着ベルト21を回転させてもよい。
【0068】
また、本実施形態に係る定着装置7では、補助駆動部42が、2つの光電センサー44A,44Bを含んでいるが、これに限らず、光電センサー44A,44Bは3つ以上設けられていてもよい。この場合であっても、3つ以上の光電センサー44A,44Bは、定着ベルト21(パルス板43)の回転方向を判別できるパルス信号を出力するように配置されることが好ましい。また、パルス板43には3つの遮光片43B(隙間43C)が形成されているが、遮光片43B(隙間43C)は4つ以上形成されてもよい。
【0069】
また、本実施形態に係る定着装置7では、圧力調整部23が加圧領域Nを減圧した状態で、ジャム処理が実行されるが、本発明はこれに限定されない。上記したように、シートSの引き抜き方向に応じて定着ベルト21が回転することでシートSを引き抜きに必要な力を抑えることができるため、圧力調整部23による加圧領域Nの減圧動作が省略されてもよい。
【0070】
また、本実施形態に係る定着装置7では、圧力調整部23が加圧ローラー22を移動させて加圧領域Nの圧力を変更しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、圧力調整部23は、定着ベルト21を移動させて加圧領域Nの圧力を変更するように構成されてもよい。
【0071】
また、本実施形態に係る定着装置7では、定着ベルト21が回転駆動されているが、これに限らず、加圧ローラー22が回転駆動されてもよい。この場合、回転検知部41は、シートSを引き抜く過程で生じる加圧ローラー22の回転を検知する。また、補助駆動部42は、回転検知部41による検知結果に基づいて加圧ローラー22の回転方向や回転速度を決定し、その決定に基づいて加圧ローラー22を回転させる。また、この定着装置7では、定着部材として定着ベルト21が用いられているが、これに限らず、定着部材として芯金の周面に弾性層を積層した定着ローラー(図示せず)を用いてもよい。
【0072】
また、本実施形態の説明では、一例として、本発明をカラープリンター1に適用した場合を示しているが、これに限らず、例えば、モノクロプリンター、複写機、ファクシミリまたは複合機等に本発明を適用してもよい。
【0073】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係る定着装置および画像形成装置における一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。