特許第6860077号(P6860077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6860077楽音データ再生装置および楽音データ再生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860077
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】楽音データ再生装置および楽音データ再生方法
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/00 20060101AFI20210405BHJP
   G10H 1/18 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   G10H1/00 102Z
   G10H1/18 101
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-540743(P2019-540743)
(86)(22)【出願日】2017年9月11日
(86)【国際出願番号】JP2017032718
(87)【国際公開番号】WO2019049383
(87)【国際公開日】20190314
【審査請求日】2020年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】金田 涼美
(72)【発明者】
【氏名】山下 司
【審査官】 中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−066773(JP,A)
【文献】 特開平10−260683(JP,A)
【文献】 特開2005−070167(JP,A)
【文献】 特開2003−029757(JP,A)
【文献】 特開2002−182648(JP,A)
【文献】 実開昭63−098597(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の黒鍵および白鍵にそれぞれ相当する複数の第1および第2の演奏操作子の並びを有し、かつ少なくとも1つの第1の演奏操作子と少なくとも1つの第2の演奏操作子とを含む一部の領域が第1の鍵域として設定された鍵盤状の演奏操作子群と、
前記第1の鍵域に楽音データを割り当てる割り当て部と、
前記演奏操作子群の前記複数の第1および第2の演奏操作子の各々への操作を検出する操作検出部と、
前記第1の鍵域の第1および第2の演奏操作子のうち一方の演奏操作子への操作の検出に応答して、前記割り当てられた楽音データの再生方法に関する第1の制御を行い、前記第1の鍵域の第1および第2の演奏操作子のうち他方の演奏操作子への操作の検出に応答して、前記割り当てられた楽音データの再生方法に関しかつ前記第1の制御と異なる第2の制御を行う再生制御部とを備え、
前記楽音データは、ループ再生可能な楽音データを含み、
前記楽音データの再生方法に関する第1および第2の制御の各々は、楽音データのループ再生の開始、楽音データの1回再生の開始、楽音データのループ再生の停止または楽音データの1回再生の停止のいずれかを含む、楽音データ再生装置。
【請求項2】
複数の黒鍵および白鍵にそれぞれ相当する複数の第1および第2の演奏操作子の並びを有し、かつ少なくとも1つの第1の演奏操作子と少なくとも1つの第2の演奏操作子とを含む一部の領域が第1の鍵域として設定された鍵盤状の演奏操作子群と、
前記第1の鍵域に楽音データを割り当てる割り当て部と、
前記演奏操作子群の前記複数の第1および第2の演奏操作子の各々への操作を検出する操作検出部と、
前記第1の鍵域の第1および第2の演奏操作子のうち一方の演奏操作子への操作の検出に応答して、前記割り当てられた楽音データの再生方法に関する第1の制御を行い、前記第1の鍵域の第1および第2の演奏操作子のうち他方の演奏操作子への操作の検出に応答して、前記割り当てられた楽音データの再生方法に関しかつ前記第1の制御と異なる第2の制御を行う再生制御部と、
前記第1の鍵域に割り当てられた楽音データがループ再生可能であるか否かを判定する判定部とを備え、
前記第1および第2の演奏操作子の各々は、当該演奏操作子への操作によりオン状態とオフ状態とに切り替えられ、
前記再生制御部は、前記判定部の判定結果および前記一方の演奏操作子の状態の変化の仕方に基づいて前記第1の制御を行い、前記判定部の判定結果および前記他方の演奏操作子の状態の変化の仕方に基づいて前記第2の制御を行う、楽音データ再生装置。
【請求項3】
前記演奏操作子群は、
異なる音高に対応する複数の第1および第2の演奏操作子を含みかつ前記第1の鍵域とは異なる領域に設定された第2の鍵域を含み、
前記割り当て部は、前記第2の鍵域に楽音データを割り当て、
前記再生制御部は、前記第2の鍵域の複数の第1および第2の演奏操作子の各々への操作の検出に応答して、操作された第1または第2の演奏操作子に対応する音高に基づいて、前記割り当てられた楽音データの音高をシフトし、シフトされた音高を有する楽音データを再生する、請求項1または2記載の楽音データ再生装置。
【請求項4】
前記第1の鍵域は、前記演奏操作子群において前記第2の鍵域よりも高い音域側に設定された、請求項3記載の楽音データ再生装置。
【請求項5】
前記演奏操作子群は、
異なる音高に対応する複数の第1および第2の演奏操作子を含みかつ前記第1の鍵域および第2の鍵域とは異なる領域に設定可能な第3の鍵域を含み、
前記再生制御部は、前記第3の鍵域の複数の第1および第2の演奏操作子の各々への操作の検出に応答して、操作された第1または第2の演奏操作子に対応する音高に基づくコードを検出し、検出されたコードに基づく楽音データを再生する、請求項3または4記載の楽音データ再生装置。
【請求項6】
前記再生制御部は、楽音データがループ再生可能であると判定された場合に、前記一方の演奏操作子のオン状態への第1の切り替わりに応答して楽音データのループ再生を開始し、前記一方の演奏操作子のオン状態への第2の切り替わりに応答して楽音データのループ再生を停止する、請求項記載の楽音データ再生装置。
【請求項7】
前記再生制御部は、楽音データがループ再生可能であると判定された場合に、前記他方の演奏操作子がオン状態に保持されている間、楽音データのループ再生を行い、前記他方の演奏操作子のオフ状態への切り替わりに応答して楽音データのループ再生を停止する、請求項または記載の楽音データ再生装置。
【請求項8】
複数の黒鍵および白鍵にそれぞれ相当する複数の第1および第2の演奏操作子の並びを有する鍵盤状の演奏操作子群において少なくとも1つの第1の演奏操作子と少なくとも1つの第2の演奏操作子とを含む第1の鍵域に楽音データを割り当てるステップと、
前記演奏操作子群の前記複数の第1および第2の演奏操作子の各々への操作を検出するステップと、
前記第1の鍵域の第1および第2の演奏操作子のうち一方の演奏操作子への操作の検出に応答して、前記割り当てられた楽音データの再生方法に関する第1の制御を行い、前記第1の鍵域の第1および第2の演奏操作子のうち他方の演奏操作子への操作の検出に応答して、前記割り当てられた楽音データの再生方法に関しかつ前記第1の制御と異なる第2の制御を行うステップとを含み、
前記楽音データは、ループ再生可能な楽音データを含み、
前記楽音データの再生方法に関する第1および第2の制御の各々は、楽音データのループ再生の開始、楽音データの1回再生の開始、額億データのループ再生の停止または楽音データの1回再生の停止のいずれかを含む、楽音データ再生方法。
【請求項9】
複数の黒鍵および白鍵にそれぞれ相当する複数の第1および第2の演奏操作子の並びを有する鍵盤状の演奏操作子群において少なくとも1つの第1の演奏操作子と少なくとも1つの第2の演奏操作子とを含む第1の鍵域に楽音データを割り当てるステップと、
前記演奏操作子群の前記複数の第1および第2の演奏操作子の各々への操作を検出するステップと、
前記第1の鍵域の第1および第2の演奏操作子のうち一方の演奏操作子への操作の検出に応答して、前記割り当てられた楽音データの再生方法に関する第1の制御を行い、前記第1の鍵域の第1および第2の演奏操作子のうち他方の演奏操作子への操作の検出に応答して、前記割り当てられた楽音データの再生方法に関しかつ前記第1の制御と異なる第2の制御を行うステップと、
前記第1の鍵域に割り当てられた楽音データがループ再生可能であるか否かを判定するステップとを含み、
前記第1および第2の演奏操作子の各々は、当該演奏操作子への操作によりオン状態とオフ状態とに切り替えられ、
前記第1の制御および前記第2の制御を行うステップは、前記判定するステップの判定結果および前記一方の演奏操作子の状態の変化の仕方に基づいて前記第1の制御を行い、前記判定するステップの判定結果および前記他方の演奏操作子の状態の変化の仕方に基づいて前記第2の制御を行うことを含む、楽音データ再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽音データを再生する楽音データ再生装置および楽音データ再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鍵盤の各鍵にバスドラム、スネアドラム等のリズム音を割り当てることが可能な電子楽器が知られている。例えば、特許文献1に記載された電子楽器によれば、鍵盤の複数の鍵域にそれぞれ通常の鍵盤音またはリズム音が割り当てられる。使用者は、鍵域ごとに通常の鍵盤音を発生させるかまたはリズム音を発生させるかを選択することができる。
【特許文献1】特開平3−213897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の特許文献1に記載された電子楽器では、使用者は各鍵域の鍵を操作することにより通常の鍵盤音またはリズム音を発生させることができる。しかしながら、使用者が、演奏中にループ再生のオンオフ等の再生方法に関する制御を容易に切り替え可能であることが望まれる。
【0004】
本発明は、演奏中に楽音データの再生方法に関する制御を容易に切り替えることを可能とする楽音データ再生装置および楽音データ再生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一局面に従う楽音データ再生装置は、複数の黒鍵および白鍵にそれぞれ相当する複数の第1および第2の演奏操作子の並びを有し、かつ少なくとも1つの第1の演奏操作子と少なくとも1つの第2の演奏操作子とを含む一部の領域が第1の鍵域として設定された鍵盤状の演奏操作子群と、第1の鍵域に楽音データを割り当てる割り当て部と、演奏操作子群の複数の第1および第2の演奏操作子の各々への操作を検出する操作検出部と、第1の鍵域の第1および第2の演奏操作子のうち一方の演奏操作子への操作の検出に応答して、割り当てられた楽音データの再生方法に関する第1の制御を行い、第1の鍵域の第1および第2の演奏操作子のうち他方の演奏操作子への操作の検出に応答して、割り当てられた楽音データの再生方法に関しかつ第1の制御と異なる第2の制御を行う再生制御部とを備え、楽音データは、ループ再生可能な楽音データを含み、楽音データの再生方法に関する第1および第2の制御の各々は、楽音データのループ再生の開始、楽音データの1回再生の開始、楽音データのループ再生の停止または楽音データの1回再生の停止のいずれかを含む
【0006】
本発明の他の局面に従う楽音データ再生装置は、複数の黒鍵および白鍵にそれぞれ相当する複数の第1および第2の演奏操作子の並びを有し、かつ少なくとも1つの第1の演奏操作子と少なくとも1つの第2の演奏操作子とを含む一部の領域が第1の鍵域として設定された鍵盤状の演奏操作子群と、第1の鍵域に楽音データを割り当てる割り当て部と、演奏操作子群の複数の第1および第2の演奏操作子の各々への操作を検出する操作検出部と、第1の鍵域の第1および第2の演奏操作子のうち一方の演奏操作子への操作の検出に応答して、割り当てられた楽音データの再生方法に関する第1の制御を行い、第1の鍵域の第1および第2の演奏操作子のうち他方の演奏操作子への操作の検出に応答して、割り当てられた楽音データの再生方法に関しかつ第1の制御と異なる第2の制御を行う再生制御部と、第1の鍵域に割り当てられた楽音データがループ再生可能であるか否かを判定する判定部とを備え、第1および第2の演奏操作子の各々は、当該演奏操作子への操作によりオン状態とオフ状態とに切り替えられ、再生制御部は、判定部の判定結果および一方の演奏操作子の状態の変化の仕方に基づいて第1の制御を行い、判定部の判定結果および他方の演奏操作子の状態の変化の仕方に基づいて第2の制御を行う。
【0007】
演奏操作子群は、異なる音高に対応する複数の第1および第2の演奏操作子を含みかつ第1の鍵域とは異なる領域に設定された第2の鍵域を含み、割り当て部は、第2の鍵域に楽音データを割り当て、再生制御部は、第2の鍵域の複数の第1および第2の演奏操作子の各々への操作の検出に応答して、操作された第1または第2の演奏操作子に対応する音高に基づいて、割り当てられた楽音データの音高をシフトし、シフトされた音高を有する楽音データを再生してもよい。
【0008】
第1の鍵域は、演奏操作子群において第2の鍵域よりも高い音域側に設定されてもよい。
【0009】
演奏操作子群は、異なる音高に対応する複数の第1および第2の演奏操作子を含みかつ第1の鍵域および第2の鍵域とは異なる領域に設定可能な第3の鍵域を含み、再生制御部は、第3の鍵域の複数の第1および第2の演奏操作子の各々への操作の検出に応答して、操作された第1または第2の演奏操作子に対応する音高に基づくコードを検出し、検出されたコードに基づく楽音データを再生してもよい。
【0011】
再生制御部は、楽音データがループ再生可能であると判定された場合に、一方の演奏操作子のオン状態への第1の切り替わりに応答して楽音データのループ再生を開始し、一方の演奏操作子のオン状態への第2の切り替わりに応答して楽音データのループ再生を停止してもよい。
【0012】
再生制御部は、楽音データがループ再生可能であると判定された場合に、他方の演奏操作子がオン状態に保持されている間、楽音データのループ再生を行い、他方の演奏操作子のオフ状態への切り替わりに応答して楽音データのループ再生を停止してもよい。
【0013】
本発明のさらに他の局面に従う楽音データ再生方法は、複数の黒鍵および白鍵にそれぞれ相当する複数の第1および第2の演奏操作子の並びを有する鍵盤状の演奏操作子群において少なくとも1つの第1の演奏操作子と少なくとも1つの第2の演奏操作子とを含む第1の鍵域に楽音データを割り当てるステップと、演奏操作子群の複数の第1および第2の演奏操作子の各々への操作を検出するステップと、第1の鍵域の第1および第2の演奏操作子のうち一方の演奏操作子への操作の検出に応答して、割り当てられた楽音データの再生方法に関する第1の制御を行い、第1の鍵域の第1および第2の演奏操作子のうち他方の演奏操作子への操作の検出に応答して、割り当てられた楽音データの再生方法に関しかつ第1の制御と異なる第2の制御を行うステップとを含み、楽音データは、ループ再生可能な楽音データを含み、楽音データの再生方法に関する第1および第2の制御の各々は、楽音データのループ再生の開始、楽音データの1回再生の開始、額億データのループ再生の停止または楽音データの1回再生の停止のいずれかを含む
本発明のさらに他の局面に従う楽音データ再生方法は、複数の黒鍵および白鍵にそれぞれ相当する複数の第1および第2の演奏操作子の並びを有する鍵盤状の演奏操作子群において少なくとも1つの第1の演奏操作子と少なくとも1つの第2の演奏操作子とを含む第1の鍵域に楽音データを割り当てるステップと、演奏操作子群の複数の第1および第2の演奏操作子の各々への操作を検出するステップと、第1の鍵域の第1および第2の演奏操作子のうち一方の演奏操作子への操作の検出に応答して、割り当てられた楽音データの再生方法に関する第1の制御を行い、第1の鍵域の第1および第2の演奏操作子のうち他方の演奏操作子への操作の検出に応答して、割り当てられた楽音データの再生方法に関しかつ第1の制御と異なる第2の制御を行うステップと、第1の鍵域に割り当てられた楽音データがループ再生可能であるか否かを判定するステップとを含み、第1および第2の演奏操作子の各々は、当該演奏操作子への操作によりオン状態とオフ状態とに切り替えられ、第1の制御および第2の制御を行うステップは、判定するステップの判定結果および一方の演奏操作子の状態の変化の仕方に基づいて第1の制御を行い、判定するステップの判定結果および他方の演奏操作子の状態の変化の仕方に基づいて第2の制御を行うことを含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、演奏中に楽音データの再生方法に関する制御を容易に切り替えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明の一実施の形態に係る楽音データ再生装置を含む電子音楽装置の構成を示すブロック図である。
図2図2図1の演奏操作子群の鍵域を示す模式図である。
図3図3図1の主として楽音データ再生装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図4図4は鍵域情報の一例を示す図である。
図5図5図2の楽音データ再生装置における楽音データ再生方法を示すフローチャートである。
図6図6図2の楽音データ再生装置における楽音データ再生方法を示すフローチャートである。
図7図7はノートオン時の第1の再生制御を示すフローチャートである。
図8図8はノートオン時の第2の再生制御を示すフローチャートである。
図9図9はノートオン時の第3の再生制御を示すフローチャートである。
図10図10はノートオフ時の第1および第2の再生制御を示すフローチャートである。
図11図11はノートオフ時の第3の再生制御を示すフローチャートである。
図12図12はリズム鍵域の鍵が操作された場合の第1の再生制御の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る楽音データ再生装置および楽音データ再生方法について図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
(1)電子音楽装置の構成
図1は本発明の一実施の形態に係る楽音データ再生装置を含む電子音楽装置の構成を示すブロック図である。
【0018】
図1の電子音楽装置1は、例えば電子鍵盤楽器である。電子音楽装置1は、演奏操作子群2、設定操作部3および表示器4を備える。本実施の形態では、演奏操作子群2は、複数の黒鍵および白鍵にそれぞれ相当する複数の第1および第2の演奏操作子の並びを有し、バス14に接続される。なお、演奏操作子群2の複数の第1および第2の演奏操作子は、後述するタッチパネルの画面上に表示された複数の黒鍵および白鍵の画像であってもよい。
【0019】
設定操作部3は、オンオフ操作される操作スイッチ、回転操作される操作スイッチ、またはスライド操作される操作スイッチ等を含み、バス14に接続される。この設定操作部3は、後述する鍵域の設定、演奏データの割り当て、音量の調整、電源のオンオフおよび各種設定を行うために用いられる。表示器4は、例えば液晶ディスプレイを含み、バス14に接続される。表示器4には、楽曲名、楽譜、またはその他の各種情報が表示される。表示器4がタッチパネルディスプレイであってもよい。この場合、演奏操作子群2または設定操作部3の一部または全てが表示器4に表示されてもよい。使用者は、表示器4を操作することにより各種操作を指示することができる。
【0020】
電子音楽装置1は、音源部5およびサウンドシステム6を備える。音源部5はバス14に接続され、演奏操作子群2の操作により再生される楽音データ等に基づいてオーディオデータ(音響信号)を生成する。オーディオデータは、音の波形を示すサンプリングデータである。サウンドシステム6は、デジタルアナログ(D/A)変換回路、増幅器およびスピーカを含む。このサウンドシステム6は、音源部5から与えられるオーディオデータをアナログ音信号に変換し、アナログ音信号に基づく音を発生する。
【0021】
電子音楽装置1は、記憶装置7、CPU(中央演算処理装置)8、タイマ9、RAM(ランダムアクセスメモリ)10、ROM(リードオンリメモリ)11、および通信I/F(インタフェース)12をさらに備える。記憶装置7、CPU8、RAM10、ROM11および通信I/F12はバス14に接続される。タイマ9はCPU8に接続される。外部記憶装置13等の外部機器が通信I/F12を介してバス14に接続されてもよい。
【0022】
記憶装置7は、ハードディスク、光学ディスク、磁気ディスクまたはメモリカード等の記憶媒体を含む。この記憶装置7には、楽器の演奏音を示す演奏データおよび自動伴奏のための伴奏スタイルデータが記憶されるとともに鍵域情報が記憶される。本実施の形態では、楽音データは演奏データおよび後述する自動伴奏データを含む。楽音データは、オーディオデータであってもよく、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)データであってもよい。鍵域情報については後述する。また、記憶装置7には、楽音データ再生プログラム等のコンピュータプログラムが記憶される。
【0023】
RAM10は、例えば揮発性メモリからなり、CPU8の作業領域として用いられるとともに、各種データを一時的に記憶する。ROM11は、例えば不揮発性メモリからなり、制御プログラムを記憶する。ROM11が楽音データ再生プログラム等のコンピュータプログラムを記憶してもよい。CPU8は、記憶装置7またはROM11に記憶された楽音データ再生プログラムを実行することにより後述する楽音データ再生方法を行う。タイマ9は、時間経過を示す時間情報をCPU8に与える。記憶装置7、CPU8、タイマ9、RAM10およびROM11が楽音データ再生装置100を構成する。
【0024】
楽音データ再生プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に格納された形態で提供され、記憶装置7またはROM11にインストールされてもよい。また、楽音データ再生プログラムが外部記憶装置13に記憶されてもよい。さらに、通信I/F12が通信網に接続されている場合、通信網に接続されたサーバから配信された楽音データ再生プログラムが記憶装置7またはROM11にインストールされてもよい。
【0025】
(2)演奏操作子群2の鍵域
図2図1の演奏操作子群2の鍵域を示す模式図である。図2に示すように、本実施の形態では、演奏操作子群2は鍵盤20を含む。鍵盤20は複数の黒鍵BKおよび白鍵WHの並びを有する。複数の黒鍵BKおよび白鍵WHの並びには、左から右へ順に高くなる音高が対応付けられている。
【0026】
鍵盤20の中央部に音高シフト鍵域N1が設定され、鍵盤20の右部分(高音域側の領域)に複数のリズム鍵域D1〜D6が設定され、鍵盤20の左部分(低音域側の領域)にコード検出鍵域CDが設定されている。音高シフト鍵域N1とコード検出鍵域CDとの境界であるスプリットポイントSPは、使用者が設定操作部3を操作することにより任意の位置に設定される。リズム鍵域D1〜D6の各々は、少なくとも1つの黒鍵BKと少なくとも1つの白鍵WHとを含む。例えば、リズム鍵域D1は、1つの黒鍵BKと2つの白鍵WHとを含み、リズム鍵域D2は、2つの黒鍵BKと2つの白鍵WHとを含む。
【0027】
図1の記憶装置7に記憶される演奏データは、時系列に複数の音高が変化する変化パターンを有する複数種類の演奏データとドラム等のリズムパターンを有する複数種類の演奏データとを含む。以下、両方の演奏データを区別する場合には、時系列に複数の音高が変化する変化パターンを有する演奏データを音程演奏データと呼び、リズムパターンを有する演奏データをリズム演奏データと呼ぶ。なお、音程演奏データは、各時点において1または複数の音高を含んでもよい。ここで、1つの演奏データが繰り返し再生されることをループ再生と呼び、1つの演奏データが1回のみ再生されることを通常再生と呼ぶ。演奏データには、ループ再生可能なループ有効データと、ループ再生可能でないループ無効データとがある。
【0028】
リズム鍵域D1〜D6の各々には、複数種類のリズム演奏データのいずれかが割り当てられる。本実施の形態では、リズム演奏データは、例えば、1小節以下のオーディオデータである。なお、リズム演奏データがMIDIデータであってもよい。
【0029】
音高シフト鍵域N1には、複数種類の音程演奏データのいずれかが割り当てられる。音程演奏データは、音高シフトされることができる。具体的には、音高シフト鍵域N1内の押された鍵に応じて音程演奏データの各音高がシフトされる。使用者がコード検出鍵域CD内でコードを構成する複数の鍵を押すと、図1の記憶装置7に記憶される伴奏スタイルデータとコードとに基づいて自動伴奏データが生成される。
【0030】
(3)楽音データ再生装置100の機能的な構成
図3図1の主として楽音データ再生装置100の機能的な構成を示すブロック図である。図3に示すように、楽音データ再生装置100は、操作検出部101、割り当て部102、鍵域設定部103、コード検出部104、鍵域識別部105、再生制御部106および判定部107を含む。楽音データ再生装置100の各構成部分(101〜107)の機能は、図1のCPU8が記憶装置7またはROM11に記憶された楽音データ再生プログラムを実行することにより実現される。
【0031】
使用者が演奏操作子群2の鍵を押すと、押された鍵に対応する音高を含むノートオンイベント(以下、ノートオンと略記する。)が発生する。ノートオンは鍵のオン状態に相当する。また、使用者が演奏操作子群2の鍵を離すと、離された鍵に対応する音高を含むノートオフイベント(以下、ノートオフと略記する。)が発生する。ノートオフは鍵のオフ状態に相当する。操作検出部101は、演奏操作子群2の操作によるノートオンおよびノートオフを検出する。
【0032】
割り当て部102は、使用者による設定操作部3の操作に基づいて、図2のリズム鍵域D1〜D6にリズム演奏データを割り当て、音高シフト鍵域N1に音程演奏データを割り当てる。鍵域設定部103は、使用者による設定操作部3の操作に基づいて、図1の演奏操作子群2にリズム鍵域D1〜D6、音高シフト鍵域N1およびコード検出鍵域CDを設定する。鍵域設定部103による鍵域の設定および割り当て部102による演奏データの割り当ては鍵域情報として記憶装置7に記憶される。
【0033】
コード検出部104は、操作検出部101によりコード検出鍵域CD内のノートオンが検出された場合に、ノートオンの音高に基づいてコードを検出する。鍵域識別部105は、操作検出部101により検出されたノートオンの音高が属する鍵域を識別する。判定部107は、演奏データがループ有効データであるかループ無効データであるかを判定する。
【0034】
再生制御部106は、操作検出部101により検出されたノートオンまたはノートオフ、鍵域識別部105により識別された鍵域、記憶装置7に記憶された鍵域情報および判定部107による判定結果に基づいて、演奏データの再生方法を制御する。また、再生制御部106は、操作検出部101により検出されたノートオンまたはノートオフ、鍵域識別部105により識別された鍵域、記憶装置7に記憶された鍵域情報、コード検出部104により検出されたコードおよび記憶装置7に記憶された伴奏スタイルデータに基づいて、自動伴奏データの再生方法を制御する。ここで、演奏データまたは自動伴奏データの再生とは、演奏データまたは自動伴奏データを音源部5に出力することを意味する。再生制御部106により演奏データまたは自動伴奏データが再生されると、サウンドシステム6から演奏データに基づく演奏音または自動伴奏データに基づく自動伴奏音が発生される。
【0035】
本実施の形態では、再生制御部106は、リズム鍵域D1〜D6内の黒鍵BKまたは白鍵WHへの操作に基づいて、演奏データの再生方法に関する第1の制御および第2の制御を行う。鍵への操作には、鍵を押す操作(押鍵)と、鍵を離す操作(離鍵)とがある。鍵を押す操作によりその鍵がオン状態となり、鍵を離す操作によりその鍵がオフ状態となる。再生方法には、例えば、ループ再生および通常再生がある。また、再生方法に関する第1および第2の制御の各々は、例えば、ループ再生の開始、通常再生の開始、ループ再生の停止および通常再生の停止のいずれかを含む。本実施の形態では、リズム鍵域D1〜D6内の黒鍵BKの操作による制御が第1の制御に相当し、リズム鍵域D1〜D6内の白鍵WHの操作による制御が第2の制御に相当する。再生制御部106は、黒鍵BKの状態の変化の仕方に基づいて第1の制御を行い、白鍵WHの状態の変化の仕方に基づいて第2の制御を行う。鍵の状態の変化の仕方とは、鍵のオン状態からオフ状態への切り替わり、鍵のオフ状態からオン状態への切り替わり、鍵のオン状態またはオフ状態の保持、および鍵のオフ状態からオン状態への複数回の切り替わりのうちいずれか1つまたは2以上の組み合わせを含む。
【0036】
(4)鍵域情報
図4は鍵域情報の一例を示す図である。図4の例では、演奏操作子群2の鍵盤20の音高の低い鍵から高い鍵へ順に鍵番号(例えばMIDIキーナンバー)が付されている。鍵番号“28”〜 “52”の複数の鍵にコード検出鍵域CDが設定され、鍵番号“53”〜 “83”の複数の鍵に音高シフト鍵域N1が設定されている。鍵番号“84”〜 “103”の複数の鍵には、リズム鍵域D1〜D6が順に設定されている。例えば、リズム鍵域D1は鍵番号“84”〜“86”の連続する3つの鍵に設定されている。
【0037】
音高シフト鍵域N1には、演奏データとして音程演奏データ “PA”が割り当てられ、リズム鍵域D1〜D6には、演奏データとしてリズム演奏データ“P1”〜“P6”がそれぞれ割り当てられている。リズム演奏データ“P1”〜“P6”の各々は、ループ有効データまたはループ無効データである。
【0038】
(5)楽音データ再生方法の一例
図5および図6図2の楽音データ再生装置100における楽音データ再生方法を示すフローチャートである。図5および図6の楽音データ再生方法は、図1のCPU8が記憶装置7またはROM11に記憶された楽音データ再生プログラムを実行することにより行われる。以下の説明では、リズム鍵域D1〜D6のうち任意のリズム鍵域をリズム鍵域Dkと呼ぶ。kは1〜6の任意の値である。
【0039】
本例では、リズム鍵域Dkに割り当てられたリズム演奏データがループ有効データである場合に、次の再生制御が行われる。使用者がリズム鍵域Dk内の1つ以上の黒鍵BKのいずれかを1回押すとリズム演奏データのループ再生が開始され、使用者が黒鍵BKを離してもループ再生が継続する。ループ再生中に使用者がリズム鍵域Dk内の1つ以上の黒鍵BKのいずれかまたは1つ以上の白鍵WHのいずれかを再度押すとループ再生が停止される。使用者がリズム鍵域Dk内の1つ以上の白鍵WHのいずれかを押し続けるとリズム演奏データのループ再生が行われ、白鍵WHを離すとループ再生が停止される。
【0040】
一方、リズム鍵域Dkに割り当てられたリズム演奏データがループ無効データである場合、次の再生制御が行われる。使用者がリズム鍵域Dk内の任意の鍵(黒鍵BKまたは白鍵WH)を押し続けると通常再生が行われ、リズム演奏データの1回の再生後、再生が停止される。通常再生中に使用者がリズム鍵域Dk内の鍵(白鍵WHまたは黒鍵BK)を離すと通常再生が停止される。
【0041】
まず、割り当て部102および鍵域設定部103が初期設定を行う(ステップS1)。具体的には、鍵域設定部103は、設定操作部3の操作に基づいて鍵盤20にリズム鍵域D1〜D6、音高シフト鍵域N1およびコード検出鍵域CDを設定する。また、割り当て部102は、設定操作部3の操作に基づいてリズム鍵域D1〜D6の各々へのリズム演奏データの割り当て、音高シフト鍵域N1への音程演奏データを割り当て、およびコード検出鍵域CDのための伴奏スタイルデータの選択および設定を行う。
【0042】
割り当て部102および鍵域設定部103は、設定操作部3による設定の変更の操作が行われたか否かを判定する(ステップS2)。設定の変更の操作が行われた場合には、割り当て部102および鍵域設定部103はステップS1に戻る。
【0043】
設定の変更の操作が行われない場合には、操作検出部101は、ノートオンの検出を判定する(ステップS3)。ノートオンが検出された場合には、鍵域識別部105はノートオンの音高が属する鍵域を識別し(ステップS4)、識別された鍵域がコード検出鍵域CDであるか否かを判定する(ステップS5)。識別された鍵域がコード検出鍵域CDでない場合には、鍵域識別部105は識別された鍵域がリズム鍵域D1〜D6であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0044】
識別された鍵域がリズム鍵域D1〜D6である場合には、図7に示されるノートオン時の第1の再生制御が行われる(ステップS7)。識別された鍵域がリズム鍵域D1〜D6でない場合(音高シフト鍵域N1である場合)には、図8に示されるノートオン時の第2の再生制御が行われる(ステップS8)。識別された鍵域がコード検出鍵域CDである場合には、図9に示されるノートオン時の第3の再生制御が行われる(ステップS9)。
【0045】
次に、操作検出部101は、ノートオフの検出を判定する(ステップS10)。ノートオフが検出された場合には、鍵域識別部105は、ノートオフの音高が属する鍵域を識別し(ステップS11)、識別された鍵域がコード検出鍵域CDであるか否かを判定する(ステップS12)。識別された鍵域がコード検出鍵域CDでない場合(リズム鍵域D1〜D6または音高シフト鍵域N1である場合)には、図10に示されるノートオフ時の第1および第2の再生制御が行われる(ステップS13)。識別された鍵域がコード検出鍵域CDである場合には、図11に示されるノートオフ時の第3の再生制御が行われる(ステップS14)。
【0046】
その後、再生制御部106は、設定操作部3により演奏の終了が指示されたか否かを判定する(ステップS15)。演奏の終了が指示されていな場合には、再生制御部106はステップS3に戻り、ステップS3〜S15の処理が繰り返される。演奏の終了が指示された場合には、再生制御部106は再生停止処理を行う(ステップS16)。再生停止処理では、演奏データおよび自動伴奏データの再生が停止される。
【0047】
図7はノートオン時の第1の再生制御を示すフローチャートである。使用者がリズム鍵域D1〜D6内の鍵を押すことによりステップS3でノートオンが検出された場合には、図7のノートオン時の第1の再生制御が行われる。判定部107は、鍵域情報に基づいて、リズム鍵域Dkに割り当てられたリズム演奏データがループ有効データであるか否かを判定する(ステップS71)。
【0048】
リズム演奏データがループ有効データである場合には、再生制御部106は、リズム演奏データがループ再生中であるか否かを判定する(ステップS72)。リズム演奏データがループ再生中でない場合(リズム演奏データの再生が停止中である場合)には、再生制御部106は、リズム演奏データのループ再生を先頭から開始し(ステップS73)、図6のステップS10に進む。これにより、使用者は、ループ有効データであるリズム演奏データの再生の停止中にリズム鍵域Dkの黒鍵BKまたは白鍵WHを押すことによりリズム演奏データのループ再生を開始させることができる。
【0049】
リズム鍵域Dk内の黒鍵BKが押されることによりループ再生が開始された後にその黒鍵BKが離されても、ループ再生は継続される。一方、リズム鍵域Dk内の白鍵WHが押されることによりループ再生が開始された後に白鍵WHが離されると、ループ再生は停止される。ステップS72においてリズム演奏データがループ再生中である場合には、再生制御部106は、リズム演奏データのループ再生を停止し(ステップS75)、図6のステップS10に進む。これにより、使用者は、リズム演奏データのループ再生中にリズム鍵域Dkの黒鍵BKまたは白鍵WHを押すことによりリズム演奏データの再生を停止させることができる。
【0050】
ステップS71においてリズム演奏データがループ無効データである場合には、再生制御部106は、リズム演奏データの通常再生を先頭から開始し(ステップS74)、ステップS10に進む。これにより、使用者は、ループ無効データであるリズム演奏データの再生中または再生の停止中にリズム鍵域Dkの黒鍵BKまたは白鍵WHを押すことによりリズム演奏データを先頭から通常再生させることができる。
【0051】
図8はノートオン時の第2の再生制御を示すフローチャートである。使用者が音高シフト鍵域N1内の鍵を押すことによりステップS3でノートオンが検出された場合には、図8のノートオン時の第2の再生制御が行われる。再生制御部106は、鍵域情報に基づいて、音高シフト鍵域N1に割り当てられた音程演奏データの基準キーとノートオンの音高とに基づいて音高シフト量を算出する(ステップS81)。また、再生制御部106は、音程演奏データが再生中であるか否かを判定する(ステップS82)。音程演奏データが再生中である場合には、算出された音高シフト量に基づいて再生中の音程演奏データの音高シフトを行い(ステップS83)、ステップS10に進む。これにより、使用者は、音程演奏データの再生中に音高シフト鍵域N1内の所望の鍵を押すことによりその鍵に応じて再生中の音程演奏データの音高をシフトさせることができる。
【0052】
ステップS82において音程演奏データが再生中でない場合には、再生制御部106は、算出された音高シフト量に基づいて音程演奏データの音高シフトを行い(ステップS84)、音高シフト後の音程演奏データの再生を開始し(ステップS85)、ステップS10に進む。これにより、使用者は、音程演奏データの再生の停止中に音高シフト鍵域N1内の所望の鍵を押すことによりその鍵に応じた音高で音程演奏データの再生を開始させることができる。なお、音高シフト鍵域N1のノートオンの検出ごとにステップS84,S85の処理が行われてもよい。この場合、ステップS82,S83は設けられず、ステップS81の次にステップS84,S85の処理が行われる。
【0053】
図9はノートオン時の第3の再生制御を示すフローチャートである。使用者がコード検出鍵域CD内の複数の鍵を押すことによりステップS3でノートオンが検出された場合には、図9のノートオン時の第3の再生制御が行われる。コード検出部104は、ノートオンの音高に基づいてコードを検出する(ステップS91)。再生制御部106は、検出されたコードと予め設定された伴奏スタイルデータとに基づいて自動伴奏データを生成し(ステップS92)、生成された自動伴奏データを再生し(ステップS93)、ステップS10に進む。これにより、使用者は、コード検出鍵域CDの複数の鍵を押すことによりコードに対応した自動伴奏データを再生させることができる。
【0054】
図10はノートオフ時の第1および第2の再生制御を示すフローチャートである。使用者がリズム鍵域D1〜D6内の鍵または音高シフト鍵域N1内の鍵を離すことによりステップS10でノートオフが検出された場合には、図10のノートオフ時の第1および第2の再生制御が行われる。
【0055】
再生制御部106は、識別されたリズム鍵域Dkまたは音高シフト鍵域N1に割り当てられた演奏データ(リズム演奏データまたは音程演奏データ)が再生中であるか否かを判定する(ステップS131)。演奏データが再生中である場合には、判定部107は、鍵域情報に基づいて、再生中の演奏データがループ有効データであるか否かを判定する(ステップS132)。再生中の演奏データがループ有効データである場合には、再生制御部106は、ノートオフの音高がリズム鍵域Dkの黒鍵BKに相当するか否かを判定する(ステップS133)。ノートオフの音高がリズム鍵域Dkの黒鍵BKに相当しない場合、すなわちノートオフの音高がリズム鍵域Dkの白鍵WHに相当する場合または音高シフト鍵域N1の黒鍵BKまたは白鍵WHに相当する場合には、再生制御部106は、演奏データの再生を停止し(ステップS134)、ステップS15に進む。ステップS132において再生中の演奏データがループ無効データである場合には、再生制御部106は、演奏データの再生を停止し(ステップS134)、ステップS15に進む。これにより、使用者は、リズム鍵域Dkのリズム演奏データのループ再生中または通常再生中に白鍵WHを離すことにより、または音高シフト鍵域N1の音程演奏データの再生中に鍵(黒鍵BKまたは白鍵WH)を離すことにより、演奏データの再生を停止させることができる。
【0056】
一方、ステップS133でノートオフの音高がリズム鍵域Dkの黒鍵BKに相当する場合には、再生制御部106は、演奏データの再生を停止せずにステップS15に進む。これにより、使用者は、リズム演奏データのループ再生中に黒鍵BKを離しても、ループ再生を継続させることができる。ステップS131において演奏データが再生中でない場合には、再生制御部106はステップS15に進む。
【0057】
図11はノートオフ時の第3の再生制御を示すフローチャートである。使用者がコード検出鍵域CD内の鍵を離すことによりステップS10でノートオフが検出された場合には、図11のノートオフ時の第3の再生制御が行われる。
【0058】
再生制御部106は、タイマ9を起動し(ステップS141)、所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS142)。所定時間は、例えば32分音符長であるが、これに限定されない。所定時間が経過していない場合には、再生制御部106は、操作検出部101により検出されるノートオンおよびノートオフを記憶する(ステップS143)。所定時間が経過した場合には、コード検出部104は、記憶されたノートオンのうちノートオフされていない音高(所定時間の経過時にノートオンされている音高)に基づいてコードを検出する(ステップS144)。再生制御部106は、検出されたコードと予め設定された伴奏スタイルデータとに基づいて自動伴奏データを生成し(ステップS145)、生成された自動伴奏データを再生し(ステップS146)、ステップS15に進む。これにより、使用者は、自動伴奏データの再生中にコード検出鍵域CD内で押していた鍵を他の鍵に変更することにより自動伴奏データを変更させることができる。なお、所定時間内にノートオンの音高が記憶されなかった場合には、ステップS144でコードが変更されなかったことが検出され、ステップS146で自動伴奏データの再生が継続される。この場合、前回または直前に検出されたコードが持続される。
【0059】
(6)実施の形態の効果
本実施の形態に係る楽音データ再生装置100および楽音データ再生方法によれば、リズム鍵域D1〜D6内の黒鍵BKへの操作の検出に応答して、楽音データの再生方法に関する第1の制御が行われる。また、リズム鍵域D1〜D6内の白鍵WHへの操作の検出に応答して、楽音データの再生方法に関する第2の制御が行われる。この場合、使用者は、演奏中に演奏操作子群2の鍵盤20以外のスイッチまたはボタン等を切り替える必要がない。それにより、演奏中に演奏を中断することなく楽音データの再生方法に関する制御を容易に切り替えることが可能となる。
【0060】
また、使用者は、リズム鍵域D1〜D6内の黒鍵BKまたは白鍵WHへの操作により、楽音データのループ再生の開始、楽音データの通常再生(1回再生)の開始、楽音データのループ再生の停止または楽音データの1回再生の停止のいずれかを行うことができる。したがって、使用者は、演奏中に簡単な操作によりループ再生および通常再生を切り替えることが可能となる。
【0061】
さらに、使用者は、音高シフト鍵域N1の所望の鍵を操作することにより、音高シフト鍵域N1に割り当てられた楽音データの音高をシフトさせつつ所望の音高を基準とする楽音データを再生させることができる。この場合、使用者は、音高シフト鍵域N1およびリズム鍵域D1〜D6を操作することにより、任意の音高を基準とする音程演奏データに基づく演奏を行いつつ、リズム演奏データのループ再生および通常再生を容易に切り替えることが可能となる。
【0062】
また、リズム鍵域D1〜D6は音高シフト鍵域N1よりも高い音域側に設定されているので、音高シフト鍵域N1の操作による演奏を行いつつリズム鍵域D1〜D6の操作を容易に行うことができる。なお、リズム鍵域D1〜D6が音高シフト鍵域N1よりも低い音域側に設定された場合でも、使用者は、リズム鍵域D1〜D6および音高シフト鍵域N1の両方を用いた演奏を行うことが可能である。音高シフト鍵域N1が通常メロディの演奏に用いられる音域F2〜C5程度の領域に設定されることにより使用者が演奏しやすくなる。
【0063】
さらに、演奏操作子群2の鍵盤20にコード検出鍵域CDを設定することができるので、使用者は、コード検出鍵域CDの鍵を操作することによりコードに基づく自動伴奏を行いつつリズム鍵域D1〜D6の操作によるリズム音の切り替えを容易に行うことができる。なお、本実施の形態に係る電子音楽装置1と同種の一般の電子鍵盤楽器では、コード検出鍵域が低い音域(左側)に設けられる。そのため、使用者は、一般の電子鍵盤楽器と同様の演奏方法でコード演奏による自動伴奏を行いつつリズム鍵域D1〜D6または音高シフト鍵域N1を用いた演奏を容易に行うことができる。
【0064】
また、リズム鍵域D1〜D6に割り当てられた演奏データがループ有効データであるかループ無効データであるかの判定結果と黒鍵BKまたは白鍵WHの状態の変化の仕方とに基づいて、ループ再生または通常再生が開始および停止される。それにより、使用者は、リズム鍵域D1〜D6内の黒鍵BKおよび白鍵WHを押す操作によりループ再生および通常再生を容易に切り替えることが可能となる。
【0065】
さらに、使用者は、楽音データがループ有効データである場合に、黒鍵BKを押すことによりループ再生を開始させることができ、黒鍵BKを再度押すことによりループ再生を停止させることができる。それにより、演奏中に黒鍵BKの操作によりループ再生の開始および停止を容易に操作することが可能となる。
【0066】
また、使用者は、楽音データがループ有効データである場合に、白鍵WHを押し続けている間のみループ再生を継続させることができる。それにより、演奏中に白鍵WHの操作によりループ再生の開始および停止を容易に操作することが可能となる。
【0067】
なお、本実施の形態では、楽音データ再生装置100が演奏操作子群2に設定されたリズム鍵域D1〜D6(第1の鍵域)および他の鍵域を特定するための鍵域情報を記憶する記憶装置7(記憶部)と、記憶装置7に記憶された鍵域情報に基づいて、操作検出部101による操作の検出がリズム鍵域D1〜D6への操作の検出か他の領域への操作の検出かを識別する鍵域識別部105とをさらに備える。したがって、再生制御部106は、リズム鍵域D1〜D6への操作と他の領域への操作とを容易に識別することが可能となる。
【0068】
(7)楽音データ再生方法の他の例
図12はリズム鍵域D1〜D6の鍵が操作された場合の第1の再生制御の他の例を示すフローチャートである。図12の第1の再生制御は図5のステップS7の代わりに行われる。
【0069】
使用者がリズム鍵域D1〜D6内の鍵を押すことにより図5のステップS3でノートオンが検出された場合には、判定部107は、鍵域情報に基づいて、リズム鍵域Dkに割り当てられたリズム演奏データがループ有効データであるか否かを判定する(ステップS701)。
【0070】
演奏データがループ有効データである場合には、再生制御部106は、ノートオンの音高が白鍵WHに相当するか否かを判定する(ステップS702)。ノートオンの音高が白鍵WHに相当する場合には、再生制御部106は、リズム演奏データがループ再生中であるか否かを判定する(ステップS703)。
【0071】
リズム演奏データがループ再生中でない場合には、再生制御部106は、リズム演奏データが通常再生中であるか否かを判定する(ステップS704)。リズム演奏データが通常再生中でない場合には、再生制御部106は、リズム演奏データの再生を先頭から開始する(ステップS706)。ステップS704でリズム演奏データが通常再生中の場合には、再生制御部106は、リズム演奏データの再生を停止し(ステップS705)、リズム演奏データの再生を先頭から開始する(ステップS706)。ステップS703でリズム演奏データがループ再生中の場合には、再生制御部106は、ループ再生を解除し、通常再生に戻る(ステップS707)。
【0072】
これにより、使用者は、リズム演奏データの再生の停止中に白鍵WHを押すことにより通常再生を先頭から開始させることができる。また、使用者は、リズム演奏データの通常再生中に白鍵WHを押すことによりリズム演奏データの再生を先頭から開始させることができる。さらに、使用者は、リズム演奏データのループ再生中に白鍵WHを押すことによりループ再生を通常再生に切り替えることができる。通常再生では、リズム演奏データが最後まで再生されると、再生が終了する。なお、ステップS704でリズム演奏データが通常再生中である場合にステップS705,S706がスキップされてもよい。この場合、リズム演奏データの通常再生中に使用者が白鍵WHを押しても通常再生がそのまま継続される。
【0073】
ステップS702においてノートオンの音高が白鍵WHに相当しない場合(黒鍵BKに相当する場合)には、再生制御部106は、リズム演奏データが再生中であるか否かを判定する(ステップS708)。リズム演奏データが再生中でない場合には、再生制御部106は、リズム演奏データのループ再生を開始する(ステップS709)。リズム演奏データが再生中である場合には、再生制御部106は、リズム演奏データの再生をループ再生に切り替える(ステップS710)。ステップS708でリズム演奏データがループ再生中の場合には、再生制御部106は、そのままループ再生を継続する。
【0074】
これにより、使用者は、リズム演奏データの再生の停止中に黒鍵BKを押すことによりループ再生を開始させることができる。また、使用者は、リズム演奏データの通常再生中に黒鍵BKを押すことにより、通常再生をループ再生に切り替えることができる。なお、再生制御部106は、リズム演奏データのループ再生中に黒鍵BKが押された場合にループ再生を通常再生に切り替えてもよい。
【0075】
ステップS701でリズム演奏データがループ有効データでない場合(ループ無効データである場合)には、再生制御部106は、リズム演奏データが再生中であるか否かを判定する(ステップS704)。リズム演奏データが通常再生中である場合には、再生制御部106は、リズム演奏データの再生を停止し(ステップS705)、リズム演奏データの再生を先頭から開始する(ステップS706)。リズム演奏データが通常再生中でない場合には、再生制御部106は、リズム演奏データの再生を先頭から開始する(ステップS706)。
【0076】
それにより、使用者は、ループ無効データであるリズム演奏データの再生停止中に黒鍵BKまたは白鍵WHを押すことによりリズム演奏データの通常再生を先頭から開始させることができる。また、ループ無効データであるリズム演奏データの通常再生中に黒鍵BKまたは白鍵WHを押すことによりリズム演奏データの通常再生を先頭から開始させることができる。
【0077】
(8)他の実施の形態
上記実施の形態におけるリズム鍵域D1〜D6の黒鍵BKの機能と白鍵WHの機能とが互いに逆であってもよい。なお、複数のリズム鍵域D1〜D6間で黒鍵BKおよび白鍵WHの機能が共通であることが好ましい。それにより、使用者が黒鍵BKおよび白鍵WHの機能を容易に認識することができる。
【0078】
リズム鍵域D1〜D6は、使用者により設定可能であってもよく、予め固定的に設定されていてもよい。各リズム鍵域Dkに含まれる黒鍵BKおよび白鍵WHの数は上記実施の形態に限定されない。各リズム鍵域は、1つ以上の任意の数の黒鍵BKと1つ以上の任意の数の白鍵WHとを含んでもよい。
【0079】
鍵盤状の演奏操作子群2は、鍵盤の形を有することに限定されず、音階を形成する複数のパッド等の演奏操作子の並びを含んでもよい。この場合、複数の演奏操作子の一部は「♯」および「♭」が付されない音名を有する白鍵に相当し、複数の演奏操作子の他は「♯」および「♭」が付された音名を有する黒鍵に相当する。リズム鍵域D1〜D6の数は上記実施の形態に限定されず、鍵盤20に1つのリズム鍵域のみが設定されてもよく、任意の数の複数のリズム鍵域が設定されてもよい。音高シフト鍵域N1またはコード検出鍵域CDの代わりに、各鍵を押すことによりその鍵に対応する単音を発生させる通常の演奏を行うための鍵域が設定されてもよい。
【0080】
上記実施の形態では、楽音データの再生方法がループ再生および通常再生の方法であるが、本発明の再生方法はこれに限定されず、音高のみの差異を除く他の再生方法であってもよい。例えば、再生方法が音響効果の種類の切り替えまたは調整の方法であってもよい。この場合、リズム鍵域D1〜D6の黒鍵BKまたは白鍵WHを操作することにより音響効果の種類の切り替えまたは調整を行うことができる。
【0081】
上記実施の形態では、楽音データは演奏音を表す演奏データまたは伴奏音を表す自動伴奏データであるが、楽音データが歌声を表す歌唱データであってもよい。本発明の楽音データ再生装置は、電子鍵盤楽器に限らず、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等の電子デバイスにも適用可能である。この場合、鍵盤状の演奏操作子群が画面上に表示されてもよく、鍵盤状の演奏操作子群が電子デバイスに接続されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12