【実施例】
【0045】
次に、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板について、実施例を示しながら具体的に説明する。以下に示す実施例は、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板のあくまでも一例にすぎず、本発明に係る無方向性電磁鋼板が下記の例に限定されるものではない。
【0046】
(第1の試験)
第1の試験では、表1に示す化学組成を有する溶鋼を鋳造してスラブを作製し、このスラブの熱間圧延を行って鋼帯を得た。表1中の空欄は、当該元素の含有量が検出限界未満であったことを示し、残部はFe及び不純物である。表1中の下線は、その数値が本発明の範囲から外れていることを示す。次いで、鋼帯の冷間圧延及び仕上げ焼鈍を行って、厚さが0.50mmの種々の無方向性電磁鋼板を作製した。そして、各無方向性電磁鋼板の板厚中心部における結晶方位の強度を測定し、板厚中心部におけるパラメータRを算出した。この結果を表2に示す。表2中の下線は、その数値が本発明の範囲から外れていることを示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
そして、各無方向性電磁鋼板の磁気特性を測定した。この結果を表3に示す。表3中の下線は、その数値が所望の範囲にないことを示している。すなわち、磁束密度B50
Lの欄の下線は1.79T未満であることを示し、平均値B50
L+Cの欄の下線は1.75T未満であることを示し、鉄損W15/50
Lの欄の下線は4.5W/kg超であることを示し、平均値W15/50
L+Cの欄の下線は5.0W/kg超であることを示す。
【0050】
【表3】
【0051】
表3に示すように、試料No.11〜No.22及びNo.11’〜No.19’では、化学組成が本発明の範囲内にあり、板厚中心部におけるパラメータRが本発明の範囲内にあるため、良好な磁気特性が得られた。
試料No.1〜No.6では、板厚中心部におけるパラメータRが小さすぎたため、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。試料No.7では、S含有量が高すぎたため、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。試料No.8では、粗大析出物生成元素の総含有量が低すぎたため、粗大析出物生成元素の硫化物又は酸硫化物に含まれるSの総質量の、無方向性電磁鋼板に含まれるSの総質量に対する割合が40%未満であり、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。試料No.9では、粗大析出物生成元素の総含有量が高すぎたため、粗大析出物生成元素の硫化物又は酸硫化物に含まれるSの総質量の、無方向性電磁鋼板に含まれるSの総質量に対する割合は40%以上であったが、CaがCaO等の介在物を多数形成し、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。試料No.10では、パラメータQが大きすぎたため、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。
【0052】
(第2の試験)
第2の試験では、質量%で、C:0.0023%、Si:0.81%、Al:0.03%、Mn:0.20%、S:0.0003%及びPr:0.0007%を含有し、残部がFe及び不純物からなる溶鋼(表4−1試料31〜33に対応)と、C:0.0021%、Si:0.83%、Al:0.05%、Mn:0.19%、S:0.0007%及びPr:0.0013%を含有し、残部がFe及び不純物からなる溶鋼(表4−1試料31’〜33’に対応)とを鋳造してスラブを作製し、このスラブの熱間圧延を行って、厚さが2.1mmの鋼帯を得た。鋳造の際に鋳片の2表面間の温度差を調整して鋼帯の柱状晶の割合及び平均結晶粒径を変化させた。表4−2に、2表面間の温度差、柱状晶の割合及び平均結晶粒径を示す。次いで、78.2%の圧下率で冷間圧延を行って、厚さが0.50mmの鋼板を得た。その後、850℃で30秒間の連続仕上げ焼鈍を行って、無方向性電磁鋼板を得た。そして、各無方向性電磁鋼板の8結晶方位の強度を測定し、板厚中心部におけるパラメータRを算出した。この結果も表4−2に示す。表4−2中の下線は、その数値が本発明の範囲から外れていることを示す。
【0053】
【表4-1】
【0054】
【表4-2】
【0055】
そして、各無方向性電磁鋼板の磁気特性を測定した。この結果を表5に示す。表5中の下線は、その数値が所望の範囲にないことを示している。すなわち、磁束密度B50
Lの欄の下線は1.79T未満であることを示し、平均値B50
L+Cの欄の下線は1.75T未満であることを示し、鉄損W15/50
Lの欄の下線は4.5W/kg超であることを示し、平均値W15/50
L+Cの欄の下線は5.0W/kg超であることを示す。
【0056】
【表5】
【0057】
表5に示すように、柱状晶の割合が適切な鋼帯を用いた試料No.33及びNo.33’では、板厚中心部におけるパラメータRが本発明の範囲内にあるため、良好な磁気特性が得られた。
【0058】
柱状晶の割合が低すぎる鋼帯を用いた試料No.31、No.32、No.31’及びNo.32’では、板厚中心部におけるパラメータRが本発明の範囲から外れているため、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。
【0059】
(第3の試験)
第3の試験では、表6に示す化学組成を有する溶鋼を鋳造してスラブを作製し、このスラブの熱間圧延を行って、厚さが2.4mmの鋼帯を得た。残部はFe及び不純物であり、表6中の下線は、その数値が本発明の範囲から外れていることを示す。鋳造の際に、鋳片の2表面間の温度差と、700℃以上での平均冷却速度とを調整することにより、鋼帯の柱状晶の割合及び平均結晶粒径を変化させた。2表面間の温度差は48℃〜60℃とした。試料No.41、42、41’、及び42’では、700℃以上での平均冷却速度を20℃/分とし、その他の試料では700℃以上での平均冷却速度を10℃/分以下とした。表7に、柱状晶の割合及び平均結晶粒径を示す。次いで、79.2%の圧下率で冷間圧延を行って、厚さが0.50mmの鋼板を得た。その後、880℃で45秒間の連続仕上げ焼鈍を行って、無方向性電磁鋼板を得た。そして、各無方向性電磁鋼板の8結晶方位の強度を測定し、板厚中心部におけるパラメータRを算出した。この結果も表7に示す。表7中の下線は、その数値が本発明の範囲から外れていることを示す。
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】
そして、各無方向性電磁鋼板の磁気特性を測定した。この結果を表8に示す。表8中の下線は、その数値が所望の範囲にないことを示している。すなわち、鉄束密度B50
Lの欄の下線は1.79T未満であることを示し、平均値B50
L+Cの欄の下線は1.75T未満であることを示し、鉄損W15/50
Lの欄の下線は4.5W/kg超であることを示し、平均値W15/50
L+Cの欄の下線は5.0W/kg超であることを示す。
【0063】
【表8】
【0064】
表8に示すように、化学組成、柱状晶の割合及び平均結晶粒径が適切な鋼帯を用いた試料No.44及び試料No.44’では、板厚中心部におけるパラメータRが本発明の範囲内にあるため、良好な磁気特性が得られた。
【0065】
平均結晶粒径が低すぎる鋼帯を用いた試料No.41、No.42、No.41’及びNo.42’では、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。試料No.43及びNo.43’では、粗大析出物生成元素の総含有量が低すぎたため、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。試料No.45及びNo.45’では、粗大析出物生成元素の総含有量が高すぎたため、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。
【0066】
(第4の試験)
第4の試験では、表9に示す化学組成を有する溶鋼を鋳造してスラブを作製し、このスラブの熱間圧延を行って、表10に示す厚さの鋼帯を得た。表9中の空欄は、当該元素の含有量が検出限界未満であったことを示し、残部はFe及び不純物である。鋳造の際に鋳片の2表面間の温度差を調整して鋼帯の柱状晶の割合及び平均結晶粒径を変化させた。2表面間の温度差は51℃〜68℃とした。表10に、柱状晶の割合及び平均結晶粒径も示す。次いで、表10に示す圧下率で冷間圧延を行って、厚さが0.50mmの鋼板を得た。その後、830℃で40秒間の連続仕上げ焼鈍を行って、無方向性電磁鋼板を得た。そして、各無方向性電磁鋼板の8結晶方位の強度を測定し、板厚中心部におけるパラメータRを算出した。この結果も表10に示す。表10中の下線は、その数値が本発明の範囲から外れていることを示す。
【0067】
【表9】
【0068】
【表10】
【0069】
そして、各無方向性電磁鋼板の磁気特性を測定した。この結果を表11に示す。表11中の下線は、その数値が所望の範囲にないことを示している。すなわち、磁束密度B50
Lの欄の下線は1.79T未満であることを示し、平均値B50
L+Cの欄の下線は1.75T未満であることを示し、鉄損W15/50
Lの欄の下線は4.5W/kg超であることを示し、平均値W15/50
L+Cの欄の下線は5.0W/kg超であることを示す。
【0070】
【表11】
【0071】
表11に示すように、化学組成、柱状晶の割合及び平均結晶粒径が適切な鋼帯を用い、適切な圧下量で冷間圧延を行った試料No.51〜No.55及びNo.51’〜55’では、板厚中心部におけるパラメータRが本発明の範囲内にあるため、良好な磁気特性が得られた。適量のSn又はCuを含有する試料No.53、No.54、No.53’及びNo.54’において、特に優れた鉄損W15/50
L、平均値W15/50
L+C、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが得られた。適量のSn及びCuを含有する試料No.55及びNo.55’では、更に優れた鉄損W15/50
L、平均値W15/50
L+C、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが得られた。
冷間圧延の圧下率を高くしすぎた試料No.56及びNo.56’では、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。
【0072】
(第5の試験)
第5の試験では、質量%で、C:0.0014%、Si:0.34%、Al:0.48%、Mn:1.42%、S:0.0017%及びSr:0.0011%を含有し、残部がFe及び不純物からなる溶鋼(表12−1試料61〜64に対応)と、C:0.0015%、Si:0.35%、Al:0.47%、Mn:1.41%、S:0.0007%及びSr:0.0014%を含有し、残部がFe及び不純物からなる溶鋼(表12−1試料61’〜64’に対応)を鋳造してスラブを作製し、このスラブの熱間圧延を行って、厚さが2.3mmの鋼帯を得た。鋳造の際に鋳片の2表面間の温度差を59℃として鋼帯の柱状晶の割合を90%、平均結晶粒径を0.17mmとした。次いで、78.3%の圧下率で冷間圧延を行って、厚さが0.50mmの鋼板を得た。その後、920℃で20秒間の連続仕上げ焼鈍を行って、無方向性電磁鋼板を得た。仕上げ焼鈍では、通板張力及び950℃から700℃までの冷却速度を変化させた。表12−2に通板張力及び冷却速度を示す。そして、各無方向性電磁鋼板の結晶方位の強度を測定し、板厚中心部におけるパラメータRを算出した。この結果も表12−2に示す。
【0073】
【表12-1】
【0074】
【表12-2】
【0075】
そして、各無方向性電磁鋼板の磁気特性を測定した。この結果を表13に示す。
【0076】
【表13】
【0077】
表13に示すように、試料No.61〜No.64及びNo.61’〜No.64’では、化学組成が本発明の範囲内にあり、板厚中心部におけるパラメータRが本発明の範囲内にあるため、良好な磁気特性が得られた。通板張力を3MPa以下とした試料No.62、No.63、No.62’及びNo.63’において、弾性歪異方性が低く、特に優れた鉄損W15/50
L、平均値W15/50
L+C、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが得られた。920℃から700℃までの冷却速度を1℃/秒以下とした試料No.64及びNo.64’において、更に弾性歪異方性が低く、更に優れた鉄損W15/50
L、平均値W15/50
L+C、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが得られた。なお、弾性歪異方性の測定では、各辺の長さが55mmで、2辺が圧延方向に平行で、2辺が圧延方向に垂直な方向(板幅方向)に平行な平面形状が4角形の試料を各無方向性電磁鋼板から切り出し、弾性歪の影響で変形した後の各辺の長さを測定した。そして、圧延方向に垂直な方向の長さが圧延方向の長さよりどれだけ大きいかを求めた。
【0078】
(第6の試験)
第6の試験では、表14に示す化学組成を有する溶鋼を双ロール法により急速凝固させて鋼帯を得た。表14中の空欄は、当該元素の含有量が検出限界未満であったことを示し、残部はFe及び不純物である。表14中の下線は、その数値が本発明の範囲から外れていることを示す。次いで、鋼帯の冷間圧延及び仕上げ焼鈍を行って、厚さが0.50mmの種々の無方向性電磁鋼板を作製した。そして、各無方向性電磁鋼板の8結晶方位の強度を測定し、板厚中心部におけるパラメータRを算出した。この結果を表15に示す。表15中の下線は、その数値が本発明の範囲から外れていることを示す。
【0079】
【表14】
【0080】
【表15】
【0081】
そして、各無方向性電磁鋼板の磁気特性を測定した。この結果を表16に示す。表16中の下線は、その数値が所望の範囲にないことを示している。すなわち、磁束密度B50
Lの欄の下線は1.79T未満であることを示し、平均値B50
L+Cの欄の下線は1.75T未満であることを示し、鉄損W15/50
Lの欄の下線は4.5W/kg超であることを示し、平均値W10/15
L+Cの欄の下線は5.0W/kg超であることを示す。
【0082】
【表16】
【0083】
表16に示すように、試料No.111〜No.122及びNo.111’〜No.119’では、化学組成が本発明の範囲内にあり、板厚中心部におけるパラメータRが本発明の範囲内にあるため、良好な磁気特性が得られた。
試料No.101〜No.106では、板厚中心部におけるパラメータRが小さすぎたため、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。試料No.107では、S含有量が高すぎたため、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。試料No.108では、粗大析出物生成元素の総含有量が低すぎたため、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。試料No.109では、粗大析出物生成元素の総含有量が高すぎたため、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。試料No.110では、パラメータQが大きすぎたため、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。
【0084】
(第7の試験)
第7の試験では、質量%で、C:0.0023%、Si:0.81%、Al:0.03%、Mn:0.20%、S:0.0003%及びNd:0.0007%を含有し、残部がFe及び不純物からなる溶鋼(表17−1試料131〜133に対応)と、C:0.0021%、Si:0.83%、Al:0.05%、Mn:0.19%、S:0.0007%及びNd:0.0013%を含有し、残部がFe及び不純物からなる溶鋼(表17−1試料131’〜133’に対応)を双ロール法により急速凝固させて、厚さが2.1mmの鋼帯を得た。このとき、注入温度を調整して鋼帯の柱状晶の割合及び平均結晶粒径を変化させた。表17に、注入温度と凝固温度との差、柱状晶の割合及び平均結晶粒径を示す。次いで、78.2%の圧下率で冷間圧延を行って、厚さが0.50mmの鋼板を得た。その後、850℃で30秒間の連続仕上げ焼鈍を行って、無方向性電磁鋼板を得た。そして、各無方向性電磁鋼板の8結晶方位の強度を測定し、板厚中心部におけるパラメータRを算出した。この結果も表17に示す。表17中の下線は、その数値が本発明の範囲から外れていることを示す。
【0085】
【表17-1】
【0086】
【表17-2】
【0087】
そして、各無方向性電磁鋼板の磁気特性を測定した。この結果を表18に示す。表18中の下線は、その数値が所望の範囲にないことを示している。すなわち、磁束密度B50
Lの欄の下線は1.79T未満であることを示し、平均値B50
L+Cの欄の下線は1.75T未満であることを示し、鉄損W15/50
Lの欄の下線は4.5W/kg超であることを示し、平均値W15/50
L+Cの欄の下線は5.0W/kg超であることを示す。
【0088】
【表18】
【0089】
表18に示すように、柱状晶の割合が適切な鋼帯を用いた試料No.133及びNo.133’では、板厚中心部におけるパラメータRが本発明の範囲内にあるため、良好な磁気特性が得られた。
【0090】
柱状晶の割合が低すぎる鋼帯を用いた試料No.131、No.132、No.131’及びNo.132’では、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。
【0091】
(第8の試験)
第8の試験では、表19に示す化学組成を有する溶鋼を双ロール法により急速凝固させて、厚さが2.4mmの鋼帯を得た。残部はFe及び不純物であり、表19中の下線は、その数値が本発明の範囲から外れていることを示す。このとき、注入温度と、溶鋼の凝固完了から鋼帯の巻取りまでの平均冷却速度を調整して鋼帯の柱状晶の割合及び平均結晶粒径を変化させた。試料No.143〜No.145及びNo.143’〜145’の注入温度は凝固温度よりも29℃〜35℃高くし、溶鋼の凝固完了から鋼帯の巻取りまでの平均冷却速度は1,500〜2,000℃/分とした。試料No.141、No.142、No.141’及びNo.142’の注入温度は凝固温度より20〜24℃高くし、溶鋼の凝固完了から鋼帯の巻取りまでの平均冷却速度は3,000℃/分超とした。表20に、柱状晶の割合及び平均結晶粒径を示す。次いで、79.2%の圧下率で冷間圧延を行って、厚さが0.50mmの鋼板を得た。その後、880℃で45秒間の連続仕上げ焼鈍を行って、無方向性電磁鋼板を得た。そして、各無方向性電磁鋼板の8結晶方位の強度を測定し、板厚中心部におけるパラメータRを算出した。この結果も表20に示す。表20中の下線は、その数値が本発明の範囲から外れていることを示す。
【0092】
【表19】
【0093】
【表20】
【0094】
そして、各無方向性電磁鋼板の磁気特性を測定した。この結果を表21に示す。表21中の下線は、その数値が所望の範囲にないことを示している。すなわち、鉄束密度B50
Lの欄の下線は1.79T未満であることを示し、平均値B50
L+Cの欄の下線は1.75T未満であることを示し、鉄損W15/50
Lの欄の下線は4.5W/kg超であることを示し、平均値W15/50
L+Cの欄の下線は5.0W/kg超であることを示す。
【0095】
【表21】
【0096】
表21に示すように、化学組成、柱状晶の割合及び平均結晶粒径が適切な鋼帯を用いた試料No.144及びNo.144’では、板厚中心部におけるパラメータRが本発明の範囲内にあるため、良好な磁気特性が得られた。
【0097】
平均結晶粒径が低すぎる鋼帯を用いた試料No.141、No.142、No.141’及びNo.142’では、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。試料No.143及びNo.143’では、粗大析出物生成元素の総含有量が低すぎたため、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。試料No.145及びNo.145’では、粗大析出物生成元素の総含有量が高すぎたため、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。
【0098】
(第9の試験)
第9の試験では、表22に示す化学組成を有する溶鋼を双ロール法により急速凝固させて、表23に示す厚さの鋼帯を得た。表22中の空欄は、当該元素の含有量が検出限界未満であったことを示し、残部はFe及び不純物である。このとき、注入温度を調整して鋼帯の柱状晶の割合及び平均結晶粒径を変化させた。注入温度は凝固温度よりも28℃〜37℃高くした。表23に、柱状晶の割合及び平均結晶粒径も示す。次いで、表23に示す圧下率で冷間圧延を行って、厚さが0.20mmの鋼板を得た。その後、830℃で40秒間の連続仕上げ焼鈍を行って、無方向性電磁鋼板を得た。そして、各無方向性電磁鋼板の8結晶方位の強度を測定し、板厚中心部におけるパラメータRを算出した。この結果も表23に示す。表23中の下線は、その数値が本発明の範囲から外れていることを示す。
【0099】
【表22】
【0100】
【表23】
【0101】
そして、各無方向性電磁鋼板の磁気特性を測定した。この結果を表24に示す。表24中の下線は、その数値が所望の範囲にないことを示している。すなわち、磁束密度B50
Lの欄の下線は1.79T未満であることを示し、平均値B50
L+Cの欄の下線は1.75T未満であることを示し、鉄損W15/50
Lの欄の下線は4.5W/kg超であることを示し、平均値W15/50
L+Cの欄の下線は5.0W/kg超であることを示す。
【0102】
【表24】
【0103】
表24に示すように、化学組成、柱状晶の割合及び平均結晶粒径が適切な鋼帯を用い、適切な圧下量で冷間圧延を行った試料No.151〜No.154及びNo.151’〜154’では、板厚中心部におけるパラメータRが本発明の範囲内にあるため、良好な磁気特性が得られた。適量のSn又はCuを含有する試料No.153、No.154、No.153’及びNo.154’において、特に優れた鉄損W15/50
L、平均値W15/50
L+C、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが得られた。
冷間圧延の圧下率を高くしすぎた試料No.155及びNo.155’では、鉄損W15/50
L及び平均値W15/50
L+Cが大きく、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが低かった。
【0104】
(第10の試験)
第10の試験では、質量%で、C:0.0014%、Si:0.34%、Al:0.48%、Mn:1.42%、S:0.0017%及びSr:0.0011%を含有し、残部がFe及び不純物からなる溶鋼(表25−1試料161〜164に対応)と、C:0.0015%、Si:0.35%、Al:0.47%、Mn:1.41%、S:0.0007%及びSr:0.0013%を含有し、残部がFe及び不純物からなる溶鋼(表25−1試料161’〜164’に対応)を双ロール法により急速凝固させて、厚さが2.3mmの鋼帯を得た。このとき、注入温度を凝固温度よりも32℃高くして鋼帯の柱状晶の割合を90%、平均結晶粒径を0.17mmとした。次いで、78.3%の圧下率で冷間圧延を行って、厚さが0.50mmの鋼板を得た。その後、920℃で20秒間の連続仕上げ焼鈍を行って、無方向性電磁鋼板を得た。仕上げ焼鈍では、通板張力及び920℃から700℃までの冷却速度を変化させた。表25に通板張力及び冷却速度を示す。そして、各無方向性電磁鋼板の結晶方位の強度を測定し、板厚中心部におけるパラメータRを算出した。この結果も表25に示す。
【0105】
【表25-1】
【0106】
【表25-2】
【0107】
そして、各無方向性電磁鋼板の磁気特性を測定した。この結果を表26に示す。
【0108】
【表26】
【0109】
表26に示すように、試料No.161〜No.164及びNo.161’〜No.164’では、化学組成が本発明の範囲内にあり、板厚中心部におけるパラメータRが本発明の範囲内にあるため、良好な磁気特性が得られた。通板張力を3MPa以下とした試料No.162、No.163、No.162’及びNo.163’において、弾性歪異方性が低く、特に優れた鉄損W15/50
L、平均値W15/50
L+C、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが得られた。920℃から700℃までの冷却速度を1℃/秒以下とした試料No.164及びNo.164’において、更に弾性歪異方性が低く、更に優れた鉄損W15/50
L、平均値W15/50
L+C、磁束密度B50
L及び平均値B50
L+Cが得られた。なお、弾性歪異方性の測定では、各辺の長さが55mmで、2辺が圧延方向に平行で、2辺が圧延方向に垂直な方向(板幅方向)に平行な、平面形状が4角形の試料を各無方向性電磁鋼板から切り出し、弾性歪の影響で変形した後の各辺の長さを測定した。そして、圧延方向に垂直な方向の長さが圧延方向の長さよりどれだけ大きいかを求めた。