(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ここで、各実施形態に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は、例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。また、明細書及び図面において、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。更に、以下の各図では、鉛直方向にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内において、後述する反応流路150の複数の支流路150aの延設方向にX軸を取り、かつX軸に垂直な方向にY軸を取っている。
【0010】
(第1実施形態)
まず、本開示の第1実施形態に係る熱処理装置について説明する。本開示の熱処理装置は、第1の流体と第2の流体との熱交換を利用する。以下、本実施形態に係る熱処置装置は反応装置であるものとして説明するが、例えば熱交換器にも適用可能である。
【0011】
図1は、本実施形態に係る反応装置1の構成を示す概略側面図である。
図2は、反応装置1の構成を示す概略平面図である。反応装置1は、熱交換型であり、反応体としての反応原料を含んだ気体又は液体の反応流体を加熱又は冷却することで反応体の反応を進行させる。反応装置1は、本体部としての熱交換部101と、反応流体導入部120及び生成物排出部122と、熱媒体導入部130及び熱媒体排出部132とを備える。
【0012】
図3は、熱交換部101の構成を示す断面図である。特に、
図3(a)は、
図1におけるA−A断面図を示し、
図3(b)はB−B断面図を、
図3(c)はC−C断面図をそれぞれ示す。熱交換部101は、複数の第1伝熱体210と、複数の第2伝熱体220と、蓋体230とを含む。熱交換部101は、第1の流体としての反応流体又は生成物と、第2の流体としての熱媒体とが反対方向に流れる対向流型の構造を有する。第1伝熱体210及び第2伝熱体220は、それぞれ耐熱性を有する熱伝導性素材で形成される矩形の平板状部材である。
【0013】
第1伝熱体210は、熱媒体又は第2伝熱体220から供給される熱又は冷熱を受容して反応流体へ供与する部材である。第1伝熱体210は、反応流路150、具体的には第1の流路である支流路150a及び合流路150bを構成する複数の溝を有する。支流路150aは、反応流体を反応させ、生成物を生成する反応領域を含む。なお、反応領域は、具体的には、支流路150aにおける
図1に示した熱交換部101内の範囲、すなわち、支流路150aの延設方向において、後述する熱媒体排出部132と生成物排出部122との間の領域に相当する。一方、合流路150bは、以下で
図4を用いて詳説するが、複数の支流路150aが下流側で連設する領域である。また、支流路150aには、反応体の反応を促進させるための触媒体140が設置されている。
【0014】
第2伝熱体220は、熱媒体によって供給される熱又は冷熱を反応流体へ直接的に、かつ第1伝熱体210を介して間接的に供給する部材である。第2伝熱体220は、熱媒体流路160、具体的には第2の流路である支流路160a及び合流路を構成する複数の溝を有する。なお、本実施形態のように第1伝熱体210に複数の支流路150aが存在する場合には、第2伝熱体220においても、複数の支流路160aを反応流路150の支流路150aの設置位置に合わせて平行で等間隔に設置することが望ましい。また、熱媒体流路160には、熱媒体との接触面積を増加させて熱媒体と熱交換部101との間の伝熱を促進するための伝熱促進体141が設置されている。伝熱促進体141は、熱交換部101との接触面積を確保するために、例えば、
図3(b)等に示すような角張ったコルゲート板状とし得る。また、伝熱促進体141を構成する熱伝導性素材としては、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、鉄系メッキ鋼等の金属が挙げられる。
【0015】
第1伝熱体210、第2伝熱体220及び蓋体230が平板面を水平として鉛直方向に交互に積層されることにより、積層体としての熱交換部101が形成される。また、熱交換部101の組み立ての際には、各部材間をTIG(Tungsten Inert Gas)溶接や拡散接合等のような接合方法を利用して固着させることで、各部材間の接触不良に起因する伝熱性の低下等が抑止される。
【0016】
熱交換部101を構成する各要素の熱伝導性素材としては、鉄系合金やニッケル合金等の耐熱性金属が好適である。具体的には、ステンレス綱等の鉄系合金、インコネル625(登録商標)、インコネル617(登録商標)、Haynes230(登録商標)等のニッケル合金のような耐熱合金が挙げられる。これらの熱伝導性素材は、反応流路150での反応進行や熱媒体として使用し得る燃焼ガスに対する耐久性又は耐食性を有するので好ましいが、これらに限定されるものではない。また、鉄系メッキ鋼や、フッ素樹脂等の耐熱樹脂で被覆した金属、又は、カーボングラファイト等でもよい。
【0017】
なお、熱交換部101は、単にそれぞれ1つの第1伝熱体210と第2伝熱体220とを用いても構成可能であるが、第1伝熱体210及び第2伝熱体220の数が多い方が、熱交換性能が良い。そこで、本実施形態では、熱交換部101にそれぞれ複数の第1伝熱体210と第2伝熱体220とが用いられる。ただし、第2伝熱体220の数は、第1伝熱体210の数よりも1つ多い。また、熱交換部101における鉛直方向の両端である最上位及び最下位に第2伝熱体220を位置させることで、第1伝熱体210が第2伝熱体の間に挟持される。また、1つの第1伝熱体210に対する支流路150aの形成数は、特に限定されず、熱交換部101の設計条件及び伝熱効率等を考慮して適宜決定される。更に、反応流路150及び熱媒体流路160を構成する溝を第1伝熱体210及び第2伝熱体220の鉛直方向の両側に各々設け、積層状態において上下の溝の合体として反応流路150及び熱媒体流路160を構成してもよい。また、本実施形態では、熱交換部101自体が反応装置1の本体部であるが、熱交換部101からの放熱を抑制して熱損失を抑えるために、ハウジング又は断熱材で熱交換部101の周囲を覆う構成としてもよい。
【0018】
反応流体導入部120は、半球状の筐体であり、第1伝熱体210に形成されている複数の支流路150aが上流側で開放されている側の熱交換部101の側面を覆い、熱交換部101との間に空間を形成する。反応流体導入部120は、熱交換部101に対して着脱可能又は開閉可能に設置される。この着脱等により、例えば、作業者が反応流路150の複数の支流路150aに対する触媒体140の挿入や抜き出しを行うことができる。また、反応流体導入部120は、反応流体を熱交換部101の外部から内部へ導入する導入配管120aを有する。導入配管120aは、
図1等に示すように、熱交換部101の側面に対して略中心、具体的にはYZ平面上の中心に位置し、複数の支流路150aの開口方向と同一方向に連接されている。これにより、導入配管120aは、
図3(a)に示すように開放されている複数の支流路150aのそれぞれに、反応流体をバランス良く分配することができる。
【0019】
図4は、
図1におけるD−D断面図である。第1伝熱体210に形成されている支流路150aは、反応領域を過ぎた下流側で、支流路150aと直交しY軸方向に向かう合流路150bに連接される。合流路150bは、熱交換部101の外部に開放されて生成物を流出する流路開口部としての流出部150cを有する。
【0020】
生成物排出部122は、縦長の箱状の筐体であり、複数の流出部150cが存在する熱交換部101の側面の一部を鉛直方向に覆い、熱交換部101との間に空間を形成する空間形成部である。ただし、この筐体形状は一例であり、例えば、半円筒形やそれに類似した凹状に湾曲したものであってもよい。生成物排出部122は、熱交換部101の側面に一体的に固定されている。また、生成物排出部122は、その壁部に、生成物を装置外部へ排出するための開口を有する開口部122aを設置している。開口部122aが有する開口の中心軸の延伸方向は、流出部150cの開口方向とは異なる方向に延びている。なお、本実施形態では、開口部122aの本体が配管であるものとするが、配管部分を伴わない単なるフランジ部であってもよい。開口部122aは、装置外部の設備に連通し、生成物を導入する外部配管300に接続される。具体的には、外部配管300は、接続部としてのフランジ部300aを連設しており、一方、開口部122aは、フランジ部300aに対して接続及び開放を可能とする第1の接続部としてのフランジ部180bを連設している。開口部122aが配管部分を伴わない場合には、開口部122a自体がフランジ部となる。生成物排出部122と熱交換部101との間に形成される空間では、複数の流出部150cからそれぞれ流出した生成物が開口部122aに導入される前に合流する。すなわち、生成物排出部122の内部の空間は、いわゆる流体溜まりを構成する。
【0021】
更に、反応装置1は、生成物排出部122内に設置される整流部170と、整流部170を生成物排出部122に取り付ける取付部180とを有する。
【0022】
整流部170は、複数の支流路150aに流入する反応流体の流量配分をより均等化させるために、支流路150aの下流側にある生成物排出部122において反応流体の背圧を均等化させる。また、整流部170は、軸状であり、軸方向に延び、生成物を導入する側周部と、側周部から導入した生成物を開口部122aの開口に向かって軸方向に導出する端部とを含む。例えば、整流部170は、製作が容易で、かつ、良好な整流効果を発揮することができることから、側周部の全面に生成物を貫流可能とする複数の孔が形成されている抵抗体としての多孔部材とし得る。本実施形態では、一例として、整流部170の形状を、軸方向の断面形状が円形である円筒形としている。整流部170の材質は、耐熱性に優れるとともに、生成物が腐食を引き起こしやすい物質である場合には耐腐食性に優れた金属とすることが望ましい。
【0023】
また、整流部170は、生成物排出部122に取り付けられている状態では、開口部122aと同軸状に位置する。ここで、同軸とは、
図4中の一点鎖線で示す、開口部122aの開口180gの中心軸190と同じ軸という意味であるが、これは厳密な同一のみならず、下記の作用及び効果を奏することができる範囲内において若干のずれが生じるものであっても構わない。また、整流部170の外径は、開口180gの内径よりも小さい。したがって、整流部170は、開口180gを通じて互いの軸方向を合わせながら生成物排出部122内に進入可能である。
【0024】
更に、整流部170は、上記のとおり、開口180gの中心軸190の延伸方向が複数の流出部150cの開口方向とは異なる方向に延びている。そして、整流部170は、
図4に示すように、生成物排出部122に取り付けられている状態では、側周部の全体が空間に囲まれ、かつ、側周部の少なくとも一部は、複数の流出部150cに対向する。したがって、整流部170は、Z軸方向に並ぶ複数の流出部150cからそれぞれ流出された生成物について、全体として生成物のZ軸方向の流れを整流することができる。さらに、整流部170は、側周部に対して垂直となるXY平面に沿った放射方向の生成物の流れも整流することができる。これにより、各々の流出部150cから流出した生成物を、効率良く整流部170に向かわせることができる。
【0025】
整流部170は、より効率的には、複数の流出部150cの配列方向に対して軸方向が平行となり、かつ、すべての流出部150cに対向し得る長さを有することが望ましい。これにより、すべての生成物は、
図4中の矢印で示すように、複数の流出部150cから整流部170の側周部に向かって流出するので、直接的に側周部に到達する。ここで、直接的な到達とは、流出部150cから流出した生成物が生成物排出部122内で可能な限り循環せずに、言い換えれば流れを乱さずに整流部170に到達することをいい、複雑に循環してしまう場合に比べて背圧を効率良く均等化するのに好適である。なお、直接的な到達の確実性を向上させるために、整流部170は、一方の端部が開口部122a内にあり、他方の端部が、開口部122aと対向する側の生成物排出部122の内壁に接触する程度の長さを有することが望ましい。
【0026】
取付部180は、整流部170の一方の端部に連設される係止部180aと、開口部122a側のフランジ部180bに設けられている係合部180dとを含む。係止部180aは、整流部170側から外側に向かって突出している。具体的には、整流部170が生成物排出部122に取り付けられている状態で、整流部170の中心軸からの長さは、開口部122aの開口180gの半径よりも長い。係止部180aの具体的形状は、軸方向から見た形状が環状であってもよいし、複数の突起が放射状に突出するものであってもよい。また、係止部180aは、整流部170と同等の径を有する円筒部材180cを介して連設させてもよい。この場合、円筒部材180cは、整流部170とは別部材とし、整流部170の端部と溶接等で接続するものとしてもよいし、整流部170と一体とする、すなわち孔が形成されていない側周部としてもよい。
【0027】
上記流量配分をより効率良く均等化させるために、整流部170を介さずに開口部122aの開口180gに抜ける生成物をなくすか又は可能な限り減らすことが望ましい。また、上記のとおり、生成物は、生成物排出部122内で可能な限り循環しないことが望ましい。そこで、円筒部材180c若しくは整流部170の側周部と開口部122aの内壁との間の隙間は、可能な限り小さいものとする。また、係止部180aは、複数の突起が放射状に突出するものよりも環状のものとする方が、上記隙間を塞ぐことができる分、望ましい。
【0028】
係合部180dは、整流部170が開口部122aの開口を通して装置外部から生成物排出部122に挿入された状態で、係止部180aと係合可能とする溝又は切り欠き部である。
【0029】
一方、熱媒体導入部130は、半球状の筐体であり、第2伝熱体220に形成されている複数の支流路160aが上流側で開放されている側の熱交換部101の側面を覆い、熱交換部101との間に空間を形成する。熱媒体導入部130は、熱交換部101に対して着脱可能又は開閉可能に設置されてもよいが、伝熱促進体141を装置組み立て時に熱媒体流路160の複数の支流路160a内に設置していれば、本実施形態のように必ずしも着脱等を要するものではない。また、熱媒体導入部130は、熱媒体を熱交換部101の外部から内部へ導入する導入配管130aを有する。導入配管130aは、
図1等に示すように、熱交換部101の側面に対して略中心、具体的にはYZ平面上の中心に位置し、複数の支流路160aの延設方向と同一方向に連接されている。これにより、導入配管130aは、
図3(c)に示すように開放されている複数の支流路160aのそれぞれに、熱媒体をバランス良く分配することができる。
【0030】
熱媒体排出部132は、縦長の箱状の筐体であり、熱媒体を流出する複数の流出部が存在する熱交換部101の側面の一部を覆い、熱交換部101との間に空間を形成する空間形成部である。ただし、この筐体形状も、半円筒形等であってもよい。ここで、第2伝熱体220に形成されている支流路160aは、第1伝熱体210と同様に、反応領域に対応する部分を過ぎた下流側で、支流路160aと直交しY軸方向に向かう不図示の合流路に連接される。これらの合流路は、それぞれ不図示の流路開口部としての流出部から熱交換部101の外部に開放されている。熱媒体排出部132も、熱交換部101の側面に一体的に固定されており、その壁部に、熱媒体を装置外部へ排出するための開口を有する開口部132aを設置している。本実施形態では、開口部132aの本体が配管であるものとするが、配管部分を伴わない単なるフランジ部であってもよい。また、熱交換部101との間に形成される空間では、第2伝熱体220の複数の流出部からそれぞれ放出された熱媒体が、開口部132aに導入される前に合流する。すなわち、熱媒体排出部132の内部の空間は、いわゆる流体溜まりを構成する。
【0031】
熱交換部101は、液−液型熱交換器、気−気型熱交換器及び気−液型熱交換器のいずれとしても使用可能であり、反応装置1に供給する反応流体及び熱媒体は、気体及び液体のいずれであってもよい。また、反応装置1は、吸熱反応や発熱反応など様々な熱的反応による化学合成を可能とする。そのような熱的反応による合成として、例えば、式(1)で示すメタンの水蒸気改質反応、式(2)で示すメタンのドライリフォーミング反応のような吸熱反応、式(3)で示すシフト反応、式(4)で示すメタネーション反応、式(5)で示すフィッシャー−トロプシュ(Fischer tropsch)合成反応等の発熱反応による合成がある。なお、これらの反応における反応流体は、気体状である。
【0032】
CH
4 + H
2O → 3H
2 + CO ----式(1)
CH
4 + CO
2 → 2H
2 + 2CO ----式(2)
CO + H
2O → CO
2 + H
2 ----式(3)
CO + 3H
2 → CH
4 + H
2O ----式(4)
(2n+1)H
2 + nCO → C
nH
2n+2 + nH
2O ----式(5)
【0033】
また、上記反応以外に、アセチル化反応、付加反応、アルキル化反応、脱アルキル化反応、水素脱アルキル化反応、還元性アルキル化反応、アミン化反応、芳香族化反応、アリール化反応、自熱式改質反応、カルボニル化反応、脱カルボニル化反応、還元性カルボニル化反応、カルボキシル化反応、還元性カルボキシル化反応、還元性カップリング反応、縮合反応、分解(クラッキング)反応、水素分解反応、環化反応、シクロオリゴマー化(cyclooligomerization)反応、脱ハロゲン化反応、二量体化反応、エポキシ化反応、エステル化反応、交換反応、ハロゲン化反応、水素化反応、水素ハロゲン化反応、同族体形成(homologation)反応、水和反応、脱水反応、水素化反応、脱水素化反応、水素カルボキシル化反応、水素ホルミル化反応、水添分解反応、水素金属化反応、ヒドロシリル化反応、加水分解反応、水素化処理反応、異性体化反応、メチル化反応、脱メチル化反応、メタセシス(置換)反応、ニトロ化反応、酸化反応、部分酸化反応、重合反応、還元反応、逆水性ガスシフト(reverse water gas shift)反応、スルホン化反応、短鎖重合反応、エステル交換反応、三量体化反応等の実施に、反応装置1を適用してもよい。
【0034】
反応装置1では、上記のような化学反応に関与する原料などの物質を反応体とし、その反応体を有する流体を反応流体とする。反応流体は、支流路150aを流通する間に、熱媒体流路160を流通する熱媒体の熱又は冷熱を受けて加熱又は冷却されて反応が進行して、反応体が目的生成物に変換される。なお、反応流体は、反応に関与しないキャリアを含有してもよい。キャリアは、実施する化学反応を考慮して、反応の進行に影響を与えない物質から適宜選択することができる。特に気体状の反応流体に使用可能なキャリアとしては、不活性ガスや低反応性の気体状物質等の気体キャリアが挙げられる。一方、熱媒体としては、反応装置1の構成素材を腐食させない流体物質が好適であり、例えば、水、油等の液状物質や、燃焼ガス等の気体状物質が使用できる。熱媒体として気体状物質を使用する構成は、液体媒体を使用する場合と比較して、取り扱いが容易である。
【0035】
触媒体140に含まれる触媒は、上述したような化学反応の進行促進に有効な活性金属を主成分として有し、反応装置1で遂行する合成反応に基づいて、反応促進に適したものが適宜選択される。触媒成分である活性金属としては、例えば、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Fe(鉄)、Pt(白金)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)等が挙げられ、1種、又は、反応促進に有効である限り、複数種を組み合わせて使用してもよい。触媒体140は、例えば、触媒を構造材に担持することによって調製される。構造材は、耐熱性の金属から、成形加工が可能で、触媒の担持が可能なものが選択される。構造体、すなわち触媒体140は、反応流体との接触面積を増加させるために、断面が波状に丸く湾曲したコルゲート板状やギザギザに屈曲した形状などがあり得る。耐熱性の金属としては、Fe(鉄)、Cr(クロム)、Al(アルミニウム)、Y(イットリウム)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Mg(マグネシウム)、Ti(チタン)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)等の金属の1種又は複数種を主成分とする耐熱合金がある。例えば、Fecralloy(登録商標)等の耐熱合金製の薄板状構造材を成形加工して触媒体140を構成してもよい。触媒の担持方法としては、表面修飾等によって構造材上に直接担持する方法や、担体を用いて間接的に担持する方法などがあり、実用的には、担体を用いた触媒の担持が容易である。担体は、反応装置1で実施する反応を考慮して、反応の進行を阻害せず耐久性を有する材料であって、使用する触媒を良好に担持し得るものが適宜選択される。例えば、Al
2O
3(アルミナ)、TiO
2(チタニア)、ZrO
2(ジルコニア)、CeO
2(セリア)、SiO
2(シリカ)等の金属酸化物が挙げられ、1種又は複数種を選択して担体として使用することができる。担体を用いた担持方法としては、例えば、成形した構造材の表面に触媒と担体との混合物層を形成する方式や、担体層を形成した後に表面修飾等によって触媒を担持させる方式などが挙げられる。
【0036】
次に、整流部170の取り付け及び取り外しについて説明する。開口部122a側のフランジ部180bと、外部配管300側のフランジ部300aとは、通常、Oリング180eを介してボルト180fにて締結されている。取り付け作業として、作業者は、ボルト180fを外して締結を解除した後、外部配管300をずらして開口部122aの開口180gを開放する。次に、作業者は、整流部170を開口180gから生成物排出部122内に進入させる。このとき、整流部170は、係止部180aが係合部180dに係合することで一定の位置で停止する。そして、作業者は、外部配管300を戻してボルト180fを締結すれば、係止部180aが開口部122aの軸方向に2つのフランジ部180b,300aで挟み込まれて固定され、整流部170の取り付け作業が完了する。一方、作業者は、上記と逆の手順で進めれば、生成物排出部122から整流部170を容易に取り外すことができる。反応装置1では、複数の支流路150aに流入する反応流体の流量配分が可能な限り均等であることが望ましいが、流量配分にばらつきが生じ、複数の支流路150aのそれぞれの流出部150cから流速分布の不均等な流れが流出する場合がある。これに対して、整流部170を生成物排出部122に設置しておけば、当初、生成物排出部122内に流速分布の不均等な流れが流入していても、整流部170に衝突している間に徐々に背圧が均等化される。これにより、複数の支流路150aに流入する反応流体の流量配分も徐々に均等化していく。特に本実施形態では、整流部170を上記のような構成とし、かつ、開口部122aと同軸状に設置する。これにより、生成物排出部122内での生成物の循環を可能な限り抑えることができ、背圧を均等化する、すなわち反応流体の流量配分を効率良く均等化することができる。
【0037】
一方、反応流体の流量配分のばらつきの程度によっては、設置されている整流部170の整流性能が十分ではなく、所望の流量配分に調整できない場合もあり得る。これに対して、本実施形態によれば、整流部170の取り外しが容易であるため、作業者は、整流性能が適切な整流部170に適宜交換することができる。例えば、整流部170が上記のように多孔部材であれば、孔径が異なる整流部170に交換すればよい。更に、当初、整流部170が上記流量配分を適切に調整することができていても、経時劣化や反応流体の腐食性等により、整流性能が次第に低下する場合もあり得る。このような場合も、上記と同様に新たな整流部170に適宜交換することができる。
【0038】
以上のように、本実施形態によれば、装置構造の複雑化を抑えつつ、整流部の取り外しを容易とする点で有利な熱処理装置を提供することができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態に係る熱処理装置について説明する。第1実施形態に係る反応装置1は、整流部170を、開口部122aの開口180gを通じて生成物排出部122に取り外し可能に設置する。ここで、整流部170を挿入し固定する部分の開口部を第1の開口部とするならば、第1実施形態では、生成物を装置外部へ排出する開口部122aが第1の開口部に相当する。これに対して、本実施形態に係る反応装置の特徴は、開口部122aではなく、生成物を装置外部へ排出しない別の開口部を第1の開口部とする点にある。
【0040】
図5は、本実施形態における整流部171及びその取付部181を示す図であり、
図4に示した第1実施形態に係るD−D断面図に対応して図示している。整流部171の構成は、第1実施形態における整流部170と同様である。一方、取付部181は、第1実施形態と同様に、整流部171の一方の端部に連設する係止部181aを含む。また、生成物排出部122は、該生成物排出部122の内部と外部とで貫通する開口181gを有する開口部122bを有する。したがって、生成物排出部122は、第1実施形態で説明した装置外部と連通する開口部122aを第2の開口部とすれば、第1の開口部としての開口部122bと、第2の開口部としての開口部122aとの少なくとも2つの開口部を有することになる。また、開口部122bは、開口部122aに同軸状に対向する。すなわち、第1の開口181gと第2の開口180gとの中心軸は、ほぼ一致する。この場合も、整流部171の外径は、開口部122bの開口181gの径よりも小さい。
【0041】
開口部122bには、開口181gを遮蔽可能とする遮蔽板301が接続される。すなわち、開口部122bは、遮蔽板301に対して接続及び開放を可能とする第2の接続部としてのフランジ部181bを連設している。なお、本実施形態でも、開口部122bの本体が短い配管であるものとするが、配管部分を伴わない単なるフランジ部であってもよい。また、本実施形態における取付部181も、フランジ部181bに形成されている係合部181dを含む。係合部181dは、整流部171が開口部122bの開口181gを通して装置外部から生成物排出部122に挿入された状態で、係止部181aと係合可能とする溝又は切り欠き部である。また、円筒部材181c、Oリング181e及びボルト181fについても、第1実施形態における対応箇所と同様である。このような構成により、整流部171は、第1実施形態と同様、フランジ部181bと遮蔽板301とに挟み込まれて固定される。
【0042】
なお、上記の構成を採用する場合には、整流部171は、
図5に示すように、他方の端部、すなわち生成物を流出させる側の端部が開口部122aの開口180g内に進入することが可能な軸方向長さを有することが望ましい。これにより、整流部170を通過しない生成物を可能な限り減らすことができる。結果として、第1実施形態と同様に、整流部170への生成物の直接的な到達の確実性を向上させることができる。
【0043】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏し、特に開口部122aと外部配管300との接続を容易に解除できない場合などに好適である。生成物排出部122に開口部122bを設ける必要はあるが、生成物排出部122を熱交換部101から開放可能とする機構を設けるよりは、簡易な構成となる。また、整流部の取り外し作業は、作業者が外部配管300を移動させることなく、代わって遮蔽板301を取り外すのみであるので、第1実施形態よりも容易である。
【0044】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、整流部170が円筒形であるものとした。これは、整流部170の断面形状すなわち生成物を流出させる端部の外形を開口180gの形状に合わせることが、整流部170を通過しない生成物を可能な限り減らしつつ、生成物排出部122内での生成物の循環を可能な限り減らす観点から望ましいからである。しかしながら、本開示は、整流部170の形状を円筒に限るものではなく、背圧を均等化する上で許容できる範囲であれば、端部の外形が多角形、すなわち断面形状が多角形である筒状の整流部を採用してもよい。その場合、整流部の端部の最長対角線は、開口部122aの内径よりも小さくする必要がある。
【0045】
また、上記各実施形態では、整流部170が多孔部材であるものとしたが、本開示はこれに限定されず、例えば、同様の素材の細線を編んでフィルター状に製作された部材等であってもよい。
【0046】
また、上記各実施形態では、熱処理装置として反応装置1を例示した。これらの反応装置1では、下流側で背圧を好適に均等化させることで、結果的に上流側での反応流体の流量配分を効率良く均等化させるために、反応流体又は生成物の流れの下流側に位置する生成物排出部122内に軸状の整流部170を設置するものとしている。しかしながら、本開示は、これに限定されるものではない。
【0047】
具体的には、例えば、同様に熱処理装置が反応装置である場合を考えると、上流側で直接的に整流作用を生じさせることで、反応流体の流量配分を効率良く均等化させることが望まれる場合もあり得る。特に、この場合の反応流体の上流側が、上記各実施形態とは逆に開口部122a側となる構成もあり得る。一方、例えば、本開示の熱処理装置が熱交換器である場合を考えると、第1の流体と第2の流体とが熱交換部に導入する部分及び熱交換器から導出する部分が、共に上記各実施形態でいう生成物排出部122のような構成となる場合もあり得る。このように、本開示の熱処理装置では、整流部が取付部を用いて配置される空間形成部が各流体の流れの上流側に位置するのか下流側に位置するのかは限定されない。換言すれば、上記例示した反応装置1のような構成において、各流体の導入方向及び導出方向は限定されない。
【0048】
このように、上記の他の実施形態も考慮すれば、本開示における第1の流体と第2の流体とは、適用される熱処理装置により、それぞれ異なる物質となる場合も、同一の物質となる場合もあり得る。特に、上記の第1及び第2の各実施形態においても、整流部170に求める作用によっては、第1の流体としている方の流体を熱媒体とし、第2の流体としている方の流体を反応流体又は生成物として捉えることも可能である。また、本開示が適用される熱処理装置が熱交換器であるならば、第1及び第2の流体ともに熱媒体となる場合もあり得る。
【0049】
さらに、上記各実施形態では、熱交換部101は、平板状の2種の伝熱体を積層した積層体としたが、熱交換部がこのような積層体である必要はなく、円管等で直線的な反応流路を有する熱交換部を含む反応装置に適用することができる。
【0050】
このように、本開示は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本開示の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る事項によってのみ定められる。