(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
[電気コネクタ装置の全体構造について]
図面に示された本発明の一実施形態にかかる基板接続用電気コネクタ装置は、例えば、携帯電話、スマートフォン、或いはタブレット型コンピュータ等の各種電子機器内に配置された配線基板同士を電気的に接続するように用いられるものであって、
図1〜
図9に示された第1の電気コネクタとしてのリセプタクルコネクタ10と、
図10〜
図18に示された第2の電気コネクタとしてのプラグコネクタ20と、から構成されている。そして、リセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10が、例えば
図30に示されている第1の配線基板P1に実装されるとともに、プラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20が、例えば
図31に示されている第2の配線基板P2に実装され、そのように実装状態になされた両電気コネクタ10,20同士が、互いに対向するように配置されてから嵌合操作されることで、上述した第1及び第2の配線基板P1,P2同士の電気的な接続が行われる。
【0021】
以下の説明においては、リセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10と、プラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20との嵌合方向を「上下方向」とし、その上下方向における下方位置に配置されたリセプタクルコネクタ10の上方位置にプラグコネクタ20が配置され、そのような上下方向における対向状態から両電気コネクタ10,20同士が、
図27〜
図29のように接触された状態で位置合わせの操作が行われ、嵌合位置に位置合わせされたらプラグコネクタ20が下方向に押し込まれることで、
図19〜
図26に示されているように両電気コネクタ10,20同士が嵌合状態になされる。
【0022】
また、上述した嵌合状態からプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20が上方に向かって適宜の力で引き上げられることによって、下方側のリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10からプラグコネクタ20が上方に抜去される。
【0023】
このようにリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10にプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20を嵌合・抜去する操作は、作業者の手で行われることに限られることはなく、所定の治具や機械によって自動的に行うようにしても良い。
【0024】
なお、これらの両電気コネクタ10,20同士の嵌合・抜去を行うにあたっては、下方に配置されたリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10に対して、上方側に配置されたプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20が上下に反転された状態で対向配置されることとなるが、そのプラグコネクタ20単体の説明を行うにあたっては、反転前の状態、すなわち下方に配置された第2の配線基板P2に対して、プラグコネクタ20を上方側から実装した状態で説明する。
【0025】
このような基板接続用電気コネクタ装置を構成しているリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10及びプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20は、それぞれ細長状に延在する絶縁ハウジング11及び21を有している。それらの絶縁ハウジング11及び21は、プラスチック等の樹脂材を用いて例えばモールド成形されたものであるが、当該絶縁ハウジング11及び21の長手方向に沿って多数の信号コンタクト部材13及び23が、所定のピッチで多極状をなすように配列されている。これらの信号コンタクト部材13及び23の配列方向である絶縁ハウジング11及び21の長手方向を、以下において「コネクタ長手方向」と呼び、その「コネクタ長手方向」及び「上下方向」に直交する短手方向を「コネクタ幅方向」と呼ぶこととする。
【0026】
これらの各絶縁ハウジング11及び21は、特に
図9及び
図18に示されているように、当該絶縁ハウジング11及び21の長手方向(コネクタ長手方向)における両端部分に基端部11a,11a及び21a,21aを有している。そして、基端部11a,11aのコネクタ幅方向における中央部分同士をコネクタ長手方向に一体的に掛け渡すようにして中央凸部11bが設けられているとともに、基端部21a,21aのコネクタ幅方向における中央部分同士をコネクタ長手方向に一体的に掛け渡すようにして中央凹部21bが設けられている。このように絶縁ハウジング11及び21の基端部11a,11a及び21a,21aは、中央凸部11b及び中央凹部21bを介してコネクタ長手方向に対向する配置関係になされているが、それら基端部11a,11a同士、及び基端部21a,21a同士を掛け渡すようにして導電性シェル12,22が取り付けられている。
【0027】
導電性シェル12,22は、後述する信号コンタクト部材13,14に対するシールド壁部を構成するものであって、薄板状金属部材等からなる導電性部材の折り曲げ構造体から形成されており、上述した絶縁ハウジング11及び21の外周部分を取り囲むようにして、コネクタ長手方向及びコネクタ幅方向の両側から挟むようにして装着されている。このとき、リセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10側に装着された導電性シェル(シールド壁部)12が、絶縁ハウジング11に対して上方からの圧入により固定されている一方、プラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20側に装着された導電性シェル(シールド壁部)22は、絶縁ハウジング21に対してインサート成形により固定されている。
【0028】
また、上述した絶縁ハウジング11及び21の中央凸部11b及び中央凹部21bには、凹溝状をなすコンタクト取付け溝11c及び21cが、コネクタ長手方向に沿って一定の間隔で並列するように凹設されており、それらのコンタクト取付け溝11c及び21cに対して、信号コンタクト部材13及び23、並びに電源コンタクト部材14及び24が、それぞれ圧入及びインサート成形により取り付けられている。このうちの信号コンタクト部材13及び23は、コネクタ長手方向に沿って多極状をなすようにして一定の間隔で配列されているが、それらの信号コンタクト部材13及び23の多極状の配列方向(コネクタ長手方向)における両側外方位置に、電源コンタクト部材14及び24が配置されている。
【0029】
リセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10、及びプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20の全体構成は概略以上の通りであるが、以下において各部の詳細な構成及び配置関係について説明する。
【0030】
まず、リセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10の絶縁ハウジング11に、圧入により取り付けられた信号コンタクト部材13、及びプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20の絶縁ハウジング21にインサート成形により取り付けられた信号コンタクト部材23は、各々の電気コネクタ10,20ごとに、コネクタ長手方向に沿って略平行に延在する2列の電極列をそれぞれ形成する配置関係になされている。これら2列の電極列を構成している信号コンタクト部材13,13同士、及び信号コンタクト部材23,23同士は、コネクタ幅方向において対称的に向かい合う配置関係になされている。以下の説明においては、これらの対称的な配置関係になされた信号コンタクト部材13,13同士、及び信号コンタクト部材23,23同士を区別することなく同一の説明としている。
【0031】
[リセプタクルコネクタのコンタクト部材について]
より具体的には、まずリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10側の信号コンタクト部材13が取り付けられている絶縁ハウジング11の中央凸部11bには、特に
図7に示されているように、上述した2列の電極列同士の間部分、すなわちコネクタ幅方向の中央部分に、底面板から上方に突出する仕切り板11dが、コネクタ長手方向に沿って帯板状をなして延在するように設けられている。この仕切り板11dは、上述したコンタクト取付け溝11cの溝底部分を構成するものであるが、その仕切り板11dと、当該仕切り板11dのコネクタ幅方向の両側に立設された長手側壁部11e,11eとの間の空間部分に、両側の電極列を構成している一対の信号コンタクト部材13,13が、コネクタ幅方向に対称的な形状をなすように向かい合った位置関係で配置されている。
【0032】
これらの各信号コンタクト部材13は、コネクタ幅方向におけるコネクタ中心側から外方側に向かって湾曲状をなして延在するように折り曲げられた金属製の帯板状部材から形成されており、上述したコンタクト取付け溝11cに対して、下方からの圧入により取り付けられている。この信号コンタクト部材13は、略U字形状に延在するように折り曲げ形成された嵌合凹部13aが、上述した仕切り板11d寄りのコネクタ中心側部分に凹形状をなして窪むように形成されており、その嵌合凹部13aの内方空間に、相手嵌合体であるプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20の信号コンタクト部材23の一部が、上方側から挿入されて受け入れられる構成になされている。
【0033】
すなわち、上述したように略U字形状をなして延在する信号コンタクト部材13の嵌合凹部13aは、コネクタ幅方向に延在する底辺部13bの両側から上方に向かって立ち上がる外側立上辺部13c及び内側立上辺部13dを有している。これら内外の両側立上辺部13c,13dのうち、コネクタ幅方向における外方側に配置された外側立上辺部13cは、上述した長手側壁部11aに凹設されたコンタクト取付け溝11cに対して下方側から圧入されることにより固定状態になされている。そして、その固定状態になされた外側立上辺部13cからコネクタ中心側(内方側)に向かって上述した底辺部13bが片持ち状に延出しているとともに、その底辺部13bを介して内側立上辺部13dが、同じく片持ち状に延出している。この内側立上辺部13dは、コネクタ中心側の仕切り板11dに近接するように配置されており、上述したように固定状態になされた外側立上辺部13cに対して、コネクタ幅方向に弾性変位可能になされている。
【0034】
コネクタ中心側に配置された内側立上辺部13dの上端部分は、上述した嵌合凹部13aの内方空間に向かって湾曲形状をなして延出するように折り曲げ形成されており、その湾曲状の折り曲げ部分のうち、嵌合凹部13aの内方空間に張り出した部位に凸状接点部13eが形成されている。この凸状接点部13eは、前述したように嵌合凹部13aの内方空間にプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20の信号コンタクト部材23の一部が挿入された際に、当該信号コンタクト部材23の一部に接触して電気的に接続される関係になされている。この点については後段において詳細に説明する。
【0035】
一方、コネクタ外方側に配置された外側立上辺部13cは、上述したように長手側壁部11aの内部に挿入されて埋設された絶縁状態になされている。すなわち、
図25に示すように相手嵌合体であるプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20の信号コンタクト部材23に対して電気的に接触することはなく、嵌合凹部13aの内方空間に挿入された信号コンタクト部材23の一部に対して、長手側壁部11aの内側表面が圧接されるようになっている。
【0036】
このように、リセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10の信号コンタクト部材13は、各々の信号コンタクト部材13の嵌合凹部13aごとに一箇所ずつの凸状接点部13eが設けられた構成になされており、その信号コンタクト部材13ごとに一箇所ずつ設けられた凸状接点部13eを介して、プラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20の信号コンタクト部材23に対する信号伝送が行われる構成になされている。
【0037】
また、このような信号コンタクト部材13における外側立上辺部13cは、上述した底辺部13bからリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10の上面位置まで立ち上げられてコネクタ外方側に向かって張り出した後に下方に向かって反転するように逆U字形状に折り曲げられており、当該リセプタクルコネクタ10の下面位置において、再びコネクタ外方側に向かって略直角に折れ曲がって基板接続脚部(コンタクト接続部)13fになされている。この基板接続脚部13fは、コネクタ幅方向の外方側に向かって略水平に延出しており、第1の配線基板P1に対してリセプタクルコネクタ10が実装される際に、特に
図30に示されているように、第1の配線基板P1上の信号伝送用導電路(信号パッド)P1aに対して半田接合されるようになっている。この基板接続脚部13fの半田接合は、長尺状の半田材を用いて全ての基板接続脚部13fに対して一括的に行われる。
【0038】
また、上述した複数体の信号コンタクト部材13,13,・・・の多極状の配列方向における両側外方位置には、一対の電源コンタクト部材14,14が、中央凸部11bのコンタクト取付け溝11cに取り付けられている。これらの各電源コンタクト部材14,14は、接点部の構造を除いて上述した信号コンタクト部材13と基本的に同様な構成を備えており、仕切り板11dを挟んだ両側にコネクタ幅方向に対称的な形状をなすように向かい合った配置関係になされている。
【0039】
これらの各電源コンタクト部材14も、コネクタ幅方向におけるコネクタ中心側から外方側に向かって湾曲状をなして延在するように折り曲げられた金属製の帯板状部材から形成されているが、特に
図9に示されているように、当該電源コンタクト部材(又はグランドコンタクト部材)14が備えている板幅寸法W1は、上述した信号コンタクト部材13の板幅寸法W2の数倍、又はそれ以上の大きさとなるように設定されている(W1>W2)。
【0040】
そして、このような電源コンタクト部材14においても、
図6に示すように上述した仕切り板11d寄りのコネクタ中心側部分に、凹形状をなして窪む嵌合凹部14aが略U字形状に延在するように折り曲げ形成されており、当該嵌合凹部14aの内方空間に、相手嵌合体であるプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20の電源コンタクト部材24の一部が上方側から挿入されるようにして受け入れられる構成になされている。
【0041】
すなわち、上述したように略U字形状をなして延在する電源コンタクト部材14の嵌合凹部14aは、コネクタ幅方向に延在する底辺部14bの両側から上方に向かって立ち上がる外側立上辺部14c及び内側立上辺部14dを有している。そして、これら内外の両側立上辺部14c,14dのうち、コネクタ幅方向における外方側に配置された外側立上辺部14cが、上述した長手側壁部11aに凹設されたコンタクト取付け溝11cに対して下方側から圧入されることにより固定状態になされている。また、このような固定状態になされた外側立上辺部14cからは、上述した底辺部14bを介して内側立上辺部14dが片持ち状に延出している。この内側立上辺部14dは、コネクタ中心側の仕切り板11dに近接配置されており、上述したように固定状態になされた外側立上辺部14cに対して、コネクタ幅方向に弾性変位可能になされている。
【0042】
このコネクタ中心側に配置された内側立上辺部14dの上端部分は、上述した嵌合凹部14aの内方空間に向かって湾曲形状をなして延出するように折り曲げ形成されており、その湾曲状の折り曲げ部分のうち、嵌合凹部14aの内方空間に張り出した部位に、凸状接点部14eが形成されている。この凸状接点部14eは、前述したように嵌合凹部14aの内方空間に、相手嵌合体であるプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20の電源コンタクト部材24の一部が挿入された際に、当該電源コンタクト部材24の一部に接触して電気的に接続される関係になされている。この点については後段において詳細に説明する。
【0043】
一方、コネクタ外方側に配置された外側立上辺部14cが上下方向に延在している部分の途中位置には凹状接点部14fが形成されている。この凹状接点部14fは、前述したように嵌合凹部14aの内方空間に、相手嵌合体であるプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20の電源コンタクト部材24の一部が挿入された際に、当該電源コンタクト部材24の一部の一部に接触して電気的に接続されるようになっている。この点についても後段において詳細に説明する。
【0044】
このように、リセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10の電源コンタクト部材14は、各々の電源コンタクト部材14の嵌合凹部14aごとに、凸状接点部14e及び凹状接点部14fからなる二箇所の接点部を備えた構成になされており、相手嵌合体であるプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20の電源コンタクト部材24に対して、二箇所の接点部14e,14fを介して電源電流の供給が行われる構成になされている。
【0045】
また、上述した電源コンタクト部材14の外側立上辺部14cは、リセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10の上面位置まで立ち上げられた後に、コネクタ外方側に向かって張り出しながら下方に向かって反転するように折り曲げられており、リセプタクルコネクタ10の下面位置において、コネクタ外方側に向かって略直角に折れ曲がって基板接続脚部(コンタクト接続部)14gになされている。この基板接続脚部14gは、コネクタ幅方向の外方側に向かって略水平に延出しており、リセプタクルコネクタ10の実装時に、第1の配線基板P1上の電源供給用導電路(電源パッド)P1bに対して半田接合されるようになっている。この基板接続脚部14gの半田接合は、長尺状の半田材を用いて全ての基板接続脚部14gに対して一括的に行われる。
【0046】
[プラグコネクタのコンタクト部材について]
次に、プラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20における絶縁ハウジング21の中央凹部21bは、コネクタ長手方向(多極状の配列方向)に沿って略平行に延在する一対の長手側壁部21d,21dを有しており、それらの各長手側壁部21dのコネクタ長手方向に沿って一定の間隔で配列された凹溝状のコンタクト取付け溝21cに対して、信号コンタクト部材23及び電源コンタクト部材24が、2列の電極列を構成するようにインサート成形により取り付けられている。これら2列の電極列を構成している信号コンタクト部材23及び電源コンタクト部材24は、コネクタ幅方向において対称的に向かい合う配置関係になされている。
【0047】
より具体的には、信号コンタクト部材23及び電源コンタクト部材24が取り付けられている絶縁ハウジング21の中央凹部21bにおいては、特に
図15及び
図16に示されているように、上述した2列の電極列同士の間部分、すなわち両側の長手側壁部21d,21d同士の間部分が、コネクタ長手方向に延在する凹状空間になされているとともに、各長手側壁部21dの外周側に巻き付くようにして各信号コンタクト部材23及び電源コンタクト部材24が取り付けられている。両側の電極列を構成している一対の信号コンタクト部材23,23同士、及び一対の電源コンタクト部材24,24同士は、コネクタ幅方向に対称的な形状をなすように向かい合った位置関係で配置されている。
【0048】
これらの各信号コンタクト部材23及び電源コンタクト部材24は、上述した長手側壁部21dの上端縁部を覆うように逆Uの字形状の湾曲形状をなして延在するように折り曲げられた金属製の帯板状部材から形成されているが、特に
図18に示されているように、電源コンタクト部材24が備えている板幅寸法W3は、信号コンタクト部材23の板幅寸法W4の数倍、又はそれ以上の大きさとなるように設定されている(W3>W4)。
【0049】
このように本実施形態においては、電源コンタクト部材14,24を構成している帯板状部材の幅寸法W1,W3が、信号コンタクト部材13,23を構成している帯板状部材の幅寸法W2,W4より大きく形成されていることから(W1,W3>W2,W4)、信号コンタクト部材13,23に比して電源コンタクト部材14,24による嵌合保持力が高められるようになっている。
【0050】
特に、本実施形態においては、信号コンタクト部材13,23に比して大きな嵌合保持力を有する電源コンタクト部材14,24が、電気コネクタ装置の平面視において四隅に配置された構成になされていることから、それらの電源コンタクト部材14,24は、両電気コネクタ10,20の嵌合に関する簡易ロック機構としての機能を備えている。
【0051】
そして、それらの各信号コンタクト部材23及び電源コンタクト部材24において、逆Uの字形状をなして上方に突出する部位が、嵌合凸部23a及び嵌合凸部24aになされている。それらの嵌合凸部23a及び嵌合凸部24aは、相手嵌合体であるリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10の信号コンタクト部材13及び電源コンタクト部材14に設けられた嵌合凹部13a及び嵌合凹部14aに対して上方側から挿入され、信号コンタクト部材13及び電源コンタクト部材14が弾性変位することで受け入れられる構成になされている。
【0052】
ここで、上述した信号コンタクト部材23及び電源コンタクト部材24における逆Uの字形状をなす嵌合凸部23a及び嵌合凸部24aは、上下方向に略平行に延在するコネクタ中心側の内壁面と、コネクタ外方側の外壁面とを有しているが、それらコネクタ内外の両壁面のうち、嵌合凸部23aの各内壁面には、凹状接点部23bが形成されている。そして、双方の電気コネクタ10及び20同士が嵌合されて、前述したリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10に設けられた信号コンタクト部材13及び電源コンタクト部材14の嵌合凹部13a,14aの内方空間に、プラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20に設けられた信号コンタクト部材23及び電源コンタクト部材24の嵌合凸部23a,24aが挿入された際に、プラグコネクタ20側の凹状接点部23bが、リセプタクルコネクタ10側の凸状接点部13eに対して弾性的に接触して電気的な接続が行われるようになっている。
【0053】
一方、信号コンタクト部材23に設けられた嵌合凸部23aの外壁面は、平坦面状をなして延在している。そして、双方の電気コネクタ10及び20同士が嵌合されて、前述したリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10に設けられた信号コンタクト部材13の嵌合凹部13aの内方空間に、プラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20に設けられた信号コンタクト部材23の嵌合凸部23aが挿入された際にあっては、
図25に示すようにプラグコネクタ20側に平坦面状をなすように設けられた嵌合凸部23aの外壁面が、前述したリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10側の絶縁ハウジング11に設けられた長手側壁部11eの内壁面に対してコネクタ中心側から圧接された状態になされ、それによって電気的な接続が行われない絶縁された状態となる構成になされている。
【0054】
このように本実施形態においては、両電気コネクタ10,20同士の嵌合が行われた際に、リセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10の信号コンタクト部材13が挟持された絶縁ハウジング11の一部によって、当該信号コンタクト部材13の凸状接点部13eが、相手嵌合体であるプラグコネクタ20側の凹状接点部23bに押圧される構造になされていることから、接点部の電気的な接続性が高められるとともに、絶縁ハウジング11の誘電性を利用した信号伝送のインピーダンス整合が期待できる。
【0055】
また、上述した両電気コネクタ10,20に設けられた信号コンタクト部材13,23同士は、コネクタ中心側に配置された凸状接点部13e及び凹状接点部23bからなる一箇所の接点部のみで電気的に接続される構成になされており、当該一箇所の接点部を介して信号伝送が行われるようになっている。
【0056】
これに対して、電源コンタクト部材24に設けられた嵌合凸部24aのコネクタ外方側壁面が上下方向に延在している途中位置には、凸状接点部24cが形成されている。そして、双方の電気コネクタ10及び20同士が嵌合されることで、前述したリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10に設けられた信号コンタクト部材13の嵌合凹部13aの内方空間に、プラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20に設けられた信号コンタクト部材23の嵌合凸部23aが挿入された際に、プラグコネクタ20側の凸状接点部24cが、リセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10側の電源コンタクト部材14に設けられた凹状接点部14fに接触して電気的に接続される関係になされている。
【0057】
このように、両電気コネクタ10,20に設けられた電源コンタクト部材14,24同士は、コネクタ中心側に配置された凸状接点部14e及び平面部からなる内方側の接点部と、コネクタ外方側に配置された凹状接点部14f及び凸状接点部24cからなる外方側の接点部とからなる二箇所の接点部を介して電気的に接続される構成になされており、当該二箇所の接点部を介して電源電流が供給されるようになっている。
【0058】
以上の通り本実施形態によれば、信号コンタクト部材13,23の嵌合凹部13a及び嵌合凸部23aごとに一箇所ずつ設けられた凸状接点部13e及び凹状接点部23bを通して信号の伝送が行われることから、特に高周波伝送における干渉が低減されて良好な伝送特性が得られる一方、電源コンタクト部材(又はグランドコンタクト部材)14,24の嵌合凹部14a及び嵌合凸部24aに設けられた凸状接点部14e及び平面部と、凸状接点部24c及び凹状接点部14f同士が接触状態になされることから、十分な嵌合保持力が得られる。
【0059】
また、上述した信号コンタクト部材23及び電源コンタクト部材(又はグランドコンタクト部材)24に設けられた嵌合凸部23a及び24aの内壁面における下端部分は、プラグコネクタ20の下面位置において、コネクタ外方側に向かって略直角に折れ曲がって基板接続脚部(コンタクト接続部)23c,24dになされている。これらの基板接続脚部23c,24dは、コネクタ幅方向の外方側に向かって略水平に延出しており、プラグコネクタ20の実装時に、特に
図31に示されているように、第2の配線基板P2上の信号伝送用導電路(信号パッド)P2a及び電源供給用導電路(電源パッド)P2bに対して半田接合されるようになっている。これらの基板接続脚部23c,24dの半田接合は、長尺状の半田材を用いて全ての基板接続脚部23c,24dに対して一括的に行われる。
【0060】
[リセプタクルコネクタの導電性シェルについて]
次に、リセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10側にシールド壁部として設けられた導電性シェル12は、2体に分割された枠状構造体から形成されており、互いに向き合うように対向配置された状態で絶縁ハウジング11に装着されている。すなわち、これら一対の導電性シェル(シールド壁部)12,12の各々は、平面視において略L字形状をなす薄板状金属の折曲部材から形成されており、それらの各導電性シェル12における平面略L字形状の長辺部分を構成している長手側壁板12aが、コネクタ長手方向に沿って延在するように配置されているとともに、平面略L字形状の短辺部分を構成している短手側壁板12bが、コネクタ幅方向に沿って延在するように配置されている。そして、これら一対の導電性シェル12,12を構成している長手側壁板12a,12a同士、及び短手側壁板12b,12b同士が、互いに略平行に対向した状態に配置され、そのような対向配置関係になされることによって、平面視したときの全体形状が略長方形状をなす枠体構造が構成されている。
【0061】
ここで、導電性シェル(シールド壁部)12の短手側壁板12bの上縁部分には、一対の固定係止片12c,12cが所定の間隔をなして設けられている。それらの各固定係止片12cは、後述するように補助カバーを構成するものであるが、短手側壁板12bの上縁部分からコネクタ中心側(内方側)に向かって張り出すように折り曲げられた後に下方に向かって反転する逆U字状の折り曲げ湾曲形状になされている。そして、これらの両固定係止片12c,12cが、前述した絶縁ハウジング11の基端部11aに対して上方から圧入されることによって、導電性シェル12の全体が絶縁ハウジング11に対して固定状態になされている。
【0062】
一方、導電性シェル(シールド壁部)12の長手側壁板12a及び短手側壁板12bの下端縁部には、第1の配線基板P1の表面に向かって下方に突出する板状突起片からなるグランド接続部12dが、複数体にわたって形成されている。これらの各グランド接続部12dを構成している板状突起片は、長手側壁板12a及び短手側壁板12bと面一な表面を有して連続するように形成されており、長手側壁板12a及び短手側壁板12bの板厚内において延在している。
【0063】
このように本実施形態にかかるリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10においては、導電性シェル(シールド壁部)12のグランド接続部(板状突起片)12dが、導電性シェル12の板厚範囲内に収められた状態で配置されており、導電性シェル12の外方に張り出すことがない構成になされていることからコネクタ全体の小型化が図られるようになっている。
【0064】
なお、上述したグランド接続部12dの下端部は、第1の配線基板P1の表面に設けられたグランド導電路(グランドパッド)P1cに対して半田接合されることで電気的な接続が行われるが、その場合のグランド接続部12dの半田接合は、長尺状の半田材を用いて全てのグランド接続部12dに対して一括的に行われる。
【0065】
このような平面略長方形状の枠体構造からなる導電性シェル(シールド壁部)12が、絶縁ハウジング11の外周を全周にわたって囲むように構成されていることにより、絶縁ハウジング11に取り付けられた信号コンタクト部材13に対する電磁遮蔽が行われるようになっている。
【0066】
特に、当該導電性シェル(シールド壁部)12の長手側壁板12aは、前述した信号コンタクト部材13の基板接続脚部(コンタクト接続部)13fからコネクタ幅方向に所定の間隔をなす位置において、第1の配線基板P1の表面上に対して立設される配置関係になされている。すなわち、当該導電性シェル12の長手側壁板12aが、信号コンタクト部材13の基板接続脚部13fの外端面に対向しつつコネクタ長手方向(多極状の配列方向)に延在していることによって、基板接続脚部13fを含む信号コンタクト部材13の全体に対する電磁遮蔽が、上述した基板接続脚部13fと導電性シェル12の長手側壁板12aとの間の空間部分を介して適宜にインピーダンス整合された状態で良好に行われる構成になされている。
【0067】
[側方検査窓について]
また、上述した導電性シェル(シールド壁部)12の長手側壁板12aに設けられた複数体のグランド接続部(板状突起片)12dは、コネクタ長手方向(多極状の配列方向)において一定の間隔をなして配置されているが、そのコネクタ長手方向に隣り合う一対のグランド接続部12d,12d同士の間隔領域には、信号コンタクト部材13の基板接続脚部(コンタクト接続部)13fをコネクタ幅方向に向かって目視可能とする空間からなる側方検査窓12eが形成されている。
【0068】
すなわち、その導電性シェル(シールド壁部)12に設けられた各グランド接続部12dは、信号コンタクト部材13の基板接続脚部(コンタクト接続部)13fに対して、コネクタ長手方向における設置位置をずらした配置関係になされており、コネクタ長手方向に隣り合う基板接続脚部13f,13f同士の間部分にグランド接続部12dが配置された関係になされている。そして、これらのコネクタ長手方向に隣り合う一対のグランド接続部12d,12d同士の間部分には、当該グランド接続部12d,12dと、導電性シェル12の長手側壁板12aの下縁部とで形成される横長状の空間部分が形成されており、その横長状の空間部分が、上述した側方検査窓12eになされている。
【0069】
本実施形態にかかる側方検査窓12eのコネクタ長手方向における長さは、基板接続脚部(コンタクト接続部)13fの複数体(3体)が並列する長さに相当するように形成されており、当該側方検査窓12eを通して、組立て作業者がコネクタ幅方向に向かって目視した場合にあっては、その側方検査窓12eの内方領域に、複数体(3体)の基板接続脚部13fの端面が視覚的に確認されるようになっている。
【0070】
[平面カバーについて]
さらに、上述した各導電性シェル(シールド壁部)12の長手側壁板12aの上縁部分には、略水平に延在する平面カバー12fが連設されている。この平面カバー12fは、長手側壁板12aの上縁部からコネクタ中心側(内方側)に向かって略直角に折り曲げられるように形成されており、長手側壁板12aから信号コンタクト部材13の基板接続脚部(コンタクト接続部)13fの先端付近に至るまでの間に形成されている空間部分を上方側から覆うように略水平に延在している。
【0071】
このように本実施形態によれば、信号コンタクト部材13の基板接続脚部(コンタクト接続部)13fに対する電磁遮蔽作用を、導電性シェル(シールド壁部)12により良好に得られるものであるが、特に、本実施形態にかかるリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10の導電性シェル12には、絶縁ハウジング11の上側表面を第1の配線基板P1と略平行に覆う平面カバー12fが設けられていることから、基板接続脚部13fに対する電磁遮蔽作用が平面カバー12fによりさらに高められる。
【0072】
その平面カバー12fは、絶縁ハウジング11の中央凸部11bをコネクタ幅方向に挟んだ両側に互いに対向するように一対配置されているが、それらの各平面カバー12fにおけるコネクタ中心側の内端縁部分には、複数体のカバー連結部12gが、コネクタ長手方向に一定の間隔をなして設けられている。これらの各カバー連結部12gは、コネクタ中心側に向かって略水平に突出する板状突起片から形成されており、中央凸部11bの長手側壁部11eに台座状をなすように形成された受け部11fに対して上方から載置されるようにして支持されている。このようなカバー連結部12gが設けられていることによって、リセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10とプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20の挿抜時の補強が行われるようになっている。
【0073】
これらの各カバー連結部12gを構成している板状突起片は、平面カバー12fと面一な表面を有して連続するように形成されており、平面カバー12fの板厚内において延在している。このように平面カバー12fに設けられたカバー連結部12gは、平面カバー12fの板厚範囲内に収められた状態で配置されており、平面カバー12fの外方に張り出すことがないことから、コネクタ全体の低背化が図られるようになっている。
【0074】
また、この平面カバー12fに設けられた複数体のカバー連結部12gは、上述したようにコネクタ長手方向において一定の間隔をなして配置されているが、そのコネクタ長手方向に隣り合う一対のカバー連結部12g,12g同士の間隔領域には、信号コンタクト部材13の基板接続脚部(コンタクト接続部)13fを下方向に向かって目視可能とする空間からなる平面検査窓12hが形成されている。
【0075】
すなわち、上述した導電性シェル(シールド壁部)12に設けられた各カバー連結部12gは、信号コンタクト部材13の基板接続脚部(コンタクト接続部)13fに対して、コネクタ長手方向における設置位置をずらした配置関係になされており、コネクタ長手方向に隣り合う基板接続脚部13f,13f同士の間部分にカバー連結部12gが配置された関係になされている。そして、これらのコネクタ長手方向に隣り合う一対のカバー連結部12g,12g同士の間部分には、当該カバー連結部12g,12gと、導電性シェル12の平面カバー12fの内端縁部とで形成される横長状の空間部分が形成されており、その横長状の空間部分が、上述した平面検査窓12hになされている。
【0076】
本実施形態にかかる平面検査窓12hのコネクタ長手方向における長さは、基板接続脚部(コンタクト接続部)13fの複数体(3体)が並列する長さに相当するように形成されており、当該平面検査窓12hを通して、組立て作業者が下方向に向かって目視した場合にあっては、その平面検査窓12hの内方領域に、複数体(3体)の基板接続脚部13fの端面が視覚的に確認されるようになっている。
【0077】
このように本実施形態においては、導電性シェル12に設けられた側方検査窓12e及び平面検査窓12hを通して、第1の配線基板P1の信号伝送用導電路(信号パッド)P1aに対する基板接続脚部(コンタクト接続部)13fの接続状態やコネクタの組み立て状態が、側方及び上方から目視で確認されるようになっている。
【0078】
[接触片について]
さらに、上述した導電性シェル12の平面カバー12f及びその平面カバー12fから下方に折れ曲がって延びている長手側壁板12aにかけての部位には、嵌合相手に弾性的に接触する板バネ状の接触片12iが、切り起こすようにして一体的に形成されている。この接触片12iは、コネクタ長手方向に一定の間隔をなして複数体形成されており、その接触片12iを構成している板バネ状部材の根元部分が平面カバー12f側に設けられているとともに、当該板バネ状部材の先端部分が、長手側壁板12aの外表面からコネクタ幅方向の外方側に向かって斜めに張り出すように形成されている。
【0079】
そして、リセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10に対してプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20が上方側から嵌合されて来た際に、上述した接触片12iの先端部分が、プラグコネクタ20の導電性シェル(後述)に対して、内方側から弾性的に接触する配置関係になされている。この点については、後段において詳細に説明する。
【0080】
なお、上述した各接触片12iは、コネクタ長手方向に隣り合う一対のカバー連結部12g,12g同士の間部分に配置されており、そのようにカバー連結部12g対して接触片12iがコネクタ長手方向に位置ズレされた配置関係になされていることによって、接触片12iに付与される押圧力が、カバー連結部12gに対して直接的に作用することがなくなり、それによってカバー連結部12gの強度が維持されるようになっている。
【0081】
[嵌合ガイドについて]
一方、上述したように導電性シェル(シールド壁部)12の長手側壁板12aに設けられた平面カバー12fの表面は、両電気コネクタ10,20同士の嵌合が行われる際に相互の接触移動を許容する滑りガイド面になされている。また、このような滑りガイド面になされた平面カバー12fの表面に対して、導電性シェル12の短手側壁板12bの上縁部分に連設された固定係止片12c,12cの頂部表面は、当該平面カバー12fの表面と略同一の高さとなるように配置されており、それらの各固定係止片12cの頂部表面も、両電気コネクタ10,20同士の嵌合が行われる際の滑りガイド面になされている。このように導電性シェル12に設けられた固定係止片12cは、平面カバー12fに対する補助カバーとしての構成を備えており、これらの平面カバー12fと補助カバー12cとにより滑りガイド面が構成されている。
【0082】
このような滑りガイド面をなす平面カバー12f及び補助カバー(固定係止片)12cに対しては、後述するプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20の導電性シェル22の表面が上方から接触して滑動する構成になされており、予め定められた嵌合位置までのガイドが行われるが、この点についても、後段において詳細に説明する。
【0083】
[プラグコネクタの導電性シェルについて]
一方、プラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20側にシールド壁部として設けられた導電性シェル22も、2体に分割された枠状構造体から形成されており、互いに向き合うように対向配置された状態で絶縁ハウジング21に装着されている。すなわち、これら一対の導電性シェル(シールド壁部)22,22の各々は、平面視において略コ字形状をなす薄板状金属の折曲部材から形成されており、それらの各導電性シェル22における平面略コ字形状の長辺部分を構成している長手側壁板22aが、コネクタ長手方向に沿って延在するように配置されている。
【0084】
また、上述した長手側壁板22aにおけるコネクタ長手方向の両端部分には、対向配置された他方の導電性シェル22に向かって略直角に折り曲げられた固定係止片22b,22bが一体的に連設されている。それらの各導電性シェル22の固定係止片22b,22bは、コネクタ幅方向に延出しており、絶縁ハウジング11のコネクタ長手方向における端縁部分を構成している基端部21a,21aの内部にインサート成形により埋設されることによって、導電性シェル22の全体が絶縁ハウジング21に固定状態になされている。
【0085】
このとき、上述した各導電性シェル22の固定係止片22bには、絶縁ハウジング21に対する位置決めを行うとともに固定係止力を高めるための係合穴22fが貫通形成されており、上述したようなインサート成形が行われる際に、絶縁ハウジング21の基端部21aに設けられた係止突起21eが、当該導電性シェル22の係合穴22fに貫通した状態となるように成形される。
【0086】
そして、上述した一対の導電性シェル(シールド壁部)22,22を構成している長手側壁板22a,22a同士が、互いに略平行に対向した状態に配置されるとともに、短手側壁板を構成している固定係止片22b,22b同士がコネクタ幅方向に突き合わせ配置されることによって、平面視したときの全体形状が略長方形状をなす枠体構造が構成されるようになっている。
【0087】
このようにプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20側においては、平面略コ字形状をなす一対の導電性シェル(シールド壁部)22,22同士が対向配置された枠体構造が構成されている一方、前述したリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10側においては、平面略L字形状をなす一対の導電性シェル(シールド壁部)12,12同士が対向配置された枠体構造が構成されている。従って、それらの両電気コネクタ10,20同士が嵌合された状態にあっては、リセプタクルコネクタ10側の導電性シェル12,12同士の対向配置により生じている隙間が、プラグコネクタ20側の導電性シェル22によって外方側から覆われているとともに、プラグコネクタ20側の導電性シェル22,22同士の対向配置により生じている隙間が、リセプタクルコネクタ10側の導電性シェル12によって内方側から覆われている。その結果、電気コネクタ装置の全周がシールド壁部により完全に覆われた状態となって、極めて良好なシールド機能が得られるようになっている。
【0088】
一方、導電性シェル(シールド壁部)22の長手側壁板22a及び固定係止片(短手側壁板)22bの下端縁部には、第2の配線基板P2の表面に向かって下方に突出する板状突起片からなるグランド接続部22cが、複数体にわたって形成されている。これらの各グランド接続部22cを構成している板状突起片は、長手側壁板22a及び固定係止片(短手側壁板)22bと面一な表面を有して連続するように形成されており、長手側壁板22a及び固定係止片(短手側壁板)22bの板厚内において延在している。
【0089】
このように本実施形態にかかるプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20においては、導電性シェル(シールド壁部)22の長手側壁板22aの両端部分に設けられた固定係止片(短手側壁板)22bが、絶縁ハウジング11の基端部21aの内部に埋設されるようにインサート成形されていることから、絶縁ハウジング21の全長範囲内に導電性シェル22が収められた状態で配置されて導電性シェル22が絶縁ハウジング21の外方に張り出すことがなく、コネクタ長手方向においてコネクタ全体の小型化が図られるようになっている。加えて本実施形態では、導電性シェル(シールド壁部)22のグランド接続部(板状突起片)22cが、導電性シェル22の板厚範囲内に収められた状態で配置されていることから、導電性シェル22の外方に張り出すことがなく、コネクタ幅方向においてもコネクタ全体の小型化が更に図られるようになっている。
【0090】
なお、上述したグランド接続部22cの下端部は、第2の配線基板P2の表面に設けられたグランド導電路(グランドパッド)P2cに対して半田接合されることで電気的な接続が行われるが、その場合のグランド接続部22cの半田接合は、長尺状の半田材を用いて全てのグランド接続部22cに対して一括的に行われる。
【0091】
このような平面略長方形状の枠体構造からなる導電性シェル(シールド壁部)22が、絶縁ハウジング21の外周を全周にわたって囲むように構成されていることにより、絶縁ハウジング21に取り付けられた信号コンタクト部材23に対する電磁遮蔽が行われるようになっている。
【0092】
特に、当該導電性シェル(シールド壁部)22の長手側壁板22aは、前述した信号コンタクト部材23の基板接続脚部(コンタクト接続部)23cからコネクタ幅方向に所定の間隔をなす位置において、第2の配線基板P2の表面上に立設される配置関係になされている。すなわち、導電性シェル22の長手側壁板22aが、信号コンタクト部材23の基板接続脚部23cの外端面に対向しつつコネクタ長手方向(多極状の配列方向)に延在していることにより、基板接続脚部23cを含む信号コンタクト部材23の全体に対する電磁遮蔽が、上述した基板接続脚部23cと導電性シェル22の長手側壁板22aとの間の空間部分を介して適宜にインピーダンス整合された状態で良好に行われる構成になされている。
【0093】
以上の通り本実施形態においては、リセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10及びプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20の各々において、基板接続脚部(コンタクト接続部)13f,23cに対する電磁遮蔽作用をそれぞれのシールド壁部として設けられた導電性シェル12,22により得るようにしているが、それらの両電気コネクタ10,20同士が嵌合された際にあっては、導電性シェル12,22が内外において二重に配置され、かつ導電性シェル12,22の一方により構成されるシールド壁部と、両配線基板P1,P2のうちの一方との間に形成される隙間が、導電性シェル12,22の他方により構成されるシールド壁部により部分的に覆われることから、電気コネクタ装置として極めて良好な電磁遮蔽作用が得られる。特に、導電性シェル12,22と第1及び第2の配線基板P1,P2との隙間を効率的に塞ぐことができるため、十分なEMI対策が期待できる。
【0094】
[側方検査窓について]
また、上述した導電性シェル(シールド壁部)22の長手側壁板22aに設けられた複数体のグランド接続部(板状突起片)22cは、コネクタ長手方向(多極状の配列方向)において一定の間隔をなして配置されているが、そのコネクタ長手方向に隣り合う一対のグランド接続部22c,22c同士の間隔領域には、信号コンタクト部材23の基板接続脚部(コンタクト接続部)23cをコネクタ幅方向に向かって目視可能とする空間からなる側方検査窓22dが形成されている。
【0095】
すなわち、上述した導電性シェル(シールド壁部)22に設けられた各グランド接続部22cは、信号コンタクト部材23の基板接続脚部(コンタクト接続部)23cに対して、コネクタ長手方向における設置位置をずらした配置関係になされており、コネクタ長手方向に隣り合う基板接続脚部23c,23c同士の間部分にグランド接続部22cが配置された関係になされている。そして、これらのコネクタ長手方向に隣り合う一対のグランド接続部22c,22c同士の間部分には、当該グランド接続部22c,22cと、導電性シェル22の長手側壁板22aの下縁部とで形成される横長状の空間部分が形成されており、その横長状の空間部分が、上述した側方検査窓22dになされている。
【0096】
本実施形態にかかる側方検査窓22dのコネクタ長手方向における長さは、基板接続脚部(コンタクト接続部)23cの複数体(3体)が並列する長さに相当するように形成されており、当該側方検査窓22dを通して、組立て作業者がコネクタ幅方向に向かって目視した場合にあっては、その側方検査窓22dの内方領域に、複数体(3体)の基板接続脚部23cの端面が視覚的に確認されるようになっている。
【0097】
このように本実施形態にかかるプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20においても、導電性シェル22に設けられた側方検査窓22dを通して、第2の配線基板P2の信号伝送用導電路(信号パッド)P2aに対する板接続脚部(コンタクト接続部)23cの接続状態やコネクタの組み立て状態が側方から目視で確認されるようになっている。
【0098】
また、このようなプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20に設けられた導電性シェル(シールド壁部)22は、両電気コネクタ10,20同士を嵌合した際に、リセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10の外周を全周にわたって外方側から覆うように配置されるが、その際、プラグコネクタ20の導電性シェル22の内壁面が、前述したリセプタクルコネクタ10の導電性シェル12に設けられた接触片12iの先端部分に対して外方側から弾性的に接触する配置関係になされている。これによって、両導電性シェル12,22同士が電気的なグランド接続状態になされる。
【0099】
すなわち、本実施形態においては、両電気コネクタ10,20同士の嵌合時に、リセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10の導電性シェル(シールド壁部)12に設けられた接触片12iを通して電気的なグランド接続が行われることから、グランド抵抗が低減され、その分、シールド特性が向上される。
【0100】
[嵌合ガイドについて]
一方、上述した導電性シェル(シールド壁部)22の長手側壁板22aの上縁部分は、両電気コネクタ10,20同士の嵌合が行われる際に相互の接触移動を許容する滑りガイド面になされている。この滑りガイド面としての長手側壁板22aは、前述したリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10の導電性シェル12に同じく滑りガイド面をなすように設けられた平面カバー12fに対して上方から接触可能となる配置関係になされている。そして、
図27〜
図29に示されているように、下方に配置されたリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10の導電性シェル12の平面カバー12fに対して、上下を反転されたプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20の導電性シェル22の長手側壁板22aが、上方から接触配置された状態になされ、その接触配置が維持された状態で相対的な滑動が行われることによって、予め定められた嵌合位置に対する位置合わせが行われる構成になされている。
【0101】
ここで、当該プラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20に設けられた導電性シェル(シールド壁部)22の四隅における角部領域、すなわち長手側壁板22aと短手側壁板を構成している固定係止片22bとが連結されている部位には、両電気コネクタ10,20同士を嵌合位置に規制する位置決め部22eが、計4体にわたって設けられている。これらの各位置決め部22eは、長手側壁板22a及び固定係止片(短手側壁板)22bの上端縁から段差をなして突出する台座状の凸状部分から形成されており、長手側壁板22aと固定係止片(短手側壁板)22bとの連結形状に沿ってコネクタ長手方向及びコネクタ幅手方向に延在して平面略L字形状をなすように形成されている。
【0102】
そして、前述したように下方に配置されたリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10の導電性シェル12の平面カバー12fに対して、プラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20の導電性シェル22の長手側壁板22aが上方から接触配置された状態で相対的な滑動が行われて予め定められた嵌合位置に至ると、プラグコネクタ20側の導電性シェル22に設けられた位置決め部22eが、リセプタクルコネクタ10側の導電性シェル12の四隅角部に対して外方側から嵌り込み、それによって嵌合位置の位置合わせが行われる構成になされている。
【0103】
なお、両電気コネクタ10,20同士の嵌合状態において、プラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20の導電性シェル22に設けられた位置決め部22eは、リセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10が実装されている第1の配線基板P1の表面に対向配置されることとなるが、その位置決め部22eが対向配置される第1の配線基板P1の表面に、導電路等は形成されていない。従って、両電気コネクタ10,20の低背化を行っても、嵌合時に位置決め部22eが第1の配線基板P1の表面に接触する事態が回避されるようになっている。
【0104】
このように本実施形態においては、両電気コネクタ10,20同士を嵌合させるにあたって、当該両電気コネクタ10,20の導電性シェル12,22の滑りガイド面12f,22a同士を接触させながら相対的に移動させることから、電気コネクタ10,20同士の相対移動が低摩擦状態で良好に行われる。
【0105】
そして、上述したような電気コネクタ10,20同士の相対移動が行われるにあっては、金属等の導電性部材からなる滑りガイド面12f,22a同士が接触状態になされることから、樹脂等の他の部材の接触状態に比して、削れ・破損などの使用耐久上の問題を生じにくい。
【0106】
さらに、最終的な嵌合位置まで移動が行われた際にあっては、導電性シェル(シールド壁部)22に設けられた位置決め部22eにより位置規制が行われることから、嵌合操作が円滑に行われる。
【0107】
次に、
図32〜
図37に示した他の実施形態にかかる基板接続用電気コネクタ装置のリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10’及びプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20’の構成について説明する。本実施形態において、上述した実施形態と同一の構成を有する部材については同一の符号を付して説明を省略することとするが、本実施形態にかかるリセプタクルコネクタ(第1の電気コネクタ)10’及びプラグコネクタ(第2の電気コネクタ)20’の各導電性シェル(シールド壁部)12’,22’を構成している長手側壁板12a’,22a’には、上述した実施形態にかかる側方検査窓12e,22dが設けられていない。
【0108】
すなわち、第1及び第2の両電気コネクタ10’,20’に設けられた各導電性シェル12’,22’の長手側壁板12a’,22a’を構成している平板帯状部材の端縁部のうち、実装時に第1及び第2の配線基板P1及びP2の表面に対面するように配置される下端縁部12j,22gが、両配線基板P1,P2の表面に沿って略直線状に延在するように形成されている。これらの各導電性シェル12’,22’の長手側壁板12a’,22a’の下端縁部12j,22gは、実装時に、第1及び第2の配線基板P1及びP2の表面に対して、上述した実施形態にかかる側方検査窓12e,22dのような隙間を生じることなく配置される構成になされたものであって、当該シールド壁部12,22は、多極状をなすように配列された全ての基板接続脚部(コンタクト接続部)13f,14g,23c,24dと対向するように一体的に延在する構成になされている。
【0109】
このとき、上述した各導電性シェル12’,22’の長手側壁板12a’,22a’の下端縁部12j,22gは、実装時に、第1及び第2の配線基板P1及びP2上のグランド導電路(グランドパッド)P1c,P2cに当接する部分が半田接合され、多点にわたる電気的な接続状態になされる。
【0110】
このような構成を有する他の実施形態によれば、第1及び第2の配線基板P1及びP2の表面と、各導電性シェル(シールド壁部)12’,22’の長手側壁板12a’,22a’との間の隙間がほとんど生じない閉塞状態になされることで遮蔽性が向上されるとともに、その各導電性シェル12’,22’の端縁部の複数箇所が、第1及び第2の配線基板P1及びP2側に接続されることによって、多点にわたるグランド接続が行われることから、極めて良好なシールド特性が得られることとなる。
【0111】
なお、本実施形態にかかる電気コネクタ装置のコネクタ組立て状態の検査は、当該電気コネクタ装置に対して、例えば上方から検査用のレーザー光を照射して絶縁ハウジング11,21の反り等を計測することによって行われる。
【0112】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0113】
例えば、上述した実施形態における接触片12iを構成している板バネ状部材は、根元側の基端部分を長手側壁板12aに設けるとともに、当該接触片12iの先端部分を平面カバー12f側に設ける構成とすることも可能である。さらにその接触片12iの接続相手は、相手コネクタに限定されることはなく、例えば機器の導電性の筐体と接続する構成も採用することができる。
【0114】
また、上述した実施形態における電源コンタクト部材14及び24は、接地用のグランドコンタクト部材とすることも可能である。
【0115】
さらに、上述した実施形態におけるコンタクト部材12,22同士の凹凸嵌合関係は、リセプタクルコネクタ10とプラグコネクタ20との間において逆の関係に配置することが可能である。