(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860130
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】圃場整地機
(51)【国際特許分類】
A01B 35/04 20060101AFI20210405BHJP
A01B 3/38 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
A01B35/04 E
A01B3/38
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-195007(P2017-195007)
(22)【出願日】2017年10月5日
(65)【公開番号】特開2019-62868(P2019-62868A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2019年1月4日
【審判番号】不服2020-6590(P2020-6590/J1)
【審判請求日】2020年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】395008849
【氏名又は名称】株式会社富士トレーラー製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092691
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 勇治
(72)【発明者】
【氏名】皆川 俊男
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 貴行
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅文
【合議体】
【審判長】
住田 秀弘
【審判官】
有家 秀郎
【審判官】
西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−183237(JP,A)
【文献】
実開平6−40053(JP,U)
【文献】
特開2000−166305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B35/04
A01B3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に取付枠を連結機構により上下動自在に設け、該取付枠に土運搬台を後方傾動自在に設け、該取付枠の下部に第1のすき部材を前下り状に配設し、該土運搬台の該第1のすき部材に対向する位置に土導入口部を形成し、該第1のすき部材を前下り状の使用位置に保持すると共に該第1のすき部材を該使用位置から不使用位置に跳上待避可能な第1の保持待避機構を設け、該第1の保持待避機構として、上記第1のすき部材を上記取付枠の下部にピンにより前下り状の使用位置及びほぼ垂直状態の不使用位置の間で揺動自在に配設し、該取付枠に該第1のすき部材を上記使用位置に保持可能なストッパー桟を設け、該第1のすき部材を上記不使用位置に跳上待避可能な係止ピン及び係脱穴部からなるロック機構を配設し、上記土運搬台の下部に少なくとも1個の第2のすき部材を前下り状に配設し、上記土運搬台の下部にして上記第2のすき部材の対向位置に土導入口を形成し、該土導入口を開閉可能な蓋板を配設し、該第2のすき部材を前下り状の使用位置に保持すると共に該第2のすき部材を該使用位置から該不使用位置に跳上待避可能な第2の保持待避機構を設け、該第2の保持待避機構として、上記第2のすき部材を土運搬台の下部にピンにより前下り状の使用位置及び不使用位置の間で揺動自在に配設し、該土運搬台に該第2のすき部材を上記使用位置に保持可能なストッパー桟を配設し、該第2のすき部材を上記不使用位置に跳上待避可能な係止ピン及び係脱穴部からなるロック機構を配設してなることを特徴とする圃場整地機。
【請求項2】
上記取付枠側の第1のすき部材は上記取付枠の下部に1個配設され、上記土運搬台側の第2のすき部材は土運搬台の下部左右位置に1個ずつ計2個配設されてなることを特徴とする請求項1記載の圃場整地機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水田等の圃場面の整地作業に用いられる圃場整地機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の圃場整地機として、走行機体に取付枠を連結機構により上下動自在に設け、取付枠に土運搬台を後方傾動自在に設け、取付枠の下部にすき部材を前下り状に配設してなる構造のものが知られている。
【0003】
しかして、上記すき部材を前下り状の作業位置に保持して走行機体を前進走行し、圃場面の高い所の土をすき部材により削り取り、削り取られた土をすき部材により土運搬台内に導入案内し、走行機体を圃場の低い所に移動し、その位置で土運搬台を後方傾動させ、土運搬台内の土を圃場面の低い所に排出し、この作業を繰り返すことにより圃場の整地作業を行うことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4997132号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来構造の場合、上記すき部材は上記取付枠の下部に1個のみ配設され、土の削取、移動及び排出の整地作業能力が低いとされ、近年の圃場の大規模化もあって、圃場の整地作業の作業性が低下することがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、走行機体に取付枠を連結機構により上下動自在に設け、該取付枠に土運搬台を後方傾動自在に設け、該取付枠の下部に第1のすき部材を前下り状に配設し、該土運搬台の該第1のすき部材に対向する位置に土導入口部を形成し、該第1のすき部材を前
下り状の使用位置に保持すると共に該第1のすき部材を該使用位置から不使用位置に跳上待避可能な第1の保持待避機構を設け、
該第1の保持待避機構として、上記第1のすき部材を上記取付枠の下部にピンにより前下り状の使用位置及びほぼ垂直状態の不使用位置の間で揺動自在に配設し、該取付枠に該第1のすき部材を上記使用位置に保持可能なストッパー桟を設け、該第1のすき部材を上記不使用位置に跳上待避可能な係止ピン及び係脱穴部からなるロック機構を配設し、上記土運搬台の下部に少なくとも1個の第2のすき部材を前
下り状に配設し、上記土運搬台の下部にして上記第2のすき部材の対向位置に土導入口を形成し、該土導入口を開閉可能な蓋板を配設し、該第2のすき部材を前下り状の使用位置に保持すると共に該第2のすき部材を該使用位置から該不使用位置に跳上待避可能な第2の保持待避機構を設け、該第2の保持待避機構として、上記第2のすき部材を土運搬台の下部にピンにより前下り状の使用位置及び不使用位置の間で揺動自在に配設し、該土運搬台に該第2のすき部材を上記使用位置に保持可能なストッパー桟を配設し、該第2のすき部材を上記不使用位置に跳上待避可能な係止ピン及び係脱穴部からなるロック機構を配設してなることを特徴とする圃場整地機にある。
【0007】
又、請求項2記載の発明は、上記取付枠側の第1のすき部材は上記取付枠の下部に1個配設され、上記土運搬台側の第2のすき部材は土運搬台の下部左右位置に1個ずつ計2個配設されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上述の如く、請求項1記載の発明にあっては、第1のすき部材を第1の保持待避機構により取付枠に前
下り状の使用位置に保持することで第1のすき部材により土運搬台上に土導入口部を介して土を導入して圃場の整地作業を行うことができ、第2のすき部材を第2の保持待避機構により土運搬台に前
下り状に保持することで土運搬台上に第2のすき部材により土導入口を介して土を導入して圃場の整地作業を行うことができ、土導入口を蓋板により開閉することができ、
上記取付枠にピン及びストッパー桟により第1のすき部材を使用位置に保持することができ、第1のすき部材を係止ピン及び係脱穴部からなるロック機構により不使用位置に跳上待避することができ、土運搬台にピン及びストッパー桟により第2のすき部材を使用位置に保持することができ、第2のすき部材を係止ピン及び係脱穴部からなるロック機構により不使用位置に跳上待避することができ、取付枠に配設した第1のすき部材及び土運搬台に配設した第2のすき部材からなる複数個のすき部材が存在することにより土の削取、移動及び排出の整地作業能力を高めることができ、近年の圃場の大規模化に対応することができ、圃場の整地作業の作業性を向上することができ、かつ、第1の保持待避機構及び第2の保持待避機構により第1のすき部材又は第2のすき部材を選択して前
下り状の使用位置又は不使用位置に跳上待避することができ、圃場の大きさ等の整地条件に応じて第1のすき部材及び第2のすき部材を選択配置することができ、使用の融通性を向上することができる。
【0009】
又、請求項2記載の発明にあっては、上記取付枠側の第1のすき部材は上記取付枠の下部に1個配設され、上記土運搬台側の第2のすき部材は土運搬台の下部左右位置に1個ずつ計2個配設されてなるから、構造を簡素化することができ、走行機体の牽引能力及び土運搬台の大きさに対応することができ、それだけ、整地作業の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の実施の形態例の部分拡大側面図である。
【
図3】本発明の実施の形態例の部分平断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態例の部分拡大側断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態例の部分拡大平断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態例の部分拡大平断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態例の使用状態の部分拡大側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至
図8は本発明の実施の形態例を示し、1は走行機体であって、この場合、
図1の如く、トラクタが用いられ、走行機体1の後部に連結機構2により取付枠3を連結している。
【0012】
この場合、
図1、
図2の如く、上記連結機構2は走行機体1の左右両側部下部に突設した下部リンク4と、走行機体1の左右両側部上部に突設した揺動アーム5と、揺動アーム5と下部リンク4の中程部を連結する吊上リンク6と、走行機体1の上部に突設した上部リンク7とで構成され、上記下部リンク4の先端部と上部リンク7の先端部を連結ピン8・8・8により取付枠3に連結し、取付枠3を油圧により揺動する揺動アーム5によって上下動可能に構成している。
【0013】
9は第1のすき部材、10は第1の保持待避機構であって、この場合、
図2、
図3、
図4、
図5、
図6、
図8の如く、上記取付枠3を左右の縦杆3a・3a及び水平杆3b・3bにより側面L形状及び後面四角枠状に形成し、取付枠3の左右の縦杆3a・3a
の下部間に断面三角形状の取付桟11の軸受部11aを左右両側のピン12・12により揺動可能に枢着し、取付桟11の中央部に第1のすき部材9を前下り状に取付け、第1のすき部材9の裏面左右両側に係止片13・13を突設し、取付枠3の水平杆3bの下面に係止片13・13の後部に当接可能なストッパー桟14を設け、かつ、取付桟11の側部に係脱片10aを取付け、縦杆3aに係止ピン10bをバネ部材10cにより突没自在に設け、第1のすき部材9をピン12・12を中心として引上回動し、
第1のすき部材9を上記不使用位置bに跳上待避可能な係止ピン10b及び係脱穴部10dからなるロック機構Cを配設し、すき部材9がほぼ垂直状態になったときバネ部材10cに抗して係止ピン10bを引動し、バネ部材10cのバネ圧により係脱片10aの係脱穴部10dに嵌入し、しかして、すき作業時において、第1のすき部材9を前下り状の使用位置aに保持すると共に非すき作業時において、使用位置aからほぼ垂直状態の不使用位置bに跳上待避可能に構成している。
【0014】
15は土運搬台であって、
図4、
図5、
図6の如く、土運搬台15は長方形状の底板16の四辺部に左右一対の側板17・17、前板18、後板19を立設して形成され、前板18のすき部材9に対向する位置に土導入口部20を形成している。
【0015】
この場合、
図3、
図4、
図6の如く、上記土運搬台15の前板18及び底板16の外側に2個のL状の補強杆21・21を固定するとともに底板16のみに補強杆22・22を間隔を置いて固定し、かつ底板16の左右の辺部に他の補強杆23・23を固定し、補強杆21・22間に取付枠3の水平杆3bを配置し、水平杆3b及び補強杆21・22に支点軸24を挿通し、土運搬台15を支点軸24を中心として後方傾動可能に取付けて構成している。
【0016】
25は案内部材であって、
図4、
図6、
図8の如く、上記土導入口部20の下部の左右の補強杆21・21間に配置固定され、上記第1のすき部材9の傾斜角度に合う案内面25aを形成している。
【0017】
26は係止機構であって、
図2の如く、係止機構26は取付枠3の上部の横杆3cに鉤状の係止アーム27を軸27bにより枢着し、係止アーム27にハンドル27aを突設し、運搬台15の上部に係止部28を形成し、係止アーム27と係止部28とを係合し、バネ部材29によって係合状態を保持するようにしている。
【0018】
30は第2のすき部材、31は第2の保持待避機構であって、この場合、
図3、
図5、
図7、
図8の如く、上記補強杆22・22と補強杆23・23との間に補強桟32・32を架設し、かつ、上記補強杆22・22と補強杆23・23との間に断面三角形状の取付桟33の軸受部33aを左右両側のピン34・34により揺動可能に枢着し、取付桟33の中央部に第2のすき部材30を前下り状に取付け、第2のすき部材30の裏面左右両側に断面コ状の補強板35・35を突設し、上記補強杆22・22と補強杆23・23との間に取付桟33に当接可能なストッパー桟36を設け、かつ、取付桟33の側部に係脱片31aを取付け、補強桟23に係止ピン31bをバネ部材31cにより突没自在に設け、第2のすき部材30をピン34・34を中心として引上回動し、第2のすき部材
30を上記不使用位置dに跳上待避可能な係止ピン31b及び係脱穴部31dからなるロック機構Dを配設し、第2のすき部材30がほぼ水平状態になったときバネ部材31cに抗して係止ピン31bを引動し、バネ部材31cのバネ圧により係脱片31aの係脱穴部31dに嵌入し、しかして、すき作業時において、第2のすき部材30を前下り状の使用位置cに保持すると共に非すき作業時において、使用位置cからほぼ水平状態の不使用位置dに跳上待避可能に構成している。
【0019】
37は蓋板であって、
図5の如く、上記土運搬台15の底板16に上記左右2個の第2のすき部材30・30の対向位置に土導入口38・38を形成し、底板16の土導入口38の縁部に蓋板37の前部を固定して蓋板37をヒンジ部37aにより起立倒伏自在に取付け、蓋板37をヒンジ部37aにより倒伏して蓋板37の後部を上記補強桟32に当接して土導入口38を閉口すると共に、
図8の如く、蓋板37をヒンジ部37aで起立して土導入口38を開口するように構成している。
【0020】
この実施例は上記構成であるから、
図1、
図2の如く、上記第1のすき部材9を前下り状に保持して走行機体1を前進走行し、圃場面Mの高い所の土Wを第1のすき部材9により削り取り、削り取られた土を第1のすき部材9により土導入口20を介して土運搬台15内に導入案内し、走行機体1を圃場Mの低い所に移動し、その位置で作業者が人為的に係止機構26を解除し、
図2の想像線位置の如く、土運搬台15を支点軸24を中心として自重で後方傾動させ、土運搬台15内の土を圃場面Mの低い所に排出し、この作業を繰り返すことにより圃場Mの整地作業を行うことになる。
【0021】
この際、
図8の如く、第2のすき部材30を前
下り状に保持して走行機体1を前進走行し、第2のすき部材30により圃場面Mの高い所の土Wを第2のすき部材30により削り取り、削り取られた土を第2のすき部材30により土導入口38を介して土運搬台15内に導入案内し、走行機体1を圃場Mの低い所に移動し、その位置で作業者が人為的に係止機構26を解除し、
図2の想像線位置の如く、土運搬台15を支点軸24を中心として自重で後方傾動させ、土運搬台15内の土を圃場面Mの低い所に排出し、この作業を繰り返すことにより圃場Mの整地作業を行うことになる。
【0022】
したがって、第1のすき部材9及び第2のすき部材30を第1の保持待避機構10及び第2の保持待避機構31により前
下り状に保持することで第1及び第2のすき部材9・30により圃場の整地作業を行うことができ、複数個のすき部材9・30が存在することにより土の削取、移動及び排出の整地作業能力を高めることができ、近年の圃場の大規模化に対応することができ、圃場の整地作業の作業性を向上することができ、かつ、第1の保持待避機構10及び第2の保持待避機構31により第1のすき部材9又は第2のすき部材30を選択して前
下り状の使用位置a・c又は不使用位置b・dに跳上待避することができ、圃場の大きさ等の整地条件に応じて第1のすき部材9及び第2のすき部材30を選択配置することができ、使用の融通性を向上することができる。
【0023】
この場合、上記取付枠3側の第1のすき部材9は上記取付枠3の下部に1個配設され、上記土運搬台15側の第2のすき部材30は土運搬台15の下部左右位置に1個ずつ計2個配設されてなるから、構造を簡素化することができ、走行機体1の牽引能力及び土運搬台15の大きさに対応することができ、それだけ、整地作業の作業性を向上することができる。
【0024】
尚、本発明は上記実施例のものに限られるものではなく、第1のすき部材9の数量、配置位置及び構造及び第2のすき部材30の数量、配置位置及び構造は適宜の構造等は適宜変更して設計される。
【0025】
以上の如く、所期の目的を充分達成することができる。
【符号の説明】
【0026】
a 使用位置
b 不使用位置
c 使用位置
d 不使用位置
C ロック機構
D ロック機構
1 走行機体
2 連結機構
3 取付枠
9 第1のすき部材
10 第1の保持退避機構
10b 係止ピン
10d 係脱穴部
12 ピン
14 ストッパー桟
15 土運搬台
20 土導入口部
30 第2のすき部材
31 第2の保持退避機構
31b 係止ピン
31d 係脱穴部
34 ピン
36 ストッパー桟
37 蓋板
38 土導入口