(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記裏込め注入材は、シールド工法において使用される裏込め注入材であって、前記裏込め注入材に気泡を混入させる工程は、トンネル坑内で行われることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の裏込め注入材の製造方法。
前記裏込め注入材は、シールド工法において使用される裏込め注入材であって、前記裏込め注入材に気泡を混入させる工程は、複数に分けて行われることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の裏込め注入材の製造方法。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機などによるトンネル工事では、掘削された地山とセグメントとの隙間であるテールボイドに裏込め注入材が注入される。
裏込め注入材は、地上部や坑内で製造され、テールボイドに注入される。
【0003】
裏込め注入材には、特許文献1に示すような気泡が混入されたもの(以下、「エア系裏込め注入材」という。)と混入されないもの(以下、「非エア系裏込め注入材」という。)がある。エア系裏込め注入材は、流動性が高いので、注入場所までの圧送性と充填性に優れるといった利点がある。
エア系裏込め注入材の空気量は、二液型の裏込め注入材の場合、気泡を含むA液の体積に対して通常10〜15%程度で製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
比較的土被りが大きいトンネルでは、高い土水圧(以下、単に「水圧」という。)が作用する。このため、エア系裏込め注入材は、注入された直後からその水圧により、気泡が収縮し、所定の空気量が減少する。これでは、必要な空気量が確保できなくなる。
特に、凍結地盤では、凍結によって配合中の水分などの材料が膨張するので、気泡によって材料の膨張を吸収し、材料の崩壊や分解を防止できるエア系裏込め注入材が採用される。この場合には、エア系裏込め注入材の注入後の空気量を確保することが特に重要となる。
【0006】
エア系裏込め注入材の製造方法において、このような観点が注目されることはなく、発明者らが初めてこの観点に着目し検討を行った。
本発明の目的は、上記の問題点を鑑みて、エア系裏込め注入材の注入後に必要な空気量を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に係る発明は、気泡が混入され、注入された
充填空間において予め定められた空気量の裏込め注入材の製造方法であって、
前記裏込め注入材が注入される前の充填空間の圧力は、大気圧より高いものであって、前記裏込め注入材が充填空間に注入される前の大気圧における配合時の空気量について、前記裏込め注入材が注入される前の充填空間の圧力の大気圧より高い分に対応する空気量を増加して設定しておくことを特徴とする裏込め注入材の製造方法である。
【0008】
本願請求項2に係る発明は、前記増加して設定した配合時の空気を、注入する前に圧縮した後に気泡として混入させることを特徴とする請求項1に記載の裏込め注入材の製造方法である。
【0009】
本願請求項3に係る発明は、前記裏込め注入材は、凍結地盤に注入される裏込め注入材であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の裏込め注入材の製造方法である。
【0010】
本願請求項4に係る発明は、前記裏込め注入材は、シールド工法において使用される裏込め注入材であって、前記裏込め注入材に気泡を混入させる工程は、トンネル坑内で行われることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の裏込め注入材の製造方法である。
【0011】
本願請求項5に係る発明は、前記裏込め注入材は、シールド工法において使用される裏込め注入材であって、前記裏込め注入材に気泡を混入させる工程は、複数に分けて行われることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の裏込め注入材の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1乃至請求項5に係る構成により、エア系裏込め注入材の注入後に必要な空気量を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0015】
本発明の実施形態におけるエア系裏込め注入材は、A液に気泡が混練された気泡A液と、B液とが混合された二液型のエア系裏込め注入材である。
A液は、硬化材、助材、安定剤および水が混練して構成される。気泡は、起泡剤と水で構成された起泡溶液に空気が混練されて構成される。B液は、塑強調整剤で構成される。
空気量は、混練された空気が気泡になるものとして、気泡A液の体積に対して混入される空気の体積を百分率で表している。
【0016】
本発明の実施形態は、予め注入される箇所の水圧によって収縮した後のエア系裏込め注入材の配合を設定し、収縮する前の配合を算出して(空気量を増加させて)配合する。具体的には、以下のように行う。
表1は、注入後のエア系裏込め注入材1m
3を得るための配合例である。凍結地盤に注入するのに適切な空気量を、30%と設定したものである。
凍結地盤に適した空気量を設定する方法は、後述する。
【0018】
表1の空気量のエア系裏込め注入材が、例えば0.3MPaの水圧が作用している環境下で注入されるとすると、エア系裏込め注入材は大気圧下で配合され製造されるので、その水圧に基づいて空気量を増加させて製造する必要がある。ボイルの法則を用いて、大気圧下で製造する配合を算出すると、表2のようになる。
【0020】
表1と表2より、0.3Mpaの水圧下で30%の空気量のエア系裏込め注入材1m
3を確保するために、大気圧下で製造するエア系裏込め注入材は、約1.8倍の1.8m
3となる。
【0021】
また、同様に、例えば0.4MPaの水圧が作用している環境下で注入されるとすると、大気圧下で製造する配合を算出すると、表3のようになる。
【0023】
表1と表3より、0.4MPaの水圧下で30%の空気量のエア系裏込め注入材1m
3を確保するために、大気圧下で製造するエア系裏込め注入材は、約2.09倍の2.09m
3となる。
【0024】
さらに、同様に、例えば0.6MPaの水圧が作用している環境下で注入されるとすると、大気圧下で製造する配合を算出すると、表4のようになる。
【0026】
表1と表4より、0.6MPaの水圧下で30%の空気量のエア系裏込め注入材1m
3を確保するために、大気圧下で製造するエア系裏込め注入材は、約2.64倍の2.64m
3となる。
【0027】
一般的に、設定されるエア系裏込め注入材の空気量は、流動性の観点から設定され、通常10〜15%程度で使用されることが多い。
しかし、凍結地盤で用いる場合は、適切なエア系裏込め注入材の空気量は、試験によって求める。凍結地盤の低温度によって材料が膨張するため、気泡による吸収効果を期待するのであるが、気泡が少ないとその効果は少なく、多いと必要な強度が得られないからである。また、硬化材や助材などにも強度は影響を受けるからである。
【0028】
エア系裏込め注入材の適切な空気量を求める試験は、所定の配合のエア系裏込め注入材において、空気量を変化させたものを用意して、凍結地盤を想定した環境で養生した後、解凍してからの一軸圧縮強度を測定する。凍結後に解凍してから強度を測定するのは、凍結温度ではエア系裏込め注入材が凍結することで、裏込め注入材本来の固化による強度を上回ってしまい、裏込め注入材本来の固化による強度を測定できないからである。
【0029】
図1は、表1の配合において、空気量を5%、10%、15%、30%、45%と変化させた供試体を作成し、低温−10℃で三日間養生後に20℃で7日間養生したものの一軸圧縮強度を測定した結果である。また、裏込め注入材に必要な7日間養生の一軸圧縮強度を1.0N/mm
2としている。
【0030】
図1に示すように、一軸圧縮強度は、空気量が低い方から30%に向うにしたがって増加し、30%を超えると低下する。そして、空気量が30%および45%のものは、必要な一軸圧縮強度を超えている。空気量が5%、10%、15%のものは、ひび割れが目視においても確認され、これによって必要な一軸圧縮強度が得られなかったと考えられる。
また、30%のものは、必要な透水係数である1.0×10
-7cm/sec以下であり、裏込め注入材としての止水性もクリアされていた。
この結果から、注入時のエア系裏込め注入材の適切な空気量を30%と設定する。
【0031】
裏込め注入材の製造フローを
図2に示す。
本発明では、配合時の空気量を増加させるため、地上で気泡を製造してA液に混合し気泡A液として注入位置まで圧送すると、ポンプの負荷などの原因で効率的でなくなるので、気泡の製造は、トンネル坑内Kで行うことが好ましい。
地上部Gに配置されたA液プラント3およびB液プラント4から立坑Tを経由して各材料が圧送され、坑内Kに配置された気泡プラント5からの気泡がA液に混入され、さらにB液が混ぜられて、シールド掘進機1の後方のセグメント2から裏込め注入材としてテールボイドに注入される。
なお、A液に配合される安定剤は省略して説明する。
【0032】
A液プラント3は、硬化材サイロ30、助材サイロ31、貯水槽32、A液混合ミキサ33、A液アジテータ34、A液ポンプ35を有している。硬化材サイロ30から硬化材、助材サイロ31から助材、貯水槽32から水がそれぞれ計量され、A液混合ミキサ33で混合され、A液アジテータ34に供給された後、A液ポンプ35によって、A液供給管36を介して坑内Kまで圧送される。
B液プラント4は、B液タンク40、B液ポンプ41を有している。B液タンク40からB液がB液ポンプ41によって、B液供給管42を介して坑内Kまで圧送される。
【0033】
坑内Kに配置された気泡プラント5は、起泡溶液プラント6と空気供給プラント7を有している。気泡は、起泡溶液プラント6からの起泡溶液と空気供給プラント7からの空気とを混練することで製造される。起泡溶液は、起泡剤と水とを混練することで製造される。
図示しないが、A液プラント3、B液プラント4、気泡プラント5は、通信線によって接続されており、設定された配合による製造を実現できるように制御される。
起泡溶液プラント6は、起泡剤原液タンク60、起泡剤原液ポンプ61、起泡溶液ミキサ62、給水管63、清水槽64、清水ポンプ65、起泡溶液ポンプ66、起泡溶液流量計67、起泡溶液圧力計68、起泡溶液供給管69を有している。
【0034】
坑外から搬入された起泡剤が起泡剤原液タンク60に入れられ、起泡剤原液ポンプ61によって起泡溶液ミキサ62に搬送される。坑内から給水管63によって清水槽64に供給された水が、清水ポンプ65によって起泡溶液ミキサ62に搬送される。起泡溶液ミキサ62にて、起泡剤と水とが混練されて起泡溶液が作成される。そして、起泡溶液は起泡溶液ポンプ66によって起泡溶液供給管69を介して起泡溶液空気ラインミキサ51に圧送される。
【0035】
裏込め注入材は配管によって圧送され注入されるので、配管内の圧力は、当該裏込め材が注入される箇所の圧力と同等(厳密には配管抵抗、圧送するための予備圧力および損失などが考慮されてそれ以上)に加圧される。そのため、施工においては圧縮流体である空気を、配管内で圧縮しておき、起泡溶液と混合することになる。これを行うものが、空気供給プラント7である。空気供給プラント7は、裏込め注入材が注入される箇所の圧力を見込んで増量した空気を、裏込め注入材が注入される箇所の圧力に基づいて圧縮するものである。換言すると、裏込め注入材が注入される箇所の圧力を見込んで増量させた大気圧下の空気が空気供給プラント7に供給され、裏込め注入材が注入される箇所の圧力下で圧縮された所定の空気量の空気が空気供給プラント7から圧送される。
【0036】
空気供給プラント7は、コンプレッサー70、フィルタレギュレータ71、空気流量計72、エアコントロールバルブ73、空気圧力計74、空気供給管75を有している。コンプレッサー70は、大気圧下の配合時に増量させた空気に圧力をかけて圧縮する。その圧力は、裏込め注入材が注入される箇所の圧力より幾分高い圧力としている。これは、コンプレッサー70の後に配置されるフィルタレギュレータ71によって減圧され裏込め注入材が注入される箇所の圧力とされるからである。フィルタレギュレータ71では、除塵も行われる。裏込め注入材が注入される箇所の圧力下の圧縮された空気(予め設定された空気量となった空気)は、空気流量計72、エアコントロールバルブ73で流量が調整され空気供給管75を介して起泡溶液空気ラインミキサ51に搬送される。
【0037】
図3は、0.3MPaの水圧が作用している環境下において空気量30%のエア系裏込め注入材を製造する際における圧力と各材料の体積、すなわち表2から表1への体積変化を示したものである。なお、配管抵抗、圧送するための予備圧力および損失などは考慮していない。
非圧縮流体であるA液、起泡溶液およびB液は、裏込め注入材が注入される箇所の圧力まで加圧される配管内においても体積変化はないが、圧縮流体である空気については、加圧される空気供給プラント7の前後において体積が1092Lから273Lに変化している。
【0038】
裏込め注入材が注入される箇所の圧力は、シールド掘進機1の外周に取付けられ、シールド掘進機1の外周に作用する水圧を測定するシールド外周圧力計12によって計測され、気泡プラント制御装置53に送られる。気泡プラント制御装置53は、当該送られた圧力値をもとに増量する空気量を算出して制御する。増量する空気量を算出する際には、送られた圧力値に基づいて、配管抵抗、圧送するための予備圧力および損失などの諸条件も考慮して空気量が算出される。
【0039】
なお、本実施の形態では、裏込め注入材が注入される箇所の圧力を測定するために、シールド掘進機1の外周部に配置したシールド外周圧力計12を用いたが、通常設けられるシールド掘進機1のチャンバ内に設けられる圧力計を用いても構わない。この場合は、新たにシールド外周圧力計12を設ける必要はない。しかしながら、チャンバ内に設けられる圧力計の測定値は、掘削による影響によって変動が比較的大きくなるので、留意して選択する。また、
図2においては、シールド外周圧力計12はシールド外周の上部に設けられているが、スプリングライン上の側部などに設けられていてもよい。
【0040】
起泡溶液と空気は、起泡溶液空気ラインミキサ51によって発泡され気泡となり、気泡供給管52を介してA液気泡ラインミキサ8に供給される。
A液供給管36からのA液と気泡供給管52からの気泡は、A液気泡ラインミキサ8によって混練され、気泡A液となり気泡A液供給管9を介して気泡A液B液ラインミキサ10に供給される。
そして、気泡A液供給管9からの気泡A液とB液供給管42からのB液は、気泡A液B液ラインミキサ10によって混練され、エア系裏込め注入材となり、裏込め注入材供給管11により、セグメント2に設けられた開口からテールボイドに注入充填される。
【0041】
〔その他の変形例〕
本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0042】
本実施の形態では、シールド工法で説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、推進工法においても、推進管設置後に掘削された地山と推進管との間に注入される裏込め注入材の製造に適用しても良い。
また、トンネルだけでなく、他の高水圧下で工事における充填材の注入に適用してもよい。
【0043】
本実施の形態では、気泡プラントを坑内に配置したが、条件が許されるのであれば地上部に配置してもよい。
また、本実施の形態では、気泡を混入させるのに一回で混入させたが、複数に分けて混入させるようにしてもよい。例えば、地上部で標準的な10〜15%の空気量を混入させた後、坑内で残りの空気量を混入させるようにしてもよい。このようにすると、標準的なプラントを地上部に設け、増加する分だけのプラントを追加するようにすることができる。坑内において、複数に分けて気泡を混入させるようにしてもよい。
地上部と坑内、坑内の複数個所などというように、複数に分けて混入させることで、注入される環境下の圧力の変化に応じて、プラントを増減させることで効率的なプラントの計画を行うことも可能となる。
【0044】
本実施の形態では、二液型のエア系裏込め注入材を用いたが、一液型のエア系裏込め注入材に適用してもよい。