【実施例】
【0031】
[置換ピペラジン化合物(1)の合成1]
前述の合成ルートに従って、以下の手順による置換ピペラジン化合物(1)の合成を行った。下記の合成では、トランス型の置換ピペラジン化合物(trans-1)を得た。
【0032】
<2,5−ピラジンジカルボン酸(3)>
ピリジンと水の混合液(混合質量比:20/1)840mlに、54g(498mmol)の2,5−ジメチルピラジン(東京化成社製)、及び、224g(2.02mol)の二酸化セレンを加えて攪拌し、この混合物を48時間加熱還流した。反応液を常温まで冷却して濾過し、濾過残渣をピリジンと水の混合液(混合質量比:20/1)で洗浄して、濾液及び洗浄液を合わせて液体を留去し、固形物を得た。
【0033】
得られた固形物を、抽出溶媒として用いた2Mジメチルアミン水溶液に分散させ、濾過によって残留固形物を抽出液から除去した。抽出液から溶媒を留去することにより、71g(収率85%)の2,5−ピラジンジカルボン酸(3)を得た。
【0034】
<2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)>
9.35g(167mmol)の水酸化カリウム及び11g(65mmol)の2,5−ピラジンジカルボン酸(3)を水(200ml)に溶解した。この溶液に、反応基質に対して5mol%の割合で5%Pd/C触媒を添加し、50℃に加熱しながら水素(1MPa)を供給して、水素添加反応を18時間行った。原料が消費され定量的に反応が進行していることをガスクロマトグラフで確認した。反応液を濾過して触媒を除去することにより、生成物の水溶液を得た。この生成物は、
1H NMR測定で得られた測定結果が、参照文献(Witiak, D.T.; Nair, R.V.; Schmid, F.A., "Synthesis and antimetastatic properties of stereoisomeric tricyclic bis(dioxopiperazines) in the Lewis lung carcinoma model", J. Med. Chem. 1985, 28, 1228-1234)に記載される化学シフト値と一致したことによって、2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)であることを確認した。
【0035】
<2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)の異性体分離>
上述において生成物の水溶液として得た2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)の水溶液に、3MHCl水溶液を添加してpHを6.3に調整したところ、水溶液から白色の固形物が析出した。水溶液の濾過によって固形物を分離し、これを乾燥して7gの固形物を得た。得られた固形物の
1H NMR測定結果から、この固形物がトランス型の2,5−ピペラジンジカルボン酸(trans-4)である(収率63%)ことを前記参照文献によって確認した。
【0036】
一方、上述の濾過で得られた濾液に3MHCl水溶液を添加してpHを3.0に調整し、濾過後の析出物を濾液に溶解させた。この水溶液に2MKOH水溶液を添加してpHを4.3に調整したところ、水溶液から白色の固形物が析出した。この水溶液の濾過によって固形物を分離し、これを乾燥して4gの固形物を得た。
1H NMR測定結果から、この固形物がシス型の2,5−ピペラジンジカルボン酸(cis-4)である(収率37%)ことを前記参照文献によって確認した。
【0037】
<2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)の異性化>
前述の水素添加反応によって得られた、シス:トランス混合物(1:1)である2,5−ピペラジンジカルボン酸(4)の水溶液をオートクレーブに投入し、200℃で16時間加熱した。得られた水溶液に含まれる生成物は、トランス型の2,5−ピペラジンジカルボン酸であり、シス型からトランス型への異性化が進行したことが、
1H NMR測定により確認された。
【0038】
<trans-エステル化合物(trans-5):trans-2,5−ピペラジンジカルボン酸ジメチルエステル>
14g(78mmol)のtrans-2,5−ピペラジンジカルボン酸(trans-4)をメタノール(800ml)に溶解し、触媒として濃硫酸(80g、10eq)を加えて18時間加熱還流することによって脱水反応を進行させた。反応後、飽和炭酸ナトリウム水溶液及び塩化メチレンを加え、水相のpHを9.0に調整して有機相と水相とを分離した。有機相を取り出して塩化メチレン及び余剰のメタノールを留去して濃縮し、残留物にヘキサンを加えることによって、ヘキサンから析出物が生じた。この析出物を濾過によって分離して乾燥することにより、10.5gの生成物を得た。得られた生成物の
1H NMR測定を行って、上述の参照文献における測定値との一致により、生成物はtrans-2,5−ピペラジンジカルボン酸ジメチルエステルであることが確認された(収率69%)。
【0039】
<trans-ジアミド化合物(trans-7):trans-2,5−ピペラジンジカルボン酸ジ(2−ヒドロキシエチル)アミド>
1.3g(6.3mmol)のtrans-エステル化合物(trans-5)と1.3g(13mmol)のジエタノールアミン(6)との混合物を80℃で2時間加熱して縮合反応を進行させた。反応液は固化し、この固化物をメタノールで洗浄して残留ジエタノールアミンを固化物から除去し、デカンテーションして、粗生成物として固化物2.3gを得た。得られた固化物の
1H NMR測定によって、trans-2,5−ピペラジンジカルボン酸の2つのカルボキシ基がジエタノールアミンによってアミド化されたtrans-ジアミド化合物(trans-7)であることが確認された(収率96%)。
【0040】
(測定結果)
trans-ジアミド化合物(trans-7):白色固体、mp102.5−103.8℃(from AcOEt/Et
2O)
1H NMR(399.78MHz,D
2O):δ=3.76(dd,J=11.0, 3.0Hz,2H),3.66-3.38(m,14H),3.27(dt,J=13.6, 6.0Hz,2H)、3.04(dd,J=13.4,3.0Hz,2H),2.52(dd,J=13.4, 11.0Hz,2H),6H(-NH, -OH) was not observed
13C NMR(100.53MHz,D
2O):δ=173.85(2C),59.39(2C),59.37(2C),54.98(2C),50.84(2C),48.66(2C),46.61(2C)
HRMS(ESI
+)m/z:calcd for C
14H
29N
4O
6[M+H]
+ 349.2082, found 349.2082
【0041】
<trans-ジアミド化合物(trans-7)の水酸基保護>
上述の生成方法によって得られた5.0g(13mmol)のtrans-ジアミド化合物(7)をN,N−ジメチルホルムアミド(15ml)に溶解して0℃に冷却し、2.2g(7eq)の水素化ナトリウムを加えた。これに1.6g(7eq)の臭化ベンジルを滴下した後、3時間攪拌して反応を進行させた。この後、反応液に水を加えて攪拌することによって反応を止め、溶媒を減圧留去して残渣物を得た。この残渣物に酢酸エチルを加えて有機相とし、この有機相を水及び食塩水を用いて順次洗浄した。洗浄後の有機相を取り出し、乾燥剤で乾燥した後に溶媒を源圧留去して濃縮した。この濃縮物を、エーテルを用いて結晶化することにより、10.7gの白色の固体が得られた。得られた白色固体の
1H NMR測定を行った。その結果は、以下の通りであり、生成物は、trans-ジアミド化合物(7)の4つの水酸基及び2つの環状アミノ基において水素がベンジル基に置換された保護アミド化合物(trans-8)であることが確認された(収率88%)。
【0042】
(測定結果)
1H NMR(399.78MHz,CDCl
3):δ=7.33-7.17(m,30H),4.38(s,4H)、4.17(dd,J=16.0,12.0Hz,4H),3.78-3.38(m,20H),3.08(d,J=12.8Hz,2H),2.84(d,J=11.2Hz,2H),2.50(t,J=11.2Hz,2H)
【0043】
<保護アミド化合物(trans-8)の還元>
上述の生成方法によって得た9.5g(10mmol)の保護アミド化合物(trans-8)を脱水THF(100ml)に加えて溶解し、保護アミド化合物溶液を調製した。0.8g(2eq)のLiAlH
4のTHF溶液を調製して、これを攪拌しながら、保護アミド化合物溶液を徐々に滴下して混合し、14時間加熱還流して反応を進行させた。この後、反応液を室温に冷却し、攪拌しながら、水(0.8ml)、15%水酸化ナトリウム水溶液(0.8ml)及び水(2.4ml)を順次ゆっくりと反応液に滴下した。セライトを用いて反応液を吸引濾過して反応液から沈殿物を除去し、濾過残渣をTHFで良く洗浄した。濾液及び洗浄液を合わせてTHFを留去して、無色の油状生成物7.7gを得た。
【0044】
得られた油状生成物について、
1H NMR測定及び
13C NMR測定、高分解能質量分析装置(HRMS)による分子量測定を行った。その結果は、以下の通りであり、生成物は、置換ピペラジン化合物(trans-1)の水酸基及びアミノ基の水素がベンジル基に置換された保護アミン化合物(trans-9)であることが確認された(収率89%)。
【0045】
(測定結果)
1H NMR(399.78MHz,CDCl
3):δ=7.25-7.15(m,30H),4.32(s,8H)、4.09(d,J=13.6Hz,2H),3.33(m,8H),3.09(d,J=13.6Hz,2H),2.80(dd,J=14.4,12.4Hz,4H),2.57(t,J=6.2Hz,8H),2.37(m,4H),2.00(m,2H)
13C NMR(600.13MHz、CDCl
3):δ=139.4(2C),138.5(4C),128.9(4C),128.3(8C),128.1(4C),127.6(8C),127.4(4C),126.6(2C),73.0(8C),68.9(4C),58.2(2C),58.1(2C),55.0(4C)
HRMS(ESI
+)m/z:calcd for C
56H
69N
4O
4[M+H]
+ 861.5313, found 861.5307
【0046】
<置換ピペラジン化合物(trans-1):trans-2,5−ジ(N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル)ピペラジン>
上述の生成方法によって得た1.35g(1.6mmol)の保護アミン化合物(trans-9)を99%エタノール(30ml)に加えて溶解し、この溶液に、反応基質に対して5mol%の割合で5%Pd/C触媒を添加し、攪拌しながら室温で水素(1MPa)を供給して、水素添加反応を24時間行った。この反応液を、オートクレーブ中で80℃に加熱しながら、更に水素の供給を続けて、水素添加反応を24時間行った。ガスクロマトグラフによって、原料が消費され定量的に反応が進行していることを確認した。
【0047】
反応液を濾過して触媒を除去することによって得た濾液からエタノールを減圧留去し、得られた固形物にHCl水溶液及びベンゼンを加えて溶解した後に分液して水相を取り出した。この水相を、NaOH水溶液を用いて塩基性に調整した後に、酢酸エチルを用いて分液し、有機相を取り出して酢酸エチルを留去することによって、白色固体状の生成物0.5gを得た。これをエタノール中での再結晶によって精製した。
【0048】
精製した生成物について、
1H NMR測定及び
13C NMR測定、高分解能質量分析装置(HRMS)による分子量測定、元素分析、及び、粉末X線回折を行った。測定結果は、以下の通りであり(DSS:3−(トリメチルシリル)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム)、粉末X線回折における回折強度を示すチャートは
図2に示す。この結果から、生成物は、trans-2,5−ジ(N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル)ピペラジン(精製物は、その二水和物)であることが確認された(収率99%、融点112.2−114.0℃(from EtOH))。
【0049】
(測定結果)
1H NMR(399.78MHz,D
2O,内部標準:DSS):δ=3.63(m,8H),2.98(dd,J=16.0,2.8Hz,2H),2.68(m,10H),2.51(dd,J=16.0,4.4Hz,2H),2.43(dd,J=12.4,8,4Hz,2H),2.36(t,J=11.6Hz,2H)
13C NMR(600.13MHz、D
2O,内部標準:DSS):δ=61.7(4C),60.3(2C),59.0(4C),55.4(2C),51.2(2C)
HRMS(ESI
+)m/z:calcd for C
14H
33N
4O
4[M+H]
+ 321.2496, found 321.2497
元素分析:calcd for C
14H
32N
4O
4・2H
2O:C,47.17;H,10.18;N,15.72, found:C,47.42;H,10.16;N,15.58
【0050】
[置換ピペラジン化合物(1)の合成2]
下記の合成では、シス型の置換ピペラジン化合物(cis-1)を得た。
<cis-エステル化合物(cis-5)>
上述の生成方法によって得た175mg(1mmol)のcis-2,5−ピペラジンジカルボン酸(cis-4)をメタノール10mlに溶解し、触媒として濃硫酸(0.46ml)を加えて18時間加熱還流することによって脱水反応を進行させた。反応後、飽和炭酸ナトリウム水溶液及び塩化メチレンを加え、水相のpHを9.0に調整して有機相と水相とを分離した。有機相を取り出して塩化メチレン及び余剰のメタノールを留去して濃縮し、残留物にヘキサンを加えることによって、ヘキサンから析出物が生じた。この析出物を濾過により分離して乾燥することにより、123mgの生成物を得た。得られた生成物の
1H NMR測定により、生成物はcis-2,5−ピペラジンジカルボン酸ジメチルエステルであることが、上述の参照文献の測定値との一致によって確認された(収率61%)。
【0051】
<cis-ジアミド化合物(cis-7)及びその水酸基保護>
1.1g(5.2mmol)のcis-エステル化合物(cis-5)と1.1g(10mmol)のジエタノールアミンとの混合物を80℃で24時間加熱して縮合反応を進行させた。反応液を室温まで冷却して得られた固化物をアセトンで洗浄してデカンテーションによりアセトンを除去して、cis-ジアミド化合物(cis-7)の固形の粗生成物が得られた。得られた固形の粗生成物をそのまま使用して、以下の操作を行った。
【0052】
上述のcis-ジアミド化合物(cis-7)の粗生成物を、N,N−ジメチルホルムアミド(30ml)に溶解して0℃に冷却し、水素化ナトリウム(2.3g、10eq)を加えた。これに臭化ベンジル(6.2ml、7eq)を滴下した後、3時間攪拌して反応を進行させた。この後、反応液に水を加えて攪拌することによって反応を止め、溶媒を減圧留去して残渣物を得た。この残渣物に酢酸エチルを加えて有機相とし、この有機相を水及び食塩水を用いて順次洗浄した。洗浄後の有機相を取り出し、乾燥剤で乾燥した後に溶媒を減圧留去して濃縮することにより、無色の油状物が得られた。得られた油状物について、
1H NMR測定及び
13C NMR測定、高分解能質量分析装置(HRMS)による分子量測定を行った。その結果は、以下の通りであり、生成物は、cis-ジアミド化合物(cis-7)の4つの水酸基及び2つの環状アミノ基において水素がベンジル基に置換された保護アミド化合物(cis-8)であることが確認された(3.14g、cis-エステル化合物(cis-5)からの収率:68%)。
【0053】
(測定結果)
1H NMR(399.78MHz,CDCl
3):δ=7.33-7.17(m,30H),4.38(s,4H)、4.17(dd,J=16.0,12.0Hz,4H),3.78-3.38(m,20H),3.08(d,J=12.8Hz,2H),2.84(d,J=11.2Hz,2H),2.50(t,J=11.2Hz,2H)
13C NMR(100.53MHz、CDCl
3):δ=171.2(2C),138.4(2C),138.2(2C),137.9(2C),128.7(4C),128.3(4C),128.3(4C),128.2(4C),127.6(2C),127.5(4C),127.5(2C),127.5(4C),126.9(2C),73.1(2C),73.0(2C),73.0(2C),68.3(2C),58.7(2C),47.7(2C),47.7(2C),47.7(2C),46.2(2C)
HRMS(ESI
+)m/z:calcd for C
56H
65N
4O
6[M+H]
+ 889.4899, found 889.4894
【0054】
<保護アミド化合物(cis-8)の還元>
上述の生成方法によって得た307mg(0.345mmol)の保護アミド化合物(cis-8)を脱水THF(30ml)に加えて溶解し、保護アミド化合物溶液を調製した。LiAlH
4(59mg、4eq)を加え、18時間加熱還流した。原料の消失が確認され、反応液を室温に冷却し、攪拌しながら、水(60μl)、15%水酸化ナトリウム水溶液(210μl)及び水(60μl)を順次ゆっくりと反応液に滴下した。セライトを用いて反応液を吸引濾過して反応液から沈殿物を除去し、濾過残渣をTHFで良く洗浄した。濾液及び洗浄液を合わせてTHFを留去して、無色の油状生成物(238mg)を得た。
【0055】
得られた油状生成物について、
1H NMR測定及び
13C NMR測定、高分解能質量分析装置(HRMS)による分子量測定を行った。その結果は、以下の通りであり、生成物は、cis-2,5−ジ(N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル)ピペラジンの水酸基及びアミノ基の水素がベンジル基に置換された保護アミン化合物(cis-9)であることが確認された(収率80%)。
【0056】
(測定結果)
1H NMR(399.78MHz,CDCl
3):δ=7.25-7.15(m,30H),4.30(s,8H)、3.92(d,J=13.6Hz,2H),3.33(m,8H),2.71-2.40(m,20H)
13C NMR(600.13MHz、CDCl
3):δ=139.9(2C),138.5(4C),128.7(4C),128.3(8C),128.0(4C),127.5(8C),127.4(4C),126.6(2C),73.7(4C),73.0(4C),68.8(4C),58.5(2C),57.0(2C),54.9(2C),53.1(2C)
HRMS(ESI
+)m/z:calcd for C
56H
69N
4O
4[M+H]
+ 861.5313, found 861.5314
【0057】
<置換ピペラジン化合物(cis-1):cis-2,5−ジ(N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル)ピペラジン>
上述の生成方法によって得た231mg(0.269mmol)の保護アミン化合物(cis-9)を99%エタノール(15ml)に加えて溶解し、この溶液に、反応基質に対して5mol%の割合で5%Pd(OH)
2/C触媒を添加し、攪拌しながら室温で水素(1MPa)を供給して、水素添加反応を24時間行った。この反応液を、オートクレーブ中で80℃に加熱しながら、更に水素の供給を続けて、水素添加反応を24時間行った。ガスクロマトグラフによって、原料が消費され定量的に反応が進行していることを確認した。
【0058】
反応液を濾過して触媒を除去することによって得た濾液からエタノールを減圧留去し、得られた濃縮物にHCl水溶液及びベンゼンを加えて溶解した後に分液して水相を取り出した。この水相を、NaOH水溶液を用いて塩基性に調整した後に、酢酸エチルを用いて分液し、有機相を取り出して酢酸エチルを留去することによって、固体状の生成物(77mg)を得た(収率89%)。
【0059】
[置換ピペラジン化合物(1)の合成3]
下記の合成によって、シス型の置換ピペラジン化合物(cis-1)を得た。
<cis-ジアミド化合物(cis-7)及びその水酸基保護>
3.0g(15mmol)のcis-エステル化合物(cis-5)と3.3g(32mmol)のジエタノールアミンとの混合物を80℃で24時間加熱して縮合反応を進行させた。反応液を室温まで冷却して得られた固化物をアセトンで洗浄してデカンテーションによりアセトンを除去して、cis-ジアミド化合物(cis-7)の固形の粗生成物が得られた。得られた固形の粗生成物をそのまま使用して、以下の操作を行った。
【0060】
上述のcis-ジアミド化合物(cis-7)の粗生成物を、N,N−ジメチルホルムアミド(50ml)に溶解して0℃に冷却し、水素化ナトリウム(5.0g、10eq)を加えた。これに臭化ベンジル(18ml、10eq)を滴下した後、4時間攪拌して反応を進行させた。この後、反応液に水を加えて攪拌することによって反応を止め、溶媒を減圧留去して残渣物を得た。この残渣物に酢酸エチルを加えて有機相とし、この有機相を水及び食塩水を用いて順次洗浄した。洗浄後の有機相を取り出し、乾燥剤で乾燥した後に溶媒を減圧留去して濃縮することにより、無色の油状物が得られた。得られた油状物について、
1H NMR測定及び
13C NMR測定、高分解能質量分析装置(HRMS)による分子量測定を行った。その結果は、以下の通りであり、生成物は、cis-ジアミド化合物(cis-7)の4つの水酸基及び2つの環状アミノ基において水素がベンジル基に置換された保護アミド化合物(cis-8)であることが確認された(8.07g、cis-エステル化合物(cis-5)からの収率:60%)。
【0061】
(測定結果)
1H NMR(399.78MHz,CDCl
3):δ=7.28-7.17(m,30H),4.40(s,4H)、4.31(s,4H),3.87(d,J=14.0Hz,2H),3.75-3.37(m,22H),2.50-2.48(m,2H)
13C NMR(100.53MHz、CDCl
3):δ=171.2(2C),138.4(2C),138.2(2C),137.9(2C),128.7(4C),128.3(4C),128.3(4C),128.2(4C),127.6(2C),127.5(4C),127.5(2C),127.5(4C),126.9(2C),73.1(2C),73.0(2C),73.0(2C),68.3(2C),58.7(2C),47.7(2C),47.7(2C),47.7(2C),46.2(2C)
HRMS(ESI
+)m/z:calcd for C
56H
65N
4O
6[M+H]
+ 889.4899, found 889.4894
【0062】
<保護アミド化合物(cis-8)の還元>
上述の生成方法によって得た307mg(0.345mmol)の保護アミド化合物(cis-8)を脱水THF(30ml)に加えて溶解し、保護アミド化合物溶液を調製した。LiAlH
4(59mg、4eq)を加え、18時間加熱還流した。原料の消失が確認され、反応液を室温に冷却し、攪拌しながら、水(60μl)、15%水酸化ナトリウム水溶液(210μl)及び水(60μl)を順次ゆっくりと反応液に滴下した。セライトを用いて反応液を吸引濾過して反応液から沈殿物を除去し、濾過残渣をTHFで良く洗浄した。濾液及び洗浄液を合わせてTHFを留去して、無色の油状生成物(238mg)を得た。
【0063】
得られた油状生成物について、
1H NMR測定及び
13C NMR測定、高分解能質量分析装置(HRMS)による分子量測定を行った。その結果は、以下の通りであり、生成物は、cis-2,5−ジ(N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル)ピペラジンの水酸基及びアミノ基の水素がベンジル基に置換された保護アミン化合物(cis-9)であることが確認された(収率80%)。
【0064】
(測定結果)
1H NMR(399.78MHz,CDCl
3):δ=7.25-7.15(m,30H),4.30(s,8H)、3.92(d,J=13.6Hz,2H),3.30(m,8H),2.71-2.40(m,20H)
13C NMR(600.13MHz、CDCl
3):δ=139.9(2C),138.5(4C),128.7(4C),128.3(8C),128.0(4C),127.5(8C),127.4(4C),126.6(2C),73.7(4C),73.0(4C),68.8(4C),58.5(2C),57.0(2C),54.9(2C),53.1(2C)
HRMS(ESI
+)m/z:calcd for C
56H
69N
4O
4[M+H]
+ 861.5313, found 861.5314
【0065】
<置換ピペラジン化合物(cis-1):cis-2,5−ジ(N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノメチル)ピペラジン>
上述の生成方法によって得た1.04g(1.20mmol)の保護アミン化合物(cis-9)を99%エタノール(50ml)に加えて溶解し、この溶液に、反応基質に対して20mol%の割合で20%Pd(OH)
2/C触媒を添加し、攪拌しながら室温で水素(1MPa)を供給して、水素添加反応を24時間行った。この反応液を、オートクレーブ中で80℃に加熱しながら、更に水素の供給を続けて、水素添加反応を24時間行った。ガスクロマトグラフによって、原料が消費され定量的に反応が進行していることを確認した。
【0066】
反応液を濾過して触媒を除去することによって得た濾液からエタノールを減圧留去し、得られた濃縮物にエーテルを加えたところ、白色固体が析出した。この固体を濾取し、固体状の生成物(331mg)を得た。
【0067】
得られた生成物について、
1H NMR測定及び
13C NMR測定、高分解能質量分析装置(HRMS)による分子量測定、元素分析、及び、粉末X線回折を行った。測定結果は、以下の通りであり、粉末X線回折における回折強度を示すチャートは
図3に示す。この結果から、生成物は、置換ピペラジン化合物(cis-1)であることが確認された(収率86%、融点98.4−99.6℃)。
【0068】
(測定結果)
1H NMR(399.78MHz,D
2O,内部標準:DSS):δ=3.65(m,8H),2.89(m,4H)、2.70(m,12H)、2.50(dd,J=13.2, 4.4Hz,2H)
13C NMR(600.13MHz、D
2O,内部標準:DSS):δ=61.7(4C),58.8(4C),58.3(2C),53.2(2C),47.1(2C)
HRMS(ESI
+)m/z:calcd for C
14H
33N
4O
4[M+H]
+ 321.2496, found 321.2495
元素分析:calcd for C
14H
32N
4O
4:C,52.48;H,10.07;N,17.49, found:C,52.43;H,9.68;N,16.72
【0069】
[置換ピペラジン化合物(trans-1)の二酸化炭素に対する吸収・放散性能]
6.4g(20mmol)の置換ピペラジン化合物(trans-1)を吸収剤として水に溶解し、濃度が0.4mol/Lの水溶液50mlを調製し、これを吸収液として、以下のようにして二酸化炭素に対する吸収・放散性能を測定した。又、1.7gのピペラジン(20mmol)及び4.8gのMDEA(40mmol)を水に溶解して、ピペラジン濃度が0.4mol/L、MDEA濃度が0.8mol/Lの水溶液50mlを調製し、これを比較用の吸収液として、同様に吸収・放散性能を測定した。
【0070】
吸収液50mLに二酸化炭素を140mL/分の速度で吹き込んで、二酸化炭素との気液接触時間を90分間に設定して二酸化炭素の吸収処理を行った。この間、0〜60分においては吸収液の温度を50℃に維持し、60分以降は温度を80℃に上昇させて、吸収液の
13C−NMRスペクトルの測定によって、吸収液に含まれる二酸化炭素量の経時変化を調べた。得られた結果を、二酸化炭素のローディング(アミン当たりの二酸化炭素吸収量[mol-CO
2/mol-アミン])の変化として示すと、
図1のようになる。
図1から判るように、何れの吸収液においても、温度が50℃である0〜60分においては、吸収液は二酸化炭素を吸収し、温度が80℃に上昇した60分以降においては二酸化炭素を放散し、吸収液として使用可能であることが明らかである。
【0071】
比較用のピペラジン/MDEA吸収液においては、二酸化炭素を吸収するに従って、ピペラジン(PZ)が、PZ−モノカルバメートを経てPZ−ジカルバメートに変化し、これらを通じた二酸化炭素の溶解が、MDEAのプロトン受容体としての作用によって促進される。このような性質によって、比較用の吸収液における二酸化炭素のローディングが急速に増加した後に一定レベルに漸近することを考えると、置換ピペラジン化合物(trans-1)吸収液が、相対的に緩やかな増加が継続するローディング曲線を示すのは、ピペラジン環のアミノ基と置換基側のアミノ基との間での役割分担がさほど明確ではなく、協働性について互いの独立性を残していると考えられる。この点は、吸収液の溶媒組成、他の成分の共存によって改善し得ると考えられる。
【0072】
[置換ピペラジン化合物(cis-1)の二酸化炭素に対する吸収・放散性能]
上述のトランス型の置換ピペラジン化合物(trans-1)の吸収・放散性能の測定と同じ条件で、シス型の置換ピペラジン化合物(cis-1)の吸収・放散性能を測定した。測定結果を、二酸化炭素吸収量(吸収液の容積当たりの二酸化炭素吸収量[g/L])の経時変化、つまり、吸収液の二酸化炭素濃度の経時変化として、
図4のグラフに示す。
図4においては、トランス型の置換ピペラジン化合物(trans-1)による上述の結果も併せて記載する。
【0073】
図4によると、シス型の置換ピペラジン化合物(cis-1)による二酸化炭素の吸収量は、急速に増加した後に一定レベルに漸近し、シス型の置換ピペラジン化合物(cis-1)の方が、トランス型のものよりも、ピペラジン/MDEAの吸収液に近い吸収挙動を示す。このことから、シス型の置換ピペラジン化合物(cis-1)においては、ピペラジン環のアミノ基と置換基側のアミノ基との間での役割分担がなされ、置換基側のアミノ基が、MDEAと同様のプロトン受容体としての作用をすると考えられる。従って、シス型の置換ピペラジン化合物(cis-1)は、ピペラジン/MDEA混合系に基づく分子設計から期待される性能を示す化合物であると言え、これを吸収剤として吸収液を構成すると、良好な吸収速度で二酸化炭素を吸収し得る。