(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動体支持部に支持されて回転中心を中心に回転する駆動体と、従動体支持部に支持され、前記駆動体の回転面に被接触部が接触して生じる摩擦力によって一定点を中心とする回転トルクが与えられ、前記被接触部が前記回転面を摺動する従動体とを備える回転摺動機構において、
前記従動体は、前記一定点が前記回転中心に対して偏心して配置され、前記摩擦力によって前記従動体支持部または前記駆動体支持部に生じるねじれに抗して前記一定点周りまたは前記回転中心周りに発揮される復元力の復元方向と所定角度範囲内で交差する方向に回転駆動される前記駆動体に前記被接触部が接触し、前記復元力の復元方向に対して直交する回転駆動成分が前記駆動体から前記被接触部に与えられることを特徴とする回転摺動機構。
前記駆動体および前記従動体の前記被接触部は、一方が円盤状をして他方が円環状をしている、または、双方が円盤状もしくは円環状をしていることを特徴とする請求項1に記載の回転摺動機構。
前記駆動体は円盤状をし、前記従動体の前記被接触部は、前記一定点から離れた1箇所以上に局所的に位置して任意の形状をし、前記復元力の復元方向と所定角度範囲内で交差する方向に回転駆動される前記駆動体に接触することを特徴とする請求項1に記載の回転摺動機構。
前記所定角度範囲は、前記駆動体の回転駆動方向が前記復元力の復元方向と成す角度φの絶対値を│φ│としたときに不等式0<│φ│≦90°で示される範囲であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転摺動機構。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明による回転摺動機構を実施するための形態について、説明する。
【0018】
図1(a)および(b)は、本発明の一実施形態による回転摺動機構1の正面図および平面図である。
【0019】
回転摺動機構1は、回転駆動される円盤状をした駆動ディスク2と、駆動ディスク2に被接触部3aが接触する円盤状をした従動ディスク3と、従動ディスク3を支持する支持軸4とを備えて構成される。
図1(a)に示す正面図では、従動ディスク3は円環状をした被接触部3aだけが示されており、また、支持軸4の図示は省略されている。また、駆動ディスク2は図示しない駆動体支持軸に回転自在に支持されている。従動ディスク3は、被接触部3aが駆動ディスク2の回転面2aに垂直に支持軸4から所定の押圧力で押し付けられている。したがって、駆動ディスク2が回転駆動されると、支持軸4に固定支持されている従動ディスク3の被接触部3aと回転面2aとの間に摩擦力を生じながら、被接触部3aは回転面2aを摺動する。
【0020】
駆動ディスク2は、回転中心Aを中心に回転する駆動体を構成する。従動ディスク3は、回転面2aに被接触部3aが接触して生じる摩擦力によって一定点Bを中心とする回転トルクが与えられる従動体を構成する。支持軸4は、従動ディスク3に与えられるこの回転トルクによって生じるねじれに抗する復元力を、一定点Bの周りに発揮する。
【0021】
本実施形態では、従動ディスク3の一定点Bが駆動ディスク2の回転中心Aに対して距離εだけ偏心して配置されている。また、駆動ディスク2の回転駆動方向βは、支持軸4による復元力の復元方向αと所定角度φで交差し、従動ディスク3には、復元力の復元方向αに対して直交する駆動ディスク2の回転駆動成分Vsinφが与えられる。
【0022】
駆動ディスク2の回転駆動方向βが復元力の復元方向αと成す角度φ(ミスアライメント角度)の絶対値│φ│は、不等式0<│φ│≦90°で示される所定角度範囲内に設定され、駆動成分Vsinφが非零に設定される。この設定により、復元力の復元方向αに対して横滑りを起こす駆動ディスク2の回転駆動成分Vsinφが確保される。
【0023】
このような本実施形態の回転摺動機構1によれば、支持軸4が発揮する復元力の復元方向αに対して直交する回転駆動成分Vsinφが駆動ディスク2から従動ディスク3に与えられることで、従動ディスク3に作用する摩擦力Fの復元方向成分Fcosθと、支持軸4の発揮する復元力とが自律的に安定して平衡する状態になり、駆動ディスク2と従動ディスク3との間に生じる摩擦に摩擦振動が生じなくなる。
【0024】
ここで、θは、駆動ディスク2の回転駆動速度Vと、支持軸4から従動ディスク3に与えられる復元力の復元速度vとの相対速度Vrel が、復元力の復元方向αに対して成す角度である。復元力の復元速度vは、支持軸4のねじりに応じて被接触部3aがその円周方向に変位する変位量xの1階微分x’で表される。従動ディスク3に作用する摩擦力Fは、この相対速度Vrelを減じる方向に作用するので、摩擦力Fが復元力の復元方向αに対して成す角度もθとなる。
【0025】
すなわち、被接触部3aが円環状をした従動ディスク3の一定点Bが、円盤状をした駆動ディスク2の回転中心Aに対して偏心して配置され、駆動ディスク2の回転駆動方向βが復元力の復元方向αと所定角度範囲内で交差することで、復元力の復元方向αに対して直交する回転駆動成分Vsinφが駆動ディスク2から円環状をした被接触部3aに与えられる。本実施形態では、回転駆動方向βと復元方向αとの成すミスアライメント角度φが0<│φ│≦90°の範囲に設定されるので、復元力の復元方向αに対して直交する回転駆動成分Vsinφが非零になって従動ディスク3に与えられ、横滑りを起こすこの回転駆動成分Vsinφに起因して、摩擦振動に対する減衰作用が発現される。このため、円環状をした被接触部3aに作用する摩擦力Fの復元方向成分Fcosθと、支持軸4の発揮する復元力とが自律的に安定して平衡する状態になり、円盤状をした駆動ディスク2と円環状をした被接触部3aとの間に生じる摩擦に摩擦振動が生じなくなる。
【0026】
したがって、本実施形態の回転摺動機構1によれば、特許文献1に開示された従来の回転摺動機構における駆動機構や制動制御手段などの摩擦振動を抑制させるための特別の構成要素を用いることなく、駆動ディスク2と従動ディスク3との間における相対位置関係を適切に設定するだけで、摩擦振動を抑制することができる。このため、摩擦振動を抑制することのできる回転摺動機構1を極めて簡単な構成で安価に提供することが可能になる。
【0027】
なお、上記実施形態による回転摺動機構1では、駆動ディスク2が円盤状をし、従動ディスク3の被接触部3aが円環状をしている場合について、説明した。しかし、駆動ディスク2および従動ディスク3の被接触部3aは、一方が円盤状をして他方が円環状をしていても、または、双方が円盤状もしくは円環状をしていてもよい。つまり、駆動ディスク2が円環状、被接触部3aが円盤状をしていても、また、駆動ディスク2および被接触部3aの双方が円盤状をしていても、また、駆動ディスク2および被接触部3aの双方が円環状をしていても、構わない。
【0028】
本構成によれば、被接触部3aが円環状または円盤状をした従動ディスク3の一定点Bが、円盤状または円環状をした駆動ディスク2の回転中心Aに対して偏心して配置され、駆動ディスク2の回転駆動方向βが復元力の復元方向αと所定角度範囲内で交差することで、復元力の復元方向αに対して直交する回転駆動成分Vsinφが駆動ディスク2から従動ディスク3の被接触部3aに与えられる。このため、従動ディスク3の被接触部3aに作用する摩擦力Fの復元方向成分Fcosθと、支持軸4の発揮する復元力とが自律的に安定して平衡する状態になり、円盤状または円環状をした駆動ディスク2と円環状または円盤状をした被接触部3aとの間に生じる摩擦に摩擦振動が生じなくなる。
【0029】
図2(a)および(b)は、本実施形態の回転摺動機構1の原理を説明するための平面図および側面図である。同図は、従動体の球5と駆動体の平板6との間の滑り摩擦を模式的に表している。以下に述べる原理は、球5を本実施形態の従動ディスク3、平板6を駆動ディスク2に当てはめて、本実施形態の回転摺動機構1の原理に適用することができる。
【0030】
静止した壁7に左端が固定された剛性kのばね8があり、その右端に質量mの球5が取り付けられている。球5の運動はばね8のたわみ方向(x方向)の並進のみが許されている。また、平板6は垂直荷重Wで球5と接触し、駆動速度Vでx方向とミスアライメント角度φを成して直動している。ばね8が自然長のときの球5の位置を原点0として、時刻tにおける球5の位置をx(t)とすると、球5の運動速度はtに関する微分(’)を用いてx’と表せる。平板6の駆動速度Vと球5の運動速度x’との相対速度Vrelがx方向となす角度をθとすると、球5に作用する摩擦力Fは相対速度Vrelを減じる方向に作用するので、摩擦力Fがx方向と成す角度もθとなる。ミスアライメント角度φ≠0のとき、相対速度Vrelは非零な側方滑り成分Vsinφを持ち、また、運動速度x’の変化により摩擦力Fの向きが変化する。
【0031】
球5に作用する摩擦力の大きさを相対速度Vrelの関数F=F(Vrel)で表すと、球5の運動方程式は次の式(1)で与えられる。
mx’’+kx=F(Vrel)・cosθ …(1)
【0032】
ここで、相対速度Vrelと角度θは幾何学的に式(2)、(3)で定まる。
Vrel=(V
2−2vx’・cosφ+x’
2)
1/2 …(2)
cosθ=(Vcosφ−x’)/Vrel …(3)
【0033】
また、ミスアライメント角度φ≠0のとき、球5に作用する摩擦力は動摩擦力に限られるので、F(Vrel)は動摩擦係数μ(Vrel)を用いて次の式(4)で与えられる。
F(Vrel)=μ(Vrel)・W …(4)
【0034】
球5に作用する摩擦力Fのx成分Fcosθとばね8の復元力kxが釣り合うとき、x’=0を考慮して得られる関係Vrel=V、θ=φから、平衡点x
eqは次の式(5)で与えられる。
x
eq=F(V)・cosφ/k …(5)
【0035】
この平衡点x
eqの安定性を検討するために平衡点x
eqからの擾乱x
〜 を次の式(6)で与え、
x=x
eq+x
〜 …(6)
式(6)を式(1)〜(3)に代入し、(x
〜)’/Vを微少量とみなして線形化すると、次の式(7)が得られる。
m(x
〜)’’+(c
1+c
2)(x
〜)’+kx
〜=0 …(7)
【0036】
ここで、左辺第2項の(x
〜)’の係数c
1,c
2は次の式(8),(9)とした。
c
1=μ’(V)・W・cos
2φ …(8)
c
2=(μ(V)・W/V)・sin
2φ …(9)
【0037】
式(8)のμ’(V)は、Vrel=Vにおける関数μ=μ(Vrel)の傾きを意味する。係数c
1は、摩擦係数の相対速度依存性により発現する粘性減衰作用を表し、係数c
2は、非零なミスアライメント角度φ(側方滑り成分Vsinφ)を与えることにより発現する粘性減衰作用を表す。
【0038】
式(7)は2階の線形常微分方程式なので、平衡点x
eqの安定性は(x
〜)’の係数の正負で決まる。すなわち、次の式(10)
c
1+c
2>0 …(10)
が成立するとき、平衡点x
eqは安定となる。式(8)〜(10)を整理すると、平衡点x
eqの安定条件として、最終的に次の式(11)の不等式が得られる。
tan
2φ>−μ’(V)・V/μ(V) …(11)
【0039】
μ’(V)>0のときは式(11)は任意のφに対して成り立つが、μ’(V)<0のとき、c
1<0(負減衰)が平衡点x
eqを不安定化するが、次の式(12)
φ>φc=tan
−1(−μ’(V)・V/μ(V))
−1/2 …(12)
を満たすミスアライメント角度φを与えると、c
2>0(正減衰)の効果がc
1<0の効果を上回り、平衡点x
eqは安定となる。このときは、平衡点x
eqの近傍で摩擦振動は発生せず、なめらかな滑りの中で摩擦力Fcosθと復元力kxとが釣り合う。すなわち、ミスアライメント角度φを不等式φc<φ≦90°で示される範囲に設定すると、摩擦振動は最大限に抑制されて発生しなくなる。
【0040】
図3(a)および(b)は、本実施形態の回転摺動機構1と比較される回転摺動機構11の正面図および平面図である。なお、
図3において
図1と同一または相当する部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0041】
回転摺動機構11は、従動ディスク3の一定点Bが駆動ディスク2の回転中心Aに一致して、本実施形態の回転摺動機構1のように偏心して配置されていない点だけが、本実施形態の回転摺動機構1と相違する。その他の構成は本実施形態の回転摺動機構1と同様である。
【0042】
図4は、回転摺動機構の制動性能を測定する実験装置21の概略の側面図である。この実験装置21を用いて、
図1に示す本実施形態の回転摺動機構1と
図3に示す回転摺動機構11との制動性能の比較実験を行った。
【0043】
実験装置21は、駆動ディスク2がフライホイール22に連結されて構成され、ハンドル23を手動で回転することで、フライホイール22が回転する。フライホイール22の回転速度は図示しないデジタルタコメータによって計測され、フライホイール22の回転に連動して、駆動ディスク2が回転駆動される。従動ディスク3は移動支持台24に取り付けられた支持軸4によって支持固定されている。移動支持台24はリニアガイド25上に固定されており、リニアガイド25は支持軸4の軸心方向(図の左右方向)に移動自在に、偏心スタンド26に取り付けられている。偏心スタンド26は支持軸4の軸心方向に直交する方向(図の紙面に垂直な方向)に移動自在に構成され、偏心スタンド26がこの方向に移動されることで、従動ディスク3の一定点Bの駆動ディスク2の回転中心Aに対する偏心距離εの大きさが調節される。
【0044】
この偏心スタンド26に固定された固定支持台27にはジャッキ28が設けられており、ジャッキ28に設けられたコイルスプリング29によって移動支持台24は図の左方に付勢される。この付勢によって従動ディスク3の被接触部3aは駆動ディスク2の回転面2aに所定の押圧力で押し付けられる。この押圧力は、支持軸4に同軸に固定支持台27に取り付けられたロードセル30によって計測される。また、従動ディスク3が支持軸4にねじり与えることで、支持軸4が発揮するねじりに抗する復元力は、従動ディスク3のねじり回転加速度を図示しない加速度計で測定することで、計測した。
【0045】
比較実験は、フライホイール22を手動で0〜240[rpm]の回転速度まで回転させ、その後、ジャッキ28により、従動ディスク3の被接触部3aを駆動ディスク2の回転面2aに15[N]の押圧力で押し付けて、行った。また、駆動ディスク2は直径180[mm]に形成し、従動ディスク3の円環状被接触部3aは代表直径80[mm]、半径方向の幅8[mm]のベークライト材で形成した。また、支持軸4の直径は5[mm]にした。
【0046】
図5(a),(c)は、デジタルタコメータで測定した駆動ディスク2の回転速度N[rpm]と経過時間t[s]との関係を示すグラフであり、グラフの縦軸が回転速度N[rpm]、横軸が経過時間t[s]である。また、
図5(b),(d)は、従動ディスク3のねじり回転加速度a[m/s
2]と経過時間t[s]との関係を示すグラフであり、グラフの縦軸がねじり回転加速度a[m/s
2]、横軸が経過時間t[s]である。
【0047】
図5(a),(b)は、偏心距離ε=0[mm]の比較対象とされる回転摺動機構11についての実験結果、
図5(c),(d)は、偏心距離ε=10[mm]の本実施形態による回転摺動機構1についての実験結果を示す。
【0048】
比較対象の回転摺動機構11では、
図5(a)に示すように、駆動ディスク2の回転が止まる。また、
図5(b)に示すように、従動ディスク3のねじり回転加速度aは、駆動ディスク2の回転当初に正側および負側に大きく振動し、その後、駆動ディスク2の回転が止まるまで振動が継続している。このことから、従動ディスク3にはねじり振動が生じ、駆動ディスク2と従動ディスク3との摩擦に摩擦振動が発生していることが理解される。一方、本実施形態の回転摺動機構1では、
図5(c)に示すように、駆動ディスク2の回転が止まる。また、
図5(d)に示すように、従動ディスク3のねじり回転加速度aは、駆動ディスク2の回転当初に小さく振動するが、駆動ディスク2の回転が止まる前にはほぼ消滅している。このことから、従動ディスク3にはねじり振動がほとんど生じず、駆動ディスク2と従動ディスク3との摩擦に摩擦振動はほとんど発生していないことが理解される。この結果、本実施形態の回転摺動機構1によれば、上述の作用効果が奏されることを確認することができる。
【0049】
図6(a)は、本実施形態による回転摺動機構1の変形例に用いられる従動ディスク3Aの正面図、
図6(b)は、同図(a)に示す従動ディスク3Aの比較に用いられる従動ディスク3Bの正面図である。なお、
図6において
図1と同一または相当する部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0050】
本変形例による回転摺動機構1およびその比較に用いられる回転摺動機構は、従動ディスク3Aおよび3Bの構成が相違するだけで、その他の構成は上記実施形態による回転摺動機構1と同様である。
【0051】
図6(a)に示す従動ディスク3Aの各被接触部3
b1,3
b2は、一定点Bから離れた2箇所に局所的に位置して、一定点Bを中心とする円弧状をしており、x軸方向とそれぞれγの角度を成している。各被接触部3
b1,3
b2では、駆動ディスク2の回転駆動方向βが、復元力の復元方向αと所定のミスアライメント角度φ
1,φ
2で交差する。これら角度φ
1,φ
2の絶対値│φ
1│,│φ
2│も、上記の実施形態と同様に、不等式0<│φ
1│≦90°,0<│φ
2│≦90°で示される所定角度範囲内に設定され、横滑りを起こす回転駆動成分Vsinφ
1,Vsinφ
2が非零に設定される。
【0052】
図6(b)に示す従動ディスク3Bの各被接触部3
c1,3
c2は、一定点Bを中心とする円弧状をしているが、x軸方向と成す角度γが0になっている。各被接触部3
c1,3
c2では、駆動ディスク2の回転駆動方向βが復元力の復元方向αと一致し、ミスアライメント角度φ
1,φ
2が0となって横滑りを起こす回転駆動成分Vsinφ
1,Vsinφ
2が無い。
【0053】
図6(a)に示す従動ディスク3Aを用いた変形例による回転摺動機構1によれば、被接触部3
b1,3
b2が円弧状をした従動ディスク3Aの一定点Bが、円盤状をした駆動ディスク2の回転中心Aに対して距離εだけ偏心して配置される。そして、駆動ディスク2の回転駆動方向βが、支持部4による復元力の復元方向αと所定角度範囲内で交差し、復元力の復元方向αに対して直交する回転駆動成分Vsinφ
1,Vsinφ
2が駆動ディスク2から円弧状をした被接触部3
b1,3
b2に与えられる。よって、円弧状をした被接触部3
b1,3
b2に作用する摩擦力Fの復元方向成分Fcosθと、支持軸4の発揮する復元力とが自律的に安定して平衡する状態になる。したがって、円盤状をした駆動ディスク2と円弧状をした被接触部3
b1,3
b2との間に生じる摩擦に摩擦振動が生じなくなる。このため、本変形例による回転摺動機構1によっても、上記実施形態による回転摺動機構1と同様な作用効果が奏される。
【0054】
図6(a)に示す従動ディスク3Aを用いた本変形例による回転摺動機構1についても、
図6(b)に示す従動ディスク3Bを用いた回転摺動機構を比較対象として、上記実施形態における比較実験と同様な比較実験を行った。この実験における実験条件は、本変形例による回転摺動機構1では、x軸方向とγ=60°の角度をそれぞれ成す円弧状をした被接触部3
b1,3
b2を従動ディスク3Aが有し、比較対象の回転摺動機構では、x軸方向とγ=0°の角度をそれぞれ成す円弧状をした被接触部3
c1,3
c2を従動ディスク3Bが有する点だけが、上記実施形態における比較実験と異なる。各被接触部3
b1,3
b2および3
c1,3
c2は、上記実施形態における回転摺動機構1に用いられる従動ディスク3の被接触部3aを形成する、代表直径80[mm]で半径方向の幅8[mm]の円環状ベークライト材を各円弧状に形成したものである。
【0055】
なお、
図6(a)に示す従動ディスク3Aにおいて、偏心距離ε=10[mm]のときに、駆動ディスク2の回転駆動方向βが復元力の復元方向αと成すミスアライメント角度φ
1,φ
2は、それぞれ13°,−10°である。
【0056】
図7は比較対象とされる回転摺動機構の比較実験結果、
図8は本変形例による回転摺動機構1の比較実験結果を示すグラフである。これら各図の分図(a),(b)は、偏心距離ε=0[mm]の実験結果、分図(c),(d)は偏心距離ε=10[mm]の実験結果を示す。また、分図(a),(c)は、デジタルタコメータで測定した駆動ディスク2の回転速度N[rpm]と経過時間t[s]との関係を示すグラフであり、グラフの縦軸が回転速度N[rpm]、横軸が経過時間t[s]である。また、分図(b),(d)は、従動ディスク3A,3Bのねじり回転加速度a[m/s
2]と経過時間t[s]との関係を示すグラフであり、グラフの縦軸がねじり回転加速度a[m/s
2]、横軸が経過時間t[s]である。
【0057】
比較対象の回転摺動機構では、偏心距離ε=0,10[mm]のときに、駆動ディスク2の回転は、
図7(a),(c)に示すようにそれぞれ止まる。また、従動ディスク3Bのねじり回転加速度aは、
図7(b),(d)に示すように、駆動ディスク2の回転当初に正側および負側に大きく振動し、その後、駆動ディスク2の回転が止まるまで振動が継続している。このことから、従動ディスク3Bにはねじり振動が生じ、駆動ディスク2と従動ディスク3Bとの摩擦に摩擦振動が発生していることが理解される。
【0058】
一方、本変形例による回転摺動機構1では、偏心距離ε=0[mm]のときには、駆動ディスク2の回転は、
図8(a)に示すように止まる。また、従動ディスク3Aのねじり回転加速度aは、
図8(b)に示すように、駆動ディスク2の回転当初に正側および負側に大きく振動し、その後、駆動ディスク2の回転が止まるまで振動が継続している。しかし、偏心距離ε=10[mm]のときには、駆動ディスク2の回転は、
図8(c)に示すように止まる。また、従動ディスク3Aのねじり回転加速度aは、
図8(d)に示すように、駆動ディスク2の回転当初から振動が小さく、駆動ディスク2の回転が止まる際には振動がほぼ消滅している。このことから、本変形例による回転摺動機構1では、偏心距離ε=10[mm]のときには、従動ディスク3Aにはねじり振動がほとんど生じず、駆動ディスク2と従動ディスク3Aとの摩擦に摩擦振動はほとんど発生しないことが理解される。この結果、本変形例の回転摺動機構1によれば、上記実施形態による回転摺動機構1と同様な前述の作用効果が奏されることを確認することができる。
【0059】
上記実施形態および変形例による回転摺動機構1では、従動ディスク3,3Aの被接触部3a、3
b1,3
b2における任意の点Pにおける駆動ディスク2の回転駆動速度V、従動ディスク3,3Aの復元速度v、および摩擦力Fは、
図9に示すように表される。なお、同図において
図1および
図6と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。ここで、駆動ディスク2の回転中心Aを中心とする回転半径をr
1、従動ディスク3,3Aの一定点Bを中心とする回転半径をr
2、点Pが回転中心Aの周りにx軸と成す角度をγ
1、点Pが一定点Bの周りにx軸と成す角度をγ
2とすると、各回転半径r
1,r
2は次の式(13),(14)に表される。
r
1=r
2・{(sinγ
2)
2+(cosγ
2+ε/r
2)
2}
1/2 …(13)
r
2=const.(一定) …(14)
【0060】
また、駆動ディスク2の回転駆動速度Vは、駆動ディスク2の角速度をΩ
1(=const.)とすると、次の式(15)に表される。
V=r
1・Ω
1 …(15)
【0061】
従動ディスク3,3Aの復元速度vは、従動ディスク3,3Aの一定点Bの周りの回転角度をs
2とし、その1階微分をs
2’すると、次の式(16)に表される。
v=r
2・s
2’ …(16)
【0062】
また、回転駆動速度Vと復元速度vとの相対速度Vrelは、次の式(17)に表される。
Vrel=(V
2−2V・v・cosφ+v
2)
1/2 …(17)
【0063】
また、ミスアライメント角度φは次の式(18)に表され、点Pが回転中心Aおよび一定点Bの周りにそれぞれx軸と成す角度γ
1およびγ
2に依存する。
φ=γ
2−γ
1 …(18)
ここで、γ
1のtanは次の式(19)に表される。
tanγ
1=sinγ
2/(cosγ
2+ε/r
2) …(19)
【0064】
また、相対速度Vrelおよび摩擦力Fが復元方向αと成す角度θのcosは、次の式(20)に表される。
cosθ=(V・cosφ−v)/Vrel …(20)
【0065】
なお、上記変形例による回転摺動機構1では、従動ディスク3Aの各被接触部3
b1,3
b2が一定点Bを中心とする円弧状をして、2箇所に設けられている場合について、説明した。しかし、被接触部3
b1,3
b2の形状およびその個数はこれに限定されるものではなく、任意の形状をしていて、一定点Bから離れた1箇所以上に局所的に位置すればよい。この場合においても、上記の実施形態と同様な作用効果が奏される。
【0066】
また、上記実施形態および変形例による回転摺動機構1では、従動ディスク3,3Aを支持軸4が支持する場合について、説明した。しかし、従動ディスク3,3Aを支持するものは支持軸4に限定されることはない。例えば、従動ディスク3,3Aの円周側面に沿って設けられるゴム等からなるOリングや、従動ディスク3,3Aの背面に設けられるゴム等からなる円板などを、従動ディスク3,3Aを支持する従動体支持部とすることができる。この場合においても、上記の実施形態と同様な作用効果が奏される。なお、Oリングを従動体支持部とした場合、Oリングの中心が一定点Bとなり、従動ディスク3,3AにはOリングの中心を中心とする復元力がOリングによって発揮される。
【0067】
また、上記実施形態および変形例による回転摺動機構1では、従動ディスク3,3Aを支持する支持軸4が柔構造を有し、従動ディスク3,3Aに与えられる回転トルクによって支持軸4に生じるねじれに抗して、一定点Bの周りに復元力が発揮される場合について、説明した。しかし、駆動ディスク2を支持する支持軸等の駆動体支持部が柔構造を有し、従動ディスク3,3Aに与えられる回転トルクによってこの駆動体支持部に生じるねじれに抗して、回転中心Aの周りに復元力が発揮される場合においても、上記の実施形態と同様な作用効果が奏される。つまり、駆動ディスク2の回転駆動方向βが、駆動ディスク2を支持する駆動体支持部による復元力の復元方向αと所定角度範囲内で交差し、この復元力の復元方向αに対して直交する回転駆動成分Vsinφ,Vsinφ
1,Vsinφ
2が駆動ディスク2から被接触部3a,3
b1,3
b2に与えられることで、被接触部3a,3
b1,3
b2に作用する摩擦力Fの復元方向成分Fcosθと、駆動体支持部の発揮する復元力とが自律的に安定して平衡する状態になり、駆動ディスク2と被接触部3a,3
b1,3
b2との間に生じる摩擦に摩擦振動が生じなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
上述した実施形態および変形例による回転摺動機構1は、回転摺動機構全般に対して応用が可能であり、従動ディスク3,3Aを上述のように支持軸4で固定する場合には、自動車におけるブレーキなどの制動装置やメカニカルシールなどとして、利用することができる。また、支持軸4を固定せずに従動ディスク3,3Aと共に連動して回転させる場合には、動力伝達装置などに利用することができる。
【0069】
図10は、変形例による回転摺動機構1の一適用例を示し、変形例による回転摺動機構1をブレーキキャリパに適用する場合を想定した回転摺動機構1Aの力関係を示す図である。なお、同図において
図1および
図6と同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は省略する。
【0070】
この適用例における従動体3Cは、駆動ディスク2と一部が重なるように配置された円盤状に描かれているが、一定点Bと被接触部3dとを含む形状であればよく、二点鎖線で示す矩形状をした従動体3C’であってもよい。この場合、駆動ディスク2が自動車のシャフトに設けられるブレーキディスク、従動体3C’がブレーキキャリパに相当する。このような構成の回転摺動機構1Aにおいても、駆動ディスク2の回転駆動方向βが、支持軸4による復元力の復元方向αと所定角度範囲内で交差し、この復元力の復元方向αに対して直交する回転駆動成分Vsinφが駆動ディスク2から被接触部3dに与えられることで、被接触部3dに作用する摩擦力Fの復元方向成分Fcosθと、支持軸4の発揮する復元力とが自律的に安定して平衡する状態になり、駆動ディスク2と被接触部3
cとの間に生じる摩擦に摩擦振動が生じなくなる。
【0071】
図11は、
図10に示す力関係にある回転摺動機構1Aを有するCMP(Chemical Mechanical Polishing)装置41の構造を示す斜視図である。
【0072】
CMP装置41では、デバイスウエハがトップリング42に保持され、ターンテーブル43上に貼り付けられたパッドにデバイスウエハが押し付けられて研磨される。トップリング42はスプラインシャフト44を介して加圧と回転が付与される。スプラインシャフト44はスイングアーム45によってスイングシャフト46を中心に揺動される。デバイスウエハの研磨中においてはスイングシャフト46が回転しないように揺動モータが電気的にロックされる。
【0073】
この場合、ターンテーブル43は駆動ディスク2に相当し、トップリング42に保持されるデバイスウエハは被接触部3dに相当する。また、トップリング42,スプラインシャフト44およびスイングアーム45は従動体3C’、スイングシャフト46は支持軸4、スイングシャフト46の軸心は一定点Bに相当する。ただし、
図10に示す回転摺動機構1Aでは被接触部3dが回転していなかったが、本例では被接触部3dであるデバイスウエハは回転する。
【0074】
被接触部3dであるデバイスウエハが回転する本例においても、駆動ディスク2であるターンテーブル43の回転駆動方向βが、支持軸4であるスイングシャフト46による復元力の復元方向αと所定角度範囲内で交差し、この復元力の復元方向αに対して直交する回転駆動成分Vsinφが駆動ディスク2から被接触部3dに与えられることで、ターンテーブル43とデバイスウエハとの間に生じる摩擦に摩擦振動が生じなくなる。