(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対向装置との間で送受信する光信号と電気信号の高速通信信号との間の変換を行う高速通信用の光モジュールと、該光モジュール用の高速通信信号を出力する光帯域信号部と、低速送信信号および低速送信クロックを生成し出力する信号処理部とを有し、
前記低速送信クロックの変化点の検出がされない間は、前記光帯域信号部が出力する前記高速通信信号を前記光モジュールに対して出力し、一方、前記低速送信クロックの変化点の検出をした場合は、前記低速送信クロックの変化点の検出時点から前記高速通信信号の1ビット幅に相当する時間をマスク時間とし、該マスク時間の間、前記光帯域信号部が出力する前記高速通信信号の信号成分をマスクし、前記信号処理部が出力する前記低速送信信号を前記光モジュールに対して出力する
ことを特徴とする低速光通信装置。
対向装置との間で送受信する光信号と電気信号の高速通信信号との間の変換を行う高速通信用の光モジュールと、該光モジュール用の高速通信信号を出力する光帯域信号部と、
低速送信信号および低速送信クロックを生成し出力する信号処理部とを有する低速光通信装置により低速光通信を行い、
前記低速送信クロックの変化点の検出がされない間は、前記光帯域信号部が出力する前記高速通信信号を前記光モジュールに対して出力し、一方、前記低速送信クロックの変化点の検出をした場合は、前記低速送信クロックの変化点の検出時点から前記高速通信信号の1ビット幅に相当する時間をマスク時間とし、該マスク時間の間、前記光帯域信号部が出力する前記高速通信信号の信号成分をマスクし、前記信号処理部が出力する前記低速送信信号を前記光モジュールに対して出力する
ことを特徴とする低速光通信方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による低速光通信装置および低速光通信方法の好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の各図面に付した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではないことは言うまでもない。
【0014】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、低速光通信装置における通信クロックの変化点のみに着目して、該変化点の情報を高速光通信の通信信号に重畳する方式を採用することを主要な特徴としている。而して、今後も高速化が進んでいく光モジュールの通信速度に左右されることなく、光モジュールを選択することが可能になり、また、低速光通信装置を開発するときの開発投資を抑制することができる。すなわち、既に運用されている低速光通信方式を用いた通信システムを再構築したり、新規に導入するときに、使用する光モジュールの選択の自由度を高めたり、既存の低速光通信方式の技術資産を活用したりすることを可能とし、低速光通信装置の開発を容易にすることができる。
【0015】
つまり、本発明は、光加入者線を用いた低速光通信装置の代替開発を行う場合に好適に適用される技術であって、入手がし易い高速通信用の光モジュールと既存の低速光通信装置の信号処理部との接続を容易に行い、かつ、高速通信用の光モジュールの送受信信号は、高速通信用の光モジュールの適応周波数を使って送受信を行うことを主要な特徴としている。そして、かかる状況下において、光モジュールの適応周波数からなる高速通信信号の列を、低速通信クロックの立ち上がりまたは立ち下がりの変化点に位置する高速通信信号の列の一部をマスクすることによって、低速通信クロックの立ち上がりまたは立ち下がりの変化点の位置を、光加入者線を介して対向装置に通知し、かつ、マスクするときの論理レベルを、信号処理部からの低速送信信号の論理レベルと同じにすることにより、低速通信信号を該対向装置に転送することを、主要な特徴としている。
【0016】
本発明の特徴をさらに説明すると、次の通りである。すなわち、本発明は、前述したように、光加入者線を通信路にする既存の低速光通信装置を代替開発するときなどに用いることを可能にする技術であり、現在、市場に多く流通する高速光通信用の光モジュールの使用帯域と既存の低速光通信装置に使われる光モジュールの使用帯域との相違を解決することによって、高速光通信用の光モジュールを使って既存と同等の低速光通信装置を開発することを実現している。
【0017】
すなわち、光加入者線の通信路においては、高速光通信用の光モジュールの使用帯域の周波数を使った高速通信信号にて送受信を行う。そして、高速通信信号の送信側においては、低速光通信装置において用いられる低速通信クロック変化点を検出し、検出した箇所における高速通信信号の論理レベルを低速通信信号の論理レベルに固定する。一方、高速通信信号の受信側においては、高速通信信号の論理レベルが低速通信信号の論理レベルに固定されている位置を検出し、検出した位置の信号の論理レベルを読み取ることにより、低速通信信号用の低速クロックと低速通信信号とを生成する。かくのごとき技術を採用することにより、既存の低速光通信装置の信号処理部等の論理回路を変更することなく、入手が容易な高速通信用の光モジュールを用いて、低速光通信装置を容易に開発することができる。
【0018】
(本発明の実施形態の構成例)
次に、本発明に係る低速光通信装置の実施形態における内部構成について、その一例を、
図1を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る低速光通信装置の内部構成の一例を示すブロック構成図である。本発明の一実施形態として
図1に示す低速光通信装置10は、光加入者線30を介して、対向装置20と接続されている。そして、低速光通信装置10は、内部に、光モジュール1、切替部2、光帯域信号部3、立ち上がり検出部4、共振回路5、信号有無検出部6、リタイミング部7、および、信号処理部8、を少なくとも含んで構成されている。ここで、光モジュール1は、高速光通信用のモジュールを用い、信号処理部8は、既存の信号処理部と同じ回路構成のものを用いる。
【0019】
図1の低速光通信装置10において、信号処理部8は、光加入者線30への低速送信信号を、低速送信クロックとともに生成して、出力し、光加入者線30からの低速受信信号、低速受信クロックを受け取る。すなわち、信号処理部8は、生成した低速送信信号を切替部2に対して出力し、生成した低速送信クロックを立ち上がり検出部4に対して出力する。そして、低速受信信号をリタイミング部7から受け取り、低速受信クロックを信号有無検出部6から受け取る。
【0020】
立ち上がり検出部4は、信号処理部8が生成して出力した低速送信クロックの立ち上がり部の検出を行い、その結果を、切替部2に対して出力する。なお、本実施形態においては、立ち上がり検出部4を用いるが、低速送信クロックの立ち下がり部を検出する立ち下がり検出部を採用するようにしても良い。つまり、低速送信クロックの立ち上がり部または立ち下がり部のいずれか一方の変化点を検出するものであれば良い。そして、低速送信クロックの変化点を検出した場合、該変化点を検出した時点から高速通信信号の1ビット幅に相当する時間をマスク時間として、該マスク時間の間、光帯域信号部3が出力する高速通信信号をマスクする信号を、切替部2に対して出力する。また、光帯域信号部3は、高速通信用の光モジュール1が使用することができる周波数帯域の高速通信信号(すなわち光帯域信号)を送信用の高速通信クロックとして生成して、切替部2に対して出力する。
【0021】
切替部2は、立ち上がり検出部4からの検出結果として低速送信クロックの立ち上がり部を検出していない場合には、光帯域信号部3が出力した高速通信信号(すなわち光帯域信号)を光モジュール1に対して出力し、立ち上がり検出部4からの検出結果として低速送信クロックの立ち上がり部を検出していた場合には、信号処理部8が生成した低速送信信号を光モジュール1に対して出力する。
【0022】
光モジュール1は、切替部2からの電気信号(光帯域信号部3が生成した高速通信信号または信号処理部8が生成した低速送信信号)を光信号に変換して、光加入者線30を介して対向装置20へ出力する。また、光モジュール1は、対向装置20から光加入者線30を介して入力されてきた光信号を受け取って、電気信号に変換して、受信信号として、共振回路5と信号有無検出部6とリタイミング部7とに対して出力する。
【0023】
共振回路5は、光モジュール1から入力された受信信号を基にして共振させ、該受信信号の抜けの部分の信号成分を生成して、光モジュール1の適用周波数の光帯域信号に該当する高速通信信号として追加補正して、信号有無検出部6に対して出力する。信号有無検出部6は、光モジュール1からの受信信号と共振回路5によって受信信号の抜けの部分の信号成分を追加補正された信号(高速通信信号)との差を、低速受信クロックとして検出して、検出した該低速受信クロックを信号処理部8とリタイミング部7とに対して出力する。すなわち、信号有無検出部6は、受信信号において高速通信信号の信号成分がマスクされている部分を、高速通信信号がマスクされて低速受信信号が挿入されている受信マスク時間として検出するとともに、該検出した時点を低速受信クロックとして抽出する。リタイミング部7は、信号有無検出部6からの低速受信クロックによって、光モジュール1から入力された受信信号をリタイミングすることにより、前記受信側マスク時間における受信信号の信号レベルを有する低速受信信号として生成して、信号処理部8に対して出力する。
【0024】
以上に説明したように、
図1に示した低速光通信装置10は、入手がし易い高速通信用の光モジュール1と既存の低速光通信装置の信号処理部との間の接続を容易に行うように構成されていて、高速通信信号で動作する光加入者線30を用いた低速光通信装置の代替開発を行うことを可能にしている。
【0025】
つまり、
図1に示した低速光通信装置10においては、高速通信用の光モジュール1の送受信信号は、高速通信用の光モジュール1の適応周波数を使って送受信を行う。そして、対向装置20側に対して信号処理部8からの低速送信信号を送信する際に、対向装置20に送信する高速通信信号(すなわち光モジュール1の適応周波数に該当する高速通信信号の列)の一部の高速通信クロック成分の信号レベルの変化をマスクして(すなわち、低速通信用の低速送信クロックの立ち上がり部に位置する高速通信信号の列の一部をマスクして)、その部分に、信号処理部8からの低速送信信号を挿入する(すなわち、信号処理部8からの低速送信信号が示すローレベルまたはハイレベルと同一レベルの信号レベルを継続した状態にする)ことによって、低速送信クロックの立ち上がり位置を、光加入者線30を介して対向装置20に対して通知する。かつ、マスクするときの論理レベルを、信号処理部8からの低速送信信号の論理レベルと同じにすることにより、低速送信信号そのものについても対向装置20に対して転送する。
【0026】
また、対向装置20からの光信号を受信した光モジュール1は、前述したように、電気信号に変換して、光モジュール1の適応周波数に該当する高速通信信号列を受信信号として共振回路5、信号有無検出部6およびリタイミング部7に対して出力する。信号有無検出部6は、受け取った受信信号すなわち高速通信信号列の中から、高速通信信号無しの部分(すなわち光モジュール1の適応数周波数に該当する高速通信クロック成分の信号レベルの変化がなく、ローレベルまたはハイレベルの同一レベルの信号が、前記受信側マスク時間の間継続している部分)を検出することによって、受信信号すなわち高速通信信号列の中から低速受信クロックと低速受信信号とを抽出して、低速受信信号を処理する信号処理部8に対して出力する。
【0027】
なお、本実施形態においては、光モジュール1への送信側において低速送信クロックの立ち上がり部を検出する場合について説明するが、前述したように、低速光通信装置10に備える立ち上がり検出部4は、低速送信クロックの変化点(つまり、立ち上がり部または立ち下がり部のいずれか一方)を検出する機能を有するように構成しても構わない。
【0028】
(本発明の実施形態の動作の説明)
次に、本発明の一実施形態として
図1に示した低速光通信装置10の動作の一例について、
図2、
図3のタイムチャートを参照して説明する。
図2は、
図1に示す低速光通信装置10の信号処理部8から出力される低速送信クロックと低速送信信号とに関する送信側の各信号のタイミングの一例を示すタイムチャートであり、
図3は、
図1に示す低速光通信装置10の信号処理部8に入力されてくる低速受信クロックと低速受信信号とに関する受信側の各信号のタイミングの一例を示すタイムチャートである。
【0029】
なお、
図2、
図3に示すタイムチャートに関しては、
図1に示したように、高速通信用の光モジュール1に対して既存の低速光信号装置に備えられている回路すなわち信号処理部8を接続して、低速光通信装置10として構成している場合の動作例を示している。かかる低速光通信装置10の構成としては、例えば、100MHzの高速通信用の光モジュール1に対して接続する信号処理部8として例えばINS1500(登録商標)に接続する機能を有する低速通信信号用の信号処理部を想定しても良い。なお、INS1500とは、23本のBチャネル(64kbps×23データチャネル)と1本のDチャネル(64kbps信号チャネル)とを1本の光加入者線で伝送する日本国内のISDN(Integrated Services Digital Network:サービス総合デジタル網)サービスを意味している。
【0030】
まず、
図2に示す送信側の各信号について説明する。信号処理部8は、
図2に示すように、低速送信クロック201と該低速送信クロック201に同期したタイミングの低速送信信号204A,204Bとを生成して出力している。ここで、低速送信信号204Aは、ローレベル(LO)の送信信号であり、低速送信信号204Bは、ハイレベル(HI)の送信信号である。
【0031】
信号処理部8が生成した低速送信クロック201は、立ち上がり検出部4に入力され、
図2に示す時刻t1において、該低速送信クロック201が立ち上がっている立ち上がり部が検出されると、立ち上がり検出結果として、光帯域信号203(高速通信信号)の1ビット幅分の間、すなわち、該光帯域信号203をマスクするための時間(マスク時間)だけハイレベルに設定した立ち上がり部検出信号202が出力される。なお、立ち上がり検出部4は、光帯域信号部3が出力した光帯域信号(すなわち高速光通信用の光モジュール1の使用帯域の周波数を使った高速通信信号)を使用して、低速送信クロック201の立ち上がり部を検出する。すなわち、
図2に示す光帯域信号203の周波数を利用して、低速送信クロック201の立ち上がり部を検出する。そして、低速送信クロック201の立ち上がり部を検出すると、前述したように、光帯域信号203すなわち高速通信信号の1ビット幅の立ち上がり部検出信号202を生成して、切替部2に対して出力する。
【0032】
この結果、切替部2は、立ち上がり部検出信号202が出力されている1ビット幅の間、光帯域信号部3が出力した光帯域信号をマスクして、信号処理部8が出力した低速送信信号を、光モジュール1に対して出力することになる。
【0033】
つまり、立ち上がり部検出信号202が出力されている1ビット幅の間(前記マスク時間の間)、信号処理部8が出力した低速送信信号がローレベル(LO)であった場合には、
図2に示すように、ローレベル(LO)の低速送信信号204Aが信号処理部8から切替部2に対して入力されてくる。その結果、切替部2からは、立ち上がり部検出信号202が出力されている1ビット幅の間は、本来の光帯域信号203の信号成分がマスクされて、低速送信信号のローレベル(LO)状態が継続する送信信号205Aが、光モジュール1に対して出力される。したがって、光モジュール1から光加入者線30を介して対向装置20に対して、立ち上がり部検出信号202が出力されている1ビット幅の間、低速送信信号のローレベル(LO)状態が継続する光信号が送信される。
【0034】
また、立ち上がり部検出信号202が出力されている1ビット幅の間(前記マスク時間の間)、信号処理部8が出力した低速送信信号がハイレベル(HI)であった場合には、
図2に示すように、ハイレベル(HI)の低速送信信号204Bが信号処理部8から切替部2に対して入力されてくる。その結果、切替部2からは、立ち上がり部検出信号202が出力されている1ビット幅の間は、本来の光帯域信号203の信号成分がマスクされて、低速送信信号のハイレベル(HI)状態が継続する送信信号205Bが、光モジュール1に対して出力される。したがって、光モジュール1から光加入者線30を介して対向装置20に対して、立ち上がり部検出信号202が出力されている1ビット幅の間、低速送信信号のハイレベル(HI)状態が継続する光信号が送信される。
【0035】
なお、立ち上がり部検出信号202が出力されていない期間については、切替部2は、光帯域信号部3が出力した光帯域信号203を光モジュール1に対して出力する.したがって、立ち上がり部検出信号202が出力されている1ビット幅の間以外の期間は、高速光通信用の光モジュール1の本来の光帯域信号203(高速通信信号)が、光加入者線30を介して対向装置20に対して送信される。
【0036】
以上のように、
図1に示した低速光通信装置10においては、高速通信用の光モジュール1の適応周波数を使って送受信を行っている光帯域信号203の高速通信信号の列のうち、低速通信用の低速送信クロックの立ち上がり部に位置する高速通信信号の列の一部(1ビット幅分)を切替部2によりマスクすることによって、低速送信クロックの立ち上がり位置を、光加入者線30を介して対向装置20に対して通知するとともに、切替部2においてマスクするときの論理レベルを、信号処理部8からの低速送信信号の論理レベルと同じにすることによって、信号処理部8からの低速送信信号を対向装置20に対して転送することができる。
【0037】
次に、
図3に示す受信側の各信号について説明する。光モジュール1から出力されてくる受信信号は、
図3に示すように、高速受信クロック(つまり、高速通信用の光モジュール1の適応周波数の光帯域信号すなわち高速通信信号)に同期したタイミングの受信信号301A,301Bとして出力している。ただし、
図2において説明したように、対向装置20側においては、低速送信信号の立ち上がり部を検出して立ち上がり部検出信号202が出力されている1ビット幅の間、本来の光帯域信号の信号成分がマスクされて、低速送信信号のレベル状態が継続する光信号を送信している。
【0038】
したがって、光モジュール1が出力する受信信号301A,301Bも、
図3に示すように、時刻t2において、本来の光帯域信号(高速通信信号)の1ビット幅に相当する受信側マスク時間の間、本来の光帯域信号(高速通信信号)の信号成分がマスクされて、低速信号のレベル状態が継続している。ここで、受信信号301Aは、ローレベル(LO)の低速信号を受信した場合の受信信号であり、受信信号301Bは、ハイレベル(HI)の低速信号を受信した場合の受信信号である。
【0039】
光モジュール1が出力した受信信号301A,301Bを受け取った共振回路5は、本来の光帯域信号(高速通信信号)の信号成分が一部マスクされた状態の受信信号301A,301Bを共振させて、マスクされていた部分の信号成分を追加補正して、
図3に示すように、本来の光帯域信号の信号成分である高速の光受信クロック信号302(高速通信信号)を生成して、信号有無検出部6に対して出力する。
【0040】
信号有無検出部6は、共振回路5によって生成された光受信クロック信号302と、光モジュール1から受け取った一部マスクされた状態の受信信号301A,301Bとを常時比較していて、時刻t2において、両者に差異があることを検出すると、差異が検出されたタイミングには低速受信信号が埋め込まれていた部分と見做す。そして、信号有無検出部6は、時刻t2のタイミングすなわち差異を検出した時点を低速受信クロック303として抽出して、リタイミング部7と信号処理部8とに対して出力する。ここで、時刻t2とは、対向装置20側において低速送信クロックの立ち上がり部を検出した時刻に相当している。
【0041】
リタイミング部7は、信号有無検出部6から出力されてきた低速受信クロック303によって、光モジュール1からの受信信号301A,301Bをリタイミングすることにより、該受信信号301A,301Bに含まれている低速信号成分を抽出して、低速受信信号として出力する。
図3に示すように、ローレベル(LO)の低速信号成分が含まれている受信信号301Aの場合には、低速受信信号(LO)の低速受信信号304Aとして出力し、ハイレベル(HI)の低速信号成分が含まれている受信信号301Bの場合には、低速受信信号(HI)の低速受信信号304Bとして出力する。出力された低速受信信号304A,304Bは、信号処理部8に対して出力される。
【0042】
以上のように、高速通信信号の受信側においては、高速通信信号の論理レベルが固定されている位置(すなわち本来の光帯域信号の信号成分が一部マスクされている位置)を検出して低速信号用の低速受信クロックを生成するとともに、検出した位置の信号の論理レベルを読み取ることによって低速通信信号を生成している。一方、高速通信信号の送信側においては、低速光通信装置において用いられる低速送信クロックの変化点を検出して、該変化点を検出したタイミングにおける高速通信信号の論理レベルを低速通信信号の論理レベルに固定する(すなわち、本来の光帯域信号の信号成分をマスクして、その代わりに、該光帯域信号に1ビット幅分継続して低速通信信号の論理レベルに固定し続ける)。かくのごとき技術を採用することにより、既存の低速光通信装置の論理回路を変更することなく、入手が容易な高速通信用の光モジュールを用いて、低速光通信装置を容易に開発することができる。
【0043】
(本発明の実施形態の効果の説明)
以上説明したように、本実施形態においては、既存の低速光通信装置の信号処理部8等の論理回路を変更することなく、入手が容易な高速通信用の光モジュール1を用いて、低速光通信装置を容易に開発することができるという効果が得られる。さらに、具体的には、以下のような効果が得られる。
【0044】
第1に、光モジュール1本来の光帯域信号(高速通信信号)をベースにして低速通信信号の変化点を重畳するので、低速光通信装置における低速光通信用の光モジュールを高速通信用の光モジュール1に変更することに容易に対応することができる。
【0045】
第2に、低速の信号処理部8を既存の信号処理部から変更することなくそのまま使用することができる。
【0046】
第3に、クロックの転送とデータの転送とを同一ビットにて転送するので、光加入者線30上の信号使用量を削減することができる。
【0047】
(本発明の他の実施形態)
次に、本発明に係る低速光通信装置の前述の実施形態とは異なる他の実施形態について説明する。本他の実施形態における低速光通信装置は、前述の低速光通信装置10とは異なり、
図4に示すように、低速光通信装置として複数個の信号処理部を備え、それぞれから出力される複数個の低速通信信号を多重化して、光モジュール1を用いて転送する構成としている。
【0048】
図4は、本発明に係る低速光通信装置の内部構成の
図1とは異なる例を示すブロック構成図である。
図4に示す低速光通信装置10Aは、
図1の低速光通信装置10とは異なり、複数個の信号処理部8Aを備えている。そして、複数個の信号処理部8Aそれぞれからの低速送信信号を送信するために、送信側には、送信リタイミング部9Aを追加するとともに、切替部2、立ち上がり検出部4の代わりに、それぞれ、切替部2A、立ち上がり検出部4Aを備え、また、受信側には、複数の低速受信信号を扱うことができるように、信号有無検出部6、リタイミング部7の代わりに、それぞれ、信号有無検出部6A、リタイミング部7Aを備えている。
【0049】
つまり、
図4に示す低速光通信装置10Aは、送信側においては、複数の信号処理部8Aにより生成された低速送信信号、低速送信クロックそれぞれを多重化して光モジュール1に向かって出力し、受信側においては、光モジュール1からの受信信号に多重化されていた低速受信信号、低速受信クロックを抽出して、複数個の信号処理部8Aそれぞれに振り分けて出力する。
【0050】
まず、
図4に示す低速光通信装置10Aの送信側の各構成要素について説明する。複数個の信号処理部8A(
図4は3個の信号処理部8Aの場合を例示)それぞれは、光加入者線30を介して対向装置20に対して送信する低速送信信号と低速送信クロックとを生成して送信リタイミング部9Aに対して出力する。なお、低速送信クロックは、立ち上がり検出部4に対しても出力する。ここで、低速送信クロックは、複数台の信号処理部8Aのうちあらかじめ定めた特定信号処理部から出力すれば良い。なお、複数個の信号処理部8Aそれぞれは、受信側の機能として、信号有無検出部6Aが出力するそれぞれに該当する低速受信クロックと、リタイミング部7Aが出力するそれぞれに該当する低速受信信号とを受け取る機能を有している。
【0051】
光帯域信号部3は、
図1の場合と同様、高速通信用の光モジュール1が使用することができる周波数帯域の高速通信信号(すなわち光帯域信号)を生成して、切替部2Aに対して出力する。
【0052】
立ち上がり検出部4Aは、
図1の立ち上がり検出部4の場合と同様、信号処理部8Aから出力されてきた低速送信クロックの立ち上がり部の検出を行うが、
図1の立ち上がり検出部4の場合とは異なり、さらに、複数個の信号処理部8Aの個数分に応じた複数個のチャネル(CH)分の低速送信信号を挿入することができるように、高速通信信号(光帯域信号)の周波数に相当する時間間隔(すなわち1ビット幅分)ずつ離れた時間位置に、該立ち上がり部の検出時点から順次後方に向かって、低速送信信号用のチャネルとしてCH1、CH2、CH3、…を確保する。そして、低速送信クロックの立ち上がり部および該立ち上がり部から順次後方に向かって確保したチャネルの位置(光帯域信号部3からの高速通信用の光帯域信号をマスクして低速送信信号を挿入するマスク時間となる位置)を示す信号を、立ち上がり部検出信号として、切替部2Aに対して出力する。
【0053】
切替部2Aは、立ち上がり検出部4Aからの検出結果として低速送信クロックの立ち上がり部が非検出であった場合には、
図1の切替部2の場合と同様、光帯域信号部3が出力した高速通信信号(すなわち光帯域信号)を光モジュール1に対して出力する。一方、立ち上がり検出部4Aからの検出結果として低速送信クロックの立ち上がり部を検出していた場合には、
図1の切替部2の場合とは異なり、切替部2Aは、複数の信号処理部8Aそれぞれが生成した低速送信信号を、立ち上がり検出部4Aから出力された立ち上がり部検出信号が示す各チャネル位置(すなわち立ち上がり部検出時点から後方に向かって確保された複数個のチャネル位置)それぞれに多重化する形で取り込んで光モジュール1に対して出力する。
【0054】
すなわち、切替部2Aは、立ち上がり検出部4Aから出力された立ち上がり部検出信号により複数個の信号処理部8Aの個数分に応じて確保されたチャネル位置(
図4の場合は、3個の信号処理部8Aそれぞれからの低速送信信号の場合であり、CH1、CH2、CH3の3個のチャネル位置)においては、光帯域信号部3が出力した高速通信信号(すなわち光帯域信号)をマスクする。そして、送信リタイミング部9Aからリタイミングされて出力されてくる複数個の低速送信信号を、順次、高速通信信号をマスクして確保されたチャネルのうち該当するチャネル位置(CH1、CH2、CH3それぞれの位置)に挿入した形に多重化して光モジュール1に対して出力する。
【0055】
送信リタイミング部9Aは、信号処理部8Aからの低速送信クロック(先頭のチャネル位置に挿入する低速送信信号を出力するようにあらかじめ定めた特定信号処理部8Aから出力される低速送信クロック)に基づいて、複数個の信号処理部8Aそれぞれから送付されてきた低速送信信号を位相合わせするようにリタイミングして、切替部2Aに対して出力する。
【0056】
図5は、
図4に示す低速光通信装置10Aの信号処理部8Aから出力される低速送信クロックと低速送信信号とに関する送信側の各信号のタイミングの一例を示すタイムチャートであり、前述したように、3個の信号処理部8Aそれぞれから出力される3個の低速送信信号の場合を例にして示している。
【0057】
複数個の信号処理部8Aうち、あらかじめ定めた特定信号処理部8Aは、
図5に示すように、低速送信クロック201を生成して出力するとともに、複数個の信号処理部8Aそれぞれから出力される低速送信信号が送信リタイミング部9Aによって該低速送信クロック201に同期したタイミングにリタイミングされて第1低速送信信号2041、第2低速送信信号2042、第3低速送信信号2043として出力される。ここで、第1低速送信信号2041、第2低速送信信号2042、第3低速送信信号2043それぞれは、立ち上がり検出部4Aから出力された立ち上がり部検出信号によって確保されたチャネルのCH1、CH2、CH3に重畳される信号である。
【0058】
立ち上がり検出部4Aは、信号処理部8Aからの低速送信クロック201が立ち上がっている立ち上がり部を時刻t3にて検出すると、立ち上がり検出結果として、当該特定信号処理部8Aからの低速送信信号である第1低速送信信号2041用のCH1のチャネル位置を示す信号の他に、他の信号処理部8Aからの低速送信信号用のCH2、CH3それぞれのチャネル位置を示す信号を含む立ち上がり部検出信号202Aを生成して、切替部2Aに対して出力する。
【0059】
つまり、低速送信クロック201の立ち上がり部の検出結果に該当するCH1用の信号を基準にして、高速通信信号(光帯域信号)の周波数に相当する時間間隔(すなわち1ビット幅分)ずつ順次後方に離れた時間位置に、他の信号処理部8Aからの低速送信信号すなわち第2低速送信信号2042用のCH2および第3低速送信信号2042用のCH3の信号がさらに生成されて、立ち上がり部検出信号202Aとして切替部2Aに出力される。なお、立ち上がり検出部4Aに関しても、前述した
図1の立ち上がり検出部4の場合と同様に、低速送信クロック201の立ち上がり部を検出する代わりに、低速送信クロック201の立ち下がり部を検出するようにしても良い。すなわち、立ち上がり検出部4Aは、低速送信クロック201の変化点(立ち上がり部または立ち下がり部のいずれか一方)を検出する機能を有していれば良い。
【0060】
切替部2Aは、立ち上がり検出部4Aからの検出結果が低速送信クロックの立ち上がり部を検出していない場合には、
図1に示した切替部2の場合と同様に、光帯域信号部3が出力した光帯域信号203(すなわち高速通信信号)を送信信号205として光モジュール1に対して出力する。
【0061】
一方、立ち上がり検出部4Aからの検出結果が低速送信クロックの立ち上がり部を検出した場合には、切替部2Aからは、
図1に示した切替部2の場合とは異なり、立ち上がり部検出信号202AのCH1,CH2,CH3の各信号部分が出力されている1ビット幅の間は、本来の光帯域信号203の信号成分がマスクされて、複数個の信号処理部8Aそれぞれからの低速送信信号を多重化した送信信号205を生成して、光モジュール1に対して出力する。
【0062】
すなわち、複数個の信号処理部8Aのうち、低速送信クロック201を立ち上がり検出部4Aに対して出力している特定信号処理部からの第1低速送信信号2041については、立ち上がり部検出時点に相当するチャネル位置のCH1の時間位置に多重化し、該特定信号処理部以外の他の信号処理部8Aからの第2低速送信信号2042、第3低速送信信号2043それぞれについては、CH1の時間位置を基準にして1ビット幅ずつ後方のチャネル位置のCH2、CH3それぞれの時間位置に多重化した送信信号205を生成して、光モジュール1に対して出力する。なお、前述したように、CH1、CH2、CH3それぞれの時間幅は、高速通信信号(すなわち光帯域信号部3が生成した光帯域信号)の1ビット幅に相当している。
【0063】
光モジュール1は、切替部2Aから送信信号205として出力されてくる電気信号を光信号に変換して、光加入者線30を介して対向装置20に対して送信する。
【0064】
次に、
図4に示す低速光通信装置10Aの受信側の各構成要素について説明する。対向装置20から光加入者線30を介して送信されてきた光信号は、光モジュール1に入力され、
図1の場合と同様、光モジュール1において電気信号に変換された後に、受信信号として、共振回路5と信号有無検出部6Aとリタイミング部7Aとのそれぞれに対して出力される。なお、対向装置20側に複数個の信号処理部8Aが備えられていた場合には、該受信信号には、
図5において説明したように、複数個のチャネル位置例えばCH1,CH2,CH3の3つのチャネル位置に、それぞれの信号処理部8Aが送信した低速送信信号が含まれている。
【0065】
共振回路5は、
図1の場合と同様、光モジュール1から入力された受信信号を基に共振させ、該受信信号の抜けの部分の信号成分を追加補正して、光受信クロック信号として信号有無検出部6Aに対して出力する。信号有無検出部6Aは、光モジュール1からの受信信号と共振回路5からの光受信クリック信号との差の位置を、低速受信クロックの変化点の位置として検出して、検出した該低速受信クロックを信号処理部8とリタイミング部7とに対して出力する。ここで、信号有無検出部6Aは、
図1の信号有無検出部6の場合とは異なり、該受信信号の複数個のチャネル位置例えばCH1,CH2,CH3の3つのチャネル位置において、共振回路5によって追加補正された信号との差を検出するので、複数個のチャネル位置例えばCH1,CH2,CH3の3つのチャネル位置それぞれの時間位置において低速受信クロックを検出して、検出したそれぞれの低速受信クロックをリタイミング部7に対して出力するとともに、該当する信号処理部8Aそれぞれに対して出力する。
【0066】
リタイミング部7Aは、信号有無検出部6Aからのそれぞれの低速受信クロックによって、光モジュール1から入力された受信信号のうち該当する受信信号をリタイミングすることにより、該当する信号処理部8Aそれぞれに出力する低速受信信号に変換して、該当する信号処理部8Aに対してそれぞれ出力する。
【0067】
図6は、
図4に示す低速光通信装置10Aの信号処理部8Aに入力されてくる低速受信クロックと低速受信信号とに関する受信側の各信号のタイミングの一例を示すタイムチャートであり、送信側の説明において前述したように、3個の信号処理部8Aそれぞれに対して入力される3個の低速送信信号の場合を例にして示している。
【0068】
光モジュール1から出力されてくる受信信号は、
図6に示すように、高速受信クロック(すなわち高速通信用の光モジュール1の適応周波数のクロック)に同期したタイミングの受信信号301として出力している。ただし、
図5において説明したように、対向装置20側においては、低速送信信号の立ち上がり部を検出して立ち上がり部検出信号202AとしてCH1,CH2,CH3の3個のチャネル位置の各1ビット幅の間(すなわち受信側マスク時間の間)は、本来の光帯域信号の信号成分がマスクされて、3個の各信号処理部8Aから出力された低速送信信号のレベル状態が継続する光信号を送信している。
【0069】
したがって、光モジュール1が出力する受信信号301も、
図6に示すように、共振回路5から出力された光受信クロック信号302との差異が検出される時刻t4の時点に該当するCH1のチャネル位置、さらに、該CH1のチャネル位置の1ビット幅ずつ後方に位置するCH2,CH3の各チャネル位置において、本来の光帯域信号(高速通信信号)の信号成分がマスクされて、低速信号のレベル状態が1ビット幅で継続している。
【0070】
なお、光モジュール1が出力した受信信号301を受け取った共振回路5は、本来の光帯域信号の信号成分が一部マスクされた状態の受信信号301を共振させて、マスクされていた部分の信号成分を追加補正して、
図6に示すように、本来の光帯域信号の信号成分である高速の光受信クロック信号302を生成して、信号有無検出部6に対して出力する。
【0071】
信号有無検出部6Aは、共振回路5によって生成した光受信クロック信号302と、光モジュール1から受け取った一部マスクされた状態の受信信号301とを常時比較していて、時刻t4および時刻t4から1ビット幅ずつ後方の2つの時点のそれぞれにおいて、両者に差異があることを検出すると、差異が検出された3つのタイミングには複数個の信号処理部8Aそれぞれからの低速受信信号が埋め込まれていた部分と見做す。そして、信号有無検出部6Aは、時刻t4および時刻t4から1ビット幅ずつ後方の2つの時点のそれぞれのタイミングを、第1低速受信クロック3031、第2低速受信クロック3032、第3低速受信クロック3033として、リタイミング部7Aと信号処理部8とに対して出力する。ここで、第1低速受信クロック3031、第2低速受信クロック3032、第3低速受信クロック3033のそれぞれは、CH1,CH2,CH3のチャネル位置に相当するタイミングであり、また、時刻t4とは、対向装置20側において低速送信クロックの立ち上がり部を検出した時刻に相当している。
【0072】
リタイミング部7Aは、信号有無検出部6Aから出力されてきた第1低速受信クロック3031、第2低速受信クロック3032、第3低速受信クロック3033それぞれによって、光モジュール1からの受信信号301をリタイミングすることにより、該受信信号301に含まれている低速信号成分の信号レベル(論理レベル)を抽出して、第1低速受信信号3041、第2低速受信信号3042、第3低速受信信号3043のそれぞれに変換する。変換された第1低速受信信号3041、第2低速受信信号3042、第3低速受信信号3043のそれぞれは、複数個の信号処理部8Aのうちそれぞれに該当する信号処理部8Aに対して出力される。
【0073】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。