【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「フォトニック結晶レーザの高輝度・高出力化」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
板状の母材に、該母材とは屈折率が異なる第1異屈折率領域及び第2異屈折率領域から成る異屈折率領域対が周期的に配置された2次元フォトニック結晶と、該母材の一方の側に設けられた活性層を有する2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、
前記第1異屈折率領域の平面形状が前記第2異屈折率領域の平面形状よりも面積が大きいか又は同じであり、
前記第1異屈折率領域の厚みが前記第2異屈折率領域の厚みよりも薄い
ことを特徴とする2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
前記第1異屈折率領域の重心と前記第2異屈折率領域の重心が互いに、前記x方向に0.23a〜0.28a、前記y方向に0.23a〜0.28aずれて配置されていることを特徴とする請求項2に記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
前記第1異屈折率領域及び前記第2異屈折率領域のいずれか一方又は両方の平面形状が円形であることを特徴とする請求項1又は2に記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
前記第1異屈折率領域及び前記第2異屈折率領域のいずれか一方又は両方が、平面形状が非円形であって、該平面形状において重心で直交し断面相乗モーメントが0となるように定められる2本の直線のうち断面2次モーメントがより小さい直線により規定される基準軸が、該第1異屈折率領域の重心及び該第2異屈折率領域の重心を結ぶ直線に対して45°〜135°の範囲内の方向となるように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
前記第1異屈折率領域及び前記第2異屈折率領域のいずれか一方が前記非円形であって、他方が円形であることを特徴とする請求項5又は6に記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザ。
板状の母材に、該母材とは屈折率が異なる2個の異屈折率領域から成る異屈折率領域対が周期的に配置された2次元フォトニック結晶と、該母材の一方の側に設けられた活性層を有する2次元フォトニック結晶面発光レーザを製造する方法であって、
前記母材の上に下部マスク層を作製する下部マスク層作製工程と、
前記下部マスク層の上に、第1孔及び第2孔から成る孔対が前記異屈折率領域対と同じ周期で設けられた第1上部マスクを形成する第1上部マスク形成工程と、
前記第1孔及び前記第2孔を通して前記下部マスク層及び前記母材を最大で所定の第1深さまでエッチングする第1エッチング工程と、
前記第1上部マスクを除去する第1上部マスク除去工程と、
前記下部マスク層の上に、前記第1孔及び前記第2孔の一方に対応する位置に該一方の孔よりも大きい孔を有し他方に対応する位置が塞がれている第2上部マスクを形成する第2上部マスク形成工程と、
前記第2上部マスクの孔を通して前記母材を所定の第2深さまでエッチングする第2エッチング工程と、
前記第2上部マスクを除去する第2上部マスク除去工程と、
前記下部マスク層を除去する下部マスク層除去工程と
を有することを特徴とする2次元フォトニック結晶面発光レーザ製造方法。
前記第1孔の方が前記第2孔よりも面積が大きく、前記第2上部マスクの孔が前記第2孔に対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザ製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいて、上記のように異屈折率領域対による干渉の効果によりレーザー光の出力を高めようとする場合、その効果を最大限に得るためには、各異屈折率領域対における主異屈折率領域と副異屈折率領域の相互の関係を十分に解析する必要がある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、異屈折率領域対を用いた2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいて、異屈折率領域対における干渉の効果をより高め、より大きい出力のレーザ光を得ることのできる2次元フォトニック結晶面発光レーザ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、特許文献1に記載の異屈折率領域対を有する2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいて、主異屈折率領域と副異屈折率領域による干渉の作用を詳細に解析した結果、両異屈折率領域における光の反射による干渉において重要であるのは、両者の間の距離とともに、主異屈折率領域及び副異屈折率領域のそれぞれにおける反射の態様であることを見いだした。すなわち、特許文献1に記載の異屈折率領域対では、主異屈折率領域に対して副異屈折率領域の平面形状の面積が小さく、両者における光の反射の態様がアンバランスである。
【0011】
また、2次元フォトニック結晶の作製時に一般的に用いられるドライエッチング法によれば、空孔(異屈折率領域)の平面形状が小さいほど、エッチングガスが空孔内に侵入し難いことからエッチング速度が遅くなり、自然に厚みが薄く(深さが浅く)なる。そのため、主異屈折率領域よりも平面形状が小さい副異屈折率領域は、厚みも主異屈折率領域よりも薄くなる(特許文献2参照)。その結果、主異屈折率領域と副異屈折率領域は、それらの平面形状の面積の相違よりも一層大きな、体積における差異を有する。このため、特許文献1に記載のような構成を有する2次元フォトニック結晶を用いた面発光レーザでは、実際の製品においては更に主異屈折率領域と副異屈折率領域における光の反射がアンバランスとなり、十分な干渉効果を用いたレーザ発光の高出力化が得られないこととなる。
【0012】
そこで、上記課題を解決するために成された本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、板状の母材に、該母材とは屈折率が異なる第1異屈折率領域及び第2異屈折率領域から成る異屈折率領域対が周期的に配置された2次元フォトニック結晶と、該母材の一方の側に設けられた活性層を有する2次元フォトニック結晶面発光レーザであって、
前記第1異屈折率領域の平面形状が前記第2異屈折率領域の平面形状よりも面積が大きいか又は同じであり、
前記第1異屈折率領域の厚みが前記第2異屈折率領域の厚みよりも薄い
ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザによれば、第1異屈折率領域が第2異屈折率領域よりも平面形状の面積が大きいか又は同じであって厚みが薄い。そのため、第1異屈折率領域と第2異屈折率領域の体積が近くなるようにそれら面積及び厚みを設定し易くなる。第1異屈折率領域と第2異屈折率領域の体積を近くすることにより、主異屈折率領域で進行方向が変化する光と副異屈折率領域で進行方向が変化する光の強度の差を小さくし、それによりそれらの光の干渉の作用を強くすることができる。第1異屈折率領域の体積V
1と第2異屈折率領域の体積V
2の比V
1/V
2は0.25〜4.0であることが望ましい。
【0014】
本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいて、
前記異屈折率領域対は、該母材に平行なx方向に周期長a、該母材に平行であって該x方向に垂直なy方向に周期長aで正方格子状に配置されており、
前記第1異屈折率領域の重心と前記第2異屈折率領域の重心は互いに、前記x方向に0.15a〜0.35a、前記y方向に0.15a〜0.35aずれて配置されている
ことが望ましい。
これらx方向及びy方向のずれの大きさは0.23a〜0.28aであることがより望ましく、0.25aであることが最も望ましい。
【0015】
第1異屈折率領域と第2異屈折率領域を上記の大きさだけずらして配置することにより、第1異屈折率領域で反射されて進行方向が180°変化する光と、第2異屈折率領域で反射されて進行方向が180°変化する光が干渉により弱められ、それにより光が2次元フォトニック結晶内の一部領域に局在することが防止される。これにより、2次元フォトニック結晶内の広い範囲において、第1異屈折率領域及び第2異屈折率領域で光の進行方向が90°変化する光を干渉により強め、2次元フォトニック結晶面発光レーザの出力を一層高くすることができる。
【0016】
本発明において、第1異屈折率領域の重心と第2異屈折率領域の重心のx方向及びy方向のずれの大きさは、上記の0.15a〜0.35aには限定されない。例えば、2次元フォトニック結晶内で干渉により光を局在させて局所的に強いレーザ光を生成する、面垂直方向への放射の強度を調節する等、上記ずれの大きさに応じて干渉による種々の効果を奏する2次元フォトニック結晶面発光レーザが得られる。
【0017】
また、2個の異屈折率領域の重心のx方向及びy方向のずれの大きさに関わらず、2次元フォトニック結晶層を設計する際に行う計算の際に、2個の異屈折率領域の平面形状の面積及び厚みを変化させてゆくと、2次元フォトニック結晶層内における光の振動モードが変化してゆき、基本振動モードと高次振動モードとのエネルギー利得差も変化する。このエネルギー利得差が大きいほど、2次元フォトニック結晶面発光レーザは単一の振動モードで安定してレーザ発振する。このように、本発明により、安定したレーザ発振が得られる2次元フォトニック結晶面発光レーザを設計する自由度が高くなる。さらに、こうして安定したレーザ発振が得られることにより、2次元フォトニック結晶の面積を大きくすることができ、それによりレーザの強度を大きくすることができる。
【0018】
前記第1異屈折率領域及び前記第2異屈折率領域のいずれか一方又は両方の平面形状は、正三角形等のより複雑な形状を有する異屈折率領域よりも(特に空孔である場合に)作製しやすいという点で、円形であることが望ましい。また、円形の異屈折率領域は、尖った部分が無いため、隣接する異屈折率領域との距離を大きくし易く、隣接の異屈折率領域と意図せずに繋がってしまうことが生じ難いという利点がある。
【0019】
異屈折率領域対によって形成される、母材とは異なる屈折率の領域の形状は、2個の異屈折率領域の重心を結ぶ直線の方向に、より拡がっている。そうすると、2次元フォトニック結晶内で当該直線に対して傾斜した方向に伝播する光のうち、異屈折率領域対で進行方向が+90°変化する光と-90°変化する光は、いずれか一方よりも他方の方が強度が弱くなり、干渉により強められる作用が弱くなってしまう。そこで、前記第1異屈折率領域及び前記第2異屈折率領域のいずれか一方又は両方は、平面形状が楕円形であって、該楕円形の長軸が、該第1異屈折率領域の重心及び該第2異屈折率領域の重心を結ぶ直線に対して45°〜135°の範囲内の方向となるように配置されていることが望ましい。これにより、母材とは異なる屈折率の分布が前記直線の方向に拡がることが抑えられ、光が干渉により強められる作用が弱くなることを抑えることができる。楕円形の代わりに長方形の異屈折率領域を用い、長辺が前記直線に対して45°〜135°の範囲内の方向となるように配置しても、同様の効果を奏する。
【0020】
さらに、このように光が干渉により強められる作用が弱くなることを抑える効果は、楕円形や長方形以外の非円形の異屈折率領域によっても達成することができる。すなわち、前記第1異屈折率領域及び前記第2異屈折率領域のいずれか一方又は両方は、平面形状が非円形であって、該平面形状において重心で直交し断面相乗モーメントが0となるように定められる2本の直線のうち断面2次モーメントがより小さい直線により規定される基準軸(詳細は後述)が、該第1異屈折率領域の重心及び該第2異屈折率領域の重心を結ぶ直線に対して45°〜135°の範囲内の方向となるように配置されていることが望ましい。
【0021】
基準軸は以下のように定める。まず、異屈折率領域の平面形状について、重心を原点として、該平面形状内の微小面積要素dSのx軸からの距離Yとy軸からの距離Xの積XYを面積積分することにより求められる断面相乗モーメントI
xy
I
xy=∬ X・Y dS …(1)
が0となるように、互いに直交するx軸及びy軸を定める。次に、距離Yの二乗を面積積分することにより求められるx軸に関する断面2次モーメントI
x
I
x=∬ Y
2 dS …(2)
と、距離Xの二乗を面積積分することにより求められるy軸に関する断面2次モーメントI
y
I
y=∬ X
2 dS …(3)
を求める。そして、I
X<I
Yであればx軸を基準軸と定義し、I
X>I
Yであればy軸を基準軸として定義する。例えば、平面形状が楕円である場合には長軸が基準軸となり、平面形状が長方形である場合には長辺に平行であって重心を通過する直線が基準軸となる。なお、一般に、上記2つの軸のうち、断面2次モーメントが大きい方の軸は「強軸」、断面2次モーメントが小さい方の軸は「弱軸」と呼ばれる。
【0022】
このような非円形の異屈折率領域を用いる場合において、前記第1異屈折率領域及び前記第2異屈折率領域のいずれか一方が前記非円形であって他方が円形であることが望ましい。これにより、異屈折率領域対の周囲に形成される電界に非対称性が生じ、干渉により電界の強度が小さくなることが抑えられ、光の強度を大きくすることができる。
【0023】
本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザは、以下の方法により好適に製造することができる。本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザ製造方法は、
板状の母材に、該母材とは屈折率が異なる2個の異屈折率領域から成る異屈折率領域対が周期的に配置された2次元フォトニック結晶と、該母材の一方の側に設けられた活性層を有する2次元フォトニック結晶面発光レーザを製造する方法であって、
前記母材の上に下部マスク層を作製する下部マスク層作製工程と、
前記下部マスク層の上に、第1孔及び第2孔から成る孔対が前記異屈折率領域対と同じ周期で設けられた第1上部マスクを形成する第1上部マスク形成工程と、
前記第1孔及び前記第2孔を通して前記下部マスク層及び前記母材を最大で所定の第1深さまでエッチングする第1エッチング工程と、
前記第1上部マスクを除去する第1上部マスク除去工程と、
前記下部マスク層の上に、前記第1孔及び前記第2孔の一方に対応する位置に該一方の孔よりも大きい孔を有し他方に対応する位置が塞がれている第2上部マスクを形成する第2上部マスク形成工程と、
前記第2上部マスクの孔を通して前記母材を所定の第2深さまでエッチングする第2エッチング工程と、
前記第2上部マスクを除去する第2上部マスク除去工程と、
前記下部マスク層を除去する下部マスク層除去工程と
を有することを特徴とする。
【0024】
本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザ製造方法によれば、第1上部マスク形成工程において第1孔及び第2孔を有する第1上部マスクを下部マスク層(この時点では下部マスク層には孔が設けられていない)の上に形成する。そのうえで、第1エッチング工程において第1孔及び第2孔を通して下部マスク層及び母材を最大で所定の第1深さまでエッチングすることにより、前記異屈折率領域対の2個の異屈折率領域に対応する2個の孔が該異屈折率領域対と同じ周期で形成される。ここで、第1孔と第2孔の面積が異なる場合には、それら2個の孔の
うち面積が大きい方が
エッチング剤が侵入しやすくなるため、当該孔から最大の深さ、すなわち第1深さまでエッチングされ、他方の孔からは第1深さよりも浅い位置までエッチングされる。続いて、第1孔及び第2孔の一方に対応する位置に該一方の孔よりも大きい孔を有し他方に対応する位置が塞がれている第2上部マスクを形成したうえで、第2上部マスクの孔を通して母材を所定の第2深さまでエッチングする。これにより、前記異屈折率領域対の2個の異屈折率領域に対応する2個の孔のうち一方のみをより深くエッチングすることができる。その際、第1上部マスクの第1孔又は第2孔と第2上部マスクの孔の位置が多少ずれていても、それら2個の孔に共通する部分において母材を所定の第2深さまでエッチングすることができる。一方、第1上部マスクと第2上部マスクの位置ずれが生じると、第1エッチング工程ではエッチングされていない部分においてもエッチング剤が第2エッチング工程において第2上部マスクの孔を通過するが、当該部分では下部マスク層がエッチングされるだけであり、母材は第1エッチング工程と同じ位置においてのみエッチングすることができる。
【0025】
本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザ製造方法において、前記第1孔の方が前記第2孔よりも面積が大きく、前記第2上部マスクの孔が前記第2孔に対応する位置に設けられているという構成を取ることにより、第1異屈折率領域の平面形状が第2異屈折率領域の平面形状よりも面積が大きく、第1異屈折率領域の厚みが第2異屈折率領域の厚みよりも薄い異屈折率領域対を形成することができる。また、前記第1孔と前記第2孔の面積が同じである場合には、平面形状が同じであって厚みが異なる異屈折率領域対を形成することができる。これらのいずれの場合にも、当該製造方法によって本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザを製造することができる。
【0026】
なお、前記第1孔の方が前記第2孔よりも面積が大きく、前記第2上部マスクの孔が前記第1孔に対応する位置に設けられているという構成を取ることにより、特許文献1に記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザと同様に、第1異屈折率領域の平面形状が第2異屈折率領域の平面形状よりも面積が大きく、第1異屈折率領域の厚みが第2異屈折率領域の厚みよりも厚い異屈折率領域対を形成することができる。この場合、特許文献1に記載の方法で作製する場合よりも、第2異屈折率領域よりも面積が大きい第1異屈折率領域の厚みがより一層厚くなる。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、異屈折率領域対における干渉の効果をより高め、より大きい出力のレーザ光を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1〜
図19を用いて、本発明に係る2次元フォトニック結晶面発光レーザの実施形態を説明する。
【0030】
(1) 本実施形態の2次元フォトニック結晶面発光レーザの構成
本実施形態の2次元フォトニック結晶面発光レーザ10は、
図1(a)に示すように、第1電極15、第1クラッド層141、活性層11、スペーサ層13、2次元フォトニック結晶層12、第2クラッド層142、及び第2電極16がこの順で積層された構成を有する。但し、活性層11と2次元フォトニック結晶層12の順番は、上記のものとは逆であってもよい。
図1(a)では便宜上、第1電極15を上側、第2電極16を下側として示しているが、使用時における2次元フォトニック結晶面発光レーザ10の向きは、この図で示したものは限定されない。以下、各層及び電極の構成を説明する。以下ではまず、2次元フォトニック結晶層12以外の構成を説明した後、2次元フォトニック結晶層12の構成を詳述する。
【0031】
活性層11は、第1電極15及び第2電極16から電荷が注入されることにより、所定の波長帯を有する光を発光するものである。活性層11の材料は、本実施形態ではInGaAs/AlGaAs多重量子井戸(発光波長帯:935〜945nm)であるが、本発明ではこの材料に限定されない。活性層11の厚みは約50〜100nmである。
【0032】
スペーサ層13は本発明における必須の構成要素ではないが、材料の異なる活性層11と2次元フォトニック結晶層12を接続するために設けられている。スペーサ層13の材料は、本実施形態ではAlGaAsであるが、活性層11及び2次元フォトニック結晶層12の材料に応じて適宜変更されるものである。
【0033】
第1クラッド層141及び第2クラッド層142は、本発明における必須の構成要素ではないが、第1電極15と活性層11、及び第2電極16と2次元フォトニック結晶層12を接続すると共に、第1電極15及び第2電極16から活性層11に電流を注入し易くするという役割を有する。これらの役割を果たすために、第1クラッド層141の材料にはp型半導体が、第2クラッド層142の材料にはn型半導体が、それぞれ用いられている。第1クラッド層141は、第1電極15側から順にp-GaAsから成る層とp-AlGaAsから成る層の2層構造を有し、同様に、第2クラッド層142は、第2電極16側から順にn-GaAsから成る層とn-AlGaAsから成る層の2層構造を有している(いずれも2層構造は図示せず)。これら第1クラッド層141及び第2クラッド層142においても、本発明では上記材料には限定されない。第1クラッド層141及び第2クラッド層142の平面寸法は、活性層11及び2次元フォトニック結晶層12の母材121と同じである。厚みは、第1クラッド層141では2μm、第2クラッド層142では200μmであるが、これらの値には限定されない。
【0034】
第1電極15は、1辺の長さLが約200μmの正方形状であり、活性層11や2次元フォトニック結晶層12において2次元フォトニック結晶が形成される領域よりも小さい。また、第1電極15の周囲には、第1電極15との間に絶縁体を介して、レーザ光に対して不透明な金属から成る反射層(図示せず)が設けられている。反射層は第1電極15と共に、2次元フォトニック結晶面発光レーザ10の内部で生じたレーザ光を反射して、第2電極16側から外部に放出させる役割を有する。
【0035】
第2電極16は、本実施形態ではn型半導体であって、上記レーザ光に対して透明な材料であるインジウム錫酸化物(ITO)により形成されているが、本発明ではこの材料に限定されず、例えばインジウム亜鉛酸化物(IZO)を用いることもできる。第2電極16は、1辺が約800μmの正方形状であり、活性層11及び次に述べる2次元フォトニック結晶層12の母材121と同じか又はそれよりもやや小さい平面寸法を有している。
【0036】
本実施形態において、上述の透明電極から成る第2電極16を用いる代わりに、
図1(b)に示す第2電極16Aを用いてもよい。なお、
図1(b)では、(a)とは上下を反転して示している。この第2電極16Aは、レーザ光に対して不透明な金属から成る正方形の板状部材の中央が正方形状にくり抜かれた構成を有する。板状部材がくり抜かれた部分を窓部161Aと呼び、板状部材が残された部分を枠部162Aと呼ぶ。板状部材(枠部162Aの外側)の正方形は1辺800μmであり、窓部161Aの正方形は1辺600μmである。この場合、第1電極15Aには、第2電極16Aの板状部材よりも小さい、1辺200μmの正方形状のものを用いる。
【0037】
ここまでに挙げた各構成要素の寸法は一例であって、本発明ではこれらの寸法には限定されない。
【0038】
2次元フォトニック結晶層12は、
図2(a)に示すように、板状の母材121に、それとは屈折率が異なる異屈折率領域対122を正方格子状に配置したものである。異屈折率領域対122は母材121のうちの正方形の領域(以下、「フォトニック結晶領域」と呼ぶ)内に配置されており、フォトニック結晶領域内がフォトニック結晶として機能する。フォトニック結晶領域の大きさは前述の第2電極16又は16Aと同じか又はそれよりもやや大きい。なお、フォトニック結晶領域は円形状や六角形状など、正方形状以外の形状であってもよい。正方格子の周期長aは、フォトニック結晶領域内の屈折率を勘案して、活性層11における発光波長帯内の波長に対応する287nmとした。母材121の材料はGaAsであり、平面寸法は活性層11等と同じであって、厚みは約300nmである。これら周期長aや厚みは、活性層11における発光波長帯に応じて適宜変更すればよい。
【0039】
異屈折率領域対122は、第1異屈折率領域1221と第2異屈折率領域1222から成る。第1異屈折率領域1221と第2異屈折率領域1222はいずれも、母材121に形成された円筒状の空孔である。第1異屈折率領域1221は第2異屈折率領域1222よりも、平面形状の円の面積が大きく、厚みが薄い(
図2(b))。例えば、第1異屈折率領域1221では平面形状の円の半径を39.6nm(面積を4940nm
2)、厚みを165nmとし、第2異屈折率領域1222では平面形状の円の半径を32.4nm(面積を3290nm
2)、厚みを200nmとする。1個の異屈折率領域対122内の第1異屈折率領域1221の重心と第2異屈折率領域1222の重心は、x方向に0.25a、y方向に0.25a、ずれて配置されている。このずれは、x方向、y方向共に0.15a〜0.35aの範囲内とすればよい(特許文献1参照)。
【0040】
図2に示した平面形状の面積が異なる2個の異屈折率領域を有する異屈折率領域対の代わりに、
図3に示すように、平面形状の面積が等しく厚みが異なる第1異屈折率領域1221Aと第2異屈折率領域1222Aから成る異屈折率領域対122Aを有する2次元フォトニック結晶層12Aを用いてもよい。この異屈折率領域対122Aでは、第1異屈折率領域1221Aと第2異屈折率領域1222Aは、平面形状が同面積の円形であって、厚みが第1異屈折率領域1221Aの方が第2異屈折率領域1222Aよりも薄い。
【0041】
また、第1異屈折率領域及び第2異屈折率領域の平面形状は円形には限らず、三角形や四角形等であってもよい。また、第1異屈折率領域と第2異屈折率領域は平面形状が同形状である必要はなく、例えば一方が円形、他方が三角形であってもよい。さらに、第1異屈折率領域及び第2異屈折率領域は空孔である必要はなく、母材とは屈折率が異なる部材が埋め込まれたものであってもよい。第1異屈折率領域と第2異屈折率領域は互いに異なる材料から成るものであってもよい。
【0042】
(2) 本実施形態の2次元フォトニック結晶面発光レーザの動作
次に、本実施形態の2次元フォトニック結晶面発光レーザ10の動作を説明する。ここでは
図2に示した2次元フォトニック結晶層12を有する場合を例として説明するが、それ以外の上記各構成の場合も同様である。
【0043】
第1電極15と第2電極16の間に所定の電圧を印加することにより、両電極から活性層11に電流が注入される。その際、第1電極15(15A)よりも第2電極16(第2電極16Aの枠部162A)の方が面積が広いことから、活性層11においては、第2電極16よりも狭く且つ第1電極15よりも広い範囲(電流注入範囲111)内に電流(電荷)が集中的に注入される(
図4(a), (b))。これにより、活性層11の電流注入範囲111から、所定の波長帯内の波長を有する発光が生じる。こうして生じた発光は、2次元フォトニック結晶層12の異屈折率領域対122が配置されている範囲内において、正方格子の周期長aに対応した波長の光が後述のように選択的に増幅され、レーザ発振する。発振したレーザ光は、第1電極15側から外部に出射する。その際、2次元フォトニック結晶面発光レーザ10ではレーザ光が透明電極である第1電極15を通過し、2次元フォトニック結晶面発光レーザ10Aではレーザ光が窓部161Aを通過する。なお、レーザ光のうち第2電極16側に向かうものは、第2電極16により反射され、最終的には第1電極15側から外部に出射する。
【0044】
本実施例における2次元フォトニック結晶内での光の増幅について説明する。活性層11の電流注入範囲111から2次元フォトニック結晶層12に導入された光は、2次元フォトニック結晶層12に平行な方向に伝播する。そして、異屈折率領域対122においてその形状等により定まる確率で、伝播方向が90°あるいは180°変化する(
図5)。隣接する2個の異屈折率領域対122でそれぞれ伝播方向がx方向からy方向(又はその逆)に90°変化する光は、光路長差がaとなり、干渉により強められる。また、隣接する2個の異屈折率領域対122でそれぞれ伝播方向がx方向(又はy方向)で180°変化する光は、光路長差が2aとなり、こちらも干渉により強められる。ここで、伝播方向が90°変化することは、2次元フォトニック結晶層12内で面状に光が拡がって分布し、レーザ光が面発光することに寄与するのに対して、伝播方向が180°変化することは、光が局在化して安定した面発光が妨げられる原因となる。
【0045】
しかし、本実施形態の2次元フォトニック結晶面発光レーザ10では以下の理由により安定した面発光が妨げられない。同一の異屈折率領域対122内では、第1異屈折率領域1221と第2異屈折率領域1222によってそれぞれ、光の伝搬方向が90°あるいは180°変化する(
図5)。このうち伝搬方向がx方向からy方向(又はその逆)に90°変化する光は、光路長差が0となり、干渉により強められる。それに対して伝搬方向がx方向(又はy方向)で180°変化する光は、光路長差が0.5aとなり、干渉により弱められる。これにより、伝播方向がx方向(又はy方向)で180°変化することが抑制され、光が局在化することが防止されると共に、伝搬方向がx方向からy方向(又はその逆)に90°変化する光の強度をより一層強めることができる。こうして、2次元フォトニック結晶層12内における波長がaである光が干渉により強められ、この干渉が2次元フォトニック結晶層12内の広い領域内で繰り返し生じることにより、レーザ発振する。
【0046】
本実施形態の2次元フォトニック結晶面発光レーザ10ではさらに、第1異屈折率領域1221Aが第2異屈折率領域1222Aよりも平面形状の面積が大きいか又は同じであって厚みが薄いため、第1異屈折率領域1221と第2異屈折率領域1222の体積が比較的近い。そのため、第1異屈折率領域1221と第2異屈折率領域1222でそれぞれ進行方向が180°変化する光の強度が近くなり、干渉による弱め合いの作用が大きくなる。そのため、本実施形態の2次元フォトニック結晶面発光レーザ10は、従来の異屈折率領域対を用いたものよりも光の局在化が一層抑制され、より大きい出力のレーザ光を得ることができる。
【0047】
(3) 本実施形態の2次元フォトニック結晶面発光レーザの詳細設計
本実施形態の2次元フォトニック結晶面発光レーザ10は、上記のように第1異屈折率領域1221と第2異屈折率領域1222の体積が比較的近いことによる特長と共に、安定したレーザ発振が得られる2次元フォトニック結晶面発光レーザを設計する自由度が高いという特長も有する。以下、本実施形態の2次元フォトニック結晶面発光レーザの詳細設計の例を示す。
【0048】
図6に、1個の
異屈折率領域対の周囲に形成される電界の方向及び強度を計算した結果を示す。ここでは、
図5に示した、2次元フォトニック結晶層12に平行な断面1及び断面2でそれぞれ計算を行った。断面2は第1異屈折率領域1221Aと第2異屈折率領域1222Aの双方を含んでいるのに対して、断面1は第2異屈折率領域1222Aのみを含んでいる。
図6の計算結果によれば、断面2では第1異屈折率領域1221Aと第2異屈折率領域1222Aの間の点を中心に点対称な電界が形成され、第1異屈折率領域1221A内の電界と第2異屈折率領域1222Aの電界が同じ大きさで180°異なる向きとなる。そのため、断面2に平行な電界成分が打ち消される。それに対して断面1では、電界の方向は断面1と同様であって、第2異屈折率領域1222Aのみが存在することにより、第2異屈折率領域1222Aの部分とそれに対向する第1異屈折率領域1221Aの直下の空孔が無い部分の電界成分が打ち消されない。これにより、2次元フォトニック結晶層12(及び断面2に平行な電界成分)に垂直な方向にレーザ光が出射し易くなる。
【0049】
図7に、本実施形態の2次元フォトニック結晶面発光レーザにつき、閾値利得を計算した一例を示す。ここでは、第1異屈折率領域1221Aと第2異屈折率領域1222Aは共に平面の5%の面積を占める円形であって、第1異屈折率領域1221Aの厚みd
1が180nm、第2異屈折率領域1222Aの厚みd
2が200nmであり、フォトニック結晶領域が1辺400μmである場合について計算を行った。以下、第1異屈折率領域及び第2異屈折率領域が平面で占める面積の割合がx%及び
y%である場合を「FFx&y%」と呼ぶ(
図7の例では「FF5&5%」)。「FF」は「フィリングファクター(Filling Factor)」の略称である。この計算によれば、「バンド端A」及び「バンド端B」と呼ばれる、異なる2種の振動モードについて、最も閾値利得が小さい基本振動モード、その次に閾値利得が小さい第1高次モード、及び閾値利得がより大きい第2以降の高次モードの閾値利得の値が得られる。基本振動モードと第1高次モードの閾値利得の値の差を「閾値利得差Δα」と呼び、この閾値利得差Δαの値が大きいほど、基本振動モードのみの安定したレーザ発振が得られる。計算結果より、この例ではバンド端Aよりもバンド端Bの方が閾値利得が小さいため、バンド端Aで発振する。
【0050】
図7において、閾値利得差Δαに着目すると、バンド端Aよりもバンド端Bの方が閾値利得差Δαの値が大きく、安定したレーザ発振が期待できることがわかる。そこで、バンド端Bの閾値利得が最も低くなるように設計を行えば、より大面積での安定な発振が期待できる。そこで、閾値利得αの値と関連のある、面垂直方向への放射係数
αvの計算を行った。
図8に、
図7の例から第1異屈折率領域1221Aの厚みd
1のみを変えてバンド端A及びバンド端Bにおける面垂直方向への放射係数α
vを計算した結果をグラフで示す。また、
図9に、厚みd
1とd
2の双方を様々に変えてバンド端A及びバンド端Bにおける面垂直方向への放射係数α
vを計算した結果をグラフで示す。これらのグラフの横軸は、
図8では厚みd
2とd
1の差とし、
図9では厚みd
2とした。このように厚みd
1及びd
2の値を様々に変えて、2次元フォトニック結晶面発光レーザの詳細設計を行うことができる。
【0051】
図10に、フォトニック結晶領域を
図7の例よりも大きい1辺800μmとした場合につき、閾値利得を計算した一例を示す。ここでは、FF5&5%、d
1を205nm、d
2を240nmとした。フォトニック結晶領域のサイズが
図7の例よりも大きいにも関わらず、閾値利得差Δαは、バンド端Bにおいて
図7の例とほぼ同等の4.8cm
-1という値が得られた。デバイスを大きくするほどレーザ光の出力を大きくすることができ、この例では20〜30W級の出力のレーザ素子を得ることができると考えられる。
【0052】
図11に、デバイスの大きさを変えて閾値利得差Δαを計算した結果をグラフで示す。ここでは、FF、d
1及びd
2の値を
図7及び
図10の計算で用いた値と同じとした2つの例(実施例1及び2)を示す。比較例として、第1異屈折率領域の方が第2異屈折率領域よりも面積が大きく且つ厚みが厚いもの(比較例1)、及び格子点に1個の異屈折率領域のみを配置したもの(比較例2)を示す。なお、比較例1及び2では、従来より円形の異屈折率領域を用いる場合よりもレーザ光の出力を大きくすることができると考えられてきた、平面形状が直角二等辺三角形である異屈折率領域を用いた。この計算結果より、実施例1及び2の方が比較例1及び2よりも、同じ値の閾値利得差Δαを得る場合にデバイスをより大きくすることができることがわかる。従って、実施例1及び2の方が比較例1及び2よりも、レーザ光の出力を大きくすることができる。
【0053】
(4) 非円形の異屈折率領域を用いた実施形態の2次元フォトニック結晶面発光レーザ
図12に、第1異屈折率領域1221B及び第2異屈折率領域1222Bに、楕円形の平面形状を有する異屈折率領域対122Bを用いた2次元フォトニック結晶層12Bを示す。この2次元フォトニック結晶層12Bを有する2次元フォトニック結晶面発光レーザの、2次元フォトニック結晶層12B以外の構成は前述の2次元フォトニック結晶面発光レーザ10と同様である。第1異屈折率領域1221Bは、基準軸(楕円の長軸)1221BLが、第1異屈折率領域1221Bの重心1221BGと第2異屈折率領域1222Bの重心1222BGを結ぶ直線122BSに対して90°の方向となるように配置されている。同様に、第2異屈折率領域1222Bは、基準軸(楕円の長軸)1222BLが直線122BSに対して90°の方向となるように配置されている(
図12(c))。なお、第1異屈折率領域1221Bの基準軸1221BL及び/又は第2異屈折率領域1222Bの基準軸1222BLは、直線122BSに対して90°の方向である必要はなく、例えば
図13(a)及び(b)に示すように、45°〜135°の範囲内の方向であればよい。なお、
図13(a)及び(b)では破線で45°及び135°の方向を示している。
【0054】
第1異屈折率領域1221Bの重心1221BGと第2異屈折率領域1222Bの重心1222BGは、本実施形態ではx方向に0.25a、y方向に0.25a、ずれて配置されているが、本発明では重心のずれの大きさ及び方向はこの例には限定されない。第1異屈折率領域1221B及び第2異屈折率領域1222Bの楕円の形状は、本実施形態ではいずれも長軸と短軸の比が5:3である相似形としたが、本発明ではこの比には限定されず、また、相似形であることにも限定されない。第1異屈折率領域1221Bは、平面形状がより小さい第2異屈折率領域1222Bよりも厚みが薄い(
図12(b))。
【0055】
図12に示した2次元フォトニック結晶層12Bを用いた2次元フォトニック結晶面発光レーザ(実施例3)につき、デバイスの大きさを変えて閾値利得差Δαを計算した結果を
図14のグラフで示す。
図14には合わせて、
図11と同じ実施例及び比較例のデータを示した。なお、デバイスの大きさは、
図11よりも広い範囲(最大で1800μm)で求めている。この結果より、実施例3の方が実施例1及び2(並びに各比較例)よりも、同じ値の閾値利得差Δαを得る場合にデバイスをより大きくすることができることがわかる。これは、実施例3では、2個の円形の異屈折率領域から成る異屈折率領域対を用いた実施例1及び2よりも、屈折率の分布が2個の異屈折率領域の重心を結ぶ直線122BSの方向に拡がることが抑えられ、異屈折率領域対が全体として円形により近くなったことにより、光が干渉により強められる作用が弱くなることを抑えることができることによる。
【0056】
2個の異屈折率領域の平面形状は、
図12並びに
図13(a)及び(b)に示した構成ではいずれも楕円形としたが、
図13(c)に示すように長方形やその他の正方形以外の四角形としたり、
図13(d)に示すように二等辺三角形やその他の正三角形以外の三角形としてもよい。さらには、正多角形以外の五角形以上の多角形や、任意の閉曲線から成る不定形であってもよい。いずれの場合も、2個の異屈折率領域は、断面相乗モーメントI
xyが0となるx軸及びy軸(前述の正方格子で規定したx方向及びy方向とは異なる)のうち断面2次モーメントI
x, I
yが小さい方の軸(基準軸)が、2個の異屈折率領域の重心を結ぶ直線に対して45°〜135°の方向となるように配置すればよい。
【0057】
図15に、非円形である楕円形の第1異屈折率領域1221Cと円形の第2異屈折率領域1222Cから成る異屈折率領域対122Cを用いた2次元フォトニック結晶層12Cを示す。この2次元フォトニック結晶層12Cを有する2次元フォトニック結晶面発光レーザの、2次元フォトニック結晶層12C以外の構成は、これまでに述べた2次元フォトニック結晶面発光レーザ10と同様である。第1異屈折率領域1221Cは、基準軸(楕円の長軸)1221CLが、第1異屈折率領域1221Cの重心1221CGと第2異屈折率領域1222Cの重心1222CGを結ぶ直線122CSに対して90°の方向となるように配置されている(
図15(c))。なお、この楕円の長軸1221CLの方向は前記90°の方向には限らず、
図16(a)及び(b)に示すように、45°〜135°の範囲内の方向であればよい。第1異屈折率領域1221Cは、平面形状がより小さい第2異屈折率領域1222Cよりも厚みが薄い(
図15(b))。
【0058】
図15に示した2次元フォトニック結晶層12Bを用いた2次元フォトニック結晶面発光レーザ(実施例4)につき、デバイスの大きさを変えて閾値利得差Δαを計算した結果を
図17のグラフで示す。
図17には合わせて、
図11と同じ実施例及び比較例のデータを示した。デバイスの大きさは、
図14の例と同じ範囲で求めた。この結果より、実施例1及び2(並びに各比較例)よりも、同じ値の閾値利得差Δαを得る場合にデバイスをより大きくすることができることがわかる。また、
図14に示した実施例3と比較しても、同じ値の閾値利得差Δαを得る場合にデバイスをより大きくすることができる。これは、屈折率の分布が2個の異屈折率領域の重心を結ぶ直線122CSの方向に拡がることが抑えられると共に、異屈折率領域対122Cの周囲に形成される電界に非対称性が生じ、干渉により電界の強度が小さくなることが抑えられ、光の強度を大きくすることができることによる。
【0059】
図15並びに
図16(a)及び(b)の例では第1異屈折率領域1221Cを楕円形としたが、
図16(c)に示すように、第1異屈折率領域1221C1を円形とし、第2異屈折率領域1222C1を楕円形などの非円形としてもよい。この例では、第2異屈折率領域1222C1の基準軸(楕円の長軸)1221C1Lが、第1異屈折率領域1221C1の重心1221C1Gと第2異屈折率領域1222C1の重心1222C1Gを結ぶ直線122C1Sに対して90°の方向となるように配置されている。あるいは、
図16(d)及び(e)に示すように、非円形の異屈折率領域を長方形やその他の正方形以外の四角形、二等辺三角形やその他の正三角形以外の三角形、あるいは正多角形以外の五角形以上の多角形や、任意の閉曲線から成る不定形としてもよい。いずれの場合も、非円形の方の異屈折率領域は、断面相乗モーメントI
xyが0となるx軸及びy軸(前述の正方格子で規定したx方向及びy方向とは異なる)のうち断面2次モーメントI
x, I
yが小さい方の軸(基準軸)が、2個の異屈折率領域の重心を結ぶ直線に対して45°〜135°の方向となるように配置すればよい。
【0060】
(5) 本実施形態の2次元フォトニック結晶面発光レーザの製造方法
図18を用いて、本実施形態の2次元フォトニック結晶面発光レーザ10の製造方法につき、2次元フォトニック結晶層12の作製方法を中心にを説明する。
まず、第2クラッド層142の上に活性層11を作製し、該活性層11の上にスペーサ層13を作製する。さらに、スペーサ層13の上に、2次元フォトニック結晶層12の母材121を作製する(
図18(a))。これら第2クラッド層142、活性層11、スペーサ層13及び母材121の作製方法は、従来の2次元フォトニック結晶面発光レーザで用いられている方法と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0061】
次に、母材121の上に、下部マスク層21を作製する(
図18(b))。下部マスク層21は窒化シリコン(SiN
x)から成り、プラズマCVD法で作製することができる。
【0062】
次に、下部マスク層21の上に第1レジスト221を塗布し、露光法や電子ビーム法によって、第1異屈折率領域1221及び第2異屈折率領域1222の平面形状にそれぞれ対応する第1孔2221及び第2孔2222が配置されたパターンを形成することにより、第1上部マスク22を作製する(
図18(c))。
【0063】
次に、第1上部マスク22の第1孔2221及び第2孔2222を介してエッチングガス(エッチング剤)を導入することにより、それら第1孔2221及び第2孔2222の直下の下部マスク層21及び母材121を所定の第1深さd
1までエッチングする(
図18(d))。エッチングガスにはヨウ化水素・キセノン混合ガスを用いる。ヨウ化水素・キセノン混合ガスの代わりに塩素をエッチングガスとして用いてもよいし、エッチングガスの代わりに液体のエッチング剤を用いてもよい。第1孔2221と第2孔2222の面積が異なる場合には、面積が大きい方がエッチング剤が浸透しやすいため、より深くエッチングされる。この場合には、面積が大きい方の深さが第1深さd
1に達するまで、エッチングを行う。
【0064】
次に、第1上部マスク22を除去したうえで(
図18(e))、下部マスク層21の上に第2レジスト231を塗布し、第1異屈折率領域1221よりも厚みが厚い第2異屈折率領域1222に対応する位置にのみ、該第2レジスト231に孔232を露光法や電子ビーム法により形成することにより、第2上部マスク23を作製する(
図18(f))。孔232は、対応する第2異屈折率領域1222の平面形状の全体を内包し、且つ第1異屈折率領域1221の平面形状に掛からなければ、大きさや形状は問わない。この条件さえ満たせば、孔232と第2異屈折率領域1222の位置は、さほど厳密に合わせる必要はない。
【0065】
次に、第2上部マスク23の孔232を介してエッチングガス(エッチング剤)を導入することにより、第2異屈折率領域1222のみを、所定の第2深さd
2までエッチングする(
図18(g))。その際、第2上部マスク23の孔232が第2異屈折率領域1222の平面形状からはみ出すように形成されている場合には、そのはみ出した部分において下部マスク層21がエッチングされるが、下部マスク層21の厚みを適切に設定しておくことにより、母材121が第2異屈折率領域1222からはみ出してエッチングされることはない。
【0066】
次に、第2上部マスク23を除去し(
図18(h))、さらに下部マスク層21を除去することにより、2次元フォトニック結晶層12が完成する(
図18(i))。下部マスク層21の除去は、母材121の材料であるGaAsをエッチングせず、且つ下部マスク層21の材料であるSiN
xをエッチングすることができるエッチング剤であるフッ化水素を用いて行う。
【0067】
その後、2次元フォトニック結晶層12の上に第1クラッド層141を作製し、第1クラッド層141の表面に第1電極15を、第2クラッド層142の表面に第2電極16を作製することにより、2次元フォトニック結晶面発光レーザ10が完成する。第1クラッド層141、第1電極15及び第2電極16の作製方法は、従来の2次元フォトニック結晶面発光レーザで用いられている方法と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0068】
図19に、本実施形態の2次元フォトニック結晶面発光レーザの製造方法により作製された2次元フォトニック結晶層の電子顕微鏡写真を示す。この写真は、2次元フォトニック結晶層を作製後、第2上部マスク23及び下部マスク層21を除去する前(
図18(g)に相当)の段階で撮影したものである。これらの電子顕微鏡写真から、2次元フォトニック結晶層12に、深さが約30nm異なる2個の孔の対(異屈折率領域対)が形成されていることがわかる。下部マスク層21には、2次元フォトニック結晶層12の孔よりも大きい孔が形成されているが、この後に下部マスク層21が除去されるため、差し支えはない。