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特許6860186認証システム、認証方法、認証用の皮膜、及び認証用の皮膜の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860186
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】認証システム、認証方法、認証用の皮膜、及び認証用の皮膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/337 20140101AFI20210405BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20210405BHJP
   C08F 2/48 20060101ALI20210405BHJP
   B42D 25/36 20140101ALI20210405BHJP
【FI】
   B42D25/337
   C08L101/00
   C08F2/48
   B42D25/36
【請求項の数】13
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2016-128488(P2016-128488)
(22)【出願日】2016年6月29日
(65)【公開番号】特開2018-1476(P2018-1476A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000166683
【氏名又は名称】互応化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 倫也
(72)【発明者】
【氏名】丸澤 尚
(72)【発明者】
【氏名】橋本 壯一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 貴
【審査官】 藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−010581(JP,A)
【文献】 特表2009−516050(JP,A)
【文献】 特開2011−081203(JP,A)
【文献】 特開2015−120113(JP,A)
【文献】 特開平09−053024(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/053756(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/00 − 25/485
G06K 7/00 − 7/14
G06K 17/00 − 19/18
G07D 7/00 − 7/207
C08L 101/00 −101/14
C08F 2/48 − 2/50
G03F 7/004− 7/04
G03F 7/06
G03F 7/075− 7/115
G03F 7/16 − 7/18
B05D 5/00 − 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工物メトリクス要素を有する皮膜を備える被認証物と、
前記被認証物を読み取る読取装置と、
前記被認証物を読み取った結果に基づいて、前記被認証物の認証の可否を判定する判定装置と、を備え、
前記皮膜は、硬化性樹脂組成物の塗膜の硬化物を含み、
前記皮膜は、皺を有する表面を備え、前記皺が、前記人工物メトリクス要素を構成し、
前記被認証物は、プリント配線板であり、
前記皮膜は、ソルダーレジスト層である、
証システム。
【請求項2】
人工物メトリクス要素を有する皮膜を備える被認証物と、
前記被認証物を読み取る読取装置と、
前記被認証物を読み取った結果に基づいて、前記被認証物の認証の可否を判定する判定装置と、を備え、
前記皮膜は、硬化性樹脂組成物の塗膜の硬化物を含み、
前記皮膜は、皺を有する表面を備え、前記皺が、前記人工物メトリクス要素を構成し、
前記硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤(A)と、熱硬化性樹脂(B)と、一分子中に少なくとも一つのエチレン性不飽和結合を含む不飽和化合物(C)とを含む、
証システム。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂(B)が、環状エーテル構造を有する、
請求項に記載の認証システム。
【請求項4】
前記皮膜は、前記人工物メトリクス要素を有する第一の領域と、前記人工物メトリクス要素を有さない第二の領域と、を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の認証システム。
【請求項5】
被認証物が備える皮膜が有する人工物メトリクス要素を読み取る読取工程と、
前記人工物メトリクス要素を読み取った結果に基づいて、前記被認証物の認証の可否を判定する判定工程と、を含み、
前記皮膜は、硬化性樹脂組成物の塗膜の硬化物を含み、
前記皮膜は、皺を有する表面を備え、前記皺が、前記人工物メトリクス要素を構成し
前記硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤(A)と、熱硬化性樹脂(B)と、一分子中に少なくとも一つのエチレン性不飽和結合を含む不飽和化合物(C)とを含む、
認証方法。
【請求項6】
硬化性樹脂組成物の塗膜の硬化物を含み、
皺を有する表面を備え、前記皺が人工物メトリクス要素を構成し
前記硬化性樹脂組成物が、光重合開始剤(A)と、熱硬化性樹脂(B)と、一分子中に少なくとも一つのエチレン性不飽和結合を含む不飽和化合物(C)とを含む、
認証用の皮膜。
【請求項7】
前記人工物メトリクス要素を有する第一の領域と、前記人工物メトリクス要素を有さない第二の領域と、を含む、
請求項に記載の認証用の皮膜。
【請求項8】
皺を有する表面を備え、前記皺が人工物メトリクス要素を構成する認証用の皮膜の製造方法であり、
硬化性樹脂組成物の塗膜を形成してから、前記塗膜を硬化させることで前記皮膜を形成することを含み、
前記塗膜を硬化させる際に、前記塗膜の表層の硬化の程度が前記塗膜の深部よりも高い状態を経させてから、前記塗膜全体を硬化させることで、前記皺を形成し、
前記硬化性樹脂組成物は、熱硬化性及び光硬化性を有するとともに、前記塗膜は前記硬化性樹脂組成物から形成された単層の膜であり、
前記塗膜を硬化させる際に、前記塗膜をその表層の硬化の程度が深部よりも高くなるように前記塗膜を露光してから、前記塗膜を加熱することで、前記塗膜全体を硬化させる、
証用の皮膜の製造方法。
【請求項9】
皺を有する表面を備え、前記皺が人工物メトリクス要素を構成する認証用の皮膜の製造方法であり、
硬化性樹脂組成物の塗膜を形成してから、前記塗膜を硬化させることで前記皮膜を形成することを含み、
前記塗膜を硬化させる際に、前記塗膜の表層の硬化の程度が前記塗膜の深部よりも高い状態を経させてから、前記塗膜全体を硬化させることで、前記皺を形成し、
前記硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤(A)と、熱硬化性樹脂(B)と、一分子中に少なくとも一つのエチレン性不飽和結合を含む不飽和化合物(C)とを含む、
証用の皮膜の製造方法。
【請求項10】
前記硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤(A)と、熱硬化性樹脂(B)と、一分子中に少なくとも一つのエチレン性不飽和結合を含む不飽和化合物(C)とを含む、
請求項8に記載の認証用の皮膜の製造方法。
【請求項11】
皺を有する表面を備え、前記皺が人工物メトリクス要素を構成する認証用の皮膜の製造方法であり、
硬化性樹脂組成物の塗膜を形成してから、前記塗膜を硬化させることで前記皮膜を形成することを含み、
前記塗膜を硬化させる際に、前記塗膜の表層の硬化の程度が前記塗膜の深部よりも高い状態を経させてから、前記塗膜全体を硬化させることで、前記皺を形成し、
前記硬化性樹脂組成物は、熱硬化性及び光硬化性を有する第一組成物と、光硬化性を有する第二組成物とを含み、
前記塗膜は、前記第一組成物から形成された第一塗膜と、前記第一塗膜上にあり、前記第二組成物から形成された第二塗膜と、を含み、
前記塗膜を硬化させる際に、前記塗膜を露光することで、前記第一塗膜と前記第二塗膜の光硬化反応を前記第二塗膜の硬化の程度が前記第一塗膜の硬化の程度より高くなるように進行させてから、前記塗膜を加熱することで、前記塗膜全体を硬化させる、
証用の皮膜の製造方法。
【請求項12】
皺を有する表面を備え、前記皺が人工物メトリクス要素を構成する認証用の皮膜の製造方法であり、
硬化性樹脂組成物の塗膜を形成してから、前記塗膜を硬化させることで前記皮膜を形成することを含み、
前記塗膜を硬化させる際に、前記塗膜の表層の硬化の程度が前記塗膜の深部よりも高い状態を経させてから、前記塗膜全体を硬化させることで、前記皺を形成し、
前記硬化性樹脂組成物は、熱硬化性を有するとともに光硬化性を有さない第一組成物と、光硬化性を有する第二組成物と、を含み、
前記塗膜は、前記第一組成物から形成された第一塗膜と、前記第一塗膜上にあり、前記第二組成物から形成された第二塗膜と、を含み、
前記塗膜を硬化させる際に、前記塗膜を露光することで前記第二塗膜を硬化させてから、前記塗膜を加熱することで、前記塗膜全体を硬化させる、
証用の皮膜の製造方法。
【請求項13】
前記第二組成物は、光重合開始剤(A)と、熱硬化性樹脂(B)と、一分子中に少なくとも一つのエチレン性不飽和結合を含む不飽和化合物(C)とを含む、
請求項11又は請求項12に記載の認証用の皮膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証システム、認証方法、認証用の皮膜、及び認証用の皮膜の製造方法に関し、より詳しくは、人工物メトリクス要素を利用した認証システム、人工物メトリクス要素を利用した認証方法、人工物メトリクス要素を有する皮膜、及び人工物メトリクス要素を有する皮膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人工物メトリクス技術を適用した個体認証が提案されている。人工物メトリクス技術とは、被認証物が備える固有の物理的特徴(人工物メトリクス要素)を分析し、分析結果に基づくデータと、予め登録された認証用データと照合する技術である。すなわち、人工物メトリクス技術とは、人間の指紋、声紋、虹彩に相当する固有の物理的特徴を被認証物から読取ることによって、認証を行う技術である。
【0003】
特許文献1には、人工物メトリクス技術の一例が記載されている。特許文献1には、基材の片面に、真偽判別要素であるホログラムとタガント(追跡用添加物)としての微小細粒とを含むラベルを設けることが記載されている。すなわち、特許文献1では、人工物メトリクス要素である微小細粒をラベルに追加し、このラベルを基材に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−261967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように被認証物に人工物メトリクス要素を追加的に設ける場合、そのための工程が必要となる。
【0006】
本発明の目的は、被認証物に人工物メトリクス要素を設ける手間を削減し得る認証システム、認証方法、認証用の皮膜、及び認証用の皮膜の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る認証システムは、
被認証物が備える皮膜が有する人工物メトリクス要素を読み取る読取装置と、
前記人工物メトリクス要素を読み取った結果に基づいて、前記被認証物の認証の可否を判定する判定装置と、を備え、
前記皮膜は、硬化性樹脂組成物の塗膜の硬化物を含み、
前記皮膜は、皺を有する表面を備え、前記皺が、前記人工物メトリクス要素を構成している。
【0008】
本発明の一態様に係る認証方法は、
被認証物が備える皮膜が有する人工物メトリクス要素を読み取る読取工程と、
前記人工物メトリクス要素を読み取った結果に基づいて、前記被認証物の認証の可否を判定する判定工程と、を含み、
前記皮膜は、硬化性樹脂組成物の塗膜の硬化物を含み、
前記皮膜は、皺を有する表面を備え、前記皺が、前記人工物メトリクス要素を構成している。
【0009】
本発明の一態様に係る認証用の皮膜は、
硬化性樹脂組成物の塗膜の硬化物を含み、
皺を有する表面を備え、前記皺が人工物メトリクス要素を構成している。
【0010】
本発明の一態様に係る認証用の皮膜の製造方法は、
皺を有する表面を備え、前記皺が人工物メトリクス要素を構成する認証用の皮膜の製造方法であり、
硬化性樹脂組成物の塗膜を形成してから、前記塗膜を硬化させることで前記皮膜を形成することを含み、
前記塗膜を硬化させる際に、前記塗膜の表層の硬化の程度が前記塗膜の深部よりも高い状態を経させてから、前記塗膜全体を硬化させることで、前記皺を形成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、被認証物に人工物メトリクス要素を設ける手間を削減し得る認証システム、認証方法、認証用の皮膜、及び認証用の皮膜の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る認証システムの構成の一例を示す模式図である。
図2図2A及び図2Bは、同上の認証システムにおいて被認証物が備える皮膜の拡大写真である。
図3図3は、同上の認証システムに含まれる判定装置の構成の一例を示すブロック図である。
図4図4A図4Cは、同上の認証システムにおいて被認証物が備える皮膜を形成する方法の一例を示す概略の断面図である。
図5図5A図5Eは、同上の認証システムにおいて被認証物が備える皮膜を形成する方法の一例を示す概略の断面図である。
図6図6A図6Eは、同上の認証システムにおいて被認証物が備える皮膜を形成する方法の一例を示す概略の断面図である。
図7図7A図7Eは、同上の認証システムにおいて被認証物が備える皮膜を形成する方法の一例を示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図1を参照しながら説明する。
【0014】
本実施形態に係る認証システム1は、被認証物2が備える皮膜20が有する人工物メトリクス要素21を読み取る読取装置3と、人工物メトリクス要素21を読み取った結果に基づいて被認証物2の認証の可否を判定する判定装置4と、を備える。この皮膜20は、硬化性樹脂組成物の硬化物である。皮膜20は、皺210を有する表面を備え、この皺210が、人工物メトリクス要素21を構成している。
【0015】
本実施形態では、皮膜20の表面の皺210を人工物メトリクス要素として利用することで、被認証物2に人工物メトリクス要素を設ける手間を削減できる。被認証物2が、その構成要素として皮膜20を有する場合には、被認証物2に人工物メトリクス要素21を設けるための工程を削減できる。
【0016】
また、人工物メトリクス要素21は、皮膜20の表面の皺210で構成されているため、人工物メトリクス要素21を複製することは困難である。したがって、本実施形態の被認証物2は、偽造されにくい。
【0017】
本実施形態の認証システム1を、更に詳しく説明する。なお、認証システム1は、下記の構成に限定されない。
【0018】
図1に示すように、認証システム1は、例えば、読取装置3と、判定装置4と、データベース5と、を備える。なお、図1に示す認証システム1は、被認証物2を含んでいないが、認証システム1が被認証物2を含んでいてもよい。
【0019】
被認証物2の例には、プリント配線板、電子機器、紙幣、有価証券、パスポート、証明書、個人認証媒体、ブランド品、クレジットカード、電子マネー用カード等のカード類、タグ等が含まれる。この場合、被認証物2が備える皮膜20は、製品を保護するための保護膜であってもよく、製品情報を表示するラベルであってもよい。被認証物2は、プリント配線板であることも好ましい。この場合の皮膜20は、例えば、ソルダーレジスト層である。この場合、プリント配線板が備えるソルダーレジスト層によって、プリント配線板の認証を行うことができる。
【0020】
皮膜20は、人工物メトリクス要素21を有している。この人工物メトリクス要素21は、皮膜20の表面の皺210で構成されている。皺210は不均一である。このため、人工物メトリクス要素21は、皺210で構成されたパターンである。
【0021】
皮膜20の表面全体が人工物メトリクス要素21を有してもよく、皮膜20の表面の一部が人工物メトリクス要素21を有していてもよい。本実施形態では、皮膜20は、人工物メトリクス要素21を有する第一の領域22と、人工物メトリクス要素21を有さない第二の領域23と、を含むことが好ましい。この場合、皮膜20の一部に存在する人工物メトリクス要素21を利用して認証を行うことができる。第二の領域23は、皺を有していなくてもよく、人工物メトリクス要素21を構成する皺210とは程度の異なる皺を有していてもよい。
【0022】
また、第一の領域22及び第二の領域23の組み合わせによって、被認証物2の偽造防止性能を向上させてもよい。例えば、皮膜20における、第一の領域22又は第二の領域23が配置されている位置に基づいて、認証をおこなってもよい。この場合、第一の領域22又は第二の領域23の配置位置に基づく認証、及び人工物メトリクス要素21を用いた認証からなる二段階認証をおこなうことができる。
【0023】
図2A及び図2Bは、人工物メトリクス要素21を有する皮膜20の拡大写真である。図2A及び図2Bに示すように、人工物メトリクス要素21は、皺210で構成されている。図2Aにおいて、X−X線の右側は第一の領域22を示し、X−X線の左側は第二の領域23を示す。図2Bに示す皮膜20は、絶縁層と、絶縁層上に設けられた導体配線とを覆っている。図2BのY−Y線の左側において、皮膜20の絶縁層と直接接する部分には皺210が形成されており、皮膜20の導体配線と直接接する部分には皺210が形成されていない。このため、皮膜20の絶縁層と直接接する部分が第一の領域22となり、皮膜20の導体配線と直接接する部分が第二の領域23となる。図2A及び図2Bに示すように、第一の領域22は、皺210で構成された人工物メトリクス要素21を有し、第二の領域23は、人工物メトリクス要素22を有していない。
【0024】
読取装置3は、人工物メトリクス要素21を読み取るための装置である。読取装置3は、人工物メトリクス要素21を読み取り可能であれば特に限定されない。読取装置3は、人工物メトリクス要素21を読み取った結果を判定装置4に出力する。皮膜20が第一の領域22及び第二の領域23を有する場合には、読取装置3は、皮膜20における第一の領域22又は第二の領域23が配置されている位置を読み取ってもよい。
【0025】
読取装置3は、例えば、人工物メトリクス要素21を撮像可能な光学的な撮像装置であってもよい。撮像装置で撮像した人工物メトリクス要素21の画像を読み取ることで、人工物メトリクス要素21を構成する皺210の形状を把握できる。撮像装置の例には、カメラ、スキャナ、電子顕微鏡、及びレーザー顕微鏡が含まれる。読取装置3が撮像装置である場合、人工物メトリクス要素21を読み取った結果は、人工物メトリクス要素21の画像であってもよい。
【0026】
読取装置3は、例えば、表面粗さ計であってもよい。表面粗さ計の例には、接触式の表面粗さ計及び非接触式の表面粗さ計が含まれる。表面粗さ計は、人工物メトリクス要素21を構成する皺210の微細な形状を測定できる。読取装置3が表面粗さ計である場合、人工物メトリクス要素21を読み取った結果は、人工物メトリクス要素21の粗さ曲線であってもよい。
【0027】
図3は、判定装置4の構成(ハードウェア構成)の一例を示すブロック図である。図3に示す判定装置4は、制御装置41、記憶装置42、入力装置43、表示装置44、メディア入出力装置45、通信インターフェース46、及び周辺機器インターフェース47を備える。各装置は、バス49で接続されている。判定装置4は、例えば、コンピュータである。
【0028】
制御装置41は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Accsess Memory)を備える。
【0029】
CPUは、記憶装置42、ROM、記録媒体等に記憶されたプログラムを、RAM上のワークエリアに呼び出して実行できる。CPUは、バス49で接続された各装置を、駆動及び制御できる。ROMは、ブートプログラム、BIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持できる。RAMは、プログラム、データ等を一時的に保持できる。制御装置41は、各種の処理を行うためのワークエリアを備え得る。
【0030】
記憶装置42の例には、HDD(ハードディスクドライブ)、及びSSD(ソリッドステートディスク)が含まれる。記憶装置42は、制御装置41が実行するプログラム、プログラムの実行に必要なデータ、OS(オペレーティング・システム)等を格納できる。制御装置41により、これらのプログラムは、必要に応じて読み出され、RAMに移され、CPUに読み出され、実行される。
【0031】
入力装置43の例には、キーボード、マウス、タッチパネル、タブレット端末等のポインティング・デバイス、及びテンキーが含まれる。入力装置43に入力された情報は、制御装置41に送られる。
【0032】
表示装置44は、例えば液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路(ビデオアダプタ等)と、で構成される。制御装置41から表示装置44に送られた情報は、ディスプレイ装置に表示される。
【0033】
メディア入出力装置45の例には、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、PDドライブ、CDドライブ、DVDドライブ、ブルーレイディスクドライブ、及びMOドライブが含まれる。メディア入出力装置45は、データの入力及び出力を行う。
【0034】
通信インターフェース46は、例えば、通信制御装置、通信ポート等を備える。通信インターフェース46は、ネットワークを介して判定装置4と外部装置との通信を媒介できる。通信インターフェース46は、通信の制御を行うことができる。通信インターフェース46は、例えば、判定装置4と、データベース5、読取装置3等との通信を媒介できる。このため、データベース5及び読取装置3は、通信インターフェース46を介して、判定装置4と接続され得る。
【0035】
周辺機器インターフェース47は、例えば、判定装置4に周辺機器を接続するためのポートである。判定装置4は、周辺機器とのデータの送受信を、周辺機器インターフェース47を介して行う。周辺機器インターフェース47は、USB端子、IEEE1394端子、RS−232C端子等で構成され得る。判定装置4は、複数の周辺機器インターフェース47を有し得る。周辺機器インターフェース47は、有線接続のための端子であってもよく、無線接続のための端子であってもよい。周辺機器インターフェース47が無線接続のための端子である場合、判定装置4と周辺機器とが無線で接続されてよい。
【0036】
バス49は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介するための経路である。
【0037】
上記の構成を備える判定装置4では、例えば、人工物メトリクス要素21を読み取った結果のデータ(登録用データ)をデータベース5に登録する処理(登録処理)、人工物メトリクス要素21を読み取った結果のデータ(照合用データ)と登録用データとを照合して、被認証物2の認証の可否を判定する処理(認証処理)等が行われる。登録処理及び認証処理は、記憶装置42等に記憶されているプログラムに従って、制御装置41が実行できる。
【0038】
以下、判定装置4で行われる登録処理について、詳しく説明する。登録処理では、例えば、下記のステップS101〜ステップS104が行われる。
【0039】
(ステップS101)
ステップS101では、読取装置3は、登録のために開示された被認証物2における人工物メトリクス要素21を読み取る。これにより、人工物メトリクス要素21を読み取った結果が得られる。
【0040】
(ステップS102)
ステップS102では、読取装置3から判定装置4に、通信インターフェース46を介して、人工物メトリクス要素21を読み取った結果が送られる。これにより、判定装置4は、人工物メトリクス要素21を読み取った結果を取得する。また、読取装置3で作成した人工物メトリクス要素21を読み取った結果をメディア入出力装置45によってメディアに記憶するととともに、メディア入出力装置45によってこのメディアから人工物メトリクス要素21の読み取った結果を取り出して判定装置4に送ってもよい。
【0041】
(ステップS103)
ステップS103では、判定装置4は、人工物メトリクス要素21を読み取った結果から、皺210で構成されるパターンを示す登録用データを作成する。なお、人工物メトリクス要素21を読み取った結果のデータが、そのまま登録用データとなってもよい。
【0042】
(ステップS104)
ステップS104では、判定装置4は、データベース5に、通信インターフェース46を介して、登録用データを送る。これにより、登録用データが、データベース5に登録される。なお、登録用データは、製造番号等の被認証物2の固有の情報と対応付けられてもよい。この固有の情報は、入力装置43で入力されてもよく、表示装置44に表示されてもよい。また、データベース5には、複数の被認証物2の複数の登録用データが登録されてもよい。
【0043】
以下、判定装置4で行われる認証処理について、詳しく説明する。認証処理では、例えば、下記のステップS201〜ステップS204が行われる。
【0044】
(ステップS201)
ステップS201では、読取装置3は、認証対象である被認証物2における人工物メトリクス要素21を読み取る。これにより、人工物メトリクス要素21を読み取った結果が作成される。このため、本実施形態に係る認証方法には、被認証物2が備える皮膜20が有する人工物メトリクス要素21を読み取る読取工程が含まれる。
【0045】
(ステップS202)
ステップS202では、読取装置3から判定装置4に、通信インターフェース46を介して、人工物メトリクス要素21を読み取った結果が送られる。これにより、判定装置4は、人工物メトリクス要素21を読み取った結果を取得する。このため、本実施形態に係る認証方法には、人工物メトリクス要素21を読み取った結果を取得する読取結果取得工程が含まれていてもよい。
【0046】
(ステップS203)
ステップS203では、判定装置4は、人工物メトリクス要素21の画像から、皺210で構成されるパターンを示す照合用データを作成する。なお、人工物メトリクス要素21を読み取った結果のデータが、そのまま照合用データとなってもよい。このため、本実施形態に係る認証方法には、人工物メトリクス要素21を読み取った結果から、照合用データを作成する照合用データ作成工程が含まれてもよい。
【0047】
(ステップS204)
ステップS204では、判定装置4は、登録用データと照合用データとを照合することにより、データベース5から照合用データと一致する登録用データを検索する。このため、本実施形態の認証方法には、登録用データと照合用データとを照合する照合工程が含まれてもよい。
【0048】
(ステップS205)
ステップS205では、照合用データと一致する登録用データが発見された場合、判定装置4は、認証OK(認証が「可」)と判定する。また、ステップS205では、照合用データと一致する登録用データが発見されない場合、判定装置4は、認証NG(認証が「否」)と判定する。換言すると、ステップS205では、判定装置4は、被認証物2の認証の可否を判定する。このため、本実施形態に係る認証方法には、人工物メトリクス要素21の画像に基づいて、被認証物2の認証の可否を判定する判定工程が含まれる。ステップS205では、判定装置4は、更に、製造番号等の被認証物2の固有の情報と、登録用データに対応付けられた被認証物2の固有の情報とを照合してもよい。この場合、誤判定を抑制できる。ステップS205における判定装置4による判定結果は、例えば、表示装置44に表示されてもよい。
【0049】
なお、認証システム1の構成は、上記の例に限定されない。
【0050】
例えば、認証処理を判定装置4で行い、登録処理を判定装置4とは別のコンピュータで行ってもよい。
【0051】
例えば、認証システム1に含まれる各装置が、インターネット等のネットワークを介して接続されていてもよい。例えば、判定装置4と読取装置3、あるいは判定装置4とデータベース5が、通信インターフェース46を介さずに、インターネット等のネットワークを介して接続されていてもよい。
【0052】
以下、認証用の皮膜20について更に詳しく説明する。
【0053】
皮膜20は、上記の通り、硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、表面が皺210を有する。皺210の高低差は、例えば、1〜1000μmの範囲内である。皺210におけるピーク間の幅は、例えば、5〜5000μmの範囲内である。この皺210が人工物メトリクス要素21を構成している。
【0054】
皮膜20は、以下の製造方法によって、製造され得る。
【0055】
本実施形態の皮膜20の製造方法は、硬化性樹脂組成物の塗膜24を形成してから、この塗膜24を硬化させることで皮膜20を形成することを含む。本実施形態では、塗膜24を硬化させる際に、塗膜24の表層の硬化の程度が、塗膜24の深部よりも高い状態を経させてから、塗膜24全体を硬化させることで、皺210を形成する。この状態を経てから塗膜24全体を硬化させると、深部では硬化収縮が生じるが、表層は既に硬化しているため、表層では硬化収縮が生じにくい。このため、塗膜24の表層が深部の硬化収縮に追随して変形することにより、塗膜24の表面に皺210が発生する。これにより、皺210で構成される人工物メトリクス要素21を有する皮膜20が得られる。
【0056】
皮膜20を製造するための第一の方法では、硬化性樹脂組成物が、熱硬化性及び光硬化性を有する一種類の組成物であるとともに、塗膜24がこの硬化性樹脂組成物から形成される単層の膜である。この塗膜24を硬化させる際には、塗膜24をその表層の硬化の程度が深部よりも高くなるように塗膜24を露光してから、塗膜24を加熱することにより、皺210を形成する。第一の方法において、塗膜24を形成するための硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤(A)と、熱硬化性樹脂(B)と、一分子中に少なくとも一つのエチレン性不飽和結合を含む不飽和化合物(C)とを含むことが好ましい。この場合、硬化性樹脂組成物から形成される塗膜24に、光硬化性と熱硬化性とを付与できる。これにより、塗膜24に対する露光及び塗膜24の加熱によって、塗膜24を硬化させることができる。
【0057】
塗膜24の厚み、及び塗膜24に対する露光量のうち、少なくとも一方を調整することによって、露光後の塗膜24の表層の硬化の程度を、深部よりも高くすることができる。例えば、塗膜24の厚みを大きくする、あるいは塗膜24のに対する露光量を少なくすると、塗膜24の深部に到達する光の量を低減することができ、露光後の塗膜24の表層の硬化の程度を、深部よりも高くすることができる。塗膜24の厚み、及び塗膜24に対する露光量は、塗膜24を形成するための硬化性樹脂組成物の組成に応じて、塗膜24の表層の硬化の程度が深部よりも高くなるように、適宜調整する。ただし、塗膜24が薄過ぎると、あるいは塗膜24に対する露光量が多過ぎると、露光後の塗膜24の表層から深部に亘って十分に硬化して、皺210が生じにくくなる。このため、塗膜24の厚みが10〜100μmの範囲内である場合には、塗膜24に対する露光量は、20〜2000mJ/cmの範囲内であることが好ましい。
【0058】
皮膜20を製造するための第二の方法では、硬化性樹脂組成物が、熱硬化性及び光硬化性を有する第一組成物と、光硬化性を有する第二組成物とを含み、塗膜24が、第一組成物から形成された第一塗膜240と、第一塗膜240上にあり、第二組成物から形成された第二塗膜241と、を含む。この塗膜24を硬化させる際には、塗膜24を露光することで、第一塗膜240と第二塗膜241の光硬化反応を、第二塗膜241の硬化の程度が第一塗膜240の硬化の程度より高くなるように進行させてから、塗膜24を加熱して塗膜24全体を硬化させる。
【0059】
第二の方法において、第一塗膜240の光硬化反応が、第二塗膜241よりも進行しにくくすることにより、露光後の第二塗膜241の硬化の程度を、第一塗膜240よりも高くすることができる。この塗膜24を加熱すると、第一塗膜240では硬化収縮が生じるが、第二塗膜241は既に硬化しているため、第二塗膜241では硬化収縮が生じにくい。このため、第二塗膜241が、第一塗膜240の硬化収縮に追随して変形することにより、第二塗膜241の表面に皺210を発生させることができる。その結果、第一塗膜240の硬化物である皮膜201と、第二塗膜241の硬化物であり、皺210を有する皮膜202と、を含む皮膜20が得られる。第一塗膜240及び第二塗膜241の厚みと、塗膜24に対する露光量は、第二塗膜241の硬化の程度が第一塗膜240よりも高くなるように、第一組成物及び第二組成物の組成に応じて、適宜調製する。ただし、第一塗膜240及び第二塗膜241の厚みが薄過ぎる、あるいは、塗膜24に対する露光量が多過ぎると、第一塗膜240が硬化し過ぎて、皮膜20の表面に皺210が形成されないことがある。このため、第一塗膜240の厚みが10〜100μmの範囲内、第二塗膜241の厚みが10〜100μmの範囲内である場合の露光量は、20〜2000mJ/cmの範囲内であることが好ましい。
【0060】
第二組成物は、熱硬化性を有していなくてもよいが、熱硬化性を有することが好ましい。第二組成物が熱硬化性を有する場合、第二組成物は、光重合開始剤(A)と、熱硬化性樹脂(B)と、一分子中に少なくとも一つのエチレン性不飽和結合を含む不飽和化合物(C)とを含むことが好ましい。これにより、第二組成物から形成される第二塗膜241に光硬化性及び熱硬化性を付与できる。第一組成物は、熱硬化性及び光硬化性を有し、且つ第二組成物よりも光硬化性が低ければ、特に限定されない。
【0061】
第二の方法において、第二組成物は、第二塗膜241の光硬化性が第一塗膜240よりも高くなるように調製することが好ましい。そのためには、例えば、第二組成物に配合される光重合開始剤(A)の濃度を、第一組成物に配合される光重合開始剤(A)の濃度よりも高くしてもよい。例えば、第二組成物に特定の波長域の光を吸収しやすい光重合開始剤(A)を配合するとともに、第一組成物にこの波長域の光を吸収しにくい光重合開始剤(A)を配合してもよい。例えば、第二組成物に配合される不飽和化合物(C)の濃度を、第一組成物に配合される不飽和化合物(C)の濃度よりも高くしてもよい。例えば、第二組成物に立体障害が小さい不飽和化合物(C)を配合するとともに、第一組成物に立体障害が大きい不飽和化合物(C)を配合してもよい。例えば、第二組成物にラジカル生成速度の速い光重合開始剤(A)を配合するとともに、第一組成物にラジカル生成速度の遅い光重合開始剤(A)を配合してもよい。例えば、第一組成物及び第二組成物に配合される着色剤(E)の種類、配合量等を調整して、第一組成物のUV透過性を低くしてもよく、第二組成物の光反射率を高くしてもよい。
【0062】
また第二の方法では、第二塗膜241を、白色顔料を含有する第二組成物で形成することも好ましい。この場合、塗膜24に照射された光を第二塗膜241の表面で反射することができ、第一塗膜240に光が到達しにくくできる。これにより、露光後の第二塗膜241の硬化の程度を、第一塗膜240よりも高くすることができる。白色顔料の例には酸化チタンが含まれ得る。第二組成物に含まれる白色顔料以外の成分は、上記の第二組成物の組成と同じであってもよい。
【0063】
また第二の方法では、第一塗膜240を、黒色顔料を含有する第一組成物で形成することも好ましい。この場合、黒色顔料は光透過性が低いため、第一塗膜240において光硬化反応が生じにくくすることができ、第一塗膜240の光硬化の程度を、第二塗膜241よりも低くすることができる。黒色顔料の例には、カーボンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、アニリンブラックが含まれ得る。黒色顔料は、特に光透過性が低いカーボンブラックを含むことが好ましい。
【0064】
皮膜20を製造するための第三の方法では、硬化性樹脂組成物が、熱硬化性を有するとともに光硬化性を有さない第一組成物と、光硬化性を有する第二組成物とを含み、塗膜24が、第一組成物から形成された第一塗膜240と、第一塗膜240上にあり、第二組成物から形成された第二塗膜241と、を含む。この塗膜24を硬化させる際には、塗膜24を露光することで、第二塗膜241を硬化させてから、塗膜24を加熱することで塗膜24全体を硬化させる。塗膜24を露光することで、光硬化性を有する第二塗膜241では光硬化反応が起こるが、光硬化性を有さない第一塗膜240では光硬化反応が起こらない。このため、露光後の塗膜24を加熱すると、第一塗膜240では硬化収縮が生じるが、第二塗膜241は既に硬化しているため、第二塗膜241では硬化収縮が生じにくい。このため、第二塗膜241が、第一塗膜240の硬化収縮に追随して変形することにより、第二塗膜241の表面に皺210が発生する。これにより、第一塗膜240の硬化物である皮膜201と、第二塗膜241の硬化物であり、皺210を有する皮膜202と、を含む皮膜20が得られる。第一塗膜240及び第二塗膜241の厚みと、塗膜24に対する露光量は、第一組成物及び第二組成物の組成に応じて、適宜調製される。
【0065】
第三の方法において、第二組成物は、熱硬化性を有していなくてもよいが、熱硬化性を有することが好ましい。第二組成物が熱硬化性を有する場合、第二組成物は、光重合開始剤(A)と、熱硬化性樹脂(B)と、一分子中に少なくとも一つのエチレン性不飽和結合を含む不飽和化合物(C)とを含むことが好ましい。これにより、第二組成物から形成される第二塗膜241に光硬化性及び熱硬化性を付与できる。第一組成物は、熱硬化性を有し、且つ光硬化性を有さなければ、特に限定されない。
【0066】
更に、上記の第一の方法、第二の方法、及び第三の方法からなる群から選択される二種以上を組み合わせてもよい。例えば、第一の方法と第二の方法とを組み合わせてもよい。この場合、光硬化性及び熱硬化性を有する第一塗膜240と、第一塗膜240よりも光硬化性の高い第二塗膜241とで構成される塗膜24を形成するとともに、第一塗膜240及び第二塗膜241の膜厚を調節してもよい。
【0067】
また皮膜20は、上記の通り、人工物メトリクス要素21を有する第一の領域22と、人工物メトリクス要素21を有さない第二の領域23とを有していてもよい。この第二の領域23は、皺を有していなくてもよく、人工物メトリクス要素21を構成する皺210とは程度の異なる皺を有していてもよい。第二の領域23が有する皺は、皺210と高低差が異なる皺であってもよく、皺210におけるピーク間の幅が異なる皺であってもよい。
【0068】
第二の領域23を形成する方法は、特に限定されない。
【0069】
例えば、第一の方法では、塗膜24を露光する際に、第二の領域23に対する露光量を、第一の領域22に対する露光量よりも大きくしてもよい。この場合、塗膜24を露光する際に、第二の領域23の表層から深部まで十分に光硬化反応を進行させることができる。これにより、露光後の塗膜24を加熱する際に、第二の領域23の表層の硬化収縮を起こりにくくすることができ、第二の領域23の表面に皺210が発生しにくくすることができる。
【0070】
例えば、第一の方法及び第二の方法では、第二の領域23の膜厚を、第一の領域22の膜厚よりも小さくしてもよい。この場合、塗膜24を露光する際に、第二の領域23の深部を十分に硬化させることができる。これにより、露光後の塗膜24を加熱する際に、第二の領域23の深部の硬化収縮を起こりにくくすることができ、第二の領域23の表面に皺210が発生しにくくすることができる。
【0071】
例えば、第二の方法及び第三の方法では、第一の領域22を第一塗膜240及び第二塗膜241で構成するとともに、第二の領域23を第一塗膜240のみで構成してもよい。この場合、塗膜24を露光する際に、第二の領域23の深部を十分に硬化させることができる。これにより、露光後の塗膜24を加熱する際に、第二の領域23の第一塗膜240の硬化収縮を起こりにくくすることができ、第二の領域23の表面に皺210を発生しにくくすることができる。
【0072】
以下、塗膜24の形成に使用する硬化性樹脂組成物に含まれる各成分を、更に詳しく説明する。
【0073】
硬化性樹脂組成物は、上記の通り、光重合開始剤(A)と、熱硬化性樹脂(B)と、一分子中に少なくとも一つのエチレン性不飽和結合を含む不飽和化合物(C)とを含む。硬化性樹脂組成物は、更に、カルボキシル基含有樹脂(D2)、着色剤(E)、有機溶剤(F)、及びその他の成分(G)を含んでもよい。
【0074】
[光重合開始剤(A)]
光重合開始剤(A)は、紫外線又は電子線が照射されることで、ラジカル、カチオン、あるいはアニオン等を生成し、重合反応のきっかけになる化合物である。光重合開始剤(A)は、紫外線が照射されることで、ラジカルを生成する化合物であることが好ましい。光重合開始剤(A)は、例えば、ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類;2,4−ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等の窒素を含む開始剤;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル-ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等のα-ヒドロキシアルキルフェノン類;2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4-メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等のα-アミノアルキルフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−エチル−フェニル−ホスフィネート等のモノアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;並びに、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン系光重合開始剤、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。光重合開始剤(A)は、より好ましくは、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等の窒素を含む開始剤、及びアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0075】
硬化性樹脂組成物の固形分量に対する光重合開始剤(A)の割合は、好ましくは0.01質量%〜50質量%の範囲内である。より好ましくは0.05質量%〜25質量%の範囲内であり、更に好ましくは0.1質量%〜15質量%の範囲内である。
【0076】
[熱硬化性樹脂(B)]
熱硬化性成分(B)は、硬化性樹脂組成物に熱硬化性を付与できる。熱硬化性成分(B)は、好ましくは環状エーテル骨格を有する化合物を含む。環状エーテル骨格を有する化合物は、好ましくはエポキシ化合物及びオキセタン化合物を含有し、より好ましくはエポキシ化合物を含有する。
【0077】
エポキシ化合物は、好ましくは1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する。エポキシ化合物は、溶剤難溶性エポキシ化合物であってもよく、汎用の溶剤可溶性エポキシ化合物であってもよい。エポキシ化合物の種類は特に限定されない。エポキシ化合物は、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−695)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER1001)、ビスフェノールA−ノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−865)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA−1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX4000)、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番NC−3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番ST−4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−4032、EPICLON HP−4700、EPICLON HP−4770)、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−820)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC製の品番EPICLON HP−7200)、アダマンタン型エポキシ樹脂(具体例として出光興産株式会社製の品番ADAMANTATE X−E−201)、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−80DE、特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175−500、及びYL7175−1000;DIC株式会社製の品番EPICLON TSR−960、EPICLON TER−601、EPICLON TSR−250−80BX、EPICLON 1650−75MPX、EPICLON EXA−4850、EPICLON EXA−4816、EPICLON EXA−4822、及びEPICLON EXA−9726;新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV−120TE)、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、及び前記以外のビスフェノール系エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0078】
硬化性樹脂組成物の固形分量に対する熱硬化性樹脂(B)の割合は、好ましくは3質量%〜90質量%の範囲内であり、より好ましくは5質量%〜70質量%の範囲内であり、更に好ましくは10質量%〜50質量%の範囲内である。
【0079】
[不飽和化合物(C)]
不飽和化合物(C)は、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物である。不飽和化合物(C)は、硬化性樹脂組成物に光硬化性を付与できる。不飽和化合物(C)は、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;並びにジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε―カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0080】
不飽和化合物(C)は、三官能の化合物、すなわち一分子中に不飽和結合を3つ有する化合物を含有してもよい。この場合、樹脂組成物から形成される皮膜を露光・現像する場合の解像性が向上すると共に、樹脂組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。三官能の化合物は、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート及びε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート及びエトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0081】
不飽和化合物(C)は、リン含有化合物(リン含有不飽和化合物)を含有してもよい。この場合、樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有不飽和化合物は、例えば2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトエステルP−1M、及びライトエステルP−2M)、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトアクリレートP−1A)、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルフォスフェート(具体例として大八工業株式会社製の品番MR−260)、並びに昭和高分子株式会社製のHFAシリーズ(具体例としてジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCA(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10-オキサイド)との付加反応物である品番HFAー6003、及びHFA−6007、カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー3003、及びHFA−6127等)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0082】
不飽和化合物(C)は、プレポリマーを含有してもよい。プレポリマーは、例えばエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させた後にエチレン性不飽和基を付加することで得られるプレポリマー、並びにオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類からなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類は、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、及びスピラン樹脂(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。
【0083】
硬化性樹脂組成物の固形分量に対する不飽和化合物(C)の割合は、好ましくは5質量%〜90質量%の範囲内であり、より好ましくは10質量%〜70質量%の範囲内であり、更に好ましくは20質量%〜60質量%の範囲内である。
【0084】
不飽和化合物(C)は、カルボキシル基を有する不飽和化合物(以下、カルボキシル基含有樹脂(D1)ともいう)を含有してもよい。硬化性樹脂組成物にカルボキシル基含有樹脂(D1)が含まれる場合、硬化性樹脂組成物から形成される皮膜20に、アルカリ性溶液による現像性、すなわちアルカリ現像性を付与できる。
【0085】
カルボキシル基含有樹脂(D1)は、例えば一分子中に二個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(d1)における前記エポキシ基のうち少なくとも一つと、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(d2)とが反応し、更に多価カルボン酸及びその無水物からなる群から選択される少なくとも一種である化合物(d3)が付加した構造を有する樹脂(以下、第一の樹脂(d)という)を含有できる。
【0086】
エポキシ化合物(d1)は、例えばクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA−ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂、及びエポキシ基を有する化合物を含むエチレン性不飽和化合物の重合体からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0087】
エポキシ化合物(d1)は、エポキシ基を備える化合物(p1)を含むエチレン性不飽和化合物(p)の重合体を含有してもよい。エチレン性不飽和化合物(p)は、エポキシ基を備える化合物(p1)のみを含有してもよく、エポキシ基を備える化合物(p1)とエポキシ基を備えない化合物(p2)とを含有してもよい。
【0088】
エポキシ基を備える化合物(p1)は、適宜のポリマー及びプレポリマーからなる群から選択される少なくとも一種を含有できる。具体的には、エポキシ基を備える化合物(p1)は、アクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類、メタクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類、アクリレートの脂環エポキシ誘導体、メタクリレートの脂環エポキシ誘導体、β−メチルグリシジルアクリレート、及びβ−メチルグリシジルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。特に、エポキシ基を備える化合物(p1)が、汎用されて入手が容易なグリシジル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0089】
エポキシ基を備えない化合物(p2)は、例えば、エポキシ基を備える化合物(p1)と共重合可能な化合物であり得る。エポキシ基を備えない化合物(p2)は、例えば、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(重合度n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO,PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、3−マレイミド安息香酸N−スクシンイミジル、直鎖状あるいは分岐を有する脂肪族又は脂環族(ただし、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、及びN−置換マレイミド類(例えばN−シクロヘキシルマレイミド)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0090】
エポキシ基を備えない化合物(p2)は、更に、一分子中にエチレン性不飽和基を二個以上備える化合物を含有してもよい。この化合物が使用され、その配合量が調整されることで、皮膜の硬度及び油性を容易に調整できる。一分子中にエチレン性不飽和基を二個以上備える化合物は、例えばポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0091】
例えば、エチレン性不飽和化合物(p)を、溶液重合法、エマルション重合法等の公知の重合法で重合することにより、重合体が得られる。例えば溶液重合法は、エチレン性不飽和化合物(p)と適当な有機溶剤と重合開始剤とを窒素雰囲気下で加熱攪拌する方法、又は共沸重合法である。
【0092】
エチレン性不飽和化合物(p)の重合のために使用される有機溶剤は、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0093】
エチレン性不飽和化合物(p)の重合のために使用される重合開始剤は、例えばジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類、イソブチリルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシビバレート等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、並びにレドックス系の開始剤からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0094】
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(d2)は、適宜のポリマー及びプレポリマーからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。エチレン性不飽和化合物(d2)は、エチレン性不飽和基を一個のみ有する化合物を含有できる。エチレン性不飽和基を一個のみ有する化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。更にエチレン性不飽和化合物(d2)は、複数のエチレン性不飽和基を備える化合物を含有できる。複数のエチレン性不飽和基を備える化合物は、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のヒドロキシル基を備える多官能アクリレート、並びに多官能メタクリレートに二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0095】
特にカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(d2)が、アクリル酸及びメタクリル酸からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。アクリル酸及びメタクリル酸に由来するエチレン性不飽和基は特に光反応性に優れるため、第一の樹脂(a)の光反応性を向上させることができる。
【0096】
エポキシ化合物(d1)のエポキシ基1モルに対するカルボキシル基含有樹脂(D1)のカルボキシル基の量は、好ましくは0.4〜1.2モルの範囲内であり、より好ましくは0.5〜1.1モルの範囲内である。
【0097】
多価カルボン酸又はその無水物からなる化合物(d3)(以下、化合物(d3)ともいう)は、例えばフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルナジック酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、メチルコハク酸、マレイン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸等のジカルボン酸;シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸等の三塩基酸以上の多価カルボン酸;並びにこれらの多価カルボン酸の無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0098】
化合物(d3)の主たる使用目的は、第一の樹脂(d)に酸性を付与することにより、樹脂組成物に希アルカリ水溶液による再分散、再溶解性を付与することである。化合物(d3)の使用量は、好ましくは第一の樹脂(d)の酸価が30mgKOH/g以上であるように調整され、より好ましくは第一の樹脂(d)の酸価が60mgKOH/g以上であるように調整され、また、化合物(d3)の使用量は、好ましくは第一の樹脂(d)の酸価が160mgKOH/g以下であるように調整され、より好ましくは130mgKOH/g以下であるように調整される。
【0099】
第一の樹脂(d)の合成において、エポキシ化合物(d1)とカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(d2)との付加反応、並びにこの付加反応の生成物(付加反応生成物)と化合物(d3)との付加反応は、公知の方法により行われる。例えばエポキシ化合物(d1)とエチレン性不飽和化合物(d2)との付加反応においては、エポキシ化合物(d1)を含む溶剤溶液にエチレン性不飽和化合物(d2)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液が得られる。この反応性溶液を、常法により、好ましくは60〜150℃で、より好ましくは80〜120℃で反応させることにより、付加反応生成物が得られる。熱重合禁止剤は、例えばハイドロキノン、又はハイドロキノンモノメチルエーテルである。触媒は、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビンである。
【0100】
付加反応生成物と化合物(d3)との付加反応においては、付加反応生成物を含む溶剤溶液に化合物(d3)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて撹拌混合することで、反応性溶液が得られる。この反応性溶液を、常法により、反応させることで、第一の樹脂(d)が得られる。反応条件は、エポキシ化合物(d1)とカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(d2)との付加反応の反応条件と同じ条件でよい。熱重合禁止剤及び触媒は、エポキシ化合物(d1)とカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(d2)との付加反応において使用された熱重合禁止剤及び触媒と同じものを使用することができる。
【0101】
カルボキシル基含有樹脂(D1)は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体におけるカルボキシル基の一部と、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物と、を反応させることで得られる樹脂(第二の樹脂(e)という)を含有してもよい。エチレン性不飽和単量体は、必要に応じてカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を含んでもよい。
【0102】
第二の樹脂(e)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、適宜のポリマー及びプレポリマーを含有できる。例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有できる。より具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を複数有する化合物を含有できる。より具体的には、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタメタクリレートからなる群から選択されるヒドロキシル基を有する多官能の(メタ)アクリレートと、二塩基酸無水物と、の反応で得られる化合物を含有できる。これらの化合物は、単独で使用されてもよく、複数で併用されてもよい。
【0103】
第二の樹脂(e)を得るためのカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、例えば、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と共重合可能な化合物であり得る。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、芳香環を有する化合物と、芳香環を有さない化合物と、を含有できる。
【0104】
芳香環を有する化合物は、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO,PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、ビニルナフタレン、及びビニルビフェニルからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0105】
芳香環を有さない化合物は、例えば直鎖又は分岐の脂肪族、あるいは脂環族(ただし、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート等;及びN−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。芳香環を有さない化合物は、更にポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を含有してもよい。これらの化合物は、単独で使用されてもよく、複数で併用されてもよい。これらの化合物を使用することにより、皮膜の硬度及び油性を容易に調整することができる。
【0106】
第二の樹脂(e)を得るためのエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物は、適宜のポリマー又はプレポリマーである。このエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸又はメタクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類;アクリレート又はメタクリレートの脂環エポキシ誘導体;β−メチルグリシジルアクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物である。これらの化合物は、単独で使用されてもよく、複数で併用されてもよい。エチレン性不飽和化合物は、好ましくは、汎用され、容易に入手できるグリシジル(メタ)アクリレートである。
【0107】
カルボキシル基含有樹脂(D1)は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物、及びヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体におけるヒドロキシル基の一部又は全部に、エチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物を付加することで得られる樹脂(以下、第三の樹脂(f)という)を含有してもよい。エチレン性不飽和単量体は、必要に応じて、カルボキシル基及びヒドロキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を含んでもよい。
【0108】
第三の樹脂(f)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物の例は、上述の第二の樹脂(e)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と同じであってもよい。
【0109】
第三の樹脂(f)を得るためのヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、及びN−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドであり得る。
【0110】
第三の樹脂(f)を得るためのエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物は、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズAOI」)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI」)、メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI−EG」)、カレンズMOIのイソシアネートブロック体(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI一BM」)、カレンズMOIのイソシアネートブロック体(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズMOI−BP」)、及び1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート)(具体例として昭和電工株式会社;品番「カレンズBEI」)であり得る。
【0111】
カルボキシル基含有樹脂(D1)全体の重量平均分子量は、好ましくは、800〜100000の範囲内である。この場合、硬化性樹脂組成物に特に優れた感光性と解像性とが付与される。
【0112】
カルボキシル基含有樹脂(D1)全体の酸価は、好ましくは30mgKOH/g以上である。この場合、硬化性樹脂組成物に良好な現像性が付与される。カルボキシル基含有樹脂(D1)全体の酸価は、より好ましくは60mgKOH/g以上である。カルボキシル基含有樹脂(D1)全体の酸価は、好ましくは160mgKOH/g以下である。この場合、硬化性樹脂組成物で形成される皮膜に残留するカルボキシル基の量が低減される。このため、皮膜の良好な電気特性、耐電蝕性、及び耐水性等が維持され得る。カルボキシル基含有樹脂(D1)全体の酸価は、より好ましくは130mgKOH/g以下である。[カルボキシル基含有樹脂(D2)]
硬化性樹脂組成物は、一分子中にエチレン性不飽和結合を有さないカルボキシル基含有樹脂(D2)を含んでいてもよい。
【0113】
カルボキシル基含有樹脂(D2)は、例えば、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体を含有する。エチレン性不飽和単量体はカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を含んでもよい。
【0114】
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、適宜のポリマー及びプレポリマーを含有することができ、例えば、エチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有することができる。より具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を複数有する化合物を含有することもできる。より具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタメタクリレートのうちいずかのヒドロキシル基を有する多官能の(メタ)アクリレートと、二塩基酸無水物との反応によって得られる化合物を含有してもよい。これらの化合物は、単独で使用されてもよく、複数併用されてもよい。
【0115】
カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と共重合可能な化合物であってもよい。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、芳香環を有する化合物及び芳香環を有さない化合物の両方を含有してもよい。
【0116】
芳香環を有する化合物は、例えば、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO、PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、ビニルナフタレン、及びビニルビフェニルからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0117】
芳香環を有さない化合物は、例えば直鎖又は分岐の脂肪族、脂環族(ただし、環中に不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート等;及びN−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。芳香環を有さない化合物は、更にポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を含有してもよい。これらの化合物は単独で使用されてもよく、複数併用されてもよい。これらの化合物を使用することにより、皮膜の硬度及び油性を容易に調節することができる。
【0118】
硬化性樹脂組成物から形成される皮膜20のアルカリ現像性の観点から、硬化性樹脂組成物の固形分量に対するカルボキシル基含有樹脂(D1)とカルボキシル基含有樹脂(D2)の合計の割合は、好ましくは5質量%〜85質量%の範囲内であり、より好ましくは10質量%〜75質量%の範囲内であり、更に好ましくは30質量%〜60質量%の範囲内である。この場合、皮膜20のアルカリ現像性を十分に確保できる。
【0119】
[着色剤(E)]
着色剤(E)は、硬化性樹脂組成物及び皮膜20を着色できる。着色剤(E)は、例えば、顔料、染料、及び色素からなる群から選択される少なくとも一種の材料を含む。着色剤は、顔料と染料のいずれも含み得る。ただし、着色剤(E)は有色であるが、硬化性樹脂組成物から皮膜を形成する過程において加熱により無色になる物質は、皮膜20を着色させないため、着色剤(E)に含まれない。
【0120】
着色剤(E)は、例えば黒色着色剤、白色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、緑色着色剤、赤色着色剤、紫色着色剤、オレンジ色着色剤、茶色着色剤、及び前記以外の色の着色剤からなる群から選択される少なくとも一種の材料を含有できる。
【0121】
着色剤(E)が黒色着色剤を含有する場合、皮膜20は黒色に着色される。黒色着色剤の例には、カーボンブラックが含まれうる。着色剤(E)が白色着色剤を含有する場合、皮膜20は白色に着色される、白色着色剤の例には、酸化チタンが含まれうる。着色剤(E)が青色着色剤及び黄色着色剤の両方を含有する場合、皮膜20は緑色に着色される。青色着色剤の例には、フタロシアニン系青色着色剤(フタロシアニンブルー)、アントラキノン系青色着色剤、Pigment Blue 15;Pigment Blue 15:1;Pigment Blue 15:2;Pigment Blue 15:3;Pigment Blue 15:4;Pigment Blue 15:6;Pigment Blue 16;及びPigment Blue 60が含まれる。黄色着色剤の例には、モノアゾ系黄色着色剤、ジスアゾ系黄色着色剤、縮合アゾ系黄色着色剤、ベンズイミダゾロン系黄色着色剤、イソインドリノン系黄色着色剤、アントラキノン系黄色着色剤、Pigment Yellow 24;Pigment Yellow 108;Pigment Yellow 193;Pigment Yellow 147;Pigment Yellow 150;Pigment Yellow 199;Pigment Yellow 202;Pigment Yellow 110;Pigment Yellow 109;Pigment Yellow 139;Pigment Yellow 179;Pigment Yellow 185;Pigment Yellow 93;Pigment Yellow 94;Pigment Yellow 95;Pigment Yellow 128;Pigment Yellow 155;Pigment Yellow 166;Pigment Yellow 180; Pigment Yellow 120;Pigment Yellow 151;Pigment Yellow 154;Pigment Yellow 156;Pigment Yellow 175;及びPigment Yellow 181、1,1‘−[(6−フェニル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)ビス(イミノ)]ビス(9,10−アントラセンジオン)が含まれる。着色剤(E)が緑色着色剤を含有する場合、皮膜20は緑色に着色される。緑色着色剤の例には、フタロシアニン系緑色着色剤、アントラキノン系緑色着色剤、ペリレン系緑色着色剤、金属置換若しくは無置換のフタロシアニン化合物、ピグメントグリーン7、及びピグメントグリーン36が含まれる。
【0122】
塗膜24が、第一塗膜240及び第二塗膜241を含む場合には、第一塗膜240を形成するための第一組成物と、第二塗膜241を形成するための第二組成物とが、それぞれ異なる着色剤(E)を含有していてもよい。これにより、第一塗膜240及び第二塗膜241を、それぞれ異なる色に着色することができる。第二塗膜241の光反射性を高くする場合には、第二組成物が白色顔料を含有することが好ましく、酸化チタンを含有することがより好ましい。
【0123】
硬化性樹脂組成物が有機成分の着色剤(E)を含有する場合、硬化性樹脂組成物の固形分量に対する有機成分の着色剤(E)の割合は、好ましくは0.01質量%〜20質量%の範囲内であり、より好ましくは0.05質量%〜10質量%の範囲内であり、更に好ましくは0.1質量%〜5質量%の範囲内である。また、硬化性樹脂組成物が無機成分の着色剤(E)を含有する場合、無機成分の着色剤(E)の割合は、好ましくは1質量%〜80質量%の範囲内であり、より好ましくは3質量%〜70質量%の範囲内であり、更に好ましくは5質量%〜60質量%の範囲内である。
【0124】
[有機溶剤(F)]
有機溶剤(F)は、硬化性樹脂組成物の液状化又はワニス化、粘度調整、塗布性の調整、造膜性の調整などの目的で使用される。
【0125】
有機溶剤(F)は、例えばエタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級あるいは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0126】
硬化性樹脂組成物に有機溶剤(F)が含まれる場合、硬化性樹脂組成物全体に対する有機溶剤(F)の割合は、硬化性樹脂組成物の塗膜を乾燥させる際に有機溶剤(F)が速やかに揮散するように、換言すると有機溶剤(F)が乾燥塗膜に残存しないように、調整される。硬化性樹脂組成物全体に対する有機溶剤(F)の割合は、好ましくは5〜99.5質量%の範囲内である。この場合、硬化性樹脂組成物の良好な塗布性が得られる。好ましい有機溶剤(F)の割合は、塗布方法などによって異なる。
【0127】
[その他の成分(G)]
硬化性樹脂組成物は、公知の硬化剤、光重合促進剤、増感剤、レーザ露光法用増感剤、
充填材等を含有してもよい。硬化性樹脂組成物は、適宜の添加剤を含有してもよい。硬化性樹脂組成物は、例えば、シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;シランカップリング剤等の密着性付与剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;並びに高分子分散剤からなる群から選択される少なくとも一種を含有してもよい。
【0128】
上記の硬化性樹脂組成物の原料が配合されるとともに、三本ロール、ボールミル、サンドミル等による公知の混練方法で、混練されることにより、硬化性樹脂組成物が調製され得る。硬化性樹脂組成物の原料に液状の成分、粘度の低い成分等が含まれる場合、それ以外の成分を混練した後、液状又は粘度の低い成分を加えることにより、硬化性樹脂組成物が調製され得る。
【0129】
保存安定性等の観点から、原料の一部を混合することにより第一剤を調製し、原料の残部を混合することにより第二剤を調製してもよい。すなわち、硬化性樹脂組成物は、第一剤と第二剤とを備えてもよい。例えば、硬化性樹脂組成物の原料のうち熱硬化性樹脂(B)、不飽和化合物(C)、有機溶剤(F)等を混合することにより第一剤を調製し、硬化性樹脂組成物の原料の残部を混合することにより第二剤を調製してもよい。この場合、第一剤と第二剤との混液を硬化させることにより、硬化性樹脂組成物の硬化物を形成できる。
【0130】
以下、硬化性樹脂組成物から皮膜20を形成する方法の具体例1〜4を説明するが、皮膜20を形成する方法は、これらの具体例に限定されない。
【0131】
(具体例1)
皮膜20を製造する第一の方法の具体例を、図4A図4Cを参照しながら説明する。
【0132】
まず、基材200及び硬化性樹脂組成物を用意する。被認証物2がプリント配線板である場合、基材200は、例えば、絶縁層と導体配線とを備えるコア基材である。硬化性樹脂組成物は、光硬化性及び熱硬化性を有する。
【0133】
次に図4Aに示すように、基材200上に塗膜24を形成する。塗膜24は、基材200上に硬化性樹脂組成物を塗布して、乾燥させることにより形成される。硬化性樹脂組成物の塗布方法の例には、浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法が含まれる。塗膜24は、ドライフィルム法で形成してもよい。
【0134】
次に、図4Bに示すように、塗膜24にマスク25を直接又は間接的にあてがうとともに、塗膜24に紫外線を照射する。換言すると、マスク25を介して塗膜24が露光される。紫外線の光源の例には、ケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうち二種以上の組み合わせが含まれる。
【0135】
マスク25は、光透過性が高い領域250と、光透過性がない領域251とを備える。マスク25を介して塗膜24に紫外線が照射されると、領域250に対応する塗膜24の領域(第一の領域22)には紫外線が照射され、領域251に対応する塗膜24の領域(第二の領域23)には紫外線が照射されない。塗膜24の膜厚、及び塗膜24に対する露光量を調整することによって、紫外線が照射される第一の領域22の表層の硬化の程度を、深部よりも高くすることができる。また、紫外線が照射されない塗膜24の第二の領域23を、未硬化状態にすることができる。
【0136】
次に、塗膜24を加熱する。これにより、熱硬化性樹脂(B)の熱硬化反応が起こり、塗膜24全体が硬化されて、皮膜20が形成される。塗膜24の加熱温度は、好ましくは、90〜300℃の範囲内である。塗膜24の加熱によって、第一の領域22の深部では硬化収縮が生じるが、表層は既に硬化しているため、第一の領域22の表層では硬化収縮が生じにくい。このため、第一の領域22の表層が、深部の硬化収縮に追随して変形することにより、皮膜20の第一の領域22の表面に皺210を発生させることができる。また、第二の領域23では、塗膜24の加熱によって、表層及び深部で硬化収縮が生じるため、皮膜20の第二の領域23の表面に皺210が発生しにくく、あるいは発生しないようにすることができる。
【0137】
上記の方法によって、図4Cに示すように、皺210で構成された人工物メトリクス要素21を有する第一の領域22と、人工物メトリクス要素21を有さない第二の領域23とを含む皮膜20を形成することができる。
【0138】
なお、塗膜24の各領域に照射される紫外線の量を制御できるならば、マスク25が使用されなくてもよい。例えば、マスク25を使用せずに塗膜24の各領域に照射する紫外線の量を制御する方法として、光源から発せられる紫外線を塗膜24上の露光すべき部分のみに照射する直接描画法で塗膜を露光してもよい。なお、直接描画法の光源は、上述したものと同様であってよい。
【0139】
(具体例2)
皮膜20を製造する第一の方法の具体例を、図5A図5Eを参照しながら説明する。
【0140】
まず、基材200及び硬化性樹脂組成物を用意する。被認証物2がプリント配線板である場合、基材200は、例えば、絶縁層と導体配線とを備えるコア基材である。硬化性樹脂組成物は、光硬化性及び熱硬化性を有する。
【0141】
次に、図5Aに示すように、基材200上に第一塗膜240を形成する。第一塗膜240は、基材200上に硬化性樹脂組成物を塗布して、乾燥させることにより形成される。硬化性樹脂組成物の塗布方法は、具体例1と同様の方法を適用できる。第一塗膜240は、ドライフィルム法で形成してもよい。
【0142】
次に、図5Bに示すように、第一塗膜240上に第二塗膜241を形成する。第二塗膜241は、第一塗膜240上の一部に、硬化性樹脂組成物を塗布して、乾燥させることにより形成される。硬化性樹脂組成物の塗布方法は、具体例1と同様の方法を適用することができる。第二塗膜241は、ドライフィルム法で形成してもよい。
【0143】
上記の工程によって、第一塗膜240及び第二塗膜241からなる塗膜24が形成される。すなわち、同一の硬化性樹脂組成物から形成された第一塗膜240及び第二塗膜241を部分的に重ねることによって、第一の領域22と、第一の領域22よりも膜厚が小さい第二の領域23とを備える塗膜24を形成することができる。
【0144】
次に、図5Cに示すように、塗膜24にマスク25を直接又は間接的にあてがうとともに、塗膜24に紫外線を照射する。換言すると、マスク25を介して塗膜24が露光される。紫外線の光源は、具体例1と同様の光源を適用できる。
【0145】
マスク25は、光透過性が高い領域250と、光透過性がない領域251とを備える。マスク25を介して塗膜24に紫外線が照射されると、塗膜24の領域250に対応する領域(露光領域)には紫外線が照射され、塗膜24の領域251に対応する領域(非露光領域)には紫外線が照射されない。この露光領域には、塗膜24の第一の領域22及び第二の領域23が含まれる。第一の領域22の膜厚を第二の領域23よりも大きくし、塗膜24に対する露光量を調整することにより、第一の領域22の表層の硬化の程度を深部よりも高くできる。また、第二の領域23の膜厚を第一の領域22よりも小さくすることにより、第二の領域23の表層から深部まで十分に硬化させることができる。また、紫外線が照射されない塗膜24の非露光領域を未硬化状態にすることができる。
【0146】
次に、図5Dに示すように、現像処理で非露光領域を取除く。その結果、基材200上に、塗膜24の第一の領域22及び第二の領域23が残存する。第一組成物が、カルボキシル基含有樹脂(D1)及びカルボキシル基含有樹脂(D2)からなる群から選択される少なくとも一種を含む場合、アルカリ性溶液による現像処理(アルカリ現像)によって、未硬化状態である塗膜24の非露光領域を取除くことができる。
【0147】
次に、塗膜24を加熱する。これにより、熱硬化性樹脂(B)の熱硬化反応が起こり、塗膜24全体が硬化されて、皮膜20が形成される。塗膜24の加熱温度は、好ましくは、90〜300℃の範囲内である。塗膜24の加熱によって、第一の領域22の深部では硬化収縮が生じるが、表層は既に硬化しているため、第一の領域22の表層が深部の硬化収縮に追随して変形することにより、皮膜20の第一の領域22の表面に皺210を発生させることができる。また、第二の領域23の表層及び深部は既に硬化しているため、塗膜24の加熱の際に第二の領域23の表層及び深部では硬化収縮は生じにくくなり、皮膜20の第二の領域23の表面に皺210が発生しにくく、あるいは発生しないようにすることができる。
【0148】
上記の方法により、図5Eに示すように、皺210で構成された人工物メトリクス要素21を有する第一の領域22と、人工物メトリクス要素21を有さない第二の領域23とを含む皮膜20を形成することができる。
【0149】
なお、塗膜24の各領域に照射される紫外線の量を制御できるならば、マスク25が使用されなくてもよい。例えば、マスク25を使用せずに塗膜24の各領域に照射する紫外線の量を制御する方法として、光源から発せられる紫外線を塗膜24上の露光すべき部分のみに照射する直接描画法で塗膜を露光してもよい。なお、直接描画法の光源は、上述したものと同様であってよい。
【0150】
(具体例3)
皮膜20を製造する第二の方法の具体例を、図6A図6Dを参照しながら説明する。
【0151】
まず、基材200、第一組成物、及び第二組成物を用意する。被認証物2がプリント配線板である場合、基材200は、例えば、絶縁層と導体配線とを備えるコア基材である。第一組成物は、光硬化性及び熱硬化性を有する。第二組成物は、光硬化性を有し、且つ白色顔料を含む。
【0152】
次に、図6Aに示すように、基材200上に第一塗膜240を形成する。第一塗膜240は、基材200上に第一組成物を塗布して、乾燥させることにより形成される。第一塗膜240は、基材200の全面に設ける。第一組成物の塗布方法は、具体例1の硬化性樹脂組成物の塗布方法と同様の方法を適用できる。第一塗膜240は、ドライフィルム法で形成してもよい。
【0153】
次に、図6Bに示すように、第一塗膜240上に第二塗膜241を形成する。第二塗膜241は、第一塗膜240上に第二組成物を塗布して、乾燥させることにより形成される。第二塗膜241は、第一塗膜240の全面に設けられる。第二組成物の塗布方法は、具体例1の硬化性樹脂組成物の塗布方法と同様の方法を適用できる。第二塗膜241は、ドライフィルム法で形成してもよい。
【0154】
上記の工程によって、第一塗膜240及び第二塗膜241を含む塗膜24が形成される。
【0155】
次に、図6Cに示すように、塗膜24にマスク25を直接又は間接的にあてがうとともに、塗膜24に紫外線を照射する。換言すると、マスク25を介して塗膜24が露光される。紫外線の光源は、具体例1と同様の光源を適用できる。
【0156】
マスク25は、光透過性が高い領域250と、光透過性がない領域251とを備える。マスク25を介して塗膜24に紫外線が照射されると、塗膜24の領域250に対応する領域(露光領域)には紫外線が照射され、塗膜24の領域251に対応する領域(非露光領域)には紫外線が照射されない。この露光領域では、白色顔料を含む第二塗膜241の表面で紫外線が反射されるため、第一塗膜240に紫外線が到達しにくい。このため、第二塗膜241の硬化の程度を、第一塗膜240よりも高くすることができる。また、紫外線が照射されない塗膜24の非露光領域を未硬化状態にすることができる。
【0157】
次に、図6Dに示すように、現像処理で非露光領域を取除く。その結果、基材200上には塗膜24の露光領域のみが残存する。第一組成物及び第二組成物が、カルボキシル基含有樹脂(D1)及びカルボキシル基含有樹脂(D2)からなる群から選択される少なくとも一種を含む場合、アルカリ性溶液による現像処理(アルカリ現像)によって、未硬化状態である塗膜24の非露光領域を取除くことができる。
【0158】
次に、塗膜24を加熱する。これにより、熱硬化性樹脂(B)の硬化反応が起こり、塗膜24全体が硬化されて、皮膜20が形成される。詳細には、第一塗膜240の硬化物である皮膜201と、第二塗膜241の硬化物である皮膜202とが形成される。このため、皮膜20は、皮膜201と皮膜202とで構成される。塗膜24の加熱温度は、好ましくは、90〜300℃の範囲内である。塗膜24の加熱によって、第一塗膜240では硬化収縮が生じるが、第二塗膜241は既に硬化しているため、第二塗膜241では硬化収縮が生じにくい。このため、第二塗膜241が、第一塗膜240の硬化収縮に追随して変形することにより、皮膜202の表面に皺210を発生させることができる。
【0159】
上記の方法により、図6Eに示すように、皺210で構成された人工物メトリクス要素21を有する皮膜20を形成することができる。
【0160】
(具体例4)
皮膜20を製造する第二の方法の具体例を、図7A図7Eを参照しながら説明する。
【0161】
まず、基材200、第一組成物、及び第二組成物を用意する。基材200は、凹部300と、平坦部301とを有する。被認証物2がプリント配線板である場合、凹部300及び平坦部301は、絶縁層と導体層からなる積層板に、エッチングを施することにより製造できる。この場合の凹部300は、エッチングによって導体層が取り除かれた部分であり、平坦部301は、エッチング後に導体層が残存した部分である。第一組成物は、光硬化性及び熱硬化性を有する。第二組成物は、光硬化性を有する。
【0162】
次に、図7Aに示すように、基材200上に第一塗膜240を形成する。第一塗膜240は、基材200上に第一組成物を塗布して、乾燥させることにより形成される。第一塗膜240は基材200上の全面に設けられる。第一組成物の塗布方法は、具体例1の硬化性樹脂組成物の塗布方法と同様の方法を適用できる。凹部300及び平坦部301によって、膜厚が異なる領域を有する第一塗膜240を形成することができる。詳細には、第一塗膜240の凹部300と接している部分の膜厚を、平坦部301と接している部分よりも大きくすることができる。
【0163】
次に、図7Bに示すように、第一塗膜240上に第二塗膜241を形成する。第二塗膜241は、第一塗膜240上に第二組成物を塗布して、乾燥させることにより形成される。第二塗膜241は、第一塗膜241上の全面に設けられる。第二組成物の塗布方法は、具体例1の硬化性樹脂組成物の塗布方法と同様の方法を適用できる。凹部300及び平坦部301によって、膜厚が異なる領域を有する第二塗膜241を形成することができる。詳細には、第二塗膜241の凹部300上に設けられた部分の膜厚を、平坦部301上に設けられた部分よりも大きくすることができる。
【0164】
上記の工程により、第一塗膜240及び第二塗膜241を含む塗膜24が形成される。この塗膜24において、凹部300と接している部分が第一の領域22であり、平坦部301と接している部分が第二の領域23である。すなわち、基材200の凹部300及び平坦部301によって、第一の領域22と、第一の領域22よりも膜厚が小さい第二の領域23と、を有する塗膜24を形成することができる。
【0165】
次に、図7Cに示すように、塗膜24にマスク25を直接又は間接的にあてがうとともに、塗膜24に紫外線を照射する。換言すると、マスク25を介して塗膜24が露光される。紫外線の光源は、具体例1と同様の光源を使用できる。
【0166】
マスク25は、光透過性が高い領域250と、光透過性がない領域251とを備える。マスク25を介して塗膜24に紫外線が照射されると、塗膜24の領域250に対応する領域(露光領域)には紫外線が照射され、塗膜24の領域251に対応する領域(非露光領域)には紫外線が照射されない。この露光領域には、塗膜24の第一の領域22及び第二の領域23が含まれる。第一の領域22の膜厚を第二の領域23よりも大きくし、塗膜24に対する露光量を調整することにより、第一の領域22では、第二塗膜241の硬化の程度を、第一塗膜240よりも高くすることができる。また、塗膜24の第二の領域23の膜厚を第一の領域22よりも小さくすることにより、第二の領域23では、第一塗膜240及び第二塗膜241を十分に硬化させることができる。また、紫外線が照射されない塗膜24の非露光領域を未硬化状態にすることができる。
【0167】
次に、図7Dに示すように、現像処理で非露光領域を取除く。その結果、基材200上には第一の領域22及び第二の領域23が残存する。第一組成物が、カルボキシル基含有樹脂(D1)及びカルボキシル基含有樹脂(D2)からなる群から選択される少なくとも一種を含む場合、アルカリ性溶液による現像処理(アルカリ現像)によって、未硬化状態である塗膜24の非露光領域を取除くことができる。
【0168】
次に、塗膜24を加熱する。これにより、熱硬化性樹脂(B)の硬化反応が起こり、塗膜24全体が硬化されて、皮膜20が形成される。詳細には、第一塗膜240の硬化物である皮膜201と、第二塗膜241の硬化物である皮膜202とが形成される。このため、皮膜20は、皮膜201と皮膜202とを含む。塗膜24の加熱温度は、好ましくは、90〜300℃の範囲内である。第一の領域22では、塗膜24の加熱によって、第一塗膜240の硬化収縮が生じるが、第二塗膜241は既に硬化しているため、第二塗膜241では硬化収縮が生じにくい。このため、第一の領域22では、第二塗膜241が第一塗膜240の硬化収縮に追随して変形することにより、皮膜202の第一の領域22の表面に皺210を発生させることができる。また、第二の領域23では、第一塗膜240及び第二塗膜241が既に硬化しているため、塗膜24の加熱の際に第一塗膜240及び第二塗膜241の硬化収縮が生じにくくなり、皮膜202の第二の領域23の表面に皺210を発生しにくく、あるいは発生しないようにすることができる。
【0169】
上記の方法により、図7Eに示すような、皺210で構成された人工物メトリクス要素21を有する第一の領域22と、人工物メトリクス要素21を有さない第二の領域23と、を含む皮膜20が得られる。
【0170】
なお、上記の具体例4では、凹部300と、平坦部301とを有する基板200上に、第一塗膜240及び第二塗膜241を含む塗膜24を形成しているが、基板200上に単層の膜である塗膜24を形成してもよい。この場合、塗膜24の凹部300と接している部分(第一の領域22)の膜厚が、平坦部301と接している部分(第二の領域23)よりも大きくなる。この塗膜24に対する露光量を調整することにより、第一の領域22では、塗膜24の表層の硬化の程度を、深部よりも高くすることができ、第二の領域23では、塗膜24の表層から深部まで十分に硬化させることができる。そして、露光後の塗膜24を加熱すると、第一の領域22では、塗膜24の深部の硬化収縮が生じるが、表層は既に硬化しているため、表層では硬化収縮が生じにくい。このため、第一の領域22では、塗膜24の表層が、深部の硬化収縮に追随して変形することにより、塗膜24の第一の領域22の表面に皺210を発生させることができる。また、第二の領域23では、塗膜24の深部及び表層が既に硬化しているため、塗膜24の加熱の際に表層及び深部の硬化収縮が生じにくくなり、塗膜24の第二の領域23の表面に皺210を発生しにくく、あるいは発生しないようにすることができる。
【実施例】
【0171】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0172】
(合成例A−1)
メタクリル酸48部、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート(東亞合成株式会社製のアロニックスM−5300)50部、メチルメタクリレート92部、スチレン10部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル430部、及びアゾビスイソブチロニトリル3.5部を、還流冷却器、温度計、窒素置換基用ガラス管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内で混合した。更に、混合物を、四つ口フラスコ内、窒素気流下で、75℃で5時間加熱して、重合反応を進行させた。これにより、濃度32%の共重合体溶液が得られた。
【0173】
続いて、この共重合体溶液に、ハイドロキノン0.1部、グリシジルメタクリレート64部、ジメチルベンジルアミン0.8部を加え、この共重合体溶液を、四つ口フラスコ内で、80℃で24時間加熱した。
【0174】
これにより、合成例A−1のカルボキシル基含有樹脂(以下、カルボキシル基含有樹脂A−1ともいう)の38質量%溶液が得られた。
【0175】
(合成例A−2)
グリシジルメタクリレート120質量部、メチルメタクリレート25質量部、t−ブチルアクリレート20質量部、t−ブチルメタクリレート35質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート200質量部、アゾビスイソブチロニトリル18.4質量部を、還流冷却器、温度計、窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコ内で混合した。更に、混合物を、四ツ口フラスコ内、窒素気流下で、95℃で8時間加熱して、重合反応を進行させた。これにより、濃度50質量%の共重合体溶液が得られた。
【0176】
この共重合溶液に、ハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸73.9質量部、及びジメチルベンジルアミン2.0質量部を加え、この共重合体溶液を、四つ口フラスコ内で、110℃で10時間加熱した。
【0177】
続いて、この共重合体溶液に、テトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート16.5質量部を加え、この共重合体溶液を81℃で3時間加熱した。
【0178】
これにより、合成例A−2のカルボキシル基含有樹脂(以下、カルボキシル基含有樹脂A−2ともいう)の60質量%溶液が得られた。
【0179】
(合成例A−3)
エポキシ当量203のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品番YDC−700−5)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート160.1質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72.7質量部、及びジメチルベンジルアミン0.6質量部を、還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内で混合物した。この混合物をフラスコ内で、110℃で10時間加熱した。
【0180】
続いて、この共重合体溶液に、テトラヒドロフタル酸無水物60.8質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート78.9質量部を加え、この共重合体溶液を、4つ口フラスコ内で、90℃で3時間加熱した。
【0181】
これにより、合成例A−3のカルボキシル基含有樹脂(以下、カルボキシル基含有樹脂A−3ともいう)の65質量%溶液が得られた。
【0182】
上記のカルボキシル基含有樹脂A−1〜A−3と、下記の原料成分と、を下記の表1に示された割合で混合することにより、組成例1〜4の樹脂組成物を調製した。
(原料成分)
・エポキシ樹脂A:ビフェニル型エポキシ樹脂、三菱化学製、品番YX−4000。
・エポキシ樹脂B:1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(高融点タイプ)。
・エポキシ樹脂Cの70質量%溶液;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC株式会社製の品名EPICLON N−695を固形分70%でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解した溶液。
・光重合性化合物A:ε―カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレート、日本化薬株式会社製、品番KAYARAD DPCA−120。
・光重合性化合物B:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬株式会社製、品番KAYARAD DPHA。
・光重合開始剤A:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、BASF社製の品名IRGACURE TPO。
・光重合開始剤B:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、BASF社製、品番IRGACURE 184。
・光重合開始剤C:2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、BASF社製、品番IRGACURE 907。
・光重合開始剤D:2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、日本化薬株式会社製、品番KAYACURE−DETX−S。
・白色顔料:ルチル型酸化チタン、石原産業株式会社製、品番CR−80。
・黒色顔料:カーボンブラック、三菱化学株式会社製、MA−7。
・青色顔料:フタロシアニンブルー。
・黄色顔料:1,1’−[(6−フェニル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)ビス(イミノ)]ビス(9,10−アントラセンジオン)。
・メラミン:日産化学工業株式会社製、微粉メラミン。
・硫酸バリウム:堺化学工業株式会社製、品番バリエースB30。
・微分シリカ:株式会社トクヤマ製、品番MT−10。
・ベントナイト:有機ベントナイト、レオックス社製、品番ベントンSD−2。
・消泡剤:信越シリコーン株式会社製、品番KS−66。
・有機溶剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート。
【0183】
【表1】
【0184】
(実施例1)
まず、厚み35μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板の全面に、組成例2の樹脂組成物をスクリーン印刷により塗布することで、基板表面上に湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を80℃で20分加熱して予備乾燥することで、銅箔上に膜厚60μmの乾燥塗膜を形成した。
【0185】
この乾燥塗膜の表面上にネガマスクを直接当てがうとともに、150mJ/cmの紫外線を照射することで、乾燥塗膜を選択的に露光した。露光後の乾燥塗膜を、150℃で60分間加熱して熱硬化させることにより、皮膜を形成した。この皮膜の表面において、紫外線が照射された領域には皺が発生したが、紫外線が照射されなかった領域には、皺が発生しなかった。
【0186】
この紫外線が照射された領域では、塗膜の表層の硬化の程度が、深部よりも高くなり、更にこの塗膜を加熱することで、塗膜の深部では硬化収縮が生じるが、表面は既に硬化しているため、表面が深部の硬化収縮に追随することで、皺が発生したと考えられる。
【0187】
これに対して紫外線が照射されなかった領域では、塗膜の表面及び深部において光硬化反応が進行せず、更にこの塗膜を加熱することで、塗膜の表面及び深部において硬化収縮が発生したため、皺が発生しなかったと考えられる。
【0188】
これらのことから、紫外線の照射量を異ならせることにより、皺を有する領域と、皺を有さない領域とを備える皮膜を形成することができた。
【0189】
(実施例2)
まず、厚み35μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板の全面に、組成例2の樹脂組成物をスクリーン印刷により塗布することで、基板表面上に湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を80℃で15分加熱して予備乾燥することで、銅箔上に膜厚20μmの乾燥塗膜を形成した。
【0190】
この乾燥塗膜の半面に組成例2の樹脂組成物をスクリーン印刷により塗布することで、湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を、80℃で20分過熱して予備乾燥することで、膜厚30μmの乾燥塗膜を形成した。
【0191】
このため、銅箔上の半面には、膜厚50μmの領域(第一の領域)と、膜厚20μmの領域(第二の領域)とが形成された。この第一の領域には、膜厚20μmの乾燥塗膜と膜厚30μmの乾燥塗膜とが積層して設けられ、第二の領域には、膜厚20μmの乾燥塗膜のみが設けられていた。
【0192】
この乾燥塗膜の表面上にネガマスクを直接当てがうとともに、100mJ/cmの紫外線を照射することで、乾燥塗膜を選択的に露光した。露光後の乾燥塗膜に、炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像処理を施すことで、乾燥塗膜のうち露光により硬化した部分(硬化膜)を基板上に残存させた。
【0193】
この硬化膜を、150℃で60分間加熱して熱硬化させることにより、皮膜を形成した。この皮膜において、第一の領域にはシワが発生し、第二の領域にはシワが発生しなかった。
【0194】
膜厚が大きい第一の領域では、塗膜の表層の硬化の程度が、深部よりも高くなり、更にこの塗膜を加熱することで、塗膜の深部では硬化収縮が生じるが、表面は既に硬化しているため、表面が深部の硬化収縮に追随することで、皺が発生したと考えられる。
【0195】
これに対して、第一の領域よりも膜厚が小さい第二の領域では、塗膜の表面及び深部で光硬化反応が進行するため、この塗膜を加熱しても、表面及び深部で硬化収縮が生じにくく、皺が発生しなかったと考えられる。
【0196】
これらのことから、塗膜の膜厚を異ならせることにより、皺を有する領域と、皺を有さない領域とを備える皮膜を形成することができた。
【0197】
(実施例3)
まず、厚み35μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板の全面に、組成例3の樹脂組成物をスクリーン印刷により塗布することで、基板表面上に湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を80℃で15分加熱して予備乾燥することで、銅箔上に膜厚20μmの乾燥塗膜を形成した。
【0198】
この乾燥塗膜の全面に、組成例1の樹脂組成物をスクリーン印刷により塗布することで、湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を、80℃で20分過熱して予備乾燥することで、膜厚40μmの乾燥塗膜を形成した。
【0199】
この乾燥塗膜の表面上にネガマスクを直接当てがうとともに、400mJ/cmの紫外線を照射することで、乾燥塗膜を選択的に露光した。露光後の乾燥塗膜に、炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像処理を施すことで、乾燥塗膜のうち露光により硬化した部分(硬化膜)を基板上に残存させた。
【0200】
この硬化膜を、150℃で60分間加熱して熱硬化させることにより、皮膜を形成した。この皮膜の表面には、シワが発生した。
【0201】
組成例3の塗膜の上に設けられた組成例1の塗膜は、白色であり、高い光反射性を有する。このため、塗膜が露光されると、塗膜の表面では光硬化反応が進行するが、この表面で多くの紫外線が反射されるため、塗膜の深部に紫外線が到達しにくく、深部では光硬化反応が進行しにくい。その結果、塗膜の表層の硬化の程度が、深部よりも高くなる。露光後の塗膜を硬化させることで、塗膜の深部では硬化収縮が生じるが、表面は既に硬化しているため、表面が深部の硬化収縮に追随することで、皺が発生したと考えられる。
【0202】
このことから、塗膜の表層の光反射性を高めることにより、皮膜の表面に皺を形成することができた。
【0203】
(実施例4)
まず、厚み35μmの銅箔を備えるガラスエポキシ銅張積層板にエッチングを施し、パターニングすることで、プリント配線基板を得た。このプリント配線板の全面に組成例2の樹脂組成物をスクリーン印刷により塗布することで、基板表面上に湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を80℃で15分加熱して予備乾燥することで、銅箔上に膜厚15μmの乾燥塗膜を形成した。
【0204】
続いて、このプリント配線板の乾燥塗膜の全面に組成例4の樹脂組成物をスクリーン印刷により塗布することで、基板表面上に湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を80℃で20分過熱して予備乾燥することで、銅箔上に膜厚計35μmの乾燥塗膜を形成した。
【0205】
このため、乾燥塗膜は、ガラスエポキシと接している領域(第一の領域)と、銅箔と接している領域(第二の領域)と、を有する。
【0206】
この乾燥塗膜の表面上にネガマスクを直接当てがうとともに、60mJ/cmの紫外線を照射することで、乾燥塗膜を選択的に露光した。露光後の乾燥塗膜に、炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像処理を施すことで、乾燥塗膜のうち露光により硬化した部分(硬化膜)を基板上に残存させた。
【0207】
この硬化膜を、150℃で60分間加熱して熱硬化させることにより、皮膜を形成した。この皮膜において、第一の領域には皺が発生し、第二の領域には皺が発生しなかった。
【0208】
ガラスエポキシと接している第一の領域は、塗膜の膜厚が大きいため、露光後において、塗膜の表層の硬化の程度が、深部よりも高くなる。更に、塗膜は、黒色顔料を含有する組成例2の塗膜と、この塗膜の上に設けられた組成例4の塗膜とを含むため、露光後の塗膜の表層の硬化の程度が、深部よりも高くなる。この塗膜を加熱することで、塗膜の深部では硬化収縮が生じるが、表面は既に硬化しているため、表面が深部の硬化収縮に追随することで、皺が発生したと考えられる。
【0209】
これに対して、銅箔と接している第二の領域は、第一の領域よりも膜厚が小さいため、塗膜の表面及び深部で光硬化反応が進行する。この塗膜を加熱しても、表面及び深部で硬化収縮が生じにくく、皺が発生しなかったと考えられる。これらのことから、プリント配線基板の配線がない領域では皺を有し、配線上では皺を有さない皮膜を形成することができた。
【0210】
(比較例1)
組成例1の乾燥塗膜の上に、組成例3の乾燥塗膜を設けたこと以外は、実施例3と同様の方法によって、皮膜を形成した。この皮膜の表面には、皺が形成されなかった。
【0211】
光反射性が高い組成例2の塗膜が、組成例3の塗膜の下に設けられているため、これらの塗膜を露光すると、塗膜の表面及び深部において光硬化反応が進行する。この塗膜を加熱しても、塗膜の表面及び深部おいて硬化収縮が生じにくい。このため、皮膜の表面には、皺が発生しなかったと考えられる。
【0212】
(比較例2)
塗膜に対する露光量を500mJ/cmにしたこと以外は、実施例4と同様の方法によって、皮膜を形成した。この皮膜の表面には、皺が形成されなかった。
【0213】
ガラスエポキシと接している第一の領域は、塗膜の膜厚が大きいが、露光量が多過ぎると、塗膜の表面及び深部において光硬化反応が進行する。この塗膜を加熱しても、塗膜表面及び深部において硬化収縮が生じにくく、皺が発生しなかったと考えられる。
【符号の説明】
【0214】
1 認証システム
2 被認証物
20 皮膜
21 人工物メトリクス要素
210 皺
22 第一の領域
23 第二の領域
24 塗膜
240 第一塗膜
241 第二塗膜
3 読取装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7