特許第6860203号(P6860203)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860203
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】トレーニング装置及びトレーニング方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 21/005 20060101AFI20210405BHJP
   A63B 24/00 20060101ALI20210405BHJP
   A63B 69/00 20060101ALI20210405BHJP
   A63B 23/00 20060101ALI20210405BHJP
   A63B 23/04 20060101ALI20210405BHJP
   A63B 23/12 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   A63B21/005
   A63B24/00ZJX
   A63B69/00 C
   A63B23/00 F
   A63B23/04 A
   A63B23/12
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-83095(P2017-83095)
(22)【出願日】2017年4月19日
(65)【公開番号】特開2018-175663(P2018-175663A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】392030623
【氏名又は名称】株式会社ランダルコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(72)【発明者】
【氏名】鴛海 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久明
【審査官】 赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−111294(JP,A)
【文献】 特表2011−500148(JP,A)
【文献】 特開2007−236345(JP,A)
【文献】 特開2014−113388(JP,A)
【文献】 特開2005−296672(JP,A)
【文献】 米国特許第05993356(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 21/00−21/28
A63B 23/00−23/12
A63B 24/00
A63B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイニーによって所定の可動範囲で移動される少なくとも1つの可動部材と、
前記可動部材を前記可動範囲において移動させ、前記可動部材を介して所定の負荷を前記トレイニーに与える駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部とを備えるトレーニング装置であって、
前記駆動部は、前記制御部の制御下で所定のトルクを発生するサーボモータを備え、
前記制御部は、
前記トレイニーが前記可動部材に触れていないときに前記可動部材を前記可動範囲において移動させるために前記サーボモータにより発生される第1のトルクを測定し、
前記トレイニーのトレーニング部位の重さが前記可動部材にかかっているときに前記可動部材を前記可動範囲において移動させるために前記サーボモータにより発生される第2のトルクを測定し、
前記トレイニーが前記可動部材を移動させるときに前記サーボモータにかかる第3のトルクを測定し、
前記第1のトルクに基づいて、前記トレーニング装置の機械的損失を計算し、
前記第1及び第2のトルクに基づいて、前記トレーニング部位の重さを計算し、
前記第2及び第3のトルクに基づいて、前記トレイニーが前記可動部材に与えた正味の力を計算する、
トレーニング装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記サーボモータに流れる電流を測定することにより、前記第1〜第3のトルクを測定する、
請求項1記載のトレーニング装置。
【請求項3】
前記トレーニング装置はシーテッドレッグプレス装置である、
請求項1又は2記載のトレーニング装置。
【請求項4】
前記トレーニング装置はディップス装置である、
請求項1又は2記載のトレーニング装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記正味の力の大きさに基づいて決定された所定の負荷を前記トレイニーに与えるように、かつ、前記トレーニング装置の機械的損失及び前記トレーニング部位の重さをキャンセルするように、前記可動範囲にわたって変動する所定のトルクを前記サーボモータに設定する、
請求項1〜のうちの1つに記載のトレーニング装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記正味の力の大きさに基づいて、前記トレイニーに与える負荷の大きさを決定する、
請求項記載のトレーニング装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記正味の力の大きさを示す情報を外部のサーバ装置に送信し、
前記サーバ装置によって前記正味の力の大きさに基づいて決定された負荷の大きさを示す情報を前記サーバ装置から受信する、
請求項記載のトレーニング装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記可動範囲の両端の位置を検出する、
請求項1〜のうちの1つに記載のトレーニング装置。
【請求項9】
トレイニーによって所定の可動範囲で移動される少なくとも1つの可動部材と、
前記可動部材を前記可動範囲において移動させ、前記可動部材を介して所定の負荷を前記トレイニーに与える駆動部とを備えるトレーニング装置を用いたトレーニング方法であって、
前記駆動部は、所定のトルクを発生するサーボモータを備え、
前記トレーニング方法は、
前記トレイニーが前記可動部材に触れていないときに前記可動部材を前記可動範囲において移動させるために前記サーボモータにより発生される第1のトルクを測定するステップと、
前記トレイニーのトレーニング部位の重さが前記可動部材にかかっているときに前記可動部材を前記可動範囲において移動させるために前記サーボモータにより発生される第2のトルクを測定するステップと、
前記トレイニーが前記可動部材を移動させるときに前記サーボモータにかかる第3のトルクを測定するステップと、
前記第1のトルクに基づいて、前記トレーニング装置の機械的損失を計算するステップと、
前記第1及び第2のトルクに基づいて、前記トレーニング部位の重さを計算するステップと、
前記第2及び第3のトルクに基づいて、前記トレイニーが前記可動部材に与えた正味の力を計算するステップとを含む、
トレーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ(トレイニー)の筋力をトレーニングするためのトレーニング装置及びトレーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
身体機能の向上のため、また、健康維持のために、ユーザ(トレイニー)の手、足、胸部、腹部などの筋力をトレーニングするためのさまざまなトレーニング装置が知られている。トレイニーに負荷を与えるために、重り、バネ、モータなど、さまざまな機構が使用される。例えば、特許文献1及び2は、モータを用いたトレーニング装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5055506号
【特許文献2】特許第5785716号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トレーニングの効果を上げるには、まず、トレイニーの筋力を定量的に評価する必要があり、さらに、トレイニーの筋力に基づいて適切な負荷を与える必要がある。
【0005】
トレイニーの筋力は、壁を押すような静的な力としてではなく、例えば足を踏み出すような動的な力として測定されることが望ましい。さらに、トレーニング装置は、そのような動的な力を増すようなトレーニングを実施可能であることが望ましい。
【0006】
また、このようなトレーニング装置を多数の人が利用するために、トレーニング装置は、圧力変換器等を使用せず、簡単かつ安価に構成されることが望ましい。
【0007】
従来、これらの条件のすべてをみたすことができるトレーニング装置は提供されていない。
【0008】
本発明の目的は、簡単かつ安価な構成でありながら、トレイニーの筋力に基づいて適切な負荷を与えるために、トレイニーの筋力を正確に測定することができるトレーニング装置及びトレーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係るトレーニング装置は、
トレイニーによって所定の可動範囲で移動される少なくとも1つの可動部材と、
前記可動部材を前記可動範囲において移動させ、前記可動部材を介して所定の負荷を前記トレイニーに与える駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部とを備えるトレーニング装置であって、
前記駆動部は、前記制御部の制御下で所定のトルクを発生するサーボモータを備え、
前記制御部は、
前記トレイニーが前記可動部材に触れていないときに前記可動部材を前記可動範囲において移動させるために前記サーボモータにより発生される第1のトルクを測定し、
前記トレイニーのトレーニング部位の重さが前記可動部材にかかっているときに前記可動部材を前記可動範囲において移動させるために前記サーボモータにより発生される第2のトルクを測定し、
前記トレイニーが前記可動部材を移動させるときに前記サーボモータにかかる第3のトルクを測定し、
前記第1のトルクに基づいて、前記トレーニング装置の機械的損失を計算し、
前記第1及び第2のトルクに基づいて、前記トレーニング部位の重さを計算し、
前記第2及び第3のトルクに基づいて、前記トレイニーが前記可動部材に与えた正味の力を計算する。
【0010】
本発明の第2の態様に係るトレーニング装置は、第1の態様に係るトレーニング装置において、
前記制御部は、前記サーボモータに流れる電流を測定することにより、前記第1〜第3のトルクを測定する。
【0011】
本発明の第3の態様に係るトレーニング装置は、
トレイニーによって所定の可動範囲で移動される少なくとも1つの可動部材と、
前記可動部材を前記可動範囲において移動させ、前記可動部材を介して所定の負荷を前記トレイニーに与える駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部とを備えるトレーニング装置であって、
前記駆動部は、前記制御部の制御下で所定のトルクを発生するサーボモータを備え、
前記制御部は、
前記トレイニーのトレーニング部位の重さが前記可動部材にかかっているときに前記可動部材を前記可動範囲において移動させるために前記サーボモータにより発生される第1のトルクを測定し、
前記トレイニーが前記可動部材を移動させるときに前記サーボモータにかかる第2のトルクを測定し、
前記第1のトルクに基づいて、前記トレーニング装置の機械的損失及び前記トレーニング部位の重さに起因する合計の損失を計算し、
前記第1及び第2のトルクに基づいて、前記トレイニーが前記可動部材に与えた正味の力を計算する。
【0012】
本発明の第4の態様に係るトレーニング装置は、第3の態様に係るトレーニング装置において、
前記制御部は、前記サーボモータに流れる電流を測定することにより、前記第1及び第2のトルクを測定する。
【0013】
本発明の第5の態様に係るトレーニング装置は、第1〜第4のうちの1つの態様に係るトレーニング装置において、
前記トレーニング装置はシーテッドレッグプレス装置である。
【0014】
本発明の第6の態様に係るトレーニング装置は、第1〜第4のうちの1つの態様に係るトレーニング装置において、
前記トレーニング装置はディップス装置である。
【0015】
本発明の第7の態様に係るトレーニング装置は、第1〜第6のうちの1つの態様に係るトレーニング装置において、
前記制御部は、前記正味の力の大きさに基づいて決定された所定の負荷を前記トレイニーに与えるように、かつ、前記トレーニング装置の機械的損失及び前記トレーニング部位の重さをキャンセルするように、前記可動範囲にわたって変動する所定のトルクを前記サーボモータに設定する。
【0016】
本発明の第8の態様に係るトレーニング装置は、
トレイニーによって所定の可動範囲で移動される少なくとも1つの可動部材と、
前記可動部材を前記可動範囲において移動させ、前記可動部材を介して所定の負荷を前記トレイニーに与える駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部とを備えるトレーニング装置であって、
前記駆動部は、前記制御部の制御下で所定のトルクを発生するサーボモータを備え、
前記制御部は、
前記トレイニーが前記可動部材に触れていないときに前記可動部材を前記可動範囲において移動させるために前記サーボモータにより発生される第1のトルクを測定し、
前記トレイニーが前記可動部材を移動させるときに前記サーボモータにかかる第2のトルクを測定し、
前記第1のトルクに基づいて、前記トレーニング装置の機械的損失を計算し、
前記第1及び第2のトルクに基づいて、前記トレイニーが前記可動部材に与えた正味の力を計算する。
【0017】
本発明の第9の態様に係るトレーニング装置は、第8の態様に係るトレーニング装置において、
前記制御部は、前記サーボモータに流れる電流を測定することにより、前記第1及び第2のトルクを測定する。
【0018】
本発明の第10の態様に係るトレーニング装置は、第8又は第9の態様に係るトレーニング装置において、
前記トレーニング装置はレッグカール装置である。
【0019】
本発明の第11の態様に係るトレーニング装置は、第8又は第9の態様に係るトレーニング装置において、
前記トレーニング装置はシーテッドチェストプレス装置である。
【0020】
本発明の第12の態様に係るトレーニング装置は、第8〜第11のうちの1つの態様に係るトレーニング装置において、
前記制御部は、前記正味の力の大きさに基づいて決定された所定の負荷を前記トレイニーに与えるように、かつ、前記トレーニング装置の機械的損失をキャンセルするように、前記可動範囲にわたって変動する所定のトルクを前記サーボモータに設定する。
【0021】
本発明の第13の態様に係るトレーニング装置は、第7又は第12の態様に係るトレーニング装置において、
前記制御部は、前記正味の力の大きさに基づいて、前記トレイニーに与える負荷の大きさを決定する。
【0022】
本発明の第14の態様に係るトレーニング装置は、第17又は第12の態様に係るトレーニング装置において、
前記制御部は、
前記正味の力の大きさを示す情報を外部のサーバ装置に送信し、
前記サーバ装置によって前記正味の力の大きさに基づいて決定された負荷の大きさを示す情報を前記サーバ装置から受信する。
【0023】
本発明の第15の態様に係るトレーニング装置は、第1〜第14のうちの1つの態様に係るトレーニング装置において、
前記制御部は、前記可動範囲の両端の位置を検出する。
【0024】
本発明の第16の態様に係るトレーニング方法は、
トレイニーによって所定の可動範囲で移動される少なくとも1つの可動部材と、
前記可動部材を前記可動範囲において移動させ、前記可動部材を介して所定の負荷を前記トレイニーに与える駆動部とを備えるトレーニング装置を用いたトレーニング方法であって、
前記駆動部は、所定のトルクを発生するサーボモータを備え、
前記トレーニング方法は、
前記トレイニーが前記可動部材に触れていないときに前記可動部材を前記可動範囲において移動させるために前記サーボモータにより発生される第1のトルクを測定するステップと、
前記トレイニーのトレーニング部位の重さが前記可動部材にかかっているときに前記可動部材を前記可動範囲において移動させるために前記サーボモータにより発生される第2のトルクを測定するステップと、
前記トレイニーが前記可動部材を移動させるときに前記サーボモータにかかる第3のトルクを測定するステップと、
前記第1のトルクに基づいて、前記トレーニング装置の機械的損失を計算するステップと、
前記第1及び第2のトルクに基づいて、前記トレーニング部位の重さを計算するステップと、
前記第2及び第3のトルクに基づいて、前記トレイニーが前記可動部材に与えた正味の力を計算するステップとを含む。
【0025】
本発明の第17の態様に係るトレーニング方法は、
トレイニーによって所定の可動範囲で移動される少なくとも1つの可動部材と、
前記可動部材を前記可動範囲において移動させ、前記可動部材を介して所定の負荷を前記トレイニーに与える駆動部とを備えるトレーニング装置を用いたトレーニング方法であって、
前記駆動部は、所定のトルクを発生するサーボモータを備え、
前記トレーニング方法は、
前記トレイニーのトレーニング部位の重さが前記可動部材にかかっているときに前記可動部材を前記可動範囲において移動させるために前記サーボモータにより発生される第1のトルクを測定するステップと、
前記トレイニーが前記可動部材を移動させるときに前記サーボモータにかかる第2のトルクを測定するステップと、
前記第1のトルクに基づいて、前記トレーニング装置の機械的損失及び前記トレーニング部位の重さに起因する合計の損失を計算するステップと、
前記第1及び第2のトルクに基づいて、前記トレイニーが前記可動部材に与えた正味の力を計算するステップとを含む。
【0026】
本発明の第18の態様に係るトレーニング方法は、
トレイニーによって所定の可動範囲で移動される少なくとも1つの可動部材と、
前記可動部材を前記可動範囲において移動させ、前記可動部材を介して所定の負荷を前記トレイニーに与える駆動部とを備えるトレーニング装置を用いたトレーニング方法であって、
前記駆動部は、所定のトルクを発生するサーボモータを備え、
前記トレーニング方法は、
前記トレイニーが前記可動部材に触れていないときに前記可動部材を前記可動範囲において移動させるために前記サーボモータにより発生される第1のトルクを測定するステップと、
前記トレイニーが前記可動部材を移動させるときに前記サーボモータにかかる第2のトルクを測定するステップと、
前記第1のトルクに基づいて、前記トレーニング装置の機械的損失を計算するステップと、
前記第1及び第2のトルクに基づいて、前記トレイニーが前記可動部材に与えた正味の力を計算するステップとを含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様に係るトレーニング装置及びトレーニング方法によれば、装置の機械的損失を予め測定することにより、簡単かつ安価な構成でありながら、トレイニーの筋力に基づいて適切な負荷を与えるために、トレイニーの筋力を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態1に係るトレーニング装置1の構成を示す斜視図である。
図2図1の制御装置12及び駆動装置13の構成を示すブロック図である。
図3図1のトレーニング装置1をトレイニー100が使用するときの第1の状態を示す斜視図である。
図4図1のトレーニング装置1をトレイニー100が使用するときの第2の状態を示す斜視図である。
図5図1のトレーニング装置1によって実行されるトレーニング制御処理を示すフローチャートである。
図6図1のシャフト14及びフットレスト15にかかる重力W1を説明するための概略図である。
図7図1のシャフト14及びフットレスト15を下端位置から上端位置に、また、上端位置から下端位置に移動させるときのトルクを説明するための概略図である。
図8】さまざまなトレイニーによってシャフト14及びフットレスト15に与えられる正味の力を示すグラフである。
図9図8のトレイニー3に所定の負荷を与えるためにサーボモータ71に設定されるトルクを示すグラフである。
図10図1のトレーニング装置1によって実行されるトレーニング制御処理の変形例を示すフローチャートである。
図11】実施形態2に係るトレーニング装置2の構成を示す斜視図である。
図12図11のトレーニング装置2をトレイニー100が使用するときの第1の状態を示す斜視図である。
図13図11のトレーニング装置2をトレイニー100が使用するときの第2の状態を示す斜視図である。
図14図11のトレーニング装置2によって実行されるトレーニング制御処理を示すフローチャートである。
図15】実施形態3に係るトレーニング装置3の構成を示す斜視図である。
図16図15のトレーニング装置3をトレイニー100が使用するときの第1の状態を示す斜視図である。
図17図15のトレーニング装置3をトレイニー100が使用するときの第2の状態を示す斜視図である。
図18】実施形態3の変形例に係るトレーニング装置3AAの構成を示す斜視図である。
図19】実施形態4に係るトレーニング装置4の構成を示す斜視図である。
図20図19のトレーニング装置4をトレイニー100が使用するときの第1の状態を示す斜視図である。
図21図19のトレーニング装置4をトレイニー100が使用するときの第2の状態を示す斜視図である。
図22】実施形態5に係るトレーニングシステムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施形態1.
図1は、実施形態1に係るトレーニング装置1の構成を示す斜視図である。トレーニング装置1は、トレイニーの身体のうちの所定の部位、例えば、大腿四頭筋、大臀筋、中臀筋などを鍛えるためのシーテッドレッグプレス装置として構成されている。
【0030】
トレーニング装置1は、コンソール10、シャーシ11、制御装置12、駆動装置13、シャフト14、フットレスト15、シート16、ハンドル17、支柱18、及び停止スイッチSW1を備える。
【0031】
シャーシ11には、トレーニング装置1の各構成要素が取り付けられる。
【0032】
シャフト14及びフットレスト15は、トレイニーによって所定の可動範囲で移動される可動部材である。シャフト14の一端は、後述するように、駆動装置13の回転軸に連結され、回転軸のまわりに回転可能に支持される。シャフト14の他端にはフットレスト15が連結される。
【0033】
駆動装置13は、シャフト14及びフットレスト15をそれらの可動範囲において移動させ、さらに、シャフト14及びフットレスト15を介して所定の負荷をトレイニーに与える。本明細書において、駆動装置13を「駆動部」ともいう。
【0034】
コンソール10及び制御装置12は、駆動装置13を制御する。コンソール10は、所定の制御プログラムを実行し、ユーザ入力を受け、制御装置12はコンソール10の制御下で駆動装置13を制御する。コンソール10は、ディスプレイ及びタッチパネルを備えたタブレット端末装置であってもよく、ディスプレイ及び、キーボード及びポインティングデバイスを備えたパーソナルコンピュータであってもよい。例えば、制御装置12は駆動装置13に有線接続され、コンソール10は制御装置12に有線又は無線で接続される。以下、コンソール10は制御装置12にBluetooth(登録商標)で接続されるものとする。本明細書において、コンソール10及び制御装置12をまとめて「制御部」ともいう。
【0035】
コンソール10及び制御装置12は、互いに一体化されていてもよい。
【0036】
停止スイッチSW1は、トレイニーがトレーニング装置1の緊急停止を希望するときなど、押下されたときにシャフト14及びフットレスト15の動きを停止する。
【0037】
トレイニーは、シート16に座り、フットレスト15にトレイニーの足を載せ、両手でハンドル17を握る。実施形態1では、可動部材(シャフト14及びフットレスト15)を移動させるトレイニーの部位である足を「トレーニング部位」という。
【0038】
支柱18は、コンソール10及び停止スイッチSW1を、トレイニーの周りで回転可能に支持する。
【0039】
図2は、図1の制御装置12及び駆動装置13の構成を示すブロック図である。制御装置12は、制御回路61、電源回路62、Bluetooth通信回路63、及びサーボアンプ64を備える。駆動装置13は、サーボモータ71、モータエンコーダ72、及びギアボックス73を備える。
【0040】
サーボモータ71は、コンソール10及び制御装置12の制御下で所定のトルクを発生する。モータエンコーダ72は、サーボモータ71の回転位置を検出する。サーボモータ71の回転位置を検出することにより、シャフト14及びフットレスト15の位置がわかる。ギアボックス73は、サーボモータ71の回転軸の回転を減速してシャフト14及びフットレスト15に伝達する。
【0041】
電源回路62は、商用電源55から100Vの交流電力の供給を受けて直流電力を発生し、直流電力を制御回路61及びサーボアンプ64に供給する。
【0042】
Bluetooth通信回路63は、コンソール10に無線接続される。
【0043】
サーボアンプ64は、制御回路61の制御下で、サーボモータ71を制御する。サーボアンプ64は、サーボモータ71の現在のトルク、位置、及び速度をモニタリングし、所望のトルク、位置、及び速度をサーボモータ71に指示する。サーボアンプ64は、サーボモータ71に流れる電流を測定することにより、サーボモータ71のトルクを測定する。また、サーボアンプ64は、サーボモータ71に流れる電流を設定することにより、サーボモータ71のトルクを設定する。
【0044】
制御回路61は、サーボモータ71のトルク、位置、及び速度をモニタリングするためのモニタ信号をサーボアンプ64から受信し、サーボモータ71のトルク、位置、及び速度を指示するためのコマンド信号をサーボアンプ64に送信する。制御回路61は、例えば、パラレル又はシリアルのインターフェースを介してサーボアンプ64に接続される。
【0045】
スイッチSW2,SW3は、シャフト14及びフットレスト15の可動範囲の限界の位置(両端位置)にそれぞれ設けられる。スイッチSW2又はSW3がシャフト14及びフットレスト15により押下されたとき、制御回路61はサーボモータ71を停止させる。これにより、トレーニング装置1の故障を防止することができ、また、トレイニーの身体に過大な負荷がかかることを防止することができる。
【0046】
また、トレイニーが停止スイッチSW1を押下したとき、制御回路61はサーボモータ71を停止させる。
【0047】
図3は、図1のトレーニング装置1をトレイニー100が使用するときの第1の状態を示す斜視図である。図4は、図1のトレーニング装置1をトレイニー100が使用するときの第2の状態を示す斜視図である。コンソール10及び制御装置12は、図3の状態において、所定の負荷をトレイニー100に与えるように、駆動装置13のサーボモータ71に所定のトルクを設定する。トレイニー100は、図3の状態から図4の状態になるように、シャフト14及びフットレスト15を押し下げる。コンソール10及び制御装置12は、シャフト14及びフットレスト15が図3の状態から図4の状態に変化する過程において変動する所定のトルクを、駆動装置13のサーボモータ71に設定する。シャフト14及びフットレスト15がトレイニー100により図4の状態まで押し下げられると、コンソール10及び制御装置12は、シャフト14及びフットレスト15を図3の状態まで押し上げ、再びトレイニー100により押し下げられることを待機する。この動作を繰り返すことにより、トレイニー100は筋力をトレーニングする。
【0048】
図5は、図1のトレーニング装置1によって実行されるトレーニング制御処理を示すフローチャートである。ここでは、コンソール10がトレーニング制御処理に係る制御プログラムを実行するものとして説明する。
【0049】
まず、トレイニーは、ステップS1を実行するために、トレーニング部位を可動部材に配置する(すなわち、足をフットレスト15に載せる)。
【0050】
ステップS1において、コンソール10は、トレイニーのトレーニング部位の可動範囲の両端の位置を検出する。図1のようなシーテッドレッグプレス装置の場合には、図3のようにトレイニーの足を曲げた状態におけるシャフト14及びフットレスト15の位置と、図4のようにトレイニーの足を伸ばした状態におけるシャフト14及びフットレスト15の位置とを検出する。
【0051】
トレーニング部位の可動範囲の両端の位置を検出した後、トレイニーは、ステップS2を実行するために、いったんトレーニング部位を可動部材から離す(すなわち、足をフットレスト15から下ろす)。
【0052】
ステップS2において、コンソール10は、トレイニーが可動部材(シャフト14及びフットレスト15)に触れていないときに可動部材をトレイニーの可動範囲において移動させるためにサーボモータ71によって発生されるトルクを測定する。このとき、コンソール10は、予め決められた速度をサーボモータ71に設定する。
【0053】
図6は、図1のシャフト14及びフットレスト15にかかる重力W1を説明するための概略図である。点Oは、駆動装置13の回転軸を示す。点Pは、トレイニーのトレーニング部位とシャフト14及びフットレスト15とが互いに対向する領域の重心(すなわち、トレイニーの力がシャフト14及びフットレスト15にかかる位置)を示す。Rは、点Oから点Pまでの距離を示す。θは、水平面に対するシャフト14の角度を示す。W1は、点Pにかかるシャフト14及びフットレスト15の重さ(kg)を示す。
【0054】
シャフト14が点Oの周りに回転可能に支持されるとき、中心O及び半径Rの円周上の点Pにおける重さW1の接線方向の分力(kg)は、A1=W1・cosθによって表される。従って、この分力A1に起因する点Pにおける接線方向のトルク(kg・m)は、A1(kg)×R(m)によって表される。
【0055】
サーボモータ71、ギアボックス73、シャフト14及びフットレスト15の摺動摩擦などにより生じるトルク(kg・m)を、Friにより表す。シャフト14及びフットレスト15を持ち上げるときに必要なサーボモータ71のトルクTupと、シャフト14及びフットレスト15を押し下げるときに必要なサーボモータ71のトルクTdownとは、次式により表される。
【0056】
Tup=Fri+A1×R
Tdown=Fri−A1×R
【0057】
上述したトルクTup及びTdownの式によれば、シャフト14が水平面に対して90度に近い角度にあると、分力A1よりも摩擦などに起因するトルクFriの方が大きくなり、シャフト14は倒れにくくなる。角度θが小さくなると、分力A1が大きくなり、シャフト14は水平面にさらに近づくように回転する。
【0058】
図7は、図1のシャフト14及びフットレスト15を下端位置から上端位置に、また、上端位置から下端位置に移動させるときのトルクを説明するための概略図である。図7は、シャフト14が水平面に対して0度〜43度の可動範囲を有する場合を示す。点Pにおける接線方向の分力A1の2倍の力が、持ち上げる方向及び押し下げる方向のトルクのヒステリシスとなって現れる。
【0059】
図7において、シャフト14及びフットレスト15が下端位置(θ=0度)及び上端位置(θ=43度)の各近傍にあるとき、トルクは厳密には釣り合っていない可能性がある。シャフト14及びフットレスト15の位置を保持するために、シャフト14及びフットレスト15が他の構成要素に押しつけられている可能性がある。また、シャフト14及びフットレスト15が静止状態から動き始めたことにより、摩擦係数が変化する可能性がある。
【0060】
トルクTup及びTdownを測定した後、トレイニーは、ステップS3を実行するために、再びトレーニング部位を可動部材に配置する(すなわち、再び足をフットレスト15に載せる)。
【0061】
図5のステップS3において、コンソール10は、トレーニング部位の重さが可動部材(シャフト14及びフットレスト15)にかかっているときに可動部材を可動範囲において移動させるためにサーボモータ71によって発生されるトルクT1を測定する。このとき、コンソール10は、ステップS2でサーボモータ71に設定した速度と同じ速度をサーボモータ71に設定する。トレイニーは、トレイニー自身の力をシャフト14及びフットレスト15にかけないように、フットレスト15にトレイニーの足を載せる。トレイニーのトレーニング部位の重さを、W2により表し、重さW2の点Pにおける接線方向の分力を、A2=W2・cosθにより表す。このとき、トルクT1は、次式で表される。
【0062】
T1=Fri−(A1+A2)×R
【0063】
ステップS4において、コンソール10は、トレイニーがトレイニー自身の力により可動部材(シャフト14及びフットレスト15)を移動させるときにサーボモータ71にかかるトルクT2を測定する。このとき、コンソール10は、ステップS2及びS3でサーボモータ71に設定した速度と同じ速度をサーボモータ71に設定する。コンソール10は、シャフト14及びフットレスト15を図3の位置に移動させる。トレイニーは、図3の状態から図4の状態になるように、シャフト14及びフットレスト15を押し下げる。トレイニー自身の力により発生するトルクを、Mesにより表す。このとき、トルクT2は、次式で表される。
【0064】
T2=Fri−(A1+A2)×R+Mes
【0065】
ステップS5において、コンソール10は、トレーニング装置の機械的損失を計算する。機械的損失は、摩擦などにより生じるトルクFriと、シャフト14及びフットレスト15の重さに起因するトルクA1×Rとを含む。トルクFri及び分力A1は、ステップS2で測定したトルクTup及びTdownに基づいて計算される。
【0066】
ステップS6において、コンソール10は、トレーニング部位の重さW2を計算する。ステップS2で測定したトルクTdown及びステップS3で測定したトルクT1に基づいて、トレーニング部位の重さW2に起因するトルクA2×R=Tdown−T1を計算し、これにより、トレーニング部位の重さW2が計算される。
【0067】
ステップS7において、コンソール10は、トレイニーが可動部材(シャフト14及びフットレスト15)に与えた正味の力を示すトルクMesを計算する。ステップS3で測定したトルクT1及びステップS4で測定したトルクT2に基づいて、トレイニー自身の力により発生するトルクMes=T2−T1が計算される。
【0068】
ステップS8において、コンソール10は、トレイニーの正味の力の大きさに基づいて、トレイニーに与える負荷の大きさを示す情報であるトレーニングメニューを決定する。トレイニーに与える負荷の大きさは、トレイニーの正味の力よりも小さく設定され、例えば、トレイニーの正味の力の最大値の0.6〜0.7倍に設定される。これにより、トレイニーの身体に過大な負荷がかかることを防止することができる。また、トレイニーに与える負荷の大きさは、所望のトレーニングの効果を達成するように、トレイニーのトレーニング部位の可動範囲にわたって変化する。
【0069】
ステップS9において、コンソール10は、決定したトレーニングメニューに基づいて、駆動装置13にトルクを設定する。コンソール10は、正味の力の大きさに基づいて決定された所定の負荷をトレイニーに与えるように、かつ、トレーニング装置1の機械的損失のトルクFri及びトレーニング部位の重さW2をキャンセルするように、可動範囲にわたって変動する所定のトルクT3をサーボモータ71に設定する。正味の力の大きさに基づいて決定された所定の負荷のトルクを、Traにより表す。このとき、トルクT3は、次式で表される。
【0070】
T3=Fri+(A1+A2)×R+Tra
【0071】
図8は、さまざまなトレイニーによってシャフト14及びフットレスト15に与えられる正味の力を示すグラフである。図9は、図8のトレイニー3に所定の負荷を与えるためにサーボモータ71に設定されるトルクを示すグラフである。図8及び図9の横軸の移動距離は、図6の中心O及び半径Rの円周上における点Pの移動距離を示す。トレーニング装置1を実際に使用中のトレイニー3の正味の力を計算することにより、トレイニー3に最も適したトレーニングメニューを決定することができる。
【0072】
ステップS10において、コンソール10は、トレイニーの筋力のトレーニングを実行する。ここで、トレーニング中にトレイニーが発生した力の大きさは、サーボモータ71にかかるトルクから、トルクT3の各成分を減算することによって計算される。ステップS11において、コンソール10は、トレーニングを繰り返すか否かを判断し、YESのときはステップS10に戻り、NOのときは処理を終了する。
【0073】
図5のトレーニング制御処理を実行するとき、コンソール10は、そのディスプレイ上に、トルクを測定するためのトレイニーへの指示、例えば、足をフットレスト15に載せる(ステップS1及びS3)、足をフットレスト15から下ろす(ステップS2)、トレイニーの力をフットレスト15にかける(ステップS4)、などを表示してもよい。また、コンソール10は、そのディスプレイ上に、ステップS2〜S4で測定されたトルクを表示してもよく、ステップS5〜S7で計算されたトレーニング装置の機械的損失、トレーニング部位の重さ、及び正味の力を表示してもよい。また、ステップS9において複数のトレーニングメニュー(例えば、異なる負荷を有するトレーニングメニュー)が利用可能である場合、コンソール10は、トレーニングメニューを選択するためのユーザ入力をトレイニーから取得してもよい。
【0074】
以上の説明では、コンソール10が図5のトレーニング制御処理に係る制御プログラムを実行するものとしたが、コンソール10に代えて、制御装置12がトレーニング制御処理に係る制御プログラムを実行してもよい。この場合、コンソール10は、そのディスプレイ上にさまざまな情報を表示し、また、ユーザ入力をトレイニーから取得する単なるユーザインターフェースとして動作する。
【0075】
以上説明したように、実施形態1に係るトレーニング装置1によれば、装置の摩擦などにより生じるトルクと、装置の重さに起因するトルクとを含む機械的損失を予め測定することができる。これにより、簡単かつ安価な構成でありながら、トレイニーの筋力を正確に測定し、トレイニーの筋力に基づいて適切な負荷を与えることができる。
【0076】
図10は、図1のトレーニング装置1によって実行されるトレーニング制御処理の変形例を示すフローチャートである。ここでもまた、図5と同様に、コンソール10がトレーニング制御処理に係る制御プログラムを実行するものとして説明する。
【0077】
図5のトレーニング制御処理では、トレーニング装置1の機械的損失と、トレーニング部位の重さとを別個に計算したが、これらの合計の損失を計算してもよい。
【0078】
まず、トレイニーは、ステップS21を実行するために、トレーニング部位を可動部材に配置する(すなわち、足をフットレスト15に載せる)。
【0079】
ステップS21において、コンソール10は、図5のステップS1と同様に、トレイニーのトレーニング部位の可動範囲の両端の位置を検出する。
【0080】
ステップS22において、コンソール10は、トレーニング部位の重さが可動部材(シャフト14及びフットレスト15)にかかっているときに可動部材を可動範囲において移動させるためにサーボモータ71によって発生されるトルクを測定する。このとき、コンソール10は、予め決められた速度をサーボモータ71に設定する。トレイニーは、トレイニー自身の力をシャフト14及びフットレスト15にかけないように、フットレスト15にトレイニーの足を載せる。コンソール10は、シャフト14及びフットレスト15を持ち上げるときに必要なサーボモータ71のトルクTup’と、シャフト14及びフットレスト15を押し下げるときに必要なサーボモータ71のトルクTdown’とを測定する。
【0081】
Tup’=Fri+(A1+A2)×R
Tdown’=Fri−(A1+A2)×R
【0082】
ステップS23において、コンソール10は、図5のステップS4と同様に、トレイニーがトレイニー自身の力により可動部材(シャフト14及びフットレスト15)を移動させるときにサーボモータ71にかかるトルクT2を測定する。このとき、コンソール10は、ステップS22でサーボモータ71に設定した速度と同じ速度をサーボモータ71に設定する。コンソール10は、シャフト14及びフットレスト15を図3の位置に移動させる。トレイニーは、図3の状態から図4の状態になるように、シャフト14及びフットレスト15を押し下げる。トレイニー自身の力により発生するトルクを、Mesにより表す。このとき、トルクT2は、次式で表される。
【0083】
T2=Fri−(A1+A2)×R+Mes
【0084】
ステップS24において、コンソール10は、トレーニング装置の機械的損失及びトレーニング部位の重さに起因する合計の損失を計算する。前述のように、機械的損失は、摩擦などにより生じるトルクFriと、シャフト14及びフットレスト15の重さに起因するトルクA1×Rとを含み、また、トレーニング部位の重さW2に起因するトルクA2×Rが生じている。コンソール10は、ステップS22で測定したトルクTup’及びTdown’に基づいて、トルクFri及び(A1+A2)×Rを計算する。
【0085】
ステップS25において、コンソール10は、図5のステップS7と同様に、トレイニーが可動部材(シャフト14及びフットレスト15)に与えた正味の力を示すトルクMesを計算する。ステップS22で測定したトルクTdown’及びステップS23で測定したトルクT2に基づいて、トレイニー自身の力により発生するトルクMes=T2−Tdown’が計算される。
【0086】
以後、ステップS26〜S29は、図5のステップS8〜S11と同様である。
【0087】
図10のトレーニング制御処理によれば、図5のステップS2におけるトルクの測定が不要になり、また、トレーニング装置の機械的損失及びトレーニング部位の重さに起因する合計の損失を計算するので、図5の場合よりも処理を簡単化することができる。
【0088】
実施形態1に係るトレーニング装置1を作成するにあたって、実際の足の踏み出し及び踏み込みに近い動きになるように、フットレスト15及びシート16の位置関係及び寸法と、フットレスト15の動きとを検討した。その結果、従来のレッグプレス装置のように可動部材が平行移動するのではなく、可動部材が水平面に対して約50度の角度を有する位置から約0度の角度を有する位置まで回転運動するように構成した。
【0089】
実施形態1に係るトレーニング装置1では、トレイニーがシャフト14及びフットレスト15を押し下げる場合について説明したが、トレイニーの足をフットレスト15に固定し、トレイニーがシャフト14及びフットレスト15を引き上げてもよい。
【0090】
実施形態2.
図11は、実施形態2に係るトレーニング装置2の構成を示す斜視図である。トレーニング装置2は、トレイニーの身体のうちの所定の部位、例えば、半腱様筋、半膜様筋などを鍛えるためのレッグカール装置として構成されている。
【0091】
トレーニング装置2は、コンソール20、シャーシ21、制御装置22、駆動装置23、バーアセンブリ24、クッション25a,25b、シート26、ハンドル27、及び支柱28を備える。
【0092】
バーアセンブリ24及びクッション25a,25bは、トレイニーによって所定の可動範囲で移動される可動部材である。バーアセンブリ24は、駆動装置23の回転軸に連結され、回転軸のまわりに回転可能に支持される。バーアセンブリ24は、トレイニーの足を上下に挟む2つのバーを含み、これらのバーの周り(すなわち、トレイニーの足に接する可能性がある位置)にクッション25a,25bが設けられる。
【0093】
実施形態2では、可動部材(バーアセンブリ24及びクッション25a,25b)を移動させるトレイニーの部位である足を「トレーニング部位」という。
【0094】
トレーニング装置2の他の構成要素は、図1のトレーニング装置1における同じ名称を有する構成要素と実質的に同様に構成される。
【0095】
図12は、図11のトレーニング装置2をトレイニー100が使用するときの第1の状態を示す斜視図である。図13は、図11のトレーニング装置2をトレイニー100が使用するときの第2の状態を示す斜視図である。コンソール20及び制御装置22は、図12の状態において、所定の負荷をトレイニー100に与えるように、駆動装置23のサーボモータに所定のトルクを設定する。トレイニー100は、図12の状態から図13の状態になるように、バーアセンブリ24及びクッション25a,25bを押し上げる。コンソール20及び制御装置22は、バーアセンブリ24及びクッション25a,25bが図12の状態から図13の状態に変化する過程において変動する所定のトルクを、駆動装置23のサーボモータに設定する。バーアセンブリ24及びクッション25a,25bがトレイニー100により図13の状態まで押し上げられると、コンソール20及び制御装置22は、バーアセンブリ24及びクッション25a,25bを図12の状態まで押し下げ、再びトレイニー100により押し上げられることを待機する。この動作を繰り返すことにより、トレイニー100は筋力をトレーニングする。
【0096】
図14は、図11のトレーニング装置2によって実行されるトレーニング制御処理を示すフローチャートである。ここでもまた、図5と同様に、コンソール20がトレーニング制御処理に係る制御プログラムを実行するものとして説明する。
【0097】
レッグカール装置であるトレーニング装置2では、トレーニング部位の重さがトレーニング装置にかからないので、トレーニング部位の重さを計算することは不要になる。
【0098】
まず、トレイニーは、ステップS31を実行するために、トレーニング部位を可動部材に配置する(すなわち、足をクッション25a,25bの間に配置する)。
【0099】
ステップS31において、コンソール20は、トレイニーのトレーニング部位の可動範囲の両端の位置を検出する。図11のようなレッグカール装置の場合には、図11のようにトレイニーの足を下げた状態におけるバーアセンブリ24及びクッション25a,25bの位置と、図17のようにトレイニーの足を上げた状態におけるバーアセンブリ24及びクッション25a,25bの位置とを検出する。
【0100】
トレーニング部位の可動範囲の両端の位置を検出した後、トレイニーは、ステップS32を実行するために、いったんトレーニング部位を可動部材から離す(すなわち、足をバーアセンブリ24及びクッション25a,25bから離す)。
【0101】
ステップS32において、コンソール20は、トレイニーが可動部材(バーアセンブリ24及びクッション25a,25b)に触れていないときに可動部材をトレイニーの可動範囲において移動させるためにサーボモータ71によって発生されるトルクを測定する。このとき、コンソール20は、予め決められた速度をサーボモータ71に設定する。可動部材を持ち上げるときに必要なサーボモータ71のトルクTupと、可動部材を押し下げるときに必要なサーボモータ71のトルクTdownとは、次式により表される。
【0102】
Tup=Fri+A1×R
Tdown=Fri−A1×R
【0103】
トルクTup及びTdownを測定した後、トレイニーは、ステップS33を実行するために、再びトレーニング部位を可動部材に配置する(すなわち、再び足をクッション25a,25bの間に配置する)。
【0104】
ステップS33において、コンソール20は、トレイニーがトレイニー自身の力により可動部材(バーアセンブリ24及びクッション25a,25b)を移動させるときにサーボモータ71にかかるトルクT2を測定する。このとき、コンソール20は、ステップS32でサーボモータ71に設定した速度と同じ速度をサーボモータ71に設定する。コンソール20は、可動部材を図12の位置に移動させる。トレイニーは、図12の状態から図13の状態になるように、可動部材を押し上げる。トレイニー自身の力により発生するトルクを、Mesにより表す。このとき、トルクT2は、次式で表される。
【0105】
T2=Fri−A1×R+Mes
【0106】
ステップS34において、コンソール20は、トレーニング装置の機械的損失を計算する。機械的損失は、摩擦などにより生じるトルクFriと、可動部材の重さに起因するトルクA1×Rとを含む。トルクFri及び分力A1は、ステップS32で測定したトルクTup及びTdownに基づいて計算される。
【0107】
ステップS35において、コンソール20は、トレイニーが可動部材(バーアセンブリ24及びクッション25a,25b)に与えた正味の力を示すトルクMesを計算する。ステップS32で測定したトルクTdown及びステップS33で測定したトルクT2に基づいて、トレイニー自身の力により発生するトルクMes=T2−Tdownが計算される。
【0108】
ステップS36において、コンソール20は、トレイニーの正味の力の大きさに基づいて、トレイニーに与える負荷の大きさを示す情報であるトレーニングメニューを決定する。
【0109】
ステップS37において、コンソール20は、決定したトレーニングメニューに基づいて、駆動装置13にトルクを設定する。コンソール20は、正味の力の大きさに基づいて決定された所定の負荷をトレイニーに与えるように、かつ、トレーニング装置1の機械的損失のトルクFriをキャンセルするように、可動範囲にわたって変動する所定のトルクT3’をサーボモータ71に設定する。正味の力の大きさに基づいて決定された所定の負荷のトルクを、Traにより表す。このとき、トルクT3’は、次式で表される。
【0110】
T3’=Fri+A1×R+Tra
【0111】
ステップS38において、コンソール20は、トレイニーの筋力のトレーニングを実行する。ステップS39において、コンソール20は、トレーニングを繰り返すか否かを判断し、YESのときはステップS38に戻り、NOのときは処理を終了する。
【0112】
実施形態2に係るトレーニング装置2もまた、実施形態1に係るトレーニング装置1と同様に、装置の摩擦などにより生じるトルクと、装置の重さに起因するトルクとを含む機械的損失を予め測定することができる。これにより、簡単かつ安価な構成でありながら、トレイニーの筋力を正確に測定し、トレイニーの筋力に基づいて適切な負荷を与えることができる。
【0113】
実施形態3.
図15は、実施形態3に係るトレーニング装置3の構成を示す斜視図である。トレーニング装置3は、トレイニーの身体のうちの所定の部位、例えば、上腕三頭筋、大胸筋、三角筋を鍛えるためのディップス装置として構成されている。
【0114】
トレーニング装置3は、コンソール30、シャーシ31、制御装置32、駆動装置33、シャフト34a,34b、ハンドル35a,35b、リンク36a,36b、レバー37a,37b、及びシート38を備える。
【0115】
シャフト34a,34b、ハンドル35a,35b、リンク36a,36b、及びレバー37a,37bは、トレイニーによって所定の可動範囲で移動される可動部材である。各シャフト34a,34bの一端は、駆動装置33の回転軸に連結され、回転軸のまわりに回転可能に支持される。各シャフト34a,34bの他端には、ハンドル35a,35bが回転可能にそれぞれ接続される。ハンドル35a,35bには、所定長さを有するレバー37a,37bがそれぞれ固定される。各レバー37a,37b上の一点は、リンク36a,36bを介して、駆動装置33又はシャーシ31における、駆動装置33の回転軸とは異なる位置にそれぞれ連結される。図15の例では、リンク36a及びレバー37aは、シャフト34aよりも外側の位置において互いに連結され、リンク36b及びレバー37bは、シャフト34bよりも外側の位置において互いに連結され、リンク36a,36bは、駆動装置33の回転軸の下方の位置にそれぞれ連結される。これにより、トレイニーがシャフト34a,34bを押し下げたとき、ハンドル35aは反時計回りに回転し、ハンドル35bは時計回りに回転する。
【0116】
各レバー37a,37bにおいてリンク36a,36bを連結する位置は変更可能に構成されてもよい。これにより、シャフト34a,34bを押し下げる角度に対するハンドル35a,35bの回転角度の比率を変化させることができる。トレイニーの身体(すなわち腕及び手首)の柔軟性の程度に合わせて、この比率を調整することができる。
【0117】
実施形態3では、可動部材(シャフト34a,34b、ハンドル35a,35b、リンク36a,36b、及びレバー37a,37b)を移動させるトレイニーの部位である腕を「トレーニング部位」という。
【0118】
駆動装置33は1つのサーボモータを備え、シャフト34a,34bは駆動装置33の内部で互いに連結されていてもよい。それに代わって、駆動装置33は、各シャフト34a,34bに対応して1つずつのサーボモータを備えていてもよい。
【0119】
トレーニング装置3の他の構成要素は、図1のトレーニング装置1における同じ名称を有する構成要素と実質的に同様に構成される。
【0120】
図16は、図15のトレーニング装置3をトレイニー100が使用するときの第1の状態を示す斜視図である。図17は、図15のトレーニング装置3をトレイニー100が使用するときの第2の状態を示す斜視図である。コンソール30及び制御装置32は、図16の状態において、所定の負荷をトレイニー100に与えるように、駆動装置33のサーボモータに所定のトルクを設定する。トレイニー100は、図16の状態から図17の状態になるように、シャフト34a,34b及びハンドル35a,35bを押し下げる。コンソール30及び制御装置32は、シャフト34a,34b及びハンドル35a,35bが図16の状態から図17の状態に変化する過程において変動する所定のトルクを、駆動装置33のサーボモータに設定する。シャフト34a,34b及びハンドル35a,35bがトレイニー100により図17の状態まで押し下げられると、コンソール30及び制御装置32は、シャフト34a,34b及びハンドル35a,35bを図16の状態まで押し上げ、再びトレイニー100により押し下げられることを待機する。この動作を繰り返すことにより、トレイニー100は筋力をトレーニングする。
【0121】
コンソール30又は制御装置32は、図5又は図10のトレーニング制御処理と同様のトレーニング制御処理に係る制御プログラムを実行する。
【0122】
実施形態3に係るトレーニング装置3もまた、実施形態1に係るトレーニング装置1と同様に、装置の摩擦などにより生じるトルクと、装置の重さに起因するトルクとを含む機械的損失を予め測定することができる。これにより、簡単かつ安価な構成でありながら、トレイニーの筋力を正確に測定し、トレイニーの筋力に基づいて適切な負荷を与えることができる。
【0123】
図18は、実施形態3の変形例に係るトレーニング装置3AAの構成を示す斜視図である。図18の例では、リンク36a及びレバー37aは、シャフト34aよりも内側の位置において互いに連結され、リンク36b及びレバー37bは、シャフト34bよりも内側の位置において互いに連結され、リンク36a,36bは、駆動装置33の回転軸の下方の位置にそれぞれ連結される。これにより、トレイニーがシャフト34a,34bを押し下げたとき、ハンドル35aは時計回りに回転し、ハンドル35bは反時計回りに回転する。
【0124】
ハンドル35a,35bを回転させるために、図15及び図18を参照して説明したような機械的な機構を用いてもよく、電気的な機構を用いてもよい。図15及び図18を参照して説明したような機械的な機構を用いることにより、簡単な構造で安価に構成することができる。
【0125】
実施形態3に係るトレーニング装置3は、腕の下降と共にハンドル35a,35bを回転させる機構を付加し、肩甲骨の回転を促すことで、肩こりの解消及び爽快感のアップを図る。
【0126】
実施形態4.
図19は、実施形態4に係るトレーニング装置4の構成を示す斜視図である。トレーニング装置4は、トレイニーの身体のうちの所定の部位、例えば、大胸筋などを鍛えるためのシーテッドチェストプレス装置として構成されている。
【0127】
トレーニング装置4は、コンソール40、シャーシ41、制御装置42、駆動装置43、ハンドル44a,44b、ガイド45a,45b、シート46、及び支柱48を備える。
【0128】
ハンドル44a,44bは、トレイニーによって所定の可動範囲で移動される可動部材である。ハンドル44a,44bは、駆動装置43の回転軸に連結され、回転軸のまわりに回転可能に支持される。ガイド45a,45bは、実際の腕の動きに合わせて、腕の押し出しにつれてハンドル44a,44bの間の間隔が狭くなるように形成される。従って、ハンドル44a,44bの軸は、トレイニーの身体の前後方向に動くだけでなく、左右方向にも動く。トレーニング装置4は、ハンドル44a,44bをガイド45a,45bに沿って付勢するためのバネ(図示せず)を備える。
【0129】
実施形態4では、可動部材(ハンドル44a,44b)を移動させるトレイニーの部位である腕を「トレーニング部位」という。
【0130】
駆動装置43は1つのサーボモータを備え、ハンドル44a,44bは駆動装置43の内部で互いに連結されていてもよい。それに代わって、駆動装置43は、各ハンドル44a,44bに対応して1つずつのサーボモータを備えていてもよい。
【0131】
トレーニング装置4の他の構成要素は、図1のトレーニング装置1における同じ名称を有する構成要素と実質的に同様に構成される。
【0132】
図20は、図19のトレーニング装置4をトレイニー100が使用するときの第1の状態を示す斜視図である。図21は、図19のトレーニング装置4をトレイニー100が使用するときの第2の状態を示す斜視図である。コンソール40及び制御装置42は、図20の状態において、所定の負荷をトレイニー100に与えるように、駆動装置43のサーボモータに所定のトルクを設定する。トレイニー100は、図20の状態から図21の状態になるように、ハンドル44a,44bを押す。コンソール40及び制御装置42は、ハンドル44a,44bが図20の状態から図21の状態に変化する過程において変動する所定のトルクを、駆動装置43のサーボモータに設定する。ハンドル44a,44bがトレイニー100により図21の状態まで押されると、コンソール40及び制御装置42は、ハンドル44a,44bを図20の状態まで押し戻され、再びトレイニー100により押されることを待機する。この動作を繰り返すことにより、トレイニー100は筋力をトレーニングする。
【0133】
コンソール40又は制御装置42は、図14のトレーニング制御処理と同様のトレーニング制御処理に係る制御プログラムを実行する。
【0134】
実施形態4に係るトレーニング装置4もまた、実施形態1に係るトレーニング装置1と同様に、装置の摩擦などにより生じるトルクと、装置の重さに起因するトルクとを含む機械的損失を予め測定することができる。これにより、簡単かつ安価な構成でありながら、トレイニーの筋力を正確に測定し、トレイニーの筋力に基づいて適切な負荷を与えることができる。
【0135】
実施形態5.
図22は、実施形態5に係るトレーニングシステムの構成を示すブロック図である。図22のトレーニングシステムは、複数のトレーニング装置1A〜4A、無線LANアクセスポイント装置(AP)51、インターネット52、及びサーバ装置53を備える。トレーニング装置1A〜4Aは、実施形態1〜4に係るトレーニング装置1〜4にそれぞれ対応する。ただし、トレーニング装置1A〜4Aは、トレーニング装置1〜4のコンソール10〜40に代えて、無線LANアクセスポイント装置51及びインターネット52を介して遠隔のサーバ装置53とさらに通信するコンソール10A〜40Aをそれぞれ備える。
【0136】
実施形態1〜4に係るトレーニング装置1〜4はスタンドアロンで動作したが、実施形態5に係るトレーニングシステムのトレーニング装置1A〜4Aは、サーバ装置53と協働して動作する。サーバ装置53は、あるトレイニーの正味の力の大きさに基づいて、そのトレイニーのためのトレーニングメニューを決定する。各コンソール10A〜40Aは、それ自体がトレーニングメニューを決定することに代えて、サーバ装置53によって決定されたトレーニングメニューを受信する。このため、各コンソール10A〜40Aは、各トレーニング装置1A〜4Aのトレイニーの正味の力の情報をサーバ装置53に送信する。サーバ装置53は、各コンソール10A〜40Aから受信した各トレーニング装置1A〜4Aのトレイニーの正味の力の大きさに基づいて、各トレイニーのためのトレーニングメニューを決定する。各コンソール10A〜40Aは、サーバ装置53からトレーニングメニューを受信する。各コンソール10A〜40Aは、サーバ装置53から受信したトレーニングメニューに基づいて、駆動装置13〜43にトルクをそれぞれ設定する。
【0137】
サーバ装置53がトレーニングメニューを決定することにより、各コンソール10A〜40A自体がトレーニングメニューを決定する場合に比べて、各コンソール10A〜40Aの処理を簡単化することができる。また、トレイニーの正味の力の情報をサーバ装置53に集めることにより、トレイニーにとって適切なトレーニングメニューを決定しやすくなる。
【0138】
実施形態5に係るトレーニングシステムによれば、互いに異なる及び/又は同一の種類の複数のトレーニング装置1A〜4Aがある場合、トレーニングの内容に応じて、かつ、各トレイニーの状態に応じて、各トレイニーの筋力を正確に測定し、各トレイニーの筋力に基づいて適切な負荷を与えることができる。
【0139】
各実施形態のまとめ.
各実施形態に係るトレーニング装置は、図5図10、及び図14のトレーニング制御処理のうちの2つ以上を実行するように構成されてもよい。トレーニング装置は、例えばユーザ入力に応じて選択的に、図5図10、及び図14のトレーニング制御処理のうちの1つを実行するように構成されてもよい。
【0140】
各実施形態に係るトレーニング装置はすべて、サーボモータを原動力として、サーボモータの回転軸の回転を減速し、可動部材をほぼ0度〜70度程度の可動範囲で往復させる。駆動装置のギアボックスの減速比が大きいので、その摩擦を低減する必要がある。また、サーボモータの側から駆動するだけでなく、可動部材の側からトレイニーによって駆動されるので、駆動装置のギアボックスは、遊星歯車、ハスバ歯車等の伝達効率の高い機構が必要である。各実施形態に係るトレーニング装置の駆動機構を共通化することで、電装関係のハードウエア及びソフトウエアを共通化することができ、コストの低下及びメンテナンスの簡易化が可能である。
【0141】
各実施形態に係るトレーニング装置は、直流のサーボモータで回転軸の位置を検出し、一定速で回転するように電流を制御(速度制御)する。そこに外乱が加わるとサーボモータの電流が変化するので、その電流(トルク)を知ることにより外乱を測定できる。
【0142】
トレーニング装置の構造を考慮すると、外乱の原因には、例えば以下の3つがある。
(1)ギアボックス及び伝達機構における摩擦
(2)可動部材の回転による可動部材の重さのトルク方向における変化
(3)トレイニーの筋力等によって与えられる外力
【0143】
トレイニーが可動部材に触れていないときに可動部材を移動させる(空運転する)ことにより、(1)及び(2)の外乱は既知となる。可動部材が一定速で動いているとき、トレイニーが押す、蹴る等の外力を可動部材に与え、その時の位置及び力(トルク、すなわち電流値)を測定し、(1)及び(2)の外乱を減算することで、一定速で動作中のストロークの位置及び筋力を動的に測定することができる。
【0144】
さらに、可動部材の速度をさまざまな異なる速度(例えば、低速、中速、及び高速)と変化させて測定すると、そのトレイニーの詳しい筋力特性がわかる。一般に、低速では測定可能な力は大きくなり、高速では測定可能な力は小さくなる。
【0145】
トレーニングを繰り返すと、筋力が増加し、可動範囲も増加する。従って、上述した位置及び筋力のパターンを比較すると共に、トレーニング装置に対するトレイニーの位置に関する情報(椅子の位置及び高さ等)を記憶して比較することも、トレーニングの効果の定量化に有用である。
【0146】
(1)及び(2)の外乱の測定値を記憶し、電源を再投入するごとに(1)及び(2)の外乱の最新値を測定し、従来の測定値と比較すると、機器の摩擦の変化等を知ることができる。従って、トレーニング装置の劣化、摩擦の増加、設定間違い等を知ることができ、予防保全に役立つ。
【0147】
測定の際に、トレイニーの力だけでなく体重の一部が測定値に重畳する(例えば足の重量が加わる)トレーニング装置の場合、(1)及び(2)の外乱の測定に加えて、トレイニーが力を抜いた状態で測定を行ってもよい。そのデータを減算すると、体重の影響が除され、真の力の測定ができる。
【0148】
測定で得られた位置及び筋力の情報に基づき、サーボモータの位置とその場所でのトルクのパターンを設定すれば(サーボモータのトルク制御)、そのトレイニーに応じた最適の負荷で動的トレーニングを行うことが可能となる。トレイニーのトレーニングの進捗及び体調により、パターンは変えることなく、全体のトルクを増減できれば有用である。各トレーニング時の仕事率、仕事量等を計算、表示、記憶、比較することができると、トレーニング効果の定量化とモチベーションの向上が可能である。
【0149】
各実施形態に係るトレーニング装置は、高齢者又は特定高齢者(介護予防対象者)に最適な下肢運動機器として有用である。トレーニングを行う高齢者の関節可動域のどの部分でどれだけの筋力が発揮されたかを測定することができる。測定結果に基づき、トレーニングを行う高齢者個人の筋力の発揮に合わせた負荷をかけることができる。
【0150】
各実施形態に係るトレーニング装置は、簡単かつ安価な構成でありながら、トレイニーの力を正確に測定し、摩擦及び重力等の外乱を除去して、正確な負荷をトレイニーに与えることができる。また、トレイニーによる機器の誤設定を検出し、機器の異常をモニタできることも有用である。その為に、運動開始前に、無負荷状態で運転し、その負荷を初期データと比較し、異常の有無を判定する。またその負荷を、トレイニーに与えたい負荷に加えることにより、所望の負荷が与えられる。
【符号の説明】
【0151】
1,1A…トレーニング装置(シーテッドレッグプレス装置)、
2,2A…トレーニング装置(レッグカール装置)、
3,3AA,3A…トレーニング装置(ディップス装置)、
4,4A…トレーニング装置(シーテッドチェストプレス装置)、
10,10A…コンソール、
11…シャーシ、
12…制御装置、
13…駆動装置、
14…シャフト、
15…フットレスト、
16…シート、
17…ハンドル、
18…支柱、
20,20A…コンソール、
21…シャーシ、
22…制御装置、
23…駆動装置、
24…バーアセンブリ、
25a,25b…クッション、
26…シート、
27…ハンドル、
28…支柱、
30,30A…コンソール、
31…シャーシ、
32…制御装置、
33…駆動装置、
34a,34b…シャフト、
35a,35b…ハンドル、
36a,36b…リンク、
37a,37b…レバー、
38…シート、
40,40A…コンソール、
41…シャーシ、
42…制御装置、
43…駆動装置、
44a,44b…ハンドル、
45a,45b…ガイド、
46…シート、
48…支柱、
51…無線LANアクセスポイント装置(AP)、
52…インターネット、
53…サーバ装置、
55…商用電源、
61…制御回路、
62…電源回路、
63…Bluetooth通信回路、
64…サーボアンプ、
71…サーボモータ、
72…モータエンコーダ、
73…ギアボックス、
100…トレイニー、
SW1…停止スイッチ、
SW2,SW3…スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22