(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860204
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】着脱可能な替刃ケースを備える工具
(51)【国際特許分類】
B26B 5/00 20060101AFI20210405BHJP
B26B 29/02 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
B26B5/00
B26B29/02
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-144735(P2017-144735)
(22)【出願日】2017年7月26日
(65)【公開番号】特開2019-24629(P2019-24629A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】390024132
【氏名又は名称】オルファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100138874
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 雅晴
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 洋輔
【審査官】
山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06101721(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0272529(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0227012(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0110858(US,A1)
【文献】
実開平1−121567(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 1/00 − 11/00
B26B 23/06 − 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体(10)と、
工具本体に着脱可能に装着される交換可能な刃(20)と、
交換用の替刃を収容する替刃ケース(30)と、を備えた工具であって、
工具本体(10)には、
替刃ケースを着脱可能に保持する第1ケース保持部(11)と、
替刃ケースを工具本体から突出する刃先を覆って着脱可能に保持する第2ケース保持部(12)と、が設けられている、工具。
【請求項2】
上記替刃ケース(30)は、ケース本体(35)と、当該ケース本体に対してヒンジ式に開閉する開閉扉(36)と、を備えており、
上記工具本体(10)には、第2ケース保持部(12)に替刃ケース(30)が取り付けられたとき当該替刃ケースの開閉扉に係合して当該開閉扉が開くのを防止する係止部(15)が形成されている、請求項1記載の工具。
【請求項3】
上記替刃ケース(30)は、第2ケース保持部(12)に対して差込み式に取り付けられるものであり、
上記係止部(15)は、第2ケース保持部に対する替刃ケースの差込み方向と平行に突出するフック部(15)で構成されており、
替刃ケース(30)を第2ケース保持部(12)に差し込んで取り付けると同時に、フック部(15)が替刃ケースの開閉扉(36)の表面に対向して位置し、これによって開閉扉が開くのを防止する、請求項2記載の工具。
【請求項4】
前記替刃ケース(30)は、その対向する2つの側壁(38a、38b)が、ケース内方に向かって弾性的に退避可能に構成されている、請求項1記載の工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、替刃交換が可能な工具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばカッターナイフ等の工具において、使用するうちに刃(ブレード)が劣化した場合に、刃を交換して使用できるようにしたものが知られている。このようなカッターナイフは、交換用の替刃を複数枚収容できる替刃ケースとセットで販売されることが多く、替刃ケースの取扱いについて工夫し、利便性を高めた先行技術が幾つか存在する。
【0003】
特許文献1に開示されたペン型のナイフは、着脱可能なキャップを備えていて、このキャップは、替刃ケースに対しても着脱可能に構成されている。替刃ケースにキャップを連結することで、ナイフスタンドが構成される。ナイフスタンドの一部として構成されることで、キャップはその紛失が防止される。また、ナイフは、カッティング作業を終えた後、ナイフをスタンドに立てて置くことで、机から転がり落ちることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5597280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、替刃を収容する替刃ケースを一体的に備えた工具であって、その取扱いにおける利便性および安全性を高めたものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、以下の特徴を備えた工具が提供される。本発明の工具は、「工具本体」と「工具本体に着脱可能に装着される交換可能な刃」と「交換用の替刃を収容する替刃ケース」とを備えている。
そして、工具本体には、「替刃ケースを着脱可能に保持する第1ケース保持部」と「替刃ケースを工具本体から突出する刃先を覆って着脱可能に保持する第2ケース保持部」とが設けられている。
【0007】
本発明における「工具」は、例えば、スクレーパやカッターナイフ、その他であって、刃(ブレード)を備えていて、当該刃の交換が可能なものを意味する。
【発明の効果】
【0008】
上記構成を備えた本発明の工具においては、「工具本体に着脱可能な替刃ケース」が「刃先の保護カバーキャップ」としての機能を兼ね備えている。
「替刃ケース」として見た場合、当該替刃ケースが工具本体に着脱可能に保持できるので、替刃を紛失することがなく、しかも、刃の交換が必要となった場合に、その場で即座に替刃を取り出して、交換を行うことができる(利便性が高い)。
替刃ケースは、「刃先の保護カバーキャップ」としても機能するので、工具を使用しない場合には、第2ケース保持部に取り付けることで、刃先を外部から遮断することができる(安全性が高い)。しかも、キャップとして使用しない場合に、工具本体の第1ケース保持部にて保持しておくことができるので、キャップが紛失することもない。
【0009】
以上のように、本発明の工具によれば、高い利便性と安全性の両方が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の一実施形態に係るスクレーパ1の斜視図であって、替刃ケースを刃先保護用のキャップとして使用している状態を示している。
【
図1B】
図1のスクレーパ1からキャップ(替刃ケース)を取り外した状態の斜視図。
【
図1C】
図1で取り外されているキャップ(替刃ケース)を工具本体に固定した状態の斜視図。
【
図2A】
図1中に示した替刃ケースを閉じた状態で示す斜視図。
【
図2B】
図1中に示した替刃ケースを開いた状態で示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<スクレーパ1の基本構成>
本発明の実施形態を、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1A〜1Cは、本発明の一実施形態に係るスクレーパ1を示す斜視図である。詳しくは後述するが、スクレーパ1が備える替刃ケース30は、スクレーパ本体10に設けた凹所11に保持できる(
図1C)とともに、スクレーパ本体10に固定された刃(ブレード)20の保護カバーとして使用することも可能である(
図1A)。
【0012】
スクレーパ1において、スクレーパ本体10の一端が略平板状の突出部12とされていて、この突出部12に、刃20を着脱可能に取り付けることができる。ツマミ19は、劣化した刃20を交換する場合に操作するもので、これを緩めると刃20を保持する機構が緩んで、刃20を取り外すことができる。
【0013】
<替刃ケース30>
スクレーパ1は、替刃ケース30を備えており、この替刃ケース30は、スクレーパ本体に設けた凹所11内に着脱可能に保持される。替刃ケース30は、その内部に替刃(図示せず)を複数枚収容することが可能で、ユーザは、刃20の切れ味が劣化した場合等に、当該刃20を、替刃ケース30に収容された替刃と交換することができる。使用後の刃20は、替刃ケース30内に入れておいても、適宜の方法で廃棄してもよい。
【0014】
本発明のスクレーパ1において、替刃ケース30は、スクレーパ本体10上の2つの位置に、選択的に取り付けることが可能である。
1つ目の位置は、本体中央に設けた凹所11(第1ケース保持部)である。2つ目の位置は、本体端部(刃20の根元)に設けた突出部12(第2ケース保持部)である。これら2つの取付け位置に応じて、替刃ケース30は、下に説明する2つの有利な特徴をもたらす。
【0015】
<有利な特徴1>
替刃ケース30がスクレーパ本体10に着脱可能に保持される構成を採用することで、替刃の紛失を防ぐことができる、替刃を常にスクレーパと一体化しておくことで必要な場合に即座に刃を交換できる、その他のメリットが得られる。
図示した例では、替刃ケース30は、スクレーパ本体10に設けた凹所11内に着脱可能に装着される。また、替刃ケース30を凹所11内に取り付けたとき、替刃ケースの表面30aとスクレーパ本体の表面10aとが実質的に面一となるように構成している(
図1C)。これにより、替刃ケース30とスクレーパ本体10の見た目の一体感が高まり、優れたデザイン性(高い意匠性)を実現することができる。
【0016】
<有利な特徴2>
凹所11から取り外した替刃ケース30が、刃20を外部から遮断するカバー部材として機能し、これにより、刃20を破損等から保護するとともに、不使用時の安全性を確保できる。すなわち、ユーザはスクレーパ1を使用しない場合は、替刃ケース30をカバー部材として使用し、スクレーパ1を持って作業するときは、替刃ケース30を凹所11に固定しておくことができる。
図示した例では、替刃ケース30は、その側面から内方に侵入する凹部31が形成されている(替刃を収容する空間は、凹部31の上方に確保される)。替刃ケース30を突出部12に装着する場合、突出部12の全体が刃20とともに凹部31内に進入し、刃20が外部から遮断される。突出部12は、凹部31内に進入するとともに、凹部31の内面側に圧接し、これにより、替刃ケース30は、刃20をカバーした状態でスクレーパ本体10に固定される。
【0017】
<替刃ケース30が不用意に開くことを防止するフック部15>
図2A、2Bに示すように、替刃ケース30は、替刃が収容されるケース本体35と、ケース本体35に対してヒンジ式に開閉する開閉扉36と、で構成されている。ヒンジ結合部36aは、ケース本体35において、凹部31が開口する壁面と反対側に位置している。
替刃ケース30は、凹部31に対して突出部12を差し込むことで、スクレーパ本体10に取り付けられる。替刃ケース30は、摩擦係合あるいはスナップフィット等、一般的に知られた方式で、スクレーパ本体10にガタツクことなく固定できる。
一方、スクレーパ本体10側に形成されたフック部15は、替刃ケース30が不用意に開くことを防止する係止部(ロック機構)として機能する。すなわち、フック部15は、突出部12に対する替刃ケース30の差込み方向と平行に突出していて、替刃ケース30を突出部12に取り付けると、これと同時にフック部15が替刃ケースの開閉扉36の表面に対向して位置する。その結果、開閉扉36が開方向に回転することが防止される。
すなわち、替刃ケース30が突出部12に固定された状態では、開閉扉36を開けることができず、したがって、開閉扉36が不用意に開いてしまうことが未然に防止できる。
【0018】
<退避する弾性側壁38a、38b>
図2Cは、替刃ケース30の裏面を示している。替刃ケース30の対向する2つの側壁38a、38bは、その内側に退避用の空間39a、39bを設けている。これにより、ユーザが側壁38a、38bを両外側から掴んだ時、側壁が弾性的に内側へと適度に湾曲して、差込みおよび取外し時等における操作感が良くなる、あるいはグリップ性能が向上するという利点がある。
さらに、側壁38a、38bの表面(好ましくは中央)に適度な突起33a、33bを設けておけば、替刃ケース30をスクレーパ本体10の凹所11内に装着したときに、凹所11の内壁面が突起33a、33bに圧接して側壁38a、38bを弾性的に退避させることで、適度なグリップ力をもって替刃ケース30を凹所11内に固定することができる。
替刃ケース30を凹所11から簡単に取り出すために、スクレーパ本体10の裏側に開口14を設けている(
図1A、1B参照)。ユーザは、開口14を通して指先等で替刃ケース30の裏面を押すことで、簡単に替刃ケース30をスクレーパ本体10から取り外すことができる。
【0019】
図示の例では、前述したように、替刃ケースの表面30aとスクレーパ本体の表面10aとが実質的に面一となるように構成している(
図1C)。この構成と、ヒンジ式に開閉する替刃ケース30の構成とが相俟って、替刃ケース30がスクレーパ本体10の凹所11内に固定されている場合、替刃ケース30が不用意に開いてしまうことが確実に防止できる。替刃ケース30は、凹所11から取り外して初めて、開けることが可能となる(安全性が高い)。
【0020】
<他の実施形態>
(1)
図示した実施形態では、替刃ケース30は、ヒンジ式に開閉する開閉扉36を備えた構成としているが、本発明において、替刃ケースの具体的な形態は、適宜変更することが可能である。
そして、ヒンジ開閉式の替刃ケースを採用する場合、当該開閉扉が不用意に開いてしまうことを防止する係止部は、図示の例ではフック部15がその機能を果たしているが、そのような構成に限定されることなく、適宜の構成を採用することが可能である。
(2)
第1ケース保持部(図示の例では、凹所11)および第2ケース保持部(図示の例では、突出部12)が、替刃ケース30を保持する具体的な態様は、図示のものに限られず、適宜の構成を採用することが可能である。
ただ、図示した例では、(i)替刃ケース30が突出部12に差込み式で固定されるものであって、かつ(ii)フック部15が当該差込み方向と平行に突出しているが故に、替刃ケース30を突出部12に取り付けると、これと同時にフック部15が開閉扉36をロックすることとなり、操作性および安全性の両面で極めて優れたものとなる。
(3)
図示した実施形態では、スクレーパを例にとって本発明を説明している。しかし、本発明は、スクレーパに限定されるものではなく、例えばカッターナイフ等、刃の交換が可能なあらゆる工具に適用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 スクレーパ(工具)
10 スクレーパ本体
11 凹所(第1ケース保持部)
12 突出部(第2ケース保持部)
14 開口
15 フック部(係止部)
19 ツマミ
20 刃(ブレード)
30 替刃ケース
31 凹部
35 ケース本体
36 開閉扉
36a ヒンジ結合部